説明

防砂シート

【課題】 波浪、潮汐変動などに対する耐久性に優れた防砂シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の防砂シートは、長繊維不織布層と三次元網状構造体とを積層した防砂シートであって、前記三次元網状構造体は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなるものであることを特徴とする。すなわち、長繊維不織布層に上記三次元網状構造体を積層させて、斯かる三次元網状構造体が波浪等によって生じる摩擦や衝撃を緩和することによって、得られる防砂シートの耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防砂シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川、海岸、及び、埋立地などの護岸工事、及び、ケーソンなどの設置工事などには、護岸や埋立地などの支持基盤の土砂や裏込石などが、海や河川に流出するのを防止するたの防砂シートが用いられている。護岸や埋立地等の支持基盤の土砂や裏込石などが流出すると、埋立地や護岸が陥没する事故が起こる場合があるからである。
【0003】
防砂シートとしては、合成繊維製の織布が使用されていたが、織布は伸度が比較的低いため、防砂シートを敷設する下地形状(凹凸など)への追従性が低下して、破損しやすくなるという欠点がある。そのため、防砂シートとして、目付量が800g/m2程度の合成繊維からなる不織布が使用されつつあり、例えば、不織布を使用する防砂シートに関する提案としては、特許文献1〜3などがある。
【0004】
特許文献1には、紫外線による合成繊維の劣化を防止することを目的として、アスファルトを含有する着色不織布であって、かつ、該不織布が透水性を有することを特徴とする耐候性不織布で構成されている防砂シートが開示されている。特許文献2には、短繊維不織布と金網部材とを重ねて一体化した防砂シートが開示され、特許文献3には、2デシテックス以上の熱可塑性重合体からなる繊維の長繊維不織布と2デシテックス以下の熱可塑性重合体からなる細繊度繊維からなる長繊維不織布とを積層させた防砂シート用不織布が開示されている。
【特許文献1】特開平10−72758号公報
【特許文献2】特開2001−64940号公報
【特許文献3】特開2002−13059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び3に開示されているように、不織布のみで構成されている防砂シートは、波浪や潮汐変動などに対する耐久性が十分であるとは言えず、使用を開始してから間もなく、不織布表面に毛羽立ちが生じて、破損に至る場合も少なくない。また、特許文献2に開示されているように金網部材を使用する場合には、海水による腐食などの問題があり、やはり耐久性が十分とは言えない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、波浪、潮汐変動などに対する耐久性に優れた防砂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできた本発明の防砂シートとは、長繊維不織布層に三次元網状構造体を積層した防砂シートであって、前記三次元網状構造体は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなるものであることを特徴とする。すなわち本発明の防砂シートは、長繊維不織布層に上記三次元網状構造体を積層させて、斯かる三次元網状構造体が波浪等によって生じる摩擦や衝撃を緩和して、得られる防砂シートの耐久性が向上する点に要旨がある。前記三次元網状構造体としては、その初期圧縮弾性率が0.1〜1.5N/cm2/100%であるものを使用することが好ましい。初期圧縮弾性率を上記範囲とすることによって、波浪等に対する緩衝作用を一層高めることができる。前記三次元網状構造体としては、例えば、厚さが3〜15mmであり、目付量が100〜800g/m2、且つ、見掛け密度が0.01g/cc〜0.1g/ccであるものを使用することが好ましい。
【0008】
前記長繊維不織布層としては、厚さが2〜10mmであり、目付量が200〜1000g/m2のものを使用することが好ましい。長繊維不織布層に、波浪等に対する十分な耐久性を確保させる必要があるからである。また、前記三次元網状構造体と前記長繊維不織布層が、熱接着性繊維を含有する不織布によって接着されていることも好ましい態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、波浪、潮汐変動などに対する耐久性に優れた防砂シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の防砂シートは、長繊維不織布層と三次元網状構造体とを積層した防砂シートであって、前記三次元網状構造体は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなるものであることを特徴とする。
【0011】
まず、本発明において使用する長繊維不織布層について説明する。本発明において、長繊維不織布層を使用するのは、長繊維不織布層の方が、短繊維不織布よりも波浪等に対する耐久性に優れているからである。前記長繊維不織布に使用される長繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の長繊維を用いることが望ましく、特に耐久性や耐候性に優れているポリエステルの長繊維を用いることが推奨される。また繊維を2種以上組み合わせた混繊や複数の成分からなる合成繊維などを用いた長繊維不織布を用いても良い。
【0012】
前記長繊維不織布の目付量は、200g/m2以上、より好ましくは250g/m2以上、さらに好ましくは500g/m2以上であることが好ましい。200g/m2未満であると、長繊維不織布層自体の耐久性が低くなりすぎ、また、土砂などの流出防止効果が低くなる虞もあるからである。
【0013】
長繊維不織布の目付量の上限は、特に限定されるものではないが、1000g/m2、より好ましくは900g/m2であることが望ましい。1000g/m2超では、土砂などの流出防止効果も飽和すると考えられるからである。
【0014】
前記長繊維不織布層の厚みは、好ましくは2mm以上、より好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは5mm以上である。厚みを持たせて、波浪等に対する十分な耐久性を確保する必要があるからである。一方、前記不織布層の厚みの上限は、特に限定されるものではないが、10mm、より好ましくは9mmであることが望ましい。厚みが厚すぎると、防砂シートを敷設する際の作業性などが低下するからである。
【0015】
前記長繊維不織布の製造方法としては、例えば、スパンボンド法やメルトブロー法などを挙げることができ、好ましくはスパンボンド法を採用すればよい。また必要に応じて、ニードルパンチ処理を施して、目付量の調整を行っても良い。
【0016】
前記長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は、好ましくは1dtex以上、より好ましくは3dtex以上である。1dtex以上の長繊維不織布であれば、スパンボンド法による製造に適しているからである。また、上記長繊維の繊度の上限は、特に限定されないが、10dtexが好ましく、より好ましくは8dtexである。
【0017】
尚、本発明で使用する長繊維不織布層は、上記特性を満足するものであれば、単層の長繊維不織布層を複数積層して、ニードルパンチ処理などで一体化したものであっても良い。
【0018】
次に、本発明で使用する三次元網状構造体について説明する。前記三次元網状構造体は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる。本発明において三次元ランダム状とは、複数の連続線状体(熱可塑性樹脂からなる連続線状体)を曲がりくねらせて大きさや向きが不規則なループ状などの任意の形状を多数形成すると共に、これら線状体同士の交絡部の少なくとも一部が融着している立体構造をいう。
【0019】
また「連続線状体」とは、熱可塑性樹脂を原料とする連続線状体(ストランド)である。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、生分解性樹脂など各種熱可塑性樹脂が例示される。これらの中でも、得られる三次元網状構造体の初期圧縮弾性率の調整が容易であることから、ポリエステル系樹脂を原料とする連続線状体が好ましい。特にポリエステル系樹脂の中でも、荷重除去後の原型回復性と耐破断性に優れた特性を示すものとして、共重合ポリエステル、ブロック共重合ポリエ−テルエステルやポリエステルエステルなどの重合体が好ましい。
【0020】
連続線状体の線径は特に限定されないが、好ましくは0.1mmΦ以上、より好ましくは0.2mmΦ以上とすることが望ましい。線径が細すぎると線状体が破断し易くなって耐久性が不足するからである。前記線径の上限は、特に限定されないが、好ましくは1.0mmΦ、より好ましくは0.8mmΦとすることが望ましい。線径が太くなりすぎると、防砂シートの敷設作業性を低下させることがある。
【0021】
連続線状体の断面形状は特に限定されないが、断面2次モ−メントが高くなると曲げ剛さが改善されるため、中空断面、多角形あるいは多葉形等の異形断面が好ましい。
【0022】
本発明で使用する三次元網状構造体の初期圧縮弾性率は、0.1N/cm2/100%〜1.5N/cm2/100%の範囲であることが好適である。初期圧縮弾性率を0.1N/cm2/100%以上とすることによって、波浪などに対する実用レベルの耐久性を確保するためである。一方、初期圧縮弾性率が1.5N/cm2/100%以下にすれば、得られる防砂シートが比較的柔らいものになり、防砂シートを敷設する下地形状への追従性が高くなる。尚、前記初期圧縮弾性率は、得られる三次元網状構造体の大凡の固さに相関し、初期圧縮弾性率が大きいほど、三次元網状構造体が固くなる。前記初期圧縮弾性率は、三次元網状構造体の厚さ、目付量、見掛け密度、使用する連続線状体の線径、樹脂の種類等を適宜、調節して上記特定範囲とすればよい。
【0023】
前記三次元網状構造体の厚さは特に限定されないが、好ましくは3mm以上であり、より好ましくは3.5mm以上である。3mm以上とすることによって、三次元網状構造体の緩衝作用が高くなり、波浪などに対する耐久性が高くなるからである。また、前記三次元網状構造体の厚さの上限は、特に限定されないが、好ましくは15mmであり、より好ましくは14mmである。
【0024】
前記三次元網状構造体の目付量は、好ましくは100g/m2以上であり、より好ましくは150g/m2以上である。目付量を100g/m2以上とすることによって、三次元網状構造体が奏する緩衝作用が高くなるからである。一方、目付量の上限は、特に限定されるないが、好ましくは800g/m2であり、より好ましくは750g/m2である。
【0025】
前記三次元網状構造体の見掛け密度は、0.01g/cc以上、より好ましくは0.02g/cc以上であって、0.1g/cc以下であり、より好ましくは0.08g/ccであることが望ましい。見掛け密度を上記範囲とすることによって、三次元網状構造体の緩衝作用が一層高まるからである。
【0026】
以下、本発明で使用する三次元網状構造体の製法について説明する。熱可塑性樹脂からなる連続線状体を三次元ランダム状に交絡してなる三次元網状構造体の製造方法は、例えば特開昭55−120626号公報等に記載されている様な公知の方法によって、熱可塑性樹脂原料を一般的な溶融押出機を用いて溶融させると共に、該溶融樹脂を複数のオリフィスを持つノズルから下向きに吐出させると連続線状体が得られる。該線状体をそのまま自然落下で冷却固化させれば、該線状体が旋回等して大きさや向きが不規則なループ状などの不定形状の三次元ランダム状に交絡した三次元網状構造体が形成される。
【0027】
連続線状体の交絡部の少なくとも一部を融着させるには、溶融状態で落下してくる不定形状を形成した線状体を、一対の引取りコンベアで挟み込むことで線状体同士の交絡部が融着され、続いて冷却媒体中に引込んで該融着部分を固化させ、その後引き上げて常温または熱風で乾燥させれば良い。防砂シートを作製する際には、所望のサイズに切断して使用する。
【0028】
連続線状体の線径や不定形状の調整は、ノズルの孔径、吐出量、樹脂の溶融粘度などを調節すればよい。また三次元網状構造体の初期圧縮弾性率、厚さ、目付量、見掛け密度の調整は、上記引取りコンベアの間隔を調節すればよい。また該コンベアの速度を調整することによって、見掛け密度の制御も可能である。尚、三次元網状構造体に難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香等の所望の特性を付与すべく、任意の段階で薬剤添加等、所望の処理を施せばよい。
【0029】
本発明では、前記三次元網状構造体と前記長繊維不織布層とが、熱接着性繊維を含有する不織布によって接着されていることが好ましい。本発明で使用する熱接着性繊維を含有する不織布とは、熱処理により溶融・固化して三次元網状構造体と長繊維不織布層とを接着するものであり、例えば、低融点の熱可塑性樹脂を用いてスパンボンド法により、ランダムに、若しくは、くもの巣状に作製した不織布を使用することが好適である。前記低融点の熱可塑性樹脂の融点は、100℃以上、好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であって、180℃以下、好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下であることが望ましい。前記低融点の熱可塑性樹脂としては、例えば、低融点のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などを挙げることができる。
【0030】
前記熱接着性繊維を含有する不織布の目付量は、20g/m2以上、より好ましくは25g/m2以上である。一方、目付量の上限は、特に限定されないが、200g/m2、より好ましくは150g/m2である。
【0031】
本発明の防砂シートにおいて、三次元網状構造体と前記長繊維不織布層とを一体化する方法としては、前記熱接着性繊維を含有する不織布で接着する方法の他、両者を接着するための接着層を設ける態様、両者を固定するための結束手段を用いる態様であっても良い。
【0032】
前記接着層としては、三次元網状構造体と長繊維不織布層とを接着できるものであれば、特に限定されず、水系、溶剤型、ホットメルト型などの従来の接着剤によって形成される接着剤層や低融点の熱可塑性樹脂からなる熱接着性フィルムなどを挙げることができる。
【0033】
本発明の防砂シートの目付量は、320g/m2以上、より好ましくは600g/m2以上、更に好ましくは1000g/m2以上とすることが好ましい。防砂シートには、堆積された土砂などの流出を防止するために使用されることから、ある程度の強度が必要とされ、本発明では、目付量を320g/m2以上とすることによって、実用レベルの強度を確保することができる。また、防砂シートの目付量の上限は、特に限定されないが、2000g/m2、より好ましくは1800g/m2、さらに好ましくは1600g/m2とすることが好ましい。目付量を小さくすることによって、防砂シートの敷設作業性が向上する。
【0034】
図1は、本発明の防砂シートを模式的に例示する断面図である。図1に示す態様では、長繊維不織布層1と三次元網状構造体3とが、熱接着性繊維を含有する不織布(図示せず)によって接着されている。図1に示されるように、本発明で使用する長繊維不織布層1は、比較的細い長繊維を用いて密に構成されるとともに、三次元網状構造体3は、比較的線径の太い熱可塑性樹脂からなる連続線状体で疎に構成されている。防砂シートとして使用する際には、長繊維不織布層1を砂に接触するように敷設して使用することが好ましい。
【0035】
図1の態様では、長繊維不織布層と三次元網状構造体とを積層した2層構造の防砂シートを示したが、本発明の効果を損なわない限り、例えば、三次元網状構造体を長繊維不織布層でサンドイッチした多層構造の防砂シートも本発明に含まれる。
【0036】
本発明の防砂シートの製造方法は、特に限定されないが、予め製造しておいた長繊維不織布層、熱接着性繊維を含有する不織布、及び、三次元網状構造体を積層し、連続熱接着装置(接着温度120〜200℃、滞留時間10秒〜5分程度)に通して、三層を接着して一体化することにより得られる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
[測定方法]
(1)目付量:g/m2
50cm×50cmの大きさに切り出し、そのときの重さを測定し、1m2当たりの質量に換算した。
【0039】
(2)厚さ:mm
15cm×15cmの大きさを切り出し、初荷重0.05g/cm2を懸けて、四隅の高さを測定し、その平均値を算出した。
【0040】
(3)見掛け密度:g/cc
目付量と厚さを用いて算出した。
見掛け密度=目付量/厚さ
【0041】
(4)圧縮弾性率:N/cm2/100%
圧縮試験は東洋ボールドイン社製1トンテンシロンを用い、圧縮面積78.5cm2(10cmφ)で圧縮速度2mm/min.で試料を圧縮し、初荷重0.1N/cm2として試料の変形率5%の距離(mm)を求め、その距離の荷重を読み取り、試料断面積で除して、さらに変形率100%に換算して示した。
【0042】
(5)DSC測定
以下の測定条件で、DSC測定を行い、融解吸熱曲線より融点、及び、二次点移転を求めた。
試料量:10mg
昇温速度:10℃/min.
昇温温度:210℃
降温速度:5℃/min.
再昇温速度:10℃/min.
【0043】
(6)表面構造破壊評価(表面摩耗破壊の加速テスト)
学振型摩擦試験機(スガ試験機(株))を用いて、ステージ面にシートペーパ(TRUSCO製GBS−400 粗度#400番)を取り付け耐摩耗試料とし、ハンマー部(摩耗面2cm×2cm)にそれぞれの試料を(地面に接する面を耐摩耗試料に接するように)セットし、摩擦測定をして摩耗によりハンマー部の試料の表面部分の構造が破壊され始めた回数で示した。
摩擦往復距離:100mm
摩擦往復速度:30回/min
荷重:200g(1.96N)(0.49N/cm2
ハンマー部摩擦面積:2cm×2cm
【0044】
(7)耐波浪性評価
図2に示すように、内側寸法25cm×26cm×11.5cmの容器5に川砂(滋賀県安曇川より採取)を16メッシュ(平均粒径1.0mmφ)150gと6メッシュ(平均粒径3.0mmφ)を150g入れ、仕切り板7(25cm×11.5cm)を用いて、区画した(8.7cm×8.5cm)。仕切り板7には、巾4mm底辺から高さ5.5mmのスリットが、中央部と左右4cm×6cm間隔で計5箇所設けられている。
【0045】
この仕切り板に、8cm×8cmに切り出した試料9をスパンボンド面(長繊維不織布層)を外側にくるように縫い糸で固定した(図3)。試料9は、5mmほど砂13に浸漬しそれに水15を100cc添加し、更に市販のスーパーボール11を各区画に入れた。スーパーボール11としては、31mmφ球形(14.7g)のものを2個と、25mmφ球形(8.0g)のものを1個用いた。この容器を振盪器(ヤマト科学(株)製)で200rpmでロータリー振盪させ(3cm円運動)、振盪により試料が破壊されるまでの振盪数で評価した。尚、スーパーボールを使用せず、真水、食塩水のみで試験をした場合、288000回まで異常はなかった。
【0046】
(8)突摩耗評価
図4に示すように、クランク式上下運動する上下移動台17(ペーパー社製)の上部にサンフレックス(株)製回転ヤスリ(No.2310)の先端6mmφの球形ヤスリ棒19を取り付け、下部は100mm×100mm×10mmの木台21の中央部に40mmφの穴をあけ、木台下部にクッション材の厚さ5mmのゴム板23を取り付け、この木台の中央に上記球形ヤスリの先端がくるようにし、80mm×80mm切り出した試料9を、木台に載せて試料の各辺の中央端にピンで固定した。評価は、上下移動台17を下記条件で上下移動させて、不織布層表面が破壊されて毛羽立ちを生じる回数で評価した。
条件:
突っ込み距離:長繊維不織布層表面から深さ2.5mm
突っ込み速度:60回/min.
突っ込み面積:6mmφ(球形)ヤスリ
【0047】
[防砂シートの作製]
防砂シート1
ジメチルテレフタレート(DMT)と1,4−ブタンジオールの重縮合物から得られたポリエーテルエステルブロック共重合エラストマーに抗酸化剤1%を添加し、混合練り込みし、ビカット軟化点120℃、融点172℃のペレットを得た。このペレットを溶融混練押出機を用いて、線径0.43mmの連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる三次元網状構造体(目付量500g/m2、厚さ7.1mm)を得た。
【0048】
熱接着性繊維を含有する不織布としては、融点110℃の熱可塑性樹脂(変性ポリエチレンテレフタレート)を溶融押出機からスパンボンド法によりくもの巣状に作製した不織布(目付量40g/m2)を用いた。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂を原料として、スパンボンド法により、平均繊度6.7dtexの長繊維不織布を得、ニードルパンチを施して厚さ5mm、目付800g/m2の長繊維不織布を作製した。上記のようにして得られた三次元網状構造体に熱接着性繊維を含有する不織布と長繊維不織布とを積層して、連続熱接着装置(接着温度170℃、滞留時間30秒)で処理して、一体化し、防砂シート1を得た。
【0049】
防砂シート2
上記防砂シート1と同様の方法により、ビカット軟化点120℃、融点172℃のペレットを得た。このペレットを溶融混練押出機を用いて、線径0.35mmの連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる三次元網状構造体(目付量700g/m2、厚さ9.3mm)を得た。
【0050】
また、熱接着性繊維を含有する不織布、及び、長繊維不織布としては、防砂シート1で作製したものと同一のものを使用し、上記のようにして得られた三次元網状構造体に熱接着性繊維を含有する不織布と長繊維不織布とを積層して、連続熱接着装置(接着温度170℃、滞留時間30秒)で処理して、一体化し、防砂シート2を得た。
【0051】
防砂シート3
上記防砂シート1と同様の方法により、ビカット軟化点120℃、融点172℃のペレットを得た。このペレットを溶融混練押出機を用いて、線径0.42mmの連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる三次元網状構造体(目付量500g/m2、厚さ11.0mm)を得た。また、熱接着性繊維を含有する不織布、及び、長繊維不織布としては、防砂シート1で作製したものと同一のものを使用し、上記のようにして得られた三次元網状構造体に熱接着性繊維を含有する不織布と長繊維不織布とを積層して、連続熱接着装置(接着温度170℃、滞留時間30秒)で処理して、一体化し、防砂シート3を得た。
【0052】
防砂シート4
上記防砂シート1と同様の方法により、ビカット軟化点170℃、融点200℃のペレットを得た。このペレットを溶融混練押出機を用いて、線径0.72mmの連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる三次元網状構造体(目付量700g/m2、厚さ10.0mm)を得た。また、熱接着性繊維を含有する不織布、及び、長繊維不織布としては、防砂シート1で作製したものと同一のものを使用し、上記のようにして得られた三次元網状構造体に熱接着性繊維を含有する不織布と長繊維不織布とを積層して、連続熱接着装置(接着温度170℃、滞留時間30秒)で処理して、一体化し、防砂シート4を得た。
【0053】
防砂シート5
メルトインデックス50、ビカット軟化点120℃のポリプロピレン(PP)を、溶融混練押出機により、線径0.42mmの連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる三次元網状構造体(目付700g/m2、厚さ9.3mm)を得た。また、熱接着性繊維を含有する不織布、及び、長繊維不織布としては、防砂シート1で作製したものと同一のものを使用し、上記のようにして得られた三次元網状構造体に熱接着性繊維を含有する不織布と長繊維不織布とを積層して、連続熱接着装置(接着温度170℃、滞留時間30秒)で処理して、一体化し、防砂シート5を得た。
【0054】
防砂シート6
ポリエチレンテレフタレート樹脂を原料として、スパンボンド法により不織布を作製し、ニードルパンチ加工を施し、厚さ5mm、目付量800g/m2の長繊維不織布を得た。
【0055】
得られた防砂シートの構成及び、耐久性について評価した結果を表1に示した
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、長繊維不織布層と三次元網状構造体とを積層した防砂シートであって、前記三次元網状構造体は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなる本発明の防砂シートは、波浪などに対する耐久性に優れることが分かる。特に、防砂シート4及び5を比較すると、初期圧縮弾性率を1.5N/cm2/100%以下とすることによって、突摩耗性が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、護岸工事、埋立工事などで使用する防砂シートとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の防砂シートを例示する説明図
【図2】本発明における耐波浪性評価方法を説明する説明図
【図3】本発明における耐波浪性評価方法を説明する説明図
【図4】本発明における突摩耗性評価方法を説明する説明図
【符号の説明】
【0060】
1:長繊維不織布層、3:三次元網状構造体、5:容器、7:仕切り板、9:試料(防砂シート)、11:スーパーボール、13:川砂、15:水、17:上下移動台、19:球形ヤスリ棒、21:木台、23:ゴム板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維不織布層と三次元網状構造体とを積層した防砂シートであって、前記三次元網状構造体は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体が三次元ランダム状に交絡してなり、前記交絡部の少なくとも一部が融着してなるものであることを特徴とする防砂シート。
【請求項2】
前記三次元網状構造体の初期圧縮弾性率が、0.1〜1.5N/cm2/100%である請求項1に記載の防砂シート。
【請求項3】
前記三次元網状構造体は、厚さが3〜15mmであり、目付量が100〜800g/m2、且つ、見掛け密度が0.01g/cc〜0.1g/ccである請求項1又は2に記載の防砂シート。
【請求項4】
前記長繊維不織布層は、厚さが2〜10mmであり、目付量が200〜1000g/m2である請求項1〜3のいずれかに記載の防砂シート。
【請求項5】
前記三次元網状構造体と前記長繊維不織布層とが、熱接着性繊維を含有する不織布によって接着されている請求項1〜4のいずれかに記載の防砂シート。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−123469(P2006−123469A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318306(P2004−318306)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】