説明

鋼管杭と建造物の支柱との固定構造、および固定方法

【課題】建造物の支柱を鋼管杭に強固に固定することができる上、作業現場における支柱の位置調整が容易で、建造物の建設基礎工事の工程を短縮することが可能な鋼管杭と建造物の支柱との固定構造を提供する。
【解決手段】建造物の支柱6の基端には、直方体状の箱体9が固着されている。当該箱体9の底板15には、鋼管杭1の外周よりも大きな杭挿入口18が穿設されており、箱体9の上板14には、モルタル充填口16,16が穿設されている。かかる建造物の支柱6を、地盤G中に立て込んだ鋼管杭1に固定させる際には、鋼管杭1の基端部分を、箱体9の底板15の杭挿入口18から箱体9の内部に挿入させた状態で、箱体9の上板14の片方のモルタル充填口16から箱体9の内部にモルタルを圧入し、そのモルタルを鋼管杭1の基端部分とともに固化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な地盤に立て込んだ鋼管杭の上方に建造物の支柱を建てる際に利用される鋼管杭と建造物の支柱との固定構造(接続構造)および固定方法(接続方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱な地盤の上に建造物を建てる方法として、地盤中に多数の鋼管杭を立て込み、それらの鋼管杭の基端の上方に建造物の基礎を設置する方法が知られている。また、そのように地盤に立て込んだ鋼管杭の上方に建造物を建てる際に、工費の低減や工期の短縮を図る目的で、立て込んだ鋼管杭の真上に、建造物の支柱を直接固定させる方法が利用される。
【0003】
立て込んだ鋼管杭の真上に建造物の支柱を直接固定させるための従来の方法としては、特許文献1の如く、周囲にネジ孔を穿設した矩形の杭頭プレートを鋼管杭の基端に固着するとともに、周囲にネジ孔を穿設した矩形のベースプレートを建造物の支柱の下端に固着し、鋼管杭を立て込んだ後に、建造物の支柱のベースプレートを鋼管杭の杭頭プレートに当接させ、両プレートのネジ孔を合致させて、両プレートをボルトとナットとで螺着する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−183266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような鋼管杭と建造物の支柱との固定構造では、鋼管杭と支柱との接続部分に大きな力(曲げモーメント)が加わると、ベースプレートや杭頭プレートが曲がったり、両者を連結したボルトが変形したりして、接続部分が破損しまう虞れがある。また、建造物の支柱を鉛直に立てた状態で、支柱のベースプレートのネジ孔と鋼管杭の杭頭プレートのネジ孔とを正確に合致させなければ、支柱を鋼管杭に固定させることができないため、調整代に制限がある。さらに、鋼管杭が地盤に対して斜めに立て込まれた場合には、支柱を正確な鉛直方向を向くように固定させるのが困難である。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造が有する問題点を解消し、建造物の支柱を鋼管杭に強固に固定することができる上、作業現場における支柱の位置調整が容易で、建造物の建設基礎工事の工程を短縮することが可能な鋼管杭と建造物の支柱との固定構造、固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、地盤に鋼管杭を立て込み、その鋼管杭の上端に、建造物の支柱を固定させる建造物の施工方法において、鋼管杭の上端に建造物の支柱を固定させるための固定構造であって、鋼管杭の外周よりも大きな挿入口を底板に穿設するとともに上板にモルタル充填口を穿設した中空の箱体を、建造物の支柱の基端に固着させ、地盤に立て込んだ鋼管杭の基端部分を、前記箱体の底板の杭挿入口から箱体の内部に挿入させた状態で、前記箱体の上板のモルタル充填口から箱体の内部に圧入したモルタルを鋼管杭の基端部分とともに固化させたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、鋼管杭の上端に、板部材が略水平に固着されており、その板部材に、鋼管杭の上端と箱体の上板との間隔を調整するための高さ調整ボルトが螺着されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、箱体の上面に、2つのモルタル充填口が、上板の中心に対して点対称となるように穿設されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載された発明において、箱体の内部に充填されるモルタルと鋼管杭との付着力を強化するために、鋼管杭の基端部に補強帯を付設したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載された発明は、地盤に鋼管杭を立て込み、その鋼管杭の上端に、建造物の支柱を固定させる建造物の施工方法において、鋼管杭の上端に建造物の支柱を固定させるための固定方法であって、鋼管杭の外周よりも大きな挿入口を底板に穿設するとともに上板にモルタル充填口を穿設した中空の箱体を、建造物の支柱の基端に固着させ、地盤に立て込んだ鋼管杭の基端部分を、前記箱体の底板の杭挿入口から箱体の内部に挿入させた状態で、水平方向の位置を調整し、前記箱体の上板のモルタル充填口から箱体の内部にモルタルを圧入し、そのモルタルを鋼管杭の基端部分とともに固化させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造は、鋼管杭の先端を箱体内でモルタルとともに固化させるものであるため、地盤中に立て込んだ鋼管杭の上部に、重機によって支持した建造物の支柱を接続して固定させる際に、鋼管杭の基端と建造物の支柱の先端とが水平面内方向において多少位置ずれしている場合や、鋼管杭が多少傾斜している場合でも、建造物の支柱を鉛直方向を向くように鋼管杭の上方に固着することが可能である。したがって、請求項1に記載の固定構造によれば、鋼管杭の上部に建造物の支柱を接続して固定させる際に、作業現場における支柱の位置調整を簡便に行うことができるため、建造物の建設基礎工事の工程を短縮することができる。
【0013】
請求項2に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造は、立て込んだ鋼管杭の上端に高さ調整ボルトが螺着されているため、作業現場で高さ調整ボルトの長さ(突出量)を変えることにより、容易に箱体の高さや水平度を調整することができる。したがって、請求項2に記載の固定構造によれば、建造物の建設基礎工事の工程を一層短縮することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造によれば、片方のモルタル充填口からモルタルを圧入し、他方から溢れ出させる(越流を確認する)ことによって、箱体内に隙間なくモルタルを行き渡らせることが可能となるので、建造物の支柱を非常に強固に鋼管杭に固定させることができる。
【0015】
請求項4に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造によれば、補強帯によって箱体内のモルタルと鋼管杭との固着強度を高めることができるので、鋼管杭と建造物の支柱との固定強度を一層向上させることが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定方法によれば、地盤中に立て込んだ鋼管杭の上部に、重機によって支持した建造物の支柱を接続して固定させる際に、鋼管杭の基端と建造物の支柱の先端とが水平面内方向において多少位置ずれしている場合や、鋼管杭が多少傾斜している場合でも、建造物の支柱を鉛直方向を向くように鋼管杭の上方に固着することが可能であるため、作業現場における支柱の位置調整を簡便に行うことができるため、建造物の建設基礎工事の工程を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】鋼管杭を示す説明図である(aは正面図であり、bは、鉛直断面図であり、cは斜視図である)。
【図2】建造物の支柱を示す説明図である(aは支柱の下端部を示す斜視図であり、bはベース板を示す斜視図であり、cは支柱の下端にベース板を固着させた状態を示す斜視図である)。
【図3】箱体を示す説明図である(aは平面図であり、bは鉛直断面図であり、cは斜視図である)。
【図4】支柱の下端に箱体を固着させた状態を示す説明図である(aは平面図であり、bは斜視図である)。
【図5】鋼管杭を地盤に立て込んだ状態を示す説明図(正面図)である。
【図6】立て込んだ鋼管杭に建造物の支柱を固着させた状態を示す説明図(鋼管杭は正面図、箱体は鉛直断面図)である。
【図7】立て込んだ鋼管杭に建造物の支柱を固着させた状態を示す説明図(斜視図)である。
【図8】鋼管杭の変更例を示す説明図(正面図)である。
【図9】鋼管杭の変更例を示す説明図(正面から見た鉛直断面図)である。
【図10】箱体の変更例を示す説明図(正面から見た鉛直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造および固定方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<鋼管杭の構造>
図1は、本発明に係る固定構造に用いる鋼管杭の一例を示したものである。鋼管杭1は、鋼鉄によって、外径約267.4mm(内径約248.8mm)、厚さ9.3mm、長さ6,000mmの長尺な円筒状に形成されている。また、鋼管杭1の上端には、鋼鉄によって、厚さ25mmの円板状に形成された蓋部材2が、溶接によって固着されている。当該蓋部材2には、4つのボルト挿通孔3,3・・が、中心から等距離で正方形の頂点をなすように穿設されている。そして、それらの各ボルト挿通孔3,3・・には、それぞれ、首下の長さ約150mmの高さ調整ボルト(M24)4,4・・が、ヘッド部分を下側に位置させた状態で、ナット5によって螺着されている。なお、各ボルト4,4・・、ナット5,5・・には、防錆のために亜鉛メッキが施されている。
【0020】
<建造物の支柱の構造>
また、図2(a)は、建造物の支柱を示したものであり、支柱6は、所謂H形鋼であり、平行に配置された2つのフランジの幅が300mmであり、フランジ同士の間隔が300mmである。また、フランジの厚みは、約15mmであり、ウェブの厚みは、約10mmである。
【0021】
一方、図2(b)は、支柱6の下端に固着させるベース板を示したものである。ベース板7は、厚さ約25mmの鋼鉄板を裁断することによって、縦(奥行き)×横(幅)=約300mm×約450mmの長方形状に形成されている。そして、左右の端縁際に、それぞれ、4個ずつボルト挿通孔8,8・・が穿設されている。なお、それらの8個のボルト挿通孔8,8・・は、ベース板7の左右の中心線、前後の中心線に対して、それぞれ、対称となるように配置されている。当該ベース板7は、図2(c)の如く、前端縁、後端縁を、それぞれ、支柱6の各フランジの前端、後端の位置に合わせた状態で、溶接によって支柱6の下端に固着されている。そして、ベース板7の左右の4個ずつのボルト挿通孔8,8・・が、支柱6のウェブの前後において内外に位置した状態になっている。
【0022】
<箱体の構造>
また、図3は、支柱6の下端に固着させる箱体を示したものである。箱体9は、厚さ約16mmの鋼鉄板によって矩形に形成された前板10、後板11、左側板12、右側板13を四角柱状に組み付けて溶接し、その中空な四角柱状体の上側開口部および下側開口部に、それぞれ、厚さ約25mmの鋼鉄板によって矩形(正方形)に形成された上板14、厚さ約16mmの鋼鉄板によって矩形(正方形)に形成された底板15を溶接することによって、縦(奥行き)×横(左右の幅)×高さ=約500mm×約500mm×約500mmの立方体状に形成されている。なお、箱体9は、防錆のために表面および内面に溶融亜鉛メッキが施されている。
【0023】
そして、上板14の前後の端縁際には、それぞれ、左右の略中央に位置するように直径約100mmの円形のモルタル充填口16,16が穿設されている。また、それらのモルタル充填口16,16の間には、8個のボルト挿通孔17,17・・が、ベース板7のボルト挿通孔8,8・・と同一の配置となるように穿設されている。一方、底板15の中央には、一辺の長さが約368mmであり鋼管杭1の外径より長い矩形の杭挿入口18が穿設されている。
【0024】
上記した箱体9は、図4の如く、上板14を、建造物の支柱6の下端に固着されたベース板7の裏面に当接させた状態で、上板14のボルト挿通孔17,17・・、ベース板7のボルト挿通孔8,8・・を利用して、首下の長さ約100mmのボルト(M24)19,19・・とナット20,20・・とを利用して、上板14とベース板7とを螺着することによって、支柱6の下端に固着されている。なお、上板14とベース板7との螺着は、ヘッド部分を下側に位置させたボルト19,19・・を、上板14のボルト挿通孔17,17・・、ベース板7のボルト挿通孔8,8・・に貫通させ、それらのボルト19,19の先端にナット20,20を締着させる態様によって行われている。
【0025】
<鋼管杭と建造物の支柱との固定>
上記の如く構成された鋼管杭1と建造物の支柱6とを固定させる場合には、まず、図5の如く、地盤中Gに鋼管杭1を立て込む。なお、立て込む方法としては、地盤G中に、単純に、鋼管杭1を打ち込んだり、ねじ込んだりする方法を採用することも可能であるが、そのような方法のみならず、地盤Gを掘削して縦穴を形成し、その縦穴内で、掘削した現状土とセメント含有水とを混練してセメント混合土を生成し、そのセメント混合土内に、鋼管杭1を立て込んだ後に、鋼管杭1ごとセメント混合土を固化させる方法等も採用することができる。また、鋼管杭1を立て込む際には、鋼管杭1の基端の周囲に直方体状の空間Sを形成しておく。
【0026】
地盤G中に鋼管杭1を立て込んだ後には、ベース板7を介して下端に箱体9を固着させた支柱(H形鋼)6を、重機を利用して鉛直に垂下させて、図6、図7の如く、箱体9の底板15の杭挿入口18に鋼管杭1の基端(上端)を挿入させ、箱体9の上板14の裏面を鋼管杭1の高さ調整ボルト4,4・・の上端(ネジ部の先端面)に当接させるようにして、鋼管杭1の基端に箱体9を載置する(鋼管杭1の基端を箱体9で覆う)。その際に、支柱6が正確な鉛直方向を向かないようであれば、一旦、支柱6を持ち上げて、鋼管杭1の基端を箱体9内から外に出し、鋼管杭1のナット5,5・・を回転させて高さ調整ボルト4,4・・の突出量を調整して、支柱6が正確な鉛直方向を向くように調整する。
【0027】
上記の如く、支柱6が鉛直方向を向くように鋼管杭1の高さ調整ボルト4,4・・の突出量を調整して鋼管杭1の基端を箱体9で覆った後には、当該箱体9の周囲の空間Sを土砂で埋める。そして、モルタルポンプ車等を利用して、箱体9の片方のモルタル充填口16から、箱体9の内部にモルタル(たとえば、無収縮モルタル)を圧入し、他方の(圧入側とは反対側の)モルタル充填口16から溢れ出させる(越流を確認する)。かかるモルタルの圧入によって、箱体9の内部の空間(箱体9の内壁面と鋼管杭1との隙間)がモルタルで満たされる。しかる後、十分な時間をかけて箱体9内に充填されたモルタルを養生して固化させることによって、鋼管杭1と支柱6との固定作業を完了する。
【0028】
<固定構造の効果>
上記した鋼管杭1と建造物の支柱6との固定構造は、鋼管杭1の外周よりも大きな挿入口(杭挿入口18)を底板15に穿設するとともに上板14にモルタル充填口16,16を穿設した中空の箱体9を、建造物の支柱6の基端に固着させ、地盤Gに立て込んだ鋼管杭1の基端部分を、箱体9の底板15の杭挿入口18から箱体9の内部に挿入させた状態で、箱体9の上板14のモルタル充填口16から箱体9の内部に圧入したモルタルを鋼管杭1の基端部分とともに固化させるものである。したがって、当該固定構造によれば、地盤G中に立て込んだ鋼管杭1の上部に、重機によって支持した建造物の支柱6を接続して固定させる際に、鋼管杭1の基端と建造物の支柱6の先端とが水平面内方向において多少位置ずれしている場合や、鋼管杭1が多少傾斜している場合でも、建造物の支柱6を鉛直方向を向くように鋼管杭1の上方に固着することが可能である。それゆえ、鋼管杭1の上部に建造物の支柱6を接続して固定させる際に、作業現場における支柱6の位置調整を簡便に行うことができるため、建造物の建設基礎工事の工程を短縮することができる。
【0029】
また、上記した鋼管杭1と建造物の支柱6との固定構造は、立て込んだ鋼管杭1の上端に、板部材(蓋部材2)が略水平に固着されており、その蓋部材2に、鋼管杭1の上端と箱体9の上板14との間隔を調整するための高さ調整ボルト4,4・・が螺着されているため、作業現場で高さ調整ボルト4,4・・の長さ(突出量)を変えることにより、容易に箱体9の高さや水平度を調整することができる。したがって、上記した固定構造によれば、建造物の建設基礎工事の工程を一層短縮することが可能となる。
【0030】
さらに、上記した鋼管杭1と建造物の支柱6との固定構造は、箱体9の上面に、2つのモルタル充填口16,16・・が、上板14の中心に対して点対称となるように穿設されているため、片方のモルタル充填口16からモルタルを圧入し、他方から溢れ出させる(越流を確認する)ことによって、箱体9内に隙間なくモルタルを行き渡らせることが可能となるので、建造物の支柱6を非常に強固に鋼管杭1に固定させることができる。
【0031】
<固定構造の変更例>
なお、本発明に係る鋼管杭と建造物の支柱との固定構造、固定方法の構成は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、鋼管杭、建造物の支柱、箱体、ベース板の形状・構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更できる。
【0032】
たとえば、鋼管杭は、上記実施形態の如く、単純な円柱状のものに限定されず、先端に掘削用のバイトを付設したものや、先端際に帯状体を略水平方向に突出するように螺旋状に捲回させたもの等に変更することも可能である。
【0033】
また、鋼管杭は、上記実施形態の如く、基端が単純な円柱状であるものに限定されず、図8の如く、基端縁際の外周に一定幅の帯状の補強帯21,21を捲回させたもの(巻き付けて溶接させたもの)に変更することも可能である。かかる構成を採用した場合には、鋼管杭の基端の外周の表面積が増大するため、箱体内のモルタルと鋼管杭との固着強度を高めることができるので、鋼管杭と建造物の支柱との固定強度(接続強度)を一層向上させることが可能となる。
【0034】
また、鋼管杭は、上記実施形態の如く、ヘッド部が下側に位置するように高さ調整ボルトを蓋部材に取り付けたものに限定されず、ヘッド部が上側に位置するように高さ調整ボルトを蓋部材に取り付けるとともに、ナット部材を蓋部材の裏面に溶接したもの等に変更することも可能である。かかる構成を採用した場合には、支柱を正確な鉛直方向に向かせるための高さ調整ボルトの調整がより容易なものとなる、というメリットがある。
【0035】
さらに、鋼管杭は、上記実施形態の如く、円柱の内部の上面からのみ高さ調整ボルトを上向きに突出させたものに限定されず、図9の如く、外周より面積の大きな板部材2’を上端に溶接し、当該板部材2’の円柱よりも外側の部分から高さ調整ボルト4,4・・を上向きに突出させたもの等に変更することも可能である。かかる構成を採用した場合には、高さ調整ボルトの調整が一層容易なものとなる、というメリットがある。
【0036】
一方、支柱の下端に固着させる中空の箱体は、直方体状(立方体状を含む)のものに限定されず、円柱状のものや、角柱状のもの等に変更することも可能である。また、上記実施形態の如く、内壁面が平坦なものに限定されず、図10の如く、内壁面に、内部に突出するように直方体状等の突起体22,22を設けたものに変更することも可能である。かかる構成を採用した場合には、箱体の内部の表面積が増大し、箱体とモルタルとの固着強度が高くなるため、建造物の支柱と鋼管杭との固着強度(接続強度)が一層向上する、というメリットがある。
【0037】
また、中空の箱体は、上記実施形態の如く、底板に矩形の挿入口(杭挿入口)を穿設したものに限定されず、円形(直径が鋼管杭の外径より大きい円形)、楕円形(短径が鋼管杭の外径より大きい楕円形)や、矩形以外の多角形(挿入した鋼管杭との間に一定の隙間を形成可能な多角形)の挿入口を底板に穿設したもの等に変更することも可能である。さらに、2つのモルタル充填口を上板の対向する2つの端縁の端縁際の中央に配置させたものに限定されず、2つのモルタル充填口を上板の対角線上に配置させたもの等に変更することも可能である。
【0038】
加えて、本発明に係る鋼管杭と建造物の支柱との固定構造は、上記実施形態の如く、一つの鋼管杭に対して一つの支柱を固定(接続)させるものに限定されず、地盤に立て込んだ複数の鋼管杭に一つの支柱を固定させるものに変更することも可能である。また、用途によっては、立て込む鋼管杭の基端を二股や三股構造にして、それぞれの基端に一つずつ支柱を固定させることも可能である。
【0039】
加えて、本発明に係る固定構造によって固定される建造物の支柱は、上記実施形態の如きH形鋼に限定されず、L形鋼やI形鋼等の別の形状を有するものに変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る鋼管杭と建造物の支柱との固定構造は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、各種の建造物の基礎を施工する際に、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・鋼管杭
2・・蓋部材(板部材)
4・・高さ調整用ボルト
6・・建造物の支柱
9・・箱体
14・・上板
15・・底板
16・・モルタル充填口
18・・杭挿入口(挿入口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に鋼管杭を立て込み、その鋼管杭の上端に、建造物の支柱を固定させる建造物の施工方法において、鋼管杭の上端に建造物の支柱を固定させるための固定構造であって、
鋼管杭の外周よりも大きな挿入口を底板に穿設するとともに上板にモルタル充填口を穿設した中空の箱体を、建造物の支柱の基端に固着させ、
地盤に立て込んだ鋼管杭の基端部分を、前記箱体の底板の杭挿入口から箱体の内部に挿入させた状態で、前記箱体の上板のモルタル充填口から箱体の内部に圧入したモルタルを鋼管杭の基端部分とともに固化させたことを特徴とする鋼管杭と建造物の支柱との固定構造。
【請求項2】
鋼管杭の上端に、板部材が略水平に固着されており、その板部材に、鋼管杭の上端と箱体の上板との間隔を調整するための高さ調整ボルトが螺着されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造。
【請求項3】
箱体の上面に、2つのモルタル充填口が、上板の中心に対して点対称となるように穿設されていることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造。
【請求項4】
箱体の内部に充填されるモルタルと鋼管杭との付着力を強化するために、鋼管杭の基端部に補強帯を付設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋼管杭と建造物の支柱との固定構造。
【請求項5】
地盤に鋼管杭を立て込み、その鋼管杭の上端に、建造物の支柱を固定させる建造物の施工方法において、鋼管杭の上端に建造物の支柱を固定させるための固定方法であって、
鋼管杭の外周よりも大きな挿入口を底板に穿設するとともに上板にモルタル充填口を穿設した中空の箱体を、建造物の支柱の基端に固着させ、
地盤に立て込んだ鋼管杭の基端部分を、前記箱体の底板の杭挿入口から箱体の内部に挿入させた状態で、水平方向の位置を調整し、前記箱体の上板のモルタル充填口から箱体の内部にモルタルを圧入し、そのモルタルを鋼管杭の基端部分とともに固化させることを特徴とする鋼管杭と建造物の支柱との固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−100673(P2013−100673A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244647(P2011−244647)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(392012238)
【Fターム(参考)】