説明

鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法及び磁粉探傷検査装置

【課題】 磁粉探傷を車輪全周の踏面に対して簡便に行うことができる鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法及び磁粉探傷検査装置を提供する。
【解決手段】 鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、鉄道車両の車輪1に磁極としてのローラー16〜19を取り付けた4極型の磁粉探傷器3を装着し、前記車輪1と前記4極型の磁粉探傷器3を相対的に変位させることにより、車輪踏面2の全周、かつ全方位の踏面キズの磁粉探傷を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車輪の踏面キズを検査する磁粉探傷検査方法及び磁粉探傷検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車輪の踏面キズであるフラットや熱亀裂は、車両走行時の騒音の増大につながるばかりでなく、走行時にレールに打ち付けられて、レールに衝撃的な力を与えるため、レール損傷の要因にもなる。また、踏面キズ自身から亀裂が発生し、それが進展して大きな剥離に至ることもあり、管理を怠ると車輪の割損にもつながりかねない。しかし、車輪踏面は錆等の付着があるため目視では亀裂の進展領域が確認し難い。そこで、現場では携帯型の磁粉探傷検査装置(2極式)等の簡易な装置を用いて車輪踏面の一部を磁化し、亀裂の確認を行うようにしている。
【非特許文献1】非破壊検査便覧〔新版〕,日本非破壊検査協会編,日刊工業新聞社,昭和53年4月28日 初版発行,第601頁〜第645頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の手法では、車輪踏面の一部のみしか磁化できないため踏面全体の亀裂を確認するのは困難である。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑みて、磁粉探傷を車輪全周の踏面に対して簡便に行うことができる鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法及び磁粉探傷検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法において、鉄道車両の車輪に、磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器を装着し、前記車輪と磁粉探傷器の相対的変位により、車輪踏面の全周の全方位の踏面キズを磁粉探傷することを特徴とする。
【0006】
〔2〕鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、鉄道車両の車輪に磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器を装着し、前記車輪と前記4極型の磁粉探傷器を相対的に変位させることにより、車輪踏面の全周の踏面キズの磁粉探傷を行なうことを特徴とする。
【0007】
〔3〕上記〔2〕記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記ローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器は、本体を中心にして4個のローラーをたすき掛け状態に配置し、前記4個のローラーを前記車輪の側面に当接させ、前記4個のローラーを保持する4個の永久磁石のローラーを前記車輪の側面の括れ部に配置することを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔3〕記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記4個のローラーの支持部には固体潤滑剤又はグリースを有することを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔3〕記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記4個のローラーの支持部の軸方向を前記車輪の中心点に向けて配置することを特徴とする。
【0010】
〔6〕上記〔3〕記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記本体を複数に分離可能にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0012】
(1)鉄道車輪の踏面の全周、かつ全方位にわたって表面及び表面下のキズを簡便に検出することができる。
【0013】
(2)車輪又は磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器の何れか一方を固定し、他方を回転させることにより、磁粉探傷検査の自動化を図ることができ、現場作業の効率化を図ることができる。
【0014】
(3)本体を複数に分離可能にすることにより、磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器を車輪から容易に着脱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、鉄道車両の車輪に装着される磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器と、前記車輪と前記4極型の磁粉探傷器を相対的に変位させる駆動手段とを具備する。よって、鉄道車輪の踏面の全周、かつ全方位にわたって表面及び表面下のキズを簡便に検出することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の上面模式図、図2はその磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器の車輪への装着状態を示す正面模式図、図3はその車輪への装着状態を示す図1のA−A線矢視図、図4はその磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器の上面模式図、図5はそのローラーの支持部の拡大図である。
【0018】
これらの図において、1は車輪、2はその車輪踏面、3は磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器、4はその車輪踏面2に蛍光磁粉41を吹きつける磁粉噴射ノズル、5はその車輪踏面2を撮影するカメラ、6は蛍光磁粉41を発色させるためのブラックライト、7は8個のローラーを組む本体(樹脂セラミックス)、8〜11は本体7から四方へ延びるアームであり、アーム8と9、アーム10と11はそれぞれ連結されており、かつアーム8と9、アーム10と11は互いに段違いになるように配置されている。12〜15はそれぞれのアーム8〜11の先端部に連結される第1の支持部、16〜19は第1の支持部12〜15それぞれに回転自在に支持される磁路を形成する金属製のローラー、20〜23はアーム9に連結される第2の支持部、24〜27はその第2の支持部20〜23に回転自在に支持される永久磁石のローラーである。なお、車輪1の幅L1 は例えば、125mmである。
【0019】
ここで、金属製のローラー16〜19は、アーム8〜11に巻回されるコイル31〜34の起磁力により、例えば、ローラー16はN極、ローラー17はS極、ローラー18はN極、ローラー19はS極となるように構成される。つまり、アーム8に巻かれるコイル31とアーム9に巻かれるコイル32とは直列に接続され、交流電源35に接続される。また、アーム10に巻かれるコイル33とアーム11に巻かれるコイル34も直列に接続され、交流電源35に接続される。なお、図5に示すように、4個のローラー16〜19の支持部12〜15には固体潤滑剤又はグリースAを有する。
【0020】
そこで、例えば、磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器3を固定し、車輪1を回転させると、磁極としての金属製のローラー16〜19は車輪1の両側面に当接しながら回転する。特に、下部に配置される永久磁石のローラー24〜27が、車輪1の括れ部に磁力で吸着されて回転するため、金属製のローラー16〜19は、車輪1の側面に保持されて安定して回転することができる。なお、永久磁石のローラー24〜27の磁力が磁極としての金属製のローラー16〜19に干渉しないように、磁気絶縁体もしくは非磁性体16A〜19Aが第1の支持部12〜15と第2の支持部20〜23との間に設けられる。また、車輪1は円形であり、その側面の軌跡も円形となるので、その軌跡上を金属製のローラー16〜19が円滑に回転できるように第1の支持部12〜15の軸方向が車輪1の中心点Oへ向くように配置している〔図2(b)参照〕。
【0021】
ブラックライト6により発色する蛍光磁粉41の分布状態を車輪踏面全周にわたってカメラ5で撮影する。この時、車輪踏面2にキズがある場合には、そのキズに蛍光磁粉41が吸着するため、撮影された映像により、鉄道車輪の踏面の全周、かつ全方位にわたってキズを検出することができる。
【0022】
なお、上記実施例とは逆に、車輪1を固定しておき、磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器3を車輪1の円周方向に回転させるようにしてもよい。つまり、車輪1と磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器3が相対的に移動できるようにすればよい。したがって、磁粉探傷の自動化も可能である。
【0023】
図6は本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の、分離可能にした本体の斜視図である。
【0024】
この図に示すように、鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の本体(樹脂セラミックス)7は2つに分離できるように、第1の部材7Aと第2の部材7Cからなり、第1の部材7Aには第1の結合部7B(雌ねじが設けられた穴を有する)が、第2の部材7Cには第2の結合部7D(雌ねじが設けられた穴を有する)が設けられている。そして、第1の結合部7Bと第2の結合部7Dとはボルト7E(雄ねじを有する)で着脱自在にできるように構成している。したがって、本発明の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置を取り付ける場合には、第1の結合部7Bと第2の結合部7Dとを結合するボルト7Eを外して車輪1の両側にそれぞれのローラーを位置決めした後に、第1の結合部7Bと第2の結合部7Dを固定して組み立てることが望ましい。ここで、図1〜図4でも述べたように、アーム8と9、アーム10と11はそれぞれ連結され、かつアーム8と9、アーム10と11は互いに段違いになるように配置される。
【0025】
なお、図示しないが、その場合、コイル31と32及びコイル33と34との間を接続する接続線は、第1の結合部7Bと第2の結合部7Dを取り外して分離された場合に備えて長さに余裕を持たせるようにする。
【0026】
このように構成することにより、図7に示すように、車輪踏面2に全体に蛍光磁粉41を噴射し、本体7を中心としてたすき掛け状に配置されたアーム8〜11の先端の磁極としての金属製のローラー16〜19により車輪踏面2全体に磁界を印加することができるため、車輪踏面2の全周、かつ全方位にわたり踏面キズの検出を円滑に行うことができる。
【0027】
また、カメラ5による撮影も、車輪1の一回転で終了するので、その記録データの取得は簡単であり、現場作業での効率化に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法及び磁粉探傷検査装置は、簡便で自動測定化が可能な鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法及び磁粉探傷検査装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の上面模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器の車輪への装着状態を示す正面模式図である。
【図3】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の車輪への装着状態を示す図1のA−A線矢視図である。
【図4】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器の上面模式図である。
【図5】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置のローラーの支持部の拡大図である。
【図6】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置の分離可能にした本体の斜視図である。
【図7】本発明の実施例を示す鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査の状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0030】
1 車輪
O 車輪の中心点
2 車輪踏面
3 磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器
4 磁粉噴射ノズル
5 カメラ
6 ブラックライト
7 8個のローラーを組む本体
7A 第1の部材
7B 第1の結合部
7C 第2の部材
7D 第2の結合部
7E ボルト
8〜11 本体から四方へ延びるアーム
12〜15 第1の支持部
16〜19 金属のローラー
16A〜19A 磁気絶縁体もしくは非磁性体
A 固体潤滑剤又はグリース
20〜23 第2の支持部
24〜27 永久磁石のローラー
31〜34 コイル
35 交流電源
41 蛍光磁粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車輪に、磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器を装着し、前記車輪と磁粉探傷器の相対的変位により、車輪踏面の全周の全方位の踏面キズを磁粉探傷することを特徴とする鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査方法。
【請求項2】
鉄道車両の車輪に磁極としてのローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器を装着し、前記車輪と前記4極型の磁粉探傷器を相対的に変位させることにより、車輪踏面の全周の踏面キズの磁粉探傷を行なうことを特徴とする鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記ローラーを取り付けた4極型の磁粉探傷器は、本体を中心にして4個のローラーをたすき掛け状態に配置し、前記4個のローラーを前記車輪の側面に当接させ、前記4個のローラーを保持する4個の永久磁石のローラーを前記車輪の側面の括れ部に配置することを特徴とする鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記4個のローラーの支持部には固体潤滑剤又はグリースを有することを特徴とする鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置。
【請求項5】
請求項3記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記4個のローラーの支持部の軸方向を前記車輪の中心点に向けて配置することを特徴とする鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置。
【請求項6】
請求項3記載の鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置において、前記本体を複数に分離可能にすることを特徴とする鉄道車輪踏面の磁粉探傷検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−242762(P2006−242762A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59308(P2005−59308)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】