説明

鉛蓄電池

【課題】サイクル寿命が顕著に向上し、減液が抑制され、負極耳痩せが抑制された鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材はSbが5000質量ppm以下(実質的に0の場合も含む)である鉛合金からなる鉛蓄電池において、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素を負極活物質中または電解液中に添加したことを特徴とする。さらに、負極活物質中にカーボンを添加することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池、特に寿命特性の優れた鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池については、近年、メンテナンスフリーおよび無漏液特性が重要視されており、Pb−非Sb系合金がこれらの特性を維持するのに適していることから、正・負極格子基材ともにSbを含まない合金がよく利用されるようになってきた。Sbを含まない合金としてはPb−Ca−Sn系合金が最もよく利用されている。
【0003】
Pb−Ca−Sn系合金とは、Pb、CaおよびSnで構成されている合金であるが、その他の元素を含む場合も、合金の特性に対するCaおよびSnの影響力が大きいことから、これらを含めてPb−Ca−Sn系合金と称している。第四の元素として、Al、Ag、Bi、Ba等が挙げられる。
【0004】
このようなSbを含まない合金を正・負極格子基材に用いた鉛蓄電池は減液量が大幅に少なくなるが、ストラップとストラップから導出された極柱もしくはセル間接続体が一体化した接続部材には依然として2〜5質量%程度のSbを含むPb−Sb系合金が利用されており、主に正極接続部材に含まれるSbが電解液中へ溶出したのち負極に再析出するために減液が進行し、電解液から露出した負極部分の腐食が進行する場合がある。
【0005】
このような観点から、格子および接続部材の全てに純鉛、もしくはSbを含まない鉛合金を用いることが提案されている。このような構成の電池においては、減液が抑制され、電解液から露出した負極部分の腐食の進行も抑制されるが、負極の充電受入性が低下し、鉛蓄電池の深放電寿命が低下することがわかっている。そこで、正および負極格子、正および負極接続部材はSbを含有しない鉛もしくは鉛合金とし、負極活物質中に減液量に影響しない程度の微量のSb、BiといったPbよりも水素過電圧が低い物質を含ませることで、前記した減液量の抑制および深放電寿命の改善といった相反する課題を解決する発明が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0006】
また、負極格子および正極格子をいずれもPb−Ca合金とし、接続部材の電解液に接触する部分を、Sbを含まないPbもしくはPb合金とした鉛蓄電池において、特許文献1及び2の発明のように負極活物質中にSbを含ませる代わりに、負極活物質中のカーボン量を、負極活物質中のPb質量の0.3〜1.0%とすることによって、負極の耳における耳細り現象を抑制し、負極充電受入性の低下を抑制した鉛蓄電池を得る発明がある(特許文献3参照)。
これら特許文献1〜3の発明においては、鉛蓄電池のサイクル寿命が改善されるものの、より寿命特性を改善することが望まれていた。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、「正および負極格子基材は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材(ストラップ、極柱、およびセル間接続体)は50〜5000質量ppmのSbを含んだ鉛合金からなることを特徴とする鉛蓄電池。」の発明が提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
この発明の鉛蓄電池によれば、正・負極セル間溶接部の強度が十分に強固で耐振動性に優れ、主に正極接続部材に含まれる微量のSbが電解液中に溶解し、負極表面に再析出することで負極の充電受入性を改善し、同時に減液を従来の2〜5質量%程度のSbを含むPb−Sb系合金からなる正・負極接続部材に比べて大幅に抑制するため、鉛蓄電池の寿命特性を改善することができることが示されている。
【0009】
さらに、この発明の鉛蓄電池において、使用初期から十分な充電受入性を得るために、より好ましくは負極活物質中にSb、Sn、Biのうち少なくとも1つを添加することができ、その際のSb、Sn、Biの添加濃度は、負極活物質量に対して0.2〜500質量ppmとすることも示されているが、後述の比較例に示されるように、「正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材は50〜5000質量ppmのSbを含んだ鉛合金からなる鉛蓄電池」において、負極活物質中にSb、Sn、Biを添加する場合には、添加量が多くないと、サイクル寿命は顕著に向上しないという問題があった。
【0010】
一方、「負極と正極と電解液を有してなる鉛蓄電池であって、上記負極にHf,Nb,Ta,W,Ag,Zn,Ni,Co,Mo,Cu,V,Mn,Ba,K,Cs,Rb,Sr,Naのうち少なくとも一つの単体,酸化物,硫酸塩,水酸化物又は炭化物をカーボンに担持した担持体を添加することを特徴とする鉛蓄電池。」の発明がある(特許文献5、請求項6参照)が、この発明は、高率充電性能に優れた鉛蓄電池を提供することと、充電受入性に優れた新規なカーボン材料を提供することを課題とするものであり、サイクル寿命の向上を課題とするものではなく、また、特許文献5には、格子体として鉛−カルシウム合金を用いることが記載されているだけで、接続部材の一つであるストラップの記載はあるものの、その材質は示されていない。
【0011】
同様の発明として、「負極と正極と電解液とを有する鉛蓄電池において、前記負極が、金属ニッケルおよび/またはニッケル含有化合物をカーボンに担持したニッケル担持カーボンを含有し、前記金属ニッケルおよび/またはニッケル含有化合物の一次粒子の粒径が、前記カーボンの一次粒子の粒径よりも小であることを特徴とする鉛蓄電池。」がある(特許文献6、請求項1参照)が、この発明も、高率充電性に優れた鉛蓄電池を提供することを課題とするものであり、サイクル寿命の向上を課題とするものではなく、また、特許文献6には、格子体として鉛−カルシウム合金を用いることが記載されているだけで、接続部材の一つであるストラップの記載はあるものの、その材質は示されていない。
【0012】
さらに、「負極活物質中にタングステンを含み、負極活物質としてのPb100質量部につき、タングステンを0.00005〜0.008質量部含む鉛蓄電池。」及び「電解液中にタングステンを含み、電解液1l中に含まれるタングステンを0.00002mol〜0.02molとした鉛蓄電池。」の発明があり(特許文献7、請求項1及び3参照)、この発明の鉛蓄電池は、「優れた充電受け入れ性を有し、低SOC−深放電における寿命特性を顕著に改善する。またSb添加で見られたような自己放電特性の低下や負極格子部の腐食を抑制するという顕著な効果を奏する。」(段落[0015])ものであるが、上記の効果を期待して、タングステン以外の元素を用いることを示唆するものではない。また、特許文献7には、正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなるものが記載されている(段落[0038]及び[0039]参照)が、正および負極接続部材(ストラップ、極柱、およびセル間接続体)の材質は示されていない。
【0013】
同様の発明として、「負極活物質中にパラジウムを含み、負極活物質としてのPb100質量部につき、パラジウムを0.00003〜0.005質量部含む鉛蓄電池。」及び「電解液中にパラジウムを含み、電解液1l中に含まれるパラジウムを0.02mmol〜1.0mmolとした鉛蓄電池。」があり(特許文献8、請求項1及び3参照)、この発明の鉛蓄電池は、「優れた充電受け入れ性を有し、低SOC−深放電における寿命特性を顕著に改善する。またSb添加で見られたような自己放電特性の低下や負極格子部の腐食を抑制するという顕著な効果を奏する。」(段落[0015])ものであるが、上記の効果を期待して、パラジウム以外の元素を用いることを示唆するものではない。また、特許文献8には、正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなるものが記載されている(段落[0038]及び[0039]参照)が、正および負極接続部材(ストラップ、極柱、およびセル間接続体)の材質は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−114416号公報
【特許文献2】特開2006−114417号公報
【特許文献3】特開2008−140645号公報
【特許文献4】特開2008−218258号公報
【特許文献5】特開2002−367613号公報
【特許文献6】特開2004−22448号公報
【特許文献7】特開2007−213896号公報
【特許文献8】特開2007−305369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記先行技術の課題を解決しようとするものであり、サイクル寿命が顕著に向上し、減液が抑制され、負極耳痩せが抑制された鉛蓄電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材はSbが5000質量ppm以下(実質的に0の場合も含む、以下同じ)である鉛合金からなる鉛蓄電池において、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素を負極活物質中または電解液中に添加したことを特徴とする鉛蓄電池。
(2)前記水素過電圧が低い元素はNiであり、その添加量が負極活物質の質量に対して10〜70質量ppmであることを特徴とする前記(1)の鉛蓄電池。
(3)前記水素過電圧が低い元素はCuであり、その添加量が負極活物質の質量に対して20〜200質量ppmであることを特徴とする前記(1)の鉛蓄電池。
(4)前記水素過電圧が低い元素はMoであり、その添加量が負極活物質の質量に対して10〜100質量ppmであることを特徴とする前記(1)の鉛蓄電池。
(5)前記水素過電圧が低い元素はAgであり、その添加量が負極活物質の質量に対して10〜100質量ppmであることを特徴とする前記(1)の鉛蓄電池。
(6)前記水素過電圧が低い元素はTeであり、その添加量が負極活物質の質量に対して5〜50質量ppmであることを特徴とする前記(1)に記載の鉛蓄電池。
(7)前記負極活物質中にカーボンを添加したことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一項の鉛蓄電池。
(8)前記カーボンの一部に膨張化黒鉛を用いたことを特徴とする前記(7)の鉛蓄電池。
(9)前記カーボンの添加量を負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%としたことを特徴とする前記(7)又は(8)の鉛蓄電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材はSbが5000質量ppm以下である鉛合金からなる鉛蓄電池において、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素を負極活物質中または電解液中に添加したことにより、少量の添加で、サイクル寿命が顕著に向上し、減液が抑制され、負極耳痩せが抑制された鉛蓄電池が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明において、正および負極格子、正および負極接続部材は、特許文献4に記載された発明と同様の方法で作製する。
【0019】
本発明においては、正極格子および負極格子の基材として実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金を使用する。ただし、不可避不純物として微量のSbが含まれている場合があるが、Sb量が5質量ppm未満であれば本発明の効果が損なわれることはない。Caの含有量は、0.05〜0.1質量%、Snの含有量は、0.3〜3.0質量%とすることが好ましい。さらに、従来から活物質との密着性を改善するなどの目的で、正極格子表面にSb等を含んだ鉛合金からなる表面層を設けられることがあり、この技術を本発明に適用した場合においても、Sb量が正極格子重量に対して1000ppm未満であれば、本発明の効果が損なわれることはない。
【0020】
負極板は、網目状に展開された、上記のような実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなる負極格子に負極活物質を充填した構成である。正極板も、同様の正極格子に正極活物質を充填した構成である。
負極活物質ペーストは鉛粉に硫酸バリウム、リグニンおよびカーボンを必要に応じて適量加え、これらを水および希硫酸で練合することで作製し、負極格子に充填した後、熟成・乾燥を行うことで負極板を得る。正極活物質ペーストは鉛粉を水および希硫酸で練合することで作製し、前記正極格子に充填した後、熟成・乾燥を行うことで正極板を得る。
【0021】
上記のようにして作製した負極板と正極板を、従来と同様に、セパレータを介して積層し、同極性の極板同士を、ストラップで連結させて極板群とする。この極板群を電槽内に配置して未化成電池を作製する。上記未化成電池に希硫酸を入れ、化成した後に、希硫酸を一度抜き、その後、硫酸(電解液)を入れて、本発明の鉛蓄電池とする。
【0022】
本発明において、正極板および負極板から導出された正極ストラップおよび負極ストラップは、Sb濃度を5000質量ppm以下の鉛または鉛合金とすることにより、後述するように、Pbよりも水素過電圧が低い特定の元素(Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上)を負極活物質中または電解液中に添加した場合に、これら特定の元素を添加しない場合と比較して、サイクル寿命が顕著に向上する。Sb濃度が5000質量ppmを超えるとサイクル寿命が短くなり、減液量が増加し、負極耳痩せも大きくなるから、サイクル寿命を向上させ、減液を抑制し、負極耳痩せを抑制するためには、正および負極ストラップを構成する鉛合金中のSb濃度を5000質量ppm以下とすることが好ましい。
【0023】
ストラップは、バーナー溶接法またはキャスト・オン・ストラップ(Cast
on Strap、略してCOS)法により溶接する。バーナー溶接法は、極板群の極板耳部を櫛状治具に挿入し、ガスバーナーやプラズマなどの炎で、極板耳部や足鉛を溶融、凝固させることで一体化し、ストラップを形成するものである。COSは、鋳型内に置かれた溶融鉛に、極板耳部を浸漬し、その後凝固させることで一体化して、ストラップとするものである。
【0024】
ストラップから導出される極柱もしくはセル間接続体は、バーナー法では足鉛を用いてストラップを作製する際に、極柱もしくはセル間接続体を溶接することでストラップと一体化される。COS法ではあらかじめ設けられた鋳型に溶融鉛を注ぐことでこれらが一体化した接続部材が形成される。本発明において、極柱もしくはセル間接続体は、Sbが5000質量ppm以下の鉛または鉛合金とし、前記ストラップと同様の鉛合金で構成することが好ましい。
【0025】
本発明においては、鉛蓄電池の正極充電不足を改善し、サイクル寿命を顕著に向上させるために、上記負極活物質(負極活物質ペースト)中または上記電解液(硫酸)中に、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素を添加することが重要である。
【0026】
Niは、Sbが5000質量ppm以下である鉛合金からなるストラップを用いた場合、負極活物質に対して10質量ppm以上添加することにより、サイクル寿命が顕著に向上する。しかし、負極活物質に対して70質量ppmを超える量添加するとサイクル寿命の向上が頭打ちになり、減液量が増加し、負極耳痩せも大きくなるから、サイクル寿命を向上させ、減液を抑制し、負極耳痩せを抑制するためには、Niの添加量は負極活物質に対して10〜70質量ppmとすることが好ましい。
【0027】
Cuは、Sbが5000質量ppm以下である鉛合金からなるストラップを用いた場合、負極活物質に対して20質量ppm以上添加することにより、サイクル寿命が顕著に向上する。しかし、負極活物質に対して200質量ppmを超える量添加するとサイクル寿命の向上が頭打ちになり、減液量が増加し、負極耳痩せも大きくなるから、サイクル寿命を向上させ、減液を抑制し、負極耳痩せを抑制するためには、Cuの添加量は負極活物質に対して20〜200質量ppmとすることが好ましい。
【0028】
Moは、Sbが5000質量ppm以下である鉛合金からなるストラップを用いた場合、負極活物質に対して10質量ppm以上添加することにより、サイクル寿命が顕著に向上する。しかし、負極活物質に対して100質量ppmを超える量添加するとサイクル寿命の向上が頭打ちになり、減液量が増加し、負極耳痩せも大きくなるから、サイクル寿命を向上させ、減液を抑制し、負極耳痩せを抑制するためには、Moの添加量は負極活物質に対して10〜100質量ppmとすることが好ましい。
【0029】
Agは、Sbが5000質量ppm以下である鉛合金からなるストラップを用いた場合、負極活物質に対して10質量ppm以上添加することにより、サイクル寿命が顕著に向上する。しかし、負極活物質に対して100質量ppmを超える量添加するとサイクル寿命の向上が頭打ちになり、減液量が増加し、負極耳痩せも大きくなるから、サイクル寿命を向上させ、減液を抑制し、負極耳痩せを抑制するためには、Agの添加量は負極活物質に対して10〜100質量ppmとすることが好ましい。
【0030】
Teは、Sbが5000質量ppm以下である鉛合金からなるストラップを用いた場合、負極活物質に対して5質量ppm以上添加することにより、サイクル寿命が顕著に向上する。しかし、負極活物質に対して50質量ppmを超える量添加するとサイクル寿命の向上が頭打ちになり、減液量が増加し、負極耳痩せも大きくなるから、サイクル寿命を向上させ、減液を抑制し、負極耳痩せを抑制するためには、Teの添加量は負極活物質に対して5〜50質量ppmとすることが好ましい。
【0031】
本発明においては、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素とカーボンを併用することにより、鉛蓄電池の正極充電不足が改善され、サイクル寿命がより向上する。カーボンを負極活物質中に負極活物質に対して0.5質量%以上添加することにより、サイクル寿命が顕著に向上する。添加しすぎると体積当たりのPb量が相対的に減ることにより、放電性能が低下し短寿命となるから、カーボンの添加量は負極活物質に対して0.5〜3.0質量%とすることが好ましい。
【0032】
カーボンとしては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛は、従来のカーボンのように負極板から遊離することがないので、電解液を混濁させることがない。したがって、従来のカーボンを用いた場合よりも添加量を多くすることができ、効果を大きくできる。
【実施例1】
【0033】
〔実施例1−1〕
(正・負極格子の作製)
本実施例の鉛蓄電池の正・負極格子基材にはPb−Ca−Sn系合金を用いた。合金組成は正極格子基材がPb−0.06質量%Ca−1.5質量%Sn、負極格子基材がPb−0.06質量%Ca−1.5質量%Snである。上記の合金からなる正極格子基材を圧延した後にエキスパンド加工を行うことで、長さ115mm×幅137mm×厚さ1.6mmの正極格子を作製した。また、上記の合金からなる負極格子基材を圧延した後にエキスパンド加工を行うことで、長さ115mm×幅137mm×厚さ1.4mmの負極格子を作製した。
【0034】
(正極板の作製)
正極板の作製においては、まず、鉛粉に対して13質量%の水と10質量%の希硫酸(比重1.40,20℃)を加え、これを混練して正極活物質ペーストを作製した。この正極活物質ペースト94gを、上記のようにして作製した正極格子に充填して、温度40°C、湿度50RH%の雰囲気下で24時間放置して熟成した後に、温度50°Cで24時間放置して乾燥させ、未化成の正極板を作製した。
【0035】
(負極板の作製)
負極板の作製においては、まず、鉛粉に対して、0.2質量%のリグニンと0.6質量%の硫酸バリウムを添加し、混練機で混練して混合物を準備した。次に、この混合物に、鉛粉に対して13質量%の水を加えて混合し、さらに鉛粉に対して7質量%の希硫酸(比重1.40,20℃)を加えて負極活物質ペーストを作製した。この負極活物質ペースト90gを、上記のようにして作製した負極格子に充填して、自然環境下で24時間放置して熟成した後に、温度50℃で24時間放置して乾燥させ、未化成の負極板を作製した。
【0036】
(電池の作製および化成)
上記のようにして作製した正極板を、厚さ0.65mmの微孔性ポリエチレン製の袋状セパレータによって包み、その正極板5枚と上記負極板6枚を、両端に負極板がくるように交互に配置し、同極性の格子耳をCOS法により集合溶接し、未化成電池を作製した。
【0037】
集合溶接の際に一体化して作製された正・負極接続部材(ストラップ、極柱、およびセル間接続体)は、Pb−Sn−Sb合金からなり、本実施例においてはPb−1.5質量%Sn合金にSbが0(検出限界である0.1質量ppm未満)、50質量ppm、100質量ppm、500質量ppm、1000質量ppm、5000質量ppm、10000質量ppm、25000質量ppm含まれる組成とした。
【0038】
上記未化成電池に比重1.20(20℃)の希硫酸を入れ、18Aで20時間化成した後に、希硫酸を一度抜き、その後、比重1.28(20℃)の硫酸(電解液)を入れて、No.A1〜A36の鉛蓄電池を完成させた。その際、電解液中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、10質量ppm、40質量ppm、70質量ppm、100質量ppmの量のNiを添加した。このようにして得られた鉛蓄電池は、JIS D5301に規定される55D23型(定格電圧12V、定格5時間率容量48Ah)である。
【0039】
(鉛蓄電池の評価)
上記のようにして作製したNo.A1〜A36の鉛蓄電池について、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表1に示す。
鉛蓄電池の寿命試験の条件は以下のとおりである。
放電:50A×1min
充電:14.0V(max50A)×1min
上記充放電サイクル中の放電電圧が7.2Vを下回ったときを寿命とした。
また、負極耳痩せ(量)は、寿命時の量であり、減液速度は、寿命時の減液量を寿命サイクル数で除したものである。
なお、表1には、No.A1の鉛蓄電池(接続部材中のSb:25000質量ppm、Ni添加量:0)の寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを100とし、No.A2〜A36の鉛蓄電池についての測定結果は、すべてNo.A1に対する%で表示した。以下の実施例及び比較例(表2〜11)においても同様である。
【0040】
【表1】

【0041】
表1より、Niを、負極活物質(鉛粉)の質量に対して10〜70質量ppm添加した場合、接続部材中のSbが5000質量ppm以下のとき、Niを添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上するのが分かる。接続部材中のSbが0から500質量ppmまでは、Sbが増加するにしたがって、また、Niの添加量が70質量ppmまで増加するにしたがって、寿命サイクル数が向上する。接続部材中のSbが500質量ppmを超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになるが、Sbが5000質量ppmまでは、Niの添加量が10質量ppmと少なくても、添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上する。さらに、接続部材中のSbが5000質量ppm以下のとき、Niの添加量が負極活物質の質量に対して10〜70質量ppmの範囲で、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かる。接続部材中のSbが5000質量ppmを超えると寿命サイクル数が悪化し、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。また、Niの添加量が、負極活物質の質量に対して70ppmを超えると、寿命サイクル数の向上が頭打ちになり、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。
【0042】
〔実施例1−2〕
Niを、電解液中に添加する代わりに、負極板を作製する際に、負極活物質ペースト中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、10質量ppm、40質量ppm、70質量ppm、100質量ppmの量のNiを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.A37〜A64の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2より、Niを、負極活物質中に負極活物質(鉛粉)の質量に対して10〜70質量ppm添加した場合、電解液中に添加した場合と同様に、接続部材中のSbが0から500質量ppmまでは、Sbが増加するにしたがって、また、Niの添加量が増加するにしたがって、Niを添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上するのが分かる。接続部材中のSbが500質量ppmを超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになるが、Sbが5000質量ppmまでは、Niの添加量が10質量ppmと少なくても、添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上する。さらに、接続部材中のSbが5000質量ppm以下の場合、Niの添加量が負極活物質の質量に対して10〜70質量ppmの範囲で、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かる。なお、Niを、負極活物質中に添加すると、電解液中に添加した場合と比較して、寿命サイクル数の向上がやや低くなり、減液速度がやや増えるが、ほぼ同等の性能であるといえる。
【実施例2】
【0045】
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、20質量ppm、100質量ppm、200質量ppm、400質量ppmの量のCuを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.B1〜B28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3より、Cuを、負極活物質(鉛粉)の質量に対して20〜200質量ppm添加した場合、接続部材中のSbが0から500質量ppmまでは、Sbが増加するにしたがって、また、Cuの添加量が増加するにしたがって、Cuを添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上するのが分かる。接続部材中のSbが500質量ppmを超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになるが、Sbが5000質量ppmまでは、Cuの添加量が20質量ppmと少なくても、添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上する。また、接続部材中のSbが5000質量ppm以下の場合、Cuの添加量が負極活物質の質量に対して20〜200質量ppmの範囲で、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かる。接続部材中のSbが5000質量ppmを超えると寿命サイクル数が悪化し、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。Cuの添加量が、負極活物質の質量に対して200ppmを超えると、寿命サイクル数の向上が頭打ちになり、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。
【実施例3】
【0048】
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、10質量ppm、50質量ppm、100質量ppm、200質量ppmの量のMoを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.C1〜C28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表4に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
表4より、Moを、負極活物質(鉛粉)の質量に対して10〜100質量ppm添加した場合、接続部材中のSbが0から500質量ppmまでは、Sbが増加するにしたがって、また、Moの添加量が増加するにしたがって、Moを添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上するのが分かる。接続部材中のSbが500質量ppmを超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになるが、Sbが5000質量ppmまでは、Moの添加量が10質量ppmと少なくても、添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上する。また、接続部材中のSbが5000質量ppm以下の場合、Moの添加量が負極活物質の質量に対して10〜100質量ppmの範囲で、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かる。接続部材中のSbが5000質量ppmを超えると寿命サイクル数が悪化し、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。Moの添加量が、負極活物質の質量に対して100ppmを超えると、寿命サイクル数の向上が頭打ちになり、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。
【実施例4】
【0051】
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、10質量ppm、50質量ppm、100質量ppm、200質量ppmの量のAgを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.D1〜D28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表5に示す。
【0052】
【表5】

【0053】
表5より、Agを、負極活物質(鉛粉)の質量に対して10〜100質量ppm添加した場合、接続部材中のSbが0から500質量ppmまでは、Sbが増加するにしたがって、また、Agの添加量が増加するにしたがって、Agを添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上するのが分かる。接続部材中のSbが500質量ppmを超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになるが、Sbが5000質量ppmまでは、Agの添加量が10質量ppmと少なくても、添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上する。また、接続部材中のSbが5000質量ppm以下の場合、Agの添加量が負極活物質の質量に対して10〜100質量ppmの範囲で、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かる。接続部材中のSbが5000質量ppmを超えると寿命サイクル数が悪化し、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。Agの添加量が、負極活物質の質量に対して100ppmを超えると、寿命サイクル数の向上が頭打ちになり、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。
【実施例5】
【0054】
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、5質量ppm、10質量ppm、50質量ppm、100質量ppmの量のTeを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.E1〜E28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表6に示す。
【0055】
【表6】

【0056】
表6より、Teを、負極活物質(鉛粉)の質量に対して5〜50質量ppm添加した場合、接続部材中のSbが0から500質量ppmまでは、Sbが増加するにしたがって、また、Teの添加量が増加するにしたがって、Teを添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上するのが分かる。接続部材中のSbが500質量ppmを超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになるが、Sbが5000質量ppmまでは、Teの添加量が5質量ppmと少なくても、添加しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上する。また、接続部材中のSbが5000質量ppm以下の場合、Teの添加量が負極活物質の質量に対して5〜50質量ppmの範囲で、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かる。接続部材中のSbが5000質量ppmを超えると寿命サイクル数が悪化し、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。Teの添加量が、負極活物質の質量に対して50ppmを超えると、寿命サイクル数の向上が頭打ちになり、減液速度が増加し、負極耳痩せも大きくなるので好ましくない。
【0057】
〔比較例1〕
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、200質量ppm、1000質量ppm、2000質量ppm、4000質量ppmの量のSnを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.F1〜F28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表7に示す。
【0058】
【表7】

【0059】
表7より、接続部材中のSbが0〜5000質量ppm、Snの添加量が負極活物質の質量に対して200〜2000質量ppmの範囲で、寿命サイクル数が向上し、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かるが、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上を添加した場合と比較して、添加量を増加しないと効果がない。
【0060】
〔比較例2〕
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、100質量ppm、200質量ppm、500質量ppm、1000質量ppmの量のSbを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.G1〜G28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表8に示す。
【0061】
【表8】

【0062】
表8より、接続部材中のSbが0〜5000質量ppm、Sbの添加量が負極活物質の質量に対して100〜500質量ppmの範囲で、寿命サイクル数が向上し、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かるが、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上を添加した場合と比較して、添加量を増加しないと効果がない。
【0063】
〔比較例3〕
電解液中に、Niを添加する代わりに、負極活物質(鉛粉)の質量に対して0、200質量ppm、1000質量ppm、2000質量ppm、4000質量ppmの量のBiを添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、No.H1〜H28の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表9に示す。
【0064】
【表9】

【0065】
表9より、接続部材中のSbが0〜5000質量ppm、Biの添加量が負極活物質の質量に対して200〜2000質量ppmの範囲で、寿命サイクル数が向上し、減液が抑制され、負極耳痩せも抑制されているのが分かるが、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上を添加した場合と比較して、添加量を増加しないと効果がない。
【実施例6】
【0066】
接続部材中のSbを50質量ppmとし、電解液中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して10質量ppmのNi、20ppmのCu、10ppmのMo、10ppmのAg、又は5ppmのTeを添加した鉛蓄電池について、負極板を作製する際、0.2質量%のアセチレンブラックと共に膨張化黒鉛を、負極活物質ペースト中に、負極活物質の質量に対して0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、膨張化黒鉛無添加のものと共に、No.J1〜J20の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表10に示す。
【0067】
【表10】

【0068】
表10より、10質量ppmのNi、20ppmのCu、10ppmのMo、10ppmのAg、又は5ppmのTeと0.2質量%のアセチレンブラックと0〜3.0質量%の膨張化黒鉛を併用した場合、カーボン(アセチレンブラック、膨張化黒鉛)を併用しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上しているのが分かる。膨張化黒鉛の添加量が3.0質量%を超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになる。したがって、Ni、Cu、Mo、Ag、又はTeの添加量が少ない場合には、膨張化黒鉛の添加量は0.5〜3.0質量%が好ましい。
【実施例7】
【0069】
接続部材中のSbを5000質量ppmとし、電解液中に、負極活物質(鉛粉)の質量に対して70質量ppmのNi、200ppmのCu、100ppmのMo、100ppmのAg、又は50ppmのTeを添加した鉛蓄電池について、負極板を作製する際、0.2質量%のアセチレンブラックと共に膨張化黒鉛を、負極活物質ペースト中に、負極活物質の質量に対して0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加したこと以外は、実施例1−1と同様にして、膨張化黒鉛無添加のものと共に、No.K1〜K20の鉛蓄電池を作製し、寿命サイクル数、減液速度、負極耳痩せを測定した。測定結果(試験結果)を表11に示す。
【0070】
【表11】

【0071】
表11より、70質量ppmのNi、200ppmのCu、100ppmのMo、100ppmのAg、又は50ppmのTeと0.2質量%のアセチレンブラックと0〜3.0質量%の膨張化黒鉛を併用した場合、カーボン(アセチレンブラック、膨張化黒鉛)膨張化黒鉛を併用しない場合と比較して、寿命サイクル数が顕著に向上しているのが分かる。膨張化黒鉛の添加量が3.0質量%を超えると寿命サイクル数の向上は頭打ちになる。したがって、Ni、Cu、Mo、Ag、又はTeの添加量が多い場合にも、膨張化黒鉛の添加量は0.5〜3.0質量%が好ましい。
【0072】
以上のとおり、本発明においては、正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材は0〜5000質量ppmのSbを含んだ鉛合金からなる鉛蓄電池において、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素を負極活物質中または電解液中に添加したことにより、少量の添加で、サイクル寿命が顕著に向上し、減液が抑制され、負極耳痩せが抑制された鉛蓄電池が得られた。また、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上とカーボンを併用することにより、サイクル寿命がさらに向上した鉛蓄電池が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正および負極格子は実質的にSbを含まないPb−Ca−Sn系合金からなり、正および負極接続部材はSbが5000質量ppm以下(実質的に0の場合も含む)である鉛合金からなる鉛蓄電池において、Ni、Cu、Mo、Ag、及びTeよりなる群から選ばれる一種以上のPbよりも水素過電圧が低い元素を負極活物質中または電解液中に添加したことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
前記水素過電圧が低い元素はNiであり、その添加量が負極活物質の質量に対して10〜70質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記水素過電圧が低い元素はCuであり、その添加量が負極活物質の質量に対して20〜200質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記水素過電圧が低い元素はMoであり、その添加量が負極活物質の質量に対して10〜100質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記水素過電圧が低い元素はAgであり、その添加量が負極活物質の質量に対して10〜100質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
前記水素過電圧が低い元素はTeであり、その添加量が負極活物質の質量に対して5〜50質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項7】
前記負極活物質中にカーボンを添加したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
【請求項8】
前記カーボンの一部に膨張化黒鉛を用いたことを特徴とする請求項7に記載の鉛蓄電池。
【請求項9】
前記カーボンの添加量を負極活物質の質量に対して0.5〜3.0質量%としたことを特徴とする請求項7又は8に記載の鉛蓄電池。

【公開番号】特開2010−277941(P2010−277941A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131704(P2009−131704)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】