説明

防犯用センサ装置

【課題】 外部環境の影響や設置場所の制限を受けずに、受光器の受光レベルを適正に維持できて失報や誤報を防止でき、かつ受光レベルの検出精度を向上できる防犯用センサ装置を提供する。
【解決手段】 受光レベルの時間変動に対応して受光レベルの適正範囲を変更し、受光レベルがその適正範囲から外れたときにその適正範囲に入るように投光器11からの投光量を調整するので、外部環境が変化してもこれに応じて変更させた適正範囲に受光レベルが入るようにすることから、外部環境の影響や設置場所の制限を受けることなく、装置の運転中常時、適正な受光レベルに維持でき、失報や誤報を防止できる。また、投光量の調整は、受光レベルのピーク値を下げるので、結果としてA/D変換器26のダイナミックレンジを拡大できることから、分解能が高くなって、受光レベルの検出精度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光部から送信する例えば赤外線ビームのような検知波を受光部で受信し、この検知波を人体等が遮断したときに人体等を検知する防犯用センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防犯用センサ装置は、赤外線ビームのような検知波を送信する投光器を有する投光部と、投光器と光軸が一致するように配置されて、投光器からの赤外線ビームを受信する受光器を有する受光部とを備えており、直線的な近距離から数百mの長距離までの警戒区域を設定して、不法侵入者を検知する。
【0003】
この場合、従来から、受光部で検出した受光レベルを適正にして不法侵入者を精度よく検知できるように、投光部で投光器の投光パワーを調整することが知られている(例えば、特許文献1)。この従来技術では、装置の据付時またはメインテナンスの際における投光器と受光器の光軸調整時に、受光部で検出した受光レベルに応じて、投光器から照射される赤外線ビームの投光パワーを一定レベルに調整する。
【特許文献1】特開2002−367045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、受光部で検出される受光レベルは、時間経過に伴う外部環境の影響を受けて大きく変動し、図4に示すように、例えば降雨時のような場合の他に、降雪時や霧が立ちこめた時などの場合に減衰する。この減衰の影響をなくすために、通常、投光器の投光パワーを所定レベル以上の大きな値に設定する。ところが、投光パワーを一定の大きなレベルに設定すると、図4の雨が上がった時には雨上がりの反射が生じ、他雪が降り止んだ時には積もった雪の反射などが生じて、不法侵入者が本来の警戒ラインを遮光しても、警戒ラインとは別方向からの反射ビームを受光器が受光することとなり、侵入者を検知できずに失報する場合が生じ得る。また装置を壁に近づけて据え付けた時には壁の反射が生じて、同様の結果を招く。このため、従来では地面や雪面から十分に離して設置する方法や装置を壁から十分に離して設置する方法などがとられることとなり、装置の設置場所が制限される。他方、受光器の受光レベルが適正でない場合、誤報も生じ得る。
【0005】
また、受光レベル検出用のA/D変換器で大きなレベルの信号をオーバーレンジを起こさずにA/D変換するには、A/D変換器の入力電圧範囲を十分拡く設定する必要があり、そうすると、分解能が粗くなり、受光レベルの検出精度が悪くなる。さらに、A/D変換入力のダイナミックレンジを取るために受光部増幅回路にAGCをかける場合があるが、受光部にAGCをかけてしまうと弱入力、強入力、反射ビーム等のレベル量に対して正確なレベル検出ができない。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決して、外部環境の影響や設置場所の制限を受けずに、受光器の受光レベルを適正に維持できて失報や誤報を防止でき、かつ受光レベルの検出精度を向上できる防犯用センサ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一構成にかかる防犯用センサ装置は、検知波を送信する投光器および投光器を駆動する駆動回路を有する投光部と、前記検知波を受信する受光器を有する受光部とを備え、人体等による前記検知波の遮断により人体等を検知するものであって、前記受光部は、受光レベルを検出する受光レベル検出手段と、受光レベルの適正範囲を設定するレベル設定手段と、受光レベルの時間変動に対応して適正範囲を変更する適正範囲変更手段と、受光レベルが適正範囲から外れたときに投光量の調整を要求する信号を出力する要求信号出力部と、前記要求信号を前記投光部へ送信する送信手段とを備え、前記投光部は、前記要求信号を前記受光部から受けたときに前記駆動回路を制御して、受光レベルが適正範囲に入るように投光器からの投光量を調整する投光パワー調整手段を備えている。
【0008】
この構成によれば、受光レベルの時間変動に対応して受光レベルの適正範囲を変更し、受光レベルがその適正範囲から外れたときにその適正範囲に入るように投光器からの投光量を調整するので、外部環境が時間変動に伴い変化しても、その環境に応じて変更させた適正範囲に受光レベルが入るようにすることから、外部環境の影響や設置場所の制限を受けることなく、装置の運転中常時、適正な受光レベルに維持でき、失報や誤報を防止できる。また、投光量の調整は、受光レベルのピーク値を下げるので、結果として受光レベル検出用のA/D変換器のダイナミックレンジを拡大できることから、分解能が高くなって、受光レベルの検出精度を向上できる。
【0009】
好ましくは、さらに受光レベルの時間変動に対応して適正範囲を変更する適正範囲変更手段を備えており、この適正範囲変更手段は、例えば受光レベルの所定時間幅ごとの平均値に基づいて適正範囲を変更する。したがって、適正範囲をより正確に変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1に示すように、この防犯用センサ装置は、直線的な警戒区域の両端部の壁面またはポールに相対向して設けられた投光部1と受光部2とからなり、投光部1は赤外線ビームIRのような検知波を発信する投光器11を備え、受光部2は、発信された赤外線ビームIRを受信する受光器21を備えている。
【0011】
投光部1は取付面に取り付けられるベース9と、このベース9を覆うカバー10とを有し、受光部2も同様に、ベース19と、このベース19を覆うカバー20とを有している。本装置は、人体等によって投光器11から受光器21へ送信された赤外線ビームIRが遮断されることにより人体等を検知するものであり、投光器11からの赤外線ビームIRの投光パワー(受光器21の受光レベル)を常時適正に調整するものである。
【0012】
図2は本発明の一実施形態に係る防犯用センサ装置のブロック図を示す。前記投光部1は、ともに図示しない赤外線発光ダイオード等の投光素子および投光する赤外線ビームIRを形成するための投光レンズまたは反射ミラーのような送信側光学系を備えた投光器11と、投光器11を駆動する駆動回路12とを備えている。その他に、投光部1は投光素子と送信側光学系を手動で回転させて受光器21との間で光軸を調整するための光軸調整機構も備えている。前記投光素子が駆動回路12により所定の周波数で発光駆動されて、パルス変調波からなる赤外線ビームIRが投光部1の前面を覆うカバー10を通して送信される。
【0013】
投光部1にはさらに、後述する投光量(投光パワー)調整の要求信号Dを受光部2からの無線信号Rによって受信する受信手段(受信器)13と、要求信号Dを入力する要求信号入力部14と、要求信号Dに応じて駆動回路12を制御して投光器11からの投光パワーを調整する投光パワー調整手段15とが設けられている。投光パワー調整手段15は、手動による投光パワーの調整も可能になっている。
【0014】
一方、受光部2は、ともに図示しない受光レンズまたは集光ミラーのような送信側光学系と、フォトダイオード等のような受光素子とを有する受光器21を備えており、その他、投光部1と同様に、投光器11との間で光軸を調整するための光軸調整機構も備えている。
【0015】
受光部2では、前記受光素子が受光部2の前面を覆うカバー20を通して入射した赤外線ビームIRを受信し、その受光量に応じた受光量信号Aを出力する。この受光量信号Aは、増幅器22で増幅されて検波器23に入力され、外乱光が除去されたパルス変調光のレベルに応じた信号Bが出力される。この出力信号Bは、判別回路24において予め設定された不法侵入者の検知レベル以下であるか否かが判別され、検知レベル以下のとき検知信号Cが警報回路25に出力され、警報回路25から警報信号が警備センタ3に出力されて、不法侵入者であることを報知する。ここでの検知レベルとは、パルスの有無、設定ID、データなどの判別等を示している。本発明は上記の受光量信号Aに応じた受光レベルを常時適正に維持するものである。
【0016】
本発明における受光部2は、投光器11からの投光パワーを調整するために用いられる、A/D変換器26、受光レベル検出手段(受光レベル検出器)27、レベル設定手段28、適正範囲変更手段29および要求信号出力手段(要求信号出力部)30からなる受光レベル処理手段32と、送信手段(送信器)33とを備えている。
【0017】
前記受光レベル検出器27はA/D変換器26を介して受光量信号Aに応じた受光レベルを検出する。レベル設定回路28は受光レベルの適正範囲を設定する。適正範囲変更手段29は、受光レベルの時間変動に対応して、例えば受光レベルの所定時間幅ごとの平均値に基づいて、適正範囲を変更する。適正範囲変更手段29は、この受光レベルのディジタル信号について所定の時間幅ごと、例えば10分ごとの平均値を演算し、この平均値を中心値として上下の所定幅を変更する。
【0018】
要求信号出力部30は、受光レベルが適正範囲から外れたときに投光パワーの調整を要求する信号Dを出力する。送信器33は、この要求信号Dをコード化して投光部1へ送信する。コード化した要求信号は例えば無線信号Rで送信される。なお、無線信号Rに代えて変調した赤外線ビームIRなどで送信してもよい。
【0019】
つぎに、前記構成の装置における投光パワーの調整動作を説明する。まず、受光部2で投光部1からの赤外線ビームIRが受信されて、その受光量に応じた受光量信号Aが出力される。この受光量信号Aは、増幅器22で増幅されて、A/D変換器26を介して受光レベル検出器27により、受光レベルが検出される。適正範囲変更手段29により、A/D変換器26からの受光レベルのディジタル信号について10分ごとの平均値が演算され、この平均値を中心値とした上下の所定幅(受光レベルの適正範囲)が変更される。この所定値は、例えば平均値の±30%である。要求信号出力部32により、受光レベルがこの変更した適正範囲から外れたときに投光量の調整を要求する信号が出力される。送信器33によりコード化した要求信号が無線信号Rで投光部1へ送信される。
【0020】
投光部1では、受信器13により投光パワー調整の要求信号が無線信号Rによって受信され、要求信号入力部14によりこの要求信号が入力されて、投光パワー調整手段15によって要求信号に応じて駆動回路12を制御して投光器11からの投光パワーが調整される。この投光器11の投光パワーは、上述した受光部2の受光レベルの処理により装置の運転中リアルタイムに最適に調整されたものであり、当該投光パワーにより受光器2に送信されて受光器2は常に適正な受光レベルに維持できる。
【0021】
図3に示すように、受光レベルの適正範囲が前記受光レベルの時間変動(平均値)とともに変動するとともに、受光レベルがその適正範囲から外れたときに、投光パワーが調整される。例えば図示50のようにその上限より大きい場合には投光パワーが下げられて、受光レベルを下げる。また、その下限より小さい場合には投光パワーが上げられて、受光レベルを上げるように調整される。これにより、受光レベルを常に適正に維持できるので、外部環境が時間変動に伴って変化しても、また装置を壁に近づけて設置しても、その反射ビームによる影響を受けないようにすることが可能となり、失報または誤報を防止できる。また、従来のように投光パワーを一定の大きなレベルに設定して、受光レベル検出用のA/D変換器26の入力電圧範囲を十分拡く設定するのと異なり、受光レベルの適正範囲を前記平均値とともに変動させ、受光レベルがその適正範囲から外れたときに投光パワーを調整する結果、受光レベルのピーク値を下げることになるので、A/D変換器26のダイナミックレンジを拡大でき、分解能が高くなって、受光レベルの検出精度を向上できる。
【0022】
こうして、本発明では、受光レベルの時間変動に対応して受光レベルの適正範囲を変更し、受光レベルがその適正範囲から外れたときにその適正範囲に入るように投光器11からの投光量を調整するので、外部環境が時間変動に伴って変化しても、その環境に応じて変更させた適正範囲に受光レベルが入るようにすることから、外部環境の影響や設置場所の制限を受けることなく、装置の運転中常時、適正な受光レベルに維持でき、失報や誤報を防止できる。また、A/D変換器26の分解能が高くなって、受光レベルの検出精度を向上できる。
【0023】
なお、この実施形態では、適正範囲変更手段29により受光レベルの時間変動に対応して適正範囲を変更するようにしているが、適正範囲を一定としてもよい。
【0024】
なお、この実施形態では、検知波として赤外線ビームを使用しているが、マイクロ波などを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る防犯用センサ装置を示す側面図である。
【図2】同実施形態に係る防犯用センサ装置の回路構成を示すブロック図である。
【図3】投光パワー調整の動作を示す図である。
【図4】受光レベルの時間変動を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1:投光部
2:受光部
11:投光器
12:駆動回路
15:投光パワー調整手段
21:受光器
26:A/D変換器
27:受光レベル検出手段
28:レベル設定手段
29:適正範囲変更手段
30:要求信号出力手段
32:受光レベル処理手段
33:送信手段




【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知波を送信する投光器および投光器を駆動する駆動回路を有する投光部と、前記検知波を受信する受光器を有する受光部とを備え、人体等による前記検知波の遮断により人体等を検知する防犯用センサ装置であって、
前記受光部は、受光レベルを検出する受光レベル検出手段と、受光レベルの適正範囲を設定するレベル設定手段と、受光レベルが適正範囲から外れたときに投光量の調整を要求する信号を出力する要求信号出力部と、前記要求信号を前記投光部へ送信する送信手段とを備え、
前記投光部は、前記要求信号を前記受光部から受けたときに前記駆動回路を制御して、受光レベルが適正範囲に入るように投光器からの投光量を調整する投光パワー調整手段を備えている防犯用センサ装置。
【請求項2】
請求項1において、さらに、受光レベルの時間変動に対応して適正範囲を変更する適正範囲変更手段を備えた防犯用センサ装置。
【請求項3】
請求項2において、前記適正範囲変更手段は、受光レベルの所定時間幅ごとの平均値に基づいて適正範囲を変更するものである防犯用センサ装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−39984(P2006−39984A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219562(P2004−219562)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】