説明

障害物検出装置

【課題】外部からの情報の取得を不要とすることで簡易な構成としながらも、障害物の形状及び移動体と障害物との相対位置を適切に特定する。
【解決手段】障害物検出装置1は、方位が零でないと判定し、距離変化量の絶対値が第1の所定値以上であり且つ方位変化量の絶対値が第2の所定値以下であると判定すると、障害物が平面形状物体であり、車両と障害物の平面とが斜めの相対位置であると特定し、一方、距離変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は方位変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定すると、障害物が非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の表面側に搭載可能であり、少なくとも1個以上の送信素子から送信波を送信し、送信波が障害物で反射した反射波をアレイ状に配置されている複数個の受信素子により受信することで、障害物までの距離及び障害物の方位を検出する障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1個以上の送信素子から送信波を送信し、送信波が障害物で反射した反射波をアレイ状に配置されている複数個の受信素子により受信することで、障害物までの距離及び障害物の方位を検出する障害物検出装置が供されている。この種の障害物検出装置が車両に搭載されている構成では、例えば車両が後退する際に車両後方に存在する物体を障害物として検出することが可能である。車両が後退する際に障害物となり得る物体としては、車幅方向の広範囲で衝突し得る壁や、車幅方向の狭範囲でのみ衝突し得る(広範囲で衝突し得ない)ポール等が想定される。又、障害物検出装置が車両に搭載される構成では、障害物検出装置は車体の表面側に搭載され、例えば車両後端に取付けられている後端バンパーの表面側に搭載されるのが一般的である。
【0003】
ところで、障害物が方位検出方向に平面を形成する壁等であれば、障害物検出装置が障害物までの距離を算出する際の障害物側の基準点は障害物検出装置から壁面への垂線が直交する点である。そのため、車両が壁面に対して垂直方向に後退する場合であれば、後端バンパーのバンパー面と壁面とが略平行となるので、後端バンパーのバンパー面の何れの箇所から壁面までの距離が最短距離となり、算出した障害物までの距離と車両から壁までの実際の最短距離とが略同じとなる。一方、車両が壁面に対して斜め方向に後退する場合であれば、後端バンパーのバンパー面と壁面とが平行にならないので、後端バンパーのバンパー面の端側から壁面までの距離が最短距離となり、算出した障害物までの距離と車両から壁までの実際の最短距離とが同じとはならない。
【0004】
この問題を解決するには、単に障害物までの距離と障害物の方位を算出するのみでなく、障害物の形状及び車両と障害物との相対位置をも特定し、それら特定した障害物の形状及び車両と障害物との相対位置に応じて最短距離を算出する必要がある。例えば特許文献1には、障害物を検出した車両位置の履歴を記憶し、車速やステアリング角度等の車両走行情報を利用し、それら車両位置の履歴と車両走行情報との相関関係を逐一更新することで、障害物の形状を特定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−343309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に開示されている構成では、車速やステアリング角度等の車両走行情報を外部からの情報として取得する必要があり、外部からの情報を取得する構成が必要になると共に、外部から取得した情報を処理する構成が必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部からの情報の取得を不要とすることで簡易な構成としながらも、障害物の形状及び移動体と障害物との相対位置を適切に特定することができる障害物検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、送信手段は、少なくとも1個以上の送信素子から超音波を送信波として送信し、受信手段は、送信手段から送信された送信波が障害物で反射した反射波をアレイ状に配置されている複数個の受信素子により受信する。距離算出手段は、送信手段から送信波が送信された送信タイミングと受信手段により反射波が受信された受信タイミングとの時間差及び送信波の速度に基づいて障害物までの距離を算出する。方位算出手段は、受信手段のうち一の受信素子により受信された反射波の位相と他の受信素子により受信された反射波の位相との位相差、一の受信素子と他の受信素子との間隔及び送信波の波長に基づいて障害物の方位を算出する。
【0009】
ここで、距離記憶手段は、距離算出手段により算出された障害物までの距離を記憶し、方位記憶手段は、方位算出手段により算出された障害物の方位を記憶する。距離変化量算出手段は、移動体側の搭載面と障害物との相対位置が変化することで発生する距離変化量を距離記憶手段に記憶されている障害物までの距離に基づいて算出し、方位変化量算出手段は、移動体側の搭載面と障害物との相対位置が変化することで発生する方位変化量を方位記憶手段に記憶されている障害物の方位に基づいて算出する。そして、判定手段は、方位算出手段により算出された障害物の方位、距離変化量算出手段により算出された距離変化量及び方位変化量算出手段により算出された方位変化量を判定することで、障害物の形状及び移動体と障害物との相対位置を特定し、その特定結果を出力する。
【0010】
即ち、検出対象とする障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であり、移動体側の搭載面(障害物検出装置が搭載されている面)と障害物の平面とが斜めの相対位置であれば、方位(複数個の受信素子同士を結ぶ線分に対して直交する方向からのずれ角度)が零とならず、移動体から障害物までの距離が経時変化したとしても障害物の方位が経時変化しない(略一定に保たれる)現象が発生する。一方、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であり、その障害物の方位が零であれば、移動体から障害物までの距離が経時変化したとしても障害物の方位が経時変化しない現象が発生するが、その障害物の方位が零でなければ、移動体から障害物までの距離が経時変化したことに追従して障害物の方位も経時変化する現象が発生する。
【0011】
このような現象が発生することに着目し、例えば方位が零でないと判定し、距離変化量の絶対値が第1の所定値以上であり且つ方位変化量の絶対値が第2の所定値以下であると判定することで、障害物が平面形状物体であり、移動体側の搭載面と障害物の平面とが斜めの相対位置であると特定することができる。一方、例えば方位が零でないと判定し、距離変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は方位変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定することで、障害物が非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと特定することができる。この場合、外部から例えば車速やステアリング角度等の情報を取得する必要もないので、簡易な構成としながらも、障害物の形状や障害物との相対位置を適切に特定することができる。尚、ここでいう零とは、零の1値のみを示すものではなく、ある程度の前後の幅(許容値、誤差)を含むほぼ零という意味である。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、送信手段は、複数個の送信素子を備え、複数個の送信素子から送信波を同位相で送信することで指向性を狭角とする狭角送信モードと複数個の送信素子から送信波を逆位相で送信することで指向性を広角とする広角送信モードとを切替可能であり、判定手段は、複数個の送信素子から送信波を狭角送信モードで送信した場合における反射波の複数個の受信素子による受信状態及び複数個の送信素子から送信波を広角送信モードで送信した場合における反射波の複数個の受信素子による受信状態を判定することも含めて、障害物の形状を特定する。
【0013】
即ち、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であれば、送信波を狭角送信モードで送信した場合と送信波を広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信する現象が発生し、一方、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であれば、その障害物が存在する位置に応じて送信波を狭角送信モードで送信した場合及び送信波を広角送信モードで送信した場合の何れか一方のみで反射波を受信する現象が発生する。
【0014】
このような現象が発生することに着目し、送信波を狭角送信モードで送信した場合と送信波を広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信したと判定することで、障害物が平面形状物体であると特定することができ、一方、送信波を狭角送信モードで送信した場合及び送信波を広角送信モードで送信した場合の何れか一方のみで反射波を受信したと判定することで、障害物が非平面形状物体であると特定することができ、障害物の形状をより適切に特定することができる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、送信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して水平方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を含み、それら移動面に対して水平方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能に構成され、受信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して水平方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の受信素子を含んで構成されている。
【0016】
これにより、移動体が移動可能な移動面に対して水平方向に広角に障害物の形状を適切に特定することができる。移動体が移動可能な移動面とは例えば移動体が車両であれば地表面(道路面)が相当し、地表面に対して垂直に立設されているポール等を適切に特定することができる。
【0017】
請求項4に記載した発明によれば、送信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して垂直方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を含み、それら移動面に対して垂直方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能に構成され、受信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して垂直方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の受信素子を含んで構成されている。
【0018】
これにより、移動体が移動可能な移動面に対して垂直方向に広角に障害物の形状を適切に特定することができる。移動体が移動可能な移動面とは例えば移動体が車両であれば地表面が相当し、地表面に対して水平に設置されているバー等を適切に特定することができる。
【0019】
請求項5に記載した発明によれば、送信手段は、三角形を形成するように隣り合って配置されている少なくとも3個の送信素子を含み、それら三角形を形成するように隣り合って配置されている少なくとも3個の送信素子のうち一の組合せである少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能であり且つ他の組合せである少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能に構成され、受信手段は、三角形を形成するように隣り合って配置されている少なくとも3個の受信素子を含んで構成されている。
【0020】
これにより、移動体が移動可能な移動面に対して水平方向及び垂直方向の何れの方向にも(三次元方向に)広角に障害物の形状を適切に特定することができる。移動体が移動可能な移動面とは例えば移動体が車両であれば地表面が相当し、地表面に対して垂直に立設されているポール等及び地表面に対して水平に設置されているバー等の何れをも適切に特定することができる。
【0021】
請求項6に記載した発明によれば、最短距離算出手段は、障害物が平面形状物体であると判定手段により特定された場合に、距離算出手段により算出された障害物までの距離をD、方位算出手段により算出された障害物の方位をθ、移動体側の搭載面における最短距離の算出点と障害物検出装置の搭載位置との間隔をdとし、移動体から障害物までの最短距離Xを次式にしたがって算出し、その算出結果を出力する。
X=D/cosθ−d×tanθ
これにより、移動体から障害物である平面形状物体までの最短距離を簡易な演算式により算出することができる。
【0022】
請求項7に記載した発明によれば、最短距離算出手段は、障害物が非平面形状物体であると判定手段により特定された場合に、距離算出手段により算出された障害物までの距離をD、方位算出手段により算出された障害物の方位をθとし、移動体から障害物までの最短距離Xを次式にしたがって算出し、その算出結果を出力する。
X=D×cosθ
これにより、移動体から障害物である非平面形状物体までの最短距離を簡易な演算式により算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す機能ブロック図
【図2】車両に搭載されている態様を示す図
【図3】フローチャート
【図4】原理を示す図
【図5】本発明の第2の実施形態を示す機能ブロック図
【図6】送信音圧を示す図
【図7】フローチャート
【図8】受信電圧を示す図
【図9】車椅子型車両に搭載されている態様を示す図
【図10】移動ロボットに搭載されている態様を示す図
【図11】固定ロボットの可動部に搭載されている態様を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明を車両に搭載されることで車載用として適用された第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は障害物検出装置の構成を機能ブロック図により示している。障害物検出装置1は、送信タイミング制御部2と、送信波生成部3と、1個の送信マイク4(本発明でいう送信手段、送信素子)と、2個の受信マイク5a,5b(本発明でいう受信手段、受信素子)と、信号増幅部6a,6bと、信号処理部7とを備えて構成されている。信号処理部7は、閾値判定部8と、距離算出部9(本発明でいう距離算出手段)と、方位算出部10(本発明でいう方位算出手段)と、記憶部11(本発明でいう距離記憶手段、方位記憶手段)と、距離変化量算出部12(本発明でいう距離変化量算出手段)と、方位変化量算出部13(本発明でいう方位変化量算出手段)と、判定部14(本発明でいう判定手段)と、最短距離算出部15(本発明でいう最短距離算出手段)とを備えて構成されている。
【0025】
送信タイミング制御部2は、送信波の送信タイミングを決定し、その決定した送信タイミングを示す送信タイミング信号を送信波生成部3、閾値判定部8及び距離算出部9に出力する。送信波生成部3は、送信タイミング制御部2から送信タイミング信号を入力すると、所定の角周波数及びパルス数(例えば10パルス)の超音波を送信波として送信マイク4に出力する。
【0026】
送信マイク4は、圧電素子がカバーに覆われる形状をなし、圧電素子が駆動することでカバーが共振する共振型マイクにより構成されており、送信波生成部3から送信波を入力すると、その入力した送信波を圧電素子に供給し、圧電素子を駆動させてカバーを共振させることで送信波を外部に向けて送信する。送信マイク4から送信された送信波の一部は障害物に衝突すると反射し、その反射した送信波の一部は反射波となる。この場合、送信波が衝突した面が平面であれば、反射波の反射方向は平面に対して直交する方向となり、送信波が衝突した面が曲面であれば、反射波の反射方向は曲面に接する接線に対して直交する方向(法線方向)となる。
【0027】
受信マイク5a,5bは、上記した送信マイク4と同様にして、圧電素子がカバーに覆われる形状をなし、圧電素子が駆動することでカバーが共振する共振型マイクにより構成されており、送信マイク4から送信された送信波が障害物で反射した反射波を受信すると、圧電素子が発生した電圧に対応する受信信号を信号増幅部6a,6bに出力する。受信マイク5a,5bは、後述するように障害物検出装置1が車両に搭載されている状態では地表面に対して水平となるように隣り合って配置されており、それらの間隔は送信波生成部3にて生成される送信波の波長の0.5倍であることが望ましい。又、このように受信マイク5a,5bが地表面に対して水平となるように隣り合って配置されている構成では、受信マイク5aにより受信される反射波の位相と受信マイク5bにより受信される反射波の位相との位相差は水平方向で発生するので、方位検出方向は水平方向となる。
【0028】
信号増幅部6a,6bは、受信マイク5a,5bから受信信号を入力すると、その入力した受信信号を予め設定している増幅率にしたがって増幅し、その増幅した受信信号を閾値判定部8に出力する。
【0029】
閾値判定部8は、A/D変換部と、直交復調部と、LPF(ローパスフィルタ)とを有して構成されており、受信マイク6a,6bから受信信号を入力すると、その入力した受信信号を所定のサンプリング周波数(サンプリング定理に基づく送信波の周波数の2倍以上の周波数であり、例えば送信波の周波数の4倍の周波数)でサンプリングしてデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した受信信号と、送信タイミング制御部2から入力した送信タイミング信号により示される送信タイミングに基づく正弦波とを乗算し、受信信号を同相成分(I成分)と直交成分(Q成分)とに分離し、それら受信信号の高周波成分を除去する。そして、閾値判定部8は、I成分の受信信号及びQ成分の受信信号の振幅を計算し、その計算した受信信号の振幅が予め設定されている閾値(振幅レベル)以上であることを条件として、その受信信号の振幅が閾値以上となったタイミングに基づいて反射波の受信タイミングを判定し、その判定した受信タイミングを示す受信タイミング信号を距離算出部9及び方位算出部10に出力する。
【0030】
距離算出部9は、送信波生成部2から送信タイミング信号を入力すると共に閾値判定部8から受信タイミング信号を入力すると、それら入力した送信タイミング信号により示される送信波の送信タイミングと受信タイミング信号により示される反射波の受信タイミングとの時間差及び音速(本発明でいう送信波の速度)に基づいて障害物までの距離を算出し、その算出した障害物までの距離を記憶部11に出力する。即ち、距離算出部9は、温度を「T(℃)」、温度Tの条件下での音速を「C」、送信波の送信タイミングと反射波の受信タイミングとの時間差を「Δt」、障害物までの距離を「D」とすると、温度「T」の条件下での音速「C」を以下に示す演算式にしたがって算出し、
C=331.5+0.61×T
障害物までの距離「D」を以下に示す演算式にしたがって算出する。
D=C×Δt/2
【0031】
方位算出部10は、閾値判定部8から受信タイミング信号を入力すると、受信マイク5aにより受信された反射波の位相と受信マイク5bにより受信された反射波の位相との位相差、受信マイク5aと受信マイク5bとの間隔及び送信波の波長に基づいて障害物の方位を算出し、その算出した障害物の方位を記憶部11に出力する。この場合、障害物の方位は受信マイク5a,5bを結ぶ線分に対して直交する方向からのずれ角度で表される。即ち、方位算出部10は、送信波の周波数を「f」、送信波の波長を「λ」、受信マイク5aにより受信された反射波の位相と受信マイク5bにより受信された反射波の位相との位相差を「Δφ」、受信マイク5aと受信マイク5bとの間隔を「a」、障害物の方位を「θ」とすると、送信波の波長「λ」を以下に示す演算式にしたがって算出し、
λ=C/f
障害物の方位「θ」を以下に示す演算式にしたがって算出する。
θ=arcsin(λ×Δφ/(2π×a))
【0032】
記憶部11は、所定の算出タイミングで距離算出部9にて算出された障害物までの距離を距離算出部9から時系列で入力すると、その時系列で入力した障害物までの距離を時系列で記憶し、所定の算出タイミングで方位算出部10にて算出され障害物の方位を方位算出部10から時系列で入力すると、その時系列で入力した障害物の方位を時系列で記憶する。
【0033】
距離変化量算出部12は、記憶部11に記憶されている算出タイミングが異なる(算出タイミングに時間差を有する)少なくとも2個の障害物までの距離を算出対象とし、それら障害物までの距離の変化量(本発明でいう距離変化量)を算出し、その算出した距離の変化量を判定部14に出力する。方位変化量算出部13は、記憶部11に記憶されている算出タイミングが異なる少なくとも2個の障害物の方位を算出対象とし、それら障害物の方位の変化量(本発明でいう方位変化量)を算出し、その算出した方位の変化量を判定部14に出力する。
【0034】
判定部14は、距離変化量算出部12から距離の変化量を入力し、方位変化量算出部13から方位の変化量を入力すると、それら入力した距離の変化量及び方位の変化量に基づいて障害物の形状及び車両と障害物との相対位置を後述する特定手順にしたがって特定し、その特定した障害物の形状及び車両と障害物との相対位置を示す形状相対位置情報を外部に出力する。最短距離算出部15は、記憶部11に記憶されている障害物までの距離及び障害物の方位に基づいて車両から障害物までの最短距離を後述する算出手順にしたがって算出し、その算出した車両から障害物までの最短距離を示す最短距離情報を外部に出力する。
【0035】
上記したように構成されてなる障害物検出装置1は図2に示すように例えば車両16(本発明でいう移動体)の車体17にあって後端に取付けられている後端バンパー18のバンパー面18aの車幅方向の中心側に1個のみ埋設される格好で搭載されている。即ち、本実施形態で示す障害物検出装置1は車両後方の障害物を検出する。又、障害物検出装置1は、ECU又はセンサから車両のシフト位置を示すシフト位置信号を入力することで、車両のシフト位置を特定可能であり、イグニッション(IG)スイッチのオンオフを示すIG信号を入力することで、イグニッションスイッチのオンオフを特定可能であり、イグニッションスイッチのオンを特定している状態で動作(電源オン)するように構成されている。
【0036】
次に、上記した構成の作用について、図3乃至図4を参照して説明する。
障害物検出装置1は、イグニッションスイッチがオンしていることで動作状態にある場合には、シフト位置が後退位置であるか(後退位置に変位したか)否かを監視している(ステップS1)。障害物検出装置1は、ECU又はセンサから入力したシフト位置信号に基づいてシフト位置が後退位置であると判定すると(ステップS1にて「YES」)、送信波生成部3により生成された送信波を送信マイク4から送信する(ステップS2)。ここで、車両後方に壁やポール等の障害物が存在し、送信マイク4から送信された送信波の一部が障害物に衝突して反射すると、その反射した送信波の一部は反射波となり、受信マイク5a,5bにより受信される。
【0037】
障害物検出装置1は、送信マイク4から送信された送信波が障害物で反射した反射波を受信マイク5a,5bにより受信したか否かを判定し(ステップS3)、送信マイク4から送信された送信波が障害物で反射した反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと
判定すると(ステップS3にて「YES」)、受信マイク5a,5bにより受信した反射波に対応する受信信号の振幅が閾値以上であるか否かを閾値判定部8にて判定し、受信信号の振幅が閾値以上となったタイミングに基づいて反射波の受信タイミングを閾値判定部8にて判定する(ステップS4)。
【0038】
ここで、障害物検出装置1は、受信信号の振幅が閾値以上であると判定すると(ステップS4にて「YES」)、送信波の送信タイミングと反射波の受信タイミングとの時間差及び音速に基づいて障害物までの距離を距離算出部9にて算出する。又、障害物検出装置1は、受信マイク5aにより受信された反射波の位相と受信マイク5bにより受信された反射波の位相との位相差、受信マイク5aと受信マイク5bとの間隔及び送信波の波長に基づいて障害物の方位を方位算出部10にて算出する(ステップS5)。そして、障害物検出装置1は、算出した方位が零であるか否かを判定する(ステップS6)。ここでいう零とは、零の1値のみを示すものではなく、ある程度の前後の幅(許容値、誤差)を含むほぼ零という意味である。
【0039】
ここで、障害物検出装置1は、算出した方位が零でないと判定すると(ステップS6にて「NO」)、それら算出した障害物までの距離及び障害物の方位を記憶部11に記憶する(ステップS7)。次いで、障害物検出装置1は、記憶部11に記憶されている算出タイミングが異なる少なくとも2個の障害物までの距離を算出対象とし、それら障害物までの距離の変化量を距離変化量算出部12にて算出し、記憶部11に記憶されている算出タイミングが異なる少なくとも2個の障害物の方位を算出対象とし、それら障害物の方位の変化量を方位変化量算出部13にて算出する(ステップS8)。
【0040】
そして、障害物検出装置1は、その算出した障害物までの距離の変化量を予め設定されている第1の所定値と判定部14にて比較し、その算出した障害物の方位の変化量を予め設定されている第2の所定値と判定部14にて比較する(ステップS9)。第1の所定値
及び第2の所定値は製品の製造段階で設定される値であっても良いし出荷後や搭載後に設定される値であっても良い。
【0041】
ここで、本実施形態では、障害物検出装置1は、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上であり且つ障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下であると判定すると(ステップS9にて「YES」)、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であり、後端バンパー18のバンパー面18aと障害物の平面とが斜めの相対位置であると判定部14にて特定する(ステップS10)。そして、障害物検出装置1は、平面形状物体であると特定した障害物までの最短距離を最短距離算出部15にて算出する(ステップS11)。
【0042】
一方、障害物検出装置1は、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定すると(ステップS9にて「NO」)、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと判定部14にて特定する(ステップS12)。そして、障害物検出装置1は、非平面形状物であると特定した障害物までの最短距離を最短距離算出部15にて算出する(ステップS13)。
【0043】
即ち、図4に示すように、時刻「t1」のタイミングで算出した障害物までの距離を「D1」、障害物の方位を「θ1」とし、時刻「t1」から所定時間が経過した時刻「t2」のタイミングで算出した障害物までの距離を「D2」、障害物の方位を「θ2」とすると、以下の現象が発生する。
【0044】
図4(a)に示すように、障害物が方位検出方向に平面を形成する例えば地表面に対して垂直に立設されている壁であり、車両が壁面に対して斜め方向に後退する場合であれば、障害物までの距離が経時変化した(短くなった)としても障害物の方位は経時変化しない(略一定に保たれる)現象が発生し、以下に示す関係が成立する。
D1>D2
θ1≒θ2
【0045】
一方、図4(b)に示すように、障害物が方位検出方向に平面を形成しない例えば地表面に対して垂直に立設されているポールであり、方位が零でない位置に存在していれば、障害物までの距離が経時変化した(短くなった)ことに追従して障害物の方位も経時変化する(広がる)現象が発生し、以下に示す関係が成立する。
D1>D2
θ1<θ2
【0046】
障害物検出装置1は、このような現象が発生することに着目し、方位が零でないと判定し、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上であり且つ障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下であると判定することで、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であり、車両16(バンパー面18a)と障害物の平面とが斜めの相対位置であると特定する。一方、障害物検出装置1は、方位が零でないと判定し、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定することで、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと特定する。
【0047】
そして、障害物検出装置1は、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であり、車両16と障害物の平面とが斜めの相対位置であると特定した場合であれば、バンパー面18aにおける最短距離の算出点と障害物検出装置1の搭載位置との間隔を「d」、バンパー面18aから障害物までの最短距離を「X」とし、バンパー面18aから障害物までの最短距離「X」を以下の演算式にしたがって算出する。
X=D/cosθ−d×tanθ
【0048】
一方、障害物検出装置1は、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと特定した場合であれば、バンパー面18aから障害物までの最短距離「X」を以下の演算式にしたがって算出する。
X=D×cosθ
【0049】
そして、障害物検出装置1は、このようにして判定部14にて特定した障害物の形状及び車両16と障害物の平面との相対位置を示す形状相対位置情報や最短距離算出部15にて算出した障害物までの最短距離を示す最短距離情報を外部に出力する。この場合、例えば障害物検出装置1から出力された形状相対位置情報や最短距離情報が車室内表示装置に入力されて当該表示装置にて表示されることで、障害物の形状及び車両16と障害物の平面との相対位置や車両16から障害物までの最短距離がユーザに視覚的に通知されても良いし、車室内のスピーカに入力されて当該スピーカから音声出力されることで、障害物の形状及び車両16と障害物の平面との相対位置や車両16から障害物までの最短距離がユーザに聴覚的に通知されても良い。又、例えば障害物検出装置1から出力された形状相対位置情報や最短距離情報が走行制御ECUに入力されることで、最短距離に基づいてアクセル動作が強制的に弱められると同時にブレーキ動作が強制的に強められる等の自動走行制御が行われるようにしても良い。更に、これらが併用されても良い。
【0050】
尚、障害物検出装置1は、算出した方位が零であると判定すると(ステップS6にて「YES」)、障害物が非平面形状物体であるか非平面形状物体であるかを特定することなく、障害物の方位が零であると判定部14にて特定し(ステップS14)、その方位が零であると特定した障害物までの最短距離を最短距離算出部15にて算出する(ステップS15)。
【0051】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、障害物検出装置1において、方位算出部10にて算出した方位が零でないと判定し、距離変化量算出部12にて算出した距離変化量の絶対値が第1の所定値以上であり且つ方位変化量算出部13にて算出した方位変化量の絶対値が第2の所定値以下であると判定すると、障害物が平面形状物体であり、車両16と障害物の平面とが斜めの相対位置であると特定し、一方、距離変化量算出部12にて算出した距離変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は方位変化量算出部13にて算出した方位変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定すると、障害物が非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと特定するように構成したので、簡易な構成としながらも、障害物の形状や障害物との相対位置を適切に特定することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図5乃至図8を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。第2の実施形態は、2個の送信マイクが設けられ、2個の送信マイクから送信波を同位相で送信することで指向性を狭角とする狭角送信モードと、2個の送信マイクから送信波を逆位相で送信することで指向性を広角とする広角送信モードとを切替可能に構成されている。
【0053】
即ち、障害物検出装置21において、2個の送信マイク4a,4bは、送信波生成部3から送信波を入力すると、その入力した送信波を圧電素子に供給し、圧電素子を駆動させてカバーを共振させることで送信波を外部に向けて送信する。2個の送信マイク4a,4bも、2個の受信マイク5a,5bと同様にして、障害物検出装置21が車両に搭載されている状態では地表面に対して水平となるように隣り合って配置されており、それらの間隔は送信波生成部3にて生成される送信波の波長の0.5倍となっている。
【0054】
ここで、複数個の送信マイクが送信波を同位相又は逆位相で送信する場合について図6を参照して説明する。送信波の送信と反射波の受信とを兼用する4個の送受信マイク31〜34が正方形状に配置されている場合に、4個の送受信マイク31〜34のうち何れかが送信波を送信した場合(図6(a)参照)、4個の送受信マイク31〜34が送信波を全て同位相で送信した場合(図6(b)参照)、4個の送受信マイク31〜34のうち垂直方向に隣り合っている同士が送信波を同位相で送信すると共に水平方向に隣り合っている同士が送信波を逆位相で送信した場合(図6(c)参照)での水平方向の送信音圧を対比すると、送信波を全て同位相で送信した場合では、送信波を単体で送信した場合と比較すると、方位検出方向の指向性が狭角に高められており、一方、送信波を逆位相で送信した場合では、送信波を単体で送信した場合と比較すると、方位検出方向の指向性が広角に高められている。
【0055】
即ち、送信マイク4a,4bについても同様であり、送信マイク4a,4bが送信波を同位相で送信した場合であれば、方位検出方向の指向性が狭角に高められ、狭角での検出精度は高いが広角での検出精度は低い特性となるか又は検出不可となり、一方、送信マイク4a,4bが送信波を逆位相で送信した場合であれば、方位検出方向の指向性が広角に高められ、広角での検出精度は高いが狭角での検出精度は低い特性となるか又は検出不可となる。
【0056】
この場合、障害物検出装置21は、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定すると(ステップS9にて「NO」)、上記した第1の実施形態とは異なり、直ぐには障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であると特定するのではなく、送信波を狭角送信モード及び広角送信モードの双方で順次送信し、送信波を狭角送信モードで送信した場合に反射波を受信マイク5a,5bにより受信したか否かを判定し、送信波を広角送信モードで送信した場合に反射波を受信マイク5a,5bにより受信したか否かを判定する(ステップS21)。
【0057】
ここで、障害物検出装置21は、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと判定すると(ステップS21にて「YES」)、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であり、後端バンパー18のバンパー面18aと障害物の平面とが斜めの相対位置であると判定部14にて特定し(ステップS10)、平面形状物体であると特定した障害物までの最短距離を最短距離算出部15にて算出する(ステップS11)。即ち、障害物検出装置21は、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上でない又は障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下でないと判定したとしても、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと判定すると、前者の判定結果を尊重せずに、後者の判定結果を尊重する。
【0058】
一方、障害物検出装置21は、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信しなかった、即ち、送信波を狭角送信モードで送信した場合及び広角送信モードで送信した場合の何れかのみで反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと判定すると(ステップS21にて「NO」)、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であり、その障害物の方位が零でないと判定部14にて特定し(ステップS12)、非平面形状物体であると特定した障害物までの最短距離を最短距離算出部15にて算出する(ステップS13)。
【0059】
即ち、図8(a)に示すように、障害物が方位検出方向に平面を形成する壁であれば、受信電圧に大小の差があるが、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信する現象が発生する。一方、図8(b)、(c)に示すように、障害物が方位検出方向に平面を形成しないポールであれば、送信波を狭角送信モードで送信した場合及び広角送信モードで送信した場合の何れかのみで反射波を受信マイク5a,5bにより受信する現象が発生する。
【0060】
障害物検出装置21は、このような現象が発生することに着目し、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと判定することで、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であると特定し、一方、送信波を狭角送信モードで送信した場合及び広角送信モードで送信した場合の何れかのみで反射波を受信したと判定することで、障害物が方位検出方向に平面を形成しない非平面形状物体であると特定する。
【0061】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、障害物検出装置21において、送信波を狭角送信モードで送信した場合と送信波を広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信したと判定すると、障害物が平面形状物体であると特定し、一方、送信波を狭角送信モードで送信した場合及び送信波を広角送信モードで送信した場合の何れか一方のみで反射波を受信したと判定すると、障害物が非平面形状物体であると特定するように構成したので、障害物の形状をより適切に特定することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。
【0063】
送信素子及び受信素子は例えば特開2009−225419号公報に開示されているような音響整合部材が採用されている素子であっても良い。
複数個の障害物検出装置1が車体17の後端に取付けられている後端バンパー18のバンパー面18aの長手方向に沿って搭載される構成であっても良い。又、後端バンパー18のバンパー面18aに搭載される構成に限らず、車体の前端に取付けられている前端バンパーのバンパー面に搭載されたり、車体の側面に搭載されたりする構成であっても良い。更に、移動体が大型であれば、複数個の障害物検出装置1が互いの検出エリアをずらす又は一部が重なるように同一表面上に搭載される構成であっても良い。
【0064】
送信波を送信する送信マイクと反射波を受信する受信マイクとが別々に搭載される構成に限らず、送信波の送信と反射波の受信とを兼用する送受信兼用のマイクが搭載される構成であっても良い。又、送受信兼用の素子が搭載される構成でも、上記した音響整合部材が採用されている素子であっても良い。
【0065】
障害物の方位が零でないと判定した場合に限らず、障害物の方位が零であると判定した場合にも、送信波を狭角送信モード及び広角送信モードの双方で送信することで、障害物が平面形状物体であるか非平面形状物体であるかを特定するようにしても良い。即ち、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと判定することで、障害物が平面形状物体であると特定し、一方、送信波を狭角送信モードで送信した場合及び広角送信モードで送信した場合の何れかのみで反射波を受信したと判定することで、障害物が非平面形状物体であると特定するようにしても良い。
【0066】
算出した方位が零であるか否かを判定することなく(ステップS6を省略し)、算出した方位が零であるか否かに拘らず、算出した障害物までの距離及び障害物の方位を記憶部11に記憶し(ステップS7)、以降の処理を行うようにしても良い。
【0067】
2個の送信マイク4a,4bが送信波を同位相で送信する狭角送信モードと逆位相で送信する広角送信モードとを切替える構成において、障害物までの距離の変化量の絶対値が第1の所定値以上であり且つ障害物の方位の変化量の絶対値が第2の所定値以下であると判定し、且つ、送信波を狭角送信モードで送信した場合と広角送信モードで送信した場合との双方で反射波を受信マイク5a,5bにより受信したと判定した場合に限って、障害物が方位検出方向に平面を形成する平面形状物体であり且つ後端バンパー18のバンパー面18aと障害物の平面とが斜めの相対位置であると判定するようにしても良い。
【0068】
受信マイク5a,5bが地表面に対して垂直となるように隣り合って配置されている構成であっても良く、このように構成すれば、方位検出方向を垂直方向とすることができ、地表面に対して垂直方向に障害物の形状を特定することができ、例えばバー等を特定することができる。又、三角形を形成するように3個の受信マイクが配置されている構成であっても良く、このように構成すれば、地表面に対して水平方向及び垂直方向の何れの方向にも(三次元方向に)広角に障害物の形状を特定することができ、例えばポール及びバー等の何れをも特定することができる。更に、少なくとも地表面に対して水平となるように隣り合って配置されている2個の受信マイクと地表面に対して垂直となるように隣り合って配置されている2個の受信マイクとを含む四角形を形成するように4個の受信マイクが配置されている構成であっても良い。
【0069】
複数個の送信マイクを備える構成において、複数個の送信マイクが地表面に対して垂直となるように隣り合って配置され、それら地表面に対して垂直に隣り合って配置されている複数個の送信マイクが送信波を同位相で送信する狭角送信モードと逆位相で送信する広角送信モードと切替える構成であっても良い。又、複数個の送信マイクが三角形を形成するように配置され、それら三角形を形成するように配置されている複数個の送信マイクが送信波を同位相で送信する狭角送信モードと逆位相で送信する広角送信モードと切替える構成であっても良い。
【0070】
障害物が壁に限らず既に駐車している他の車両の車体であっても、同様の原理により、既に駐車している他の車両の車体を平面形状物体であると特定することができる。又、障害物がポールに限らず人であっても、同様の原理により、人を非平面形状物体であると特定することができる。
【0071】
移動体は車両16に限らない。即ち、図9に示すように移動体が車椅子型車両41であっても良い。車椅子型車両41は、運転者が乗り込む座席を兼用する車体42に4個の駆動輪43(図9では3個のみ示す)が駆動機構として取付けられ、車体42における運転者から見て左側の位置には左側アームレスト操作盤44が配置されていると共に運転者から見て右側の位置には右側アームレスト操作盤45が配設されて移動可能に構成されている。そして、車体42の前端面42aに障害物検出装置1が搭載されている。勿論、この場合も、障害物検出装置1が車体42の後端や側面に搭載される構成であっても良い。
【0072】
又、図10に示すように移動体が移動ロボット51であっても良い。移動ロボット51は、例えば工場の敷地内を移動しながら製品の組立作業等を行うものであり、例えば6軸型アームからなるロボットアーム52が搬送台53に搭載されると共に、搬送台53に4個の駆動輪54(図10では2個のみ示す)が駆動機構として取付けられ、それら4個の駆動輪54がモータにより駆動されると共に操舵されることで例えば工場の敷地内に敷設されているガイドラインやガイドセンサに沿って移動可能に構成されている。そして、搬送台53の前端面53aに障害物検出装置1が搭載されている。勿論、この場合も、障害物検出装置1が搬送台53の後端や側面に搭載される構成であっても良い。このように障害物検出装置1が移動ロボット51に搭載されている構成では、工場の敷地内に設置されている作業設備や移動ロボット51の作業対象であるワーク等を障害物として検出することができる。又、移動ロボットは、駆動機構として駆動輪54が採用されている車両型の移動ロボットに限らず、駆動機構として足が採用されている二足歩行型の移動ロボットであっても良い。
【0073】
更に、図11に示すように移動体が固定ロボット61の可動部であっても良い。固定ロボット61は、例えば6軸の垂直多関節型ロボットであり、工場の敷地内に設置されている作業台62に立設され、作業台62に固定されているベース63と、ベース63に水平方向に旋回可能に支持されているショルダ部64と、ショルダ部64に上下方向に旋回可能に支持されている下アーム65と、下アーム65に上下方向に旋回可能に支持されている第1の上アーム66と、第1の上アーム66の先端部に捻り回転可能に支持されている第2の上アーム67と、第2の上アーム67に上下方向に回転可能に支持されている手首68と、手首68に回転(捻り動作)可能に支持されているフランジ69(本発明でいう可動部)とを備えて構成されている。フランジ69は例えばワークを把持するためのハンド(図示せず)が着脱可能になっており、そのフランジ面69aに障害物検出装置1が搭載されている。障害物検出装置1がフランジ69に限らず可動する箇所であれば何れの箇所に搭載される構成であっても良い。このように障害物検出装置1が固定ロボット61の可動部に搭載されている構成では、固定ロボット61の可動部の可動領域に配置されている作業設備や固定ロボット61の作業対象であるワーク等を障害物として検出することができる。
【符号の説明】
【0074】
図面中、1は障害物検出装置、4は送信マイク(送信手段、送信素子)、5a,5bは受信マイク(受信手段、受信素子)、9は距離算出部(距離算出手段)、10は方位算出部(方位算出手段)、11は記憶部(距離記憶手段、方位記憶手段)、12は距離変化量算出部(距離変化量算出手段)、13は方位変化量算出部(方位変化量算出手段)、14は判定部(判定手段)、15は最短距離算出部(最短距離算出手段)、16は車両(移動体)、21は障害物検出装置、4a,4bは送信マイク(送信手段、送信素子)、31〜34は送受信マイク(送信手段、送信素子、受信手段、受信素子)、41は車椅子型車両(移動体)、51は移動ロボット(移動体)、61は固定ロボット、69はフランジ部(移動体、可動部)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の表面側に搭載可能な障害物検出装置であって、
少なくとも1個以上の送信素子から超音波を送信波として送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された送信波が障害物で反射した反射波をアレイ状に配置されている複数個の受信素子により受信する受信手段と、
前記送信手段から送信波が送信された送信タイミングと前記受信手段により反射波が受信された受信タイミングとの時間差及び送信波の速度に基づいて障害物までの距離を算出する距離算出手段と、
前記受信手段のうち一の受信素子により受信された反射波の位相と他の受信素子により受信された反射波の位相との位相差、前記一の受信素子と前記他の受信素子との間隔及び送信波の波長に基づいて障害物の方位を算出する方位算出手段と、
前記距離算出手段により算出された障害物までの距離を記憶する距離記憶手段と、
前記方位算出手段により算出された障害物の方位を記憶する方位記憶手段と、
移動体側の搭載面と障害物との相対位置が変化することで発生する距離変化量を前記距離記憶手段に記憶されている障害物までの距離に基づいて算出する距離変化量算出手段と、
移動体側の搭載面と障害物との相対位置が変化することで発生する方位変化量を前記方位記憶手段に記憶されている障害物の方位に基づいて算出する方位変化量算出手段と、
前記方位算出手段により算出された障害物の方位、前記距離変化量算出手段により算出された距離変化量及び前記方位変化量算出手段により算出された方位変化量を判定することで、障害物の形状及び移動体と障害物との相対位置を特定し、その特定結果を出力する判定手段と、を備えたことを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した障害物検出装置において、
前記送信手段は、複数個の送信素子を備え、前記複数個の送信素子から送信波を同位相で送信することで指向性を狭角とする狭角送信モードと、前記複数個の送信素子から送信波を逆位相で送信することで指向性を広角とする広角送信モードとを切替可能であり、
前記判定手段は、複数個の送信素子から送信波を狭角送信モードで送信した場合における反射波の前記複数個の受信素子による受信状態及び前記複数個の送信素子から送信波を広角送信モードで送信した場合における反射波の前記複数個の受信素子による受信状態を判定することも含めて、障害物の形状を特定することを特徴とする障害物検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載した障害物検出装置において、
前記送信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して水平方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を含み、それら移動面に対して水平方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能に構成され、
前記受信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して水平方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の受信素子を含んで構成されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載した障害物検出装置において、
前記送信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して垂直方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を含み、それら移動面に対して垂直方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能に構成され、
前記受信手段は、移動体が移動可能な移動面に対して垂直方向に隣り合って配置されている少なくとも2個の受信素子を含んで構成されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項5】
請求項2に記載した障害物検出装置において、
前記送信手段は、三角形を形成するように隣り合って配置されている少なくとも3個の送信素子を含み、それら三角形を形成するように隣り合って配置されている少なくとも3個の送信素子のうち一の組合せである少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能であり且つ他の組合せである少なくとも2個の送信素子を対象として狭角送信モードと広角送信モードとを切替可能に構成され、
前記受信手段は、三角形を形成するように隣り合って配置されている少なくとも3個の受信素子を含んで構成されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載した障害物検出装置において、
障害物が平面形状物体であると前記判定手段により判定された場合に、前記距離算出手段により算出された障害物までの距離をD、前記方位算出手段により算出された障害物の方位をθ、移動体側の搭載面における最短距離の算出点と障害物検出装置の搭載位置との間隔をdとし、移動体から障害物までの最短距離Xを次式にしたがって算出し、その算出結果を出力する最短距離算出手段を備えたことを特徴とする障害物検出装置。
X=D/cosθ−d×tanθ
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載した障害物検出装置において、
障害物が非平面形状物体であると前記判定手段により判定された場合に、前記距離算出手段により算出された障害物までの距離をD、前記方位算出手段により算出された障害物の方位をθとし、移動体から障害物までの最短距離Xを次式にしたがって算出し、その算出結果を出力する最短距離算出手段を備えたことを特徴とする障害物検出装置。
X=D×cosθ
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載した障害物検出装置において、
移動体として車両に搭載されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載した障害物検出装置において、
移動体として移動ロボットに搭載されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至7の何れかに記載した障害物検出装置において、
移動体として固定ロボットの可動部に搭載されていることを特徴とする障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−133247(P2011−133247A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290508(P2009−290508)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】