説明

長さ測定システムを備えたリニアガイドユニット

ガイドレール(1)の上に縦移動可能に配置されたガイドキャリッジ(2)及びガイドレール(1)と平行に配置した実量器(4)と協動する測定ヘッド(3)を備えた長さ測定システムを有し、実量器(4)が実量器(4)を担持する中空体の中に配置されており、この中空体がガイドレール(1)に対して間隔を置いて配置され、その両端が支承されたリニアガイドユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長さ測定システムを備えたリニアガイドユニットに関する。このようなリニアガイドユニットは例えば工作機械製造又は組立ラインの輸送装置又は木材加工で使用される。長さ測定システムは所定の位置へのガイドキャリッジの高精度の位置決めを可能にする。
【背景技術】
【0002】
測定装置を有し、ガイドキャリッジがガイドレール上に縦移動可能に配置されたリニア軸受が例えばドイツ特許公開DE19941587A1により公知である。ガイドキャリッジは正面側に測定ヘッドを備えている。ガイドレールは上側に溝を備えており、ここに実量器が挿着されている。この場合実量器は、ガイドレールの溝に摩擦結合により保持したカバーストリップと一体に形成されている。代案として、実量器を平坦な帯条に貼り付けることができる。実量器の取替えが必要になったときは、実量器をカバーストリップとともに交換するだけでよい。
【0003】
測定システムを組み込んだ別の周知のリニア軸受では、納入状態で物差すなわち実量器がガイドレールに接着されている。この場合、ガイドレールを交換せずに実量器を交換することは大変難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、実量器の交換を問題なく行うことができる、請求項1の上位概念の特徴に基づくリニアガイドユニットを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に基づきこの課題は、実量器が実量器を担持する中空体の中に配置され、中空体がガイドレールに対して間隔を置いて配置され、その両端が支承されることによって解決される。
【0006】
本発明は幾つかの利点をもたらす。第一にガイドレールに関係なく実量器を交換できることが保証される。実量器の取替えのためにガイドレールを外したり、カバーストリップを除去したりする必要がない。交換すべき実量器を中空体 −例えば管− から除去し、別の実量器に替えるだけでよい。
【0007】
また非常に大きな移動距離を有するリニアガイドユニットを実現することができ、実量器の望ましくないたわみを回避するための実量器の補助支えは不要である。実量器は中空体の中に挿入するだけでよく、中空体の中で実量器は全長にわたって均等に支えられているからである。実量器を中空体の中に問題なく挿入するために、潤滑剤を使用するのが適当であろう。実量器と中空体の内壁面が接触したときに、潤滑剤はすべり摩擦を減少する。
【0008】
もう一つの利点は、実量器をリニアガイドユニットの内のりスペース輪郭の内部に配置できることに認められる。リニアガイドユニットの内のりスペース輪郭の幅と高さはDIN645−1及び−2に、ガイドキャリッジの規格化寸法を示した表の形で記載されている。リニアガイドユニットのメーカーはこのDIN規格に従う。このようなリニアガイドユニットの利用者にとって規格化の利点は、例えば組立ラインの立案のためにこの規格に準拠し、品物の直線案内のために必要な取付けスペースを計画によく組み込むことができることに現れる。こうして実量器を内のりスペース輪郭の内部に組み入れることは、この規格の適用範囲を決して制限するものではない。
【0009】
別の利点は、実量器が中空体の中で例えば金属切粉や液体との接触から守られることに認められる。
【0010】
別の特別な利点は、ガイドレールが通常、鋼製であることによって、周知の長さ測定システムからの選択が制限されないことに見られる。長さ測定システムが誘導式測定原理に基づく場合は、特別の補助的処置がなければこの測定原理を使用することはできないであろう。通常、磁性鋼からなるガイドレールが完全な測定を少なくとも困難にするからである。これに対して本発明に基づく解決策では、この場合中空体を適当な材料、例えばプラスチック又は非磁性鋼で形成すれば十分である。
【0011】
大きな移動距離を実現しようとするときは、中空体を形成する締付けスリーブを軸方向に緊定することが好ましい。締付けスリーブはその両端が台座に支承され、これらの台座の間で引張力を働かせることができる。引張力は実量器の完全な直線的配置を促す。引張力は実量器を担持する締付けスリーブのたるみ又はたわみを回避するからである。
【0012】
締付け装置によって引張力を掛けることができる。好ましい構成では、締付け装置は締付けスリーブの一方の端部に設けたねじ山の上にねじ込んだクランプナットを有する。このねじ山は締付けスリーブの外周に直接取り付けることができるが、別個のねじ付きスリーブに形成して、このねじ付きスリーブを締付けスリーブの一方の端部にはめて、これに固定する −例えば溶接する− こともできる。
【0013】
管又は締付けスリーブとして形成された中空体の両端を、例えば角柱体からなる台座にそれぞれ支承することが好ましい。緊定された締付けスリーブの軸方向引張力を一方の台座に伝達するために、上記のクランプナットをこれらの台座の一方に軸方向に支えることができる。そこで締付けスリーブの他方の端部も他方の台座に軸方向に支えられる。
【0014】
誘導式測定原理に基づく長さ測定システムが本発明にとって特に好適であることが判明した。誘導式測定原理の場合は、実量器は例えば逐次配置された多数のクロム・ニッケル・エレメントを詰めた特殊鋼管を有する。この場合測定ヘッドは例えばコイルアセンブリと電子装置を収容するアルミニウム鋳物である。測定ヘッドは管状の実量器を管状に包囲することができる。測定ヘッドは多数の受信コイルセットを備えることができる。各セットは1目盛間隔で配置された4個の同じ巻線からなる。この間隔に基づき1つのセットの各コイルは隣接するクロム・ニッケル・エレメントの同じ部分の上に位置決めされる。1つのセットのすべてのコイルは直列に接続されている。検出コイルの上に駆動コイルがある。物差のクロム・ニッケル・エレメントによって物差の透磁率が1目盛ごと周期的に変化する。各検出コイル群に誘導される電圧は、コイルとその下にあるクロム・ニッケル・エレメントの相対位置に応じて変化する。コイルは、一方のコイル群が最大にあるとき、クロム・ニッケル・エレメントの半ピッチだけ隔たる他方の群は最小にあるというような間隔を有する。移動とともに変化する信号を発生するために、これらのコイル対は示差的に組み合わされている。この複合信号は測定ヘッドの電子回路で移相させられる。信号が加算され、濾波される。その結果は出力信号であり、測定ヘッドが実量器に沿って移動させられると、出力信号の位相が変化する。
【0015】
本発明に基づき設けられる中空体は非磁性材料からなることが好ましい。こうして、前述の測定原理で現れる磁束線が妨げられないことが保証される。
【0016】
次に全体で2つの図に図示した実施例に基づき、発明を詳述する。
【0017】
図1及び2に図示した本発明に基づくリニアガイドユニットは、ガイドレール1の上で縦移動可能に案内されるガイドキャリッジ2を有する。周知のように、ここに別に図示しない転動体が負荷のもとでガイドレール及びガイドキャリッジのトラックに沿って転動する。このトラックは往路を画定する。転動体はエンドレス転動体通路で循環し、各転動体通路は上記の往路、帰路及び帰路と往路をエンドレスに結ぶ2つの方向転換路を有する。方向転換路と帰路は全体がガイドキャリッジ2に装備されている。
【0018】
ガイドキャリッジ2はその2つの脚部5でガイドレール1を抱き、2つの脚部5は背部6によって連結されている。一方の脚部5に貫通穴7が形成され、これに締付けスリーブ12が貫挿されている。この貫通穴7はこの場合ドリル穴8として形成されている。この脚部5はここにただ破線で略示した凹陥部9を備えており、ここに長さ測定装置の測定ヘッド3が挿着されている。
【0019】
締付けスリーブ12の両端は、いずれも固定台座として形成された台座10、11にそれぞれ支承される。ガイドレール1は横断面で見て角柱形の輪郭を有する。台座10、11は対応する角柱形輪郭を備えているから、台座10、11は完全にガイドレール1に合わせて整列される。台座10、11の完全な整列は、締付けスリーブ12がガイドレール1に対して完全に平行に整列されることを保証する。
【0020】
本発明に基づくリニアガイドユニットはさらに長さ測定システムを包含する。長さ測定システムは測定ヘッド3及び図2に明示した実量器4を有する。この長さ測定システムは誘導方式で動作する。この実量器4は所定の間隔で配列した多数のクロム・ニッケル・エレメント4aが中に配置された特殊鋼管を有する。測定ヘッド3は、実量器4と測定ヘッド3の間の相対変位とともに正弦波信号が発生されるように装備されており、この信号が評価のために利用される。この実量器4はガイドキャリッジ2の内のりスペース輪郭の内部、それとともにリニアガイドユニットの内のりスペース輪郭の内部に具合よく格納されている。
【0021】
実量器4は非磁性材料からなる締付けスリーブ12の中に配置されている。実量器4は全長にわたって締付けスリーブ12に支えられ、その中に保護されている。
【0022】
締付けスリーブ12の一方の端部は一方の台座11に固定されている。この目的のために、この端部は台座11に軸方向に支えられた取付けスリーブ13を備えている。締付けスリーブ12の他方の端部にねじ付きスリーブ14が溶接されている。台座10に軸方向に支えられたクランプナット15がねじ付きスリーブ14の上にねじ込まれている。クランプナット15のねじ込み運動とともに締付けスリーブ12に軸方向引張力を掛けることができるから、締付けスリーブのたるみは決して起こらない。
【0023】
締付けスリーブの代わりに管を使用することもできる。この管は締付けスリーブの場合のように一方の台座11に固定される。しかしこの管の他方の端部は台座10に可動支承のように取り付けられる。例えば短い管長に基づき又は十分な管剛性により管のたわみが起こらない場合に、このような管を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に基づくリニアガイドユニットの斜視図を示す。
【図2】本発明に基づくリニアガイドユニットの一部縦断面図を含む概略図を示す。
【符号の説明】
【0025】
1 ガイドレール
2 ガイドキャリッジ
3 測定ヘッド
4 実量器
4a クロム・ニッケル・エレメント
5 脚部
6 背部
7 貫通穴
8 ドリル穴
9 凹陥部
10 台座
11 台座
12 締付けスリーブ
13 取付けスリーブ
14 ねじ付きスリーブ
15 クランプナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレール(1)の上に縦移動可能に配置されたガイドキャリッジ(2)と、ガイドレール(1)と平行に配置された実量器(4)と協動する測定ヘッド(3)とを備えた長さ測定システムを有するリニアガイドユニットにおいて、
実量器(4)が実量器(4)を担持する中空体の中に配置され、この中空体はガイドレール(1)に対して間隔を置いて配置されるとともに両端が支承されていることを特徴とするリニアガイドユニット。
【請求項2】
実量器(4)が中空体をなす管の中に配置されている請求項1に記載のリニアガイドユニット。
【請求項3】
実量器(4)が中空体をなす締付けスリーブ(12)の中に配置され、締付けスリーブ(12)の両端が軸方向引張力によって支承されている請求項1に記載のリニアガイドユニット。
【請求項4】
締付けスリーブ(12)に引張力を働かせるための締付け装置が設けられている請求項3に記載のリニアガイドユニット。
【請求項5】
締付け装置が締付けスリーブ(12)の一方の端部に設けたねじ山の上にねじ込まれたクランプナット(15)を有する請求項4に記載のリニアガイドユニット。
【請求項6】
ねじ付きスリーブ(14)が締付けスリーブ(12)の一方の端部の上に嵌着されてそこで固定されている請求項5に記載のリニアガイドユニット。
【請求項7】
締付けスリーブ(12)の両端がそれぞれ台座(10、11)に支承され、クランプナット(15)が台座(10、11)に軸方向に支持されている請求項5に記載のリニアガイドユニット。
【請求項8】
実量器(4)が逐次配置された多数のクロム・ニッケル・エレメント(4a)で満たされた特殊鋼の管を有する請求項5に記載のリニアガイドユニット。
【請求項9】
中空体が非磁性材料からなる請求項1に記載のリニアガイドユニット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−524804(P2009−524804A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551679(P2008−551679)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069673
【国際公開番号】WO2007/085329
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(502379000)シャフラー、コマンディット、ゲゼルシャフト (22)
【氏名又は名称原語表記】SCHAEFFLER KG
【Fターム(参考)】