説明

銅張積層体の製造方法

【課題】 積層体製造におけるハンドリング性を改善し、しかも30μmピッチ以下の微細加工が可能で、かつ、屈曲性及び耐折性に優れた銅張積層体の製造方法を提供。
【解決手段】 銅箔の一方の面に絶縁性樹脂よりなる絶縁層が形成される銅張積層体の製造方法において、銅箔として、10μm以上の厚みを有した圧延銅箔を使用し、該銅箔の一方の面にポリイミド前駆体樹脂溶液を直接塗布した後、100〜400℃で熱処理してポリイミド樹脂絶縁層を形成し、過酸化水素を0.5〜10%及び硫酸を0.5〜15%の範囲濃度(wt%)で含有する液で、得られた積層体の絶縁層と接していない面を化学研磨し、該銅箔の厚みが10〜90%の範囲で除去されるようにすると共に、その表面粗度Rzが2.5μm以下となるようにすることを特徴とする銅張積層体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅張積層体の製造方法に関するものであり、詳しくは、チップ・オン・フィルム(以下、COFという。)用途として微細加工が可能で、屈曲性(又はフレキシブル性)及び耐折性に優れたフレキシブルプリント基板用の銅張積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電子回路にはプリント基板が多く用いられているが、その中でも特にフレキシブルプリント基板(FPC)は、屈曲性を持つことと基板自体が薄いことから、テープキャリアにドライバICを実装するTAB方式(テープ・オートメイティッド・ボンディング)に適用されてきた。最近では、より小さいスペースで、より高密度の実装を行う実装方法として、裸のICチップをフィルムキャリアテープ上に直接搭載するCOF方式が開発され、配線の狭ピッチ化が進み、微細加工が可能であるフレキシブルプリント基板用の銅張積層体が必要とされている。
【0003】
従来、微細加工が可能な銅張積層体を提供するための製造方法として主に、メタライジング法、ラミネート法、キャスト法がある。メタライジング法は、ポリイミドフィルムの表面にスパッタリングにより金属を薄く蒸着し、その上に所定の厚さに銅を無電解及び/又は電解メッキ法により形成する方法である。しかし、この製法ではピンホールと呼ばれる金属層に微小な穴が点在し、回路の耐エレクトロマイグレーション性に劣るといった微細回路形成において致命的な欠陥を有している。
【0004】
ラミネート法は、銅箔をポリイミドフィルムに直接積層する方法である。この方法については、高い屈曲性を有する銅張積層体を得るために、再結晶焼鈍した圧延銅箔を使用することが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、このような圧延銅箔は柔らかく、厚さが10μm以下の薄い銅箔では、積層体製造時のハンドリングで変形しやすい。また、回路形成時のエッチング性が良好なプリント基板用として、結晶配向性の小さい電解銅箔をプリント配線基板に使用することが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。しかしながら、このような銅箔は、結晶粒径が小さく、高い屈曲性及び耐折性が得られ難く、使用製品種の用途が限られてしまう。
【0005】
キャスト法は、ポリイミド前駆体樹脂溶液を銅箔上に塗布した後、乾燥・硬化することによりポリイミドフィルム層を形成する方法である。この方法に限らず、良好な品質の積層体を製造するためには銅箔はある程度の厚みが必要であり、薄い銅箔層であることが要求される場合は、一旦中間体の積層体(化学研磨を行う前の積層体をいう)を作り、それをエッチングして目的の積層体を得ることが行われている。例えば、積層体製造における化学研磨による銅箔部の薄肉化において、化学研磨が均一に進み、かつ、化学研磨後の銅箔表面が平滑となる電解銅箔が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。しかしながら、電解銅箔では圧延銅箔ほどの十分な耐折性が得られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−256765号公報
【特許文献2】特開平7−268678号公報
【特許文献3】特開平9−272994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、積層体製造におけるハンドリング性を改善し、しかも30μmピッチ以下の微細加工が可能で、かつ、屈曲性及び耐折性に優れた銅張積層体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定の厚み、及び所定の特性を有する圧延銅箔を使用し、その銅箔にキャスト方によりポリイミド樹脂絶縁層を所定の条件で形成した後、圧延銅箔面を一定条件で化学研磨し、銅箔の厚みを減少させると共に、その処理面の表面粗度Rzを一定範囲とすると、銅張積層体はその製造工程が改善し、プリント基板に使用した際の微細加工が可能で、かつ屈曲性及び耐折性が十分にあることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明の銅張積層体の製造方法は、以下の構成或いは構造を特徴とするものである。
【0010】
(1).銅箔の一方の面に絶縁性樹脂よりなる絶縁層が形成される銅張積層体の製造方法において、銅箔として、10μm以上の厚みを有した圧延銅箔を使用し、該銅箔の一方の面にポリイミド前駆体樹脂溶液を直接塗布した後、100〜400℃で熱処理してポリイミド樹脂絶縁層を形成し、過酸化水素を0.5〜10%及び硫酸を0.5〜15%の範囲濃度(wt%)で含有する液で、得られた積層体の絶縁層と接していない面を化学研磨し、該銅箔の厚みが10〜90%の範囲で除去されるようにすると共に、その表面粗度Rzが2.5μm以下となるようにすることを特徴とする銅張積層体の製造方法。
【0011】
(2).該積層体の絶縁層と接していない面の化学研磨前における圧延銅箔の表面粗度Rzが、1.5μm以下であることを特徴とする上記(1)記載の銅張積層体の製造方法。
(3).ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔が、圧下率90%以上の圧延銅箔であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の銅張積層体の製造方法。
(4).ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔が、引張強度420MPa以上の圧延銅箔であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかの項に記載の銅張積層体の製造方法。
(5).ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔が、ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の弾性率を100%とした場合、360℃、6分間の熱処理後に、60%以下の弾性率を有する圧延銅箔であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかの項に記載の銅張積層体の製造方法。
(6).該積層体が、半導体素子の実装に使用されるチップ・オン・フィルム用積層体であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかの項に記載の銅張積層体の製造方法。
上記手段によれば、以下のような効果が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屈曲性に優れる圧延銅箔をベースに、導体と絶縁体の間の接着力が高く、耐エレクトロマイグレーション性に優れ、30μmピッチ以下の微細加工が可能で、かつ、屈曲性及び耐折性に優れる銅張積層体が得られる。これによりフレキシブルプリント基板用のCOF用途として有効に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明にかかる銅張積層体は、銅箔の一方の面にポリイミド樹脂よりなる絶縁層が形成された構造を有する。ここで、本発明で使用する銅箔は純銅又は銅合金のことであり、これらは圧延銅箔である。
【0014】
圧延銅箔は一般的に、高屈曲性を有する銅箔として知られており、その銅箔厚みが10μm未満になると、銅箔自体が柔らかくなり、積層体製造時のハンドリングで変形しやすくなる。また銅箔の圧延が困難となり、積層体製造に適用できる形状が得られにくくなる傾向にあり、例えば、銅箔の厚みの不均一、端部のたるみ、フレアの発生が生じる。更に、銅箔の厚みの不均一さは化学研磨の精度に悪影響を与える原因ともなり、回路加工性にも悪影響を与える。従って、本発明にかかる積層体製造時の銅箔の厚みは、10μm以上であることが必要である。好ましくは11〜35μmがよく、更に好ましくは12〜18μmがよい。銅箔の厚みが35μmより大きくなると、後述する化学研磨による薄肉化に時間がかかる。
【0015】
銅箔の絶縁層を設ける側の表面粗度Rzは3.0μm以下、好ましくは2.0μm以下、更に好ましくは1.2μm以下であることがよい。この表面粗度Rzが3.0μmより大きくなると、この上に絶縁層を形成し導体を除去し微細加工を行う際に、エッチング残りをおこし、回路の直線性が損なわれる。なお、表面粗度Rzは「10点平均粗さ」を表し、JIS B 0601に準じて測定される。以下、特にことわりなき場合、表面粗度Rzは同様にして測定されたときの値とする。
【0016】
積層体を形成する絶縁層については、ポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布した後、乾燥・硬化することにより形成する。ポリイミド前駆体樹脂溶液は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して製造することができる。
【0017】
用いられるジアミンとしては、例えば、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノ−2´−メトキシベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2´−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2´−ジメチル−4,4´−ジアミノビフェニル、3,3´−ジヒドロキシ−4,4´−ジアミノビフェニル、4,4´-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。また、酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−オキシジフタル酸無水物等が挙げられる。ジアミン、酸無水物はそれぞれ、その1種のみを使用してもよく2種以上を併用して使用することも出来る。
【0018】
本発明にかかるポリイミド樹脂前駆体の製造で用いられる有機溶媒は特に限定されるものではないが、樹脂成分を均一に溶解可能なものならば、1種もしくは2種以上併用した混合溶媒であっても差し支えない。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、n−メチルピロリジノン、2−ブタノン、ジグライム、キシレン等がある。
【0019】
上記ポリイミド前駆体樹脂溶液については、前駆体状態で銅箔層上に直接塗布して形成することが好ましく、重合された樹脂粘度を500cps〜35,000cpsの範囲とすることが好ましい。ポリイミド樹脂層は、単層のみから形成されるものでも、複数層からなるものでも良い。ポリイミド樹脂層を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリイミド前駆体樹脂層の上に他のポリイミド前駆体樹脂溶液を順次塗布、乾燥して形成することができるし、多層を同時に塗布することもできる。ポリイミド樹脂層が3層以上からなる場合、同一の構成のポリイミド前駆体樹脂を2層以上使用しても良い。
【0020】
ポリイミド前駆体樹脂液が銅箔層上に塗布されたのち、熱処理される。この熱処理は100〜150℃を2〜4分大気中で乾燥し、その後、真空加熱を9時間程行うのがよい。ここでの加熱温度は、150〜400℃であり、好ましくは200〜370℃であり、更に好ましくは280〜360℃である。上記温度に加熱することにより、ポリイミド前駆体樹脂はポリイミド樹脂となり、中間体の積層体が得られる。
【0021】
上記の熱処理によって得られる中間体の積層体は、銅箔層と絶縁層とからなる。この銅箔層を形成する銅箔は、上記のポリイミド前駆体樹脂液の熱処理工程の間に焼鈍又は再焼鈍され、積層前に比して柔軟になる。
【0022】
上記で製造した中間体の積層体については、絶縁層と直接接していない銅箔面を、過酸化水素0.5〜10%(wt%)及び硫酸0.5〜15%(wt%)の範囲にあるエッチング液で化学研磨することによって、銅箔厚みの10〜90%を除去して本発明にかかる銅張積層体とする。そして、最終的に得られる銅張積層体の銅箔の厚さは3〜18μm、好ましくは5〜12μmとすることがよい。銅箔の厚さが18μmよりも大きくなると、耐屈曲性、耐折性が低くなるばかりでなく、回路での微細加工が困難となる。銅箔の厚さが3μm未満になると、銅箔の機械的強度の低下による断線や、電流容量の減少を生じる傾向にある。
【0023】
化学研磨後の銅箔の表面粗度Rzは2.5μm以下である。好ましくは1.5μm以下であり、更に好ましくは1.0μm以下である。銅箔の表面粗度が2.5μmよりも大きくなると、回路での微細加工が困難となる。
【0024】
また、本発明にかかる積層体の絶縁層と接していない面の化学研磨前における圧延銅箔の表面粗度Rzは1.5μm以下が好ましい。より好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.8μm以下であることがよい。この表面粗度Rzが1.5μmより大きくなると、上記の化学研磨による表面粗度を制御しにくい。
【0025】
本発明にかかるポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔は、圧下率90%以上の圧延銅箔であることが好ましい。圧下率を90%以上とすることで、銅結晶組織が十分に微細化され、均質となるため、必要な機械的強度が得られるようになる。より好ましくは90〜95%がよい。圧下率が90%未満であると、必要な機械的強度が得られにくく、その後の焼鈍工程の焼鈍時間を長くする必要がある。なお、圧下率は、圧延前の銅箔厚さ(Lo)と圧延後の銅箔厚さ(L)によって、圧下率(%)=L/Lo×100の式で算出されるものである。
【0026】
本発明で使用する圧延銅箔は、420MPa以上の引張強度を有することが好ましい。より好ましくは450MPa以上がよく、更に好ましくは480MPa以上がよい。銅箔の引張強度が420MPaに満たないと、十分な強度が得られず、積層体製造時のしわや破断の問題が発生しやすい。
【0027】
銅箔の屈曲性は焼鈍を行うことにより、圧延上がりよりも著しく向上する。本発明にかかる積層体の製造方法では、ポリイミド前駆体樹脂液を銅箔層上に塗布した後の熱処理工程を利用し、銅箔の焼鈍又は再焼鈍を行う。従って、ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔は、ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の弾性率を100%とした場合、360℃、6分間の熱処理後に、60%以下の弾性率を有する圧延銅箔であることがよい。この弾性率が60%を超えた弾性率になると、ポリイミド前駆体樹脂液の塗布工程でのハンドリングで変形しやすくなる。
【0028】
尚、本発明の銅張積層体の製造方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例における各種物性の測定は以下の方法による。
【0030】
[化学研磨後の銅箔厚みの測定]
本発明にかかる積層体において、ダイヤルゲージ(Mitutoyo製)を用いて、幅方向に10mm間隔で30点厚みを測定した。その後銅部分をエッチング(薄肉化)し、ポリイミド樹脂層の厚みを同様に測定した。積層体の厚みとポリイミド樹脂層の厚みの差より化学研磨後の銅箔の厚みを算出した。
【0031】
[銅箔の引張強度の測定]
幅12.7mm×長さ254mmの短冊形状試験片を切り出し、引張試験機(東洋精機株式会社製、ストログラフ−R1)を用いて、クロスヘッドスピード50mm/min、チャック間距離50.8mmで測定を行い、引張試験中の変位(伸び)を求め、SS曲線から0.2%耐力を算出した。
【0032】
[銅箔の表面粗度の測定]
超深度形状測定顕微鏡(KEYENCE製、VK−8500)を用いて、2000倍で銅箔面の長さ方向に140μm測定した。
【0033】
[銅箔の弾性率の測定]
(株)東洋精機製作所製の万能試験機(STROGRAPH-R1)を使用し、23℃、50%RH環境下で測定した。
【0034】
積層体の作成にあたり、下記2種類の銅箔を準備した。
1).銅箔1:圧延銅箔、厚さ12μm、絶縁層側Rz1.0μm、レジスト面側Rz0.8μm、圧下率95%、引張強度510MPa、360℃、6分間の熱処理後の弾性率49%(積層体形成前の弾性率100%に対して)
2).銅箔1b:圧延銅箔、厚さ18μm、絶縁層側Rz1.0μm、レジスト面側Rz0.8μm、圧下率95%、引張強度510MPa、360℃、6分間の熱処理後の弾性率65%(積層体形成前の弾性率100%に対して)
3).銅箔2:電解銅箔、厚さ15μm、絶縁層側Rz0.8μm、レジスト面側Rz1.7μm
4).銅箔3:電解銅箔、厚さ12μm、絶縁層側Rz0.6μm、レジスト面側Rz0.8μm
5).銅箔4:圧延銅箔、厚さ18μm、絶縁層側Rz1.8μm、レジスト面側Rz1.8μm、圧下率90%、引張強度440MPa、360℃、6分間の熱処理後の弾性率65%(積層体形成前の弾性率100%に対して)
【0035】
積層体の化学研磨剤として、下記のエッチング液を用意した。
1).エッチング液:過酸化水素/硫酸系化学研磨液(硫酸濃度20g/L、過酸化水素濃度80g/L)
【0036】
(合成例1)
熱電対、攪拌機、窒素導入可能な反応容器に、n−メチルピロリジノンを入れる。この反応容器を氷水に浸けた後、反応容器に無水ピロメリット酸(PMDA)を投入し、その後、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、(DAPE)と2’−メトキシ4,4’−ジアミノベンズアニリド(MABA)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%で、各ジアミンのモル比率は、MABA:DAPE=60:40となり、酸無水物とジアミンのモル比が0.98:1.0となるよう投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が、室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は、15,000cpsであった。
【0037】
(合成例2)
n−メチルピロリジノンを入れた反応容器を氷水に浸けた後、反応容器にPMDAと3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を投入し、その後、DAPEを投入した。モノマーの投入総量が15wt%で、各酸無水物のモル比率は、BTDA:PMDA=70:30となり、酸無水物とジアミンのモル比が1.03:1.0となるよう投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が、室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は、3,200cpsであった。
【0038】
(合成例3)
n−メチルピロリジノンを入れた反応容器を氷水に浸けた後、反応容器に3,3’4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、PMDAを投入し、その後、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)を投入した。モノマーの投入総量が15wt%で、各酸無水物のモル比率は、DSDA:PMDA、90:10となり、酸無水物とジアミンのモル比が1.03:1.0となるよう投入した。その後、更に攪拌を続け、反応容器内の温度が、室温から±5℃の範囲となった時に反応容器を氷水から外した。室温のまま3時間攪拌を続け、得られたポリアミック酸の溶液粘度は、3,200cpsであった。
【0039】
(実施例1)
銅箔として、銅箔1を使用した。この圧延銅箔上に合成例1、2及び3のポリアミック酸溶液をそれぞれ質量比3:14:3で塗布、乾燥を繰り返し、銅箔層上にポリイミド前駆体樹脂層が形成された積層体を得た。この積層体を340℃で、8時間かけて熱処理し、ポリイミド樹脂の厚みが40μmである片面銅箔の中間体の積層体を得た。この積層体を上記のエッチング液で、化学研磨して銅箔導体厚を均一に8μmになるようにして、積層体を得た。このようにして得られた積層体において、絶縁層と接していない導体層の表面粗度Rzは0.9μmであった。
【0040】
上記で得られた積層体に配線パターンを形成してCOFフィルムキャリアテープとした。この時、インナーリード部の回路パターンを40μmピッチで作製した。
また、上記で得られた積層体に、所定の回路加工を行い、MIT耐折性試験を行った。
【0041】
銅箔として、銅箔1bを使用し、実施例1と同様に中間体の積層体を作製した。この積層体をエッチング液で8μmまで化学研磨を実施した結果、レジスト面側Rz1.8μmの積層体を得た。実施例1と同様の回路加工、MIT試験を行った。
【0042】
(比較例1)
銅箔として、銅箔2を使用し、実施例1と同様に中間体の積層体を作製した。この積層体をエッチング液で8μmまで化学研磨を実施した結果、レジスト面側Rz0.8μmの積層体を得た。実施例1と同様の回路加工、MIT試験を行った。
【0043】
(比較例2)
銅箔として、銅箔3を使用し、実施例1と同様に中間体の積層体を作製した。この積層体をエッチング液で8μmまで化学研磨を実施した結果、レジスト面側Rz0.8μmの積層体を得た。実施例1と同様の回路加工、MIT試験を行った。
【0044】
(比較例3)
銅箔として、銅箔4を使用し、実施例1と同様に中間体の積層体を作製した。この積層体をエッチング液で8μmまで化学研磨を実施した結果、レジスト面側Rz3.2μmの積層体を得た。実施例1と同様の回路加工、MIT試験を行った。
【0045】
以上の結果をまとめて表1に示す。表1において、MIT耐折性は、R=0.8mm、1/2(mil)カバー材付きでの試験条件での結果である。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果から、圧延銅箔の銅箔導体の化学研磨による薄肉化により、屈曲性および耐折性がより向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の銅張積層体の製造方法は、銅箔のポリアミド樹脂絶縁層との積層化のハンドリング性も良く、また製造された銅張積層体は微細加工が可能であり、極めてフレキシブルな産業上の利用可能性の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の一方の面に絶縁性樹脂よりなる絶縁層が形成される銅張積層体の製造方法において、銅箔として、10μm以上の厚みを有した圧延銅箔を使用し、該銅箔の一方の面にポリイミド前駆体樹脂溶液を直接塗布した後、100〜400℃で熱処理してポリイミド樹脂絶縁層を形成し、過酸化水素を0.5〜10%及び硫酸を0.5〜15%の範囲濃度(wt%)で含有する液で、得られた積層体の絶縁層と接していない面を化学研磨し、該銅箔の厚みが10〜90%の範囲で除去されるようにすると共に、その表面粗度Rzが2.5μm以下となるようにすることを特徴とする銅張積層体の製造方法。
【請求項2】
該積層体の絶縁層と接していない面の化学研磨前における圧延銅箔の表面粗度Rzが、1.5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の銅張積層体の製造方法。
【請求項3】
ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔が、圧下率90%以上の圧延銅箔であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅張積層体の製造方法。
【請求項4】
ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔が、引張強度420MPa以上の圧延銅箔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の銅張積層体の製造方法。
【請求項5】
ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の圧延銅箔が、ポリイミド樹脂絶縁層の形成前の弾性率を100%とした場合、360℃、6分間の熱処理後に、60%以下の弾性率を有する圧延銅箔であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の銅張積層体の製造方法。
【請求項6】
該積層体が、半導体素子の実装に使用されるチップ・オン・フィルム用積層体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の銅張積層体の製造方法。

【公開番号】特開2007−261174(P2007−261174A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91294(P2006−91294)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】