説明

長尺体保持具

【課題】構造が簡単であり、小型の各種機器に使用することが可能であると共に、各種機器のシャーシ等の対象物に簡単に取付けることが可能な長尺体保持具を提供することを目的とする。
【解決手段】保持された配線200の長手方向に対し略垂直な断面が略C字状を有し、この略C字状を確定する端部12A及び12Bが互いに離れる方向に弾性変形することでシャーシ100に形成された係合穴101A及び101Bに各々挿入可能であると共に、係合穴101A及び101Bに挿入された際に弾性復元してシャーシ100に係合し、端部12A及び12Bがシャーシ100に係合した際に、係合穴101A及び101Bを閉鎖する閉鎖部16A及び16Bを備えてなる長尺体保持具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、各種機器類等、特に、小型の電気・電子機器類等に電線や長尺な部品等を取付けて保持するために用いる長尺体保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な機器類、特に電気・電子機器類の内部には、様々な部品や電線等の長尺体が多数配されている。これらの長尺体は、電気機器類の通常動作の際に、他の部品に当たり擦れて傷ついたり、外れたりすることを防止する必要がある。そこで、これらの長尺体を整理して束ね、電気機器類の筐体の内壁や基板等の対象物に留め付けるための保持具が各種紹介されている。
【0003】
このような保持具として、例えば、基台(合成樹脂製取付板)の上面に、電線等を挟持する可撓性押え板を形成し、この基台の裏面に、保持具が取付けられる板材(対象物)に形成された取付穴に挿入されて当該板材に係合する略やじり状の弾拡ピンを突出形成した配線類のクリップ(保持具)が紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基台に揺動可能に取付けられた押え板の先端と、前記基台とを着脱可能に固定するロック機構を有し、前記基台と押え板との間に電線を保持可能であり、当該基台の下面に、保持具が取付けられる板材(対象物)に形成された取付穴に挿入されて、当該板材に係合する略やじり状の弾拡ピンを突出形成した電線クランプ(保持具)も紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
前述した従来の保持具は、前記板材(対象物)に取付けられた際に、略やじり状の弾拡ピンが当該板材の裏面に突出するため、当該板材が各種機器のハウジング内に配設されている場合は、ハウジングの内壁面と板材の裏面との間に、前記弾拡ピンを位置させるためのスペースを確保する必要があり、ハウジングの小型化に支障を来す虞がある。特に、前記機器が、例えば、デジタルカメラ、携帯電話、ハンディータイプの小型ゲーム機や録画再生装置等のような小型装置の場合、前記従来の保持具を採用することは困難である。
【0006】
そこで、近年では、前記保持具の基台に弾拡ピンを突出形成する代わりに、基台の裏面に両面テープを貼着し、この両面テープを介して保持具を板材に固定することで、ハウジング内の無駄なスペースを無くし、小型化を達成する方法も採用されている。
【特許文献1】実開昭55−84369号公報
【特許文献2】実公平5−4297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記両面テープ等の接着材を介して保持具を対象物に貼着した場合、前記機器の使用条件や、接着材の経時変化等によって、接着材の接着力が低下し、対象物から保持具が外れたり、落下する虞がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、構造が簡単であり、小型の各種機器に使用することが可能であると共に、各種機器のシャーシ等の対象物に簡単に取付けることが可能な長尺体保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、対象物に着脱可能に取付けられ、当該対象物に取付けられた際に、該対象物の第1の面との間に形成される空間に長尺体を保持する長尺体保持具であって、前記保持された長尺体の長手方向に対し略垂直な断面が略C字状を有し、当該略C字状を確定する両端部は、互いに離れる方向に弾性変形することで、前記対象物に形成された係合穴に各々挿入可能であると共に、当該係合穴に挿入された際に弾性復元して前記対象物に係合し、前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記各々の係合穴を閉鎖する閉鎖部を備えてなる長尺体保持具を提供するものである。
【0010】
この構成を備えた長尺体保持具は、略C字状を確定する両端部が対象物に係合する、すなわち、2カ所で対象物に係合して該対象物に取付けられるため、1カ所で対象物に係合する保持具に比較して、前記係合部分を小さくしても、前記対象物に確実に取付けることができる。したがって、前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該両端部が対象物の裏面に突出する部分を小さくする(突出量が小さい)ことができる。また、構造が簡単であるため、長尺体を保持する部分を必要最低限の大きさにすることもできる。このため、小型化を達成することができ、省スペース化を実現することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかる長尺体保持具は、前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該対象物に形成されている各々の係合穴を閉鎖する閉鎖部を備えているため、当該係合穴を介して、対象物の第1の面から、この第1の面とは反対側に位置する第2の面に、あるいは当該第2の面から前記第1の面に、埃等が侵入することを防止することができるのは勿論のこと、光が漏れることも防止することができる。したがって、長尺体保持具が配設される機器の内部と外部を遮光することが必要である各種光学機器等にも好適に使用することができる。
【0012】
なお、本発明でいう「略C字状」とは、長尺体保持具に保持された長尺体の長手方向に対し略垂直な断面(すなわち、前記長手方向から見た正面)形状が、一方が開放され、この一方とは反対側が閉鎖された形状を示しており、例えば、略コ字状、略U字状等も含まれるものとする。
【0013】
また、本発明にかかる長尺体保持具は、前記両端部が前記各々の係合穴に挿入された際に、前記対象物の第1の面とは反対側に位置する第2の面に係合すると共に、互いに近づく方向に延出してなる係合爪を各々有し、前記閉鎖部は、前記各々の係合爪が前記第2の面と係合した際に、前記第1の面に対向配置され、前記係合穴に挿入された両端部と、当該係合穴を確定する対象物の壁面とが形成する隙間を各々閉鎖するよう構成することができる。
【0014】
この構成の場合、前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記係合爪と前記閉鎖部とにより、前記対象物を挟持することもできる。このようにすることで、長尺体保持具を対象物に、さらに確実に取付けることができる。
【0015】
そしてまた、本発明にかかる長尺体保持具は、前記略C字状を確定する内側空間に、前記両端部を互いに離れる方向に押圧可能な治具を挿入可能であり、当該治具を前記内部空間に挿入した際に、当該治具の一端側から他端側に移動することで、前記治具の押圧力により当該両端部が互いに離れる方向に弾性変形され、前記係合穴に挿入されるよう構成することもできる。このように構成することで、前記利点に加え、治具を使用して、長尺体保持具を対象物に取付けることができるため、素手で取り扱うことが困難である小型の長尺体保持具であっても、対象物に簡単に取付けることができる。
【0016】
また、本発明は、対象物に着脱可能に取付けられ、当該対象物に取付けられた際に、該対象物の第1の面との間に形成される空間に長尺体を保持する長尺体保持具であって、前記保持された長尺体の長手方向に対し略垂直な断面が略C字状を有し、当該略C字状を確定する両端部は、互いに近づく方向に弾性変形することで、前記対象物に形成された係合穴に各々挿入可能であると共に、当該係合穴に挿入された際に弾性復元して前記対象物に係合し、前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該対象物に取付けられ且つ前記各々の係合穴を閉鎖する長尺体保持具を提供するものである。
【0017】
この構成を備えた長尺体保持具は、略C字状を確定する両端部が対象物に係合することで該対象物に取付けられるため、1カ所で対象物に係合する保持具に比較して、前記係合部分を小さくしても、前記対象物に確実に取付けることができる。さらに、前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記各々の係合穴を閉鎖するため、当該係合穴を介して、対象物の第1の面から、この第1の面とは反対側に位置する第2の面に、あるいは当該第2の面から前記第1の面に、埃等が侵入することを防止することができるのは勿論のこと、光が漏れることも防止することができる。したがって、小型化を達成することができると共に、長尺体保持具が配設される機器の内部と外部を遮光することが必要である各種光学機器等にも好適に使用することができる。
【0018】
また、この構成を備えた長尺体保持具は、前記両端部が前記各々の係合穴に挿入された際に、前記対象物の第1の面とは反対側に位置する第2の面に係合すると共に、互いに離れる方向に延出してなる係合爪を各々有し、前記各々の係合爪は、前記第2の面と各々係合した際に、前記係合穴に挿入された両端部と、当該係合穴を確定する対象物の壁面とが形成する隙間を各々閉鎖するよう構成することができる。この構成の場合、係合爪が、前記隙間を各々閉鎖する役割も果たすため、さらに形状を簡略化することができ、小型化を一層向上することができる。
【0019】
そしてまた、本発明にかかる長尺体保持具は、前記両端部を互いに近づく方向に押圧可能な治具で外側から挟持可能であり、当該治具で挟持された際に、当該治具の一端側から他端側に移動することで、前記治具の押圧力により当該両端部が互いに近づく方向に弾性変形され、前記係合穴に挿入されるよう構成することもできる。このように構成することで、前記利点に加え、治具を使用して、長尺体保持具を対象物に取付けることができるため、素手で取り扱うことが困難である小型の長尺体保持具であっても、対象物に簡単に取付けることができる。
【0020】
また、この構成の場合、前記治具は、前記両端部を外側から各々挟持する挟持部と、前記略C字状を確定する内側空間に挿入され、前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記第1の表面に対向する内壁を支持する支持部と、を備えてなり、前記治具で挟持された際に、前記内壁が前記支持部に支持されるよう構成してもよい。
【0021】
さらにまた、本発明にかかる長尺体保持具は、前記治具の一端側から他端側に向けて延設されたガイド部に案内され、当該ガイド部に沿って移動可能な被ガイド部をさらに備えることができる。このように構成することで、前記利点に加え、治具を使用して、長尺体保持具を対象物に取付ける際に、長尺体保持具が所定の位置からずれることがなく、作業効率をさらに向上することができる。
【0022】
また、前記被ガイド部は、前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該対象物の第1の面と対向する内壁に形成することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる長尺体保持具は、略C字状を確定する両端部が対象物に係合することで該対象物に取付けられるため、1カ所で対象物に係合する保持具に比較して、前記係合部分を小さくしても、前記対象物に確実に取付けることができる。また、前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該対象物に形成されている各々の係合穴を閉鎖することができる。この結果、構成を簡略化し且つ小型化を達成することができると共に、配設される機器内に埃等が侵入することを防止することができるのは勿論のこと、機器の内部と外部を遮光することが必要である各種光学機器等にも好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる長尺体保持具について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる長尺体保持具の斜視図、図2は、図1に示す長尺体保持具の正面図であって、長尺体保持具が弾性変形していない状態(初期状態)を示す図、図3は、図1に示す長尺体保持具の平面図、図4は、図1に示す長尺体保持具の底面図、図5は、図1に示す長尺体保持具の側面図、図6は、図1に示す長尺体保持具の正面図であって、長尺体保持具が弾性変形した状態を示す図、図7は、治具に図1に示す長尺体保持具を装着した状態を示す斜視図、図8は、図7に示すVIII−VIII線に沿った断面図、図9は、図1に示す長尺体保持具が治具の先端に移動した状態を示す断面図、図10は、治具を用いて、図1に示す長尺体保持具をシャーシに取付ける状態を示す断面図、図11は、図1に示す長尺体保持具に配線を保持させてシャーシに取付けた状態を示す断面図である。
【0026】
なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。また、シャーシは、配線(長尺体)が配設される側を「上面」(第1の面)、上面とは反対側の面を「裏面」(第2の面)として説明する。
【0027】
図11に示すように、実施の形態1にかかる長尺体保持具1は、例えば、機器類のシャーシ100に着脱可能に取付けられ、シャーシ100に取付けられた際に、シャーシ100の上面102との間に形成される空間103に配線200を保持するものである。
【0028】
この長尺体保持具1は、図1〜図11に示すように、正面視で略C字状を有する保持具本体11を備えている。この保持具本体11は、略C字状を確定する端部12A及び12Bと、端部12A及び12Bに連続して形成され且つ端部12Aと端部12Bとの間に位置し、端部12A及び12Bと共に略C字状を確定する中央部13を備えている。また、長尺体保持具1は、外部から所定の力が加えられることにより、端部12A及び12Bが初期状態(図2参照)から互いに離れる方向に弾性変形可能(図6参照)であり、これによって中央部13も弾性変形する。そしてまた、長尺体保持具1は、前記外部からの力から解放された際に弾性復元して初期状態に戻る。
【0029】
端部12A及び12Bは、内側に湾曲した形状を有しており、各々の先端には、互いに近づく方向に延出した係合爪14A及び14Bが各々形成されている。これらの端部12A及び12Bは、互いに離れる方向に弾性変形することで、シャーシ100に形成された係合穴101A及び101Bに各々挿入され(図10参照)、係合穴101A及び101Bに挿入された際に弾性復元して、係合爪14A及び14Bがシャーシ100の裏面105に係合する(図11参照)ことで、長尺体保持具1がシャーシ100に取付けられる。
【0030】
中央部13の内壁の略中央位置には、長尺体保持具1に保持された配線200の長手方向に延びる凸部107が形成されている。この凸部107は、後に詳述する治具300に形成された凹部307(図7参照)に沿って移動可能に案内される被ガイド部の役割を果たしている。この中央部13は、前述したように、長尺体保持具1がシャーシ100に取付けられた際に、シャーシ100の上面102との間に所定の大きさの空間103を確定し、この空間103内に配線200を保持するようになっている。
【0031】
さらに、保持具本体11には、長尺体保持具1がシャーシ100に取付けられた際に、シャーシ100の上面102側から係合穴101A及び101Bを各々閉鎖可能であると共に、上面102を押圧可能な位置に、閉鎖部16A及び16Bが突出形成されている。これらの閉鎖部16A及び16Bは、初期状態(図2参照)では、各々の先端が中央部13から離れるように、図2でいう斜め下方に(すなわち、長尺体保持具1をシャーシ100に取付ける際に、閉鎖部16A及び16Bの先端が基端よりも、シャーシ100の上面102に近づくように斜めに)突出している。また、閉鎖部16A及び16Bは、斜めに配設された状態から略水平な状態となるように弾性変形可能となっている。したがって、長尺体保持具1がシャーシ100に取付けられた際には、閉鎖部16A及び16Bの弾性復元力によって、閉鎖部16A及び16Bがシャーシ100の上面102を押圧すると共に、係合爪14A及び14Bがシャーシ100の裏面105に係合するため、閉鎖部16A及び16Bと、係合爪14A及び14Bとでシャーシ100を挟持することになる。このため、シャーシ100の裏面105側に突出する係合爪14A及び14Bが小型で簡素な形状を有しており、シャーシ100の裏面105から突出する部分が小さくても(シャーシ100の裏面105から突出量が少なくても)長尺体保持具1をシャーシ100に確実に固定することができる。したがって、例えば、シャーシ100が、各種機器のハウジング内に配設されている場合は、ハウジングの内壁面とシャーシ100の裏面105との間に、係合爪14A及び14Bが位置するためのスペースを小さくすることができ、各種機器の小型化に貢献することができる。
【0032】
さらにまた、閉鎖部16A及び16Bは、長尺体保持具1がシャーシ100に取付けられた際に、係合穴101A及び101Bに各々挿入された端部12A及び12Bと、係合穴101A及び101Bを確定するシャーシ100の壁面108A及び108Bとが形成する隙間を閉鎖することができるため、係合穴101A及び101Bから埃等が侵入することを防止できることは勿論のこと、光が漏れることも防止することができる。
【0033】
なお、この長尺体保持具1が非常に小型であっても、図7に示すような治具300を用いて、長尺体保持具1をシャーシ100に取付けることができるため、取付作業を簡単に行うことができる。この治具300は、図7及び図8に示すように、長尺体保持具1が初期状態の際に、長尺体保持具1の内側に形成された空間に挿入され、長尺体保持具1が初期状態のまま前記挿入方向に移動可能な第1の誘導部301と、図9に示すように、第1の誘導部301の一端に形成され且つ先端にいくにしたがって、長尺体保持具1の端部12A及び12Bを互いに離れる方向に弾性変形させるように、第1の誘導部301の断面形状に対し、長尺体保持具1の両端部12A及び12Bと接触する部分間の距離が長くなるように形成された第2の誘導部302を備えている。
【0034】
また、図7〜図10に示すように、この治具300の内側には、凹部303が長手方向に沿って形成されている。この凹部303は、特に図10に示すように、長尺体保持具1をシャーシ100に取付ける際に、長尺体保持具1に保持されるべき配線200を収容するためのものであり、後に詳述するが、この凹部303に配線を収容した状態で長尺体保持具1をシャーシ100に取付けることで、シャーシ100の上面102と中央部13との間に形成される空間103に、配線200を簡単に保持させることができる。
【0035】
さらにまた、治具300が長尺体保持具1の内側に形成された空間に挿入された際に、凸部107と対向する治具300の面には、凸部107を移動可能に収容する凹部307が、第1の誘導部301及び第2の誘導部302に亘って長手方向に沿って形成されている。この凹部307は、長尺体保持具1が治具300の長手方向に沿って移動する際に、長尺体保持具1が回転したり、所定の位置からずれたりすることを防止し、長尺体保持具1が適切な状態で移動することをガイドする役割を果たしている。
【0036】
この治具300を用いて長尺体保持具1をシャーシ100に取付けるには、先ず、長尺体保持具1の内側に形成された空間に、第1の誘導部301の先端を挿入し、長尺体保持具1を第2の誘導部302に向けて移動させる。(図7及び図8参照)。この時、長尺体保持具1の凸部107が凹部307に受容され、凹部307にガイドされた状態で長尺体保持具1が移動するため、長尺体保持具1が非常に小型であっても、長尺体保持具1を簡単に第2の誘導部302まで移動させることができる。
【0037】
次に、第2の誘導部302に到達した長尺体保持具1を第2の誘導部302の先端まで移動させるが、この時、第2の誘導部302は、前述したように、先端にいくにしたがって長尺体保持具1の端部12A及び12Bを互いに離れる方向に弾性変形させる(図9参照)ため、端部12A及び12Bの先端は、初期状態よりも外側に押し拡げられ、シャーシ100に形成された係合穴101A及び101B上に位置することになる。(図10参照)。また、この時、治具300の凹部303と、シャーシ100の上面102とにより確定される空間(すなわち、凹部303内)に、長尺体保持具1に保持されるべき配線200を位置させる。
【0038】
次に、この状態で、長尺体保持具1の内側に形成された空間から治具300を抜脱しながら、長尺体保持具1をシャーシ100の上面102に押圧すると、長尺体保持具1の端部12A及び12Bが、係合穴101A及び101Bに各々簡単に挿入され、その後、弾性復元し、端部12A及び12Bに各々形成されている係合爪14A及び14Bが、シャーシ100の裏面105に係合すると共に、配線200が、シャーシ100の上面102との間に形成される空間103に保持される。(図11参照)。また、この時、長尺体保持具1の閉鎖部16A及び16Bが、シャーシ100の上面102側から係合穴101A及び101Bを塞ぐと共に、上面102を押圧する。このため、長尺体保持具1は、係合爪14A及び14Bと、閉鎖部16A及び16Bとによりシャーシ100を両側から挟持することで、シャーシ100に確実に固定される。
【0039】
なお、実施の形態1では、端部12A及び12Bを内側に湾曲した形状とした場合について説明したが、これに限らず、端部12A及び12Bは、例えば、図12〜図14に示すように、中央部13からほぼ直線的に延出し、その先端に略90度で内側に屈曲した(すなわち、互いに近づく方向に屈曲した)鉤状の係合爪14A及び14Bを形成した形状としてもよい。この形状の場合、図14に示すように、係合爪14A及び14Bは、面でシャーシ100の裏面105に当接するため、長尺体保持具1をさらに確実にシャーシ100に固定することができる。したがって、閉鎖部16A及び16Bは、シャーシ100の上面102に対し略水平となるように形成しても、長尺体保持具1は、係合爪14A及び14Bと、閉鎖部16A及び16Bとによりシャーシ100を両側から挟持され、シャーシ100に確実に固定されることになる。
【0040】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2について図面を参照して説明する。図15は、本発明の実施の形態2にかかる長尺体保持具の正面図、図16は、図15に示す長尺体保持具と、この長尺体保持具が取付けられるシャーシとの関係を示す断面図、図17は、治具を用いて、図15に示す長尺体保持具をシャーシに取付ける状態を示す断面図、図18は、図15に示す長尺体保持具に配線を保持させてシャーシに取付けた状態を示す断面図である。
【0041】
なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。また、実施の形態2では、実施の形態1で説明した部材と同様の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
図15〜図18に示すように、実施の形態2にかかる長尺体保持具2の、実施の形態1にかかる長尺体保持具1と異なる主な点は、保持具本体21の端部22A及び22Bが互いに近づく方向に弾性変形することで、シャーシ100に形成された係合穴101A及び101Bに各々挿入可能である点と、端部22A及び22Bの先端に形成された係合爪24A及び24Bが互いに離れる方向に延出している点と、係合爪24A及び24Bが閉鎖部16A及び16Bの役割も果たしていることである。
【0043】
すなわち、実施の形態2にかかる長尺体保持具2は、正面視で略C字状を有する保持具本体21を備えており、この保持具本体21は、略C字状を確定する端部22A及び22Bと、端部22A及び22Bに連続して形成され且つ端部22Aと端部22Bとの間に位置し、端部22A及び22Bと共に略C字状を確定する中央部13を備えている。この長尺体保持具2は、外部から所定の力が加えられることにより、端部22A及び22Bが初期状態(図15及び図16参照)から互いに近づく方向に弾性変形可能(図17及び図18参照)であり、これによって中央部13も弾性変形する。そしてまた、長尺体保持具2は、前記外部からの力から解放された際に弾性復元して初期状態に戻る。
【0044】
端部22A及び22Bの各々の先端には、互いに離れる方向に延出した係合爪24A及び24Bが各々形成されている。これらの端部22A及び22Bは、互いに近づく方向に弾性変形することで、シャーシ100に形成された係合穴101A及び101Bに各々挿入され(図18参照)、係合穴101A及び101Bに挿入された際に弾性復元して、係合爪24A及び24Bがシャーシ100の裏面105に係合することで、長尺体保持具2がシャーシ100に取付けられる。
【0045】
係合爪24A及び24Bは、シャーシ100の裏面105と対向する面が裏面105に当接することで係合するため、長尺体保持具2をシャーシ100に確実に固定することができる。このため、シャーシ100の裏面105側に突出する係合爪24A及び24Bが小型で簡素な形状を有しており、シャーシ100の裏面105から突出する部分が小さくても(シャーシ100の裏面105から突出量が少なくても)長尺体保持具2をシャーシ100に確実に固定することができる。したがって、例えば、シャーシ100が、各種機器のハウジング内に配設されている場合は、ハウジングの内壁面とシャーシ100の裏面105との間に、係合爪24A及び24Bが位置するためのスペースを小さくすることができ、各種機器の小型化に貢献することができる。さらにまた、係合爪24A及び24Bは、長尺体保持具2がシャーシ100に取付けられた際に、係合穴101A及び101Bに各々挿入された端部22A及び22Bと、係合穴101A及び101Bを確定するシャーシ100の壁面108A及び108Bとが形成する隙間を閉鎖することができるため、係合穴101A及び101Bから埃等が侵入することを防止できることは勿論のこと、光が漏れることも防止することができる。
【0046】
なお、この長尺体保持具2が非常に小型であっても、図17に示すような治具400を用いて長尺体保持具2をシャーシ100に取付けることができるため、取付作業を簡単に行うことができる。この治具400は、図17に示すように、長尺体保持具2が初期状態の際に、長尺体保持具2の内側に形成された空間に挿入され、長尺体保持具2を支持する支持部401と、支持部401の先端にいくにしたがって、長尺体保持具2の端部22A及び22Bを互いに近づく方向に弾性変形させるように、端部22A及び22Bを押圧する押圧部402A及び402Bを備えている。押圧部402A及び402Bの基端は、支持部401の基端に連結されており、先端にいくにしたがって、互いに近づく方向に延出している。治具400に長尺体保持具2を装着した際に、長尺体保持具2形成された凸部107と対向する支持部401の面には、実施の形態1と同様に、凹部307が形成されている。
【0047】
ここで、支持部401は、長尺体保持具2を支持し、凹部307によって長尺体保持具2の移動をガイドする役割を果たすものであるため、治具400に長尺体保持具2を装着した際に、長尺体保持具2の端部22A及び22Bの先端との間に配線200を収容可能な空間を形成することができるサイズで構成することができる。(図17参照)。したがって、治具300のように凹部303を形成する必要がない。
【0048】
この治具400を用いて長尺体保持具2をシャーシ100に取付けるには、先ず、長尺体保持具2の内側に形成された空間に、支持部401を挿入すると共に、長尺体保持具2の端部22A及び22Bを、支持部401と、押圧部402A及び402Bとの間に各々形成された空間に挿入する。この状態で長尺体保持具2を治具400の先端側に向けて移動させると、端部22A及び22Bが互いに近づく方向に弾性変形する(図17参照)ため、端部22A及び22Bの先端は、シャーシ100に形成された係合穴101A及び101B上に位置することになる。この長尺体保持具2の移動は、実施の形態1と同様に長尺体保持具2の凸部107が凹部307にガイドされた状態で行われるため、長尺体保持具2が非常に小型であっても、長尺体保持具2を簡単に移動させることができる。また、この時、支持部401と、シャーシ100の上面102とにより確定される空間に、長尺体保持具2に保持されるべき配線200を位置させる。
【0049】
次に、この状態で、長尺体保持具2から治具300を抜脱しながら、長尺体保持具2をシャーシ100の上面102に押圧すると、長尺体保持具2の端部22A及び22Bが、係合穴101A及び101Bに各々簡単に挿入され、その後、弾性復元し、端部22A及び22Bに各々形成されている係合爪24A及び24Bが、シャーシ100の裏面105に係合すると共に、配線200が、シャーシ100の上面102との間に形成される空間103に保持される。(図18参照)。また、この時、係合穴101A及び101Bは、係合爪24A及び24Bにより、シャーシ100の裏面105側からを塞がれる。
【0050】
なお、長尺体保持具2の構成の場合、図18に示すように、配線200を保持した状態でシャーシ100に取付けられた際に、凸部107が配線200に当接する、あるいは中央部13の内壁が配線200に当接するように端部22A及び22Bの長さを設計することで、長尺体保持具2は、配線200を介して、凸部107と、係合爪24A及び24Bとでシャーシ100を挟持することになるため、シャーシ100にさらに確実に固定されることになる。
【0051】
また、実施の形態1及び2では、長尺体保持具1及び2に凸部107を形成し、治具300及び400に凹部307を形成した場合について説明したが、これに限らず、長尺体保持具1及び2に凹部307を形成し、治具300及び400に凸部107を形成してもよい。
【0052】
そしてまた、実施の形態1及び2では、治具300及び400を用いて長尺体保持具1及び2をシャーシ100に取付けた場合について説明したが、これに限らず、長尺体保持具1及び2は素手でシャーシ100に取付けてもよいことは勿論である。なお、この場合は、凸部107を形成する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる長尺体保持具の斜視図である。
【図2】図1に示す長尺体保持具の正面図であって、長尺体保持具が弾性変形していない状態(初期状態)を示す図である。
【図3】図1に示す長尺体保持具の平面図である。
【図4】図1に示す長尺体保持具の底面図である。
【図5】図1に示す長尺体保持具の側面図である。
【図6】図1に示す長尺体保持具の正面図であって、長尺体保持具が弾性変形した状態を示す図である。
【図7】治具に図1に示す長尺体保持具を装着した状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示すVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図1に示す長尺体保持具が、治具の先端に移動した状態を示す断面図である。
【図10】治具を用いて、図1に示す長尺体保持具をシャーシに取付ける状態を示す断面図である。
【図11】図1に示す長尺体保持具に配線を保持させてシャーシに取付けた状態を示す断面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態にかかる長尺体保持具をシャーシに取付ける状態を示す断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態にかかる長尺体保持具をシャーシに取付ける状態を示す断面図である。
【図14】図12に示す長尺体保持具に配線を保持させてシャーシに取付けた状態を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態2にかかる長尺体保持具の正面図である。
【図16】図15に示す長尺体保持具と、この長尺体保持具が取付けられるシャーシとの関係を示す断面図である。
【図17】治具を用いて、図15に示す長尺体保持具をシャーシに取付ける状態を示す断面図である。
【図18】図15に示す長尺体保持具に配線を保持させてシャーシに取付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1、2 長尺体保持具
11、21 保持具本体
12A、12B、22A、22B 端部
13 中央部
14A、14B、24A、24B 係合爪
16A、16B 閉鎖部
100 シャーシ
101A、101B 係合穴
107 凸部
200 配線
300、400 治具
307 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に着脱可能に取付けられ、当該対象物に取付けられた際に、当該対象物の第1の面との間に形成される空間に長尺体を保持する長尺体保持具であって、
前記保持された長尺体の長手方向に対し略垂直な断面が略C字状を有し、当該略C字状を確定する両端部が互いに離れる方向に弾性変形することで、前記対象物に形成された係合穴に各々挿入可能であると共に、当該係合穴に挿入された際に弾性復元して前記対象物に係合し、
前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記各々の係合穴を閉鎖する閉鎖部を備えてなる長尺体保持具。
【請求項2】
前記両端部は、前記各々の係合穴に挿入された際に、前記対象物の第1の面とは反対側に位置する第2の面に係合すると共に、互いに近づく方向に延出してなる係合爪を各々有し、
前記閉鎖部は、前記各々の係合爪が前記第2の面と係合した際に、前記第1の面に対向配置され、前記係合穴に挿入された両端部と、当該係合穴を確定する対象物の壁面とが形成する隙間を各々閉鎖する請求項1記載の長尺体保持具。
【請求項3】
前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記係合爪と前記閉鎖部とにより、前記対象物を挟持する請求項2記載の長尺体保持具。
【請求項4】
前記略C字状を確定する内側空間に、前記両端部を互いに離れる方向に押圧可能な治具を挿入可能であり、当該治具を前記内部空間に挿入した際に、当該治具の一端側から他端側に移動することで、前記治具の押圧力により当該両端部が互いに離れる方向に弾性変形され、前記係合穴に挿入される請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の長尺体保持具。
【請求項5】
対象物に着脱可能に取付けられ、当該対象物に取付けられた際に、当該対象物の第1の面との間に形成される空間に長尺体を保持する長尺体保持具であって、
前記保持された長尺体の長手方向に対し略垂直な断面が略C字状を有し、当該略C字状を確定する両端部が互いに近づく方向に弾性変形することで、前記対象物に形成された係合穴に各々挿入可能であると共に、当該係合穴に挿入された際に弾性復元して前記対象物に係合し、
前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該対象物に取付けられ且つ前記各々の係合穴を閉鎖する長尺体保持具。
【請求項6】
前記両端部は、前記各々の係合穴に挿入された際に、前記対象物の第1の面とは反対側に位置する第2の面に係合すると共に、互いに離れる方向に延出してなる係合爪を各々有し、
前記各々の係合爪は、前記第2の面と各々係合した際に、前記係合穴に挿入された両端部と、当該係合穴を確定する対象物の壁面とが形成する隙間を各々閉鎖する請求項5記載の長尺体保持具。
【請求項7】
前記両端部を互いに近づく方向に押圧可能な治具で外側から挟持可能であり、当該治具で挟持された際に、当該治具の一端側から他端側に移動することで、前記治具の押圧力により当該両端部が互いに近づく方向に弾性変形され、前記係合穴に挿入される請求項5または請求項6記載の長尺体保持具。
【請求項8】
前記治具は、前記両端部を外側から各々挟持する挟持部と、前記略C字状を確定する内側空間に挿入され、前記両端部が前記対象物に係合した際に、前記第1の表面に対向する内壁を支持する支持部と、を備えてなり、
前記治具で挟持された際に、前記内壁が前記支持部に支持される請求項7記載の長尺体保持具。
【請求項9】
前記治具の一端側から他端側に向けて延設されたガイド部に案内され、当該ガイド部に沿って移動可能な被ガイド部をさらに備えた請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の長尺体保持具。
【請求項10】
前記治具の一端側から他端側に向けて延設されたガイド部に案内され、当該ガイド部に沿って移動可能な被ガイド部をさらに備え、当該被ガイド部は、前記両端部が前記対象物に係合した際に、当該対象物の第1の面と対向する内壁に形成されてなる請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項8のいずれか一項に記載の長尺体保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−133355(P2009−133355A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308235(P2007−308235)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】