説明

鋼板締結具及び鋼板接合方法

【課題】施工の簡素化及び施工費の低減化を図り、施工の信頼性を高める。
【解決手段】本発明に係る鋼板締結具20は、互いに隣接する鋼板21の接合部22に下面側からそれぞれ挿通されるボルト23と、各ボルト23に鋼板21の上面側からそれぞれ螺挿される仮止めナット24と、各仮止めナット24が遊嵌可能な逃げ孔33を有し、隣接する鋼板21の接合部22の上面に渡設される添接板25と、添接板23の逃げ孔33を覆うように各ボルト23にそれぞれ挿通されて添接板25上に載置される座金26と、各座金26の上方から各ボルト23にそれぞれ螺嵌されるナット27とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の架設において互いに隣接する鋼板を接合するために使用される鋼板締結具、及び該鋼板締結具を使用して互いに隣接する鋼板を接合するための鋼板接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、橋梁等の架設において、鋼とコンクリートの合成床版構造が採用される機会が増えており、この合成床版構造の施工では、互いに隣接する鋼板同士を接合する作業を上側一方向から行う必要がある。
【0003】
このように互いに隣接する鋼板同士を接合するために使用される従来の鋼板締結具及びその鋼板接合方法としては、例えば、節付き両ネジボルトを使用するものや(例えば、特許文献1参照)、仮止めリングを使用するものなどが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このうち、節付き両ネジボルトを使用するものは、図2に示すように、隣接する鋼板1の接合部に設けたボルト孔を通過しない大きさの節部2を有する両ネジボルト3を鋼板1に固定した後、上方から接合部にフィラープレート4を載置すると共に添接板5を配置し、両ネジボルト3にナット6を螺嵌し、鋼板1と添接板5とを固定するものである。
【0005】
一方、仮止めリングを使用するものは、図3に示すように、鋼板11の接合部に予め頭部が下向きになるようにボルト12を挿通すると共に、ボルト12のネジ部の両側面に仮止めリング13を装着してボルト12が抜け落ちないようにしておく。そして、鋼板11の接合部に添接板14を配置し、ボルト12にナット15を仮止めした後、ワイヤー16を引いて仮止めリング13を引き外し、最後にナット15を本締めするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−138392号公報
【特許文献2】特開2001−279854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の節付き両ネジボルトを使用するものは、フィラープレート4が両ネジボルト3の節部2に掛かって浮いてしまうおそれがあった。
【0008】
また、両ネジボルト3が非常に高価であり、施工費の低減化が図り難いといった問題や、鋼板1の下面側に露出する両ネジボルト3の突起部分が大きく、景観上好ましくないといった問題もあった。
【0009】
一方、従来の仮止めリングを使用するものは、ワイヤー16を引いてリング13を取り外す必要があるため、工数が増加し、作業性の向上を図り難いといった問題や、ワイヤー16を引く際にワイヤー16がリング13から切断される事故が発生するおそれがあり、この場合には修復作業が難しいといった問題があった。
【0010】
また、ボルト12の軸上に荷重が作用した場合にボルト12が抜け落ちるおそれもあり、施工の信頼性を高めることが難しいといった問題もあった。
【0011】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、施工の簡素化及び施工費の低減化を図ることができ、施工の信頼性を高めることのできる鋼板締結具及び鋼板接合方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明は、互いに隣接する鋼板を接合するために使用される鋼板締結具であって、前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれ挿通されるボルトと、前記各ボルトに該鋼板の上面側からそれぞれ螺挿される仮止めナットと、該各仮止めナットが遊嵌可能な逃げ孔を有して前記隣接する鋼板の接合部の上面に渡設される添接板と、該添接板の逃げ孔を覆うように前記各ボルトにそれぞれ挿通されて前記添接板上に載置される座金と、該各座金の上方から前記各ボルトにそれぞれ螺嵌されるナットとを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、互いに隣接する鋼板を接合するために使用される鋼板締結具であって、前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれ挿通されるボルトと、前記各ボルトに該鋼板の上面側からそれぞれ螺挿される仮止めナットと、該各仮止めナットが遊嵌可能な逃げ孔を有して前記隣接する鋼板の接合部の上面に渡設される添接板と、該添接板の逃げ孔を覆うように前記各ボルトにそれぞれ螺嵌されるナットとを備えていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る鋼板締結具において、前記仮止めナットの外周側面は下方に向かって拡がるようにテーパ状に形成され、前記外周側面には工具の先端が掛止可能な凹部が形成されているのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記した鋼板締結具を使用して互いに隣接する鋼板を接合するための鋼板接合方法であって、前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれボルトを挿通する工程と、前記鋼板の上面側から前記各ボルトにそれぞれ仮止めナットを螺挿する工程と、前記各仮止めナットに逃げ孔を遊嵌し、前記隣接する鋼板の接合部の上面に添接板を渡設する工程と、前記添接板の逃げ孔を覆うように座金を前記各ボルトにそれぞれ挿通すると共に前記添接板上に載置する工程と、前記各座金の上方から前記各ボルトにそれぞれナットを螺嵌する工程とを備えていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明は、上記した鋼板締結具を使用して互いに隣接する鋼板を接合するための鋼板接合方法であって、前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれボルトを挿通する工程と、前記鋼板の上面側から前記各ボルトにそれぞれ仮止めナットを螺挿する工程と、前記各仮止めナットに逃げ孔を遊嵌し、前記隣接する鋼板の接合部の上面に添接板を渡設する工程と、前記添接板の逃げ孔を覆うようにナットを前記各ボルトにそれぞれ螺嵌する工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工の簡素化及び施工費の低減化を図ることができ、施工の信頼性を高めることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋼板締結具を示す断面図である。
【図2】従来例を示す断面図である。
【図3】別の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係る鋼板締結具を示す断面図であり、本実施の形態に係る鋼板締結具20は、互いに隣接する鋼板21,21を接合するために使用され、隣接する鋼板21,21の接合部22に下面側からそれぞれ挿通されるボルト23,23と、各ボルト23,23に鋼板21,21の上面側からそれぞれ螺挿される仮止めナット24,24と、接合部22の上面に渡設される添接板25と、各ボルト23,23にそれぞれ挿通されて添接板25上に載置される座金26,26と、各座金26,26の上方から各ボルト23,23にそれぞれ螺嵌されるナット27,27とを備えて構成されている。
【0021】
鋼板21にはボルト23が挿通可能なように通孔28が穿設されており、この通孔28は、例えば、23mmの内径を有している。
【0022】
ボルト23としては、頭部29が半球形状のトルシア型高力ボルト(TCB)の他、普通ボルトや高力ボルト(HTB)を使用してもよく、ボルト23は、例えば、22mmの外径を有している。また、このボルト23の材質は、鋼に限らず、硬質の合成樹脂等であってもよく、使用の際に要求される強度に応じて使い分けすることができる。
【0023】
仮止めナット24は、外周側面30が下方に向かって拡がるようにテーパ状に形成されて側面視で台形状を成しており、例えば、底面部分31の外径が25mmとなるように形成されている。また、仮止めナット24の外周側面30には、工具の先端が掛止可能なように小径の凹部32が形成されている。
【0024】
添接板25には、仮止めナット24が遊嵌可能な逃げ孔33が穿設されており、この逃げ孔33は、例えば、26.5mmの内径を有している。そして、座金26は、この添接板25の逃げ孔33を十分に覆うことのできる大きさを有している。
【0025】
次に、上記した実施の形態に係る鋼板締結具20を使用して互いに隣接する鋼板21,21を接合する方法について説明する。
【0026】
先ず、互いに隣接する鋼板21,21を架設場所に配置する前に、予め、各鋼板21,21の接合部22に下面側からそれぞれ頭部29を下向きにした状態でボルト23,23を挿通した上で、該各ボルト23,23に対して鋼板21,21の上面側からそれぞれ仮止めナット24,24を螺挿しておく。これにより、ボルト23,23が各鋼板21,21の接合部22から落下するのを防止することができる。なお、この時、仮止めナット24の外周側面30に凹部32が形成されているため、この凹部32に工具の先端を掛止して仮止めナット24を回転させることによりボルト23に対する仮止めナット24の螺挿作業を容易且つ円滑に行うことができる。
【0027】
その後、互いに隣接する鋼板21,21を架設場所に配置した上で、各仮止めナット24,24に逃げ孔33,33を遊嵌し、鋼板21,21の接合部22の上面に添接板25を渡設する。この時、仮止めナット24の外周側面30が下方に向かって拡がるようにテーパ状に形成されているため、接合部22に対する添接板25の設置作業を円滑且つ容易に行うことができ、添接板25が仮止めナット24に掛かって接合部22から浮いてしまったりすることはない。
【0028】
その後、添接板25の逃げ孔33,33を覆うように座金26,26を各ボルト23,23にそれぞれ挿通し、添接板23上に載置した上で、各座金26,26の上方から各ボルト23,23にそれぞれナット27,27を螺嵌し、締め付ける。
【0029】
このように上記した本発明の実施の形態に係る鋼板締結具20及び鋼板接合方法によれば、架設場所における鋼板21,21の接合作業は、鋼板21,21の上面側からの作業だけで完結することができ、その接合作業中に、ボルト23が抜け落ちたり、添接板25が接合部22から浮き上がったりすることがないため、施工の信頼性を高めることができる。さらに、鋼板21,21の接合作業の工数を削減することができ、作業性を高めることができ、施工費の低減化を図ることも可能となる。さらにまた、鋼板21の下面側に突出するボルト23の頭部29が小さいために、景観の向上を図ることもできる。
【0030】
なお、上記した実施の形態では、ナット27と添接板23との間に座金26を介装しているが、座金26を設置せず、添接板23の逃げ孔33を覆うようにナット27をボルト23に直接螺嵌してもよい。
【符号の説明】
【0031】
20 鋼板締結具
21 鋼板
22 接合部
23 ボルト
24 仮止めナット
25 添接板
26 座金
27 ナット
30 外周側面
32 凹部
33 逃げ孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する鋼板を接合するために使用される鋼板締結具であって、
前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれ挿通されるボルトと、
前記各ボルトに該鋼板の上面側からそれぞれ螺挿される仮止めナットと、
該各仮止めナットが遊嵌可能な逃げ孔を有して前記隣接する鋼板の接合部の上面に渡設される添接板と、
該添接板の逃げ孔を覆うように前記各ボルトにそれぞれ挿通されて前記添接板上に載置される座金と、
該各座金の上方から前記各ボルトにそれぞれ螺嵌されるナットと、
を備えていることを特徴とする鋼板締結具。
【請求項2】
互いに隣接する鋼板を接合するために使用される鋼板締結具であって、
前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれ挿通されるボルトと、
前記各ボルトに該鋼板の上面側からそれぞれ螺挿される仮止めナットと、
該各仮止めナットが遊嵌可能な逃げ孔を有して前記隣接する鋼板の接合部の上面に渡設される添接板と、
該添接板の逃げ孔を覆うように前記各ボルトにそれぞれ螺嵌されるナットと、
を備えていることを特徴とする鋼板締結具。
【請求項3】
前記仮止めナットの外周側面は下方に向かって拡がるようにテーパ状に形成され、前記外周側面には工具の先端が掛止可能な凹部が形成されている請求項1又は2に記載の鋼板締結具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の鋼板締結具を使用して互いに隣接する鋼板を接合するための鋼板接合方法であって、
前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれボルトを挿通する工程と、
前記鋼板の上面側から前記各ボルトにそれぞれ仮止めナットを螺挿する工程と、
前記各仮止めナットに逃げ孔を遊嵌し、前記隣接する鋼板の接合部の上面に添接板を渡設する工程と、
前記添接板の逃げ孔を覆うように座金を前記各ボルトにそれぞれ挿通すると共に前記添接板上に載置する工程と、
前記各座金の上方から前記各ボルトにそれぞれナットを螺嵌する工程と、
を備えていることを特徴とする鋼板接合方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の鋼板締結具を使用して互いに隣接する鋼板を接合するための鋼板接合方法であって、
前記隣接する鋼板の接合部に下面側からそれぞれボルトを挿通する工程と、
前記鋼板の上面側から前記各ボルトにそれぞれ仮止めナットを螺挿する工程と、
前記各仮止めナットに逃げ孔を遊嵌し、前記隣接する鋼板の接合部の上面に添接板を渡設する工程と、
前記添接板の逃げ孔を覆うようにナットを前記各ボルトにそれぞれ螺嵌する工程と、
を備えていることを特徴とする鋼板接合方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−21711(P2011−21711A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168700(P2009−168700)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(509204116)株式会社ブリッジエンジ (1)
【Fターム(参考)】