説明

閉塞作用を強化した光線力学的療法

本発明は、光感受性物質の投与及び続く光感受性物質を光活性化するのに充分な特定の波長の光へ暴露して、延長された期間新生血管中の1以上の脈管を閉塞することによる眼の血管新生疾患を治療する方法を開示している。本発明により治療することができる疾患は、例えば:糖尿病性網膜症;黄斑変性;中心窩下脈絡膜血管新生;悪性ブドウ膜黒色腫及びヒト又は動物の眼又は身体のその他の疾患などである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医学及び光感作薬又は他のエネルギーにより活性化される薬物による薬物治療の分野に関係する。特に、本発明は眼の血管新生疾患の治療に有用な方法に関係する。本発明は、光により活性化されて、血管新生組織内において長時間増強された血管閉塞を生じる光感作薬の投与を含む。
【背景技術】
【0002】
眼の血管新生疾患には、例えば、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症及び血管新生因子に誘発されるか或いは腫瘍細胞自身により生じる新生血管増殖がある。糖尿病性網膜症は、最終的に有害な視力の変化及び失明に至ることがある多数の多様な微小血管変性が特徴である。多くの場合に、この微小血管変化は、新しい血管の形成、血管透過性の変化及び他の可能な血管形態の変化を生じる血管新生受容体及びリガンドの因子の上方調節によるか又は関連している。これらの変化は、視覚障害を生じる出血、浮腫、虚血及びその他の問題を生じる可能性がある(Aielloら,Diabetes Care,21:143〜156,1998)。
【0003】
糖尿病性網膜症の種々な形、及びそれに関連する種々な問題の治療には、例えば、レーザー光凝固、硝子体切除、冷凍凝固及び膜切除がある。これらの臨床的療法及び方法は全て、問題及び副作用を伴っている。例えば、糖尿病性網膜症の治療に現在最も多く使用されている汎網膜レーザー光凝固に関係する副作用及び合併症は:視力の減少、黄斑の浮腫の増加、一過性の痛み、滲出性網膜剥離及び不注意による小窩の火傷である。
【0004】
さらに、米国では、65歳以上の人において加齢による黄斑変性(「AMD」)が失明の主要な原因である。AMDの一つの型は、視覚障害及び失明を生じる多数の病的状態に至ることがある脈絡膜新生血管の形成が特徴である。糖尿病性網膜症に関して、これらの新生血管の形成に血管新生が重要な役割を演じている。AMDに関連する脈絡膜新生血管の増殖及び/または漏出は、光受容体の不可逆的損傷の原因となりうる。したがって、AMDの現在の治療は、糖尿病網膜症と同様に、レーザー光凝固の使用である。しかし、光凝固は脈絡膜新生血管全体の熱破壊によるため、網膜及び周囲の脈絡膜への損傷はしばしば新生血管の漏出などを生じる。さらに、該組織の増殖の再発又は光凝固治療後の該組織の漏出は多い。(Schmidt−Erfurthら,Greafe’s Arch Clin Exp Opthamol,236:365−374,1998).
【0005】
光線力学的療法(PDT)において、「光感受性物質」としても知られている光反応性化合物のクラスは、病気又は好ましくない組織を治療するために、特定の照明波長により励起される。一般に、光を利用するPDT治療は、二段階の治療過程である。該治療は、一般的に、最初に光感受性化合物を全身的に又は局所的に投与し、次いで光感受性物質の吸収スペクトルにぴったりと一致する波長又は波帯のレーザー光で治療部位を照射することにより行われる。そうすることにより、一重項酸素及び他の反応性化学種を発生し、内皮膜の障害そして最終的には新生血管の凝血又は閉塞を生じる多数の生物学的作用を生じる。
【0006】
さらに、PDTに適する光感受性物質は、少なくとも一つの光の波長(「励起波長」)により活性化することができ、そして眼、心臓、腫瘍及びその他の様々な病的状態の標的組織を治療するために、しばしばレーザー光として供給される適当な励起波長の光源と組み合わせて使用される。さらに、PDTの光源は、操作時間を短縮するために通常用いられる一般に強力なレーザーである(Strongら、米国特許番号第5,756,541号及び同第5,910,510号;並びにMoriら、米国特許番号第5,633,275号;より一般的にはW.G.Fisherら、Photochemistry and Photobiology,66(2):141〜155,1997参照)。
【0007】
したがって、光反応治療システムの二つの重要なそして関連する要素は、光感受性物質及び標的組織に適切に光を供給するための励起光源と装置である。したがって、多くの研究がこの両者の領域に向けられた。装置に関して、PDT用の従来の装置で、光の暴露の好ましい強度、持続性及び形状及び病的組織に光感受性物質が存在する時のタイミングを検討した。誤った方向又は誤った形の照射のような不適切な照射、又は強度過剰でも光感受性物質が正常健康組織を不必要に傷害する原因になりうるであろう。光感受性物質の場合に、毒性がなく、刺激性もなく、そして少なくとも耐容性が良くなくてはならない、そして活性化された時には、最少の遅延でその血管閉鎖(「閉塞」)作用は有効にならなくてはならない。
【0008】
実施例及びさらに説明することにより、(湿性)加齢性黄斑変性(AMD)、緑内障及び糖尿病性網膜症(DR)において、病気の眼の組織の中の異常な新血管増殖(「新血管新生」として知られる)により一般的に示されるような疾患の進行を阻止又は遅延するために、そして漏出する新しい血管に関係する可能性のある因子を減少させるか又は除去するために、光により活性化される光感受性物質をPDT治療により使用することができる。
【0009】
適当な波長のレーザー又は他の光を使用するPDTの方法により血管新生を治療することは先行技術において知られていたが、これらの方法は異常な新しい血管の再増殖及び/又は既に閉塞した異常な新しい血管の再開通を完全には止めなかった。例えば、光凝固法の代替として、AMDの治療の手段として光線力学療法が提案されている(Strongら、“Vision through photodynamic therapy of the eye,”米国特許番号第5,756,541号及び同第5,910,510号;並びにMoriら、“Photochemotherapeutical obstruction of newly formed blood vessels,”米国特許番号第5,633,275号を参照)。この形及びPDTの例は光凝固法より改良されていることを示したが、臨床実験により、この治療は、新血管の再増殖又は血管の再開通のために、定期的に、典型的には3ヶ月ごとに反復しければならないことが明らかにされた(Schmidt−Erfurthら参照)。
【0010】
さらに、営利的に行われた眼のPDTの公表されたデータによると、治療を受けた新血管が新たに形成された血管のいずれも効果的に閉塞するために、また再開通した過去に治療した血管を再閉塞するために患者の眼を追跡して、再治療することが医学的に必要及び/又は好ましいことが観察されている。そのような好ましくない結果は、加齢黄斑病(AMD)を治療するためのPDT手法における光感受性物質として使用されるVisudyne(登録商標)[カナダのバンクーバーのQLTの商標]としても知られているベルテポルフィンの使用に関係する公表データにも認められる。例えば、以下を参照:Visudyne(登録商標)の能書;[AA]“Photodynamic Therapy with Verteporfin for Choroidal Neovascularization Caused by Age−related Macular Degeneration:Results of a Single Treatment in a Phase 1 and 2 Study”,Joan W Millerら,ARCH OPHTHALMOL,vol.117 September 1999;[AB]“Photodynamic Therapy with Verteporfin for Choroidal Neovascularization Caused by Age−related Macular Degeneration:Results of Retreatments in a Phase 1 and 2 Study”,Schmidt−ErfurthらARCH OPHTHALMOL,vol.117 September 1999[AC]“Short−term Reaction of Choroidal Neovascularization and Choriocapillaris to Photodynamic Therapy in Age−related Macular Degeneration”,Eterら European Journal of Ophthalmology,7 vol.13 pp687−692(2003).これらの試験([AA],[AB]及び[AC])のそれぞれについて以下でさらに考察する。
【0011】
試験[AA]は、中心窩下脈絡膜血管新生(CNV)を示す患者128例における、光感受性物質としてベルテポルフィンを使用した眼のPDT治療に関するものである。試験結果は、PDT治療の約4から約12週間後に、殆んど全例にフルオレッセインの漏出が再度生じたことを示した。さらに、治療前に確認されたCNVの領域を超えて典型的CNVが進行したことが、1回PDT治療後3ヶ月間追跡した症例の51%に認められた。結果として、この試験から、ベルテポルフィンによるPDT治療は、AMDの患者の一部において、視力を失わずにCNVのフルオレッセイン漏出及び典型的CNVの増殖を「短期間」止めることができると結論された。
【0012】
試験[AB]は、ベルテポルフィンPDT治療により再治療された31例の被検者の追跡試験であった。試験結果は、最初の治療後16から21週間以内に追跡検査が行われたことを示した。また、試験は、殆んどの症例において再治療後4から12週間以内にフルオレッセインの漏出が再度出現したことを示した。しかし、ベースラインの漏出に比較して、漏出活性は減少しているように見えた。しかし、この特別な試験により、反復のベルテポルフィンPDT治療は視力を失わずに漏出を「短期間」だけ達成することができると結論された。さらに、この試験結果は、再治療は「徐々に漏出の停止を達成する可能性があり」、CNVのこれ以上の増殖及び続く失明を防止しすることを示しているが、注意すべきことは、「漏出の継続的消失は、最高の光量においてさえ、4から12週以内の時点では達成されなかった」ことを示した。
【0013】
試験[AC]は、ベルテポルフィンPDT治療に対する一次血管造影ノンレスポンダーの数を決定するために、そしてTAPレジメンによる試験36眼における5週間後の再潅流の率を決定するために計画された。一般的に、TAPレジメンは50歳を超え、AMDと診断された患者の選別に関係し、AMDに関連する視覚の症状が出てから1ヶ月以内に検査が行われ、そしてICG(インドシアニングリーン血管造影)により、又はFA(フルオレッセイン血管造影)法によりCNVが確認された(FA法のほうが好ましい)。
【0014】
1及び5週における被検者の検査は、フルオレッセイン及びインドシアニングリーン血管造影を使用して行われた。治療前、全ての眼(36)は漏出を示した;1週間後、被検者の眼の83%はCNV閉塞を維持していた;そして5週間後、わずか9%が閉塞を示し、91%(データから除去した1眼を除く)は漏出が再開したことを示した。
【0015】
さらに、この試験のほかのTAP報告のデータを参照すると、被検者は最初のPDT治療の3ヵ月後に追跡検査を受けた。これらの追跡検査の報告は、「その時点において、典型的CNVの眼の92.8%は、典型的CNVからの漏出を再び示し、再治療の予定が組まれた(90.8%)」ことを示した。したがって、この[AC]試験では、(最初のベルテポルフィンPDT治療後)5週間の短い期間内にかなりの数の症例、すなわち91%においてCNVからの漏出が再発したという結果の中でTAPデータを確認した。
【0016】
しかし、現在の技術には、過去に治療された新生血管組織又は新しく増殖し、発生したか、又は再発の血管新生組織の中の1又はそれ以上の脈管(例えば、血管)の漏出、再漏出及び/又は再開通を長期間減少させるか又は予防するPDT方法論を使用する血管新生疾患、特に眼の血管新生疾患の有効な治療法がない。さらに、現在の技術は、治療された新生血管の中の脈管からの漏出及び/又は再開通を止めると共に、視力の喪失、網膜損傷などの医学的に好ましくない結果を減少させるか、予防するために、短期間の治療でなく長期間の治療が必要であることを教えている。
【0017】
したがって、血管新生組織内の過去に治療されたか又は新たに生じた脈管の1又はそれ以上の漏出及び/又は再開通の減少又は停止を、従来のPDT治療方法により現在達成されているよりもさらに長時間にわたり生じるPDT治療法を使用する有効な方法又は血管新生疾患、特に眼の血管新生疾患の治療方法に対するニーズが存在する。
【0018】
治療された新生血管内の漏出、再開通及び/又は新たに生成した脈管を有効に閉塞して、個別の被検者及び被検動物が必要とする合計治療数を、現在使用されているPDT物理療法より減少させるPDT治療法に対するニーズも存在する。そうすることにより、従来のPDT治療による再治療において観察される好ましくない結果は、最少にすることができ、予防することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ここに開示されそして請求されるように、ここに記述した技術は、上記の血管新生疾患に対する従来のPDT治療方法の現在の問題及び欠点の一つ又はそれ以上を扱っている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要約)
ここに開示し、記述する技術の方法は、特色のあるそして有用な特性及び結果を生じることができる様式で、血管新生疾患、特に動物又は人の眼の血管新生疾患を治療するために使用できることを驚くべきことに発見した。
【0021】
さらに、ここに記述する技術の方法は、従来のPDT治療方法により現在達成されるよりも長い期間、過去にPDTで治療された新生血管組織内の1又はそれ以上の脈管の漏出及び/又は再開通を減少又は停止させるか、又はその同じ組織内の新しく生成した脈管の閉塞を有効にすることも、驚くべきことに発見された。
【0022】
さらに、ここに記述する技術の方法は、血管新生組織の過去に治療されたか又は新たに生成した脈管の閉塞を有効にするために必要な定期的治療間隔を最小化するか又は減少させることができることが驚くべきことに発見された。結果として、短期間に被検動物又は被検者に行われ、再発の基となった従来のPDT治療に関係する好ましくない結果は、減少するか又は予防される。
【0023】
少なくとも一つの態様において、ここに記述された技術は、眼の血管新生組織へ少なくとも一つの脈管閉塞物質を投与することにより眼の血管新生疾患を治療する方法を提供する;充分な期間閉塞するために、眼の血管新生組織の1又はそれ以上の脈管を閉塞するための光感受性化合物を活性化するために、光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照射する。さらにこの態様において、脈管閉塞物質は約380nmから約720nmの範囲の光を吸収する少なくとも一つの光感受性化合物を含むことができ、一方、使用する光は、治療した新生血管内の1又はそれ以上の脈管の閉塞を長時間達成するために、充分な合計照射フルエンスを生じる充分な光量、充分なパルス時間、及び十分な照射時間を有している。
【0024】
別の態様において、本発明は、眼の新生血管組織の1又はそれ以上の脈管を長時間閉塞する化合物を活性化するために、充分な量のタラポルフィンナトリウム光感受性化合物の投与及びタラポルフィンナトリウム光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照射することによる眼の新生血管疾患を治療する方法を提供する。この特別な態様において、使用する光は、治療した新生血管内の1又はそれ以上の脈管を長時間閉塞するために充分な合計照射フルエンスを生じる充分な光量、充分なパルス時間、及び充分な照射時間を有している。
【0025】
本発明のさらなる態様において、眼の新生血管の1又はそれ以上の脈管を約15週間以上閉塞するために、光感受性化合物を活性化するためにスズエチルエチオプルプリン光感受性化合物の投与及び光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を有する光で眼を照射することによる眼の血管新生疾患を治療する方法が提供される。この特別な態様について、光は、治療した新生血管内の1又はそれ以上の脈管の閉塞を長時間達成するために、スズエチルエチオプルプリン光感受性化合物を光活性化するのに充分な合計照射フルエンスを生じる充分な光量、充分なパルス時間、及び充分な照射時間を有している。
【0026】
本発明のなおさらなる態様において、眼の新生血管の1又はそれ以上の脈管を約15週間以上閉塞するために、光感受性化合物を活性化するためにベルテポルフィン光感受性化合物の投与及び光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を有する光で眼を照射することによる眼の新生血管疾患を治療する方法が提供される。この特別な態様について、光は、治療した新生血管内の1又はそれ以上の脈管の閉塞を長時間達成するために、ベルテポルフィン光感受性化合物を光活性化するのに充分な合計照射フルエンスを生じる充分な光量、充分なパルス時間、及び充分な照射時間を有するものを用いる。
【0027】
上記を考慮すると、ここに記述した技術の少なくとも一つの利点は、治療される患者及び医療共同体の医療費節約である。さらに、現在利用できる技術よりも長期間に及ぶ新生血管に対する作用を生じる改良されたPDT治療を提供することにより、患者治療の促進が達成されることも考えられる。
【0028】
現在利用できるPDT治療法に比較して、ここに記述した技術の方法のその他の利点は、治療された血管新生組織の1又はそれ以上の脈管を閉塞するのに必要な治療回数が減ることを考慮すると、患者ベースの治療に必要な資材のコストと使用量を実質的に減らすことができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
ここに記述された技術は、1つ以上の好ましい実施形態に関連して記述されるが、これらの実施形態に限定されないことは理解されるであろう。逆に、ここに記述された技術は、付属する特許請求の範囲の精神と範囲に含まれうるこれらの実施形態の全ての代替、修飾及び同等を含む。
【0030】
一般的に、ここに記述された技術、その態様及び実施形態は、新生血管における以前に治療された異常な及び/又は新たに生成した脈管(例えば、血管)の閉鎖(閉塞)を長期間生じることができる改良されたPDT治療法により、血管新生が関係する疾患を持つ患者(ヒト又は動物)を治療する方法を提供し、それにより、この疾患の日常的再治療は、現在利用できるPDT治療方法に比較して減少し、予防される。
【0031】
言い換えると、ここに記述した技術、その態様及び実施形態は、光感受性物質の投与及び過去に治療されたか或いは新たに生成した脈管の長期間の閉鎖を生じるために光感受性にされた組織への照射により、疾患徴候の一部、又は他の疾患組織への血液供給のいずれかとしての新生血管が関係する疾患を持つ患者を治療する方法を提供し、それにより疾患の再治療の回数を減らすか又は予防する。
【0032】
ここに記述した技術により治療することができる疾患は、例えば、使用した療法の一部として異常脈管の閉鎖を必要とする(ヒト又は動物の)いずれかの疾患であり得ることは、当業者には理解されるはずである。したがって、本技術は、例えば、眼疾患(限定はしないが、(湿性)加齢性黄斑変性及び糖尿病性網膜症を含む)、腫瘍性疾患(限定はしないが、腫瘍に関係する腫瘍性疾患を含む)及び心臓及び/又は脈管系の疾患を含む広範囲の疾患の治療に使用することができる。
【0033】
さらに、いずれの特定の理論と結び付けられることを望まないが、少なくとも一部の態様においては、ここに記述したPDT技術は、増強されたPDT効果/結果(すなわち、血管新生組織の中の過去に治療されたか又は新たに生成した脈管の長期間の閉塞)を生じ、さらに、使用された光の総量は、そのような治療のために医学的に承認されている最大許容エネルギー量より減らすことができる。
【0034】
ここに記述した技術の少なくとも一つの態様に従って、眼の血管新生疾患の治療法が提供され、ここでは、血管新生組織へ脈管閉塞物質が投与され;次いで光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を有する光でその組織を照射してその化合物を活性化し、次いで、血管新生組織の1又はそれ以上の脈管を充分な期間閉塞する。
【0035】
本技術の脈管閉塞物質は、治療される血管新生組織へ直接的又は間接的に投与することができることは理解されるであろう。例えば、脈管閉塞物質を患者の静脈内に投与することができ、それにより脈管閉塞物質を治療される血管新生組織へ運搬することができる。したがって、脈管閉塞物質を治療される患者へ導入及び/又は運搬することができる、そしてさらに特に脈管閉塞物質を治療される新生血管へ導入又は運搬することができる方法又は器具のいずれも、請求されている本発明の精神及び範囲内にあると考えられる。
【0036】
脈管閉塞物質に関して、この物質は、約380nmから約720nmの範囲の光を吸収する少なくとも一つの光感受性化合物を含む。例としてのみ示すならば、ここに記述した技術の光感受性化合物の1又はそれ以上は、約415nm、約508nm、約664nm及び約689nmの波長の光をそれぞれ吸収することができる。
【0037】
ここに記述した技術の範囲内の光を吸収する適当は光感受性化合物は、ポルフィリン、プルプリン、ベルテポルフィン及びそれらの誘導体及びそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。好ましくは、投与される光感受性化合物は、モノ−L−アスパルチル−クロリンe6(タラポルフィンナトリウムとしても知られる)、LS11(NPE6としても知られる)、ベルテポルフィン、スズエチルエチオプルプリン(SnET2としても知られる)、それらの誘導体又はそれらの組合せである。さらに、本技術の実施に使用できる他の光感受性化合物の例は、Strongに対する米国特許第6,800,086号の中に見出すことができる。
【0038】
ここに記述した技術のPDT治療法に使用される光に関して、光は好ましくは、光感受性化合物を活性化するために充分な合計照射フルエンスを生じる充分な光量、充分なパルス持続時間、そして充分な照射時間を示し、それにより治療される新生血管の1又はそれ以上の脈管を長期間閉塞する(すなわち、充分な期間の閉塞)。
【0039】
さらに、ここに記述した技術の方法を実施するのに使用される光源は、非コヒーレント光であっても、コヒーレント光であってもよい。光源がコヒーレントでない光を放射する場合には、その光源は、例えば、発光ダイオード又は環境光であり得る。光源がコヒーレント光を放射する場合には、その光源は、例えば、レーザーである。
【0040】
さらに、典型的に、しかし必ず必要ではないが、ここに記述した技術の治療方法は、一つの標的組織領域において又は複数の標的組織領域へ、シリーズで、別々の分離した光を適用することを含むことができる。したがって、本技術の方法は、(1回の光適用又は一連の光適用を含む)一つの方法として又は(1回の光適用又は一連の光適用を含む)一連の方法として行うことができる。
【0041】
適当な照明の大きさと形、波長及び輝度の光(例えば、レーザーかレーザーでないか)を供給するいずれかの装置(例えば、PDTに基づく装置)はここに記述した技術の精神及び範囲に従う光を供給できることは、当業者には理解されるであろう。ここに記述した技術の少なくとも一つの態様の実施において、例えば、一つの標的組織部位に12J/cmの光を(同じ治療中に)4回、短時間に連続して、合計48J/cmの光を、標的血管新生組織に供給することができる。
【0042】
例えば、ここに記述した技術の少なくとも一つの態様において、このPDT治療法は、レーザー光投与量が約10から50J/cmの範囲である強化AMD法のために、選択された光感受性物質としてタラポルフィンナトリウム及びレーザー光投与量を含むことができる。
【0043】
光感受性化合物を励起するために使用する光の充分な表示用量である投与量は、約60mW/cmから約600mW/cmであり、より好ましくは約200mW/cmから約300mW/cmであり、最も好ましくは充分な光投与量は約300mW/cmである。しかし、ここに記述した技術の実施に使用される光投与量は、使用する特定の光感受性化合物、治療される個別の血管新生組織、治療される血管新生組織の個別のスポットの大きさ、個別の患者の特別な配慮、使用する個別のPDT装置などにより調整できることは、当業者により理解されるはずである。
【0044】
例えば、一般的に、治療スポットの大きさは、治療される特定の標的組織領域の大きさと形により決定することができる。ここに記述された技術の改良PDT治療法により治療されうることを考慮した典型的なスポットの大きさは、約500から約6000ミクロン、好ましくは1200から約5500ミクロンの範囲とすることができる。しかし、ここに記述した技術は、種々の大きさのスポットの大きさを治療するために調整することができることは、当業者は理解するであろう。
【0045】
さらに、当業者は、ここに記述したPDT治療方法の強化された閉塞作用を達成するために使用される総光投与量は、医学的に適するとして現在承認され或いは指定されている総光投与量より多いか、それまでか、それより少ないことがありうる。好ましくは、強化された閉塞作用を達成するために使用される総光投与量は、PDT治療のための最大許容エネルギー入力として医学的に承認又は指定されていると考えられる量より少ない。さらに、ここに記述された技術のPDT治療法の使用により閉塞期間の延長が達成されるので、治療領域の該方法の反復使用を減少させることができると考えられる。そのような投与により、皮膚の過敏性、光感受性及び光毒性のようなPDTに関係する好ましくない結果を本質的に減少させ、予防することができる。
【0046】
さらに、最初に達成される増強された閉塞作用を考慮すると、必要があれば、いずれの再治療にも必要なパラメーター/成分(例えば、光投与量、照射時間、光感受性化合物の量など)を減らすことができるので、本技術は光合計投与量及び光感受性化合物に対する患者の暴露を減らすことも考えられる。言い換えれば、ここに記述した技術により達成される閉塞の期間が長くなり、閉塞の範囲が大きくなれば、それだけ、追加のPDT治療(及びそのパラメーター)の必要性を減少させる助けとなる。
【0047】
例えば、現在のPDT方法は非指向性の光感受性化合物又は光感受性物質の全身投与を含んでおり、必要な投与量が比較的高く、このため、皮膚の光感受性を生じることがある。皮膚内の光感受性物質の蓄積は、臨床に使用される全身投与光感受性物質全てが持つ性質である。例えば、Photophrin(登録商標)(ポルフィマー ナトリウムのQLT.Ltd.の商品名)は、6週間続く光感受性に関係する。Purlytin(登録商標)(プルプリン)及びFoscan(登録商標)(クロリン)は数週間皮膚を感受性にする。事実、光感受性を減少させるための光防護物質を開発する努力がなされている(Dillonら、Photochemistry and Photobiology,48(2):235〜238.1988;及びSigdestadら、British J.of Cancer,74:S89〜S92,1996参照)。典型的に、光感受性物質の全身投与を含むPDTプロトコールは、光毒性反応を生じる機会を減らすために、患者は日光及び明るい室内光を避けることを必要としている。
【0048】
したがって、治療している患者の光感受性物質(例えば、投与量、反復投与量などに関して)、光源(光の投与量、照射時間、光の反復投与などに関して)及び治療レジメンの反復コース自体への暴露を最少にするか又は減少させることは、PDT治療法にとって有益である。特定の理論に結び付けられることを望まないが、従来のPDT治療法と異なって達成することができる閉塞期間の延長のために血管新生疾患の治療において、ここに記述した技術のPDT方法は光感受性物質及び光源への暴露を最少にするか又は減少させると考えられる。
【0049】
ここに記述した技術の光の充分なパルス持続は、パルス当たり約30秒から約60秒で、各パルスの間は約10秒から約30秒である。より好ましいパルス持続は、パルス当たり約40秒で各パルスの間は約10秒である。さらに、ここに記述した技術は、改良PDT方法を使用する1又はそれ以上の治療の間にパルスの持続を1又はそれ以上の回数行うことができることは、当業者には理解されるはずである。
【0050】
照射の充分な持続に関して、本技術の充分な照射の持続は約35秒から約220秒であり、より好ましくは約80秒から約120秒である。しかし、照射の持続は、ここに記述した技術の結果及び利点を達成するために必要な照射の時間を達成するために調整することができることは、当業者に理解されるはずである。
【0051】
ここに記述した技術の充分な照射量(フルエンス)の合計は、コヒーレント光源について約30J/cmから約60J/cmである。また、非コヒーレント光源については、約40J/cmから約90J/cmである。
【0052】
さらに、本技術の1又はそれ以上の方法を実施するのに使用する光は充分な放射照度を持っていなければならない。該充分な放射照度は、レーザー光源の場合は、50mW/cmから600mW/cmの範囲であり得る。或いは、非レーザー光源の場合は、本技術の充分な放射照度は100mW/cm以上であり得る。
【0053】
上記の光において、驚くことに、ここに記述した技術の選択された光感受性化合物を光が活性化した後、治療される新生血管の1又はそれ以上の脈管の閉塞が延長された期間生じることを発見した。したがって、治療される患者は、閉塞の期間延長が達成されることにより、必要なPDT治療の回数、その成分への暴露及び治療の副作用のような好ましくない結果(特に、光感受性化合物による副作用)を減らすか或いは最少にすることができる。このような閉塞の期間延長は、これまで知られておりそして使用されてきた従来のPDT治療法によっては得られない。
【0054】
結果として、ここに記述した技術による閉塞の充分な期間は、15週間からそれ以上の範囲であり得る。好ましくは、閉塞の充分な期間は、治療される患者、治療される血管新生疾患並びに1又はそれ以上の光感受性化合物及びここに記述した技術の方法に基づいて選択された光によって約16週間から約60ヶ月の範囲、より好ましくは約15週間から約6ヶ月の範囲であり得る。
【0055】
本技術の別の態様において、眼の特別な血管新生疾患では、タラポルフィンナトリウム光感受性化合物の充分な量を投与することにより;そして、光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光を照射して、光感受性化合物を活性化し、眼の新生血管組織の1又はそれ以上の脈管を充分な閉塞期間閉塞する。好ましくは、光は、必要な閉塞期間を達成するための充分な総照射量(フルエンス)を生じる充分な光投与量、充分なパルス持続、及び充分な照射時間を持つ。
【0056】
モノ−L−アスパルチル−クロリンe6としても知られるタラポルフィンのような光感受性物質が本技術のPDT方法に使用された場合に、新たに生成した脈管を有効に閉塞し、新しい脈管閉塞を延長された期間維持することが、驚くべきことに発見された。該脈管の閉塞は治療される特定の疾患によっては有益な作用である。例えば、一部の例において、新たに生成した脈管により栄養のための血液供給に依存している疾患組織が取り除かれる。
【0057】
(湿潤性)AMDのための眼のPDTのような他の例において、以前に従来法で治療されたか又は新たに生成した脈管からの漏出を減少させるか又は除去して、体液が網膜を前方に押し出す原因になっているような症例において有益な網膜の平坦化を生じる。本技術はまた、新生血管及び/又は体液漏出が関係する糖尿病性網膜症及び他の眼疾患においても有用である。他の光感受性物質及び従来のPDT方法より長時間異常な脈管の閉塞を(可能性として永久に)維持する増強能力が今発見されたことにより、結果として、タラポルフィンナトリウムは本技術の好ましい光感受性物質の一つである。
【0058】
さらに、眼のPDTの例において、及び特定のAMD治療において、一部の患者は視力の改善を経験する可能性があり、同時に殆んどの患者が視覚の安定及び/又は視覚の悪化の従来の速度の遅延を経験する。したがって、本技術のこの増強された脈管閉塞作用は視覚を維持し、そして視力の悪化速度を減少させる。特別な理論に結び付けることなく、この結果は脈管の閉塞、すなわち網膜層の間の又は網膜の下の体液の漏出の減少の結果であると考えられる。原因となる膨張を引き起こした体液漏出の減少又は除去は、徐々に網膜を平坦化させ、正常の平坦な状態に戻し、それにより視力の改善を生じる。
【0059】
タラポルフィンナトリウムの充分な量又は投与量は、治療される個別の患者、ヒト又は動物の体重に基づいて、約0.1mg/kgから2.0mg/kgの間である。さらに、光投与量の充分な量は、使用する個別の光源(コヒーレント又は非コヒーレント)により、約10J/cmから約50J/cmの間である。
【0060】
タラポルフィンナトリウム及び光の投与量(下記のようなほかのパラメーターと共に)は、治療される個別の血管新生疾患によって調整することができることは、当業者には理解されるであろう。さらに、本技術は、例えば、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症或いは網膜、脈絡膜又は両者における血管新生組織の治療に使用することができることは、当業者に理解されるであろう。
【0061】
例えば、使用される光感受性物質がタラポルフィンナトリウムであり、そして治療される疾患が加齢性黄斑変性症(AMD)である場合に、薬物の投与量は患者によって異なる可能性があるが、通常約0.1から約2.0mg/kg体重の範囲内である。好ましくは薬物投与量は約0.1から1.0mg/kg体重、最も好ましくは約0.5mg/kgかそれ以下である。明らかに、投与量の率は多くの要因により変化するであろうから、投与量は一般的に、潜在的毒性、患者の耐容性及び「治療を必要としない」PDT後の期間延長を生み出す能力以外の理由により限定されない。
【0062】
本技術のこの特別な態様に対する照射の充分な合計照射フルエンスに関して、その合計フルエンスは、コヒーレント光源に対して約30J/cmから約60J/cm、そして非コヒーレント光源に対して約40J/cmから約90/cmであり得る。選択された光源の充分な照射時間は、約35秒から約220秒でありうる。
【0063】
さらに、選択された光源の充分なパルス持続はパルス当たり約30秒から約60秒の間であり、そして各パルスの間は10秒から約30秒である。しかし、パルスの持続は1又はそれ以上の回数行うことができることは、当業者に理解されるであろう。
【0064】
光はさらに、レーザー光源では約50mW/cmから約600mW/cmの間の充分な放射照度を示すことができることも理解されるであろう。より好ましくは、レーザー光源については、充分な放射照度は約200mW/cmから約400mW/cmの間であり、最も好ましくは300mW/cmである。或いは、非レーザー光源では、充分な放射照度は100mW/cmから約900mW/cmの間であり、好ましくは約300mW/cmから約650mW/cmの間、より好ましくは約400mW/cmから約550mW/cmの間、最も好ましくは約525mW/cmである。
【0065】
最後に、本技術のこの特別な態様における充分な閉塞期間は約15週間からそれ以上であり得る。
【0066】
他の態様において、充分な量の光感受性化合物、スズエチルエチオプルプリンを投与し、そして光感受性物質の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照射して光感受性化合物を活性化し、約15週間以上の閉塞期間新生血管組織の1又はそれ以上の脈管を閉塞する新生血管疾患、特に眼の特定の血管新生疾患の治療方法を提供する。好ましくは、光は、目的の閉塞期間を達成するために充分な合計照射フルエンスを生じるのに必要な充分な光投与量、充分なパルス持続、充分な照射時間を持つ。光は約664nmの波長又は波帯を持つことも好ましい。
【0067】
本技術の光感受性化合物、スズエチルエチオプルプリンの充分な投与量は、治療される患者(ヒト又は動物)の体重に基づいて約0.25mg/kgから1.25mg/kgであり、約0.75mg/kgが最も好ましい。しかし、光感受性化合物、スズエチルエチオプルプリンの量/投与量は、使用する個別の光投与量により調整することができることは、当業者には理解されるはずである。例えば、光投与量が増加するにしたがって、スズエチルエチオプルプリンの量/投与量は減少する可能性があり、その逆もある。
【0068】
ここに記述した技術の特別な態様の充分な光投与量は、約10J/cmから約50J/cmであり得るし、一方充分なパルス持続はパルス当たり約30秒から約60秒であり得る。
【0069】
光投与量、パルス持続及び照射時間が、コヒーレント光源については約30J/cmから約60J/cmの間の、そして非コヒーレント光源については約40J/cmから約90J/cmの間の充分な総照射フルエンスを生じるような充分な照射時間は、約35秒から約220秒であり得る。
【0070】
さらに、この光は充分な放射照度も示す。充分な放射照度は、レーザー光源の場合に約50mW/cmから約600mW/cmの間、また、非レーザー光源の場合に100mW/cmから約900mW/cmの間であり得る。
【0071】
先に記述したように、この特別な態様は、種々の血管新生疾患及び血管新生組織の治療に使用することができる。好ましくは、少なくとも一つの態様において、スズエチルエチオプルプリンを使用するPDT方法は、中心窩下脈絡膜血管新生の治療に使用される。
【0072】
本技術のその他の態様において、充分な量の光感受性化合物、ベルテポルフィンを投与し、そして光感受性物質の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照射して光感受性化合物を活性化し、約15週間以上の閉塞期間眼の新生血管組織の1又はそれ以上の脈管を閉塞することによる眼の血管新生疾患の治療方法を提供する。好ましくは、光は充分な光投与量、充分な照射時間及び充分な合計照射フルエンスを持つ。
【0073】
光感受性化合物、ベルテポルフィンの充分な量/投与量は、約4mg/mから約8mg/mの化合物の約15分間をかけた注入であり、約15分間の間に約6mg/mの注入速度が最も好ましい。しかし、光化合物、ベルテポルフィンの量/投与量は、使用される個別の光投与量により調整することができることは、当業者には理解されるはずである。例えば、光投与量が増加するに従って、光化合物、ベルテポルフィンの量/投与量は減少する可能性があり、その逆もある。
【0074】
少なくとも一つの態様において、充分な光投与量は約10J/cmから約50J/cmであり、そして約30J/cmから約90J/cmの充分な合計照射フルエンスを生じる充分な照明時間は約35秒から約220秒である。
【0075】
本発明及びその利点は、以下の実施例を参照することにより一層よく理解されるであろう。これらの実施例は本発明の特別な態様を記述し、いかに機能するかを示すために提供される。これらの特定の実施例を提供することにより、発明者は発明の範囲を限定しない。本発明の全範囲はこの明細書及び請求項の同等物を含む請求項に定義された事項を包含する。
【実施例】
【0076】
9例の進行したAMDのヒト被検者における臨床試験が行われた。この9例の被検者はそれぞれ、タラポルフィンナトリウム及び励起光源として664nmの波長のレーザー光を使用するPDTにより治療された。図1に示す表に、この9例の被検者に施行されたPDT方法の結果と詳細を示す。
【0077】
図1に記述された結果により示されるように、9例の大部分は新生血管の治療領域において延長された期間強化された新生血管の閉塞作用を経験した。例えば、大部分の患者は、約15週間以上の延長された期間強化された新生血管閉塞作用を経験した。しかし、前記のように、従来のPDT治療方法は、典型的に12週間以下、より典型的には約4週間以下の、治療された或いは再治療された新生血管の閉塞を達成した。
【0078】
したがって、図1の表の結果から説明されるように、ここに記述したPDT方法は、脈絡毛細管の閉鎖、異常脈管に供給する新生血管の閉鎖及び/又は脈絡膜の比較的小さな脈管の閉鎖を伴う新生血管、新たに生成した異常な脈管の以前に治療した脈管の漏出、再漏出及び/又は再開通の減少/停止を達成すると考えられる。
【0079】
さらに、図1の結果に基づいて、強化されたPDTの閉塞作用は本質的に「弱まる」ことがなく、そして治療を必要とする漏出及び/又は再開通を生じる脈管の数は減少すると考えられる。図1に記されているように、試験された被検者のその後の観察において、ここに記述された技術のPDT治療法を使用して治療された脈管の再開通は示されず、したがって被検者を再治療する必要はなかった。したがって、閉塞作用の期間延長のために、治療された患者はPDT治療の回数をより少なくすることができ、そのために該患者において好ましくない結果、副作用などを減らす。
【0080】
さらに、図1に見ることができるように、被検者1及び3において、網膜の重大な上昇を生じる漏出があった。しかし、ここに記述した技術の少なくとも一つの方法による治療の後に、網膜はより平坦化したように見え、漏出は明らかに停止した。このような結果は、延長された期間の血管新生における脈管閉塞の利益の可能性を示している。したがって、ここに記述した技術は、脈管漏出、再漏出及び/又は再開通の延長された期間(例えば、約15週間以上)の減少又は停止をすることができない先行技術の短期間PDT治療方法より優れる利益及び利点を提供する。
【0081】
タラポルフィンナトリウムは説明用の実施例に使用されたが、ここに記述しそして請求された技術はこの光感受性物質のみの使用に限定されず、むしろここに記述した選択基準(すなわち、光感受性物質及び光の性質)に適合する全てのPDT治療方法を含んでいる。さらに、考察の多くは眼のPDT、特にAMD治療に焦点が絞られたが、ここに記述された技術は広範囲であり、治療が過去に治療した異常な脈管又は新たに生成した脈管の閉塞に関係する全てのPDT方法を包含する。
【0082】
当業者がそれを実施できるように、本発明はここに完全に、明確に、簡明にそして厳密な用語で記述されている。前に記述された本発明の好ましい態様及びその修飾は、ここに記述された本発明の精神及び範囲から離れることなく作ることが可能であることは理解されなければならない。さらに、上記は本発明の説明用の記述であり、以下に請求される本発明の精神と範囲の中で変更及び修飾を行うことが可能であることは当業者には理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、ここに記述したPDT治療法の臨床試験結果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記:
約380nmから約720nmの範囲の光を吸収する少なくとも一つの光感受性物質
を含む少なくとも一つの脈管閉塞物質を眼の血管新生組織に投与すること;及び
該光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照射し、該光感受性化合物を活性化し、眼の血管新生組織の1以上の脈管を充分な閉塞期間閉塞すること、
を含む眼の血管新生疾患の治療方法であって、
該光は、充分な光投与量、充分なパルス持続及び充分な合計照射フルエンスを生じる充分な照明時間を有する、上記方法。
【請求項2】
投与される前記光感受性化合物がポルフィリン、プルプリン、ベルテポルフィン、それらの誘導体及びそれらの組合せから本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
投与される前記光感受性化合物がモノ−L−アスパルチル−クロリンe6である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
投与される前記光感受性化合物がベルテポルフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
投与される前記光感受性化合物がスズエチルエチオプルプリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
投与される前記光感受性化合物が664nmで光を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
投与される前記光感受性化合物が689nmで光を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
投与される前記光感受性化合物が508nmで光を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
投与される前記感受性化合物が415nmで光を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記充分な閉塞期間が約15週間以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記充分な閉塞期間が約16週間から60ヶ月である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記充分な閉塞期間が約15週間から6ヶ月である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記充分な光投与量が約60mW/cmから約600mW/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記充分な光投与量が約200mW/cmから約300mW/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記充分な光投与量が約300mW/cmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記充分なパルス持続が光のパルス当たり約30秒から約60秒で、各パルスの間が約10秒から約30秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記充分なパルス持続が光のパルス当たり約40秒で、各パルスの間が約10秒である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パルス持続が1回以上行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記充分な照明時間が約35秒から220秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記充分な照明時間が約80秒から120秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記光が非コヒーレント光である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記非コヒーレント光が発光ダイオードである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記非コヒーレント光が環境光である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光がコヒーレント光である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記充分な合計照射フルエンスがコヒーレント光源について約30J/cmから約60J/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記充分な合計照射フルエンスが非コヒーレント光源について約40J/cmから約90J/cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記光はさらに充分な放射照度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記充分な放射照度がレーザー光源の場合に約50mW/cmから約600mW/cmである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記充分な放射照度が非レーザー光源の場合に約100mW/cm以上である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記血管新生組織が網膜、脈絡膜又は両者に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記血管新生疾患が糖尿病性網膜症である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記血管新生疾患が黄斑変性である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
眼において前記方法が1回又は複数回実施される、請求項1に記載の眼の血管新生疾患の治療方法。
【請求項34】
請求項1に記載の方法を実施することをヒトに説明することを含む、眼の血管新生疾患の治療をヒトに説明する方法。
【請求項35】
充分な量の光感受性化合物タラポルフィンナトリウムを投与すること;及び
該光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照明し、該光感受性化合物を活性化し、眼の血管新生組織の1以上の脈管を充分な閉塞期間閉塞すること、
を含む眼の血管新生疾患の治療方法であって、
該光は、充分な光投与量、充分なパルス持続及び充分な合計照射フルエンスを生じる充分な照明時間を有する、上記方法。
【請求項36】
前記充分な量のタラポルフィンナトリウムが約0.1mg/kgから約2.0mg/kgの間である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記充分な光投与量が約10J/cmから約50J/cmの間である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記充分な合計照射フルエンスが、コヒーレント光源については約30J/cmから約60J/cmの間そして非コヒーレント光源については約40J/cmから約90J/cmの間である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記充分なパルス持続が光のパルス当たり約30秒から約60秒で、各パルスの間が10秒から約30秒である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記パルス持続が1回以上実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記充分な照明の時間が約35秒から約220秒である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記光がさらに充分な放射照度を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記充分な放射照度がレーザー光源の場合に約50mW/cmから600mW/cmの間である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記充分な放射照度が約200mW/cmから約400mW/cmの間である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記充分な放射照度が300mW/cmである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記充分な放射照度が非レーザー光源の場合に約100mW/cmから約900mW/cmの間にある、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記充分な放射照度が約300mW/cmから約650mW/cmの間にある、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記充分な放射照度が約400mW/cmから約550mW/cmの間にある、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記充分な放射照度が525mW/cmである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記血管新生組織が網膜、脈絡膜又は両者に存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
前記血管新生疾患が糖尿病性網膜症である、請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記血管新生疾患が黄斑変性である、請求項35に記載の方法。
【請求項53】
前記充分な閉塞期間が約15週間以上である、請求項35に記載の方法。
【請求項54】
充分な量の光感受性化合物スズエチルエチオプルプリンを投与すること;及び
該光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照明し、該光感受性化合物を活性化し、眼の血管新生組織の1以上の脈管を約15週間以上閉塞すること、
を含む眼の血管新生疾患の治療方法であって、
該光は、充分な光投与量、充分なパルス持続及び充分な合計照射フルエンスを生じる充分な照明時間を有する、上記方法。
【請求項55】
光感受性化合物スズエチルエチオプルプリンの前記充分な量が治療される患者の体重に基づいて約0.25mg/kgから約1.25mg/kgである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
光感受性物質スズエチルエチオプルプリンの前記充分な量が治療される患者の体重に基づいて約0.75mg/kgである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記充分な光投与量が約10J/cmから約50J/cmであり、前記充分なパルス持続が1パルス当たり約30秒から約60秒であり、そしてコヒーレント光源については約30J/cmから約60J/cmの間、そして非コヒーレント光源については約40J/cmから約90J/cmの間の前記充分な合計照射フルエンスを生じる前記充分な照明時間が約35秒から約220秒である、請求項54に記載の眼の血管新生疾患の治療方法。
【請求項58】
前記光がさらに充分な照射照度を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記充分な照射照度がレーザー光源の場合に約50mW/cmから約600mW/cmの間にある、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記充分な照射照度が非レーザー光源の場合に約100mW/cmから約900mW/cmの間にある、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記眼の血管新生疾患が中心窩下脈絡膜血管新生である、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記光の波長又は波帯が664nmである、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
充分な量の光感受性物質ベルテポルフィンを投与すること;及び
該光感受性化合物の励起波長又は波帯に一致する波長又は波帯を持つ光で眼を照明し、該光感受性化合物を活性化し、眼の血管新生組織の1以上の脈管を約15週間以上閉塞すること、
を含む眼の血管新生疾患の治療方法であって、
該光は、充分な光投与量、充分な照明持続期間及び充分な合計照射フルエンスを有する、上記方法。
【請求項64】
光感受性化合物ベルテポルフィンの前記充分な量が約15分間に約4mg/mから約8mg/mの注入速度である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
光感受性化合物ベルテポルフィンの前記充分な量が約15分間に約6mg/mの注入速度である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記充分な光投与量が約10J/cmから約50J/cmの間にありそして約30J/cmから約90J/cmの間の前記充分な照射の合計フルエンスを生じる前記充分な照明時間が約35秒から約220秒の間にある、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記光がさらに充分な照射照度を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記充分な照射照度が約50mW/cmから約900mW/cmの間にある、請求項63に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−524224(P2008−524224A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546803(P2007−546803)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/044868
【国際公開番号】WO2006/065727
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507402185)ライト サイエンシズ オンコロジー、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】