説明

防振脚体及び防振台

【課題】荷重変動により柔軟に緩衝動作が行われ、長いストロークに亘って安定したバネ定数が得られる防振脚体及び防振台を提供する。
【解決手段】支持体である床Bと、被支持体である機器類Aとの間の振動の伝達を抑制するため、緩衝機構として、空気の弾力性を利用した空気バネ7を備えた防振脚体2において、空気バネ7には、減圧により被支持体を上昇させる方向の引張力を付与し、また、環状溝に環状の防振ゴム12を嵌め込んだゴム緩衝部5,6を備える。そして、防振脚体2を複数本配置して、これらの防振脚体2により機器類Aの載置板3を支持した防振台1を構成する。荷重の増大に伴い、空気が圧縮されるのではなく、引き伸ばされて減圧されるので、長いストロークに亘って安定的かつ柔軟に緩衝され、また、ゴム緩衝部5,6の防振ゴム12によって方向性なく緩衝され、自己位置復元性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被支持体である各種機器類と、支持体である床等との間の振動の伝達を抑制する防振脚体及びその防振脚体を使用した防振台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンプレッサ、真空ポンプ、ブロアユニット等の各種機器類を支持する防振脚体として、例えば、下記特許文献1に示すように、空気の導入に伴い加圧した空気の弾力性を利用する空気バネを備えたものが知られている。
【0003】
また、下記特許文献2では、各種機器類等側に固定される内部材と、床側に固定される外部材とに環状溝をそれぞれ形成し、この環状溝に環状ゴムを嵌め込み、ゴムの弾力により振動を吸収するゴム緩衝式の防振脚体が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−71348号公報
【特許文献2】特開2006−38009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、加圧した空気の弾力を利用するものでは、大きな荷重を受けると、空気が強く圧縮されて緩衝動作が硬くなり、また、ストロークに伴いバネ定数が大きく変化するという問題がある。
【0006】
また、ゴム緩衝式のものでは、ストロークが確保できず、各種機器類を支持する脚体としての緩衝性が十分でない場合がある。
【0007】
そこで、この発明は、荷重変動により柔軟に緩衝動作が行われ、長いストロークに亘って安定したバネ定数が得られる防振脚体及び防振台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、支持体と被支持体との間の振動の伝達を抑制するため、緩衝機構として、空気の弾力性を利用した空気バネを備えた防振脚体において、前記空気バネには、減圧により被支持体を上昇させる方向の引張力を付与したのである。
【0009】
また、前記緩衝機構として、空気バネに加えて、内部材と外部材の環状溝に環状の防振ゴムを嵌め込んだゴム緩衝部を備えたのである。
【0010】
さらに、前記防振脚体を複数本配置して、これらの防振脚体により機器類の載置板を支持した防振台を構成したのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る防振脚体では、緩衝機構である空気バネが加圧された空気ではなく、減圧により付与された上昇方向の引張力で被支持体の荷重を支持し、荷重の増大に伴い、空気が圧縮されるのではなく、引き伸ばされて減圧されるようにしているので、振動で大きな荷重が作用しても緩衝動作が硬くならず、長いストロークに亘って安定したバネ定数が得られる。
【0012】
また、上記のような空気バネに加えて、環状の防振ゴムによるゴム緩衝部を備えると、全方向の振動に対応することができ、軸心に対して自己位置復元性を有するものとなるほか、特性の異なる防振ゴムの交換により、幅広い荷重や周波数に対応できるものとなる。
【0013】
そして、上記のような複数本の防振脚体で載置板を支持した防振台を構成し、載置板に各種機器を固定して支持すると、優れた防振性を得ることができ、機器類は振動しても自動的に所定位置に復帰する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、この発明に係る防振台1においては、4本の防振脚体2が各隅部に配置され、各種機器類が載置される載置板3と、床側に置かれる基板4とが防振脚体2を挟んで設けられている。
【0016】
防振脚体2は、図3及び図4に示すように、上下一対のゴム緩衝部5,6の間に、空気バネ7を備えたものとされている。
【0017】
上方のゴム緩衝部5は、内部材8及び外部材9を形成する外環10,11と、環状の防振ゴム12とから構成され、下方のゴム緩衝部6は、内部材13及び外部材9を形成する外環10,11と、環状の防振ゴム12とから構成されている。防振ゴム12は、内周側及び外周側の上下各面が傾斜した四角形断面とされている。
【0018】
上方のゴム緩衝部5の内部材8は、円筒状軸部の外周上部にV字形断面の環状溝8aを設け、中心に軸方向のボルトの挿通穴8bを貫通させ、その上部に座ぐり部8cを、下部にピストンロッドの嵌合部8dをそれぞれ設けたものとされている。
【0019】
外部材9の一方の外環10は、内周に傾斜面10aを設け、ボルトの挿通穴10bと、ねじ穴10cとを周方向に4個ずつ配置し、挿通穴10bの入口の周囲に座ぐり部10dを設けたものとされ、他方の外環11は、内周に傾斜面11aを設け、ねじ穴11bを周方向に4個配置したものとされている。
【0020】
下方のゴム緩衝部6の内部材13は、円筒状軸部の下部にV字形断面の環状溝13aを設け、上部に大径の基台部13bを形成し、基台部13bにねじ穴13cを周方向に4個配置したものとされている。
【0021】
空気バネ7は、シリンダ7a内にピストン7bをスライド自在に設け、ピストン7bから延びるピストンロッド7cを使用時に上端となる面から突出させ、ピストンロッド7cの端面にねじ穴7dを形成し、シリンダ7aの側壁に2個のポート7e、7fを設け、縦方向にボルトの挿通穴7gを形成したものとされている。
【0022】
いま、上方のゴム緩衝部5を組み立てるには、内部材8の環状溝8aに防振ゴム12の内周側を嵌め、外環10の座ぐり部10dが上面となるように外環10,11を重ねて、防振ゴム12を挟み込むと、傾斜面10a,11aにより形成されたV字形断面の環状溝9aに防振ゴム12の外周側が嵌まり込むので、この状態で、ボルト15を挿通穴10bを介しねじ穴11bにねじ込み、外環10,11を一体化し、ボルト15の頭部を座ぐり部10dに没入させる。
【0023】
また、下方のゴム緩衝部6を組み立てるには、内部材13の円筒状軸部を外環11に挿通して、内部材13の環状溝13aに防振ゴム12の内周側を嵌め、外環10の座ぐり部10dが下面となるように外環10,11を重ねて、防振ゴム12を挟み込むと、傾斜面10a,11aにより形成されたV字形断面の環状溝9aに防振ゴム12の外周側が嵌まり込むので、この状態で、ボルト15を挿通穴10bを介しねじ穴11bにねじ込み、外環10,11を一体化し、ボルト15の頭部を座ぐり部10dに没入させる。
【0024】
そして、防振脚体2を組み立てるには、下方のゴム緩衝部6から立ち上がる内部材13の基台部13bに空気バネ7を載せて、ボルト16を挿通穴7gを介しねじ穴13cにねじ込むことにより、空気バネ7を基台部13bに固定する。
【0025】
その後、上方のゴム緩衝部5の内部材8の下面で開口した嵌合部8dに空気バネ7のピストンロッド7cの上端部を嵌合させ、ボルト14を挿通穴8bを介してねじ穴7dにねじ込むことにより、ゴム緩衝部5をピストンロッド7cに固定し、ボルト14の頭部を座ぐり部8cに没入させる。
【0026】
このように組み立てた防振脚体2を使用して防振台1を組み立てるには、図1及び図2に示すように、基板4の下面四隅にそれぞれゴム脚17を取り付けておき、基板4の上面四隅に形成した円形の凹部にそれぞれ防振脚体2の下部を嵌め込み、ボルト18を基板4の挿通穴4aを介してねじ穴10cにねじ込むことにより、基板4に防振脚体2の下部を固定し、ボルト18の頭部を基板4の座ぐり部4bに没入させる。
【0027】
次に、載置板3の下面四隅に形成した円形の凹部にそれぞれ防振脚体2の上部を嵌め込み、ボルト18を載置板3の挿通穴3aを介してねじ穴10cにねじ込むことにより、防振脚体2の上部に載置板3を固定し、ボルト18の頭部を載置板3の座ぐり部3bに没入させると、防振台1が完成する。
【0028】
このような防振台1を、支持体である床Bに設置して、防振台1により被支持体である機器類Aを支持する際には、空気バネ7の上方のポート7eに、ポンプに至る通気管19を接続し、載置板3に載せた機器類Aを、載置板3のねじ穴3cにねじ込んだボルト20により固定する。なお、空気バネ7の下方のポート7fは、開放しておく。
【0029】
この状態で、通気管19に接続されたポンプを駆動して、空気バネ7のポート7eを介して、シリンダ7a内におけるピストン7bより上方の空間の空気を吸引し、この空間を減圧すると、ピストン7bには、ポート7fを介して下方から大気圧が作用していることから、上下の圧力差により、上昇方向の引張力が付与され、この引張力と機器類Aの荷重とが釣り合って、機器類Aが支持される。
【0030】
そして、機器類Aの振動に伴い、荷重が増大すると、ピストン7bが下降して、ピストン7bより上方の空間の空気が弾力的に引き伸ばされ、荷重が減少すると、その反発でピストン7bが上昇する動作が繰り返されて、機器類Aの振動は、空気バネ7により吸収されると共に、ゴム緩衝部5,6の防振ゴム12の伸縮によっても吸収され、床Bへの振動の伝達が抑制される。
【0031】
なお、このとき、防振ゴム12の伸縮を妨げる圧力変動が生じないように、載置板3及び基板4には、それぞれ防振ゴム12の上方及び下方に、外部に連通した開放空間21が形成されている。
【0032】
このように、上記防振脚体2では、緩衝機構である空気バネ7が加圧された空気ではなく、減圧により付与された上昇方向の引張力で被支持体である機器類Aの荷重を支持し、荷重の増大に伴い、空気が圧縮されるのではなく、引き伸ばされて減圧されるようにしているので、振動で大きな荷重が作用しても緩衝動作が硬くならず、長いストロークに亘って安定したバネ定数が得られる。
【0033】
また、この防振脚体2には、上記のような空気バネ7に加えて、環状の防振ゴム12によるゴム緩衝部5,6を備えているので、全方向の振動に対応することができ、防振ゴム12によって、捻り、剪断及び圧縮の応力分散効果が得られる。
【0034】
さらに、防振脚体2は、軸心に対して自己位置復元性を有するものとなり、防振台1において、載置板3に載置した機器類Aは、振動しても自動的に所定位置に復帰する。
【0035】
また、この防振脚体2のゴム緩衝部5,6では、防振ゴム12を接着していないことから、現場で外環10,11を分離させ、硬度や大きさ等の特性の異なる防振ゴム12に交換することにより、幅広い荷重や周波数に対応することができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、防振ゴム12として、内周側及び外周側の上下各面が傾斜した四角形断面のものを使用したが、防振ゴム12には、内周側及び外周側が垂直で上下各面が水平となった四角形断面のものや、円形断面のものを使用して、環状溝8a,9aをこれに対応する形状としても、ほぼ同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明に係る防振脚体を備えた防振台の構造を示す概略縦断面図
【図2】同上の概略平面図
【図3】同上の防振脚体の構造を示す概略縦断面図
【図4】同上の分解斜視図
【符号の説明】
【0038】
1 防振台
2 防振脚体
3 載置板
3a 挿通穴
3b 座ぐり部
3c ねじ穴
4 基板
4a 挿通穴
4b 座ぐり部
5,6 ゴム緩衝部
7 空気バネ
7a シリンダ
7b ピストン
7c ピストンロッド
7d ねじ穴
7e,7f ポート
7g 挿通穴
8 内部材
8a 環状溝
8b 挿通穴
8c 座ぐり部
8d 嵌合部
9 外部材
9a 環状溝
10 外環
10a 傾斜面
10b 挿通穴
10c ねじ穴
10d 座ぐり部
11 外環
11a 傾斜面
11b ねじ穴
12 防振ゴム
13 内部材
13a 環状溝
13b 基台部
13c ねじ穴
14,15,16 ボルト
17 ゴム脚
18 ボルト
19 通気管
20 ボルト
21 開放空間
A 機器類(被支持体)
B 床(支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と被支持体との間の振動の伝達を抑制するため、緩衝機構として、空気の弾力性を利用した空気バネを備えた防振脚体において、前記空気バネには、減圧により被支持体を上昇させる方向の引張力を付与したことを特徴とする防振脚体。
【請求項2】
前記緩衝機構として、空気バネに加えて、内部材と外部材の環状溝に環状の防振ゴムを嵌め込んだゴム緩衝部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の防振脚体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防振脚体を複数本配置して、これらの防振脚体により機器類の載置板を支持したことを特徴とする防振台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−267447(P2008−267447A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108936(P2007−108936)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(591222083)株式会社枚方技研 (8)
【Fターム(参考)】