説明

除電装置及びその除電装置を備えた画像形成機

【課題】 除電ランプからの除電光の照射による残留電荷の除電動作と、帯電器による帯電動作とを同時並行することを可能にしながらも感光体ドラムを小径化できる除電装置及びその除電装置を備えた画像形成機を提供する。
【解決手段】 除電ランプ45をクリーニングユニット4の背面側(反感光体ドラム側)に配置すると共に、クリーニングユニット4のブレード取り付け板43にスリット状開口43aを形成し、除電ランプ45からの除電光をこの開口43aを通過させて、鏡面仕上げされた帯電器ケーシング外面52に向けて照射する。この除電光は帯電器ケーシング外面52で反射して感光体ドラム3の表面に照射され、これによって残留電荷の帯電動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ等の画像形成機に搭載される感光体上の残留電荷を除去するための除電装置及びその除電装置を備えた画像形成機に係る。特に、本発明は、画像形成機のコンパクト設計を可能にするための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタル複写機に代表される電子写真方式の画像形成機における画像形成(複写)動作としては、先ず、原稿画像をスキャナ部で読み取り、その原稿画像データに基づいて感光体ドラム上に静電潜像を形成する。そして、この静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム上で画像データを顕像化させる。その後、用紙搬送経路を搬送されてきた記録用紙を感光体ドラムと転写ローラとの間に通過させて、感光体ドラム上のトナー像を記録用紙の表面に転写する。そして、この記録用紙を定着ローラに通過させ、この定着ローラによる加熱及び加圧によってトナー像を記録用紙上に定着させるようにしている。このようにして画像形成が行われた記録用紙は、その後、排紙経路を経て排紙トレイ上に排紙される。また、上記感光体ドラムの表面に残留したトナーは、クリーニングブレードを備えたクリーニングユニットによって除去・回収される。更に、感光体ドラム上の残留電荷は、除電ランプや除電チャージャを備えた除電装置によって除去される。
【0003】
一方、電子写真方式のプリンタの場合には、接続された端末機器(パーソナルコンピュータ等)から受信した画像データに基づいて上記感光体ドラム上に静電潜像が形成されることになる。この静電潜像が形成された後の画像形成動作は上述したデジタル複写機の場合と同様である。
【0004】
ところで、近年、この種の画像形成機の小型化の要求が高まりつつあり、それを実現するための一つの手段として、感光体ドラムを小径化することが掲げられる。この感光体ドラムの周囲には、帯電器、現像装置、転写器、クリーニングユニット、除電装置等が周方向に順に並べて配置されているが、感光体ドラムを小径化すると、ドラム周長も短くなり、これら機器を周方向に順に並べて配置することが困難になる。そのため、感光体ドラムの小径化には限界があった。
【0005】
下記の特許文献1には、除電ランプからの除電光を帯電器のケース内部を通過させて感光体ドラムに照射可能とする構成が開示されている。つまり、帯電器による帯電領域と除電ランプの照射領域とを重ね合わせることで帯電器及び除電装置の設置スペースを縮小化して画像形成機の小型化が図れるようにしている。
【特許文献1】特開平8−16053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている構成のものは、帯電器による帯電動作中に除電ランプからの除電光の照射を行ってしまうと、感光体ドラム上の帯電領域に除電光が照射されてしまうことになって、感光体ドラム表面の電位にバラツキが生じてしまうばかりでなく、感光体ドラム表面を帯電できないといった事態を招くこともあり、画像形成動作に支障を来してしまう。このため、この特許文献1に開示されているものにあっては、除電光の光路を切り換えるためのシャッタを備えさせ、このシャッタの切り換え動作を行いながら、除電ランプからの除電光の照射による残留電荷の除電動作と、帯電器による帯電動作とを行うようにしているが、これでは製造コストの高騰及び制御動作の複雑化を招いてしまう。
【0007】
また、この特許文献1に開示されている構成のものは、シャッタを退避位置に回動させて除電動作を行った後、シャッタを遮蔽位置に回動させて1枚の画像を形成するための静電潜像(画像1枚分全体の静電潜像)を感光体ドラム表面に形成していくものとなっている。このため、感光体ドラム外面の周長が記録用紙の搬送方向長さよりも長い場合には画像形成動作が可能になるが、感光体ドラム外面の周長が記録用紙の搬送方向長さよりも短い場合には画像形成動作を良好に行うことができない。つまり、感光体ドラム外面の周長を、使用可能な記録用紙のうち最大サイズの記録用紙の長さよりも長めに設定しておくことが必要である。このように感光体ドラム外面の周長を長く設定しておくということは感光体ドラムの小径化を図る上で大きな障害になってしまう。
【0008】
また、上記除電装置を廃することによって感光体ドラムの小径化を図ることも考えられる。しかし、これでは、残留電荷の影響を受けない程度の高い電位で帯電器による帯電動作を行わねばならなくなり、感光体ドラム表面の劣化が進み、その長寿命化を図ることが困難になる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、感光体ドラムを小径化しながらも良好な画像形成動作を行うことを可能にする除電装置及びその除電装置を備えた画像形成機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決手段は、帯電器(帯電手段)のケーシング外面を利用して除電光(除電用照射光)を感光体表面に向けて反射させるようにすることで、帯電器及びクリーニングユニットと同心円上に除電装置を配置する必要を無くし、帯電器とクリーニングユニットとの間の間隔を小さくすることを可能にして感光体ドラムの小径化が図れるようにしている。
【0011】
−解決手段−
具体的に、本発明は、感光体の表面を帯電させるための帯電手段に近接した位置に配設され、画像形成動作後の感光体表面の残留電荷を除去するための除電用照射光を発する除電手段を備えた除電装置を前提とする。この除電装置に対し、除電手段から照射される除電用照射光を帯電手段のケーシング外面に向けて照射し、この除電用照射光をケーシング外面で反射させることによって感光体表面に照射する構成としている。
【0012】
この場合、感光体の周囲には、画像形成動作後に感光体表面に残留したトナーを除去するためのクリーニングユニットが配設されており、除電手段を、クリーニングユニットの反感光体側である背面側に配置している。
【0013】
これまでのものでは、感光体の周囲には、感光体の移動方向(回転方向)の上流側から下流側に亘ってクリーニングユニット、除電手段、帯電手段を感光体回転中心の同心円上に配置していた。これに対し、本解決手段のものでは、クリーニングユニットと帯電手段との間に除電手段を配置しなくても、この両者間に除電用照射光の光路のみが存在しておればよい。または後述するようにクリーニングユニットの一部(下記の開口)を除電用照射光が通過する構成とした場合には、クリーニングユニットと帯電手段との間に殆ど隙間はなくてもよい。このため、クリーニングユニットと帯電手段との間の間隔を大幅に小さくすることができ、感光体ドラムの小径化を図ることが可能になる。しかも、帯電手段のケーシング外面で反射した除電用照射光は、帯電手段による感光体上の帯電領域から離れる方向に向けて光路が変更されることになるため、この除電用照射光が帯電領域に照射されてしまって(所謂、迷光や漏れ光が発生してしまって)感光体表面の電位にバラツキが生じたり感光体表面を帯電できなくなるといった事態を回避して帯電特性の安定化を図ることもできる。
【0014】
除電手段をクリーニングユニットの背面側に配置するためのより効果的な構成としては以下のものが掲げられる。つまり、クリーニングユニットのケーシング部材(例えばクリーニングブレードを取り付けるための取り付け板)に開口を形成しておき、除電手段が、このケーシング部材の開口を通過して帯電手段のケーシング外面に向けて除電用照射光を照射する構成としている。この場合、除電手段からの除電用照射光の照射エリアを特定(必要最小限)の領域とするようにケーシング部材の開口をスリット状にしておけば、上記迷光や漏れ光を確実に防止することができる。
【0015】
上記除電用照射光を受ける帯電手段のケーシング外面としては、鏡面仕上げを施しておいてもよいし、微小な凹凸で成る梨地仕上げを施しておいてもよい。つまり、帯電手段のケーシングの各外面のうち、除電手段から照射される除電用照射光を受ける外面(除電光を感光体に向けて反射させる外面)のみにこれらの処理を施した構成である。上記鏡面仕上げを施した場合には、除電手段からの除電用照射光の光量を殆ど減少させることなく感光体表面に照射することができ、残留電荷の除去を確実に行うことができる。また、梨地仕上げを施した場合には、帯電手段のケーシング外面で反射される除電用照射光を感光体に向かう散乱光として得ることができ、感光体表面の広範囲に亘って均一な光量の除電用照射光を照射することが可能になる。このため、感光体表面における除電ムラが生じてしまうことを回避できる。
【0016】
尚、上述した各解決手段のうち何れか一つに記載の除電装置を備えた画像形成機も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、除電装置の除電手段から照射される除電用照射光によって感光体表面の残留電荷を除去した後、帯電手段によって感光体表面を帯電させ、その後、感光体表面に対する静電潜像の形成、像可視剤による可視画像の形成、記録媒体に対する可視画像の転写を順に行うことにより画像形成動作を実行する構成となっている画像形成機である。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、帯電手段のケーシング外面を利用して除電用照射光を感光体表面に向けて反射させるようにすることで、帯電器及びクリーニングユニットと同心円上に除電装置を配置する必要を無くし、帯電器とクリーニングユニットとの間の間隔を小さくすることを可能にしている。このため、除電手段からの除電用照射光の照射による残留電荷の除電動作と、帯電器による帯電動作とを同時並行することを可能にしながらも、感光体の小径化による画像形成機の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態ではカラープリンタに本発明を適用した場合について説明する。
【0019】
図1は本形態に係る画像形成機の内部構成の概略を示している。本画像形成機は、外部(例えばパーソナルコンピュータ等の端末機器)から伝達された画像データに応じて、所定のシート(記録用紙などの記録媒体)に対して多色(フルカラー)画像や単色(モノクロ)画像を形成するものである。そして、図示するように、本画像形成機は、露光ユニット1、現像装置2(2a〜2d)、感光体ドラム(本発明でいう感光体)3(3a〜3d)、本発明でいう帯電手段としての帯電器5(5a〜5d)、クリーニングユニット4(4a〜4d)、中間転写ベルトユニット8、定着装置F、用紙搬送路E、給紙カセット10、排紙トレイ15等を備えて構成されている。
【0020】
なお、本画像形成機において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置2(2a〜2d)、感光体ドラム3(3a〜3d)、帯電器5(5a〜5d)、クリーニングユニット4(4a〜4d)は、各色に応じた4種類の像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、図1では、それぞれaがブラックに、bがシアンに、cがマゼンタに、dがイエローに設定され、4つの画像ステーションを構成している。
【0021】
感光体ドラム3は、本画像形成機の上部に配置(装着)され、後述する如く露光ユニット1からのレーザ光の照射によって画像データに応じた静電潜像が形成されるようになっている。
【0022】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、図1に示すようにチャージャー型の帯電器のほか、接触タイプのローラ型やブラシ型の帯電器が用いられることもある。
【0023】
露光ユニット1は、レーザ照射部1Aおよび反射ミラー12,12,…を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)で構成されている。上記レーザ照射部1Aは、受信した画像データに基づいた各色相毎のレーザ光を照射するものである。そのほかに、発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッドを用いる手法もある。そして、この露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3を、入力された画像データに応じて露光することにより、感光体ドラム表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有している。
【0024】
現像装置2はそれぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像を各色(K、C、M、Y)のトナーにより顕像化するものである。この現像装置2は図2に示すように、トナーを収容するトナー容器であるトナーボックス(トナーカートリッジ)21と、トナーが充填された現像槽22とを備えている。また、現像槽22内には、現像ローラ23(外周面部分に金属製の現像スリーブが形成されている)、図示しない攪拌ローラ及び供給ローラが収容されている。トナーボックス21にはトナーが貯留されており、必要に応じて現像槽22内へトナー補給が行われる。このトナーボックス21の下端開口部には、トナー補給ローラが配設されており、このトナー補給ローラが回転することによってトナーボックス21内のトナーを下方の現像槽22に補給する。撹拌ローラは、現像槽22内のトナーを撹拌してトナーを摩擦帯電させる。供給ローラは、この摩擦帯電したトナーを現像ローラ23の外周面に向けて供給する。そして、この現像ローラ23は、トナーを感光体ドラム3に供給する。
【0025】
上記現像ローラ23は、アルミニウム合金、黄銅、SUS304ステンレス等非磁性金属製の中空円筒状の現像スリーブに、磁界を発生するための複数本の磁石体(図示省略)を固定したマグネットローラを内挿している。この現像ローラ23は、現像スリーブのみを回転させながら、表面にトナーを磁気的に吸着して感光体ドラム3と接する現像部へ搬送・供給するようになっている。また、この現像ローラ23の上方には小間隙を存して図示しないドクターブレードが配設されており、現像スリーブ表面に付着するトナー層の厚さを、このドクターブレードによって所定厚さに設定できるようにしている。
【0026】
クリーニングユニット4は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを、除去・回収するものである。このクリーニングユニット4の詳細構成については後述する。
【0027】
感光体ドラム3の上方に配置されている中間転写ベルトユニット8は、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルトテンション機構73、中間転写ベルト従動ローラ72、1次転写ローラとしての中間転写ローラ6(6a〜6d)、および中間転写ベルトクリーニングユニット9を備えている。
【0028】
中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルトテンション機構73、中間転写ローラ6、中間転写ベルト従動ローラ72は、中間転写ベルト7が架け渡され、中間転写ベルト駆動ローラ71の回転駆動に伴って中間転写ベルト7を矢印I方向に走行させるものである。
【0029】
中間転写ローラ6は、上記中間転写ベルトテンション機構73におけるローラ取付部に回転可能に支持されている。これにより、これら中間転写ローラ6a〜6dは、各感光体ドラム3に対向する中間転写ベルト7の内面側に回転可能に配設された状態となっており、また、感光体ドラム3のトナー像を、中間転写ベルト7上に転写するための転写バイアスが与えられている。
【0030】
中間転写ベルト7は、それぞれの感光体ドラム3に接触可能に設けられている。そして、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト7に順次重ねて転写することによって、中間転写ベルト7上にカラーのトナー像(多色トナーの合成像)が形成されるようになっている。尚、この中間転写ベルト7は、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0031】
感光体ドラム3から中間転写ベルト7へのトナー像の転写は、中間転写ベルト7の裏側(内面側)に接触している中間転写ローラ6によって行われる。つまり、中間転写ローラ6には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ6は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面は、導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト7に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施例では転写電極としてローラ形状のものを使用しているが、それ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0032】
上述のように各感光体3a〜3d上で各色相に応じて顕像化されたトナー像は中間転写ベルト7上で積層され、装置に入力された画像情報となる。このように、積層された画像情報(多色トナーの合成像)は、中間転写ベルト7の走行によって、後述の用紙と中間転写ベルト7との接触位置に配置される転写ユニットを構成する転写ローラ11によって用紙上に転写される。
【0033】
この時、中間転写ベルト7と転写ローラ11とは所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ11にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、転写ローラ11は上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ11もしくは上記中間転写ベルト駆動ローラ71の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等)としている。
【0034】
また、上記のように、感光体ドラム3との接触により中間転写ベルト7に付着したトナー、若しくは、転写ローラ11によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト7上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット9によって除去・回収されるようになっている。この中間転写ベルトクリーニングユニット9には、中間転写ベルト7に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレード91が備えられており、このクリーニングブレード91が接触する中間転写ベルト7に対して、裏側から中間転写ベルト従動ローラ72で支持されている。そして、このクリーニングブレード91によって回収された残留トナーは、クリーニングブレード91の下方に設置された収納部92へ落下し蓄積されることになる。
【0035】
給紙カセット10は、画像形成に使用するシート(記録用紙)を収容しておくためのカセットであり、本画像形成機の最下部、つまり露光ユニット1の下側に設けられている。また、本画像形成機の上部に設けられている排紙トレイ15は、印刷済みのシートをフェイスダウンで載置するためのトレイである。
【0036】
また、本画像形成機には、給紙カセット10のシートを転写ローラ11や定着装置Fを経由させて排紙トレイ15に送るための用紙搬送路Eが設けられている。この用紙搬送路Eは、給紙カセット10の排紙部から排紙トレイ15に向けて略鉛直方向に延びている。さらに、給紙カセット10から排紙トレイ15までの用紙搬送路Eには、ピックアップローラ16(16−1),レジストローラ14、転写ローラ11、定着装置F、シートを搬送する搬送ローラ25(25−1,25−2,25−3)等が配設されている。
【0037】
搬送ローラ25は、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Eに沿って複数設けられている。ピックアップローラ16は、給紙カセット10の端部に備えられ、給紙カセット10から、シートを1枚ずつ用紙搬送路Eに供給する呼び込みローラである。
【0038】
また、レジストローラ14は、用紙搬送路Eを搬送されているシートを一旦保持するものである。そして、中間転写ベルト7上のトナー像の先端とシートの先端を合わせるタイミングでシートを転写部(転写ローラ11と中間転写ベルト駆動ローラ71との間のニップ部)に搬送する機能を有している。
【0039】
定着装置Fは、ヒートローラ31,加圧ローラ32等を備えており、これらヒートローラ31及び加圧ローラ32は、シートを挟んで回転するようになっている。また、ヒートローラ31は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ32とともにシートを熱圧着することにより、シートに転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、シートに対して熱定着させる機能を有している。
【0040】
なお、多色トナー像の定着後のシートは、搬送ローラ25…によって用紙搬送路Eを搬送され、多色トナー像を下側に向けて排紙トレイ15上に排出されるようになっている。
【0041】
次に、シート搬送経路を詳細に説明する。本画像形成機には予めシートを収納する給紙カセット10が配置されると共に、ユーザが少数枚の印字を行う時に上記給紙カセット10の開閉動作を行わなくても良い手差しトレイ20が配置されている。
【0042】
両給紙方法には、各々ピックアップローラ16(16−1,16−2)が配置され、1枚ずつを搬送路に導くようになっている。
【0043】
給紙カセット10から搬送されるシートは搬送路中の搬送ローラ25−1によってレジストローラ14まで搬送され、シートの先端と中間転写ベルト7上の画像情報の先端を整合するタイミングで転写ローラ11に搬送され、シート上に画像情報が書き込まれる。その後、シートは定着装置Fを通過することによってシート上の未定着トナーが熱で溶融・固着され、搬送ローラ25−2を経て排紙ローラ25−3から排紙トレイ15上に排出される(片面印字要求の時)。
【0044】
他方、手差しトレイ20に積載されるシートはピックアップローラ16−2によって給紙され、複数の搬送ローラ(25−6、25−5、25−4)を経てレジストローラ14に到達し、それ以降は給紙カセット10から給紙されるシートと同様の経過を経て排紙トレイ15に排出される(片面印字要求の時)。
【0045】
この時、印字要求内容が両面印字要求の場合には、上記のように片面印字が終了し定着装置Fを通過したシートの後端が上記排紙ローラ25−3でチャックされ、排紙ローラ25−3が逆回転することによって、搬送ローラ(25−7、25−8)を備えたスイッチバック搬送路E1に導かれた後、レジストローラ14を経て裏面印字が行われ、その後に排紙トレイ15に排出されることになる。
【0046】
そして、実際の画像形成動作時にあっては、中間転写ベルト7と感光体ドラム3との接触による感光体ドラム3の劣化等を軽減するために、印字要求に応じて中間転写ローラ6を中間転写ベルト7に対して接離する方向に移動させ、その移動に伴い中間転写ベルト7と感光体ドラム3との離接が可能となっている。
【0047】
つまり、印字要求としてはカラーモードとモノクロモードとがあり、カラーモード時は、各中間転写ローラ6(6a〜6d)が中間転写ベルト7の裏面に接触するように移動し、これによって、中間転写ベルト7の表面と各感光体ドラム3(3a〜3d)とが接触して各色相のトナー像を中間転写ベルト7に一次転写可能な状態となる。一方、モノクロモード時は、黒画像形成用の中間転写ローラ6aのみが中間転写ベルト7の裏面に接触するように移動し、これによって、中間転写ベルト7の表面と黒画像形成用の感光体ドラム3aとが接触して黒色トナー像を中間転写ベルト7に一次転写可能な状態となる。
【0048】
−除電光の照射構造−
次に、本形態の特徴部分である感光体ドラム3の表面の残留電荷を除去するための除電光の照射構造について説明する。
【0049】
この照射構造について説明する前にクリーニングユニット4について説明する。図1及び図2(感光体ドラム3及びその周辺構造を模式的に示す断面図)に示すように、クリーニングユニット4は、ユニットケーシング41内にトナー回収ローラ42が収容されている。また、このユニットケーシング41の下端部にはブレード取り付け板43が固定されており、このブレード取り付け板43の上端部分にクリーニングブレード44が取り付けられている。尚、これらユニットケーシング41及びブレード取り付け板43によって本発明でいうケーシング部材が構成されている。また、上記クリーニングブレード44は、上端が感光体ドラム3の表面に当接しており、画像形成動作が終了した後に感光体ドラム表面に残留している残留トナーを掻き落としてトナー回収ローラ42側に向けて落下回収するようになっている。
【0050】
そして、本形態の特徴は、上記感光体ドラム3の表面の残留電荷を除去するための除電光の照射するための除電手段としての除電ランプ45が、ブレード取り付け板43の背面側つまり感光体ドラム3の配設位置とは反対側に配設されていることにある。この除電ランプ45は、ランプ本体46と、このランプ本体46からの光の照射方向を設定するためのリフレクタ47とを備えている。そして、この除電ランプ45は、上記帯電器5のケーシング51に向けて除電光を照射する方向に向いている。
【0051】
また、ブレード取り付け板43において、この除電光の照射方向に対面する部分には感光体ドラム3の軸心方向に沿って延びるスリット状の開口43aが形成されている。また、この開口43aは、帯電器5のケーシング51の各外面のうち感光体ドラム3の回転方向の上流側に向いている一つの外面52に対面するように形成されている。
【0052】
このため、除電ランプ45が点灯すると、その発光した除電光のうちの一部はブレード取り付け板43によって遮断され(開口43aの形成部以外の箇所に照射された除電光は遮断され)、その他の除電光は、ブレード取り付け板43の開口43aを通過し、帯電器5のケーシング51の外面52に照射され、このケーシング外面52で反射されて感光体ドラム3の表面に照射されることになる(図2中の矢印A参照)。また、帯電器5のケーシング51の各面のうち上記除電光が照射される面52のみは鏡面仕上げが施されている。これにより、除電光の光量が殆ど減少することなく感光体ドラム3の表面に照射することができ、残留電荷の除去を確実に行うことができるようにしている。
【0053】
具体的には、例えば除電ランプ45からの除電光の照射方向が水平方向であり、これに対し、帯電器5は、クリーニングユニット4に対面する側のケーシング外面52が水平方向に対して約60°の傾斜角度を存するように配置されている。これにより、ケーシング外面52で反射された除電光は水平方向に対して約60°の傾斜角度をもって帯電器5から離れる方向に向けて感光体ドラム3の表面に照射されることになる。これら角度はこれに限るものではなく、感光体ドラム3に対するクリーニングブレード44の当接位置と帯電器5の帯電領域との間の領域に向けて除電光が反射できる構成となっておればよい。
【0054】
このような構成であるため、上記除電ランプ45、ブレード取り付け板43に形成された開口43a、帯電器5のケーシング外面52によって本発明でいう除電装置が構成されている。
【0055】
尚、上記除電ランプ45の支持構造としては、この除電ランプ45をクリーニングユニット4のユニットケーシング41やブレード取り付け板43に取り付けるようにしてもよいし、帯電器5のケーシング51に図示しないランプ支持ブラケットを設けておき、このランプ支持ブラケットに除電ランプ45を取り付ける構成としてもよい。
【0056】
図3は、本実施形態の除電ランプ45の配置状態と、従来例に係る除電ランプaの配置状態とを比較するための図である。図3(a)が本実施形態の除電ランプ45の配置状態を示しており、図3(b)が従来例に係る除電ランプaの配置状態を示している。
【0057】
図3(b)に示すように、従来のものでは、クリーニングユニットb、除電ランプa、帯電器cを感光体ドラムdの周囲に、その回転方向の上流側から下流側に亘って感光体ドラム回転中心の同心円上に配置していた。これでは、これら各部材a,b,cの配置を可能にするために感光体ドラム外面の周長を長く設定しておかねばならず、それに伴って感光体ドラムdも比較的大径のものとなっていた。また、除電光の照射領域(図3(b)における領域α)が帯電器cの帯電領域(図3(b)における領域β)に照射されてしまう可能性もあり、所謂、迷光や漏れ光が発生して、感光体ドラム表面の電位にバラツキが生じたり感光体表面を帯電できなくなるといった事態を招くこともあった。
【0058】
これに対し、図3(a)に示す本実施形態のものでは、除電ランプ45をブレード取り付け板43の背面側に配設したことにより、クリーニングユニット4と帯電器5との間に除電ランプ45を配置する必要がなくなる。このため、クリーニングユニット4と帯電器5との間の間隔を小さくすることができ、感光体ドラム3の小径化を図ることが可能になる。しかも、帯電器5のケーシング外面52で反射した除電光Aは帯電器5による感光体ドラム3上の帯電領域から離れる方向(図3(a)における上側)に向けて光路が変更されることになるため、この除電光Aが帯電領域(図3(a)における領域β)に照射されてしまって(所謂、迷光や漏れ光が発生してしまって)感光体ドラム表面の電位にバラツキが生じたり感光体表面を帯電できなくなるといった事態を回避して帯電特性の安定化を図ることもできる。
【0059】
また、本形態では、クリーニングユニット4を帯電器5に近付ける方向に配置することが可能であるので、図3(a)に示すように、感光体ドラム3における水平方向に延びる中心線Lよりも下側にクリーニングユニット4を配設することが可能になる。このため、クリーニングブレード44で掻き落とした残留トナーを、重力を利用して円滑にトナー回収ローラ42側に落下供給することができ、トナーの飛散を抑制することが可能になる。これにより、クリーニングユニット4の周辺のトナーによる汚れを防止できる。また、このようにトナー回収が容易であるので、感光体ドラム3の表面に対するクリーニングブレード44の押圧力を低く設定することも可能になり、これによって感光体ドラム3の長寿命化を図ることも可能になる。
【0060】
更に、本形態の構成によれば、従来のものに比べて除電ランプ45を帯電器5から離れた位置に配置することになる。この除電ランプ45の周辺では、ランプ本体46の点灯に伴って高温度になっており、この部分では空気密度が小さくなっている。このため、帯電器5で発生したオゾンを除電ランプ45の周辺に迅速に導くこと(空気密度の高い空間から空気密度の低い空間への流動)が可能になり、帯電器5の周囲にオゾンが滞留してしまうことを回避できる(図3(a)における破線の矢印B)。また、感光体ドラム3の回転に伴って生じている空気の流れによってもオゾンを帯電器5の周囲から感光体ドラム3の回転方向下流側に向けて迅速に除去することが可能である(図3(a)における破線の矢印C)。これら作用によって感光体ドラム3の周囲からオゾンを除去することができ、感光体ドラム3のオゾン劣化を抑制することが可能になって、感光体ドラム3の長寿命化を図ることができる。
【0061】
−その他の実施形態−
以上説明した実施形態は、カラープリンタとして構成された画像形成機に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、カラー複写機として構成された画像形成機や、複数の機能を備えた複合機として構成された画像形成機にも適用可能である。また、モノクロタイプのプリンタや複写機に対しても適用可能である。
【0062】
また、除電ランプ45の配置形態として、上記実施形態のものではブレード取り付け板43の背面側(反感光体ドラム側)に配置し、且つブレード取り付け板43の開口43aを通過させて除電光を照射するようにしていた。本発明はこれに限らず、クリーニングユニット4と帯電器5との間に除電光が通過できる程度の隙間を形成しており、この隙間を通過する除電光が帯電器5のケーシング外面52に照射され、このケーシング外面52で反射された後に感光体ドラム3の表面に照射されるように除電ランプ45を配置する構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、帯電器5のケーシング51の各面のうち除電光が照射される面52のみに鏡面仕上げを施していたが、これに変えて梨地仕上げを施してもよい。この梨地仕上げとは、ショット仕上げとも呼ばれ、表面に微小な凹凸をランダムに形成した処理を言う。
【0064】
また、上述した実施形態では、排紙部としては、一つの排紙トレイ15のみを備える構成としたが、図1に仮想線で示す如く、画像形成動作のJOB毎に記録用紙の排出位置を変更するJOBセパレータ15Aを備えさせるようにしてもよい。これにより、複数JOBを略同時に受けた際に画像形成された各JOB毎の印刷物の仕分けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態に係る画像形成機の内部構成を示す図である。
【図2】感光体ドラム及びその周辺構造を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)は実施形態に係る除電ランプの配置状態を示す図であり、(b)は従来例に係る除電ランプの配置状態を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
3 感光体ドラム(感光体)
4 クリーニングユニット
41 ユニットケーシング
43 ブレード取り付け板
43a 開口
45 除電ランプ(除電手段)
5 帯電器(帯電手段)
51 ケーシング
52 ケーシング外面
A 除電光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の表面を帯電させるための帯電手段に近接した位置に配設され、画像形成動作後の感光体表面の残留電荷を除去するための除電用照射光を発する除電手段を備えた除電装置において、
除電手段から照射される除電用照射光は、帯電手段のケーシング外面に向けて照射され、このケーシング外面で反射されることによって感光体表面に照射される構成となっていることを特徴とする除電装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の除電装置において、
感光体の周囲には、画像形成動作後に感光体表面に残留したトナーを除去するためのクリーニングユニットが配設されており、除電手段は、クリーニングユニットの反感光体側である背面側に配置されていることを特徴とする除電装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の除電装置において、
クリーニングユニットのケーシング部材には開口が形成されており、
除電手段は、上記ケーシング部材の開口を通過して帯電手段のケーシング外面に向けて除電用照射光を照射する構成となっていることを特徴とする除電装置。
【請求項4】
上記請求項1、2または3記載の除電装置において、
帯電手段のケーシングの各外面のうち、除電手段から照射される除電用照射光を受ける外面のみに鏡面仕上げが施されていることを特徴とする除電装置。
【請求項5】
上記請求項1、2または3記載の除電装置において、
帯電手段のケーシングの各外面のうち、除電手段から照射される除電用照射光を受ける外面のみに微小な凹凸で成る梨地仕上げが施されていることを特徴とする除電装置。
【請求項6】
上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の除電装置を備え、この除電装置の除電手段から照射される除電用照射光によって感光体表面の残留電荷を除去した後、帯電手段によって感光体表面を帯電させ、その後、感光体表面に対する静電潜像の形成、像可視剤による可視画像の形成、記録媒体に対する可視画像の転写を順に行うことにより画像形成動作を実行する構成となっていることを特徴とする画像形成機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−23390(P2006−23390A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199645(P2004−199645)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】