説明

防振支持装置

【課題】振動抑制機能増強手段を必要に応じて簡単に付加でき、上下方向や水平360度方向で大きな振動があっても、防振支持装置の各部がぶつかって異常音が発生したり、破損,変形が生じたりしないようにする。
【解決手段】取付ベース2の上面に、防振ゴム3を挟んでエンジンフット1を支持させる。防振ゴム3の固定ボルト5に通して、エンジンフット1の上に、長方形の第1防振パッド11と円板状の第2防振パッド12を配設し、それらを固定ナット13で締め付け固定する。そして、第2防振パッド12を囲む透孔を有するストッパ10を、透孔内に第2防振パッド12を配置した状態で第1防振パッド11の上に載置し、取付ベース2の上面に立設したストッパブラケットに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン駆動発電機,エンジン駆動溶接機等のエンジン駆動作業機のエンジンや作業機本体を筐体等に取り付けるための支持装置として用いることができる防振支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動発電機,エンジン駆動溶接機等のエンジン駆動作業機では、運転時にエンジンや作業機本体が振動するため、それらをベースに支持する部分に防振支持装置を設けて、エンジンや作業機本体からベースに伝わる振動を抑制するようにしている。
【0003】
例えば、図9に正面図と側面図で示すように、エンジンフット1と、それを支持するベース2との間に、防振ゴム3を介在させて、エンジンや作業機本体からベースに伝わる振動を抑制するようにしている。エンジンフット1は、ボルト孔1dに通したボルトにより、エンジン(図示せず)に強固に固定される。防振ゴム3は、円柱状のゴム本体の上下両面に、円形の鉄板を接着し、それら両鉄板から上下方向に、それぞれ固定ボルト4,5が立設されている。そして、防振ゴム3の下端部は、一方の固定ボルト4により、エンジン駆動作業機筐体のベース2にナット等(図示せず)で固定され、防振ゴム3の上端部には、他方の固定ボルト5の先端部にボルト孔を通し、固定ナット6で締め付けることにより、エンジンフット1の水平板1bが固定されている。
【0004】
この防振支持装置では、防振ゴム3によりエンジンの振動を吸収する一方、振動の振幅が大きくなったときは、ベース2の側部や先端部がエンジンフット1の下端部P,Qに当たって、振幅が所定以上に大きくならないように規制している。
【0005】
また、振幅が所定以上に大きくならないように規制する手段としては、図10に示すようなものもある。なお、図10において、(B)は(A)のY−Y断面図である。この防振支持装置は、発電機を支持する場合で示しており、発電機フット8は、発電機(図示せず)に強固に固定される。防振ゴム3で振動を吸収する点は、図9のものと同様であるが、振幅の規制は、ベース2上面に立設した振れ止め金具7で行うようにしている。振れ止め金具7は、長方形の板を直角に折り曲げた形状をしており、発電機フット8の振幅が大きくなったとき、発電機フット8の側部や先端部が振れ止め金具7に当たって振幅が所定以上に大きくならないようにしている。
【0006】
さらに、特許文献1に示される防振支持装置では、ベースとの間に振動吸収用の二つ割り弾力性部材を挟んで平板形ストッパを、ボルトにより係止し、該二つ割り弾力性部材の中間部に、エンジンの取付板を嵌着し、該取付板の先端に、前記ベース及び平板形ストッパのそれぞれに対して間隙をあけて係止部を一体的に設けている。この防振支持装置によれば、二つ割り弾力性部材によりエンジンの振動を吸収し、係止部と平板形ストッパとにより振幅を規制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−90387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、可搬型のエンジン駆動作業機を車両,貨車,船舶等に載せて使用することが
あるが、そのような場合、車両,貨車,船舶等は、上下方向や前後,左右の水平360度方向に大きく揺れるため、エンジン駆動作業機の防振支持装置としては、エンジンや作業機本体から発生する振動を抑制するだけでなく、車両,貨車,船舶等からエンジンや作業機本体に伝わる振動も抑制する必要がある。
【0009】
そして、図9,図10に示したような防振支持装置により、車両,貨車,船舶等からエンジン駆動作業機に伝わる振動をも抑制するには、上下方向と水平360度方向の規制がないので、それを抑制するようにする必要があるが、その分コスト高になって、車両,貨車,船舶等に載せて使用することがないユーザにとっては無駄なコスト増になってしまう。また、図9,図10に示したような防振支持装置及び特許文献1に示される防振支持装置では、ベースとエンジンフットの間隙やベース及び平板形ストッパと係止部との間隙により、所定以上の振幅を規制するようにしているが、車両,貨車,船舶等が大きく揺れると、ベースとエンジンフットやベース及び平板形ストッパと係止部とがぶつかり合って、異常音が発生したり、ベース,エンジンフット,平板形ストッパ,係止部等に破損,変形が生じる可能性があるという問題点もあった。
【0010】
本発明は、そのような問題点に鑑み、振動抑制機能増強手段を必要に応じて簡単に付加でき、上下方向や水平360度方向で大きな振動があっても、防振支持装置の各部がぶつかって異常音が発生したり、破損,変形が生じたりしないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本願の請求項1にかかる発明は、被支持物に固定され、水平板状の支持部を有する被支持物取付金具と、柱状ゴム本体の上下端面に、それぞれ固定ボルトが立設され、下方の固定ボルトにより取付ベースに固定され、上方の固定ボルトにより前記被支持物取付金具の支持部を固定する防振ゴムと、板状弾性部材よりなり、中心部に透孔を有し、該透孔に前記上方の固定ボルトの先端部を通して前記被支持物取付金具の支持部の上面に配設された第1防振パッドと、前記第1防振パッドより小径の円板状弾性部材よりなり、中心部に透孔を有し、該透孔に前記上方の固定ボルトの先端部を通して前記第1防振パッドの上に配設された第2防振パッドと、前記上方の固定ボルトの上端部に螺合され、前記第1防振パッド及び第2防振パッドを上から押さえて固定する固定ナットと、前記取付ベースの上面に立設されたストッパブラケットと、前記第2防振パッドを囲む大きさの円形透孔を設けた板状部分を有し、前記第2防振パッドを円形透孔内に配設した状態で前記ストッパブラケットに固定されたストッパとを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記取付ベースの上面に立設された、前記被支持物取付金具の振幅を規制するための振れ止め金具を、前記ストッパブラケットとして用いたことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1又は2にかかる発明において、前記固定ナットとして側部に鍔状の押座を有し、下部に円筒状の押座を有するナットを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1にかかる発明においては、取付ベースの上面に、防振ゴムを挟んで被支持物取付金具を支持させ、被支持物取付金具の上に突き出ている固定ボルトに通して、第1防振パッドと円板状の第2防振パッドを配設し、それらを固定ナットで締め付け固定するようにし、第2防振パッドを囲む透孔を有するストッパを、透孔内に第2防振パ
ッドを配置した状態で第1防振パッドの上に載置し、取付ベースの上面に立設したストッパブラケットに固定するようにした。その結果、振動抑制機能増強手段を必要に応じて簡単に付加でき、上下方向や水平360度方向で大きな振動があっても、防振支持装置の各部がぶつかって異常音が発生したり、破損,変形が生じたりしなくなる。
【0015】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる防振支持装置において、前記取付ベースの上面に立設された、前記被支持物取付金具の振幅を規制するための振れ止め金具を、前記ストッパブラケットとして用いるようにしたので、既存の振れ止め金具を有効活用でき、ストッパブラケットを別途設ける必要がなくなる。
【0016】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1又は2にかかる防振支持装置において、前記固定ナットとして側部に鍔状の押座を有し、下部に円筒状の押座を有するナットを用いるようにしたので、スプリングワッシャを押し付け、第1防振パッドと第2防振パッドを適度に押さえながら固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例に係る防振支持装置を示す図である。
【図2】図1の要部断面を示す図である。
【図3】エンジンフットを示す図である。
【図4】ストッパブラケットを示す図である。
【図5】ストッパを示す図である。
【図6】防振パッドを示す図である。
【図7】固定ナットを示す図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る防振支持装置を示す図である。
【図9】第1従来例を示す図である。
【図10】第2従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1実施例に係る防振支持装置を三角法で示す図であり、図2は、その要部断面を示す図である。図1,図2において、符号1〜5は、図9のものと対応しており、9はストッパブラケット、10はストッパ、11は第1防振パッド、12は第2防振パッド、13は固定ナット、14は平座金、15はスプリングワッシャである。
【0020】
エンジンフット1は、図3に示すように、背板1aに水平板1bが直角に接合され、それらの側方に側板1cが一体的に接合されている。背板1aには、エンジン固定用のボルトを通すための透孔1d,1d,1d,1dが設けられ、水平板1bには、防振ゴム3の固定ボルト5を通すためのボルト孔1eが設けられている。そして、図1には図示していないが、透孔1d,1d,1d,1dにボルトを通して、エンジンフット1とエンジンが固定されている。
【0021】
また、ストッパブラケット9は、図4に示すように、金属板を折曲して形成したL字状板9aの中央縦方向に補強板9bを一体的に接合し、L字状板9aの底部には、ストッパブラケット9をベース2に固定するためのボルト孔9c,9c、上部には、ストッパ10を固定するためのボルト孔9d,9dを設けている。そのようなストッパブラケット9を、ボルト孔9c,9cに通したボルトにより、ベース2の上面に固定している。なお、図4中の符号9eは透孔である。
【0022】
ストッパ10は、図5に示すように、金属板をL字状に折曲して形成した下板10aの上に、底面が平坦なU字状になるように形成した上板10bを積層して一体的に接合し、底面部には円形の防振パッド収納孔10cが設けられ、背面部には、ナット10d,10dが溶接されており、前記ストッパブラケット9のボルト孔9d,9dに通したボルトを、このナット10d,10dに螺合して締め付けることにより、ストッパ10をストッパブラケット9に固定する。
【0023】
第1防振パッド11と第2防振パッド12は、ゴム等の弾性物質で構成され、第1防振パッド11は、図6(A)に示すように、長方形をしており、その中央に固定ナット13の下部が収納できる大きさの固定ナット収納孔11aが設けられている。また、第2防振パッド12は、図6(B)に示すように、円形をしており、その中央に第1防振パッド11の円形孔11aと同径の固定ナット収納孔12aが設けられている。
【0024】
このような第1防振パッド11が、固定ボルト5により防振ゴム3の上に取り付けられたエンジンフット1の上に配設され、さらに、その第1防振パッド11の上に重ねて第2防振パッド12が配設される。
【0025】
固定ナット13は、防振ゴム3の固定ボルト5の先端部に螺合されるもので、図7に示すように、全体的に袋状になっており、六角形の頂部13aの下側に鍔状の押座13bを有し、下部13cは円筒状になっていて、その円筒状の下部13cの長さは、第1防振パッド11,第2防振パッド12の厚さを足した分から、平座金の厚さとスプリングワッシャの締め付けた後の厚さ分を引いた長さとし、第1防振パッド11,第2防振パッド12の固定ナット収納孔11a,12aに挿入できる径に形成されている。
【0026】
この固定ナット13は、第1防振パッド11,第2防振パッド12が配設された状態で、固定ボルト5に平座金14とスプリングワッシャ15を装着した後、固定ボルト5の先端部にねじ込む。その状態で、第2防振パッド12に防振パッド収納孔10cを通すようにしてストッパ10を装着し、ストッパブラケット9にボルト止めして、防振支持装置の組み立てが完了する。
【0027】
この防振支持装置では、上下方向の振動は、防振ゴム3と第1防振パッド11の弾力性により吸収し、前後方向及び水平方向の振動は、第2防振パッド12の弾力性により吸収する。その際、振動が大きくても、上下方向の振動、水平方向の振動共に、ストッパ10により規制されるが、エンジンフット1とストッパ10の間及び固定ナット13とストッパ10の間には第1防振パッド11や第2防振パッド12が介在しているため、エンジンフット1,固定ナット13とストッパ10が直接ぶつかり合うことがなく、異常音が発生したり、破損,変形が生じたりすることがない。また、第1防振パッド11と第2防振パッド12の二つの防振パッドを上下方向と水平方向に使い分けることで、両者別々に振れ幅の調整ができる。しかも、第2防振パッド12が円形をしているため、水平360度すべての方向の振れ止めができる。
【0028】
また、エンジンフット1,ベース2,防振ゴム3及び固定ボルト4,5の部分は、図9に示した従来の防振支持装置と同じであるので、あまり大きな振動が生じない環境で使用する場合は、従来構造の防振支持装置のまま使用することができる。一方、エンジン駆動作業機を車両,貨車,船舶等に載せて使用する場合のように、大きな振動を受ける環境で使用する場合は、図9に示したような従来の防振支持装置に、ストッパブラケット9,ストッパ10,第1防振パッド11,第2防振パッド12,固定ナット13等を付加するだけで対応可能である。
【0029】
さらに、第1防振パッド11や第2防振パッド12は、長期間使用していると劣化して
性能が低下することがあるが、第1防振パッド11や第2防振パッド12が劣化した場合は、固定ナット13やストッパ10を取り外すことで、簡単に新しいものと取り替えることができる。
【実施例2】
【0030】
図8は、本発明の第2実施例に係る防振支持装置を示す図であり、図8(B)は、図8(A)のX−X断面図である。符号は、図1,図2及び図10のものに対応している。図10に示した従来構造の防振支持装置のように、ベース2の上面に振れ止め金具7が設けられている場合は、振れ止め金具7にストッパ10を固定することができる。それ以外の構成は実施例1と同様であり、振動が大きくても、異常音が発生したり、破損,変形が生じたりしないこと、従来の防振支持装置に、ストッパ10,第1防振パッド11,第2防振パッド12,固定ナット13等を付加するだけで対応可能であること、第1防振パッド11や第2防振パッド12の交換が簡単にできること等も実施例1と同様である。
【0031】
なお、上記各実施例では、固定ナット13として袋状ナットを用いる場合で説明したが、固定ボルト5の長さが十分あれば、貫通型のナットを用いてもよく、円筒状の部分の長さは、押さえ具合により変更してもかまわないものとする。
【符号の説明】
【0032】
1…エンジンフット
2…ベース
3…防振ゴム
4,5…固定ボルト
7…振れ止め金具
8…発電機フット
9…ストッパブラケット
10…ストッパ
11…第1防振パッド
12…第2防振パッド
13…固定ナット
14…平座金
15…スプリングワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被支持物に固定され、水平板状の支持部を有する被支持物取付金具と、
柱状ゴム本体の上下端面に、それぞれ固定ボルトが立設され、下方の固定ボルトにより取付ベースに固定され、上方の固定ボルトにより前記被支持物取付金具の支持部を固定する防振ゴムと、
板状弾性部材よりなり、中心部に透孔を有し、該透孔に前記上方の固定ボルトの先端部を通して前記被支持物取付金具の支持部の上面に配設された第1防振パッドと、
前記第1防振パッドより小径の円板状弾性部材よりなり、中心部に透孔を有し、該透孔に前記上方の固定ボルトの先端部を通して前記第1防振パッドの上に配設された第2防振パッドと、
前記上方の固定ボルトの上端部に螺合され、前記第1防振パッド及び第2防振パッドを上から押さえて固定する固定ナットと、
前記取付ベースの上面に立設されたストッパブラケットと、
前記第2防振パッドを囲む大きさの円形透孔を設けた板状部分を有し、前記第2防振パッドを円形透孔内に配設した状態で前記ストッパブラケットに固定されたストッパと
を備えたことを特徴とする防振支持装置。
【請求項2】
前記取付ベースの上面に立設された、前記被支持物取付金具の振幅を規制するための振れ止め金具を、前記ストッパブラケットとして用いたことを特徴とする請求項1に記載の防振支持装置。
【請求項3】
前記固定ナットとして側部に鍔状の押座を有し、下部に円筒状の押座を有するナットを用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の防振支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−252561(P2011−252561A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127913(P2010−127913)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000109819)デンヨー株式会社 (88)
【Fターム(参考)】