説明

閉鎖可能なホットランナーノズルを備える射出成形工具

【課題】ホットランナーノズルの排出開口が閉鎖ニードルにより閉鎖されているか否かを突き止めることができるようにする。
【解決手段】閉鎖ニードル(2;2′)の少なくとも1つの位置を検出可能な素子(3;3′)が設けられているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形工具であって、少なくとも1つのホットランナーノズル(Heisskanalduese)を有しており、該ホットランナーノズルが排出開口を有しており、該排出開口が閉鎖ニードルにより閉鎖可能である形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の射出成形工具は、背景技術において以前から公知であり、一般にプラスチック部品を製造するために使用される。ホットランナーノズルの排出開口が閉鎖ニードルにより閉鎖可能であることにより、認識可能な充填部位を有しないプラスチック部品が製造される。要するに、公知の射出成形工具により、極めて高品質のプラスチック部品が製造される。
【0003】
しかし、閉鎖ニードルが排出開口を完全に閉鎖しない事態が起こり得る。その原因は、例えば排出開口内でプラスチックが冷却されることで形成される栓である。排出開口が閉鎖されないことで、プラスチック部品の充填部位には極めて不都合な影響が生じる。プラスチック部品の充填部位には、プラスチック部品の廃棄につながりかねないスプルーが残される。
【0004】
この種のエラーが即座に認識されることは稀であるので、多数の使用不可のプラスチック部品が製造される場合がある。このことが極めて不都合であることは明白である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式の射出成形工具を改良して、ホットランナーノズルの排出開口が閉鎖ニードルにより閉鎖されているか否かを突き止めることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の構成では、閉鎖ニードルの少なくとも1つの位置を検出可能な素子が設けられているようにした。
【0007】
本発明の有利な形態は、従属請求項に係る発明である。
【0008】
好ましくは、閉鎖ニードルの、排出開口が閉鎖されている位置が少なくとも検出可能である。
【0009】
好ましくは、前記素子が電気的なスイッチとして形成されている。
【0010】
好ましくは、閉鎖ニードルが操作部材により閉鎖位置へと調節可能であり、該操作部材が、前記スイッチの第1の接点を有し、前記操作部材が閉鎖位置において当接するストッパが、前記スイッチの第2の接点を有する。
【0011】
好ましくは、前記素子が近接センサとして形成されている。
【0012】
好ましくは、閉鎖ニードルが操作部材により閉鎖位置へと調節可能であり、該操作部材と閉鎖ニードルとの間に力センサが配置されている。
【0013】
好ましくは、前記力センサが圧電素子として形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る射出成形工具は、少なくとも1つのホットランナーノズルを有しており、該ホットランナーノズルが排出開口を有しており、該排出開口が閉鎖ニードルにより閉鎖可能である形式のものにおいて、閉鎖ニードルの少なくとも1つの位置を検出可能な素子が設けられていることを特徴とする。
【0015】
閉鎖ニードルの少なくとも1つの位置を検出可能な素子が設けられていることにより、排出開口が閉鎖されているか否かが簡単に確定可能である。このために、閉鎖ニードルの、閉鎖ニードルが排出開口内にある位置、すなわち、排出開口が閉鎖されている位置が検出されなければならない。この位置が検出されるということは、排出開口が閉鎖されていることを意味する。これにより、閉鎖ニードルのこの位置を検出することにより、排出開口が閉鎖されているか否かが間接的に確定される。
【0016】
閉鎖ニードルが、排出開口が閉鎖されているはずの時点で、排出開口を閉鎖する位置にないことが確認されることは、排出開口が閉鎖されていないことを意味する。それにしたがって、この原因となるエラーを解消する相応の対策が導入され得る。エラーが即座に認識可能であるので、製造される使用不可のプラスチック部品の数は極めてわずかである。
【0017】
閉鎖ニードルの位置を検出するための素子が電気的な接触器(Kontaktgeber)として形成されている実施の形態は、極めて有利である。例えば、射出成形工具内に、正確に閉鎖ニードルがその閉鎖位置にあると閉じるように調整されているスイッチが配置される。
【0018】
特に有利には、閉鎖ニードルが操作部材により閉鎖位置へと調節可能である射出成形工具において、閉鎖ニードルの位置を検出するための素子が、スイッチとして形成されており、スイッチの第1の接点が操作部材に配置され、第2の接点が、操作部材が閉鎖位置で当接するストッパに配置されている。
【0019】
この種の実施の形態は、特に、操作部材がニューマチックシリンダとして形成されていると有利である。それというのも、この場合、スイッチの第1の接点がピストンにより形成され、スイッチの第2の接点が、シリンダハウジングの、閉鎖ニードルの閉鎖位置でピストンのためのストッパを形成する壁に設けられる電気的に絶縁された素子により形成され得るからである。この種の実施の形態は、極めて安価に製造可能であり、さらに既存の射出成形工具の追加装備を許可する。追加装備のために、既存のニューマチックシリンダを、本発明において形成されたニューマチックシリンダに交換するだけでよい。
【0020】
しかし、閉鎖ニードルの位置を検出するための素子は、近接センサとして形成されていてもよい。近接センサは、一般に問題なく射出成形工具に配置される。
【0021】
近接センサが、シリンダの、閉鎖ニードルを操作するピストンから間隔を置いて配置されている、近接センサの位置は、極めて有利である。ピストンのストロークによって、近接センサは作動する。
【0022】
本発明の別の特別な実施の形態では、操作部材と閉鎖ニードルとの間に力センサが配置されている。閉鎖ニードルがその目標位置、すなわち、閉鎖ニードルが排出開口内にある位置まで調節されていないとき、閉鎖ニードルに対して及ぼされる力が上昇して、この力の上昇が力センサにより検出可能であるので、力センサは、閉鎖ニードルの位置を検出するための素子を形成する。それゆえ、力センサは、電気的なスイッチ又は近接センサの代わりに使用可能である。しかし、力センサは、付加的に利用されてもよく、これにより、位置検出の信頼性は向上する。
【0023】
有利には、力センサが圧電素子として形成されている。このために、力センサは、特に簡単に射出成形工具内に配置される。
【0024】
本発明のその他の詳細、特徴及び利点は、図面を参照しながら以下に行う、特別な実施の形態の説明から看取される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明において形成される第1の装置の概略図である。
【図2】本発明において形成される第2の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示すように、射出成形ノズル1は、溶融体通路1bを介して供給される溶融体のための排出開口1aを有する。排出開口1aは、軸方向で移動調節可能にホットランナーノズル1内に配置されている閉鎖ニードル2により閉鎖可能である。排出開口1aを閉鎖するために、閉鎖ニードル2は、その先端2aが排出開口1a内にある位置へと調節される。この位置は、図1に示されている。
【0027】
閉鎖ニードル2を調節するために、先端2aとは反対側の、拡径されて段付けされた領域を有する端部2bが、ニューマチックシリンダのピストン4に結合されている。シリンダハウジング6の第1の開口6aを介して圧縮空気を供給することにより、ピストン4は、シリンダハウジング6の下側の壁に向かって押圧される。これにより、閉鎖ニードル2の先端2aは、排出開口1a内に到達し、これを閉鎖する。第2の開口6bを介して圧縮空気を供給することにより、ピストン4は、ハウジング6の反対側の壁に向かって押圧される。この位置で、閉鎖ニードル2の先端2aはもはや排出開口1a内になく、これにより、排出開口1aは開放されている。
【0028】
閉鎖ニードル2がその閉鎖位置にあるときに、ピストン4が当接する、シリンダハウジング6の下側の壁内には、非電導性のスリーブ7を介して、電気的な接点3が配置されている。電気的な接点3とピストン4との間には、ピストン4がシリンダハウジング6の下側の壁に当接しているときだけ、すなわち、閉鎖ニードル2がその閉鎖位置にあるときだけ、電導性の接続が生じる。閉鎖ニードル2がその閉鎖位置にないとき、すなわち、ピストン4がシリンダハウジング6の下側の壁に当接していないとき、ピストン4と接点3との間には、電導性の接続は生じない。これにより、ピストン4及び接点3は、閉鎖ニードル2がその閉鎖位置にあるときだけ閉鎖されている電気的なスイッチを形成する。
【0029】
ピストン4が電導性にシリンダハウジング6に接続されているので、スイッチ信号はシリンダハウジング6及び接点3において取り出される。このために、接点3は、第1の信号線路3aに接続されており、シリンダハウジング6は、第2の信号線路3bに接続されている。さらに第1の信号線路3a及び第2の信号線路3bは、図1には示されていない制御部に接続されている。
【0030】
閉鎖ニードル2の上側には圧電素子5が配置されている。圧電素子5は、ピストン4に結合されており、それゆえ、閉鎖ニードル2が閉鎖位置に向かって調節されると、閉鎖ニードル2の、先端2aとは反対側の端部2bに力を及ぼす。圧電素子5から放出される信号は、第3の信号線路5aにより、図1には示されていない制御部に供給される。
【0031】
圧縮空気を第1の開口6aを介して供給することにより、ピストン4に対して力が、シリンダハウジング6の下側の壁に向かって及ぼされると、圧電素子5は、閉鎖ニードル2の、先端2aとは反対側の端部2bを押圧する。これにより、閉鎖ニードル2はその閉鎖位置へと調節される。
【0032】
排出開口1aが例えば冷えたプラスチックの栓によって閉鎖されているとき、閉鎖ニードル2の先端2aは、排出開口1a内に到達し得ない。それゆえ、ピストン4は、シリンダハウジング6の下側の壁に当接することができないので、接点3との電気的な接触を形成しない。これにより、第1の信号線路3aは、第2の信号線路3bに接続されていない。これにより、図1には示されていない制御部は、閉鎖ニードル2が閉鎖位置にないこと、すなわち、排出開口1aが閉鎖されていないことを認識する。このことが、排出開口1aが本来閉鎖されているはずの時点でのこととなると、制御部はエラーがあることを認識する。
【0033】
ピストン4がシリンダハウジング6の下側の壁に当接しないので、ピストン4に作用する反力は、シリンダハウジング6の下側の壁によってではなく、閉鎖ニードル2によって印加される。閉鎖ニードル2が直接ではなく、圧電素子5を介してピストン4に結合されているので、この反力は、圧電素子5により検出可能である。相応の信号は、第3の信号線路5aを介して、図1には示されていない制御部に伝送される。
【0034】
圧電素子5が、排出開口1aが閉鎖されているべき時点で、相応の信号を放出するということは、ピストン4がシリンダハウジング6の下側の壁に当接しておらず、ピストン4に作用する反力が下側の壁によって加えられていないこと、換言すれば、ピストン4がシリンダハウジング6の下側の壁から間隔を置いており、反力が閉鎖ニードル2によって加えられていることを意味する。このことは、閉鎖ニードル2がその閉鎖位置にないことを意味する。
【0035】
図2に示した装置は実質的に、図1に示した装置に相当する。それゆえ、同一の部材には同一の符号を付した。ただし、識別のために符号に「′」を付した。
【0036】
図1に示した実施の形態とは異なり、位置検出素子は、電気的な接点により形成されているのではなく、近接センサ3′により形成されている。図2に示すように、近接センサ3′は、ピストン4′及びシリンダハウジング6′から形成されるニューマチックシリンダの上側に配置されている。近接センサ3′は有利には、0〜10mmまでの測定距離、0.01mmより小の分解能、及び0.015mmより小の再現精度を有する。近接センサ3′は、ピストン4′がシリンダハウジング6′の下側の壁の直前にあるとき、信号を放出するように配置又は調整されている。すなわち、近接センサ3′は、閉鎖ニードル2′が既にほぼ完全にその閉鎖位置にあるとき、信号を放出する。
【0037】
ピストン4′がシリンダハウジング6′の下側の壁から間隔を置いているとき、近接センサ3′は信号を放出しない。近接センサ3′の信号は、第1の信号線路3a′を介して、図2には示されていない制御部に伝送される。
【0038】
その他の点では、図2に示した装置の機能形式は、図1に示した装置の機能形式に相当する。
【符号の説明】
【0039】
1 射出成形ノズル
1a 排出開口
1b 溶融体通路
2 閉鎖ニードル
2a 先端
2b 端部
3 位置検出素子
3a 第1の信号線路
3b 第2の信号線路
4 ピストン
5 圧電素子
5a 第3の信号線路
6 シリンダハウジング
6a 第1の開口
6b 第2の開口
7 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形工具であって、少なくとも1つのホットランナーノズル(1;1′)を有しており、該ホットランナーノズル(1;1′)が排出開口(1a;1a′)を有しており、該排出開口(1a;1a′)が閉鎖ニードル(2;2′)により閉鎖可能である形式のものにおいて、閉鎖ニードル(2;2′)の少なくとも1つの位置を検出可能な素子(3;3′)が設けられていることを特徴とする、射出成形工具。
【請求項2】
閉鎖ニードル(2;2′)の、排出開口(1a;1a′)が閉鎖されている位置が少なくとも検出可能である、請求項1記載の射出成形工具。
【請求項3】
前記素子(3′)が電気的なスイッチとして形成されている、請求項1又は2記載の射出成形工具。
【請求項4】
閉鎖ニードル(2′)が操作部材(4′)により閉鎖位置へと調節可能であり、該操作部材(4′)が、前記スイッチ(3′)の第1の接点を有し、前記操作部材(4′)が閉鎖位置において当接するストッパが、前記スイッチ(3′)の第2の接点を有する、請求項3記載の射出成形工具。
【請求項5】
前記素子(3′)が近接センサとして形成されている、請求項1又は2記載の射出成形工具。
【請求項6】
閉鎖ニードル(2;2′)が操作部材(4;4′)により閉鎖位置へと調節可能であり、該操作部材(4;4′)と閉鎖ニードル(2;2′)との間に力センサ(5;5′)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の射出成形工具。
【請求項7】
前記力センサ(5;5′)が圧電素子として形成されている、請求項6記載の射出成形工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−47007(P2010−47007A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183351(P2009−183351)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(505396305)オットー メナー イノヴァツィオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Otto Maenner Innovation GmbH
【住所又は居所原語表記】Unter Gereuth 9−11, D−79353 Bahlingen, Germany
【Fターム(参考)】