説明

防振継手

【課題】真空チャンバ2のような減圧容器と、真空ポンプ3のように加振源となる機器との間の配管経路4に介設される防振継手1において、簡単な構造で低コストでありながら減圧時でも振動の伝達を十分に抑制可能なものとする。
【解決手段】一対のベース板10,11の間に金属ベローズ13と空気ばね14とを内外同心状に配設する。ベース板10,11の間隔が設定値になるよう、レベリングバルブ18によって空気ばね14に高圧空気を供給又は排出する。防振継手1は真空チャンバ2の床部20の下側に取り付け、この防振継手1と一体的に構成した吊設具によって真空ポンプ3を吊り下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば精密機器等の防振対象物が収容される減圧容器の配管経路に設けられ、気密性を保ちつつ振動の伝達を抑制する防振継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば半導体関連の製造装置や試験装置、或いは電子顕微鏡のような精密機器を真空チャンバのような高度の減圧環境下で使用することがあり、その場合に加振源となる真空ポンプからの振動の伝達を抑えるために、該真空ポンプと真空チャンバとの間の配管経路に金属ベローズを備えた防振継手を設けることが行われている。
【0003】
例えば特許文献1に開示される防振継手(防振ダンパ)は、真空ポンプの作動によって金属ベローズ内が減圧されるときに、その両端のフランジ間に発生する収縮力に対抗して両者の間隔を維持するために、即ち、真空力を相殺するために、金属ベローズ内にステンレスの撚り線を用いたワイヤを突っ張るように配置している。
【0004】
一方、特許文献2のものは、前記特許文献1のワイヤに代えて、真空力を相殺するためにコイルばね(第1の弾性体)を設けるとともに、このコイルばねを介しての振動伝達を抑えるために、負の剛性を持つばね機構からなる除振機構をさらに設けている。この除振機構としては、例えば座屈形状の弾性構造体からなる受動型除振機構が用いられ、コイルばねのばね力が真空力と釣り合う位置の近傍において、ばね定数を実効的に殆どゼロまで小さくさせる。
【0005】
また、前記除振機構として、金属ベローズのフランジの変位を検出する変位センサと、空気圧を高応答に制御可能な空気静圧アクチュエータと、このアクチュエータを前記変位センサからの信号に応じて制御する振動抑制制御器と、を備えた所謂能動型のものも開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3092699号公報
【特許文献2】特許第3657836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前者の従来例(特許文献1)のものでは、真空力を相殺するために金属製ワイヤを突っ張るように設けていることから、このワイヤを介しての振動の伝達が大きくなりやすいと考えられる。
【0007】
一方で後者の従来例(特許文献2)の場合は、真空力を相殺するためのコイルばね等の他に受動型若しくは能動型の除振機構を設けていることから、構造が複雑になってしまいコスト高になるきらいがある。また、受動型の除振機構では、所要の性能を得るための調整に手間が掛かる虞れがあり、能動型の除振機構では、変位センサや電子制御器が必要なことから、高コスト化の問題が大きい。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、減圧容器と加振源との間の配管経路に介設される金属ベローズを備えた防振継手において、簡単な構造で低コストでありながら、減圧に伴う金属ベローズの収縮を抑えながら、振動の伝達も十分に抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明では、減圧時に金属ベローズ両端のフランジ間に発生する収縮力に対抗するように空気圧アクチュエータを設け、これに機械式の給排手段によって所要の圧力を付与するようにした。
【0010】
具体的に、請求項1に係る発明は、防振対象物の収容される減圧容器と加振源となる機器との間の配管経路に設けられて、振動の伝達を抑制する防振継手を対象として、その配管経路の一部を構成する金属ベローズと、該金属ベローズ両端のフランジ間に力を加えるように設けられた空気圧アクチュエータと、前記金属ベローズ内が減圧されるとき、その両端フランジ間に発生する収縮力に抗して両者の間隔を維持するように、前記空気圧アクチュエータに対し空気の給排を行う機械式の給排手段と、を備える構成とする。
【0011】
前記の構成では、防振対象物の収容される減圧容器と例えば真空ポンプのような機器との間の配管経路に防振継手が設けられていて、その機器の発生する振動が防振継手における金属ベローズの伸縮によって吸収されるようになる。
【0012】
また、その金属ベローズ内の通路が減圧されて、両端のフランジ間に収縮力が発生すると、これに応じて作動する機械式の吸排機構によって空気圧アクチュエータに対する空気の供給乃至排出が行われ、当該アクチュエータが発生する力によって両フランジ同士の間隔が維持されるようになる。
【0013】
例えばコンプレッサ等の空気圧源からの高圧空気によって作動する空気圧アクチュエータを用いれば、それが発生する押圧力によって、互いに近づこうとする両フランジ同士を押し退けて、それらの間隔を維持することができる。この場合、空気圧アクチュエータは所謂空気ばねとなるが、そのばね定数は一般にコイルばね等に比べて低く、振動の伝達を抑制する上で有利になる。
【0014】
特に、空気圧アクチュエータをダイヤフラム式の空気ばねとすれば、ベローズ式のものに比べてばね定数を低くしやすい。また、ダイヤフラムの付着するピストンの形状に工夫をすれば(一例として、円筒状ピストンの周面に圧力室側の端面に近づくほど外径の拡大するテーパ面を形成する等すれば)、必要な力を確保しつつ、ばね定数はさらに低下させることもできる。
【0015】
一方、前記空気圧アクチュエータとして負圧によって作動するものを用いることもでき、こうすれば別途、空気圧源を準備しなくても、例えば真空ポンプのように減圧容器内を減圧するための機器を負圧源として、空気圧アクチュエータから排気することもできるから、コストのさらなる低減が可能になる。
【0016】
尚、前記負圧アクチュエータに減圧容器内と同じ大きさの負圧を作用させる場合には、負圧室(圧力室)の有効面積を適切に設定することで、金属ベローズの収縮力を確実にキャンセルできる。或いは、より大きな負圧を作用させるのであれば、相対的に有効面積を小さくすることもでき、コンパクト化に有利になる。
【0017】
また、空気圧アクチュエータの圧力室は環状に形成し、それを金属ベローズと略同心状に配置するのがよい。こうすれば、防振継手のコンパクト化に有利になる。さらに、金属ベローズの外周に減衰材を巻き付けて、減衰を付与するようにすれば、振動の伝達を抑制する上で有利になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る防振継手によると、減圧容器と加振源との間の配管経路に介設した金属ベローズによって振動の伝達を抑制しながら、空気圧アクチュエータによって減圧時の金属ベローズの収縮(潰れ)を阻止し、その両端フランジ同士の間隔を適切に維持することができる。空気圧アクチュエータの作動に機械式の給排手段を用いれば、簡単な構造でコスト高を招くことがなく、調整に手間が掛かることもない。
【0019】
空気圧アクチュエータとして所謂空気ばねを用いた場合、そのばね定数を低くして振動の伝達を十分に抑制することが可能になる。また、負圧式のアクチュエータを用いれば、別途、空気圧源を備える必要がなく、コストのさらなる低減が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る防振継手1の使用の一態様を示し、この防振継手1は、真空チャンバ2(減圧容器)と真空ポンプ3(加振源となる機器)との間の配管経路4に介設されて、真空ポンプ3からの振動の伝達を抑制する。真空チャンバ2の床部20(以下、単に床部20ともいう)は、4本の支柱5a,5a,…とそれらを繋ぐ梁5b,5b,…とからなる架台5上に載置されており、その上に、例えば電子顕微鏡等のように振動を嫌う精密機器(防振対象物)が設置される。
【0022】
図の例では床部20の下側に、取り付け用の中間板21を介して防振継手1が取り付けられ、そこから下方に延びる配管部材40の下端が真空ポンプ3に接続されている。すなわち、防振継手1は、上下一対の矩形状のベース板10,11を有し、それらの中間に、配管経路4の一部を構成する金属ベローズ13と、その周囲を囲んで略同心状に設けられた空気ばね14と、を備えている。金属ベローズ13の上端は、上ベース板10の下面に接続され、該上ベース板10の他、前記中間板21や床部20を貫通する通路によって真空チャンバ2内に連通している。
【0023】
一方、金属ベローズ13の下端は下ベース板11の上面に接続され、該下ベース板11の貫通穴11a(図2を参照)によって管部材40内の通路に連通している。そして、真空ポンプ3が作動すると、管部材40及び金属ベローズ13を介して真空チャンバ2の内部から空気が排出され、所要の真空度まで減圧される。
【0024】
また、この実施形態では、防振継手1と一体的に真空ポンプ3の吊設具が設けられている。すなわち、まず、防振継手1の上ベース板10の4隅からそれぞれ下方に延びるようにガイドピン15,15,…が設けられ、その下側部が各々、下ベース板11の4隅に設けられたガイド穴11b,11b,…(図2を参照)に遊嵌状態で挿入されている。図の例では、各ガイドピン15はボルトの軸部によって構成され、その下端のボルト頭部が、下ベース板11の下方への変位を制限するストッパとして機能するようになっている。
【0025】
そして、前記のように上ベース板10に対して上下に変位可能とされている下ベース板11の4隅に、各ガイド穴11b,11b,…に隣接する部位からそれぞれ下方に延びるように4本のロッド16,16,…が設けられ、その下側の部位には上下に位置調整可能に真空ポンプ3の載置台17が取り付けられている。こうして載置台17上の真空ポンプ3は、防振継手1を介して真空チャンバ2の床部20に吊り下げられている。
【0026】
防振継手1の構造については、図1の左側から見た部分断面図である図2により詳しく示すように、まず、金属ベローズ13の上端が接続される上ベース板10の略中央には、上下の貫通穴10aが形成され、この貫通穴10aに対応して中間板21とその上の床部20とにもそれぞれ貫通穴21a,20aが形成されている。そして、金属ベローズ13の上端フランジ13aが前記上ベース板10の貫通穴10aの周縁部に重ね合わされて締結されている一方、下端フランジ13bは下ベース板11の貫通穴11aの周縁部に重ね合わされて締結されている。
【0027】
金属ベローズ13は、この例ではステンレス製の薄板材を打ち抜いた円環状のコアを重ね合わせて、上下に隣接するものの外周縁及び内周縁を交互に溶接してなる溶接ベローズであり、成形ベローズに比べて剛性が低くなることから、振動の伝達抑制に優れている。また、金属ベローズ13は、コアの表面を精密に研磨し且つ洗浄することにより異物の放出が殆どなくなり、その内部が高真空まで減圧されてもアウトガスの問題を生じない。
【0028】
前記金属ベローズ13の全周を取り囲んで、上下両ベース板10,11の間にゴム製ベローズ14aが架設されている。このベローズ14aは、内側の金属ベローズ13との間に円環状の空気室14b(圧力室)を区画する1段の提灯型のものであり、金属ベローズ13内が減圧されるときに、その両端フランジ13a,b間に発生する収縮力に対抗する押圧力を発生する空気ばね14(空気圧アクチュエータ)である。
【0029】
そうしてゴム製ベローズ14aと金属ベローズ13との間に円環状の空気室14bを形成して、空気ばね14を金属ベローズ13と同心状に配置することで、防振継手1を比較的コンパクトに構成することができる。
【0030】
そして、前記空気室14bには、下ベース板11に形成された給排ポート11cの一端が開口し、その他端は下ベース板11の側部に開口していて、そこに接続された空気圧給排管19(図1にのみ示す)によって、レベリングバルブ18(機械式の給排手段)から高圧空気の供給を受け、また、レベリングバルブ18を介して大気中に空気を放出するようになっている。
【0031】
レベリングバルブ18は、詳細は図示しないが、比例切換弁からなる従来周知構造のものであり、上下に回動可能なアーム18aを有し、このアーム18aの上下動に応じて、図外のコンプレッサ等の空気圧源からの高圧空気を空気ばね14の空気室14bに供給する給気位置と、その空気室14bから排気する排気位置とに切換わるようになっている。アーム18aの先端には上下に伸びるようにロッド18bが取り付けられ、その下端を覆う防振ゴムのキャップが下ベース板11側のブラケット18cに接触している。
【0032】
そして、上下のベース板10,11同士の間隔が予め設定した値よりも小さくなって、アーム18aが上方に回動すると、レベリングバルブ18は給気位置になって高圧空気を空気ばね14に供給する。反対にベース板10,11同士の間隔が設定値よりも大きくなって、アーム18aが下方に回動すれば、レベリングバルブ18は排気位置になって空気ばね14から排気する。尚、ベース板10,11同士の間隔が略設定値になっていれば、レベリングバルブ18は中立位置になって給気も排気も行わない。
【0033】
つまり、この実施形態の防振継手1においては、空気ばね14が、レベリングバルブ18からの空気圧の給排を受けて、上下のベース板10,11同士の間隔を設定値に維持するように作動する。この設定値とは、下ベース板11の下面と、ガイドピン15であるボルトの頭部との間隔が所定の大きさになって、真空ポンプ3の振動により下ベース板11が上下に最大振幅で振動しても両者が接触しないとともに、勿論、上下ベース板10,11同士の間でも不用な接触が生じないような値とされている。
【0034】
したがって、この実施形態1に係る防振継手1を真空チャンバ1と真空ポンプ3との間の配管経路4に介設すれば、その真空ポンプ3の作動に伴う振動は、まず、金属ベローズ13の伸縮によって吸収されるようになり、その金属ベローズ13のばね定数が低いことから、基本的に高い防振性能が得られる。
【0035】
また、真空ポンプ3の作動によって真空チャンバ2内が減圧されるときには、金属ベローズ13内も減圧されて、その両端フランジ間13a,13bに収縮力が発生することになるが、これに応じてレベリングバルブ18が作動し、空気ばね14に適切な空気圧が供給されることにより、互いに近づこうとする上下のベース板10,11同士を押し退けて、それらの間隔を設定値に維持することができる。
【0036】
そうして上下のベース板10,11同士の間隔が設定値に維持されることで、真空ポンプ3の振動により下ベース板11が最大振幅状態となっても、これが上ベース板10側の部材に接触して振動が直接的に伝達されることはない。また、空気ばね14のばね定数は十分に低くすることができるので、これによる振動の伝達も十分に抑制できる。
【0037】
図3は、この実施形態の防振継手1による振動伝達の抑制効果を実測した試験データを示し、縦軸は、真空チャンバ2の床部20に配設した加速度センサにより検出される振動加速度で、横軸はその周波数を示す。同図に実線のグラフで示すように、空気ばね14を作動させると、それを作動させないとき(破線のグラフ)に比べて加速度が小さくなっており、振動の伝達を抑制できることが分かる。
【0038】
さらに、この実施形態では、防振継手1と一体的に設けられた吊設具によって真空ポンプ3が真空チャンバ2の床部20の下方に吊り下げられているので、その真空ポンプ3の振動は実質、架台5の設置されている床面にも伝わらないようになり、余計な床振動の発生をも防止できる。
【0039】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2に係る防振継手6を示し、この防振継手6は、上述した実施形態1のものと同様に、上下のベース板10,11の間隔を維持するための空気ばね60を備えるもので、この空気ばね60として所謂ダイヤフラム式のものを用いている。尚、それ以外の防振継手6の構造は、実施形態1のものと同じなので、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0040】
そして、この実施形態2の防振継手6において空気ばね60は、図示のように、金属ベローズ13の上端フランジ13aの外周に近接して、上ベース板10の下面から下方に垂下する円環状の上周壁部61と、この上周壁部61の外周から外方に所定間隔を空けて、下ベース板11の上面から上方に延びる円環状の下周壁部62と、この下周壁部62の上端から上周壁部61の下端に架け渡され、それらの間を気密に閉塞して空気室63を区画する円環状のゴム製ダイヤフラム64と、を備えている。
【0041】
前記上周壁部61は、上端面が上ベース板10の下面に接合されて締結され、その上ベース板10とともに空気室63に臨むピストンとして機能する。一方、下周壁部62は、下端面が下ベース板11の上面に接合されて締結され、その下ベース板11とともに空気室63を囲むケースとして機能する。ダイヤフラム64は、内周部が上周壁部61の下端面に接着されて、締付けリング65により挟持される一方、外周部は下周壁部62の上端面に接着されて、締付けリング66により挟持されている。
【0042】
また、図の例では、上周壁部61の外周面に環状の窪み61aが形成されていて、その下側の周面は、下側に向かって外径の拡大するテーパ面とされている。このテーパ面には、図示のようにダイヤフラム64の内外中央部における内周寄りの部分が付着して、空気室63の圧力が作用することになり、このことで、ばね定数を低下させることができる。
【0043】
したがって、この実施形態2の防振継手6によると、まず、空気ばね60をダイヤフラム式のものとしたことで、ベローズ式のものに比べてばね定数を低く設定しやすい上に、空気ばね60のピストンとして機能する上周壁部61の形状に工夫をして、そのばね定数をさらに低下させることができるので、振動伝達の抑制に有利なものである。
【0044】
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3に係る防振継手7を示し、この防振継手7は、上述した実施形態1、2のものとは異なり、上下のベース板10,11同士の間隔を維持するために所謂負圧アクチュエータ70を備えたものである。但し、その点を除いて防振継手7の構造は実施形態1、2のものと概ね同じなので、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0045】
そして、この実施形態3の防振継手7では、図示のように、上下のベース板10の外周から下方に垂下する連結板71,71,…が設けられ、これらの連結板71,71,…がそれぞれ下ベース板11よりも下方に延びて、その下端部が環状の副ベース板72の外周に締結されている。この副ベース板72は、下ベース板11の下方に所定の間隔(図の例では上下のベース板10,11と略同じ間隔)を空けて配置され、その下ベース板11との間に配設された2つの金属ベローズ73,74とともに、円環状の負圧室75を有する負圧アクチュエータ70を構成している。
【0046】
すなわち、前記負圧室75に臨んで開口するように、副ベース板72には負圧導入ポート72aが形成され、外部に開口するそのポート72aの他端には、配管経路4の管部材40から負圧を導入するためのホース部材76が接続されている。また、負圧室75に臨む下ベース板11の下面の面積、即ち、負圧アクチュエータ70の負圧室75の有効面積は、この負圧室75に管部材40からの負圧が導入されて、真空チャンバ2内と同じ大きさの負圧が作用するときに、負圧アクチュエータ70が金属ベローズ13の収縮力と同じだけの引張力を発生するように設定されている。
【0047】
したがって、この実施形態3の防振継手7によると、真空チャンバ2内を減圧するための真空ポンプ3を利用して、負圧アクチュエータ70の負圧室75から排気することができるので、前記実施形態1、2のように空気ばね14、60のための空気圧源を別途、準備する必要がなく、コストのさらなる低減が可能になる。
【0048】
しかも、前記のように負圧室75の有効面積を適切に設定することで、減圧時の金属ベローズ13の収縮を確実に阻止できる。また、仮に真空チャンバ2内の真空度が低い場合には、それよりも大きな負圧を管部材40とは別に真空ポンプ3から負圧室75に導くようにしてもよい。この場合、負圧室75の有効面積は相対的に小さくすることができるので、コンパクト化に有利になる。
【0049】
尚、そうして負圧を調整するのであれば、そのための圧力調整回路を含めて、ホース部材76が、金属ベローズ13内が減圧されるとき、その両端フランジ13a,13b間に発生する収縮力に抗して両者の間隔を維持するように、負圧アクチュエータ70から排気する機械式の給排手段を構成する。よって、実施形態3においてレベリングバルブ18は不用になる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明に係る防振継手の構成は上述した実施形態1〜3に限定されず、その他の種々の構成をも包含する。例えば実施形態1では、空気ばね14のベローズ14aをゴム製の1段のものとしているが、これは2段又は3段のものとしてもよく、或いは金属ベローズを用いることもできる。
【0051】
また、実施形態3では、同心状の2つの金属ベローズ73,74によって、負圧アクチュエータ70の円環状負圧室75を形成しているが、これに限らず、ゴム製ベローズを用いることもできる。また、負圧アクチュエータ70のレイアウトは図示のものに限定されず、それの発生する引張力が金属ベローズ13の収縮力に対向するように位置付ければよい。
【0052】
また、前記各実施形態では、いずれも、防振継手1,6,7と一体的に設けた吊設具によって真空ポンプ3を吊り下げるようにしているが、これに限らず真空ポンプ3は、ロッド16及び載置台17なしで配管部材40に直接、懸架させることもできるし、或いは、床面に設置することもできる。さらに、配管経路4の構成、レイアウトも各実施形態のものに限定されず、例えば配管経路4は横向きであってもよいし、屈曲していてもよい。
【0053】
さらにまた、図示は省略するが、前記各実施形態において金属ベローズ13の外周に防振ゴム等の減衰材を巻き付けて、減衰を付与するようにすれば、金属ベローズ13の共振を抑えることができ、振動の伝達を抑制する上でさらに有利になる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上の如く本発明に係る防振継手は、簡単な構造で低コストでありながら、振動の伝達を十分に抑制できるものであり、特に真空チャンバのように減圧容器内が高度の減圧状態となるものに適している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る防振継手の一使用態様を示す構成図である。
【図2】実施形態1の防振継手の構造を示す部分断面図である。
【図3】同防振継手による振動伝達の抑制効果を示すグラフ図である。
【図4】実施形態2に係る図2相当図である。
【図5】実施形態3に係る図2相当図である。
【符号の説明】
【0056】
1 防振継手
2 真空チャンバ(減圧容器)
3 真空ポンプ(加振源となる機器)
4 配管経路
10 上ベース板
11 下ベース板
13 金属ベローズ
13a、13b フランジ
14 ベローズ式空気ばね(空気圧アクチュエータ)
14b 空気室(圧力室)
18 レベリングバルブ(機械式給排手段)
6 ダイヤフラム式空気ばね(空気圧アクチュエータ)
63 空気室(圧力室)
7 負圧アクチュエータ(空気圧アクチュエータ)
71 上周壁部(ピストン)
71a テーパ面(傾斜面)
73 負圧室(圧力室)
74 ダイヤフラム
76 ホース部材(機械式給排手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振対象物の収容される減圧容器と、加振源となる機器との間の配管経路に設けられて振動の伝達を抑制する防振継手であって、
前記配管経路の一部を構成する金属ベローズと、
前記金属ベローズ両端のフランジ間に力を加えるように設けられた空気圧アクチュエータと、
前記金属ベローズ内が減圧されるとき、その両端フランジ間に発生する収縮力に抗して両者の間隔を維持するように、前記空気圧アクチュエータに対し空気の給排を行う機械式の給排手段と、
を備えることを特徴とする防振継手。
【請求項2】
空気圧アクチュエータが負圧アクチュエータであり、
吸排機構は、減圧容器内を減圧するのと同じ負圧源によって空気圧アクチュエータから排気するものである、請求項1に記載の防振継手。
【請求項3】
空気圧アクチュエータがダイヤフラム式の空気ばねからなり、ダイヤフラムの付着するピストンの周面には、圧力室側の端面に近づくほど外形の拡大する傾斜面が形成されている、請求項1又は2のいずれかに記載の防振継手。
【請求項4】
空気圧アクチュエータは、環状の圧力室を有し、それが金属ベローズと略同心状に配置されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の防振継手。
【請求項5】
金属ベローズの外周に減衰材が巻き付けられている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の防振継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−97673(P2009−97673A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271652(P2007−271652)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】