開閉扉用クッション
【課題】衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制する。
【解決手段】フードクッション22の螺子溝40の底部40Aには複数の凹部50が形成されている。これらの凹部50は、フードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の間隔で形成されいる。また、隣接する凹部50は凸部52を介して互いになだらかな曲線で連結されており、軸線22Dに対して交差する方向に作用する横方向力に対して変形し易くなっている。このため、フードクッション22に所定値以上の横方向力が作用した場合には、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力の作用する方向へ変位するようになっている。
【解決手段】フードクッション22の螺子溝40の底部40Aには複数の凹部50が形成されている。これらの凹部50は、フードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の間隔で形成されいる。また、隣接する凹部50は凸部52を介して互いになだらかな曲線で連結されており、軸線22Dに対して交差する方向に作用する横方向力に対して変形し易くなっている。このため、フードクッション22に所定値以上の横方向力が作用した場合には、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力の作用する方向へ変位するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車のエンジンフード等の開閉扉に適用される開閉扉用クッションに関し、特に、開閉蓋の閉塞位置を決めると共に閉める際の衝撃音や振動を低減するための開閉扉用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開閉蓋と取付部材との間の隙間を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上するための開閉扉用緩衝装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、フードクッションに、所定値以上のフードの閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用すると、エプロンアッパメンバの螺子孔の周縁部に当接するフードクッションの車体上方側の螺子山が、下方側から上方側に向かって順番に、螺子山の根元部に形成した薄肉部を起点に上方へ塑性変形する。この塑性変形により、エプロンアッパメンバの取付部に対して、フードクッションが下方へ移動し、突出部の突出高さが変化する。また、螺子山が塑性変形することで、フードに衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。
【特許文献1】特開2006−159987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この開閉扉用クッションでは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合には、荷重が開閉扉用クッションの軸線に沿った方向である車体上方から車体下方へ向かって作用する場合に比べて、螺子山の塑性変形が起こり難い。このため、衝突エネルギの吸収性能が低下する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる開閉扉用クッションを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明は、開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、螺子溝の底部に形成され、前記取付部に支持された状態で、前記突出部に所定値以上の横方向力が作用した場合に、前記螺子溝の底部を変形させ前記取付部の孔への取付位置を前記横方向力の作用する方向へ変位させるための脆弱部形成手段を有する。
【0006】
取付部に取付けられた開閉扉用クッションの突出部に開閉扉から所定値以上の横方向力が作用した場合には、脆弱部形成手段が形成された螺子溝の底部が変形し、取付部の孔への開閉扉用クッションの取付位置が横方向力の作用する方向へ変位する。この結果、開閉扉用クッションにおける横方向力の作用する側の螺子溝の底部と取付部との間の隙間が拡大し、この隙間から開閉扉用クッションの一部が下方へ脱落する。このため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部に周方向に形成された複数の凹部であることを特徴とする。
【0008】
開閉扉用クッションの螺子溝の底部に周方向に複数の凹部を形成し、前記脆弱部形成手段とするため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記螺子溝の底部における前記複数の凹部を除く凸部に周方向に沿ってスリットを形成したことを特徴とする。
【0010】
開閉扉用クッションの螺子溝の底部における前記複数の凹部を除く凸部に周方向に沿ってスリットを形成したため、スリットが形成された螺子溝の底部における凸部が、横方向力によってさらに変形し易くなる。この結果、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下をさらに抑制できる。
【0011】
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部の一部に連続形成されたスリットであることを特徴とする。
【0012】
開閉扉用クッションの螺子溝の底部の一部にスリットを連続形成し前記脆弱部形成手段とするため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0013】
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記脆弱部形成手段は、前記突出部の軸線に沿って形成された孔であり、該孔の周方向に放射状に複数の凸部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
開閉扉用クッションの突出部の軸線に沿って孔を形成し、該孔の周方向に放射状に複数の凸部を設け、この孔を脆弱部形成手段とするため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0016】
請求項2記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0017】
請求項3記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下をさらに抑制できる。
【0018】
請求項4記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0019】
請求項5記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における開閉扉用クッションの第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、開閉扉用クッションにおける螺子溝の底とエプロンアッパメンバとの間の隙間は、開閉扉用クッションをエプロンアッパメンバにねじ込むときの支障にならず、且つ、開閉扉用クッションをエプロンアッパメンバに取付けたときに、位置がずれない程度に設定された寸法であるが各図面では説明のため、その間隔を拡大して示している。
【0021】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0022】
図6には本実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部が車体斜め前方から見た斜視図で示されており、図1には図6の1−1断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0023】
図6に示されるように、本実施形態の自動車のボデー10においては、前部12の車幅方向両外側上部に左右一対のエプロンアッパメンバ14が設けられている。また、これらの左右一対のエプロンアッパメンバ14は車体前後方向に沿って設けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14の各前端部には、ラジエータサポートアッパ20が車幅方向に沿って架設されている。
【0024】
左右一対のエプロンアッパメンバ14の前方上部には、それぞれ開閉扉用クッションとしての閉止位置決め用のフードクッション22が取付けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14は、フードクッション22で閉塞される部位となっている。なお、エプロンアッパメンバ14の後方上部には、図示を省略したヒンジを介して開閉蓋としてのエンジンフード24が開閉可能に取付けられており、エンジンフード24によって、エンジンルーム26が開閉可能となっている。
【0025】
図1に示されるように、エンジンフード24は、エンジンフード24の車体外側部を構成するフードアウタパネル30を備えており、フードアウタパネル30の車体内側部には、フードインナパネル32がフードアウタパネル30に沿って配置されている。また、フードアウタパネル30とフードインナパネル32との間には空間34が形成されており、フードアウタパネル30の外周縁部30Aとフードインナパネル32の外周縁部32Aとはヘミング加工によって互いに結合されている。
【0026】
図4に示されるように、左右一対のエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bは、フードクッション22の取付部となっており、それぞれ貫通孔36が形成されている。また、貫通孔36の周縁部には、切欠38が貫通孔36の径方向に沿って一箇所形成されている。さらに、貫通孔36の周縁部は、切欠38を挟んで対向する一方の周縁部38Aから、他方の周縁部38Bにかけて次第に低くなるように傾斜しており、貫通孔36の周縁部には雌螺子の一周が形成されている。このため、フードクッション22は貫通孔36に切欠38を通して螺合可能となっている。
【0027】
フードクッション22の形状は円柱状となっており、フードクッション22の材質はゴム、樹脂等の弾性部材となっている。また、フードクッション22の外周部には、フードクッション22の軸線方向である長手方向に所定のピッチで螺子溝40が形成されている。即ち、フードクッション22の外周部には、螺子溝40がフードクッション22の軸線回りにフードクッション22の全長に亘って刻まれている。なお、フードクッション22の外周部における螺子溝40の間が螺子山42となっている。
【0028】
なお、フードクッション22の下部22Cのエプロンアッパメンバ14への捩じ込み量によって、フードクッション22のエプロンアッパメンバ14から車体上方側への通常状態での突出量(突出部22Aの高さ)H1が調整できるようになっている。
【0029】
図4に示されるように、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aには脆弱部形成手段としての複数の凹部50が形成されている。これらの凹部50は、螺子溝40の底部40Aに、フードクッション22の軸線22Dに近づく方向(半径に沿った中心方向)に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の間隔で形成されている。
【0030】
図5に示されるように、隣接する凹部50は凸部52を介して互いになだらかな曲線で連結されており、螺子溝40の底部40Aの軸線22Dから見た形状は、外周部がなだらかな凹凸曲線となった丸状となっている。
【0031】
従って、螺子溝40の底部40Aは、凹部50を形成しない構成に比べて、軸線22Dに対して直交する方向(半径に沿った中心方向)に作用する横方向力に対して変形し易くなっている。
【0032】
このため、図2に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、衝突体Kが斜め上方から衝突し、衝突荷重Gの水平成分となる所定値以上の横方向力G1が、軸線22Dに対して直交する方向から作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおける隣接する凹部50の間の凸部(脆弱部)52が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図2の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0033】
なお、本実施形態の螺子山42は、フードクッション22に車体上方から車体下方へ向かって作用するエンジンフード24の閉止方向力が所定値までは変形しないが、エンジンフード24の閉止方向力が所定値以上になると変形するようになっている。また、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の内周部36Aと、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aとの間には、隙間54が形成されており、この隙間54内を変形した螺子山42が通過可能となっている。
【0034】
従って、衝突体Kが車体上方から車体下方へ向かってエンジンフード24に衝突して、エンジンフード24を下方側から支持しているフードクッション22に所定値以上の閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用した場合には、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bに形成した貫通孔36の周縁部に当接する車体上方側の螺子山42が上方へ変形し、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印B)へ移動するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0036】
本実施形態では、開放状態にあるエンジンフード24を閉めた際に、エンジンフード24の閉止方向力によって、フードクッション22におけるエプロンアッパメンバ14から突出した突出部22A(高さH1の部位)が弾性変形する。
【0037】
この際、図7の(0〜S1、0〜F1)に示されるように、エンジンフード24の車体下方へのストロークSと、フードクッション22からエンジンフード24が受ける力Fとの関係は、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇する。即ち、通常エンジンフード24を閉める際のストロークSに対しては、力Fが小さいので、エンジンフード24を容易に閉止状態へ移動することができる。
【0038】
一方、図7の(0〜S3、0〜F3)に示されるように、エンジンフード24が強閉された場合には、フードクッション22の突出部22Aが大きく弾性変形する。この結果、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇する。このため、エンジンフード24を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、エンジンフード24がエンジンフード24の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
【0039】
また、図2に示されるように、衝突体Kが斜め上方から衝突し、衝突荷重Gの水平成分となる所定値以上の横方向力G1が、軸線22Dに対して直交する方向から作用した場合に、螺子溝40の底部40Aの凸部52が変形(圧縮変形)する。このため、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図2の矢印A方向)へ変位する。
【0040】
この結果、フードクッション22における横方向力G1の作用する側の螺子溝40の底部40Aと、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の内周部36Aとの間の隙間54が拡大する。このため、図3に示されるように、この隙間54からフードクッション22の一部22Eが下方(図3の矢印C)へ脱落する。
【0041】
この結果、図7の(S3〜S4、F3〜F4)に示されるように、ストロークSの増加に対して力Fが下がる。このため、エンジンフード24に衝突体Kが当接した際の力Fが下がりストロークSが大きくなるので、衝突体Kが衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。
【0042】
即ち、図7に二点鎖線で示すように、フードクッション22の底付き(弾性変形の限界)によって、ストロークS5が短くなり、衝突体が受ける力F5が大きくなるのを防止できる。このため、エンジンフード24とエプロンアッパメンバ14との間の通常状態での隙間H1を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
【0043】
従って、本実施形態では、衝突体Kの斜め方向からの衝突によって、横方向力G1が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0044】
なお、図示を省略したが、本実施形態では、衝突体Kが車体上方から車体下方へ向かってエンジンフード24に衝突して、エンジンフード24を下方側から支持しているフードクッション22に所定値以上の閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用した場合には、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bに形成した貫通孔36の周縁部に当接する車体上方側の螺子山42が上方へ変形し、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印B)へ移動する。
【0045】
この結果、フードクッション22の軸線22Dの方向に沿って荷重Gが入力した場合にも、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。また、脆弱部形成手段としての凹部50が略均等の間隔で複数形成されているので、フードクッション22を取付ける(セットする)位置によって衝突エネルギの吸収性能が大きく変動しない特性を有する。
【0046】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第2実施形態を図8に従って説明する。
【0047】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図8に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aにおける前記複数の凹部50を除く凸52部に、フードクッション22の螺子溝40の周方向に沿ってスリット60が形成されている。
【0049】
スリット60は、螺子溝40の底部40Aにおける軸線22Dの方向(上下方向)の両端部となる底部40Aの上端と下端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つ深さM1で形成されている。
【0050】
このため、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aの凸部52における上下のスリット60の間となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力の作用する方向へ、第1実施形態に比べて容易に変位するようになっている。
【0051】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、第1実施形態に比べて、フードクッション22の軸線22Dの方向に沿って荷重Gが入力した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下をさらに抑制できる。
【0052】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第3実施形態を図9及び図10に従って説明する。
【0053】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図9に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aに脆弱部形成手段としてのスリット60が形成されている。スリット60は、螺子溝40の底部40Aにおける軸線方向(上下方向)の両端部となる底部40Aの上端と下端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の深さM1で連続形成されている。
【0055】
このため、図10に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおける上下のスリット60の間となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図10の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0056】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態においては、略均等の深さでスリット60が全周に亘って連続形成されているので、フードクッション22を取付ける(セットする)位置によって横方向力G1の作用によって変位量が変わらない効果が第1実施形態よりも得ることができる。
【0057】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第4実施形態を図11及び図12に従って説明する。
【0058】
なお、第3実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図11に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aに脆弱部形成手段としてのスリット60が形成されている。スリット60は、螺子溝40の底部40Aの下端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の深さで連続形成されている。
【0060】
なお、スリット60は図11のように軸線22Dに直交する方向から見て、螺子溝40の下部に沿って設けることが、フードクッション22を取付ける(セットする)ときに正規の位置にセットし易い(セットしてからずれ難い)という点で好ましい。
【0061】
このため、図12に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおけるスリット60の上方となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図12の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0062】
従って、本実施形態においても第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0063】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第5実施形態を図13及び図14に従って説明する。
【0064】
なお、第3実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図13に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aに脆弱部形成手段としてのスリット60が形成されている。スリット60は、螺子溝40の底部40Aの上端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の深さで連続形成されている。
【0066】
このため、図14に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおけるスリット60の下方となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図14の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0067】
従って、本実施形態においても第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第6実施形態を図15及び図16に従って説明する。
【0069】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図15に示されるように、本実施形態では、脆弱部形成手段としての孔64が、フードクッション22の螺子溝40の軸線22D上に軸線22Dに沿って形成されている。また、孔64の内周部64Aには、軸線22Dから離れる方向に向かって、且つ全周に渡って、周方向に略均等の間隔で放射状に複数の凸部66が形成されている。
【0071】
図16に示されるように、隣接する凸部66は凹部68を介して互いになだらかな曲線で連結されており、孔64の内周部64Aは、軸線22Dの方向から見た形状がなだらかな凹凸曲線となった丸状となっている。
【0072】
従って、螺子溝40の底部40Aは、孔64を形成しない構成に比べて、軸線22Dに対して直交する方向(半径に沿った中心方向)に作用する横方向力G1に対して変形し易くなっている。
【0073】
このため、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合には、螺子溝40の底部40Aが変形(圧縮変形)するようになっている。即ち、横方向の荷重G1について、中空の凹凸形状の図に対し、12時と6時方向の断面突形状が撓むことで変位するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向へ変位するようになっている。
【0074】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、フードクッション22の装着時に、孔64に治具を差し込んで装着することができ、フードクッション22の周囲を掴んで回し辛い状態でも容易に作業することができる。
【0075】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第7実施形態を図17及び図18に従って説明する。
【0076】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図17及び図18に示されるように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、螺子溝40の底部40Aに凹部50と凸部52が形成されていると共に、第6実施形態と同様に、フードクッション22の螺子溝40の軸線22D上に軸線22Dに沿って形成された孔64の内周部64Aに、軸線22Dから離れる方向に向かって、且つ全周に渡って略均等の間隔で放射状に複数の凸部66が形成されている。
【0078】
従って、本実施形態においては、第1実施形態と第6実施形態に比べて、フードクッション22の貫通孔36への取付位置を、横方向力G1の作用する方向へ容易に変位させることができる。
【0079】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、第1実施形態では、螺子溝40の底部40Aの軸線22Dから見た形状を、外周部がなだらかな凹凸曲線となった丸状としたが、これに代えて、脆弱部形成手段としての凹部50の軸線22Dから見た形状を三角形状や矩形状等の他の形状としてもよい。また、凹部から見た凸部の硬度をフードクッション22の他の部位より低硬度の材料を用いて成形してもよい。このようにすることで凸となっている部位が容易に変形することでフードクッション22に横方向の応力が加わったときに変形及び移動し易いという効果を有する。
【0080】
また、図19に示される本発明における開閉扉用クッションの第8実施形態のように、フードクッション22の目標特性に合わせて、フードクッション22の軸線22Dに沿って断面円形の孔80を形成した構成としてもよい。
【0081】
また、図20に示される本発明における開閉扉用クッションの第9実施形態のように、脆弱部形成手段としてのスリット60の周方向から見た断面形状を、凹部50の軸線22Dに向かって幅が狭くなる傾斜形状としてもよい。このように、スリット60の周方向から見た断面形状を、凹部50の軸線22Dに向かって幅が狭くなる傾斜形状とすることで、製品成形時の型の耐久性が向上する。また、横方向の応力に対し、スムーズにフードクッション22が移動及び変形するという効果を有する。
【0082】
また、図21に示される本発明における開閉扉用クッションの第10実施形態のように、凹部50は一定の間隔で形成されていなくてもよい。
【0083】
また、図22に示される本発明における開閉扉用クッションの第11実施形態のように、フードクッション22における下部の螺子溝40には凹部を設けないようにしてもよい。また、凸部に設けるスリット60を凸部全部に設けなくてもよい。
【0084】
また、図23に示される本発明における開閉扉用クッションの第12実施形態のように、フードクッション22における下部の螺子溝40にはスリットを設けなくてもよい。このようにすることで、フードクッション22をエプロンアッパメンバ14に捩じ込むときに、捩じ込み易いという効果がある。
【0085】
また、スリット60の深さを部分的に深くしてもよい。例えば、図23のようにフードクッション22の軸線(縦軸)22Dの中央付近のスリット60の深さを深くすることで横方向からの応力に対し、フードクッション22が座屈し易くなり、より歩行者保護の効果を得ることができる。
【0086】
また、図24に示される本発明における開閉扉用クッションの第13実施形態のように、軸線22Dに沿って形成された孔64に設けた凸部66が連続していなくても、等間隔になくてもよい。
【0087】
また、図25及び図26に示される本発明における開閉扉用クッションの第14実施形態のように、凸部52が、周方向に沿って所定の間隔、例えば、90度、120度、180度(図25及び図26では90度)毎に、フードクッション22の貫通孔36より外周方向へ突出した大型形状としてもよい。このようにすることで、車両が悪路等を走行した場合に、車両の振動により、フードクッション22が緩む(落ち込む)方向へ回転した際に、大型形状とした凸部52が、クッション22の貫通孔36の切欠38に引っ掛かり、フードクッション22の回転を抑制または防止できる。
【0088】
なお、大型形状とする凸部52の周方向の間隔は、フードクッション22を製造する際の型形状による生産性、車両への組付性等を考慮して適宜設定する。また、図25に示すように、螺子山42の車体上方側の外周縁部に傾斜面を形成し、螺子山42が上方へ変形し易い形状としてもよい。
【0089】
また、図27に示される本発明における開閉扉用クッションの第15実施形態のように、大型形状とした凸部52において、組付時の回転方向(矢印D方向)側となる傾斜面52Aの傾斜角度を、組付時の回転方向反対側となる傾斜面52Bの傾斜角度に比べて小さくしてもよい。このようにすることで、フードクッション22の組付時の回転負荷を小さくでき、且つ、フードクッション22の落ち込み方向の回転を抑制または防止する効果を大きくできる。なお、凸部52は図8のようにスリットを設けてもよい。
【0090】
また、図28に示される本発明における開閉扉用クッションの第16実施形態のように、孔80の形状を変えて、大型形状とした凸部52における肉厚N1を他の凸部52の肉厚N2と同じにしてもよい。このようにすることで、軸線22Dに対して直交する方向(半径に沿った中心方向)に作用する横方向力に対して、フードクッション22における大型形状とした凸部52を形成した部位が他の凸部52を形成した部位と同じように変形し易くできる。
【0091】
また、第2実施形態(図8)のスリット60の形状が、第4実施形態(図11)や第9実施形態(図20)のような形状であってもよい。
【0092】
また、上記各実施形態において、螺子溝40はフードクッション22の所定部位のみに形成されていてもよい。
【0093】
また、脆弱部形成手段としての孔64はフードクッション22を軸方向(上下方向)に貫通する必要はなく、予め、フードクッション22の突出部22Aが決まっている場合等には、突出部22Aのみに形成してもよい。
【0094】
また、本発明の開閉扉用クッションは、図6に示されるように、ラジエータサポートアッパ20の車幅方向両端上部に取付けられた強閉対策用のフードクッション80にも適用可能である。
【0095】
また、本発明の開閉扉用クッションは、開閉扉側となるエンジンフード24側に取付けてもよい。
【0096】
また、本発明の開閉扉用クッションは、エンジンフード24に限定されず、ラゲージドア、バックドア、スライドドア等の他の開閉蓋に適用可能であり、自動車以外の車体の開閉扉や車体以外の開閉蓋にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図6の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションの変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションの脱落状態を示す図1に対応する断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションを示す車体前方斜め上方から見た分解斜視図である。
【図5】図1の5−5断面線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションにおけるフードのストロークSと、フードクッションからフードが受ける力Fとの関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図2に対応する断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図2に対応する断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図2に対応する断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図16】本発明の第6実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図17】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図18】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図19】本発明の第8実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図20】本発明の第9実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図21】本発明の第10実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図22】本発明の第11実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図23】本発明の第12実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図24】本発明の第13実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図25】本発明の第14実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図26】本発明の第14実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図27】本発明の第15実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図28】本発明の第16実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0098】
14 エプロンアッパメンバ
14A エプロンアッパメンバの上壁部
14B エプロンアッパメンバの上壁部の前部(取付部)
22 フードクッション(開閉扉用クッション)
22A フードクッションの突出部
24 エンジンフード(開閉扉)
36 孔
40 螺子溝
42 螺子山
50 凹部(脆弱部形成手段)
52 凸部
56 孔
60 スリット(脆弱部形成手段)
64 孔(脆弱部形成手段)
66 凸部
68 凹部
72 スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車のエンジンフード等の開閉扉に適用される開閉扉用クッションに関し、特に、開閉蓋の閉塞位置を決めると共に閉める際の衝撃音や振動を低減するための開閉扉用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開閉蓋と取付部材との間の隙間を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上するための開閉扉用緩衝装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、フードクッションに、所定値以上のフードの閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用すると、エプロンアッパメンバの螺子孔の周縁部に当接するフードクッションの車体上方側の螺子山が、下方側から上方側に向かって順番に、螺子山の根元部に形成した薄肉部を起点に上方へ塑性変形する。この塑性変形により、エプロンアッパメンバの取付部に対して、フードクッションが下方へ移動し、突出部の突出高さが変化する。また、螺子山が塑性変形することで、フードに衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。
【特許文献1】特開2006−159987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この開閉扉用クッションでは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合には、荷重が開閉扉用クッションの軸線に沿った方向である車体上方から車体下方へ向かって作用する場合に比べて、螺子山の塑性変形が起こり難い。このため、衝突エネルギの吸収性能が低下する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる開閉扉用クッションを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明は、開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、螺子溝の底部に形成され、前記取付部に支持された状態で、前記突出部に所定値以上の横方向力が作用した場合に、前記螺子溝の底部を変形させ前記取付部の孔への取付位置を前記横方向力の作用する方向へ変位させるための脆弱部形成手段を有する。
【0006】
取付部に取付けられた開閉扉用クッションの突出部に開閉扉から所定値以上の横方向力が作用した場合には、脆弱部形成手段が形成された螺子溝の底部が変形し、取付部の孔への開閉扉用クッションの取付位置が横方向力の作用する方向へ変位する。この結果、開閉扉用クッションにおける横方向力の作用する側の螺子溝の底部と取付部との間の隙間が拡大し、この隙間から開閉扉用クッションの一部が下方へ脱落する。このため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部に周方向に形成された複数の凹部であることを特徴とする。
【0008】
開閉扉用クッションの螺子溝の底部に周方向に複数の凹部を形成し、前記脆弱部形成手段とするため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記螺子溝の底部における前記複数の凹部を除く凸部に周方向に沿ってスリットを形成したことを特徴とする。
【0010】
開閉扉用クッションの螺子溝の底部における前記複数の凹部を除く凸部に周方向に沿ってスリットを形成したため、スリットが形成された螺子溝の底部における凸部が、横方向力によってさらに変形し易くなる。この結果、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下をさらに抑制できる。
【0011】
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部の一部に連続形成されたスリットであることを特徴とする。
【0012】
開閉扉用クッションの螺子溝の底部の一部にスリットを連続形成し前記脆弱部形成手段とするため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0013】
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記脆弱部形成手段は、前記突出部の軸線に沿って形成された孔であり、該孔の周方向に放射状に複数の凸部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
開閉扉用クッションの突出部の軸線に沿って孔を形成し、該孔の周方向に放射状に複数の凸部を設け、この孔を脆弱部形成手段とするため、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0016】
請求項2記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0017】
請求項3記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下をさらに抑制できる。
【0018】
請求項4記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0019】
請求項5記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突体の斜め方向からの衝突によって、横方向力が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明における開閉扉用クッションの第1実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、開閉扉用クッションにおける螺子溝の底とエプロンアッパメンバとの間の隙間は、開閉扉用クッションをエプロンアッパメンバにねじ込むときの支障にならず、且つ、開閉扉用クッションをエプロンアッパメンバに取付けたときに、位置がずれない程度に設定された寸法であるが各図面では説明のため、その間隔を拡大して示している。
【0021】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0022】
図6には本実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部が車体斜め前方から見た斜視図で示されており、図1には図6の1−1断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0023】
図6に示されるように、本実施形態の自動車のボデー10においては、前部12の車幅方向両外側上部に左右一対のエプロンアッパメンバ14が設けられている。また、これらの左右一対のエプロンアッパメンバ14は車体前後方向に沿って設けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14の各前端部には、ラジエータサポートアッパ20が車幅方向に沿って架設されている。
【0024】
左右一対のエプロンアッパメンバ14の前方上部には、それぞれ開閉扉用クッションとしての閉止位置決め用のフードクッション22が取付けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14は、フードクッション22で閉塞される部位となっている。なお、エプロンアッパメンバ14の後方上部には、図示を省略したヒンジを介して開閉蓋としてのエンジンフード24が開閉可能に取付けられており、エンジンフード24によって、エンジンルーム26が開閉可能となっている。
【0025】
図1に示されるように、エンジンフード24は、エンジンフード24の車体外側部を構成するフードアウタパネル30を備えており、フードアウタパネル30の車体内側部には、フードインナパネル32がフードアウタパネル30に沿って配置されている。また、フードアウタパネル30とフードインナパネル32との間には空間34が形成されており、フードアウタパネル30の外周縁部30Aとフードインナパネル32の外周縁部32Aとはヘミング加工によって互いに結合されている。
【0026】
図4に示されるように、左右一対のエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bは、フードクッション22の取付部となっており、それぞれ貫通孔36が形成されている。また、貫通孔36の周縁部には、切欠38が貫通孔36の径方向に沿って一箇所形成されている。さらに、貫通孔36の周縁部は、切欠38を挟んで対向する一方の周縁部38Aから、他方の周縁部38Bにかけて次第に低くなるように傾斜しており、貫通孔36の周縁部には雌螺子の一周が形成されている。このため、フードクッション22は貫通孔36に切欠38を通して螺合可能となっている。
【0027】
フードクッション22の形状は円柱状となっており、フードクッション22の材質はゴム、樹脂等の弾性部材となっている。また、フードクッション22の外周部には、フードクッション22の軸線方向である長手方向に所定のピッチで螺子溝40が形成されている。即ち、フードクッション22の外周部には、螺子溝40がフードクッション22の軸線回りにフードクッション22の全長に亘って刻まれている。なお、フードクッション22の外周部における螺子溝40の間が螺子山42となっている。
【0028】
なお、フードクッション22の下部22Cのエプロンアッパメンバ14への捩じ込み量によって、フードクッション22のエプロンアッパメンバ14から車体上方側への通常状態での突出量(突出部22Aの高さ)H1が調整できるようになっている。
【0029】
図4に示されるように、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aには脆弱部形成手段としての複数の凹部50が形成されている。これらの凹部50は、螺子溝40の底部40Aに、フードクッション22の軸線22Dに近づく方向(半径に沿った中心方向)に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の間隔で形成されている。
【0030】
図5に示されるように、隣接する凹部50は凸部52を介して互いになだらかな曲線で連結されており、螺子溝40の底部40Aの軸線22Dから見た形状は、外周部がなだらかな凹凸曲線となった丸状となっている。
【0031】
従って、螺子溝40の底部40Aは、凹部50を形成しない構成に比べて、軸線22Dに対して直交する方向(半径に沿った中心方向)に作用する横方向力に対して変形し易くなっている。
【0032】
このため、図2に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、衝突体Kが斜め上方から衝突し、衝突荷重Gの水平成分となる所定値以上の横方向力G1が、軸線22Dに対して直交する方向から作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおける隣接する凹部50の間の凸部(脆弱部)52が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図2の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0033】
なお、本実施形態の螺子山42は、フードクッション22に車体上方から車体下方へ向かって作用するエンジンフード24の閉止方向力が所定値までは変形しないが、エンジンフード24の閉止方向力が所定値以上になると変形するようになっている。また、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の内周部36Aと、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aとの間には、隙間54が形成されており、この隙間54内を変形した螺子山42が通過可能となっている。
【0034】
従って、衝突体Kが車体上方から車体下方へ向かってエンジンフード24に衝突して、エンジンフード24を下方側から支持しているフードクッション22に所定値以上の閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用した場合には、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bに形成した貫通孔36の周縁部に当接する車体上方側の螺子山42が上方へ変形し、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印B)へ移動するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0036】
本実施形態では、開放状態にあるエンジンフード24を閉めた際に、エンジンフード24の閉止方向力によって、フードクッション22におけるエプロンアッパメンバ14から突出した突出部22A(高さH1の部位)が弾性変形する。
【0037】
この際、図7の(0〜S1、0〜F1)に示されるように、エンジンフード24の車体下方へのストロークSと、フードクッション22からエンジンフード24が受ける力Fとの関係は、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇する。即ち、通常エンジンフード24を閉める際のストロークSに対しては、力Fが小さいので、エンジンフード24を容易に閉止状態へ移動することができる。
【0038】
一方、図7の(0〜S3、0〜F3)に示されるように、エンジンフード24が強閉された場合には、フードクッション22の突出部22Aが大きく弾性変形する。この結果、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇する。このため、エンジンフード24を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、エンジンフード24がエンジンフード24の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
【0039】
また、図2に示されるように、衝突体Kが斜め上方から衝突し、衝突荷重Gの水平成分となる所定値以上の横方向力G1が、軸線22Dに対して直交する方向から作用した場合に、螺子溝40の底部40Aの凸部52が変形(圧縮変形)する。このため、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図2の矢印A方向)へ変位する。
【0040】
この結果、フードクッション22における横方向力G1の作用する側の螺子溝40の底部40Aと、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の内周部36Aとの間の隙間54が拡大する。このため、図3に示されるように、この隙間54からフードクッション22の一部22Eが下方(図3の矢印C)へ脱落する。
【0041】
この結果、図7の(S3〜S4、F3〜F4)に示されるように、ストロークSの増加に対して力Fが下がる。このため、エンジンフード24に衝突体Kが当接した際の力Fが下がりストロークSが大きくなるので、衝突体Kが衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。
【0042】
即ち、図7に二点鎖線で示すように、フードクッション22の底付き(弾性変形の限界)によって、ストロークS5が短くなり、衝突体が受ける力F5が大きくなるのを防止できる。このため、エンジンフード24とエプロンアッパメンバ14との間の通常状態での隙間H1を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
【0043】
従って、本実施形態では、衝突体Kの斜め方向からの衝突によって、横方向力G1が作用した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。
【0044】
なお、図示を省略したが、本実施形態では、衝突体Kが車体上方から車体下方へ向かってエンジンフード24に衝突して、エンジンフード24を下方側から支持しているフードクッション22に所定値以上の閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用した場合には、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bに形成した貫通孔36の周縁部に当接する車体上方側の螺子山42が上方へ変形し、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印B)へ移動する。
【0045】
この結果、フードクッション22の軸線22Dの方向に沿って荷重Gが入力した場合にも、衝突エネルギの吸収性能の低下を抑制できる。また、脆弱部形成手段としての凹部50が略均等の間隔で複数形成されているので、フードクッション22を取付ける(セットする)位置によって衝突エネルギの吸収性能が大きく変動しない特性を有する。
【0046】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第2実施形態を図8に従って説明する。
【0047】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図8に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aにおける前記複数の凹部50を除く凸52部に、フードクッション22の螺子溝40の周方向に沿ってスリット60が形成されている。
【0049】
スリット60は、螺子溝40の底部40Aにおける軸線22Dの方向(上下方向)の両端部となる底部40Aの上端と下端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つ深さM1で形成されている。
【0050】
このため、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aの凸部52における上下のスリット60の間となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力の作用する方向へ、第1実施形態に比べて容易に変位するようになっている。
【0051】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、第1実施形態に比べて、フードクッション22の軸線22Dの方向に沿って荷重Gが入力した場合に、衝突エネルギの吸収性能の低下をさらに抑制できる。
【0052】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第3実施形態を図9及び図10に従って説明する。
【0053】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図9に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aに脆弱部形成手段としてのスリット60が形成されている。スリット60は、螺子溝40の底部40Aにおける軸線方向(上下方向)の両端部となる底部40Aの上端と下端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の深さM1で連続形成されている。
【0055】
このため、図10に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおける上下のスリット60の間となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図10の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0056】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態においては、略均等の深さでスリット60が全周に亘って連続形成されているので、フードクッション22を取付ける(セットする)位置によって横方向力G1の作用によって変位量が変わらない効果が第1実施形態よりも得ることができる。
【0057】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第4実施形態を図11及び図12に従って説明する。
【0058】
なお、第3実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図11に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aに脆弱部形成手段としてのスリット60が形成されている。スリット60は、螺子溝40の底部40Aの下端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の深さで連続形成されている。
【0060】
なお、スリット60は図11のように軸線22Dに直交する方向から見て、螺子溝40の下部に沿って設けることが、フードクッション22を取付ける(セットする)ときに正規の位置にセットし易い(セットしてからずれ難い)という点で好ましい。
【0061】
このため、図12に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおけるスリット60の上方となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図12の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0062】
従って、本実施形態においても第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0063】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第5実施形態を図13及び図14に従って説明する。
【0064】
なお、第3実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図13に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aに脆弱部形成手段としてのスリット60が形成されている。スリット60は、螺子溝40の底部40Aの上端においてフードクッション22の軸線22Dに近づく方向に向かって、且つフードクッション22の全周に渡って略均等の深さで連続形成されている。
【0066】
このため、図14に示されるように、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合に、螺子溝40の底部40Aにおけるスリット60の下方となる脆弱部が変形(圧縮変形)するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向(図14の矢印A方向)へ変位するようになっている。
【0067】
従って、本実施形態においても第3実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0068】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第6実施形態を図15及び図16に従って説明する。
【0069】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図15に示されるように、本実施形態では、脆弱部形成手段としての孔64が、フードクッション22の螺子溝40の軸線22D上に軸線22Dに沿って形成されている。また、孔64の内周部64Aには、軸線22Dから離れる方向に向かって、且つ全周に渡って、周方向に略均等の間隔で放射状に複数の凸部66が形成されている。
【0071】
図16に示されるように、隣接する凸部66は凹部68を介して互いになだらかな曲線で連結されており、孔64の内周部64Aは、軸線22Dの方向から見た形状がなだらかな凹凸曲線となった丸状となっている。
【0072】
従って、螺子溝40の底部40Aは、孔64を形成しない構成に比べて、軸線22Dに対して直交する方向(半径に沿った中心方向)に作用する横方向力G1に対して変形し易くなっている。
【0073】
このため、フードクッション22がエプロンアッパメンバ14における上壁部14Aの前部14Bに支持された状態で、軸線22Dに対して直交する方向から所定値以上の横方向力G1が作用した場合には、螺子溝40の底部40Aが変形(圧縮変形)するようになっている。即ち、横方向の荷重G1について、中空の凹凸形状の図に対し、12時と6時方向の断面突形状が撓むことで変位するようになっている。この結果、フードクッション22の貫通孔36への取付位置が横方向力G1の作用する方向へ変位するようになっている。
【0074】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、フードクッション22の装着時に、孔64に治具を差し込んで装着することができ、フードクッション22の周囲を掴んで回し辛い状態でも容易に作業することができる。
【0075】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第7実施形態を図17及び図18に従って説明する。
【0076】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図17及び図18に示されるように、本実施形態では、第1実施形態と同様に、螺子溝40の底部40Aに凹部50と凸部52が形成されていると共に、第6実施形態と同様に、フードクッション22の螺子溝40の軸線22D上に軸線22Dに沿って形成された孔64の内周部64Aに、軸線22Dから離れる方向に向かって、且つ全周に渡って略均等の間隔で放射状に複数の凸部66が形成されている。
【0078】
従って、本実施形態においては、第1実施形態と第6実施形態に比べて、フードクッション22の貫通孔36への取付位置を、横方向力G1の作用する方向へ容易に変位させることができる。
【0079】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、第1実施形態では、螺子溝40の底部40Aの軸線22Dから見た形状を、外周部がなだらかな凹凸曲線となった丸状としたが、これに代えて、脆弱部形成手段としての凹部50の軸線22Dから見た形状を三角形状や矩形状等の他の形状としてもよい。また、凹部から見た凸部の硬度をフードクッション22の他の部位より低硬度の材料を用いて成形してもよい。このようにすることで凸となっている部位が容易に変形することでフードクッション22に横方向の応力が加わったときに変形及び移動し易いという効果を有する。
【0080】
また、図19に示される本発明における開閉扉用クッションの第8実施形態のように、フードクッション22の目標特性に合わせて、フードクッション22の軸線22Dに沿って断面円形の孔80を形成した構成としてもよい。
【0081】
また、図20に示される本発明における開閉扉用クッションの第9実施形態のように、脆弱部形成手段としてのスリット60の周方向から見た断面形状を、凹部50の軸線22Dに向かって幅が狭くなる傾斜形状としてもよい。このように、スリット60の周方向から見た断面形状を、凹部50の軸線22Dに向かって幅が狭くなる傾斜形状とすることで、製品成形時の型の耐久性が向上する。また、横方向の応力に対し、スムーズにフードクッション22が移動及び変形するという効果を有する。
【0082】
また、図21に示される本発明における開閉扉用クッションの第10実施形態のように、凹部50は一定の間隔で形成されていなくてもよい。
【0083】
また、図22に示される本発明における開閉扉用クッションの第11実施形態のように、フードクッション22における下部の螺子溝40には凹部を設けないようにしてもよい。また、凸部に設けるスリット60を凸部全部に設けなくてもよい。
【0084】
また、図23に示される本発明における開閉扉用クッションの第12実施形態のように、フードクッション22における下部の螺子溝40にはスリットを設けなくてもよい。このようにすることで、フードクッション22をエプロンアッパメンバ14に捩じ込むときに、捩じ込み易いという効果がある。
【0085】
また、スリット60の深さを部分的に深くしてもよい。例えば、図23のようにフードクッション22の軸線(縦軸)22Dの中央付近のスリット60の深さを深くすることで横方向からの応力に対し、フードクッション22が座屈し易くなり、より歩行者保護の効果を得ることができる。
【0086】
また、図24に示される本発明における開閉扉用クッションの第13実施形態のように、軸線22Dに沿って形成された孔64に設けた凸部66が連続していなくても、等間隔になくてもよい。
【0087】
また、図25及び図26に示される本発明における開閉扉用クッションの第14実施形態のように、凸部52が、周方向に沿って所定の間隔、例えば、90度、120度、180度(図25及び図26では90度)毎に、フードクッション22の貫通孔36より外周方向へ突出した大型形状としてもよい。このようにすることで、車両が悪路等を走行した場合に、車両の振動により、フードクッション22が緩む(落ち込む)方向へ回転した際に、大型形状とした凸部52が、クッション22の貫通孔36の切欠38に引っ掛かり、フードクッション22の回転を抑制または防止できる。
【0088】
なお、大型形状とする凸部52の周方向の間隔は、フードクッション22を製造する際の型形状による生産性、車両への組付性等を考慮して適宜設定する。また、図25に示すように、螺子山42の車体上方側の外周縁部に傾斜面を形成し、螺子山42が上方へ変形し易い形状としてもよい。
【0089】
また、図27に示される本発明における開閉扉用クッションの第15実施形態のように、大型形状とした凸部52において、組付時の回転方向(矢印D方向)側となる傾斜面52Aの傾斜角度を、組付時の回転方向反対側となる傾斜面52Bの傾斜角度に比べて小さくしてもよい。このようにすることで、フードクッション22の組付時の回転負荷を小さくでき、且つ、フードクッション22の落ち込み方向の回転を抑制または防止する効果を大きくできる。なお、凸部52は図8のようにスリットを設けてもよい。
【0090】
また、図28に示される本発明における開閉扉用クッションの第16実施形態のように、孔80の形状を変えて、大型形状とした凸部52における肉厚N1を他の凸部52の肉厚N2と同じにしてもよい。このようにすることで、軸線22Dに対して直交する方向(半径に沿った中心方向)に作用する横方向力に対して、フードクッション22における大型形状とした凸部52を形成した部位が他の凸部52を形成した部位と同じように変形し易くできる。
【0091】
また、第2実施形態(図8)のスリット60の形状が、第4実施形態(図11)や第9実施形態(図20)のような形状であってもよい。
【0092】
また、上記各実施形態において、螺子溝40はフードクッション22の所定部位のみに形成されていてもよい。
【0093】
また、脆弱部形成手段としての孔64はフードクッション22を軸方向(上下方向)に貫通する必要はなく、予め、フードクッション22の突出部22Aが決まっている場合等には、突出部22Aのみに形成してもよい。
【0094】
また、本発明の開閉扉用クッションは、図6に示されるように、ラジエータサポートアッパ20の車幅方向両端上部に取付けられた強閉対策用のフードクッション80にも適用可能である。
【0095】
また、本発明の開閉扉用クッションは、開閉扉側となるエンジンフード24側に取付けてもよい。
【0096】
また、本発明の開閉扉用クッションは、エンジンフード24に限定されず、ラゲージドア、バックドア、スライドドア等の他の開閉蓋に適用可能であり、自動車以外の車体の開閉扉や車体以外の開閉蓋にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図6の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションの変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションの脱落状態を示す図1に対応する断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションを示す車体前方斜め上方から見た分解斜視図である。
【図5】図1の5−5断面線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションにおけるフードのストロークSと、フードクッションからフードが受ける力Fとの関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図2に対応する断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図2に対応する断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図2に対応する断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図16】本発明の第6実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図17】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図18】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図19】本発明の第8実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図20】本発明の第9実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図21】本発明の第10実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図22】本発明の第11実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図23】本発明の第12実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図24】本発明の第13実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図25】本発明の第14実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図26】本発明の第14実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図27】本発明の第15実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【図28】本発明の第16実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図5に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0098】
14 エプロンアッパメンバ
14A エプロンアッパメンバの上壁部
14B エプロンアッパメンバの上壁部の前部(取付部)
22 フードクッション(開閉扉用クッション)
22A フードクッションの突出部
24 エンジンフード(開閉扉)
36 孔
40 螺子溝
42 螺子山
50 凹部(脆弱部形成手段)
52 凸部
56 孔
60 スリット(脆弱部形成手段)
64 孔(脆弱部形成手段)
66 凸部
68 凹部
72 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、
螺子溝の底部に形成され、前記取付部に支持された状態で、前記突出部に所定値以上の横方向力が作用した場合に、前記螺子溝の底部を変形させ前記取付部の孔への取付位置を前記横方向力の作用する方向へ変位させるための脆弱部形成手段を有する開閉扉用クッション。
【請求項2】
前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部に周方向に形成された複数の凹部であることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【請求項3】
前記螺子溝の底部における前記複数の凹部を除く凸部に周方向に沿ってスリットを形成したことを特徴とする請求項2に記載の開閉扉用クッション。
【請求項4】
前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部の一部に連続形成されたスリットであることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【請求項5】
前記脆弱部形成手段は、前記突出部の軸線に沿って形成された孔であり、該孔の周方向に放射状に複数の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【請求項1】
開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、
螺子溝の底部に形成され、前記取付部に支持された状態で、前記突出部に所定値以上の横方向力が作用した場合に、前記螺子溝の底部を変形させ前記取付部の孔への取付位置を前記横方向力の作用する方向へ変位させるための脆弱部形成手段を有する開閉扉用クッション。
【請求項2】
前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部に周方向に形成された複数の凹部であることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【請求項3】
前記螺子溝の底部における前記複数の凹部を除く凸部に周方向に沿ってスリットを形成したことを特徴とする請求項2に記載の開閉扉用クッション。
【請求項4】
前記脆弱部形成手段は、前記螺子溝の底部の一部に連続形成されたスリットであることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【請求項5】
前記脆弱部形成手段は、前記突出部の軸線に沿って形成された孔であり、該孔の周方向に放射状に複数の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2010−155492(P2010−155492A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333786(P2008−333786)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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