防振ゴム部材およびその製造方法
【課題】 相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 防振ゴム部材3Rは、エラストマー321Rと、ブリード性潤滑剤322Rと、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体32Rと、ゴム弾性体32Rの表面のうち摺動面の内側に配置される摺動内面の少なくとも一部を覆い、メルカプト基を持つ樹脂330Rを含有し、ゴム弾性体32Rの変形に追従して変形可能であると共に、ゴム弾性体32Rから滲み出たブリード性潤滑剤322Rを貯留可能な複数の微小孔332Rが形成されている被膜33Rと、被膜33Rの表面の少なくとも一部を覆い、ゴム弾性体32Rから被膜33Rを透過して被膜33Rの表面に滲み出たブリード性潤滑剤322Rを含んで形成され、摺動面の少なくとも一部を形成する潤滑膜34Rと、を備えてなる。
【解決手段】 防振ゴム部材3Rは、エラストマー321Rと、ブリード性潤滑剤322Rと、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体32Rと、ゴム弾性体32Rの表面のうち摺動面の内側に配置される摺動内面の少なくとも一部を覆い、メルカプト基を持つ樹脂330Rを含有し、ゴム弾性体32Rの変形に追従して変形可能であると共に、ゴム弾性体32Rから滲み出たブリード性潤滑剤322Rを貯留可能な複数の微小孔332Rが形成されている被膜33Rと、被膜33Rの表面の少なくとも一部を覆い、ゴム弾性体32Rから被膜33Rを透過して被膜33Rの表面に滲み出たブリード性潤滑剤322Rを含んで形成され、摺動面の少なくとも一部を形成する潤滑膜34Rと、を備えてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身に対して相対的に振動する相手側部材に摺接する防振ゴム部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防振ゴム部材の一例として、スタビライザブッシュが挙げられる。スタビライザブッシュは、ブラケットを介して、車両のボディに固定されている。また、スタビライザブッシュの保持孔には、スタビライザバーが配置されている。
【0003】
例えば、車両の旋回時においては、遠心力により、サスペンションの外輪側が沈み込み、内輪側が伸長する。このため、スタビライザバーが捩られる。当該捩りに対する弾性復元力を利用して、スタビライザバーは、サスペンションの外輪側を持ち上げようとする。このようにして、スタビライザバーは、車両を水平に保っている。
【0004】
スタビライザバーが捩られる際、あるいは捩られたスタビライザバーが弾性復元力により復動する際、スタビライザバー外周面とスタビライザブッシュ内周面とは、相対的に摺動する。摺動時の摩擦抵抗が大きいと、異音(いわゆるスティックスリップ音)が大きくなるおそれがある。また、車両の乗り心地が悪くなるおそれがある。
【0005】
この点に鑑み、従来は、保持孔に、摩擦係数の小さいPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のライナーを挿入していた。そして、ライナーの内周面と、スタビライザバーの外周面と、を摺接させていた。しかしながら、PTFE製のライナーは、比較的高価である。このため、PTFE製のライナーを採用すると、スタビライザブッシュの製造コストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、PTFE製のライナーを要しないスタビライザブッシュが開発されている。例えば、特許文献1、2には、自己潤滑ゴム製のゴム弾性体と、被膜と、潤滑膜と、を有するスタビライザブッシュが開示されている。ゴム弾性体の径方向内側には、保持孔が形成されている。保持孔には、スタビライザバーが配置されている。被膜は、保持孔の内周面を覆っている。そして、自己潤滑ゴムに含まれるブリード性潤滑剤が、被膜を透過して被膜の表面に滲み出ることにより、潤滑膜が形成されている。同文献記載のスタビライザブッシュによると、主位的に潤滑膜が、予備的に被膜が、スタビライザバーに摺接する。これにより、スタビライザブッシュとスタビライザバーとの間の摩擦抵抗が、小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/038746号
【特許文献2】国際公開第2010/038749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載のスタビライザブッシュにおいては、使用時などにおいて温度が上昇すると、自己潤滑ゴム中のブリード性潤滑剤が溶けやすくなる。このため、ゴム弾性体の表面に滲み出る速度が速くなり、ブリード性潤滑油の滲出量が増加する。ブリード性潤滑油の滲出量が、被膜を透過できる量よりも多くなると、余剰分が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まってしまう。こうなると、最初はゴム弾性体と被膜とが強固に接合されていても、界面に溜まったブリード性潤滑油により被膜が押し上げられ、ゴム弾性体から被膜が剥離するおそれがある。被膜が剥離すると、スタビライザバー(相手側部材)との間の摩擦抵抗が、大きくなるおそれがある。
【0009】
本発明の防振ゴム部材およびその製造方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材、およびその比較的簡単な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明の防振ゴム部材は、相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材であって、エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体と、該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面の少なくとも一部を覆い、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ樹脂を含有し、該ゴム弾性体の変形に追従して変形可能であると共に、該ゴム弾性体から滲み出た該ブリード性潤滑剤を貯留可能な複数の微小孔が形成されている被膜と、該被膜の表面の少なくとも一部を覆い、該ゴム弾性体から該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出た該ブリード性潤滑剤を含んで形成され、該摺動面の少なくとも一部を形成する潤滑膜と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の防振ゴム部材は、ゴム弾性体と被膜と潤滑膜とを備えている。被膜には、複数の微小孔が形成されている。微小孔は、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤を貯留することができる。したがって、高温下において、自己潤滑ゴム中のブリード性潤滑剤の滲出速度が、被膜の透過速度を上回り、滲み出たブリード性潤滑剤の全てが被膜を透過できなくても、余剰分のブリード性潤滑剤を、被膜中の微小孔に貯留することができる。このため、ブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくい。したがって、本発明の防振ゴム部材によると、高温下においても、被膜がゴム弾性体から剥離しにくい。つまり、本発明の防振ゴム部材は、耐久性に優れる。
【0012】
潤滑膜は、ゴム弾性体から被膜を透過して被膜の表面に滲み出たブリード性潤滑剤を含んで形成されている。すなわち、潤滑膜は、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤のみから形成されていてもよく、当該ブリード性潤滑剤に加えて他の潤滑成分を含んで形成されてもよい。後に詳しく説明するが、被膜に微小孔を形成するため、被膜を形成する塗料に、ブリード性潤滑剤(ゴム弾性体中のブリード性潤滑剤の成分と同じでも異なっていてもよい)を配合する場合がある。塗料中のブリード性潤滑剤は、焼成時に塗料から放出され、硬化途中の被膜の表面に滲み出てくる。この場合、ゴム弾性体から被膜を透過して被膜の表面に滲み出たブリード性潤滑剤と、塗料から放出されたブリード性潤滑剤と、の両方から潤滑膜が形成されることになる。
【0013】
本発明の防振ゴム部材においては、潤滑膜が相手側部材に摺接する。また、摺動面において、仮に、潤滑膜が不足する部分がある場合には、当該部分からブリード性潤滑剤を含有する被膜が表出し、相手側部材に摺接する。このように、本発明の防振ゴム部材によると、主位的に潤滑膜が、予備的に被膜が、相手側部材に摺接する。また、ゴム弾性体が相手側部材に摺接しない。このため、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さい。
【0014】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記摺動内面は、略平滑面状(人為的な凹凸形状が付されていない面状。平面状は勿論、曲面状も含まれる。)を呈している構成とする方がよい。摺動内面に凹凸形状が付されている場合、凸部が相手側部材に摺接(線接触)して、摩耗しやすい。本構成の摺動内面には、凹凸形状が付されていない。このため、摺動内面は、被膜および潤滑膜(場合によっては被膜のみ)を介して、略全面的に相手側部材に面接触する。したがって、ゴム弾性体の耐久性が高い。
【0015】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、複数の前記微小孔の少なくとも一部には、前記ゴム弾性体から滲み出た前記ブリード性潤滑剤が貯留されている構成とする方がよい。
【0016】
本構成によると、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤が、被膜中に貯留されている。すなわち、ブリード性潤滑剤の滲出量が多くても、被膜中に留まることができるため、ブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくい。したがって、高温下においても、被膜がゴム弾性体から剥離しにくい。また、摺動面において、潤滑膜が不足して被膜が表出した部分においても、ブリード性潤滑剤を貯留した被膜が表出して、相手側部材に摺接する。このため、相手側部材との間の摩擦抵抗がより小さくなる。
【0017】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記被膜は、さらに、固体潤滑剤を含有する構成とする方がよい。
【0018】
本構成によると、相手側部材に対する被膜自体の摩擦抵抗が小さくなる。このため、摺動面において、潤滑膜が不足する部分がある場合でも、相手側部材との間の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレン製である構成とする方がよい。
【0020】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、固体潤滑剤の中でも特に摩擦係数が小さい。このため、本構成によると、さらに相手側部材に対する被膜自体の摩擦抵抗が小さくなる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記被膜は、前記固体潤滑剤を、前記樹脂100質量部に対して、200質量部以下含有する構成とする方がよい。ここで、固体潤滑剤の含有量を200質量部以下としたのは、200質量部超過の場合、被膜が摩耗しやすくなるからである。すなわち、被膜の耐久性が低くなるからである。
【0022】
(5−1)好ましくは、上記(5)の構成において、前記被膜は、前記固体潤滑剤を160質量部以下含有する構成とする方がよい。こうすると、被膜の耐久性を確保しつつ、相手側部材に対する被膜の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0023】
(5−2)好ましくは、上記(5−1)の構成において、前記被膜は、前記固体潤滑剤を110質量部以上130質量部以下含有する構成とする方がよい。ここで、固体潤滑剤の含有量を110質量部以上としたのは、110質量部未満の場合、相手側部材に対する被膜の摩擦抵抗が大きくなるからである。また、固体潤滑剤の含有量を130質量部以下としたのは、130質量部超過の場合、被膜が摩耗しやすくなるからである。本構成によると、さらに、被膜の耐久性を確保しつつ、相手側部材に対する被膜の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0024】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記樹脂は、シリコーン樹脂である構成とする方がよい。
【0025】
本構成によると、被膜がシリコーン樹脂を含んで形成されている。このため、ゴム弾性体に含有されるブリード性潤滑剤が被膜を透過しやすい。したがって、被膜の表面の少なくとも一部に、確実に潤滑膜を形成することができる。また、被膜がシリコーン樹脂を含んで形成されているため、比較的被膜が柔軟である。したがって、さらに、ゴム弾性体の変形に追従して、被膜が変形しやすい。
【0026】
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、前記シリコーン樹脂は、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有する構成とする方がよい。
【0027】
ここで、「ストレートシリコーン樹脂」とは、メチル基のみを含むシリコーン樹脂、およびメチルフェニル基のみを含むシリコーン樹脂をいう。また、「ストレートシリコーン樹脂の変性物」としては、エポキシ変性シリコーン樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、シリカ変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂などが挙げられる。また、「ゴム弾性を有する」シリコーン樹脂としては、ゴム系コーティング剤などに用いられるゴム複合シリコーン樹脂、ゴム弾性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0028】
本構成によると、シリコーン樹脂の架橋構造が疎であるため、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤が、さらに被膜を透過しやすい。したがって、被膜の表面の少なくとも一部に、さらに確実に潤滑膜を形成することができる。
【0029】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記ゴム弾性体は前記相手側部材が配置される保持孔を有しており、前記摺動内面は該保持孔の内周面である構成とする方がよい。
【0030】
本構成によると、相手側部材の外周面に対する保持孔の内周面の摩擦抵抗を、小さくすることができる。このため、相手側部材の外周面から保持孔の内周面に加わる捩りトルクを小さくすることができる。
【0031】
(9)また、上記課題を解決するため、本発明の防振ゴム部材の製造方法は、相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材の製造方法であって、架橋反応により、エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体を作製する架橋工程と、該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面を脱脂する脱脂工程と、脱脂後の該摺動内面に、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ熱硬化性樹脂と、焼成時に放出されることにより被膜に微小孔を形成する微小孔形成剤と、を含有する塗料を塗布する塗布工程と、該塗料が塗布された該ゴム弾性体を焼成することにより、該塗料から該微小孔形成剤を放出させながら該摺動内面に該被膜を形成すると共に、該ゴム弾性体の該ブリード性潤滑剤を該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出させ、該被膜の表面に該ブリード性潤滑剤を含む潤滑膜を形成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0032】
本発明の防振ゴム部材の製造方法は、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。架橋工程においては、架橋反応により、ゴム弾性体を作製する。脱脂工程においては、摺動内面を脱脂することにより、摺動内面から滲み出たブリード性潤滑剤を、一時的に除去する。塗布工程においては、ブリード性潤滑剤が除去された摺動内面に、塗料を塗布(刷毛などによる塗布は勿論、スプレーなどによる散布を含む。)する。焼成工程においては、熱により塗料を硬化させ、ゴム弾性体の摺動内面に被膜を形成する。また、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基により、被膜とゴム弾性体とを、強固に接合(化学結合)する。また、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤は、被膜を透過して、被膜の表面に滲み出る。主に当該ブリード性潤滑剤により、被膜の表面に潤滑膜を形成する。
【0033】
ここで、被膜を形成する塗料には、微小孔形成剤が含有されている。微小孔形成剤は、焼成時の熱により、塗料から放出される。つまり、焼成工程においては、塗料が硬化する際に微小孔形成剤が放出されることにより、被膜内部に複数の微小孔が形成される。
【0034】
本発明の防振ゴム部材の製造方法によると、塗料に微小孔形成剤を配合することにより、複数の微小孔を有する被膜を、比較的簡単に形成することができる。微小孔形成剤は、焼成時の熱により塗料から放出される。なお、被膜性能に影響しなければ、微小孔形成剤やその分解物が、硬化後の被膜中に残存していてもよい。また、焼成時における微小孔形成剤の放出速度を、ブリード性潤滑剤が滲み出す速度よりも大きくすることで、微小孔を確実に形成することができる。この点については、被膜の樹脂、微小孔形成剤、ゴム弾性体のエラストマー、ブリード性潤滑剤の選定と共に、焼成温度等を調整すればよい。
【0035】
被膜に形成された微小孔は、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤を貯留することができる。したがって、高温下において、自己潤滑ゴム中のブリード性潤滑剤の滲出速度が、被膜の透過速度を上回り、滲み出たブリード性潤滑剤の全てが被膜を透過できなくても、余剰分のブリード性潤滑剤は、被膜中の微小孔に貯留される。これにより、ブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくくなる。したがって、高温下における、ゴム弾性体からの被膜の剥離を、抑制することができる。
【0036】
このように、本発明の防振ゴム部材の製造方法によると、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材を、比較的簡単に製造することができる。
【0037】
(10)好ましくは、上記(9)の構成において、前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤および発泡剤から選ばれる一種以上からなる構成とする方がよい。
【0038】
塗料中のブリード性潤滑剤は、焼成時、硬化途中の被膜の表面に滲み出る。そして、潤滑膜を形成する。また、発泡剤は、焼成時にガス化して、硬化途中の被膜から放出される。いずれも、自身が抜けた後に、微小孔が形成される。このように、本構成によると、被膜や潤滑膜の形成を阻害することなく、微小孔を形成することができる。
【0039】
(11)好ましくは、上記(9)の構成において、前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤からなり、前記潤滑膜は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤、および該微小孔形成剤の両方から形成される構成とする方がよい。
【0040】
ブリード性潤滑剤は、ゴム弾性体にも含有されている。ブリード性潤滑剤は、潤滑膜を形成する。よって、本構成によると、被膜や潤滑膜に不純物が残存しにくく、被膜や潤滑膜の性能に影響を及ぼしにくい。なお、微小孔形成剤として用いるブリード性潤滑剤は、ゴム弾性体中のブリード性潤滑剤の成分と、同じでも異なっていてもよい。
【0041】
(11−1)好ましくは、上記(11)の構成において、前記熱硬化性樹脂は、シリコーン樹脂である構成とする方がよい。
【0042】
被膜のマトリックスがシリコーン樹脂の場合、微小孔形成剤のブリード潤滑剤が、被膜から抜けやすい。よって、微小孔形成剤の放出速度を、ゴム弾性体から滲み出るブリード性潤滑剤の滲出速度よりも、大きくしやすい。これにより、確実に微小孔を形成することができる。
【0043】
(11−2)好ましくは、上記(11−1)の構成において、前記シリコーン樹脂は、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有する構成とする方がよい。
【0044】
本構成によると、シリコーン樹脂の架橋構造が疎であるため、微小孔形成剤のブリード潤滑剤が、被膜からさらに抜けやすくなる。したがって、微小孔形成剤の放出速度をより大きくすることができ、より確実に微小孔を形成することができる。
【0045】
(12)好ましくは、上記(10)または(11)の構成において、前記微小孔形成剤は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤の少なくとも一種を含む構成とする方がよい。
【0046】
本構成によると、ゴム弾性体への影響が小さいと共に、安定した潤滑膜を形成することがきる。また、被膜や潤滑膜の性能にも影響を及ぼしにくい。微小孔形成剤のブリード性潤滑剤の成分は、ゴム弾性体に含有されるブリード性潤滑剤の成分と、全く同じでもよく、一部のみが重複していてもよい。後者の場合、ゴム弾性体に含有されるブリード性潤滑剤の成分のうち、主要成分(量が多い方の成分)を含む態様が望ましい。
【0047】
(13)好ましくは、上記(9)ないし(12)のいずれかの構成において、前記微小孔形成剤の配合量は、前記被膜を形成する固形分全体を100質量%とした場合の0.5質量%以上20質量%以下である構成とする方がよい。
【0048】
微小孔形成剤の配合量は、微小孔の形成と被膜の性能とを考慮して決定すればよい。すなわち、微小孔形成剤の配合量が多すぎると、被膜に占める微小孔の体積割合が大きくなり、被膜自体の強度や剛性が低下してしまう。一方、微小孔形成剤の配合量が少なすぎると、ブリード性潤滑剤を貯留するために必要な分の微小孔を、形成することができない。この点、本構成によると、被膜の性能を維持しながら、所望の微小孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材を提供することができる。また、本発明によると、当該防振ゴム部材の比較的簡単な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第一実施形態のストッパの配置図である。
【図2】同ストッパおよびロアアームブッシュがブラケットに装着された状態の軸方向断面図である。
【図3】同ストッパの斜視図である。
【図4】同ストッパの分解斜視図である。
【図5】図2の枠V内の拡大図である。
【図6】架橋工程後、脱脂工程前のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図7】脱脂工程後、塗布工程前のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図8】塗布工程後、焼成工程前のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図9】焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図10】同ストッパにおけるゴム部材本体の一部拡大断面図である。
【図11】第二実施形態のスタビライザブッシュの配置図である。
【図12】同スタビライザブッシュとブラケットとの合体斜視図である。
【図13】同スタビライザブッシュとブラケットとの分解斜視図である。
【図14】図12のXIV−XIV方向断面図である。
【図15】図14の枠XV内の拡大図である。
【図16】第三実施形態のスタビライザブッシュの製造方法における焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図17】実施例1および比較例1の各サンプルにおけるトルクの測定結果を示すグラフである。
【図18】サンプルW1〜W7のトルクの測定結果を示すグラフである。
【図19】サンプルB1〜B7のトルクの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の防振ゴム部材およびその製造方法の実施の形態について説明する。
【0052】
<第一実施形態>
本実施形態は、本発明の防振ゴム部材を、ストッパとして具現化したものである。
【0053】
[ストッパの配置]
まず、本実施形態のストッパの配置について説明する。図1に、本実施形態のストッパの配置図を示す。図1に示すように、車両8の前輪付近には、サスペンション80、ハブユニット81、ドライブシャフト83などの部材が配置されている。サスペンション80は、スプリング800R、ショックアブソーバ801R、ロアサスペンションアーム84Rなどを備えている。ロアサスペンションアーム84Rは、鋼製であって、略V字板状を呈している。ロアサスペンションアーム84Rの前端(V字一端)には、ブッシュ収容筒部840Rが形成されている。ブッシュ収容筒部840Rの内部には、ロアアームブッシュ4Rが圧入されている。ストッパ3Rは、ロアアームブッシュ4Rの前方に、配置されている。ブラケット5Rは、鋼製であって、上方に開口するC字状を呈している、ブラケット5Rは、車両8のボディ(図略)に固定されている。ストッパ3Rおよびブッシュ収容筒部840R(ロアアームブッシュ4R)は、ブラケット5RのC字開口内部に収容されている。ボルト841Rおよびナット842Rにより、ストッパ3Rおよびロアアームブッシュ4Rは、ブラケット5Rに、揺動可能に取り付けられている。ストッパ3Rは、ブッシュ収容筒部840Rが、ブラケット5Rに、直接的に摺接するのを抑制している。ブッシュ収容筒部840Rは、本発明の相手側部材に含まれる。
【0054】
[ストッパの構造]
次に、本実施形態のストッパ3Rの構造について説明する。図2に、本実施形態のストッパおよびロアアームブッシュがブラケットに装着された状態の軸方向(前後方向)断面図を示す。図3に、本実施形態のストッパの斜視図を示す。図4に、本実施形態のストッパの分解斜視図を示す。図5に、図2の枠V内の拡大図を示す。なお、図5は、本実施形態のストッパ3Rの機能を説明するための、模式図である。図2〜図5に示すように、本実施形態のストッパ3Rは、円板30Rと、ゴム部材本体31Rと、を備えている。
【0055】
円板30Rは、鋼製であって、リング状を呈している。円板30Rの中央には、ボルト挿通孔300Rが形成されている。ボルト挿通孔300Rの内部には、ボルト841Rが挿通されている。
【0056】
ゴム部材本体31Rは、ゴム弾性体32Rと、被膜33Rと、潤滑膜34Rと、を備えている。ゴム弾性体32Rは、リング状を呈している。ゴム弾性体32Rは、円板30Rの後面および外周面を覆うように、配置されている。ゴム弾性体32Rと円板30Rとは、架橋接着されている。ゴム弾性体32Rの後面には、複数のリブ320Rが形成されている。複数のリブ320Rは、円状に並んでいる。また、複数のリブ320Rは、点線状に連なっている。リブ320Rの表面は、本発明の摺動内面に含まれる。リブ320Rの表面は、所定の曲率を持った略平滑面状を呈している。被膜33Rは、ゴム弾性体32Rの表面を覆っている。被膜33Rの膜厚は、約20μmである。潤滑膜34Rは、液状であって、被膜33Rの表面を覆っている。
【0057】
[ストッパの材質]
次に、本実施形態のストッパ3Rの材質について、図5を参照しながら説明する。ゴム弾性体32Rは、自己潤滑ゴム製である。ゴム弾性体32Rは、NR(天然ゴム)とBR(ブタジエンゴム)とのブレンドゴム(以下、単に「ブレンドゴム」と称す。)321Rと、ブリード性潤滑剤322Rと、を備えている。ブリード性潤滑剤322Rとしては、融点が異なる二種類のオレイン酸アミドが用いられている。ブレンドゴム321Rは、本発明のエラストマーに含まれる。
【0058】
被膜33R(例えば、エスティーティー(株)「SOLVEST 398」製)は、メルカプト基を持つシリコーン樹脂330Rと、PTFE製の固体潤滑剤331Rと、複数の微小孔332Rと、を備えている。固体潤滑剤331Rは、シリコーン樹脂330R100質量部に対して、120質量部含まれている。固体潤滑剤331Rは、粒径(メジアン径)が約1μm以下、平均粒径が約0.5μmの略球状を呈している。複数の微小孔332Rは、被膜33Rの内部に分散されている。微小孔332Rの大きさは、微小孔332Rを形成した微小孔形成剤334Rの分子レベルであると推測される。いくつかの微小孔332Rには、ゴム弾性体32Rから滲み出たブリード性潤滑剤322Rが充填されている。
【0059】
潤滑膜34Rは、ゴム弾性体32Rのブリード性潤滑剤322Rと、被膜33Rの微小孔332Rを形成した微小孔形成剤334Rと、により形成されている。潤滑膜34Rの形成方法については、後述する。
【0060】
[ロアアームブッシュおよびブラケットの構造]
次に、本実施形態のロアアームブッシュ4Rおよびブラケット5Rの構造について、図2を参照しながら、簡単に説明する。ロアアームブッシュ4Rは、内筒金具40Rと外筒金具41Rとゴム部材42Rとを備えている。内筒金具40Rは、鋼製であって、円筒状を呈している。内筒金具40Rの内部には、ボルト841Rが挿通されている。外筒金具41Rは、鋼製であって、円筒状を呈している。外筒金具41Rは、内筒金具40Rの径方向外側に配置されている。外筒金具41Rは、ブッシュ収容筒部840Rに圧入されている。ゴム部材42Rは、ゴム製であって、内筒金具40Rと外筒金具41Rとの間に介在している。ゴム部材42Rと内筒金具40Rと外筒金具41Rとは、架橋接着されている。
【0061】
ブラケット5Rは、前壁50Rと後壁51Rとを備えている。前壁50Rには、ボルト挿通孔500Rが穿設されている。後壁51Rには、ボルト挿通孔510Rが穿設されている。ボルト841Rは、ボルト挿通孔500R、ボルト挿通孔300R、内筒金具40R内部、ボルト挿通孔510Rを貫通している。ボルト841Rの貫通端(後端)には、ナット842Rがねじ止めされている。
【0062】
図2に示すように、ストッパ3Rとブッシュ収容筒部840Rとの間には、所定のクリアランスCが確保されている。しかしながら、図5に白抜き矢印で示すように、ブッシュ収容筒部840Rは、外筒金具41Rの外周面に対して、前方に摺動する場合がある。この場合、ストッパ3Rの後面(具体的には、リブ320Rの頂部付近を覆う潤滑膜34Rの表面(潤滑膜34Rが不足する部分については、被膜33Rの表面)は、ブッシュ収容筒部840Rの前端面に、相対的に摺接する。
【0063】
[ストッパの製造方法]
次に、本実施形態のストッパ3Rの製造方法について説明する。本実施形態のストッパ3Rの製造方法は、組成物調製工程と、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。図6に、架橋工程後、脱脂工程前のゴム弾性体の拡大断面図を示す。図7に、脱脂工程後、塗布工程前のゴム弾性体の拡大断面図を示す。図8に、塗布工程後、焼成工程前のゴム弾性体の拡大断面図を示す。図9に、焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図を示す。なお、図6〜図9に示すのは、いずれも図5に対応する部位である(図6〜図9においては、図5を90°回転して示している)。
【0064】
組成物調製工程においては、ブレンドゴム321Rの原料、ブリード性潤滑剤322R、架橋剤などを混練することにより、組成物を調製する。
【0065】
架橋工程においては、まず、キャビティに円板30R(図2参照)を配置する。次いで、組成物を金型のキャビティに注入する。続いて、160℃で、8分間、金型を保持することにより、キャビティ内のブレンドゴム321Rの原料を架橋反応させる。その後、金型を開き、キャビティから、ゴム弾性体32Rと円板30Rとが架橋接着された、中間体を回収する。図6に示すように、ゴム弾性体32Rの表面には、ブリード性潤滑剤322Rが滲み出る。
【0066】
脱脂工程においては、ゴム弾性体32Rの表面を、IPA(イソプロピルアルコール)により、脱脂する。そして、図7に示すように、ゴム弾性体32Rの表面から、ブリード性潤滑剤322Rを除去する。
【0067】
塗布工程においては、図8に示すように、清浄なゴム弾性体32Rの表面に、塗料35Rを塗布する。塗料35Rは、メルカプト基を持つシリコーン樹脂330Rの原料333Rと、PTFE製の固体潤滑剤331Rと、微小孔形成剤334Rと、を含有している。微小孔形成剤334Rは、ブリード性潤滑剤322Rとして用いた二種類のオレイン酸アミドのうちの一方(低融点の主要成分)である。微小孔形成剤334Rの配合量は、塗料35Rの固形分を100質量%とした場合の10質量%である。
【0068】
焼成工程においては、塗料35Rが塗布されたゴム弾性体32Rを、100℃で、30分間、焼成する。焼成により、図8に示す原料333Rが熱硬化する。そして、図9に示すように、ゴム弾性体32Rの表面に、被膜33Rが形成される。この際、図9に白抜き矢印で示すように、塗料35R中の微小孔形成剤334Rが放出されて、被膜33Rの表面に滲み出る。また、図9にハッチング矢印で示すように、ゴム弾性体32Rのブリード性潤滑剤322Rも、被膜33Rを透過して、被膜33Rの表面に滲み出る。このように、被膜33Rの表面に滲み出た微小孔形成剤334Rおよびブリード性潤滑剤322Rにより、潤滑膜34Rが形成される。また、被膜33Rには、微小孔形成剤334Rが放出された後に、微小孔332Rが形成される。このようにして、本実施形態のストッパ3Rを製造する。
【0069】
[作用効果]
次に、本実施形態のストッパ3Rおよびその製造方法の作用効果について説明する。図10に、ストッパ3Rにおけるゴム部材本体31Rの一部拡大断面図を示す。なお、図10に示すのは、前出図5に対応する部位である(図5を90°回転して示している)。
【0070】
図10に示すように、本実施形態のストッパ3Rの被膜33Rには、複数の微小孔332Rが形成されている。微小孔332Rは、ゴム弾性体32Rから滲み出たブリード性潤滑剤322Rを、貯留することができる。このため、高温下において、ゴム弾性体32R中のブリード性潤滑剤322Rの滲出速度が、被膜33Rを透過する速度を上回っても、余剰分のブリード性潤滑剤322Rは、図10にハッチング矢印で示すように、被膜33R中の微小孔332Rに貯留される。よって、ブリード性潤滑剤322Rは、被膜33Rとゴム弾性体32Rとの界面に溜まりにくい。これにより、本実施形態のストッパ3Rにおいては、高温下においても、被膜33Rがゴム弾性体32Rから剥離しにくい。したがって、本実施形態のストッパ3Rは、耐久性に優れる。
【0071】
本実施形態のストッパ3Rの潤滑膜34Rは、ブッシュ収容筒部840Rに摺接する。また、例えば潤滑膜34Rの一時的な膜切れなどにより、潤滑膜34Rが不足する部分が摺動面にある場合には、当該部分から被膜33Rが表出し、ブッシュ収容筒部840Rに摺接する。すなわち、潤滑膜34Rが不足する場合であっても、ブリード性潤滑剤322Rおよび固体潤滑剤331Rを含有する被膜33Rが、ブッシュ収容筒部840Rに摺接する。このように、本実施形態のストッパ3Rは、通常は、潤滑膜34Rがブッシュ収容筒部840Rに摺接する。また、潤滑膜34Rが不足する場合は、被膜33Rがブッシュ収容筒部840Rに摺接する。また、ゴム弾性体32Rがブッシュ収容筒部840Rに摺接しない。このため、ブッシュ収容筒部840Rとの間の摩擦抵抗が小さい。
【0072】
被膜33Rのマトリックスのシリコーン樹脂330Rには、メルカプト基(−SH)が導入されている。メルカプト基は、エラストマーに対する反応性が高い官能基である。このため、本実施形態のストッパ3Rによると、ゴム弾性体32Rと被膜33Rとを、強固に接合(化学結合)することができる。したがって、ゴム弾性体32Rから被膜33Rが剥離しにくい。また、ゴム弾性体32Rの変形に追従して、被膜33Rが変形しやすい。また、固体潤滑剤331Rは、摩擦係数が特に小さいPTFE製である。この点においても、本実施形態のストッパ3Rの被膜33Rは、ブッシュ収容筒部840Rに対する摩擦抵抗が小さい。また、固体潤滑剤331Rは、シリコーン樹脂330R100質量部に対して、120質量部含まれている。このため、被膜33Rの耐久性を確保しつつ、ブッシュ収容筒部840Rに対する被膜33Rの摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0073】
また、被膜33R(例えば、エスティーティー(株)「SOLVEST 398」製)のマトリックスは、シリコーン樹脂330Rである。シリコーン樹脂330Rは、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有している。このため、ゴム弾性体32Rのブリード性潤滑剤322Rが、被膜33Rを透過しやすい。したがって、被膜33Rの表面に、確実に潤滑膜34Rを形成することができる。また、微小孔形成剤334R(ブリード潤滑剤)も、硬化途中の被膜33Rから抜けやすい。一方、ゴム弾性体32Rのマトリックスは、ブレンドゴム321Rである。ここで、微小孔形成剤334Rのシリコーン樹脂330R中の移動速度は、ブリード性潤滑剤322Rのブレンドゴム321R中の移動速度よりも、大きい。このため、焼成時に確実に微小孔332Rを形成することができる。
【0074】
本実施形態のストッパ3Rの製造方法によると、図6、図7に示すように、脱脂工程において、ゴム弾性体32Rの表面を脱脂することにより、表面から滲み出るブリード性潤滑剤322Rを、一時的に除去している。このため、図8に示すように、塗布工程において、塗料35Rを、確実にゴム弾性体32Rの表面に、塗布することができる。
【0075】
また、塗料35Rには、微小孔形成剤334Rが含有されている。図9に示すように、焼成工程において、塗料35Rが硬化する際に、微小孔形成剤334Rが放出されることにより、被膜33R内部に複数の微小孔332Rを形成することができる。このように、本実施形態のストッパ3Rの製造方法によると、複数の微小孔332Rを有する被膜33Rを、比較的簡単に形成することができる。
【0076】
また、微小孔形成剤334Rは、ブリード性潤滑剤322Rとして用いた二種類のオレイン酸アミドのうちの一方である。つまり、微小孔形成剤334Rは、ゴム弾性体32R中のブリード性潤滑剤322Rのうちの一つと同じである。このため、ゴム弾性体32Rへの影響が小さいと共に、安定した潤滑膜34Rを形成することがきる。また、被膜33Rや潤滑膜34Rに不純物が残存しにくく、それらの性能にも影響を及ぼしにくい。また、微小孔形成剤334Rの配合量は、塗料35Rの固形分を100質量%とした場合の10質量%である。これにより、被膜33Rの性能を維持しながら、ブリード性潤滑剤322Rを貯留するために必要な微小孔332Rを、形成することができる。
【0077】
<第二実施形態>
本実施形態は、本発明の防振ゴム部材を、スタビライザブッシュとして具現化したものである。
【0078】
[スタビライザブッシュの配置]
まず、本実施形態のスタビライザブッシュの配置について説明する。図11に、本実施形態のスタビライザブッシュの配置図を示す。図11に示すように、車両9の前輪付近には、サスペンション90、ハブユニット91、ステアリングギヤ92、ドライブシャフト93などの部材が配置されている。サスペンション90は、スプリング900L、900R、ショックアブソーバ901L、901R、ロアサスペンションアーム902L、902R、スタビライザバー903などを備えている。スタビライザバー903は、鋼製であって、前方にC字状に膨出する長軸パイプ状を呈している。スタビライザバー903の左右方向両端は、ロアサスペンションアーム902L、902Rに連結されている。スタビライザバー903の中央部分の左右二箇所は、スタビライザブッシュ1L、1R、ブラケット2L、2Rを介して、車両9のボディ(図略)に連結されている。このように、スタビライザブッシュ1L、1Rは、スタビライザバー903と、車両9のボディと、の間に介装されている。スタビライザブッシュ1L、1Rは、前輪から入力される振動が、スタビライザバー903を介して、車両9のボディに伝達されるのを抑制している。スタビライザバー903は、本発明の相手側部材に含まれる。
【0079】
[スタビライザブッシュの構造]
次に、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの構造について説明する。左右二つのスタビライザブッシュ1L、1Rの構成は同じである。以下、左側のスタビライザブッシュ1Lの構成について説明し、当該説明をもって右側のスタビライザブッシュ1Rの構成についての説明を兼ねるものとする。
【0080】
図12に、本実施形態のスタビライザブッシュとブラケットとの合体斜視図を示す。図13に、本実施形態のスタビライザブッシュとブラケットとの分解斜視図を示す。図14に、図12のXIV−XIV方向断面図を示す。図12〜図14に示すように、本実施形態のスタビライザブッシュ1Lは、ゴム弾性体10Lと、被膜11Lと、潤滑膜12Lと、を備えている。
【0081】
ゴム弾性体10Lは、左方向あるいは右方向から見て、中実のU字状を呈している。すなわち、ゴム弾性体10Lの上部分は、長方形状を呈している。ゴム弾性体の下部分は、半円状を呈している。ゴム弾性体10Lは、左右方向に貫通する保持孔100Lを備えている。保持孔100Lの内周面は、本発明の摺動内面に含まれる。保持孔100Lの内周面は、所定の曲率を持った略平滑面状を呈している。すなわち、保持孔100Lの内周面には、人為的な凹凸が形成されていない。ゴム弾性体10Lの外部と保持孔100Lの内部とは、切断部101Lを介して、連通している。保持孔100Lには、スタビライザバー903が配置されている。スタビライザバー903は、切断部101Lを上下方向に開いて形成される開口を介して、ゴム弾性体10Lの外部から保持孔100Lの内部に挿入される。ゴム弾性体10Lの左右両縁には、一対のフランジ部104Lが形成されている。一対のフランジ部104Lは、各々、上方に開口するU字状を呈している。
【0082】
被膜11Lは、円筒状を呈している。被膜11Lは、保持孔100Lの内周面を覆っている。被膜11Lの膜厚(径方向厚さ)は、約20μmである。潤滑膜12Lは、液状であって、被膜11Lの表面(内周面)を覆っている。潤滑膜12Lの表面(潤滑膜12Lが不足する場合には被膜11Lの表面)は、スタビライザバー903の外周面に、当接している。
【0083】
[スタビライザブッシュの材質]
次に、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの材質について説明する。図15に、図14の枠XV内の拡大図を示す。なお、図15は、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの機能を説明するための、模式図である。
【0084】
ゴム弾性体10Lは、自己潤滑ゴム製である。ゴム弾性体10Lは、NRとBRとのブレンドゴム(以下、単に「ブレンドゴム」と称す。)102Lと、ブリード性潤滑剤103Lと、を備えている。ブリード性潤滑剤103Lとしては、融点が異なる二種類のオレイン酸アミドが用いられている。ブレンドゴム102Lは、本発明のエラストマーに含まれる。
【0085】
被膜11L(例えば、エスティーティー(株)「SOLVEST 398」製)は、メルカプト基を持つシリコーン樹脂110Lと、PTFE製の固体潤滑剤111Lと、複数の微小孔112Lと、を備えている。固体潤滑剤111Lは、シリコーン樹脂110L100質量部に対して、120質量部含まれている。固体潤滑剤111Lは、粒径(メジアン径)が約1μm以下、平均粒径が約0.5μmの略球状を呈している。複数の微小孔112Lは、被膜11Lの内部に分散されている。微小孔112Lの大きさは、微小孔112Lを形成した微小孔形成剤の分子レベルであると推測される。いくつかの微小孔112Lには、ゴム弾性体10Lから滲み出たブリード性潤滑剤103Lが充填されている。
【0086】
潤滑膜12Lは、ゴム弾性体10Lのブリード性潤滑剤103Lと、被膜11Lの微小孔112Lを形成した微小孔形成剤と、により形成されている。すなわち、焼成により被膜11Lを形成する際、被膜11Lの塗料中の微小孔形成剤(ブリード性潤滑剤103Lとして用いた二種類のオレイン酸アミドのうちの一方(低融点の主要成分))が放出されて、被膜11Lの表面に滲み出る。また、ゴム弾性体10Lのブリード性潤滑剤103Lも、被膜11Lを透過して、被膜11Lの表面に滲み出る。このように、被膜11Lの表面に滲み出た微小孔形成剤およびブリード性潤滑剤103Lにより、潤滑膜12Lが形成される。
【0087】
図15に白抜き両端矢印で示すように、スタビライザバー903は、車両9の挙動に応じて、軸周りに捩られる。一方、スタビライザブッシュ1Lは、後述するブラケット2Lを介して、車両9のボディに固定されている。このため、潤滑膜12Lの表面(潤滑膜12Lが不足する場合には被膜11Lの表面)は、スタビライザバー903の外周面に、相対的に摺接している。
【0088】
[ブラケットの構造]
次に、本実施形態のブラケット2L、2Rの構造について説明する。左右二つのブラケット2L、2Rの構造は同じである。以下、左側のブラケット2Lの構造について説明し、当該説明をもって右側のブラケット2Rの構造についての説明を兼ねるものとする。図12〜図14に示すように、本実施形態のブラケット2Lは、鋼製であって、ブッシュ保持部20Lと、一対の固定部21Lと、を備えている。
【0089】
ブッシュ保持部20Lは、左方向あるいは右方向から見て、上方に開口するU字状を呈している。ブッシュ保持部20Lの左右両縁には、一対のフランジ部200Lが形成されている。ブッシュ保持部20LのU字開口内部には、スタビライザブッシュ1Lにおける、一対のフランジ部104L間の部分が、収容されている。一対のフランジ部200Lは、一対のフランジ部104Lに、左右方向内側から当接している。当該当接により、ブラケット2Lから、左右方向に、スタビライザブッシュ1Lが脱落するのを、抑制することができる。
【0090】
一対の固定部21Lは、各々、長方形板状を呈している。一対の固定部21Lは、ブッシュ保持部20LのU字両端に連なっている。一対の固定部21Lには、各々、ボルト挿通孔210Lが穿設されている。一対のボルト挿通孔210Lには、各々、下方からボルト211Lが挿通されている。一方、車両9のボディ95の下面には、凹部950Lと、一対のボルト止着孔951Lと、が配置されている。凹部950Lの内部空間は、直方体状を呈している。凹部950Lには、スタビライザブッシュ1Lの上部分が挿入されている。一対のボルト止着孔951Lは、凹部950Lの前後方向に配置されている。ボルト211Lは、ボルト挿通孔210Lを貫通して、ボルト止着孔951Lにねじ止めされている。このように、一対のボルト211Lにより、ブラケット2Lがボディ95の下面に固定されている。また、スタビライザブッシュ1Lが、ブラケット2Lと、ボディ95の下面と、の間に、挟持、固定されている。固定される際、ゴム弾性体10Lの上部分は、締め代S(図12、図13参照)の分だけ、圧縮変形する。当該締め代Sにより、スタビライザブッシュ1Lは、スタビライザバー903の外周面に、圧接している。
【0091】
[スタビライザブッシュの製造方法]
本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの製造方法は、組成物調製工程と、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。架橋工程において円板30R(図2参照)をキャビティにインサートする必要がない点以外は、第一実施形態のストッパの製造方法と同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0092】
[作用効果]
次に、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rおよびその製造方法の作用効果について説明する。本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rおよびその製造方法は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のストッパおよびその製造方法と同様の作用効果を有する。
【0093】
すなわち、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの製造方法によると、複数の微小孔112Lを有する被膜11Lを、比較的簡単に形成することができる。また、微小孔112Lは、ゴム弾性体10Lから滲み出たブリード性潤滑剤103Lを、貯留することができる。このため、高温下において、ゴム弾性体10L中のブリード性潤滑剤103Lの滲出速度が、被膜11Lを透過する速度を上回っても、余剰分のブリード性潤滑剤103Lは、図15にハッチング矢印で示すように、被膜11L中の微小孔112Lに貯留される。よって、ブリード性潤滑剤103Lは、被膜11Lとゴム弾性体10Lとの界面に溜まりにくい。これにより、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rにおいては、高温下においても、被膜11Lがゴム弾性体10Lから剥離しにくい。したがって、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rは、耐久性に優れる。
【0094】
<第三実施形態>
本実施形態のスタビライザブッシュと、第二実施形態のスタビライザブッシュと、の相違点は、スタビライザブッシュを製造する際、被膜の微小孔形成剤として、ブリード性潤滑剤ではなく、発泡剤を使用した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0095】
本実施形態のスタビライザブッシュの製造方法は、第二実施形態と同様、組成物調製工程と、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。塗布工程においては、メルカプト基を持つシリコーン樹脂110Lの原料と、PTFE製の固体潤滑剤111Lと、微小孔形成剤113Lと、を含有する塗料を、ゴム弾性体10Lの表面に塗布する。微小孔形成剤113Lとしては、発泡剤を用いる。発泡剤は、主剤(永和化成工業(株)製「ネオセルボン(登録商標)N#100M」)、および助剤(同社製「セルペースト101」)からなる。微小孔形成剤113Lの配合量は、塗料の固形分を100質量%とした場合の10質量%(主剤5質量%、助剤5質量%)である。
【0096】
図16に、焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図を示す。なお、図16に示すのは、前出図5に対応する部位である。焼成工程においては、塗料が塗布されたゴム弾性体10Lを、100℃で、30分間、焼成する。焼成により、メルカプト基を持つシリコーン樹脂110Lの原料が熱硬化する。そして、ゴム弾性体10Lの表面に、被膜11Lが形成される。この際、図16に白抜き長矢印で示すように、塗料中の微小孔形成剤113Lは、ガス化して被膜11Lから放出される。一方、図16にハッチング短矢印で示すように、ゴム弾性体10Lのブリード性潤滑剤103Lは、被膜11Lを透過して、被膜11Lの表面に滲み出る。よって、潤滑膜12Lは、被膜11Lの表面に滲み出たブリード性潤滑剤103Lのみから形成される。また、被膜11Lには、微小孔形成剤113Lが放出された後に、微小孔112Lが形成される。このようにして、本実施形態のスタビライザブッシュを製造する。
【0097】
本実施形態のスタビライザブッシュの製造方法においては、微小孔形成剤113Lとして、発泡剤を用いる。発泡剤は、焼成時にガス化して、硬化途中の被膜11Lから放出される。したがって、被膜11Lや潤滑膜12Lの形成を阻害することなく、微小孔112Lを形成することができる。また、被膜11Lや潤滑膜12Lに不純物が残存しにくく、それらの性能にも影響を及ぼしにくい。また、微小孔形成剤113Lの配合量は、塗料の固形分を100質量%とした場合の10質量%である。これにより、被膜11Lの性能を維持しながら、ブリード性潤滑剤103Lを貯留するために必要な微小孔112Lを、形成することができる。また、発泡剤は粉末状を呈している。この場合、用いる粉末の粒子径や発泡条件(温度など)により、微小孔112Lの大きさを、調整することもできる。
【0098】
<その他>
以上、本発明の防振ゴム部材およびその製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0099】
ゴム弾性体のエラストマーの材質は、特に限定しない。例えば、NR、BR、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、ACM(アクリルゴム)、U(ウレタンゴム)、シリコーンゴムあるいはこれらのブレンド材などを用いることができる。
【0100】
また、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤の材質も、特に限定しない。例えば、脂肪酸アミド(不飽和脂肪酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなど)、飽和脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなど))、シリコーンオイル、ポリエチレングリコール型界面活性剤などを用いることができる。
【0101】
また、被膜の樹脂の材質も、特に限定しない。シリコーン樹脂の他、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができる。
【0102】
また、被膜の樹脂の官能基も、メルカプト基に限定しない。例えば、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基などを用いることができる。官能基は、ゴム弾性体のエラストマーの材質に応じて、選定されることが望ましい。
【0103】
また、被膜の固体潤滑剤の材質も、特に限定しない。例えば、黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂などを用いることができる。また、フッ素樹脂として、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PVF(ポリビニルフロライド)などを用いることができる。なお、被膜は、必ずしも固体潤滑剤を含まなくてもよい。
【0104】
また、微小孔形成剤の材質も、特に限定しない。微小孔形成剤は、焼成時に塗料から放出され、被膜や潤滑膜の形成を阻害しにくいものであればよい。上記第一、第二実施形態のように、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤と同じ成分を含む場合には、ゴム弾性体への影響が小さいと共に、安定した潤滑膜を形成することがきる。また、不純物が残存しにくいため、被膜や潤滑膜の性能にも影響を及ぼしにくい。また、マトリックス(被膜の樹脂、ゴム弾性体のエラストマー)の材質により、ブリード性潤滑剤の移動速度は異なる。このため、例えば樹脂の選定により、微小孔形成剤の放出速度を、制御することができる。
【0105】
また、焼成工程における焼成温度や焼成時間は、特に限定しない。焼成温度や焼成時間については、樹脂の種類、微小孔形成剤の放出速度、ブリード性潤滑剤の滲出速度などを考慮して、適宜決定すればよい。
【0106】
また、被膜に形成される微小孔の大きさ、体積割合などについても、特に限定しない。ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤の貯留機能と、被膜の強度や剛性と、のバランスを考慮して、適宜決定すればよい。
【0107】
また、上記実施形態においては、本発明の防振ゴム部材をロアサスペンションアーム84R用のストッパ3R、スタビライザブッシュ1L、1Rとして具現化した。しかしながら、例えば、特開2005−106169号公報、特開2005−249062号公報に開示されているようなエンジンマウント用のストッパ、特開2008−89002号公報、特開2008−95785号公報に開示されているようなデフマウント用のストッパとして、本発明の防振ゴム部材を具現化してもよい。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の防振ゴム部材について行ったトルク測定試験について説明する。
【0109】
<微小孔の有無とトルクとの関係>
[サンプル]
第二実施形態のスタビライザブッシュ1L(図12〜図15参照)を、実施例1のサンプルとした。また、微小孔形成剤を含まない塗料から被膜を形成した以外は実施例1と同様の構成のスタビライザブッシュを、比較例1のサンプルとした。比較例1のサンプルにおいては、被膜に微小孔は形成されていない。
【0110】
[試験方法]
まず、各サンプルを、ブラケット2Lにより、ジグ(第二実施形態の車両9のボディ95の下面に相当)に固定した。次に、各サンプルの保持孔100Lに、シャフト(第二実施形態のスタビライザバー903に相当)を挿通した。それから、トルクレンチを用いて、シャフトを軸周りに±15°捩った。そして、シャフトに加わるトルクを測定した。シャフトとサンプルとの間の摩擦抵抗が小さい場合、シャフトに加わるトルクは小さくなる。反対に、シャフトとサンプルとの間の摩擦抵抗が大きい場合、シャフトに加わるトルクは大きくなる。±15°の捩りを1回として、シャフトを10万回捩り、所定の回数にてトルクを測定した。
【0111】
[試験結果]
図17に、トルクの測定結果を示す。図17に示すように、実施例1のサンプルにおいては、比較例1のサンプルよりも、トルクの増加幅が小さくなった。実施例1のサンプルの被膜には、微小孔が形成されている。このため、捩りを繰り返すことにより温度が上昇し、ゴム弾性体からブリード性潤滑剤が多量に滲み出ても、被膜を透過できない余剰分のブリード性潤滑剤は、被膜中の微小孔に貯留される。つまり、滲み出たブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくい。よって、実施例1のサンプルにおいては、被膜の剥離が抑制され、サンプルとシャフトとの間の摩擦抵抗の増加が抑制されたと考えられる。
【0112】
<微小孔形成剤の配合量と初期トルクとの関係>
[サンプル]
試験に用いる第一のサンプル群は、第二実施形態のスタビライザブッシュ1Lにおいて、微小孔形成剤(ブリード性潤滑剤)の配合量を7水準設定したものである。各々のサンプルNo.を、W1〜W7とした。7水準については、以下の表1にまとめて示す。サンプルW4は、先の実施例1のサンプルに相当する。また、試験に用いる第二のサンプル群は、第三実施形態のスタビライザブッシュにおいて、微小孔形成剤(発泡剤)の配合量を7水準設定したものである。各々のサンプルNo.を、B1〜B7とした。7水準については、以下の表2にまとめて示す。
【表1】
【表2】
【0113】
[試験方法]
トルクの測定には、まず、第一、第二の各サンプルの保持孔100Lに、シャフト(第二実施形態のスタビライザバー903に相当)を挿通した。次に、シャフトを挿通した各々のサンプルを、固定ジグに装着した。それから、トルクレンチを用いて、シャフトを軸周りに90°捩った。そして、シャフトに加わる初期トルクを測定した。
【0114】
[試験結果]
図18に、サンプルW1〜W7のトルクの測定結果を示す。図19に、サンプルB1〜B7のトルクの測定結果を示す。なお、図18、図19には、比較のため、先の比較例1のサンプルについて同様の測定を行った結果も示す。
【0115】
図18に示すように、微小孔形成剤としてブリード性潤滑剤を配合したサンプルW1〜W7においては、ブリード性潤滑剤の配合量が1〜20質量%のW1〜W5のトルクが、比較例1のトルクよりも小さくなった。一方、ブリード性潤滑剤の配合量が30質量%、40質量%のW6、W7のトルクは、比較例1のトルクよりも大きくなった。
【0116】
また、図19に示すように、微小孔形成剤として発泡剤を配合したサンプルB1〜B7においては、発泡剤(主剤+助剤)の配合量が1〜5質量%のB1〜B3のトルクが、比較例1のトルクよりも小さくなった。また、発泡剤の配合量が10質量%、20質量%のB4、B5のトルクは、比較例1のトルクと同等、あるいはそれよりも若干大きくなった。さらに、発泡剤の配合量が30質量%、40質量%のB6、B7のトルクは、比較例1のトルクよりも大きくなった。
【0117】
これらの結果より、初期トルクを考慮した場合、微小孔形成剤の配合量を、20質量%以下とすることが望ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0118】
1L:スタビライザブッシュ(防振ゴム部材)、1R:スタビライザブッシュ(防振ゴム部材)、2L:ブラケット、2R:ブラケット、3R:ストッパ(防振ゴム部材)、4R:ロアアームブッシュ、5R:ブラケット、8:車両、9:車両。
10L:ゴム弾性体、11L:被膜、12L:潤滑膜、20L:ブッシュ保持部、21L:固定部、30R:円板、31R:ゴム部材本体、32R:ゴム弾性体、33R:被膜、34R:潤滑膜、35R:塗料、40R:内筒金具、41R:外筒金具、42R:ゴム部材、50R:前壁、51R:後壁、80:サスペンション、81:ハブユニット、83:ドライブシャフト、84R:ロアサスペンションアーム、90:サスペンション、91:ハブユニット、92:ステアリングギヤ、93:ドライブシャフト、95:ボディ。
100L:保持孔、101L:切断部、102L:ブレンドゴム(エラストマー)、103L:ブリード性潤滑剤、104L:フランジ部、110L:シリコーン樹脂、111L:固体潤滑剤、112L:微小孔、113L:微小孔形成剤、200L:フランジ部、210L:ボルト挿通孔、211L:ボルト、300R:ボルト挿通孔、320R:リブ、321R:ブレンドゴム(エラストマー)、322R:ブリード性潤滑剤、330R:シリコーン樹脂、331R:固体潤滑剤、332R:微小孔、333R:原料、334R:微小孔形成剤、500R:ボルト挿通孔、510R:ボルト挿通孔、800R:スプリング、801R:ショックアブソーバ、840R:ブッシュ収容筒部(相手側部材)、841R:ボルト、842R:ナット、900L:スプリング、900R:スプリング、901L:ショックアブソーバ、901R:ショックアブソーバ、902L:ロアサスペンションアーム、902R:ロアサスペンションアーム、903:スタビライザバー(相手側部材)、950L:凹部、951L:ボルト止着孔。
C:クリアランス、S:締め代。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身に対して相対的に振動する相手側部材に摺接する防振ゴム部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防振ゴム部材の一例として、スタビライザブッシュが挙げられる。スタビライザブッシュは、ブラケットを介して、車両のボディに固定されている。また、スタビライザブッシュの保持孔には、スタビライザバーが配置されている。
【0003】
例えば、車両の旋回時においては、遠心力により、サスペンションの外輪側が沈み込み、内輪側が伸長する。このため、スタビライザバーが捩られる。当該捩りに対する弾性復元力を利用して、スタビライザバーは、サスペンションの外輪側を持ち上げようとする。このようにして、スタビライザバーは、車両を水平に保っている。
【0004】
スタビライザバーが捩られる際、あるいは捩られたスタビライザバーが弾性復元力により復動する際、スタビライザバー外周面とスタビライザブッシュ内周面とは、相対的に摺動する。摺動時の摩擦抵抗が大きいと、異音(いわゆるスティックスリップ音)が大きくなるおそれがある。また、車両の乗り心地が悪くなるおそれがある。
【0005】
この点に鑑み、従来は、保持孔に、摩擦係数の小さいPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のライナーを挿入していた。そして、ライナーの内周面と、スタビライザバーの外周面と、を摺接させていた。しかしながら、PTFE製のライナーは、比較的高価である。このため、PTFE製のライナーを採用すると、スタビライザブッシュの製造コストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、PTFE製のライナーを要しないスタビライザブッシュが開発されている。例えば、特許文献1、2には、自己潤滑ゴム製のゴム弾性体と、被膜と、潤滑膜と、を有するスタビライザブッシュが開示されている。ゴム弾性体の径方向内側には、保持孔が形成されている。保持孔には、スタビライザバーが配置されている。被膜は、保持孔の内周面を覆っている。そして、自己潤滑ゴムに含まれるブリード性潤滑剤が、被膜を透過して被膜の表面に滲み出ることにより、潤滑膜が形成されている。同文献記載のスタビライザブッシュによると、主位的に潤滑膜が、予備的に被膜が、スタビライザバーに摺接する。これにより、スタビライザブッシュとスタビライザバーとの間の摩擦抵抗が、小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/038746号
【特許文献2】国際公開第2010/038749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載のスタビライザブッシュにおいては、使用時などにおいて温度が上昇すると、自己潤滑ゴム中のブリード性潤滑剤が溶けやすくなる。このため、ゴム弾性体の表面に滲み出る速度が速くなり、ブリード性潤滑油の滲出量が増加する。ブリード性潤滑油の滲出量が、被膜を透過できる量よりも多くなると、余剰分が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まってしまう。こうなると、最初はゴム弾性体と被膜とが強固に接合されていても、界面に溜まったブリード性潤滑油により被膜が押し上げられ、ゴム弾性体から被膜が剥離するおそれがある。被膜が剥離すると、スタビライザバー(相手側部材)との間の摩擦抵抗が、大きくなるおそれがある。
【0009】
本発明の防振ゴム部材およびその製造方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材、およびその比較的簡単な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明の防振ゴム部材は、相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材であって、エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体と、該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面の少なくとも一部を覆い、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ樹脂を含有し、該ゴム弾性体の変形に追従して変形可能であると共に、該ゴム弾性体から滲み出た該ブリード性潤滑剤を貯留可能な複数の微小孔が形成されている被膜と、該被膜の表面の少なくとも一部を覆い、該ゴム弾性体から該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出た該ブリード性潤滑剤を含んで形成され、該摺動面の少なくとも一部を形成する潤滑膜と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の防振ゴム部材は、ゴム弾性体と被膜と潤滑膜とを備えている。被膜には、複数の微小孔が形成されている。微小孔は、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤を貯留することができる。したがって、高温下において、自己潤滑ゴム中のブリード性潤滑剤の滲出速度が、被膜の透過速度を上回り、滲み出たブリード性潤滑剤の全てが被膜を透過できなくても、余剰分のブリード性潤滑剤を、被膜中の微小孔に貯留することができる。このため、ブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくい。したがって、本発明の防振ゴム部材によると、高温下においても、被膜がゴム弾性体から剥離しにくい。つまり、本発明の防振ゴム部材は、耐久性に優れる。
【0012】
潤滑膜は、ゴム弾性体から被膜を透過して被膜の表面に滲み出たブリード性潤滑剤を含んで形成されている。すなわち、潤滑膜は、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤のみから形成されていてもよく、当該ブリード性潤滑剤に加えて他の潤滑成分を含んで形成されてもよい。後に詳しく説明するが、被膜に微小孔を形成するため、被膜を形成する塗料に、ブリード性潤滑剤(ゴム弾性体中のブリード性潤滑剤の成分と同じでも異なっていてもよい)を配合する場合がある。塗料中のブリード性潤滑剤は、焼成時に塗料から放出され、硬化途中の被膜の表面に滲み出てくる。この場合、ゴム弾性体から被膜を透過して被膜の表面に滲み出たブリード性潤滑剤と、塗料から放出されたブリード性潤滑剤と、の両方から潤滑膜が形成されることになる。
【0013】
本発明の防振ゴム部材においては、潤滑膜が相手側部材に摺接する。また、摺動面において、仮に、潤滑膜が不足する部分がある場合には、当該部分からブリード性潤滑剤を含有する被膜が表出し、相手側部材に摺接する。このように、本発明の防振ゴム部材によると、主位的に潤滑膜が、予備的に被膜が、相手側部材に摺接する。また、ゴム弾性体が相手側部材に摺接しない。このため、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さい。
【0014】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記摺動内面は、略平滑面状(人為的な凹凸形状が付されていない面状。平面状は勿論、曲面状も含まれる。)を呈している構成とする方がよい。摺動内面に凹凸形状が付されている場合、凸部が相手側部材に摺接(線接触)して、摩耗しやすい。本構成の摺動内面には、凹凸形状が付されていない。このため、摺動内面は、被膜および潤滑膜(場合によっては被膜のみ)を介して、略全面的に相手側部材に面接触する。したがって、ゴム弾性体の耐久性が高い。
【0015】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、複数の前記微小孔の少なくとも一部には、前記ゴム弾性体から滲み出た前記ブリード性潤滑剤が貯留されている構成とする方がよい。
【0016】
本構成によると、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤が、被膜中に貯留されている。すなわち、ブリード性潤滑剤の滲出量が多くても、被膜中に留まることができるため、ブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくい。したがって、高温下においても、被膜がゴム弾性体から剥離しにくい。また、摺動面において、潤滑膜が不足して被膜が表出した部分においても、ブリード性潤滑剤を貯留した被膜が表出して、相手側部材に摺接する。このため、相手側部材との間の摩擦抵抗がより小さくなる。
【0017】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記被膜は、さらに、固体潤滑剤を含有する構成とする方がよい。
【0018】
本構成によると、相手側部材に対する被膜自体の摩擦抵抗が小さくなる。このため、摺動面において、潤滑膜が不足する部分がある場合でも、相手側部材との間の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレン製である構成とする方がよい。
【0020】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、固体潤滑剤の中でも特に摩擦係数が小さい。このため、本構成によると、さらに相手側部材に対する被膜自体の摩擦抵抗が小さくなる。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記被膜は、前記固体潤滑剤を、前記樹脂100質量部に対して、200質量部以下含有する構成とする方がよい。ここで、固体潤滑剤の含有量を200質量部以下としたのは、200質量部超過の場合、被膜が摩耗しやすくなるからである。すなわち、被膜の耐久性が低くなるからである。
【0022】
(5−1)好ましくは、上記(5)の構成において、前記被膜は、前記固体潤滑剤を160質量部以下含有する構成とする方がよい。こうすると、被膜の耐久性を確保しつつ、相手側部材に対する被膜の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0023】
(5−2)好ましくは、上記(5−1)の構成において、前記被膜は、前記固体潤滑剤を110質量部以上130質量部以下含有する構成とする方がよい。ここで、固体潤滑剤の含有量を110質量部以上としたのは、110質量部未満の場合、相手側部材に対する被膜の摩擦抵抗が大きくなるからである。また、固体潤滑剤の含有量を130質量部以下としたのは、130質量部超過の場合、被膜が摩耗しやすくなるからである。本構成によると、さらに、被膜の耐久性を確保しつつ、相手側部材に対する被膜の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0024】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記樹脂は、シリコーン樹脂である構成とする方がよい。
【0025】
本構成によると、被膜がシリコーン樹脂を含んで形成されている。このため、ゴム弾性体に含有されるブリード性潤滑剤が被膜を透過しやすい。したがって、被膜の表面の少なくとも一部に、確実に潤滑膜を形成することができる。また、被膜がシリコーン樹脂を含んで形成されているため、比較的被膜が柔軟である。したがって、さらに、ゴム弾性体の変形に追従して、被膜が変形しやすい。
【0026】
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、前記シリコーン樹脂は、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有する構成とする方がよい。
【0027】
ここで、「ストレートシリコーン樹脂」とは、メチル基のみを含むシリコーン樹脂、およびメチルフェニル基のみを含むシリコーン樹脂をいう。また、「ストレートシリコーン樹脂の変性物」としては、エポキシ変性シリコーン樹脂、アルキッド変性シリコーン樹脂、ポリエステル変性シリコーン樹脂、シリカ変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂などが挙げられる。また、「ゴム弾性を有する」シリコーン樹脂としては、ゴム系コーティング剤などに用いられるゴム複合シリコーン樹脂、ゴム弾性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0028】
本構成によると、シリコーン樹脂の架橋構造が疎であるため、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤が、さらに被膜を透過しやすい。したがって、被膜の表面の少なくとも一部に、さらに確実に潤滑膜を形成することができる。
【0029】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記ゴム弾性体は前記相手側部材が配置される保持孔を有しており、前記摺動内面は該保持孔の内周面である構成とする方がよい。
【0030】
本構成によると、相手側部材の外周面に対する保持孔の内周面の摩擦抵抗を、小さくすることができる。このため、相手側部材の外周面から保持孔の内周面に加わる捩りトルクを小さくすることができる。
【0031】
(9)また、上記課題を解決するため、本発明の防振ゴム部材の製造方法は、相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材の製造方法であって、架橋反応により、エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体を作製する架橋工程と、該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面を脱脂する脱脂工程と、脱脂後の該摺動内面に、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ熱硬化性樹脂と、焼成時に放出されることにより被膜に微小孔を形成する微小孔形成剤と、を含有する塗料を塗布する塗布工程と、該塗料が塗布された該ゴム弾性体を焼成することにより、該塗料から該微小孔形成剤を放出させながら該摺動内面に該被膜を形成すると共に、該ゴム弾性体の該ブリード性潤滑剤を該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出させ、該被膜の表面に該ブリード性潤滑剤を含む潤滑膜を形成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0032】
本発明の防振ゴム部材の製造方法は、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。架橋工程においては、架橋反応により、ゴム弾性体を作製する。脱脂工程においては、摺動内面を脱脂することにより、摺動内面から滲み出たブリード性潤滑剤を、一時的に除去する。塗布工程においては、ブリード性潤滑剤が除去された摺動内面に、塗料を塗布(刷毛などによる塗布は勿論、スプレーなどによる散布を含む。)する。焼成工程においては、熱により塗料を硬化させ、ゴム弾性体の摺動内面に被膜を形成する。また、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基により、被膜とゴム弾性体とを、強固に接合(化学結合)する。また、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤は、被膜を透過して、被膜の表面に滲み出る。主に当該ブリード性潤滑剤により、被膜の表面に潤滑膜を形成する。
【0033】
ここで、被膜を形成する塗料には、微小孔形成剤が含有されている。微小孔形成剤は、焼成時の熱により、塗料から放出される。つまり、焼成工程においては、塗料が硬化する際に微小孔形成剤が放出されることにより、被膜内部に複数の微小孔が形成される。
【0034】
本発明の防振ゴム部材の製造方法によると、塗料に微小孔形成剤を配合することにより、複数の微小孔を有する被膜を、比較的簡単に形成することができる。微小孔形成剤は、焼成時の熱により塗料から放出される。なお、被膜性能に影響しなければ、微小孔形成剤やその分解物が、硬化後の被膜中に残存していてもよい。また、焼成時における微小孔形成剤の放出速度を、ブリード性潤滑剤が滲み出す速度よりも大きくすることで、微小孔を確実に形成することができる。この点については、被膜の樹脂、微小孔形成剤、ゴム弾性体のエラストマー、ブリード性潤滑剤の選定と共に、焼成温度等を調整すればよい。
【0035】
被膜に形成された微小孔は、ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤を貯留することができる。したがって、高温下において、自己潤滑ゴム中のブリード性潤滑剤の滲出速度が、被膜の透過速度を上回り、滲み出たブリード性潤滑剤の全てが被膜を透過できなくても、余剰分のブリード性潤滑剤は、被膜中の微小孔に貯留される。これにより、ブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくくなる。したがって、高温下における、ゴム弾性体からの被膜の剥離を、抑制することができる。
【0036】
このように、本発明の防振ゴム部材の製造方法によると、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材を、比較的簡単に製造することができる。
【0037】
(10)好ましくは、上記(9)の構成において、前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤および発泡剤から選ばれる一種以上からなる構成とする方がよい。
【0038】
塗料中のブリード性潤滑剤は、焼成時、硬化途中の被膜の表面に滲み出る。そして、潤滑膜を形成する。また、発泡剤は、焼成時にガス化して、硬化途中の被膜から放出される。いずれも、自身が抜けた後に、微小孔が形成される。このように、本構成によると、被膜や潤滑膜の形成を阻害することなく、微小孔を形成することができる。
【0039】
(11)好ましくは、上記(9)の構成において、前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤からなり、前記潤滑膜は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤、および該微小孔形成剤の両方から形成される構成とする方がよい。
【0040】
ブリード性潤滑剤は、ゴム弾性体にも含有されている。ブリード性潤滑剤は、潤滑膜を形成する。よって、本構成によると、被膜や潤滑膜に不純物が残存しにくく、被膜や潤滑膜の性能に影響を及ぼしにくい。なお、微小孔形成剤として用いるブリード性潤滑剤は、ゴム弾性体中のブリード性潤滑剤の成分と、同じでも異なっていてもよい。
【0041】
(11−1)好ましくは、上記(11)の構成において、前記熱硬化性樹脂は、シリコーン樹脂である構成とする方がよい。
【0042】
被膜のマトリックスがシリコーン樹脂の場合、微小孔形成剤のブリード潤滑剤が、被膜から抜けやすい。よって、微小孔形成剤の放出速度を、ゴム弾性体から滲み出るブリード性潤滑剤の滲出速度よりも、大きくしやすい。これにより、確実に微小孔を形成することができる。
【0043】
(11−2)好ましくは、上記(11−1)の構成において、前記シリコーン樹脂は、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有する構成とする方がよい。
【0044】
本構成によると、シリコーン樹脂の架橋構造が疎であるため、微小孔形成剤のブリード潤滑剤が、被膜からさらに抜けやすくなる。したがって、微小孔形成剤の放出速度をより大きくすることができ、より確実に微小孔を形成することができる。
【0045】
(12)好ましくは、上記(10)または(11)の構成において、前記微小孔形成剤は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤の少なくとも一種を含む構成とする方がよい。
【0046】
本構成によると、ゴム弾性体への影響が小さいと共に、安定した潤滑膜を形成することがきる。また、被膜や潤滑膜の性能にも影響を及ぼしにくい。微小孔形成剤のブリード性潤滑剤の成分は、ゴム弾性体に含有されるブリード性潤滑剤の成分と、全く同じでもよく、一部のみが重複していてもよい。後者の場合、ゴム弾性体に含有されるブリード性潤滑剤の成分のうち、主要成分(量が多い方の成分)を含む態様が望ましい。
【0047】
(13)好ましくは、上記(9)ないし(12)のいずれかの構成において、前記微小孔形成剤の配合量は、前記被膜を形成する固形分全体を100質量%とした場合の0.5質量%以上20質量%以下である構成とする方がよい。
【0048】
微小孔形成剤の配合量は、微小孔の形成と被膜の性能とを考慮して決定すればよい。すなわち、微小孔形成剤の配合量が多すぎると、被膜に占める微小孔の体積割合が大きくなり、被膜自体の強度や剛性が低下してしまう。一方、微小孔形成剤の配合量が少なすぎると、ブリード性潤滑剤を貯留するために必要な分の微小孔を、形成することができない。この点、本構成によると、被膜の性能を維持しながら、所望の微小孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、相手側部材との間の摩擦抵抗が小さく、高温下においてもゴム弾性体から被膜が剥離しにくい防振ゴム部材を提供することができる。また、本発明によると、当該防振ゴム部材の比較的簡単な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第一実施形態のストッパの配置図である。
【図2】同ストッパおよびロアアームブッシュがブラケットに装着された状態の軸方向断面図である。
【図3】同ストッパの斜視図である。
【図4】同ストッパの分解斜視図である。
【図5】図2の枠V内の拡大図である。
【図6】架橋工程後、脱脂工程前のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図7】脱脂工程後、塗布工程前のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図8】塗布工程後、焼成工程前のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図9】焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図10】同ストッパにおけるゴム部材本体の一部拡大断面図である。
【図11】第二実施形態のスタビライザブッシュの配置図である。
【図12】同スタビライザブッシュとブラケットとの合体斜視図である。
【図13】同スタビライザブッシュとブラケットとの分解斜視図である。
【図14】図12のXIV−XIV方向断面図である。
【図15】図14の枠XV内の拡大図である。
【図16】第三実施形態のスタビライザブッシュの製造方法における焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図である。
【図17】実施例1および比較例1の各サンプルにおけるトルクの測定結果を示すグラフである。
【図18】サンプルW1〜W7のトルクの測定結果を示すグラフである。
【図19】サンプルB1〜B7のトルクの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の防振ゴム部材およびその製造方法の実施の形態について説明する。
【0052】
<第一実施形態>
本実施形態は、本発明の防振ゴム部材を、ストッパとして具現化したものである。
【0053】
[ストッパの配置]
まず、本実施形態のストッパの配置について説明する。図1に、本実施形態のストッパの配置図を示す。図1に示すように、車両8の前輪付近には、サスペンション80、ハブユニット81、ドライブシャフト83などの部材が配置されている。サスペンション80は、スプリング800R、ショックアブソーバ801R、ロアサスペンションアーム84Rなどを備えている。ロアサスペンションアーム84Rは、鋼製であって、略V字板状を呈している。ロアサスペンションアーム84Rの前端(V字一端)には、ブッシュ収容筒部840Rが形成されている。ブッシュ収容筒部840Rの内部には、ロアアームブッシュ4Rが圧入されている。ストッパ3Rは、ロアアームブッシュ4Rの前方に、配置されている。ブラケット5Rは、鋼製であって、上方に開口するC字状を呈している、ブラケット5Rは、車両8のボディ(図略)に固定されている。ストッパ3Rおよびブッシュ収容筒部840R(ロアアームブッシュ4R)は、ブラケット5RのC字開口内部に収容されている。ボルト841Rおよびナット842Rにより、ストッパ3Rおよびロアアームブッシュ4Rは、ブラケット5Rに、揺動可能に取り付けられている。ストッパ3Rは、ブッシュ収容筒部840Rが、ブラケット5Rに、直接的に摺接するのを抑制している。ブッシュ収容筒部840Rは、本発明の相手側部材に含まれる。
【0054】
[ストッパの構造]
次に、本実施形態のストッパ3Rの構造について説明する。図2に、本実施形態のストッパおよびロアアームブッシュがブラケットに装着された状態の軸方向(前後方向)断面図を示す。図3に、本実施形態のストッパの斜視図を示す。図4に、本実施形態のストッパの分解斜視図を示す。図5に、図2の枠V内の拡大図を示す。なお、図5は、本実施形態のストッパ3Rの機能を説明するための、模式図である。図2〜図5に示すように、本実施形態のストッパ3Rは、円板30Rと、ゴム部材本体31Rと、を備えている。
【0055】
円板30Rは、鋼製であって、リング状を呈している。円板30Rの中央には、ボルト挿通孔300Rが形成されている。ボルト挿通孔300Rの内部には、ボルト841Rが挿通されている。
【0056】
ゴム部材本体31Rは、ゴム弾性体32Rと、被膜33Rと、潤滑膜34Rと、を備えている。ゴム弾性体32Rは、リング状を呈している。ゴム弾性体32Rは、円板30Rの後面および外周面を覆うように、配置されている。ゴム弾性体32Rと円板30Rとは、架橋接着されている。ゴム弾性体32Rの後面には、複数のリブ320Rが形成されている。複数のリブ320Rは、円状に並んでいる。また、複数のリブ320Rは、点線状に連なっている。リブ320Rの表面は、本発明の摺動内面に含まれる。リブ320Rの表面は、所定の曲率を持った略平滑面状を呈している。被膜33Rは、ゴム弾性体32Rの表面を覆っている。被膜33Rの膜厚は、約20μmである。潤滑膜34Rは、液状であって、被膜33Rの表面を覆っている。
【0057】
[ストッパの材質]
次に、本実施形態のストッパ3Rの材質について、図5を参照しながら説明する。ゴム弾性体32Rは、自己潤滑ゴム製である。ゴム弾性体32Rは、NR(天然ゴム)とBR(ブタジエンゴム)とのブレンドゴム(以下、単に「ブレンドゴム」と称す。)321Rと、ブリード性潤滑剤322Rと、を備えている。ブリード性潤滑剤322Rとしては、融点が異なる二種類のオレイン酸アミドが用いられている。ブレンドゴム321Rは、本発明のエラストマーに含まれる。
【0058】
被膜33R(例えば、エスティーティー(株)「SOLVEST 398」製)は、メルカプト基を持つシリコーン樹脂330Rと、PTFE製の固体潤滑剤331Rと、複数の微小孔332Rと、を備えている。固体潤滑剤331Rは、シリコーン樹脂330R100質量部に対して、120質量部含まれている。固体潤滑剤331Rは、粒径(メジアン径)が約1μm以下、平均粒径が約0.5μmの略球状を呈している。複数の微小孔332Rは、被膜33Rの内部に分散されている。微小孔332Rの大きさは、微小孔332Rを形成した微小孔形成剤334Rの分子レベルであると推測される。いくつかの微小孔332Rには、ゴム弾性体32Rから滲み出たブリード性潤滑剤322Rが充填されている。
【0059】
潤滑膜34Rは、ゴム弾性体32Rのブリード性潤滑剤322Rと、被膜33Rの微小孔332Rを形成した微小孔形成剤334Rと、により形成されている。潤滑膜34Rの形成方法については、後述する。
【0060】
[ロアアームブッシュおよびブラケットの構造]
次に、本実施形態のロアアームブッシュ4Rおよびブラケット5Rの構造について、図2を参照しながら、簡単に説明する。ロアアームブッシュ4Rは、内筒金具40Rと外筒金具41Rとゴム部材42Rとを備えている。内筒金具40Rは、鋼製であって、円筒状を呈している。内筒金具40Rの内部には、ボルト841Rが挿通されている。外筒金具41Rは、鋼製であって、円筒状を呈している。外筒金具41Rは、内筒金具40Rの径方向外側に配置されている。外筒金具41Rは、ブッシュ収容筒部840Rに圧入されている。ゴム部材42Rは、ゴム製であって、内筒金具40Rと外筒金具41Rとの間に介在している。ゴム部材42Rと内筒金具40Rと外筒金具41Rとは、架橋接着されている。
【0061】
ブラケット5Rは、前壁50Rと後壁51Rとを備えている。前壁50Rには、ボルト挿通孔500Rが穿設されている。後壁51Rには、ボルト挿通孔510Rが穿設されている。ボルト841Rは、ボルト挿通孔500R、ボルト挿通孔300R、内筒金具40R内部、ボルト挿通孔510Rを貫通している。ボルト841Rの貫通端(後端)には、ナット842Rがねじ止めされている。
【0062】
図2に示すように、ストッパ3Rとブッシュ収容筒部840Rとの間には、所定のクリアランスCが確保されている。しかしながら、図5に白抜き矢印で示すように、ブッシュ収容筒部840Rは、外筒金具41Rの外周面に対して、前方に摺動する場合がある。この場合、ストッパ3Rの後面(具体的には、リブ320Rの頂部付近を覆う潤滑膜34Rの表面(潤滑膜34Rが不足する部分については、被膜33Rの表面)は、ブッシュ収容筒部840Rの前端面に、相対的に摺接する。
【0063】
[ストッパの製造方法]
次に、本実施形態のストッパ3Rの製造方法について説明する。本実施形態のストッパ3Rの製造方法は、組成物調製工程と、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。図6に、架橋工程後、脱脂工程前のゴム弾性体の拡大断面図を示す。図7に、脱脂工程後、塗布工程前のゴム弾性体の拡大断面図を示す。図8に、塗布工程後、焼成工程前のゴム弾性体の拡大断面図を示す。図9に、焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図を示す。なお、図6〜図9に示すのは、いずれも図5に対応する部位である(図6〜図9においては、図5を90°回転して示している)。
【0064】
組成物調製工程においては、ブレンドゴム321Rの原料、ブリード性潤滑剤322R、架橋剤などを混練することにより、組成物を調製する。
【0065】
架橋工程においては、まず、キャビティに円板30R(図2参照)を配置する。次いで、組成物を金型のキャビティに注入する。続いて、160℃で、8分間、金型を保持することにより、キャビティ内のブレンドゴム321Rの原料を架橋反応させる。その後、金型を開き、キャビティから、ゴム弾性体32Rと円板30Rとが架橋接着された、中間体を回収する。図6に示すように、ゴム弾性体32Rの表面には、ブリード性潤滑剤322Rが滲み出る。
【0066】
脱脂工程においては、ゴム弾性体32Rの表面を、IPA(イソプロピルアルコール)により、脱脂する。そして、図7に示すように、ゴム弾性体32Rの表面から、ブリード性潤滑剤322Rを除去する。
【0067】
塗布工程においては、図8に示すように、清浄なゴム弾性体32Rの表面に、塗料35Rを塗布する。塗料35Rは、メルカプト基を持つシリコーン樹脂330Rの原料333Rと、PTFE製の固体潤滑剤331Rと、微小孔形成剤334Rと、を含有している。微小孔形成剤334Rは、ブリード性潤滑剤322Rとして用いた二種類のオレイン酸アミドのうちの一方(低融点の主要成分)である。微小孔形成剤334Rの配合量は、塗料35Rの固形分を100質量%とした場合の10質量%である。
【0068】
焼成工程においては、塗料35Rが塗布されたゴム弾性体32Rを、100℃で、30分間、焼成する。焼成により、図8に示す原料333Rが熱硬化する。そして、図9に示すように、ゴム弾性体32Rの表面に、被膜33Rが形成される。この際、図9に白抜き矢印で示すように、塗料35R中の微小孔形成剤334Rが放出されて、被膜33Rの表面に滲み出る。また、図9にハッチング矢印で示すように、ゴム弾性体32Rのブリード性潤滑剤322Rも、被膜33Rを透過して、被膜33Rの表面に滲み出る。このように、被膜33Rの表面に滲み出た微小孔形成剤334Rおよびブリード性潤滑剤322Rにより、潤滑膜34Rが形成される。また、被膜33Rには、微小孔形成剤334Rが放出された後に、微小孔332Rが形成される。このようにして、本実施形態のストッパ3Rを製造する。
【0069】
[作用効果]
次に、本実施形態のストッパ3Rおよびその製造方法の作用効果について説明する。図10に、ストッパ3Rにおけるゴム部材本体31Rの一部拡大断面図を示す。なお、図10に示すのは、前出図5に対応する部位である(図5を90°回転して示している)。
【0070】
図10に示すように、本実施形態のストッパ3Rの被膜33Rには、複数の微小孔332Rが形成されている。微小孔332Rは、ゴム弾性体32Rから滲み出たブリード性潤滑剤322Rを、貯留することができる。このため、高温下において、ゴム弾性体32R中のブリード性潤滑剤322Rの滲出速度が、被膜33Rを透過する速度を上回っても、余剰分のブリード性潤滑剤322Rは、図10にハッチング矢印で示すように、被膜33R中の微小孔332Rに貯留される。よって、ブリード性潤滑剤322Rは、被膜33Rとゴム弾性体32Rとの界面に溜まりにくい。これにより、本実施形態のストッパ3Rにおいては、高温下においても、被膜33Rがゴム弾性体32Rから剥離しにくい。したがって、本実施形態のストッパ3Rは、耐久性に優れる。
【0071】
本実施形態のストッパ3Rの潤滑膜34Rは、ブッシュ収容筒部840Rに摺接する。また、例えば潤滑膜34Rの一時的な膜切れなどにより、潤滑膜34Rが不足する部分が摺動面にある場合には、当該部分から被膜33Rが表出し、ブッシュ収容筒部840Rに摺接する。すなわち、潤滑膜34Rが不足する場合であっても、ブリード性潤滑剤322Rおよび固体潤滑剤331Rを含有する被膜33Rが、ブッシュ収容筒部840Rに摺接する。このように、本実施形態のストッパ3Rは、通常は、潤滑膜34Rがブッシュ収容筒部840Rに摺接する。また、潤滑膜34Rが不足する場合は、被膜33Rがブッシュ収容筒部840Rに摺接する。また、ゴム弾性体32Rがブッシュ収容筒部840Rに摺接しない。このため、ブッシュ収容筒部840Rとの間の摩擦抵抗が小さい。
【0072】
被膜33Rのマトリックスのシリコーン樹脂330Rには、メルカプト基(−SH)が導入されている。メルカプト基は、エラストマーに対する反応性が高い官能基である。このため、本実施形態のストッパ3Rによると、ゴム弾性体32Rと被膜33Rとを、強固に接合(化学結合)することができる。したがって、ゴム弾性体32Rから被膜33Rが剥離しにくい。また、ゴム弾性体32Rの変形に追従して、被膜33Rが変形しやすい。また、固体潤滑剤331Rは、摩擦係数が特に小さいPTFE製である。この点においても、本実施形態のストッパ3Rの被膜33Rは、ブッシュ収容筒部840Rに対する摩擦抵抗が小さい。また、固体潤滑剤331Rは、シリコーン樹脂330R100質量部に対して、120質量部含まれている。このため、被膜33Rの耐久性を確保しつつ、ブッシュ収容筒部840Rに対する被膜33Rの摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0073】
また、被膜33R(例えば、エスティーティー(株)「SOLVEST 398」製)のマトリックスは、シリコーン樹脂330Rである。シリコーン樹脂330Rは、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有している。このため、ゴム弾性体32Rのブリード性潤滑剤322Rが、被膜33Rを透過しやすい。したがって、被膜33Rの表面に、確実に潤滑膜34Rを形成することができる。また、微小孔形成剤334R(ブリード潤滑剤)も、硬化途中の被膜33Rから抜けやすい。一方、ゴム弾性体32Rのマトリックスは、ブレンドゴム321Rである。ここで、微小孔形成剤334Rのシリコーン樹脂330R中の移動速度は、ブリード性潤滑剤322Rのブレンドゴム321R中の移動速度よりも、大きい。このため、焼成時に確実に微小孔332Rを形成することができる。
【0074】
本実施形態のストッパ3Rの製造方法によると、図6、図7に示すように、脱脂工程において、ゴム弾性体32Rの表面を脱脂することにより、表面から滲み出るブリード性潤滑剤322Rを、一時的に除去している。このため、図8に示すように、塗布工程において、塗料35Rを、確実にゴム弾性体32Rの表面に、塗布することができる。
【0075】
また、塗料35Rには、微小孔形成剤334Rが含有されている。図9に示すように、焼成工程において、塗料35Rが硬化する際に、微小孔形成剤334Rが放出されることにより、被膜33R内部に複数の微小孔332Rを形成することができる。このように、本実施形態のストッパ3Rの製造方法によると、複数の微小孔332Rを有する被膜33Rを、比較的簡単に形成することができる。
【0076】
また、微小孔形成剤334Rは、ブリード性潤滑剤322Rとして用いた二種類のオレイン酸アミドのうちの一方である。つまり、微小孔形成剤334Rは、ゴム弾性体32R中のブリード性潤滑剤322Rのうちの一つと同じである。このため、ゴム弾性体32Rへの影響が小さいと共に、安定した潤滑膜34Rを形成することがきる。また、被膜33Rや潤滑膜34Rに不純物が残存しにくく、それらの性能にも影響を及ぼしにくい。また、微小孔形成剤334Rの配合量は、塗料35Rの固形分を100質量%とした場合の10質量%である。これにより、被膜33Rの性能を維持しながら、ブリード性潤滑剤322Rを貯留するために必要な微小孔332Rを、形成することができる。
【0077】
<第二実施形態>
本実施形態は、本発明の防振ゴム部材を、スタビライザブッシュとして具現化したものである。
【0078】
[スタビライザブッシュの配置]
まず、本実施形態のスタビライザブッシュの配置について説明する。図11に、本実施形態のスタビライザブッシュの配置図を示す。図11に示すように、車両9の前輪付近には、サスペンション90、ハブユニット91、ステアリングギヤ92、ドライブシャフト93などの部材が配置されている。サスペンション90は、スプリング900L、900R、ショックアブソーバ901L、901R、ロアサスペンションアーム902L、902R、スタビライザバー903などを備えている。スタビライザバー903は、鋼製であって、前方にC字状に膨出する長軸パイプ状を呈している。スタビライザバー903の左右方向両端は、ロアサスペンションアーム902L、902Rに連結されている。スタビライザバー903の中央部分の左右二箇所は、スタビライザブッシュ1L、1R、ブラケット2L、2Rを介して、車両9のボディ(図略)に連結されている。このように、スタビライザブッシュ1L、1Rは、スタビライザバー903と、車両9のボディと、の間に介装されている。スタビライザブッシュ1L、1Rは、前輪から入力される振動が、スタビライザバー903を介して、車両9のボディに伝達されるのを抑制している。スタビライザバー903は、本発明の相手側部材に含まれる。
【0079】
[スタビライザブッシュの構造]
次に、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの構造について説明する。左右二つのスタビライザブッシュ1L、1Rの構成は同じである。以下、左側のスタビライザブッシュ1Lの構成について説明し、当該説明をもって右側のスタビライザブッシュ1Rの構成についての説明を兼ねるものとする。
【0080】
図12に、本実施形態のスタビライザブッシュとブラケットとの合体斜視図を示す。図13に、本実施形態のスタビライザブッシュとブラケットとの分解斜視図を示す。図14に、図12のXIV−XIV方向断面図を示す。図12〜図14に示すように、本実施形態のスタビライザブッシュ1Lは、ゴム弾性体10Lと、被膜11Lと、潤滑膜12Lと、を備えている。
【0081】
ゴム弾性体10Lは、左方向あるいは右方向から見て、中実のU字状を呈している。すなわち、ゴム弾性体10Lの上部分は、長方形状を呈している。ゴム弾性体の下部分は、半円状を呈している。ゴム弾性体10Lは、左右方向に貫通する保持孔100Lを備えている。保持孔100Lの内周面は、本発明の摺動内面に含まれる。保持孔100Lの内周面は、所定の曲率を持った略平滑面状を呈している。すなわち、保持孔100Lの内周面には、人為的な凹凸が形成されていない。ゴム弾性体10Lの外部と保持孔100Lの内部とは、切断部101Lを介して、連通している。保持孔100Lには、スタビライザバー903が配置されている。スタビライザバー903は、切断部101Lを上下方向に開いて形成される開口を介して、ゴム弾性体10Lの外部から保持孔100Lの内部に挿入される。ゴム弾性体10Lの左右両縁には、一対のフランジ部104Lが形成されている。一対のフランジ部104Lは、各々、上方に開口するU字状を呈している。
【0082】
被膜11Lは、円筒状を呈している。被膜11Lは、保持孔100Lの内周面を覆っている。被膜11Lの膜厚(径方向厚さ)は、約20μmである。潤滑膜12Lは、液状であって、被膜11Lの表面(内周面)を覆っている。潤滑膜12Lの表面(潤滑膜12Lが不足する場合には被膜11Lの表面)は、スタビライザバー903の外周面に、当接している。
【0083】
[スタビライザブッシュの材質]
次に、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの材質について説明する。図15に、図14の枠XV内の拡大図を示す。なお、図15は、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの機能を説明するための、模式図である。
【0084】
ゴム弾性体10Lは、自己潤滑ゴム製である。ゴム弾性体10Lは、NRとBRとのブレンドゴム(以下、単に「ブレンドゴム」と称す。)102Lと、ブリード性潤滑剤103Lと、を備えている。ブリード性潤滑剤103Lとしては、融点が異なる二種類のオレイン酸アミドが用いられている。ブレンドゴム102Lは、本発明のエラストマーに含まれる。
【0085】
被膜11L(例えば、エスティーティー(株)「SOLVEST 398」製)は、メルカプト基を持つシリコーン樹脂110Lと、PTFE製の固体潤滑剤111Lと、複数の微小孔112Lと、を備えている。固体潤滑剤111Lは、シリコーン樹脂110L100質量部に対して、120質量部含まれている。固体潤滑剤111Lは、粒径(メジアン径)が約1μm以下、平均粒径が約0.5μmの略球状を呈している。複数の微小孔112Lは、被膜11Lの内部に分散されている。微小孔112Lの大きさは、微小孔112Lを形成した微小孔形成剤の分子レベルであると推測される。いくつかの微小孔112Lには、ゴム弾性体10Lから滲み出たブリード性潤滑剤103Lが充填されている。
【0086】
潤滑膜12Lは、ゴム弾性体10Lのブリード性潤滑剤103Lと、被膜11Lの微小孔112Lを形成した微小孔形成剤と、により形成されている。すなわち、焼成により被膜11Lを形成する際、被膜11Lの塗料中の微小孔形成剤(ブリード性潤滑剤103Lとして用いた二種類のオレイン酸アミドのうちの一方(低融点の主要成分))が放出されて、被膜11Lの表面に滲み出る。また、ゴム弾性体10Lのブリード性潤滑剤103Lも、被膜11Lを透過して、被膜11Lの表面に滲み出る。このように、被膜11Lの表面に滲み出た微小孔形成剤およびブリード性潤滑剤103Lにより、潤滑膜12Lが形成される。
【0087】
図15に白抜き両端矢印で示すように、スタビライザバー903は、車両9の挙動に応じて、軸周りに捩られる。一方、スタビライザブッシュ1Lは、後述するブラケット2Lを介して、車両9のボディに固定されている。このため、潤滑膜12Lの表面(潤滑膜12Lが不足する場合には被膜11Lの表面)は、スタビライザバー903の外周面に、相対的に摺接している。
【0088】
[ブラケットの構造]
次に、本実施形態のブラケット2L、2Rの構造について説明する。左右二つのブラケット2L、2Rの構造は同じである。以下、左側のブラケット2Lの構造について説明し、当該説明をもって右側のブラケット2Rの構造についての説明を兼ねるものとする。図12〜図14に示すように、本実施形態のブラケット2Lは、鋼製であって、ブッシュ保持部20Lと、一対の固定部21Lと、を備えている。
【0089】
ブッシュ保持部20Lは、左方向あるいは右方向から見て、上方に開口するU字状を呈している。ブッシュ保持部20Lの左右両縁には、一対のフランジ部200Lが形成されている。ブッシュ保持部20LのU字開口内部には、スタビライザブッシュ1Lにおける、一対のフランジ部104L間の部分が、収容されている。一対のフランジ部200Lは、一対のフランジ部104Lに、左右方向内側から当接している。当該当接により、ブラケット2Lから、左右方向に、スタビライザブッシュ1Lが脱落するのを、抑制することができる。
【0090】
一対の固定部21Lは、各々、長方形板状を呈している。一対の固定部21Lは、ブッシュ保持部20LのU字両端に連なっている。一対の固定部21Lには、各々、ボルト挿通孔210Lが穿設されている。一対のボルト挿通孔210Lには、各々、下方からボルト211Lが挿通されている。一方、車両9のボディ95の下面には、凹部950Lと、一対のボルト止着孔951Lと、が配置されている。凹部950Lの内部空間は、直方体状を呈している。凹部950Lには、スタビライザブッシュ1Lの上部分が挿入されている。一対のボルト止着孔951Lは、凹部950Lの前後方向に配置されている。ボルト211Lは、ボルト挿通孔210Lを貫通して、ボルト止着孔951Lにねじ止めされている。このように、一対のボルト211Lにより、ブラケット2Lがボディ95の下面に固定されている。また、スタビライザブッシュ1Lが、ブラケット2Lと、ボディ95の下面と、の間に、挟持、固定されている。固定される際、ゴム弾性体10Lの上部分は、締め代S(図12、図13参照)の分だけ、圧縮変形する。当該締め代Sにより、スタビライザブッシュ1Lは、スタビライザバー903の外周面に、圧接している。
【0091】
[スタビライザブッシュの製造方法]
本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの製造方法は、組成物調製工程と、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。架橋工程において円板30R(図2参照)をキャビティにインサートする必要がない点以外は、第一実施形態のストッパの製造方法と同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0092】
[作用効果]
次に、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rおよびその製造方法の作用効果について説明する。本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rおよびその製造方法は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のストッパおよびその製造方法と同様の作用効果を有する。
【0093】
すなわち、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rの製造方法によると、複数の微小孔112Lを有する被膜11Lを、比較的簡単に形成することができる。また、微小孔112Lは、ゴム弾性体10Lから滲み出たブリード性潤滑剤103Lを、貯留することができる。このため、高温下において、ゴム弾性体10L中のブリード性潤滑剤103Lの滲出速度が、被膜11Lを透過する速度を上回っても、余剰分のブリード性潤滑剤103Lは、図15にハッチング矢印で示すように、被膜11L中の微小孔112Lに貯留される。よって、ブリード性潤滑剤103Lは、被膜11Lとゴム弾性体10Lとの界面に溜まりにくい。これにより、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rにおいては、高温下においても、被膜11Lがゴム弾性体10Lから剥離しにくい。したがって、本実施形態のスタビライザブッシュ1L、1Rは、耐久性に優れる。
【0094】
<第三実施形態>
本実施形態のスタビライザブッシュと、第二実施形態のスタビライザブッシュと、の相違点は、スタビライザブッシュを製造する際、被膜の微小孔形成剤として、ブリード性潤滑剤ではなく、発泡剤を使用した点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0095】
本実施形態のスタビライザブッシュの製造方法は、第二実施形態と同様、組成物調製工程と、架橋工程と、脱脂工程と、塗布工程と、焼成工程と、を有している。塗布工程においては、メルカプト基を持つシリコーン樹脂110Lの原料と、PTFE製の固体潤滑剤111Lと、微小孔形成剤113Lと、を含有する塗料を、ゴム弾性体10Lの表面に塗布する。微小孔形成剤113Lとしては、発泡剤を用いる。発泡剤は、主剤(永和化成工業(株)製「ネオセルボン(登録商標)N#100M」)、および助剤(同社製「セルペースト101」)からなる。微小孔形成剤113Lの配合量は、塗料の固形分を100質量%とした場合の10質量%(主剤5質量%、助剤5質量%)である。
【0096】
図16に、焼成工程中のゴム弾性体の拡大断面図を示す。なお、図16に示すのは、前出図5に対応する部位である。焼成工程においては、塗料が塗布されたゴム弾性体10Lを、100℃で、30分間、焼成する。焼成により、メルカプト基を持つシリコーン樹脂110Lの原料が熱硬化する。そして、ゴム弾性体10Lの表面に、被膜11Lが形成される。この際、図16に白抜き長矢印で示すように、塗料中の微小孔形成剤113Lは、ガス化して被膜11Lから放出される。一方、図16にハッチング短矢印で示すように、ゴム弾性体10Lのブリード性潤滑剤103Lは、被膜11Lを透過して、被膜11Lの表面に滲み出る。よって、潤滑膜12Lは、被膜11Lの表面に滲み出たブリード性潤滑剤103Lのみから形成される。また、被膜11Lには、微小孔形成剤113Lが放出された後に、微小孔112Lが形成される。このようにして、本実施形態のスタビライザブッシュを製造する。
【0097】
本実施形態のスタビライザブッシュの製造方法においては、微小孔形成剤113Lとして、発泡剤を用いる。発泡剤は、焼成時にガス化して、硬化途中の被膜11Lから放出される。したがって、被膜11Lや潤滑膜12Lの形成を阻害することなく、微小孔112Lを形成することができる。また、被膜11Lや潤滑膜12Lに不純物が残存しにくく、それらの性能にも影響を及ぼしにくい。また、微小孔形成剤113Lの配合量は、塗料の固形分を100質量%とした場合の10質量%である。これにより、被膜11Lの性能を維持しながら、ブリード性潤滑剤103Lを貯留するために必要な微小孔112Lを、形成することができる。また、発泡剤は粉末状を呈している。この場合、用いる粉末の粒子径や発泡条件(温度など)により、微小孔112Lの大きさを、調整することもできる。
【0098】
<その他>
以上、本発明の防振ゴム部材およびその製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0099】
ゴム弾性体のエラストマーの材質は、特に限定しない。例えば、NR、BR、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、ACM(アクリルゴム)、U(ウレタンゴム)、シリコーンゴムあるいはこれらのブレンド材などを用いることができる。
【0100】
また、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤の材質も、特に限定しない。例えば、脂肪酸アミド(不飽和脂肪酸アミド(オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなど)、飽和脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなど))、シリコーンオイル、ポリエチレングリコール型界面活性剤などを用いることができる。
【0101】
また、被膜の樹脂の材質も、特に限定しない。シリコーン樹脂の他、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができる。
【0102】
また、被膜の樹脂の官能基も、メルカプト基に限定しない。例えば、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基などを用いることができる。官能基は、ゴム弾性体のエラストマーの材質に応じて、選定されることが望ましい。
【0103】
また、被膜の固体潤滑剤の材質も、特に限定しない。例えば、黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂などを用いることができる。また、フッ素樹脂として、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PVF(ポリビニルフロライド)などを用いることができる。なお、被膜は、必ずしも固体潤滑剤を含まなくてもよい。
【0104】
また、微小孔形成剤の材質も、特に限定しない。微小孔形成剤は、焼成時に塗料から放出され、被膜や潤滑膜の形成を阻害しにくいものであればよい。上記第一、第二実施形態のように、ゴム弾性体のブリード性潤滑剤と同じ成分を含む場合には、ゴム弾性体への影響が小さいと共に、安定した潤滑膜を形成することがきる。また、不純物が残存しにくいため、被膜や潤滑膜の性能にも影響を及ぼしにくい。また、マトリックス(被膜の樹脂、ゴム弾性体のエラストマー)の材質により、ブリード性潤滑剤の移動速度は異なる。このため、例えば樹脂の選定により、微小孔形成剤の放出速度を、制御することができる。
【0105】
また、焼成工程における焼成温度や焼成時間は、特に限定しない。焼成温度や焼成時間については、樹脂の種類、微小孔形成剤の放出速度、ブリード性潤滑剤の滲出速度などを考慮して、適宜決定すればよい。
【0106】
また、被膜に形成される微小孔の大きさ、体積割合などについても、特に限定しない。ゴム弾性体から滲み出たブリード性潤滑剤の貯留機能と、被膜の強度や剛性と、のバランスを考慮して、適宜決定すればよい。
【0107】
また、上記実施形態においては、本発明の防振ゴム部材をロアサスペンションアーム84R用のストッパ3R、スタビライザブッシュ1L、1Rとして具現化した。しかしながら、例えば、特開2005−106169号公報、特開2005−249062号公報に開示されているようなエンジンマウント用のストッパ、特開2008−89002号公報、特開2008−95785号公報に開示されているようなデフマウント用のストッパとして、本発明の防振ゴム部材を具現化してもよい。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の防振ゴム部材について行ったトルク測定試験について説明する。
【0109】
<微小孔の有無とトルクとの関係>
[サンプル]
第二実施形態のスタビライザブッシュ1L(図12〜図15参照)を、実施例1のサンプルとした。また、微小孔形成剤を含まない塗料から被膜を形成した以外は実施例1と同様の構成のスタビライザブッシュを、比較例1のサンプルとした。比較例1のサンプルにおいては、被膜に微小孔は形成されていない。
【0110】
[試験方法]
まず、各サンプルを、ブラケット2Lにより、ジグ(第二実施形態の車両9のボディ95の下面に相当)に固定した。次に、各サンプルの保持孔100Lに、シャフト(第二実施形態のスタビライザバー903に相当)を挿通した。それから、トルクレンチを用いて、シャフトを軸周りに±15°捩った。そして、シャフトに加わるトルクを測定した。シャフトとサンプルとの間の摩擦抵抗が小さい場合、シャフトに加わるトルクは小さくなる。反対に、シャフトとサンプルとの間の摩擦抵抗が大きい場合、シャフトに加わるトルクは大きくなる。±15°の捩りを1回として、シャフトを10万回捩り、所定の回数にてトルクを測定した。
【0111】
[試験結果]
図17に、トルクの測定結果を示す。図17に示すように、実施例1のサンプルにおいては、比較例1のサンプルよりも、トルクの増加幅が小さくなった。実施例1のサンプルの被膜には、微小孔が形成されている。このため、捩りを繰り返すことにより温度が上昇し、ゴム弾性体からブリード性潤滑剤が多量に滲み出ても、被膜を透過できない余剰分のブリード性潤滑剤は、被膜中の微小孔に貯留される。つまり、滲み出たブリード性潤滑剤が、被膜とゴム弾性体との界面に溜まりにくい。よって、実施例1のサンプルにおいては、被膜の剥離が抑制され、サンプルとシャフトとの間の摩擦抵抗の増加が抑制されたと考えられる。
【0112】
<微小孔形成剤の配合量と初期トルクとの関係>
[サンプル]
試験に用いる第一のサンプル群は、第二実施形態のスタビライザブッシュ1Lにおいて、微小孔形成剤(ブリード性潤滑剤)の配合量を7水準設定したものである。各々のサンプルNo.を、W1〜W7とした。7水準については、以下の表1にまとめて示す。サンプルW4は、先の実施例1のサンプルに相当する。また、試験に用いる第二のサンプル群は、第三実施形態のスタビライザブッシュにおいて、微小孔形成剤(発泡剤)の配合量を7水準設定したものである。各々のサンプルNo.を、B1〜B7とした。7水準については、以下の表2にまとめて示す。
【表1】
【表2】
【0113】
[試験方法]
トルクの測定には、まず、第一、第二の各サンプルの保持孔100Lに、シャフト(第二実施形態のスタビライザバー903に相当)を挿通した。次に、シャフトを挿通した各々のサンプルを、固定ジグに装着した。それから、トルクレンチを用いて、シャフトを軸周りに90°捩った。そして、シャフトに加わる初期トルクを測定した。
【0114】
[試験結果]
図18に、サンプルW1〜W7のトルクの測定結果を示す。図19に、サンプルB1〜B7のトルクの測定結果を示す。なお、図18、図19には、比較のため、先の比較例1のサンプルについて同様の測定を行った結果も示す。
【0115】
図18に示すように、微小孔形成剤としてブリード性潤滑剤を配合したサンプルW1〜W7においては、ブリード性潤滑剤の配合量が1〜20質量%のW1〜W5のトルクが、比較例1のトルクよりも小さくなった。一方、ブリード性潤滑剤の配合量が30質量%、40質量%のW6、W7のトルクは、比較例1のトルクよりも大きくなった。
【0116】
また、図19に示すように、微小孔形成剤として発泡剤を配合したサンプルB1〜B7においては、発泡剤(主剤+助剤)の配合量が1〜5質量%のB1〜B3のトルクが、比較例1のトルクよりも小さくなった。また、発泡剤の配合量が10質量%、20質量%のB4、B5のトルクは、比較例1のトルクと同等、あるいはそれよりも若干大きくなった。さらに、発泡剤の配合量が30質量%、40質量%のB6、B7のトルクは、比較例1のトルクよりも大きくなった。
【0117】
これらの結果より、初期トルクを考慮した場合、微小孔形成剤の配合量を、20質量%以下とすることが望ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0118】
1L:スタビライザブッシュ(防振ゴム部材)、1R:スタビライザブッシュ(防振ゴム部材)、2L:ブラケット、2R:ブラケット、3R:ストッパ(防振ゴム部材)、4R:ロアアームブッシュ、5R:ブラケット、8:車両、9:車両。
10L:ゴム弾性体、11L:被膜、12L:潤滑膜、20L:ブッシュ保持部、21L:固定部、30R:円板、31R:ゴム部材本体、32R:ゴム弾性体、33R:被膜、34R:潤滑膜、35R:塗料、40R:内筒金具、41R:外筒金具、42R:ゴム部材、50R:前壁、51R:後壁、80:サスペンション、81:ハブユニット、83:ドライブシャフト、84R:ロアサスペンションアーム、90:サスペンション、91:ハブユニット、92:ステアリングギヤ、93:ドライブシャフト、95:ボディ。
100L:保持孔、101L:切断部、102L:ブレンドゴム(エラストマー)、103L:ブリード性潤滑剤、104L:フランジ部、110L:シリコーン樹脂、111L:固体潤滑剤、112L:微小孔、113L:微小孔形成剤、200L:フランジ部、210L:ボルト挿通孔、211L:ボルト、300R:ボルト挿通孔、320R:リブ、321R:ブレンドゴム(エラストマー)、322R:ブリード性潤滑剤、330R:シリコーン樹脂、331R:固体潤滑剤、332R:微小孔、333R:原料、334R:微小孔形成剤、500R:ボルト挿通孔、510R:ボルト挿通孔、800R:スプリング、801R:ショックアブソーバ、840R:ブッシュ収容筒部(相手側部材)、841R:ボルト、842R:ナット、900L:スプリング、900R:スプリング、901L:ショックアブソーバ、901R:ショックアブソーバ、902L:ロアサスペンションアーム、902R:ロアサスペンションアーム、903:スタビライザバー(相手側部材)、950L:凹部、951L:ボルト止着孔。
C:クリアランス、S:締め代。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材であって、
エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体と、
該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面の少なくとも一部を覆い、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ樹脂を含有し、該ゴム弾性体の変形に追従して変形可能であると共に、該ゴム弾性体から滲み出た該ブリード性潤滑剤を貯留可能な複数の微小孔が形成されている被膜と、
該被膜の表面の少なくとも一部を覆い、該ゴム弾性体から該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出た該ブリード性潤滑剤を含んで形成され、該摺動面の少なくとも一部を形成する潤滑膜と、
を備えてなることを特徴とする防振ゴム部材。
【請求項2】
複数の前記微小孔の少なくとも一部には、前記ゴム弾性体から滲み出た前記ブリード性潤滑剤が貯留されている請求項1に記載の防振ゴム部材。
【請求項3】
前記被膜は、さらに、固体潤滑剤を含有する請求項1または請求項2に記載の防振ゴム部材。
【請求項4】
前記固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレン製である請求項3に記載の防振ゴム部材。
【請求項5】
前記被膜は、前記固体潤滑剤を、前記樹脂100質量部に対して200質量部以下含有する請求項4に記載の防振ゴム部材。
【請求項6】
前記樹脂は、シリコーン樹脂である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の防振ゴム部材。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂は、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有する請求項6に記載の防振ゴム部材。
【請求項8】
前記ゴム弾性体は前記相手側部材が配置される保持孔を有しており、前記摺動内面は該保持孔の内周面である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の防振ゴム部材。
【請求項9】
相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材の製造方法であって、
架橋反応により、エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体を作製する架橋工程と、
該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の該摺動内面に、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ熱硬化性樹脂と、焼成時に放出されることにより被膜に微小孔を形成する微小孔形成剤と、を含有する塗料を塗布する塗布工程と、
該塗料が塗布された該ゴム弾性体を焼成することにより、該塗料から該微小孔形成剤を放出させながら該摺動内面に該被膜を形成すると共に、該ゴム弾性体の該ブリード性潤滑剤を該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出させ、該被膜の表面に該ブリード性潤滑剤を含む潤滑膜を形成する焼成工程と、
を有することを特徴とする防振ゴム部材の製造方法。
【請求項10】
前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤および発泡剤から選ばれる一種以上からなる請求項9に記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項11】
前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤からなり、
前記潤滑膜は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤、および該微小孔形成剤の両方から形成される請求項9に記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項12】
前記微小孔形成剤は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤の少なくとも一種を含む請求項10または請求項11に記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項13】
前記微小孔形成剤の配合量は、前記被膜を形成する固形分全体を100質量%とした場合の0.5質量%以上20質量%以下である請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項1】
相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材であって、
エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体と、
該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面の少なくとも一部を覆い、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ樹脂を含有し、該ゴム弾性体の変形に追従して変形可能であると共に、該ゴム弾性体から滲み出た該ブリード性潤滑剤を貯留可能な複数の微小孔が形成されている被膜と、
該被膜の表面の少なくとも一部を覆い、該ゴム弾性体から該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出た該ブリード性潤滑剤を含んで形成され、該摺動面の少なくとも一部を形成する潤滑膜と、
を備えてなることを特徴とする防振ゴム部材。
【請求項2】
複数の前記微小孔の少なくとも一部には、前記ゴム弾性体から滲み出た前記ブリード性潤滑剤が貯留されている請求項1に記載の防振ゴム部材。
【請求項3】
前記被膜は、さらに、固体潤滑剤を含有する請求項1または請求項2に記載の防振ゴム部材。
【請求項4】
前記固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレン製である請求項3に記載の防振ゴム部材。
【請求項5】
前記被膜は、前記固体潤滑剤を、前記樹脂100質量部に対して200質量部以下含有する請求項4に記載の防振ゴム部材。
【請求項6】
前記樹脂は、シリコーン樹脂である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の防振ゴム部材。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂は、ストレートシリコーン樹脂およびその変性物よりも架橋構造が疎であって、ゴム弾性を有する請求項6に記載の防振ゴム部材。
【請求項8】
前記ゴム弾性体は前記相手側部材が配置される保持孔を有しており、前記摺動内面は該保持孔の内周面である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の防振ゴム部材。
【請求項9】
相手側部材の振動の少なくとも一部を吸収すると共に、該相手側部材に相対的に摺接する摺動面を備えてなる防振ゴム部材の製造方法であって、
架橋反応により、エラストマーと、ブリード性潤滑剤と、を含有する自己潤滑ゴム製のゴム弾性体を作製する架橋工程と、
該ゴム弾性体の表面のうち前記摺動面の内側に配置される摺動内面を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の該摺動内面に、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基から選ばれる一種以上の官能基を持つ熱硬化性樹脂と、焼成時に放出されることにより被膜に微小孔を形成する微小孔形成剤と、を含有する塗料を塗布する塗布工程と、
該塗料が塗布された該ゴム弾性体を焼成することにより、該塗料から該微小孔形成剤を放出させながら該摺動内面に該被膜を形成すると共に、該ゴム弾性体の該ブリード性潤滑剤を該被膜を透過して該被膜の表面に滲み出させ、該被膜の表面に該ブリード性潤滑剤を含む潤滑膜を形成する焼成工程と、
を有することを特徴とする防振ゴム部材の製造方法。
【請求項10】
前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤および発泡剤から選ばれる一種以上からなる請求項9に記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項11】
前記微小孔形成剤は、ブリード性潤滑剤からなり、
前記潤滑膜は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤、および該微小孔形成剤の両方から形成される請求項9に記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項12】
前記微小孔形成剤は、前記ゴム弾性体に含有される前記ブリード性潤滑剤の少なくとも一種を含む請求項10または請求項11に記載の防振ゴム部材の製造方法。
【請求項13】
前記微小孔形成剤の配合量は、前記被膜を形成する固形分全体を100質量%とした場合の0.5質量%以上20質量%以下である請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の防振ゴム部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−11328(P2013−11328A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145395(P2011−145395)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(592065058)エスティーティー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(592065058)エスティーティー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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