説明

関節部曲げ測定装置および曲げ測定方法

【課題】関節部曲げ測定装置を簡単な構成により小型化が可能で適用範囲が広く容易に機械的要素に対する安全性評価試験のデータを得ることができるようにする。
【解決手段】関節部曲げ測定装置10は、棒状の測定子本体部11と、この測定子本体部11の先端部にジョイント部19を介して回動可能に設けられた変位測定子12と、装置基体部15内に設けられたポテンショメータ13と、変位測定子12およびポテンショメータ13を連結する計測用ワイヤ14とを備える。計測用ワイヤ14は、測定子本体部11および変位測定子12に設けられた溝部17内に配されている。変位測定子12の角度変位量は、計測用ワイヤ14の移動量によりポテンショメータ13にて検出され、角度変換によって算出される。関節部曲げ測定装置10は、構成が簡単で小型化が図れるため、幼児の指先のような小さな部位を想定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットなどの機械的要素に対する安全性評価試験における関節部の曲げを測定する関節部曲げ測定装置および曲げ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突試験などの安全性評価試験において、人体の代わりとして用いられる安全性評価試験用人体ダミー(以下、特に明記しない限り「人体ダミー」と略記する。)は主に合成樹脂などから構成されており、試験の結果得られるデータは非常に重要であるとともに正確でなければならないことから、衝撃や荷重に対する変位特性などを限りなく人体に近付けて構成する必要がある。
【0003】
そして、この人体ダミーに装着されて衝突試験などによるデータを得るための各種センサ類も正確にデータを計測できるものでなければならない。このような各種センサ類や、各種センサ類を装着した人体ダミーとしては、下記特許文献に開示されているものが知られている。
【0004】
すなわち、下記特許文献1に開示されている歩行者の脚部保護試験に用いるダミー脚部用センサは、第1起歪柱体と第2起歪柱体をそれぞれ有する第1多分力計と第2多分力計および第1,第2ポテンショメータならびに第1,第2加速度変換器とを備えている。そして、特に膝部への衝撃力、剪断力、曲げモーメント、張力等の諸項目を高精度かつ簡易に計測するとしている。
【0005】
また、下記特許文献2に開示されている連結部印加力検出機構を備えた人体模型は、2つの部材に形成されるとともに互いに当接することにより2つの部材の相対移動を所定範囲に制限するストッパと、ストッパ同士の間に設けられる力センサとを備えている。そして、2つの部材を相対移動させ、ストッパが互いに当接したときにストッパの間の押し付け力が力センサにより検出され、2つの部材が可動範囲の限界に達したことを検出し、加わった力の大きさを検出するとしている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−311103号公報
【特許文献2】特開2004−309917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されているダミー脚部用センサや特許文献2に開示されている人体模型に備えられた連結部印加力検出機構では、人体ダミーの関節部の曲げを測定するに際して、構成が複雑であるとともにその大きさゆえに適用部位も限られる。このため、センサなどの構成を簡素化してさらなる小型化を図り適用部位の範囲を拡大するのは困難であるという問題があった。
【0008】
特に、自動車、各種機械、ロボット等の機械的要素に幼児の指などが挟まれたり、大きな曲げ負荷がかかったりすることがないかどうか、という安全性評価試験を行うための測定装置には、上述した従来技術をそのまま適用することができないという問題がある。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡単な構成により小型化が可能で適用範囲が広く容易に機械的要素に対する安全性評価試験のデータを得ることができる関節部曲げ測定装置および曲げ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係る関節部曲げ測定装置は、棒状の測定子本体部と、この測定子本体部の先端部に設けられた変位測定子と、前記測定子本体部と前記変位測定子とを回動可能に連結するジョイント部と、これら測定子本体部、変位測定子およびジョイント部を覆う可撓性を有するカバー部と、前記測定子本体部の基端部に設けられ前記変位測定子の角度変位量を測定する測定手段と、前記測定子本体部およびジョイント部を介して両端がそれぞれ前記変位測定子および前記測定手段に固定され両者を連結するとともに、前記変位測定子の角度変位量を前記測定手段に伝達する計測用ワイヤとを備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明に係る関節部曲げ測定装置によれば、測定子本体部の先端部に配置された変位測定子と、基端部に配置された測定手段とが、変位測定子の角度変位量を伝達する計測用ワイヤで固定され連結されているため、簡単な構成で角度変位量を正確に計測することができ、小型化が可能で適用範囲が広く(すなわち、腕や脚の関節部のみならず、指などの小さな関節部も想定することができる)容易に機械的要素に対する安全性評価試験のデータを得ることができる。
【0012】
前記測定手段は、例えば前記変位測定子の角度変位量を前記計測用ワイヤの移動量に基づく角度変換によって算出する。
【0013】
前記測定子本体部および前記変位測定子は、例えば両者が前記測定子本体部の軸方向に沿って直線的な位置関係にあるときに、外周側にそれぞれ前記軸方向に沿った状態で直線状に配置される溝部を備え、前記計測用ワイヤは、例えば前記溝部内を通るように配されている。
【0014】
前記変位測定子は複数方向に回動可能に設けられ、例えば各方向に対応してそれぞれ前記測定手段、前記計測用ワイヤおよび前記溝部が設けられている。
【0015】
この発明に係る関節部曲げ測定方法は、棒状の測定子本体部と、この測定子本体部の先端部に設けられた変位測定子とをジョイント部によって回動可能に連結し、前記測定子本体部の基端部に前記変位測定子の角度変化量を測定する測定手段を設け、両端がそれぞれ前記変位測定子および前記測定手段に固定され両者を連結するとともに前記変位測定子の角度変位量を前記測定手段に伝達する計測用ワイヤを前記測定子本体部およびジョイント部を介して配置し、前記測定手段によって前記変位測定子の角度変位量を前記計測用ワイヤの移動量に基づく角度変換により算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、簡単な構成により小型化が可能で適用範囲が広く容易に機械的要素に対する安全性評価試験のデータを得ることができる関節部曲げ測定装置および曲げ測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、この発明に係る関節部曲げ測定装置および曲げ測定方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、この発明の一実施形態に係る関節部曲げ測定装置の全体構成を一部を断面で示す説明図、図2は同関節部曲げ測定装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【0019】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る関節部曲げ測定装置(以下、「測定装置」と略記する。)10は、棒状の測定子本体部11と、この測定子本体部11の先端部にジョイント部19を介して回動可能に設けられた変位測定子12とを備えて構成されている。
【0020】
また、測定装置10は、測定子本体部11の基端部に設けられ、変位測定子12の角度変位量を測定するロータリ型のポテンショメータ13と、測定子本体部11およびジョイント部19を介して両端部14aがそれぞれ変位測定子12およびポテンショメータ13に固定され両者を連結するとともに、変位測定子12の角度変位量をポテンショメータ13に伝達する計測用ワイヤ14とを備えて構成されている。
【0021】
さらに、測定子本体部11、変位測定子12およびジョイント部19は、外周側が可撓性を有するカバー部16により覆われている。このカバー部16は、人体とほぼ同等となる反発特性を備えた構造物からなる。
【0022】
なお、測定子本体部11の基端部側とポテンショメータ13は、装置基体部15に取り付けられている。この装置基体部15は、用途に応じた、例えば安全性評価試験の実施者が容易に把持等できるような構造からなる。そして、測定子本体部11、変位測定子12、計測用ワイヤ14およびジョイント部19は、例えば鉄やアルミニウム等の金属部材からなり、装置基体部15は樹脂成形部品からなる。
【0023】
また、測定子本体部11および変位測定子12は、例えば図3に示すように、両者が測定子本体部11の軸方向に沿って直線的な位置関係にあるとき(例えば、図2に示すような状態のとき)に、外周側にそれぞれ軸方向に沿った状態で直線状に配置される溝部17を備えている。そして、計測用ワイヤ14は、この溝部17内を通るように配されている。
【0024】
このように構成された測定装置10においては、動作時に図4に示すように、変位測定子12の変位に伴い変位測定子12側の計測用ワイヤ14の端部14aが距離L1だけ移動した場合には、ジョイント部19が回転軸19aを中心として角度θだけ回転する。これに伴い、ポテンショメータ13側の計測用ワイヤ14の端部14aは距離L2だけ移動する。
【0025】
そして、ポテンショメータ13は、この計測用ワイヤ14の端部14aの移動距離L2を読み取ってθ=L2/r(ただし、rはジョイント部19の半径)により角度変換を行い、変位測定子12の実際の角度変位量を算出する。ポテンショメータ13からの出力は、図示しないCPUなどに入力され、測定結果として用いられる。なお、このCPUは、装置基体部15内に一体的に設けられていてもよい。
【0026】
これにより、従来の人体ダミーなどでは計測困難であった非常に小さな関節部における変位を測定することができ、例えば幼児の指先の車両用ドアなどの機械的要素への挟み込み試験や曲げ負荷試験などにおける各種の測定データを取得することが可能となる。すなわち、この測定装置10は、実際の人体では計測不可能な小さな部位の挟み込み時などにおける曲げ等の人体への外力(傷害に伴う力)を、人体に代わって正確に計測することができる。
【0027】
なお、この測定装置10は、幼児の指先のような小さな部位のみならず、その大きさを変えて構成すれば、容易に腕や膝の関節部などの大きな部位も想定して測定データを取得することが可能となる。
【0028】
さらに、測定装置10は、変位測定子12とポテンショメータ13とが、計測用ワイヤ14により連結されているため、計測用ワイヤ14の移動速度に応じたポテンショメータ13の応答速度に応じて、低速から高速の曲げ確認を行うことができる。
【0029】
なお、本実施形態の測定装置10では、ジョイント部19の回転軸19aを中心とした変位測定子12の変位に応じた角度変位量を測定するものについて説明したが、次のように構成してもよい。すなわち、例えばジョイント部19の近傍に、測定子本体部11の軸を中心とした外周方向に沿ってジョイント部19の回転軸を90°位相させた新たなジョイント部を設け、この新たなジョイント部の変位方向に応じた溝部17、計測用ワイヤ14およびポテンショメータ13をさらに新設すれば、複数方向への変位測定子12の変位を測定することが可能となる。さらに細かな方向への変位を測定する場合は、このような構成を増やしたり、組み合わせたりすればよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、測定手段としてポテンショメータ13を用いて説明したが、計測用ワイヤ14の移動量に伴う変位測定子12の変位量を計測できるものであれば、その他のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態に係る関節部曲げ測定装置の全体構成を一部を断面で示す説明図である。
【図2】同関節部曲げ測定装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【図3】同関節部曲げ測定装置の動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 関節部曲げ測定装置
11 測定子本体部
12 変位測定子
13 ポテンショメータ
14 計測用ワイヤ
15 装置基体部
16 カバー部
17 溝部
19 ジョイント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の測定子本体部と、
この測定子本体部の先端部に設けられた変位測定子と、
前記測定子本体部と前記変位測定子とを回動可能に連結するジョイント部と、
これら測定子本体部、変位測定子およびジョイント部を覆う可撓性を有するカバー部と、
前記測定子本体部の基端部に設けられ前記変位測定子の角度変位量を測定する測定手段と、
前記測定子本体部およびジョイント部を介して両端がそれぞれ前記変位測定子および前記測定手段に固定され両者を連結するとともに、前記変位測定子の角度変位量を前記測定手段に伝達する計測用ワイヤと
を備えたことを特徴とする関節部曲げ測定装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記変位測定子の角度変位量を前記計測用ワイヤの移動量に基づく角度変換によって算出することを特徴とする請求項1記載の関節部曲げ測定装置。
【請求項3】
前記測定子本体部および前記変位測定子は、両者が前記測定子本体部の軸方向に沿って直線的な位置関係にあるときに、外周側にそれぞれ前記軸方向に沿った状態で直線状に配置される溝部を備え、前記計測用ワイヤは、前記溝部内を通るように配されていることを特徴とする請求項1または2記載の関節部曲げ測定装置。
【請求項4】
前記変位測定子は複数方向に回動可能に設けられ、各方向に対応してそれぞれ前記測定手段、前記計測用ワイヤおよび前記溝部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の関節部曲げ測定装置。
【請求項5】
棒状の測定子本体部と、この測定子本体部の先端部に設けられた変位測定子とをジョイント部によって回動可能に連結し、前記測定子本体部の基端部に前記変位測定子の角度変化量を測定する測定手段を設け、両端がそれぞれ前記変位測定子および前記測定手段に固定され両者を連結するとともに前記変位測定子の角度変位量を前記測定手段に伝達する計測用ワイヤを前記測定子本体部およびジョイント部を介して配置し、
前記測定手段によって前記変位測定子の角度変位量を前記計測用ワイヤの移動量に基づく角度変換により算出する
ことを特徴とする関節部曲げ測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−204580(P2009−204580A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49940(P2008−49940)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(596112516)株式会社ジャスティ (4)
【Fターム(参考)】