説明

鋼板表面の酸化膜厚計測方法および装置

【課題】鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚を、鋼板から遠く離れた加熱炉外からオンラインで連続的に精度良く測定することができる鋼板表面の酸化膜厚計測方法及び装置を提案することを課題とする。
【解決手段】鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、2つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出し、赤外光の間欠照射によって検出される検出値のうち赤外光の照射時の検出値から遮断される時の検出値を減じることにより反射光エネルギーを算出し、算出された反射光エネルギーについて2つの異なる赤外波長帯域間の比を前記加熱炉の入側及び出側でそれぞれ演算し、それらの比を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚をオンラインで連続的に測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法及び装置であって、特に、溶融亜鉛めっき鋼板製造工程の焼鈍工程である直火加熱炉出側に適用して好適な鋼板表面の酸化膜厚計測方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板は、優れた耐食性、加工性、表面美観などの特性を有し、例えば自動車用鋼板として大量に使用されている。自動車の外板、内板などに使用される自動車用溶融亜鉛めっき鋼板に対しては、衝突安全特性の向上や軽量化などの目的から同一の板厚でも高い強度が要求されている。このような要求を満足させるため、近年では高張力鋼板を原板に使用した高張力溶融亜鉛めっき鋼板(以下、ハイテンGA鋼板という)が自動車用部材の一部に使用されてきており、その使用比率は高まりつつある。
【0003】
また、使用部材によって様々なハイテンGA鋼板、すなわち、強度値の異なる鋼板が選択されている。ハイテンGA鋼板の製造においては、強度を向上させるためにSi、Mn等の易酸化性元素が鋼板中に添加されている。これらの易酸化性元素は、溶融亜鉛めっき鋼板製造工程の中間工程である焼鈍中に鋼板表面で選択的に酸化され、焼鈍の後工程であるめっき工程で鋼板表面にめっきを施す際、めっき特性に悪影響を与えることが知られている。すなわち、Si、Mn等の成分が酸化して、鋼板表面に生成される鉄系酸化物が不めっき等の原因となることがある。
【0004】
一方、焼鈍を行う直火加熱炉は、設備のコンパクト性、鋼板の通板性向上、熱応答特性等に優れ、経済的なメリットが大きく、また良好なめっき性を確保できる、Si、Mnの添加限界を高められる利点もある。このために、溶融亜鉛めっき鋼板製造ラインに設置された直火加熱炉は、鋼板の成分設計の自由度を広げ、より優れた材質特性を有する溶融亜鉛めっき鋼板の製造を可能にする特徴がある。直火加熱炉は、複数のゾーンに分かれ、負荷に応じた燃焼パターンが設定可能である。分割されたゾーンでは酸化促進加熱、還元加熱が連続して行われるが負荷に応じてゾーン単位で燃焼時間が制御され、加熱炉出側では鋼板温度として、数百℃以上までの加熱が達成される。短時間で急速に加熱された鋼板は、次工程の輻射管加熱炉にて焼鈍され、その後にめっき工程に導かれる。
【0005】
前述したようにハイテンGA鋼板の製造では、易酸化性元素の酸化をいかに防ぐかが重要なポイントの1つになるが、590MPa級以上のハイテンGA材では、Si、Mnの添加量も多くなるので、易酸化性元素の酸化防止はめっき性向上のためには必須である。この課題に対処するためにも直火加熱は有効な手段であることがわかってきている。すなわち、直火加熱炉後の輻射加熱炉ゾーンで、鋼板表面に生成される鉄系酸化物を純鉄層に変化させることでSi、Mnの表面酸化を防止し、めっき特性を向上させることができるというものである。
【0006】
従って、最終的なハイテンGA材のめっき特性の向上のためには、直火加熱炉後に生成されている酸化物層の特性把握が重要になる。また、ハイテンGA材に添加されている易酸化性元素の量は、強度など材質特性に応じて異なるので、ハイテンGA材毎に、生成される酸化物層の厚みも異なる。
【0007】
従来から行われてきた解析方法としては、めっき特性と直火加熱条件との関係を、Si、Mn添加量毎に詳細に調査して加熱条件の変化量である空気比やバーナー火炎強度、燃焼ガス組成などを適正化するものであった。しかし、この方法では実際の溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程においてプロセス量の変動が激しいこと、バーナー詰りや火炎異常などの発生、ガス組成変動などの影響により、実際に直火加熱炉出側で最適な酸化物層形成がなされていることを確認することが困難であった。
【0008】
このため、酸化物層の膜厚を直接測定することが有用とされ、これまでにも多くの、酸化物膜厚の計測方法が提案されてきている。
【0009】
通常、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚をオンラインで連続的に測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法としては、蛍光X線を用いる方法や偏光解析法(エリプソメトリー法)、反射・吸収法などが応用されている。しかしながら、これらの方法を直火加熱炉の出側に適用する場合には、鋼板が数百℃以上に加熱されているため、鋼板自体から熱放射があることから温度変化が誤差要因になること、さらに設置上の熱対策が複雑になること、設置コストが高くなることなどの経済的な観点からも適用が難しいという問題があった。
【0010】
そこで、新たな方式として、カラーセンサを応用した方法(特許文献1)が開示されている。特許文献1のカラーセンサを応用した鋼板表面の酸化膜厚計測方法では、酸化膜厚値と鋼板の明度や色相の値が関係することから、それらの関係を事前に求めておいて、酸化膜厚を推定するものである。
【0011】
また、別の方法として、異なる測定条件で測定される2つの分光放射輝度間の関係と測定対象の放射率変化との関係式を予め求めておいて、放射率を推定した上で酸化膜厚を測定する方法(特許文献2)が開示されている。この場合、異なる測定条件としては、2つの波長での測定であるケース、2つの異なる測定角度での測定であるケースや2つの偏光成分での測定であるケースなどであり、放射率変動条件下で温度を測定するTrace温度計の応用である。
【0012】
また、別の方法として、鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、赤外光を照射したときと赤外光が遮断されたときにそれぞれ受光した複数の波長の赤外光の信号により酸化膜厚を測定する方法(特許文献3)が開示されている。
【0013】
さらに、別の方法として、熱延鋼板の酸化膜厚測定装置ではあるが、前記特許文献3と同様に、鋼板表面に赤外光を間欠的に照射し、8μm以上の特定の一波長の反射光を15度以上の立体角で測定し、鋼板の表面粗さの影響を受けずに酸化膜厚を測定する装置(特許文献4)が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】The scattering of electromagnetic waves from rough surfaces、Beckmann、Pergamon Press, 1963
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平4−43905号公報
【特許文献2】特開平7−18341号公報
【特許文献3】特開2007−10464号公報
【特許文献4】特開平10−206125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1のカラーセンサを応用した鋼板表面の酸化膜厚計測方法、および特許文献2の放射率補正式温度計を応用した鋼板表面の酸化膜厚計測方法を、直火加熱炉出側での鋼板表面の酸化膜厚計測に適用する場合には、鉄系酸化物の一部が還元され、表層部に還元Feが点在するので、酸化膜厚を正確に測定できないという問題があることが分った。すなわち、前述したように直火加熱炉の後段ゾーンでは還元雰囲気での加熱がなされるために、前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の一部が還元され、表層に還元Feが点在して残ってしまうのである。
【0017】
また、特許文献3の酸化膜計測装置では、還元Feの課題は解決されているが、水冷式遮光管を炉内に設置し、鋼板表面に近接させて用いるため、エンジニアリングが難しいという課題とともに、鋼板表面から離し炉外から測定すると、測定精度が低下するという課題もあった。
【0018】
さらに、特許文献4の酸化膜厚さ測定装置では、反射光を受光する立体角を大きく取ることにより、鋼板表面粗さの影響を小さくする光学系が提案されているものの、やはり装置を鋼板表面に近接して設置しなければならないという課題があった。
【0019】
本発明は、鋼板製造工程の焼鈍工程である直火加熱炉に適用して、鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚を、鋼板から遠く離れた加熱炉外からオンラインで連続的に精度良く測定することができる鋼板表面の酸化膜厚計測方法及び装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題は、以下の手段により解決することができる。
【0021】
[1] 加熱炉を備えた連続焼鈍工程で、鋼板の表面に生成される酸化物の膜厚を測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法であって、
鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、前記赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、2つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出し、
前記赤外光の間欠照射によって検出される検出値のうち赤外光の照射時の検出値から遮断される時の検出値を減じることにより反射光エネルギーを算出し、算出された反射光エネルギーについて2つの異なる赤外波長帯域間の比を前記加熱炉の入側及び出側でそれぞれ演算し、それらの比を演算することにより膜厚を求めることを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測方法。
【0022】
[2] 加熱炉を備えた連続焼鈍ラインに設置する鋼板表面の酸化膜厚計測装置であって、
鋼板の表面に向けて赤外光を照射するための赤外光源と、
該赤外光源からの赤外光を間欠的に照射するための光遮断装置と、
前記赤外光が鋼板表面に照射される赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射された赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーとの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーのみを、2つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出する光検出装置と、
前記2つの異なる赤外波長帯域それぞれについて、赤外光の照射時の検出値から赤外光の照射が遮断される時の検出値を減じて反射エネルギーを算出し、更に、前記2つの異なる波長帯域間の比を演算する演算処理装置と、を具備し、
前記加熱炉の入側及び出側の両方に設置され、前記入側及び出側の演算装置からの出力の比から膜厚を求めることを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、鋼板製造工程の焼鈍工程である直火加熱炉出側で、鋼板から遠く離れた加熱炉外からでも、鋼板表面粗さなどの影響を受けずに、鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚をオンラインで連続的に精度良く測定することができる。また、従来の直火加熱条件の管理・制御に代わり、本発明を用いることにより、直火加熱炉出側の鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚の情報に基づき、鋼板の放射率を推定することにより直火加熱炉出側の鋼板温度も同時に正確に推定することができるようになるから、より正確な直火燃焼制御も実現できる。
【0024】
その結果、連続溶融亜鉛めっき鋼板製造工程に適用することにより、溶融亜鉛めっき鋼板の成分、連続溶融亜鉛めっきラインを走行する鋼板速度によらず、正確な直火燃焼制御を実現でき、鋼板速度を抑制する場合も少なくなり、生産性の向上とめっき特性の向上を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る鋼板表面の酸化膜厚計測装置の設置例を示す図である。
【図2】鋼板表面に生成された酸化膜の膜厚が異なる鋼板での反射スペクトル特性を表す図である。
【図3】反射・放射光強度検出装置の装置構成例を示す図である。
【図4】酸化膜厚計測装置および測定窓部の構成例を示す図である。
【図5】酸化膜厚計測装置を鋼板に近接して設置した場合の、酸化膜厚と測定値との関係を示す特性図である。
【図6】酸化膜厚計測装置を鋼板から遠く離して設置した場合の、酸化膜厚と測定値との関係を示す特性図である。
【図7】本発明による場合の、酸化膜厚と測定値との関係を示す特性図である。
【図8】gパラメータと反射の関係を示す図である。
【図9】特許文献3にて開示された酸化膜厚計測装置を鋼板から遠く離れた位置に設置し、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を測定する状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明を説明する前に、特許文献3にて開示された酸化膜厚計測装置を、水冷式遮光管なしで、鋼板から遠く離れた位置から、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を測定する場合の実施の形態について説明を行う。
【0027】
図9は、特許文献3にて開示された酸化膜厚計測装置を鋼板から遠く離れた位置に設置し、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を測定する状況を示す図である。
【0028】
図中、1は走行鋼板、2は直火加熱炉、4は酸化膜厚計測装置、5はロール、および6は測定窓部をそれぞれ表す。
【0029】
直火加熱炉2は、その内部が耐火物などの断熱材で覆われており、複数のゾーンに配置された直火バーナーにより走行する鋼板1を連続的に加熱する。空気比やガス組成、バーナー火炎条件を変えた複数のゾーンがラインに沿って直列に配置されている。このような直火加熱炉2によって、走行鋼板1が所定の燃焼パターンに従って加熱される。酸化膜厚計測装置4は、走行鋼板1の表面の酸化膜厚を測定窓部6を介して計測する。
【0030】
また、パスライン変動の影響を避けるため、測定位置は炉内ロール5の近くとしている。既設のロールがない場合には、サポートロールを新設してもよい。また、図9では鋼板が垂直となっているパスにて測定する説明になっているが、水平パスでも構わない。
【0031】
図4は、酸化膜厚計測装置および測定窓部の構成例を示す図である。図中、1は走行鋼板、2は直火加熱炉、3は反射・放射光強度検出装置、4は酸化膜厚計測装置、6は測定窓部、33は増幅処理装置、41は赤外光源、42は回転チョッパー、43はハーフミラー、45は回転タイミング検出装置、61はNパージ吹込部、62は赤外透過窓ガラス、および63は断熱材をそれぞれ表す。
【0032】
酸化膜厚計測装置4は直火加熱炉2の炉外に配置され、直火加熱炉2の断熱材63を貫くように炉体に設置された測定窓部6を介して測定を行う。測定窓部6は、例えばBaFなどの赤外光を透過する赤外透過窓ガラス62により密閉され、窓ガラスが汚れないよう、Nパージ吹込部61からNパージなどを行っている。なお、反射・放射光強度検出装置3の受光窓の中心と、測定窓部6の中心とを結ぶ直線が走行鋼板1の表面と直交するように設置されている。
【0033】
回転チョッパー42により、赤外光源41からの赤外光を2つの経路に分岐するハーフミラー43を介して間欠的に走行鋼板1の表面に照射する。このため、回転タイミング検出装置45は回転チョッパー42の回転タイミングを検出している。
【0034】
図3は、反射・放射光強度検出装置の装置構成例を示す図である。図中、3は反射・放射光強度検出装置、21は集光レンズ系、22〜24はハーフミラー、25〜28は分光素子、29〜32は光検出素子、33は増幅処理装置、34は演算処理装置、35は出力装置をそれぞれ表す。
【0035】
反射・放射光強度検出装置3は、集光レンズ系21を有し、赤外光の照射時には、走行鋼板1の鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと、赤外光源41から照射された赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーとの合計されたエネルギーを、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32を含む反射・放射光強度検出装置3(光検出装置ともいう)で測定するように構成されている。一方、赤外光の照射が遮断した時には、走行鋼板1の鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーのみを、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32を含む光検出装置で測定するように構成されている。
【0036】
増幅処理装置33は、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32を含む反射・放射光強度検出装置3からの信号を電気的に増幅する。そして、増幅処理装置33で増幅された信号は演算処理装置34に送られる。演算処理装置34では、後述する所定の演算処理を行うことにより、走行鋼板1の表面に形成された膜厚や走行鋼板1の温度を求め、出力装置35に出力するように構成されている。
【0037】
次いで反射・放射光強度検出装置を具備した酸化膜厚計測装置により、走行鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を連続的に測定する方法につき、その経緯を含めて説明する。図2は、鋼板表面に生成された酸化膜の膜厚が異なる鋼板での反射スペクトル特性を表す図である。
【0038】
直火加熱炉2の加熱条件(例えば空気比や燃焼温度・時間など)を変化させて、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を5段階に変えた鋼板サンプルを作成し、膜厚の異なる鋼板サンプルの赤外反射スペクトルを、鉄系酸化物が形成されていない下地鋼板に対する相対反射率をフーリエ分光光度計(FTIR)にて測定した結果を示している。
【0039】
鋼板上の酸化物の膜厚の実測としては、標準サンプルの化学分析結果とグロー放電分析装置(GDS)による分析結果との対比から検量線を作成しておき、任意の鋼板サンプルの膜厚値をGDS分析により破壊測定した結果を用いた。この鋼板は、Si含有量が0.25%である。膜厚の単位としては、化学分析で得られるg/m2であり、単位面積当たりに換算した鉄系酸化物、例えばFe2O3、Fe3O4、FeOなどの総量(重量換算)である。グロー放電分析装置(GDS)による分析で測定した酸化物の膜厚は、図2中、(1)のものが最も鉄系酸化物の膜厚が厚く、次いで膜厚が(2)、(3)、(4)の順に薄くなり、(5)のものが最も鉄系酸化物の膜厚が薄い。
【0040】
図2に示す結果から、酸化膜厚が増加するのに応じて干渉現象が起こり、反射率が極大及び極小となる波長が、長波長側にシフトする傾向が見られる。この結果からある特定の赤外波長を選択すると、酸化膜厚と反射率とは一定の関係が得られた。従って、反射率を測定することにより、鋼板上の酸化膜厚が推定可能性があることがわかる。このような反射率測定を膜厚測定に利用する方法は一般的である。
【0041】
また、オンラインでの測定に際して測定対象の振動、バタツキの影響を除去したり、照射光源変動の影響を少なくする目的で、特定の2つの波長での反射比(反射光強度比)を利用する方式も一般的に用いられている。この対策の利点を考慮することにより、前記の鋼板表面の酸化膜厚測定に対しても2波長反射比を膜厚測定に利用することが可能である。本発明では、基本的にはこの方式を応用するものである。
【0042】
すなわち、測定される2波長反射比R(λ2)/R(λ1)から鋼板上の酸化膜厚[d]を推定するようにしている。ここでλ2<λ1である。
【0043】
ここで、もともとの鋼板の表面粗さが異なった場合の影響を考える。実測値で算術平均粗さRaが0.27μm(自乗平均平方根粗さRqが0.35μm)、0.51(同0.64)、0.88(同1.08)の3サンプルにつき、図4と同じ配置にて測定を行った結果を図6に示す。酸化膜厚計測装置を鋼板から200mm程度まで十分に近づけて測定した場合の結果が図5である。このように、鋼板から遠く離れた加熱炉外から測定した図6の場合は、反射率比の値自体が小さくなり、表面粗さの違いによる測定値のばらつきが相対的に大きくなっていることがわかる。ここで、このような結果となった原因について検討した。
【0044】
図8は、gパラメータと反射の関係を示す図である。前述の非特許文献1によれば、図8に示すように、反射光の反射パタンは、入射角、表面粗さ、波長を引数とするgパラメータにより決定される。そして、例えば、gの値が0か、1に対して十分小さいか、1以上か、1より十分大きいかという区分に対する反射パタンが明示されている。
【0045】
今回の粗さの異なる3水準のサンプルについてgパラメータを計算したところ、図8の表に示すようになった。なお図8では、参考のため、後述するλ3として3.5μm、λ4として2.5μmについても計算結果を示している。また、図4に対応して、入射角θ=0としている。
【0046】
いずれの表面粗さに対しても、λ1よりλ2の方がgパラメータが大きくなり、反射パタンの拡散反射成分が大きくなることにより、正反射成分が低下しているということがわかった。そして、λ1、λ2に対するgの上記区分が異なり、更に表面粗さによってλ1、λ2に対する区分が変わるため、酸化膜厚による反射率の低下に加え、表面粗さによる正反射方向の反射率の低下の影響がのってしまっていることがわかった。
【0047】
測定距離が小さく、反射光の受光立体角が大きければ拡散反射光も含めて受光できるため、この影響は小さいが、測定距離が大きく、ほとんど正反射光のみしか受光しない程受光立体角が小さい今回の配置のような場合には、大きな影響を与えてしまうことがわかった。
【0048】
図1は、本発明に係る鋼板表面の酸化膜厚計測装置の設置例を示す図である。上述した影響を補正するために、本発明では、図1に示すように、酸化膜を生成させる前の鋼板についても、同一の装置で測定しておき、酸化膜生成後のR(λ2)/R(λ1)を生成前のR(λ2)/R(λ1)で除することにより、gパラメータによる(表面粗さ、波長による)R(λ2)/R(λ1)の変動を補正することができる。図1と同じ配置にて測定を行った結果を図7に示す。このように、鋼板から遠く離れた加熱炉外から測定した図6との比較はもちろんのこと、200mm程度まで近づけて測定した図5と比べても、表面粗さによるばらつきが小さく抑えられていることがわかる。
【0049】
また、特許文献3にて述べられているように、鋼種が異なると被膜物性(屈折率等)が異なるために赤外反射スペクトルが異なることもあり、その場合には、膜厚推定に利用する波長として別の波長を選択することが必要になる。例えば、別の波長λ3を利用して2波長反射比R(λ3)/R(λ2)から鋼板上の酸化物の膜厚[d]の推定が可能である。当然、鋼種が異なっても被膜物性に大きな差がなく、赤外反射スペクトルの違いも無視できる場合もあり、その場合には、λ1、λ2の二波長を用いればすむこともある。
【0050】
ここで、前記の2つの波長を含めて、λ3<λ2<λ1である。また、反射率の測定には、前記の3つの波長λ1、λ2、λ3を含む赤外波長域に、十分な放射強度の赤外光を鋼板表面に照射する必要がある。このような方法を直火加熱炉出側での鋼板表面に生成される酸化膜厚の計測に利用するためには以下に説明する対策が必要である。すなわち、直火加熱炉出側の走行鋼板1は、鋼板自体が数百℃以上に加熱されているため、鋼板表面から赤外波長域で熱を放射している。従って、赤外光源から十分な放射強度の赤外光を鋼板表面に照射した場合には、鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射された赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーとの合計されたエネルギーを、酸化膜厚計測装置3が検出することになる。
【0051】
そこで、本発明では、直火加熱炉出側で走行鋼板1の表面に、赤外光を間欠的に照射し、赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、赤外波長域の複数の異なる波長帯域にてそれぞれ同時に検出するようにした。
【0052】
本発明による酸化膜厚計測方法について、以下、式を用いて説明する。
ただし、記号は以下とする。
Ire(λ,T):光源にて対象を照射した場合の波長λでの測定強度(温度;T)、
Ira(λ,T):波長λでの自発光輝度強度(温度;T)、
R(λ):波長λでの反射率、
ε(λ):波長λでの放射率、
0(λ):波長λでの光源照射強度
【0053】
先ず、以下のプランクの法則から、式(1)〜(4)の関係を得る。
Lb(λ,T)=(2c/λ5){1/(exp(c2/λT)−1)}
ここで、Lb(λ、T)は、黒体の分光放射輝度、c1、c2は物理定数である。
(i)赤外光源から鋼板表面に赤外光を照射した場合の測定
Ire(λ1,T)=ε(λ1)・Lb(λ1,T)+I0(λ1)・R(λ1) ・・・・・(1)
Ire(λ2,T)=ε(λ2)・Lb(λ2,T)+I0(λ2)・R(λ2) ・・・・・(2)
(ii)赤外光源から鋼板表面に照射する赤外光を遮断した場合の測定(自発光輝度測定)
Ira(λ1,T)=ε(λ1)・Lb(λ1,T) ・・・・・(3)
Ira(λ2,T)=ε(λ2)・Lb(λ2,T) ・・・・・(4)
【0054】
式(1)から(4)を用いることで、式(5)を得る。
R(λ2)/R(λ1)={Ire(λ2,T)−Ira(λ2、T)}/{Ire(λ1,T)−Ira(λ1,T)} ・I0(λ1)/I0(λ2)・・・・・(5)
【0055】
反射率比と酸化物の膜厚[d]との関係は前述したように、Si含有量の量に応じてある程度の鋼種に分類すると、想定される膜厚範囲においては特定の一価の関数、すなわち反射率比が決まれば膜厚が一意に定まる関数によって表現できる関係が得られるので、ある鋼種に対しての関係式をf1なる関数とすれば、式(6)と表現できる。
d=f1{R(λ2)/R(λ1)} ・・・・・(6)
別の鋼種に対して同様にして関係式を表す関数をf2とすれば、式(7)と表現できる。
d=f2{R(λ3)/R(λ2)} ・・・・・(7)
【0056】
また、(6)、(7)の各式をまとめて一般化すると、以下の1つの式(8)として表現可能である。
d=A×f1{R(λ2)/R(λ1)}+A×f2{R(λ3)/R(λ2)}・・・・・(8)
【0057】
高張力鋼板での鋼種としてはSi、Mn等の成分含有量に応じて複数種類存在するが、(8)式での係数;A、Aを適宜設定することにより、反射率比と酸化物の膜厚[d]とを結びつける関係式を導くことが可能である。ここで、関数式f1やf2としては、例えば2次関数などが用いられる。
【0058】
以上に説明した方法は、直火加熱炉の前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の一部が後段ゾーンで還元されることで生成される還元Feが少ない場合には、十分な精度で鉄系酸化物の膜厚推定が可能であることが確認されている。しかし、実際に製造される溶融亜鉛めっき鋼板は、直火加熱炉の前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の一部が直火加熱炉の後段のゾーンで還元性雰囲気で加熱処理されるため、前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の最表面に還元Feが点在している例が多い。
【0059】
従って、これまでに説明した3つの波長を選択して、溶融亜鉛めっき鋼板製造工程の中間工程である直火加熱炉出側に適用して、鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚をオンラインで連続的に測定した場合には、大きな誤差が生じることがある。すなわち、前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の一部が還元され、表層部に、還元Feが点在しているので、最表層を覆ってしまうことはない。しかし、鉄系酸化物の一部が還元され、表層部に還元Feが点在している状態となった場合には、鋼板表面での反射特性が異なるだけでなく、酸化物層への光の侵入状態も変化するため、表層部に還元Feが点在していない場合に比べて酸化物層での光の吸収特性も異なってくる。
【0060】
そこで、鋼板表面に生成された鉄系酸化物層のより最表部での感度が相対的に優れた第4の波長λ4での反射情報の融合を試みた。すなわち、赤外光源から第4の波長λ4の赤外光を照射することによって鋼板表面に生成された鉄系酸化物の表層での反射状態を間接的に測定して補正に活用できるのか、否かを調査した結果、(8)式の関係式に、補正項として第4の波長λ4の反射情報を加えることで、鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚をオンラインで連続的に精度良く測定することができることを確認した。得られた補正項として第4の波長λ4の反射比の情報を含む(9)式を下記に示す。
【0061】
d=A×f1{R(λ2)/R(λ1)}+A×f2{R(λ3)/R(λ2)}
+A×f3{R(λ4)/R(λ3)} ・・・・・(9)
ここで、前述の3波長を含めてλ4<λ3<λ2<λ1である。
【0062】
以上説明したように、4つの波長を組み合わせて測定される反射率比と、予め得られている関係式とを組み合わせることで、最表面に還元Feが点在している状態となった場合でも鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚dを精度良く測定できる。また、表層部に還元Feが点在していない場合については、λ4なしに、λ1、λ2もしくは、それにλ3を加えた情報のみで膜厚が精度よく測定できる場合もある。
【0063】
また、放射率と鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚とは鋼種毎にほぼ一定の関係があるので、f4をその関係を表す関数にすることにより、例えばλ4の放射率ε(λ4)は以下の(10)式から求めることが可能になる。
ε(λ4)=f4(d)・・・・・(10)
このように、放射率が同定され、式(3)などと同様で実測されるIra(λ4,T)と同定されたε(λ4)とから温度Tが求められる。
【0064】
従って、従来の直火加熱条件の管理・制御に代わり、本発明を用いることにより、直火加熱炉出側で走行鋼板1の鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚を精度良く測定することができる。また、本発明によれば、鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚の情報に基づき、鋼板の放射率を推定することも可能になるため、直火加熱炉出側で走行鋼板1の温度の測定も可能となり、直火加熱炉の燃焼制御をより厳密に行うことができる。
【0065】
その場合、図3、4に示すように、窓部を有する回転チョッパー42を用い、走行鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、また、複数のハーフミラー22〜24により光路を分岐させ、4つの波長域で同時にエネルギーを検出する光検出装置とするのが好ましい。
【0066】
この理由は、走行鋼板1の表面での酸化膜の膜厚の長手方向変動が急激である場合でも、短い時間間隔で、走行鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射することができ、また4つの波長域で同時にエネルギーを検出することができるから、赤外光の間欠照射によって検出される異なる8つの検出値を用い、演算により膜厚を迅速に求めることができる。従って、応答性に優れる鋼板表面の酸化膜厚計測装置とすることができる。
【0067】
ただし、走行鋼板1の表面での酸化膜の膜厚の長手方向変動が緩やかである場合には、以下のような単一の光路での測定方法とすることもできる。例えば、FTIR分光器を用いて遠隔でスペクトルを連続測定して必要な波長情報を取り出す方法、連続式分光フィルターを回転させスペクトルを順次測定する方法、検出波長帯の透過型干渉フィルターを複数個装着した回転板を回転させて各検出波長帯での測定を順次行う方式などが挙げられる。
【実施例】
【0068】
直火加熱炉2を備えた連続溶融亜鉛めっき鋼板の製造ラインに設置して好適な鋼板表面の酸化膜厚計測装置の構成を図3により説明する。図3中、21は、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32を含む光検出装置である反射・放射光強度検出装置3の集光レンズ系を示す。この直火加熱炉2の出側に設置して好適な実施例の光検出装置には、第一の波長として12μmを、第二の波長として7μmを、第三の波長として3.5μmを、第四の波長として2.5μmを使用し、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32により、それぞれの波長に対する反射光強度及び放射輝度を同時に測定する。
【0069】
集光レンズ系21を透過した光は、第一のハーフミラー22により、2つの経路に分けられ、第二のハーフミラー23に一部の光が導かれ、残りの光が第三のハーフミラー24に導かれる。前記第二のハーフミラー23で光は、さらに2つの経路に分岐され、第二のハーフミラー23を透過した光が、干渉フィルター等の分光素子25を透過して12μm用検出素子である光検出素子29により反射光強度及び放射輝度測定される。
【0070】
第二のハーフミラー23で反射された光は、分光素子26を透過して7μm用検出素子である光検出素子30により反射光強度及び放射輝度測定される。第一のハーフミラー22を透過した光は、第三のハーフミラー24で2つの経路に分岐され、第三のハーフミラー24で反射した光が分光素子27を経て3.5μm用検出素子である光検出素子31により反射光強度及び放射輝度測定される。第三のハーフミラー24を透過した光が分光素子28を経て2.5μm用検出素子である光検出素子32により反射光強度及び放射輝度測定される。以上の4組の分光素子25〜28及び光検出素子29〜32により、それぞれの波長に対する反射光強度及び放射輝度が同時に測定され、測定された光強度信号は増幅処理装置33に送られる。
【0071】
ここではλ1〜λ4の4波長を用いる実施例を示したが、前述のようにλ1〜λ3の3波長、あるいはλ1とλ2の2波長で足りる場合もある。また、本実施例では、集光レンズ系を透過した光をハーフミラーで分割して検出する光学系を用いたが、ハーフミラーで分割した後に各波長毎に集光レンズ系を有する複数の検出装置で検出することも考えられる。
【0072】
その後、増幅された信号は演算処理装置34へ送られるが、演算処理装置34へは、酸化膜生成前の信号も既に入力されており、鋼板の位置をトラッキングして対応するデータの比を取ることにより、表面粗さの影響を補正する。さらに、予め記憶されている測定対象の鋼種毎に前述した関係式f1、f2、f3や各係数A、A、A、さらにf4の関係式の情報を用いて所定の演算処理が実施されて、走行鋼板1の表面に生成された酸化膜の膜厚や走行鋼板1の温度の値が求められ、その結果が出力装置35に出力される。その際、走行鋼板1の表面には、赤外光源41から赤外光が間欠的に照射される。
【0073】
図4を用いて説明する。赤外光源41からの赤外光は、回転チョッパー42の窓を経てハーフミラー43にて分けられ、走行鋼板1の表面に一部の赤外光が垂直に照射される。回転チョッパーには窓が形成されており、窓のない部分が回転して来て、赤外光源41からの赤外光が遮断された場合には、鋼板表面に光が照射されない。回転チョッパー42には、窓が一定の角度ごとに複数個開けられていてもかまわない。一定の角度ごとに、窓の有り、無し部を形成すれば、一定の時間毎に間欠的に赤外光が鋼板表面に照射される。回転タイミング装置45で、回転チョッパー42の窓部の通過を検出するようにすれば、照射のタイミングが検出される。
【0074】
鋼板表面で反射した赤外光は垂直に戻り、ハーフミラー43を再度透過して、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32により、それぞれの波長に対する反射光強度及び放射輝度が同時に測定される。なお、回転タイミング検出装置45による検出信号は、図3に示した増幅処理装置33に送られて、4つの検出素子での測定タイミング制御に活用される。以上の説明では垂直照射の例を示したが、ある角度を持たせて赤外光の照射と、鋼板表面で反射した赤外光の受光を行うようにしてもよい。
【0075】
また、酸化膜の膜厚を算出する関係式としては、2つの波長での反射率比の関数を3つ求めて、それらに一定の係数を乗算した重み付けをしているが、3組の反射率比の値から多重回帰式を算出した1つの関数式で代用することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 走行鋼板
2 直火加熱炉
3 反射・放射光強度検出装置
4 酸化膜厚計測装置
5 ロール
6 測定窓部
7 熱電対
8 演算装置
9 記憶装置
10 出力装置
11 プロセス管理用生後装置
21 集光レンズ系
22〜24 ハーフミラー
25〜28 分光素子
29〜32 光検出素子
33 増幅処理装置
34 演算処理装置
35 出力装置
41 赤外光源
42 回転チョッパー
43 ハーフミラー
45 回転タイミング検出装置
61 Nパージ吹込部
62 赤外透過窓ガラス
63 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉を備えた連続焼鈍工程で、鋼板の表面に生成される酸化物の膜厚を測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法であって、
鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、前記赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、2つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出し、
前記赤外光の間欠照射によって検出される検出値のうち赤外光の照射時の検出値から遮断される時の検出値を減じることにより反射光エネルギーを算出し、算出された反射光エネルギーについて2つの異なる赤外波長帯域間の比を前記加熱炉の入側及び出側でそれぞれ演算し、それらの比を演算することにより膜厚を求めることを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測方法。
【請求項2】
加熱炉を備えた連続焼鈍ラインに設置する鋼板表面の酸化膜厚計測装置であって、
鋼板の表面に向けて赤外光を照射するための赤外光源と、
該赤外光源からの赤外光を間欠的に照射するための光遮断装置と、
前記赤外光が鋼板表面に照射される赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射された赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーとの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーのみを、2つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出する光検出装置と、
前記2つの異なる赤外波長帯域それぞれについて、赤外光の照射時の検出値から赤外光の照射が遮断される時の検出値を減じて反射エネルギーを算出し、更に、前記2つの異なる波長帯域間の比を演算する演算処理装置と、を具備し、
前記加熱炉の入側及び出側の両方に設置され、前記入側及び出側の演算装置からの出力の比から膜厚を求めることを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202968(P2011−202968A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67751(P2010−67751)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】