説明

防水構造体

【課題】漏水時に漏水箇所の特定が容易でかつ止水性を確保することができる防水構造体を得る。
【解決手段】複数の防水鋼板14A、14Bは、端部同士が重ね合わせられて配置され、防水対象物12を覆う。防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16に沿って配置された防水シート24は、隣り合う防水鋼板14A、14Bの各表面に端部が固着されている。防水鋼板14Bの端部側には第一膨張性シール材26が設けられており、第一膨張性シール材26は、防水シート24によって覆われる範囲に配置され、膨張時に防水シート24を押上げる。また、防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16において防水鋼板14A、14B同士の間には、第二膨張性シール材28が配置され、第二膨張性シール材28は、膨張時に上下の防水鋼板14A、14Bに圧着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水パネル及び防水シートを備えた防水構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
防水構造としては、例えば、建築物の外装、内装或いは設備機器を構成する各種パネル間の目地において、シーリング材とバックアップ材との間に水膨張性シ−ル材が配置される構造がある(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、漏水時に水膨張性シ−ル材を膨張させることで、水膨張性シ−ル材と目地側面との隙間の密封化を図ろうとしており、同時にシーリング材を押上げて漏水箇所の発見を容易にしようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−248243公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構造では、所定の硬さを有するシーリング材を水膨張性シ−ル材の膨張時に目地から押上げるのは難しく、水膨張性シ−ル材が反対側のバックアップ材のみを押し出してしまう可能性が高い。また、漏水時にシーリング材を目地から押上げるために膨張率の高い素材を水膨張性シ−ル材に用いた場合には、水膨張性シ−ル材の膨張によって目地の形成部位を大きく変形させてしまい、却って浸水経路を形成しかねない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、漏水時に漏水箇所の特定が容易でかつ止水性を確保することができる防水構造体を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の防水構造体は、端部同士が重ね合わせられて配置され、防水対象物を覆う複数の防水パネルと、前記防水パネルの重ね合わせ部に沿って配置され、隣り合う一方の防水パネルの表面に一端が固着されると共に隣り合う他方の防水パネルの表面に他端が固着された防水シートと、前記防水パネルの端部側でかつ前記防水シートによって覆われる範囲に配置され、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成されると共に、膨張時に前記防水シートを押上げる第一膨張性シール材と、前記防水パネルの重ね合わせ部において前記防水パネル同士の間に配置され、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成され、膨張時に上下の前記防水パネルに圧着される第二膨張性シール材と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の防水構造体によれば、複数の防水パネルは、端部同士が重ね合わせられて配置され、防水対象物を覆う。防水パネルの重ね合わせ部に沿って配置された防水シートは、隣り合う一方の防水パネルの表面に一端が固着されると共に隣り合う他方の防水パネルの表面に他端が固着されている。このため、防水シートによって防水パネル間からの水の浸入が抑えられる。
【0008】
ここで、防水パネルの端部側に設けられた第一膨張性シール材は、防水シートによって覆われる範囲に配置され、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成されると共に、膨張時に防水シートを押上げる。このため、防水シートが切れて防水シートに降り注いだ雨水等の水が漏水した場合には、浸入した水に接触した第一膨張性シール材が膨張して防水シートを押上げ、押上げられた防水シートが膨らむ。従って、外部から防水シートの膨らみが目視にて容易に確認可能となり、漏水箇所の特定が容易になる。
【0009】
また、防水パネルの重ね合わせ部において防水パネル同士の間には第二膨張性シール材が配置され、当該第二膨張性シール材は、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成され、膨張時に上下の防水パネルに圧着される。このため、防水パネル同士の間に水が浸入した場合には、浸入した水に接触した第二膨張性シール材が膨張して上下の防水パネルに圧着されるので、防水パネル同士の間から防水対象物側への水の浸入が阻止される。
【0010】
請求項2に記載する本発明の防水構造体は、請求項1記載の構成において、前記防水パネルは、水勾配に沿って配置されると共に、水勾配の上流側の防水パネルにおける端部が、水勾配の下流側の防水パネルにおける端部の上に重ね合わせられて配置されている。
【0011】
請求項2に記載する本発明の防水構造体によれば、防水パネル同士の間に水が浸入して第二膨張性シール材が膨張し、その表面側に位置する水勾配の上流側の防水パネルにおける端部が第二膨張性シール材の膨張によって押上げられた場合、水勾配の上流側の防水パネルは水勾配の上流側が低くなるように傾斜する。よって、水勾配の上流側の水が防水パネル同士の間に流れ込むのを抑えられる。
【0012】
請求項3に記載する本発明の防水構造体は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第二膨張性シール材は、前記防水パネルを前記防水対象物に固定するための締結手段を覆う位置を含む位置に配置されている。
【0013】
請求項3に記載する本発明の防水構造体によれば、締結孔からの水の浸入が効果的に抑えられる。
【0014】
請求項4に記載する本発明の防水構造体は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記第一膨張性シール材は、前記防水シートと前記防水パネルとの間に配置されている。
【0015】
請求項4に記載する本発明の防水構造体によれば、防水シートが切れて水が浸入した場合、第一膨張性シール材は、水に接触して膨張し、その表面側に位置する防水シートを押上げて膨らませる。このため、漏水箇所の特定がさらに容易になる。
【0016】
請求項5に記載する本発明の防水構造体は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記第一膨張性シール材が間隔をおいて複数配置されている。
【0017】
請求項5に記載する本発明の防水構造体によれば、複数箇所で漏水があった場合、複数箇所で第一膨張性シール材が膨張し、それらの第一膨張性シール材は、防水シートを押上げて膨らませる。このため、複数箇所において漏水箇所の特定が容易になる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の防水構造体によれば、漏水時に漏水箇所の特定が容易でかつ止水性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2に記載の防水構造体によれば、水勾配の上流側の水が防水パネル同士の間に流れ込むのを抑えることができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3に記載の防水構造体によれば、締結孔からの水の浸入を効果的に抑えることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4に記載の防水構造体によれば、漏水箇所の特定をより一層容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5に記載の防水構造体によれば、複数箇所の漏水の特定を容易にすることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る防水構造体を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る防水構造体を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の作用を説明するための説明図である。図3(A)は、第一膨張性シール材が膨張した状態を示す断面図である。図3(B)は、図3(A)の状態からさらに第二膨張性シール材が膨張した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る防水構造体を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る防水構造体を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係り、第一膨張性シール材が膨張した状態を示す断面図である。
【図7】参考例に係る防水構造体を示す断面図である。
【図8】参考例に係り、膨張性シール材が膨張した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る防水構造体について図1〜図3を用いて説明する。
【0025】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る防水構造体10が断面図にて示され、図2には、防水構造体10が分解斜視図にて示されている。図1に示されるように、防水構造体10は、防水対象物12上に配設されている。なお、防水対象物12は、例えば建物の屋上(屋根)もしくはバルコニー等に配置される断熱材や床板等である。
【0026】
図1及び図2に示されるように、防水構造体10は、防水対象物12を覆う複数の防水パネルとしての防水鋼板14A、14Bを備えている。なお、図中では、防水鋼板14A、14Bが二枚図示されているが、枚数がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。また、防水鋼板14A、14Bは、本実施形態では塩化ビニル系樹脂をコーティングした塗装鋼板(所謂、塩ビ鋼板)とされている。
【0027】
図1に示されるように、複数の防水鋼板14A、14Bは、端部同士が重ね合わせられて配置されている。より具体的には、防水鋼板14A、14Bは、水勾配に沿って配置されると共に、水勾配の上流側(図1では右側)の防水鋼板14Aにおける端部が、水勾配の下流側(図1の左側)の防水鋼板14Bにおける端部の上に重ね合わせられて配置されている。
【0028】
防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16において、下側に配置された防水鋼板14Bの端部には、上側が開口した断面矩形状の溝部18が形成されている。溝部18は、長尺状とされて防水鋼板14Bの端末まで延びている(図2参照)。この溝部18には、防水鋼板14Bを防水対象物12に固定するための締結手段としてのビス22が溝部18の延在方向に所定間隔をおいて配置されている。なお、締結手段はビス22に代えてボルト等であってもよい。ビス22は、溝部18の底部を貫通して防水対象物12の取付部側に螺合されている。
【0029】
また、防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16(換言すればジョイント部分)に沿って(図1の紙面直角な方向に沿って)帯状の防水シート24(増し張りシート、防水層)が配置されている。防水シート24は、隣り合う一方の防水鋼板14Aの表面に一端24A(幅方向一方の端部)が接着により固着されると共に、隣り合う他方の防水鋼板14Bの表面に他端24B(幅方向他方の端部)が接着により固着されている。防水シート24は、その材質としては塩化ビニル系樹脂シート等が適用可能である。
【0030】
防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16において、下側に配置された防水鋼板14Bの端部側には、第一膨張性シール材26が設けられて防水シート24によって覆われる範囲に配置されている。本実施形態では、第一膨張性シール材26は、重ね合わせ部16で上側に配置された防水鋼板14Aによっては覆われておらず、防水シート24と防水鋼板14Bとの間に配置されており、防水シート24を押圧可能な位置に設定されている。第一膨張性シール材26は、防水鋼板14Aと防水鋼板14Bとの段差部25に沿って(図1の紙面直角な方向に沿って)延在しており、水との接触により膨張する膨張材、例えば、高分子吸収体や吸収性ポリマー等を含んで構成され、膨張時に防水シート24を押上げるようになっている。
【0031】
また、防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16において防水鋼板14A、14B同士の間には、第二膨張性シール材28が配置されている。第二膨張性シール材28は、防水鋼板14Bの溝部18内に設けられてビス22を覆う位置を含む位置に配置され、溝部18に沿って延在している。第二膨張性シール材28は、水との接触により膨張する膨張材、例えば、高分子吸収体や吸収性ポリマー等を含んで構成され、膨張時に上下の防水鋼板14A、14Bに圧着されるようになっている。ここで、第二膨張性シール材28には、第一膨張性シール材26に比べて発泡倍率(膨張率)が低い素材が適用されている。
【0032】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
図1に示される状態は、防水シート24に破損が生じていない状態である。この状態では、雨水等は、防水鋼板14A、14B及び防水シート24によって止水(一次止水)される。この状態から、経年劣化又は防水シート24に何らかの負荷がかかる等により、防水シート24に想像線で示す破損箇所20が生じると、当該破損箇所20から雨水等が浸入する。なお、防水鋼板14A、14Bが破損することは通常考えられないので、防水構造体10で漏水の可能性がある部分は、ジョイント部分に設けられた防水シート24の部分である。
【0034】
図3(A)に示されるように、破損箇所20から雨水等が第一膨張性シール材26に接触して吸収されると、第一膨張性シール材26が膨張してその表面側となる防水シート24の破損箇所周囲部24Cが押上げられて膨らむ。ここで、第一膨張性シール材26には、第二膨張性シール材28に比べて発泡倍率(膨張率)が高い素材が適用されており、防水シート24の破損箇所周囲部24Cを十分に膨らませることができる。従って、外部から防水シート24の破損箇所周囲部24Cの膨らみが目視にて容易に確認される。また、防水シート24が膨らんだ箇所、即ち破損箇所周囲部24Cが漏水箇所そのものであるので、漏水箇所の特定も容易である。すなわち、本実施形態の防水構造体10は、自ら漏水のアラート機能(明示機能)を備えているといえる。
【0035】
また、第一膨張性シール材26は、膨張によって防水層を形成して雨水等を止水(二次止水)することにもなるが、浸水が進行して防水鋼板14A、14B同士の間に雨水等が浸入した場合には、図3(B)に示されるように、雨水等が第二膨張性シール材28に接触して吸収される。これによって、第二膨張性シール材28が膨張すると、第二膨張性シール材28は、上下の防水鋼板14A、14Bに圧着されるので、防水鋼板14A、14B同士の間が止水(三次止水)され、防水鋼板14A、14B同士の間から防水対象物12側への雨水等の浸入が阻止される(止水機能の発揮)。ここで、第二膨張性シール材28には、第一膨張性シール材26に比べて発泡倍率(膨張率)が低い素材が適用されているので、防水鋼板14Aは過度に持ち上げられずに済む。
【0036】
また、本実施形態に係る防水構造体10では、防水鋼板14A、14Bは、水勾配に沿って配置されると共に、水勾配の上流側の防水鋼板14Aにおける端部が、水勾配の下流側の防水鋼板14Bにおける端部の上に重ね合わせられて配置されている。このため、防水鋼板14A、14B同士の間に雨水等が浸入して第二膨張性シール材28が膨張し、その表面側に位置する水勾配の上流側の防水鋼板14Aにおける端部が第二膨張性シール材28の膨張によって押上げられた場合、防水鋼板14Aは水勾配の上流側が低くなるように傾斜する。よって、水勾配の上流側の雨水等が防水鋼板14A、14B同士の間に流れ込むのを抑えることができ、漏水による被害を抑制できる。
【0037】
また、本実施形態に係る防水構造体10では、第二膨張性シール材28は、防水鋼板14A、14Bを防水対象物12に固定するためのビス22を覆う位置を含む位置に配置されている。このため、ビス孔18A(締結孔)からの雨水等の浸入が効果的に抑えられる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る防水構造体10によれば、漏水時に漏水箇所の特定が容易でかつ止水性を確保することができる。また、本実施形態では、漏水箇所を明示する目視優先箇所に第一膨張性シール材26を配置すると共に、止水優先箇所に第二膨張性シール材28を配置する構成にすることで、第一膨張性シール材26及び第二膨張性シール材28には、それぞれ必要とされる機能に応じた素材を選択することができるので、機能の充実を容易に図ることができる。
【0039】
また、図3(A)に示される第一膨張性シール材26が膨張した状態でかつ第二膨張性シール材28が膨張していない状態で、メンテナンスすれば、第一膨張性シール材26及び防水シート24を交換するだけで済むので、メンテナンス性が良い。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る防水構造体30について、図4を用いて説明する。なお、第2の実施形態は、以下に説明する点を除いて第1の実施形態と同様の構造となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図4には、本発明の第2の実施形態に係る防水構造体30が平面図にて示されている。この図に示されるように、防水構造体30は、防水鋼板14Aと防水鋼板14Bとの段差部25に沿って第一膨張性シール材32が間隔をおいて複数配置されている。これらの第一膨張性シール材32は、間隔をおいて配置されている点を除いて、第1の実施形態における第一膨張性シール材26(図1参照)と同様の構成とされている。
【0042】
すなわち、第一膨張性シール材32は、防水鋼板14Bの端部側でかつ防水シート24によって覆われる範囲において、防水シート24と防水鋼板14Bとの間に配置されており、防水シート24を押圧可能な位置に設定されている。第一膨張性シール材32は、水との接触により膨張する膨張材、例えば、高分子吸収体や吸収性ポリマー等を含んで構成されると共に、膨張時に防水シート24を押上げるように設定されている。
【0043】
本実施形態によれば、漏水時に止水しながら漏水箇所を容易に特定することができ、複数箇所で漏水があった場合には、複数箇所で第一膨張性シール材32がそれぞれ膨張して防水シート24を膨らませることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、第一膨張性シール材32同士の間が空間となっているが、第一膨張性シール材32同士の間に別途隙詰め部材を配設するような構成としてもよい。
【0045】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る防水構造体40について、図5及び図6を用いて説明する。図5には、本発明の第3の実施形態に係る防水構造体40が断面図にて示され、図6には、防水構造体40の防水シート24が切れて水が浸入した状態が断面図にて示されている。
【0046】
これらの図に示されるように、防水構造体40は、防水パネルとしての防水鋼板14Cに第2の溝部42が形成され、この溝部42内に第一膨張性シール材44及び止水ピース46が配設されている点で、第1の実施形態に係る防水構造体10(図1参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図5に示されるように、防水鋼板14Cは、溝部42が形成されている点を除いて第1の実施形態における防水鋼板14B(図1参照)と同様の構成でかつ同様の位置に配置されている。防水鋼板14Cに形成された溝部42は、溝部18に対して防水鋼板14Cの端末側(図中右端側)とは反対側に隣接して設けられ、平面視で溝部18と平行に延在している。溝部42の開口幅は溝部18の開口幅に比べて大きく設定されており、溝部42における溝部18側の開口は、防水鋼板14Aによって一部塞がれている。また、溝部42における溝部18側の側壁42Aは、下方側は向けて溝部18側とは反対側に傾斜している。
【0048】
溝部42の底壁42Bにおける側壁42A側の部位、及び側壁42A上には、合成ゴム製の止水ピース46が配置されている。止水ピース46は、底壁42B上に配置される部位が厚く、側壁42A上に配置される側が先端側に至るに従って薄くなるように形成されており、上面が防水シート24及び防水鋼板14Aに接すると共に、下面が底壁42B及び側壁42Aに接している。換言すれば、止水ピース46の先端側は、防水鋼板14Aと溝部42の側壁42Aとの間に差し込まれている。
【0049】
また、止水ピース46における底壁42B上に配置される部位の側面は、第一膨張性シール材44に接している。第一膨張性シール材44は、防水シート24と防水鋼板14Cの溝部42の底壁42Bとの間に挟まれように配置されることで、防水シート24を押圧可能な位置に設定されると共に、止水ピース46側とは反対側の側面が溝部42の側壁42Cに接している。第一膨張性シール材44は、配置位置及び上下方向の厚さが厚い点を除いて、第1の実施形態における第一膨張性シール材26(図1参照)と同様の構成とされている。すなわち、第一膨張性シール材44は、防水鋼板14Cの端部側でかつ防水シート24によって覆われる範囲に配置されて第二膨張性シール材28と平行に延在し、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成されると共に、膨張時に防水シート24を押上げるようになっている。
【0050】
なお、本実施形態では、第一膨張性シール材44が第二膨張性シール材28と平行に延在しているが、第一膨張性シール材44に代えて、第2の実施形態(図4参照)と同様に、第二膨張性シール材28と平行な方向に沿って間隔をおいて配置された複数の第一膨張性シール材を設けてもよい。
【0051】
(作用・効果)
本実施形態によれば、防水シート24に想像線で示す破損箇所20が生じた場合には、第1の実施形態と同様の作用により、図6に示されるように、第一膨張性シール材44が膨張してその表面側となる防水シート24の破損箇所周囲部24Cが押上げられて膨らむ。また、第一膨張性シール材44が膨張すると、止水ピース46が第一膨張性シール材44によって側壁42A側(矢印A方向)へ押圧される。これによって、止水ピース46と防水鋼板14A側との隙間、及び止水ピース46と側壁42A側との隙間が密閉化され、溝部18側へ流れ込もうとする雨水等が止水(二次止水)される。また、溝部42は側壁42Aが傾斜しているため、溝部42に侵入した雨水等は、溝部18側へよりも底壁42B側、換言すれば第一膨張性シール材44側へ流れ易い。
【0052】
なお、浸水が進行して防水鋼板14A、14C同士の間に雨水等が浸入した場合には、第1の実施形態と同様に、第二膨張性シール材28によって雨水等が止水(三次止水)される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の構成によっても、漏水時に漏水箇所の特定が容易でかつ止水性を確保することができる。
【0054】
なお、本発明の実施形態ではなく参考例として、例えば、第3の実施形態における防水鋼板14Cの溝部18に代えて平坦部が形成されると共に第二膨張性シール材28が配設されないような構成も採り得る。
【0055】
[第4実施形態]
次に、第4の実施形態について、図7及び図8を用いて説明する。第4の実施形態は、本発明の実施形態ではなく参考例である。なお、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図7に示されるように、防水鋼板14A、14Bの重ね合わせ部16において防水鋼板14A、14B同士の間には、膨張性シール材50が配置されている。膨張性シール材50は、防水鋼板14Bの溝部18内に設けられてビス22を覆う位置を含む位置に配置されている。膨張性シール材50は、水との接触により膨張する膨張材、例えば、高分子吸収体や吸収性ポリマー等を含んで構成されている。膨張性シール材50は、第1、第3の実施形態における第二膨張性シール材28(図1、図5等参照)に比べて膨張率が高い膨張材が用いられている。
【0057】
本実施形態によれば、防水シート24に想像線で示す破損箇所20が生じた場合には、図8に示されるように、膨張性シール材50が膨張してその表面側となる防水鋼板14Aに強く押し付けられて圧着される。これによって、防水層が形成されつつ、防水鋼板14A及び防水シート24が押上げられ、防水シート24の表面の段差が大きくなる。すなわち、漏水時の止水がなされながら漏水箇所の特定が可能となる。
【0058】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、図1等に示される防水鋼板14A、14B、14Cは、水勾配に沿って配置されると共に、水勾配の上流側の防水鋼板14Aにおける端部が、水勾配の下流側の防水鋼板14B、14Cにおける端部の上に重ね合わせられて配置されており、水勾配の上流側の水が防水鋼板14A、14B、14C同士の間に流れ込むのを抑える観点からはこのような構成がより好ましいが、防水パネルは、水勾配に沿って配置されたものでなくてもよいし、水勾配の下流側の防水パネルにおける端部が、水勾配の上流側の防水パネルにおける端部の上に重ね合わせられて配置されてもよい。
【0059】
また、上記第1〜第3の実施形態では、第二膨張性シール材28は、防水対象物12に固定するためのビス22を覆う位置を含む位置に配置されており、ビス孔18Aからの水の浸入を効果的に抑える観点からはこのような構成がより好ましいが、第二膨張性シール材の配置位置は、防水対象物に固定するための締結手段を覆う位置を含んでいなくてもよい。
【0060】
また、上記第1〜第3の実施形態では、第一膨張性シール材26、32、44は、防水シート24と防水鋼板14A、14Cとの間に配置されており、このような構成が防水シート24をより効率的に押上げる観点からは好ましいが、第一膨張性シール材は、例えば、防水パネルの端部側でかつ防水シートによって覆われる範囲であって上下の防水パネル同士の間に配置され、かつ防水シートの下面に臨む中空部に通じる位置に設定されてもよい。
【0061】
さらに、上記第1〜第3の実施形態では、第一膨張性シール材26、32、44は、膨張材が水との接触により膨張するようになっているが、第一膨張性シール材は、この膨張材に加えて、水との接触により硬化する硬化材を含んでいてもよい。硬化材としては、セメントや水硬化性ポリウレタン樹脂等が適用可能である。この場合、漏水時には硬化材も水と反応することになるので、破損箇所20に対応した第一膨張性シール材26、32、44は膨らんだ状態のまま硬くなる。このため、破損箇所20に対応した第一膨張性シール材26、32、44が膨らんだ状態を、その状態のまま保全することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 防水構造体
12 防水対象物
14A 防水鋼板(防水パネル)
14B 防水鋼板(防水パネル)
14C 防水鋼板(防水パネル)
16 重ね合わせ部
22 ビス(締結手段)
24 防水シート
26 第一膨張性シール材
28 第二膨張性シール材
30 防水構造体
32 第一膨張性シール材
40 防水構造体
44 第一膨張性シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部同士が重ね合わせられて配置され、防水対象物を覆う複数の防水パネルと、
前記防水パネルの重ね合わせ部に沿って配置され、隣り合う一方の防水パネルの表面に一端が固着されると共に隣り合う他方の防水パネルの表面に他端が固着された防水シートと、
前記防水パネルの端部側でかつ前記防水シートによって覆われる範囲に配置され、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成されると共に、膨張時に前記防水シートを押上げる第一膨張性シール材と、
前記防水パネルの重ね合わせ部において前記防水パネル同士の間に配置され、水との接触により膨張する膨張材を含んで構成され、膨張時に上下の前記防水パネルに圧着される第二膨張性シール材と、
を有する防水構造体。
【請求項2】
前記防水パネルは、水勾配に沿って配置されると共に、水勾配の上流側の防水パネルにおける端部が、水勾配の下流側の防水パネルにおける端部の上に重ね合わせられて配置されている請求項1記載の防水構造体。
【請求項3】
前記第二膨張性シール材は、前記防水パネルを前記防水対象物に固定するための締結手段を覆う位置を含む位置に配置されている請求項1又は請求項2に記載の防水構造体。
【請求項4】
前記第一膨張性シール材は、前記防水シートと前記防水パネルとの間に配置されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の防水構造体。
【請求項5】
前記第一膨張性シール材が間隔をおいて複数配置されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の防水構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−12883(P2012−12883A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152130(P2010−152130)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】