説明

障害物検知装置

【課題】隣り合う2つの超音波ソナーの双方で障害物検知が行えるエリアを広げ、広範囲で障害物の位置特定が行えるようにする。
【解決手段】超音波ソナー2a、2bのいずれか一方を送受信モードにすると共に他方を受信モードとし、かつ、受信モードに設定する方に関しては受信感度を高めるようにする。これにより、隣り合う2つの超音波ソナー2a、2bの双方で障害物検知が行えるエリアD2を広げることが可能となり、広範囲で障害物の位置特定を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバンパー等に備えられる超音波ソナーを用いて、車両近傍の障害物を検知してドライバに対して警報を発生させる障害物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のバンパー等に配置した超音波ソナーを用いて車両近傍の障害物を検知してドライバに対して警報を発生させる障害物検知装置が知られている。この障害物検知装置では、超音波ソナーから超音波の送波を送信し、障害物からの反射波を受波として受信したときまでの時間を計測すると共に、計測時間に基づいて障害物までの距離を求め、この距離が所定距離より短い場合に警報を発生させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような障害物検知装置において、車両の左右2箇所に超音波ソナーを配置し、2つの超音波ソナーを用いて障害物検知を行っているものがある。図10(a)、(b)は、この障害物検知装置による障害物検知の様子を示した模式図である。
【0004】
図10(a)に示すように、車両の左右2箇所にある超音波ソナー2a、2bを用いてそれぞれの障害物検知エリアDa、Dbに存在する障害物を検知し、各超音波ソナー2a、2bからの距離に応じた報知音にて警報を行う。例えば、図中に示した各超音波ソナー2a、2bを中心とした円弧を境界として異なる報知音(例えば、車両から近い順に連続音、断続音1、断続音2、断続音3など)にて警報を行っている。このとき、超音波ソナー2a、2bの障害物検知エリアDa、Dbのうち重なっていないエリアD1a、D1bでは各超音波ソナー2a、2bからの距離に応じた報知音で警報が行えるが、重なっているエリアD2では超音波ソナー2a、2bと障害物との間の往復反射波が同じになる部分で各超音波ソナー2a、2bを中心とした円弧の境界にずれが生じるため、同じ場所で異なる報知音となる場所が発生し、報知音の切り替わりが円滑に行えなくなる。
【0005】
このため、図10(b)に示すように、一方の超音波ソナー2aを送受信を行うモード(以下、送受信モードという)にすると共に、他方の超音波ソナー2bを受信のみを行うモード(以下、受信モードという)とし、超音波ソナー2a→障害物→超音波ソナー2bの経路での距離情報を得るようにしている。これにより、超音波ソナー2a、2bの2点を楕円の2つの中心と見なして障害物までの距離を得ることができるため、2つの超音波ソナー間のエリアD2での障害物の位置特定を行い、それを利用して報知音の切り替わりの補正を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−333609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように報知音の切り替わりの補正を行うために2つの超音波ソナー間のエリアD2での障害物の位置特定を行っているものの、検知エリア全体に対してエリアD2が占める割合が小さい。つまり、ほとんどが超音波ソナー2a、2bの一方のみでしか障害物検知が行えない検知エリアD1a、D1bである。このため、広範囲で障害物の位置特定を行うことはできない。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、隣り合う2つの超音波ソナーの双方で障害物検知が行えるエリアを広げ、広範囲で障害物の位置特定が行えるようにした障害物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、2つの超音波ソナー(2a、2b)のうちの一方に対して送波の送信と受波の受信の双方を行わせる送受信モードを設定すると共に他方に対して受波の受信のみを行わせる受信モードを設定したのち、一方を受信モードに設定すると共に他方を送受信モードに設定するようにした障害物検知装置において、超音波ソナー(2a、2b)は、受信モードが設定されたときには、送受信モードが設定されたときよりも受波の受信感度を高く設定する受信感度調整手段(9、150)を有していることを特徴としている。
【0010】
このように、超音波ソナー(2a、2b)のいずれか一方を送受信モードにすると共に他方を受信モードとし、かつ、受信モードに設定する方に関しては受信感度を高めるようにしている。これにより、隣り合う2つの超音波ソナー(2a、2b)の双方で障害物検知が行えるエリア(D2)を広げることが可能となり、広範囲で障害物の位置特定を行うことが可能となる。
【0011】
例えば、請求項2に記載したように、2つの超音波ソナー(2a、2b)のうちの一方を送受信モードに設定すると共に他方を受信モードに設定したときに一方のみによって障害物を検知できるエリア(D1a)と、一方を受信モードに設定すると共に他方を送受信モードに設定したときに他方のみによって障害物を検知できるエリア(D1b)と、一方および他方の双方で障害物を検知できるエリア(D2)とが、車両(1)の左右方向において同じ幅となるようにすることができる。
【0012】
このように、隣り合う2つの超音波ソナー(2a、2b)の双方で障害物検知が行えるエリア(D2)を広げることにより、例えば車両(1)の後方のどこかに障害物が存在するという報知だけでなく、それがどこに存在するかをある程度特定した報知を行うことが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、2つの超音波ソナー(2a、2b)は、それぞれ、自分自身の送波の音圧を記憶する記憶媒体(14)を有しており、2つの超音波ソナー(2a、2b)それぞれの送波の音圧の差に基づく補正値に基づいて、受信モードが設定されたときに設定する受信感度を補正して設定することを特徴としている。
【0014】
このように、2つの超音波ソナー(2a、2b)それぞれの送波の音圧の差に基づく補正値に基づいて、受信モードが設定されたときに設定する受信感度を補正して設定することもできる。これにより、超音波ソナー(2a、2b)の製品間のバラツキに対する補正を行うことが可能となる。すなわち、超音波ソナー(2a、2b)の一方の送波の音圧が標準製品に対してばらついていたとしても、他方の受信モードのときに設定する受信感度を補正することにより、隣り合う2つの超音波ソナー(2a、2b)の双方で障害物検知が行えるエリア(D2)等が歪むことを抑制することができる。
【0015】
例えば、請求項4に記載したように、2つ超音波ソナー(2a、2b)は、それぞれ、受波を所定ゲインで増幅させる増幅器(11)と該増幅器(11)で増幅された受波を所定の閾値と比較することで受波を受け取ったことを検知する比較器(12)とを有した構成とされ、受信感度調整手段(9、150)にて、受信モードが設定されたときには、送受信モードが設定されたときと比較して、増幅器(11)におけるゲインを高くすること、もしくは、比較器(12)における閾値を低くすることの少なくとも一方を行うことにより、受波の受信感度を高く設定することができる。
【0016】
この場合、請求項5に記載したように、2つの超音波ソナー(2a、2b)の一方については該一方の送波の音圧から他方の送波の音圧を引いた差を補正値とし、他方については該他方の送波の音圧から一方の送波の音圧を引いた差を補正値として、一方または他方が受信モードに設定されるときに、増幅器(11)のゲインを送受信モードに設定されたときのゲインに対して受信感度の基準上昇量に相当するゲインと補正値とを足した値に設定することにより、受信感度を高くすることができる。
【0017】
更にこの場合、請求項6に記載したように、制御手段(3)は、2つの超音波ソナー(2a、2b)から音圧情報を得て補正値を演算したのち、2つの超音波ソナー(2a、2b)に対して補正値を伝え、2つの超音波ソナー(2a、2b)は補正値を記憶媒体(14)に記憶しておくことで、受信モードが設定されたときに記憶媒体(14)から補正値を読み出すことにより、受信モードが設定されたときのゲインを設定することができる。このようにすれば、その都度補正値を演算しなくても、速やかに受信モードのときのゲインを設定することが可能となる。
【0018】
また、請求項7に記載したように、2つの超音波ソナー(2a、2b)の一方については該一方の送波の音圧から他方の送波の音圧を引いた差の閾値換算値を補正値とし、他方については該他方の送波の音圧から一方の送波の音圧を引いた差の閾値換算値を補正値として、一方または他方が受信モードに設定されるときに、比較器(12)の閾値を送受信モードに設定されたときの閾値に対して受信感度の基準上昇量に相当する閾値と補正値とを引いた値に設定することにより、受信感度を高くすることもできる。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる障害物検知装置の全体構成を概略的に示した模式図である。
【図2】超音波ソナー2a、2bの概略構造を示したブロック図である。
【図3】障害物検知時の様子を示す模式図である。
【図4】(a)、(b)は、第1実施形態の手法と従来の手法を用いた場合のトータルの障害物検出エリアを示した図である。
【図5】各超音波ソナー2a、2bの制御ブロック9が実行する障害物検知処理のフローチャートである。
【図6】障害物検知装置による障害物検知の動作手順(シーケンス)の一例を示したタイミングチャートである。
【図7】超音波ソナー2a、2bの音圧や受信感度が標準製品からずれているときの障害物検知エリアの様子を示した模式図である。
【図8】総合感度保証のイメージ図であり、(a)が製品間のバラツキを考慮していない場合のイメージ図、(b)が製品間のバラツキを考慮した場合のイメージ図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる障害物検知装置の初期動作の一例を示したタイミングチャートである。
【図10】従来の障害物検知装置による障害物検知の様子を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる障害物検知装置の全体構成を概略的に示した模式図である。
【0023】
図1に示されるように、障害物検知装置は、車両1に取り付けられるものであり、2つ複数の超音波ソナー2a、2b、制御手段を構成するECU3および警報手段を構成する警報装置4を備えており、複数の超音波ソナー2a、2bそれぞれとECU3がLANケーブル5を通じて通信可能に構成されていると共に、ECU3と警報装置4とがケーブル6を介して接続されることでECU3から警報装置4への警報指令信号の伝達が行えるように構成されている。
【0024】
超音波ソナー2a、2bは、車両前方や後方のバンパー等の車体部品に固定されている。本実施形態では、超音波ソナー2a、2bを車両左右後方に1つずつ配置してあり、超音波ソナー2aが右後方、超音波ソナー2bが左後方に配置されている。これら超音波ソナー2a、2bは、ECU3の指令信号に基づいてマスタースレーブ方式で動作する形態とされている。
【0025】
図2は、超音波ソナー2a、2bの概略構造を示したブロック図である。各超音波ソナー2a、2bは、それぞれこの図に示される構成を有した構造とされている。この図に示されるように、超音波ソナー2a、2bには、超音波マイクロフォン(以下、マイクという)7、通信ブロック8、制御ブロック9、昇圧回路10、増幅器11、比較器12、発振ブロック13および記憶媒体14が備えられている。
【0026】
マイク7は、送波の送信を行うと共に受波の受信を行う。具体的には、マイク7は、図示しない振動子を有しており、この振動子を超音波振動させることにより、送波となる超音波を発生させたり、受波を受信したときに振動子が振動することに基づいて受波の検知を行う。なお、マイク7の構造や動作原理などに関しては周知のものであるためここでは詳細についての説明を省略する。
【0027】
通信ブロック8は、ECU3との通信を行い、障害物検知を行う際にECU3から送られてくる指令信号を受け取り、それを制御ブロック9に伝える。また、通信ブロック8は、ECU3からの指令信号に基づいて制御ブロック9が応答信号を返してくると、それをECU3に向けて送信する。
【0028】
制御ブロック9は、超音波ソナー2a、2bによる障害物検知に関する各種制御を行うものであり、通信ブロック8を介して伝えられたECU3からの指令信号に基づき、その指令信号が示す内容に応じた処理を実行する。例えば、指令信号は、指令する内容を示すデータが格納されたフレームにて構成され、ECU3からそのフレームが送信されてくると制御ブロック9がそのフレーム内に格納されたデータを読み出し、そのデータが示す処理を実行するようになっている。なお、この制御ブロック9で実行する処理の詳細については後述する。
【0029】
昇圧回路10は、障害物検出を行うときに制御ブロック9が生成する駆動パルス電圧を昇圧するものである。この昇圧回路10によって昇圧された駆動パルス電圧がマイク7に対して印加され、マイク7の振動子を超音波振動させるための駆動電圧として用いられることにより、マイク7から超音波の送波が送信される。
【0030】
増幅器11は、マイク7から送波の送信を行ったのち、その反射波が受波としてマイク7で受信されたときに、受信された受波を予め設定しておいたゲイン、つまり所定の増幅率で増幅するものである。増幅器11の増幅ゲインについては、制御ブロック9のゲイン制御により調整可能とされている。
【0031】
比較器12は、増幅器11によって増幅された受波の電圧を予め設定しておいた閾値と比較することにより、障害物による反射波を受信したことを検知する。比較器12の閾値についても、制御ブロック9の閾値制御により制御可能とされている。この比較器12は、例えばコンパレータなどで構成され、増幅器11によって増幅された受波の電圧が閾値を超えると、出力電圧のレベルがハイレベルに変わることで反射波を受信したことを制御ブロック9に対して伝える。これにより、制御ブロック9にて、送波を送信したタイミングと反射波を受信したタイミングとの時間差に相当する検知時間が測定され、その検知時間に基づいて障害物までの距離が演算される。
【0032】
なお、上述したように増幅器11で増幅された反射波を比較器12の閾値と比較することで障害物検知が行われるため、増幅器11のゲインや比較器12の閾値に応じて受信感度が決まる。この受信感度は、基本的には各超音波ソナー2a、2bで障害物検出範囲が同じになるように設定されている。そして、上述したように増幅器11のゲインや比較器12の閾値について調整する場合、増幅器11のゲインが高くなればなるほど、もしくは、比較器12の閾値が低くなればなるほど、反射波の強度が弱くても障害物が検知されることになるため、受信感度を高くでき障害物検知エリアを広げることができる。したがって、増幅器11のゲインもしくは比較器12の閾値の少なくとも一方を調整することで、受信感度を調整することができる。
【0033】
発振ブロック13は、制御ブロック9などのICを駆動する際に用いられるクロック生成を行う。記憶媒体14は、障害物検知に用いられる各種データの記憶を行う。この記憶媒体14に記憶された内容は制御ブロック9で読み出し可能とされており、この内容に基づいて制御ブロック9での障害物検知が行われる。以上のようにして、各超音波ソナー2a、2bが構成されている。
【0034】
ECU3は、障害物検知を行うタイミング(例えば車両後進時)になると、障害物検知を行うための処理を行う。例えば、ECU3は、2つの超音波ソナー2a、2bのいずれを送受信モードとし、いずれを受信モードとするかの設定を行ったのち、指令信号として、各超音波ソナー2a、2bに対して送受信モードと受信モードのいずれを設定するかを表すデータを格納したフレームを送信する。そして、これに伴って各超音波ソナー2a、2bで障害物までの距離が演算されると、その後に、ECU3は、指令信号として、各超音波ソナー2a、2bでの演算結果を要求するデータを格納したフレームを送信する。これにより、各超音波ソナー2a、2bから演算結果が伝えられると、ECU3は、障害物までの距離に応じた警報を行うべく、警報装置4に対して制御信号を出力する。
【0035】
警報装置4は、ブザーなどの音声を発生させるものであり、ECU3からの制御信号の内容に応じて、鳴り方の異なる報知音で警報を行う。具体的には、ECU3からの距離が近い順に連続音、間隔が短い断続音1、間隔が断続音1よりも長い断続音2、間隔が断続音2よりも長い断続音3という複数種類の報知音を用いている。
【0036】
以上のようにして、本実施形態の障害物検知装置が構成されている。続いて、このように構成された障害物検知装置による障害物検知方法について説明する。まず、本実施形態の障害物検知装置による障害物検知の原理について、図3に示す障害物検知時の様子を示す模式図を参照して説明する。
【0037】
本実施形態では、上述した従来の報知音の切り替わりの補正と同様に、超音波ソナー2a、2bの一方を送受信モードにすると共に他方を受信モードとし、超音波ソナー2a、2bの一方から障害物までの経路および障害物から超音波ソナー2a、2bの他方までの経路での距離情報を得るようにするが、それと同時に受信モードに設定する方に関しては受信感度を高める。すなわち、超音波ソナー2a、2bに備えられた増幅器11のゲインと比較器12の閾値の少なくとも一方を調整することで受信感度を高める。
【0038】
例えば、図3(a)に示すように、先ず最初に超音波ソナー2aを送受信モードに設定し、超音波ソナー2bに関しては最初に設定されている受信感度よりも高くする。これにより、超音波ソナー2aについては受信感度が調整されていないため障害物検知エリアDaが通常状態となり、超音波ソナー2bについては受信感度が高くされているため障害物検知エリアDbが通常状態よりも広がる。これにより、超音波ソナー2aの障害物検知エリアDaのうち超音波ソナー2bの障害物検知エリアDbと重なっていないエリアD1aは従来よりも狭くなり、重なっているエリアD2が車両右側において広がる。
【0039】
このとき、単に障害物検知エリアDa、Dbを通常状態よりも広げようとして送受信モード側となる超音波ソナー2aについても受信感度を高くすると、超音波ソナー2aから送信される送波そのものが受信されてしまうという残響が伸びる。このため、その分をマスクし、的確に反射波のみが検知されるようにしなければならず、近距離検知精度の悪化が懸念される。しかしながら、ここでは超音波ソナー2aについては受信感度を高くしていないため、残響の問題を抑制でき、近距離検知精度の悪化を招かなくて済むようにできる。また、障害物検知エリアDbが広がるが、送波を送信しているのが超音波ソナー2aであるため、障害物検知エリアDbが車両1の左側に張り出すように拡大する訳ではなく、障害物検知エリアDbのうち障害物検知エリアDaと重なっていないエリアD1bのうち車両1の左側については超音波ソナー2aから送波を送信した時に反射波が受信されない。したがって、車両1の左側に横壁が存在していても、それを障害物として検知してしまうことはない。
【0040】
続いて、図3(b)に示すように、超音波ソナー2aを受信モードに設定することで受信感度を高くし、超音波ソナー2bに関しては最初に設定されている受信感度に戻す。これにより、超音波ソナー2aについては受信感度が高くされているため障害物検知エリアDaが通常状態より広がり、超音波ソナー2bについては受信感度が調整されていないため障害物検知エリアDbが通常状態となる。これにより、超音波ソナー2bの障害物検知エリアDbのうち超音波ソナー2aの障害物検知エリアDaと重なっていないエリアD1bは従来よりも狭くなり、重なっているエリアD2が車両左側において広がる。
【0041】
なお、この場合にも、超音波ソナー2aについてのみ受信感度を高くして超音波ソナー2bについては受信感度を高くしていないため、図3(a)の場合と同様、残響の問題や横壁を誤って障害物として検知してしまうという問題は発生しないようにできる。
【0042】
このように、超音波ソナー2a、2bの一方を送受信モードにすると共に他方を受信モードとし、受信モードに設定する方に関しては受信感度を高めるようにすることで、従来と比較してトータルの障害物検知エリアが変わる。図4(a)、(b)は、それぞれ本実施形態の手法と従来の手法を用いて、超音波ソナー2a、2bに対して送受信モードと受信モードを交互に設定して障害物検知を行った場合のトータルの障害物検出エリアを示した図である。
【0043】
図4(b)に示すように、従来では、超音波ソナー2a、2bの受信感度を送受信モードが設定されるものと受信モードに設定されるものとで調整していないため、それぞれの障害物検知エリアDa、Dbを足した範囲がトータルの障害物検知エリアとなる。そして、障害物検知エリアDa、Dbが重なっていないエリアD1a、D1b、つまり超音波ソナー2a、2bの一方のみでしか障害物までの距離が測定できず障害物の位置を特定できない範囲が広く、重なったエリアD2、つまり超音波ソナー2a、2bの双方で障害物までの距離を測定できて障害物の位置を特定できる範囲は狭い。
【0044】
これに対して、図4(a)に示すように、本実施形態では、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードに設定する側の受信感度を高くしているため、送受信モードに設定されている側において障害物検知エリアDa、Dbの重なるエリアD2が従来と比較して広がり、重なっていないエリアD1a、D1bが狭くなる。さらに、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードが設定された方に関して障害物検知エリアDa、Dbが広がるため、従来障害物検知ができなかった近距離エリアDcおよび遠距離エリアDdについてもトータルの障害物検知エリアに含まれることになる。したがって、隣り合う2つの超音波ソナー2a、2bの双方で障害物検知が行えるエリアD2を広げることが可能となり、広範囲で障害物の位置特定を行うことが可能となる。
【0045】
続いて、上記のような原理に基づいた本実施形態の障害物検知の動作について、図5および図6を参照して説明する。図5は、各超音波ソナー2a、2bの制御ブロック9が実行する障害物検知処理のフローチャートである。なお、本図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。
【0046】
各超音波ソナー2a、2bは、図示しないイグニッションスイッチがオンにされるとバッテリなどから電力供給を受けて図5に示す障害物検知処理を実行する。
【0047】
まず、各超音波ソナー2a、2bは、ECU3からの指令信号を受ける前には、指令信号の待機状態になっている。そして、例えばイグニッションスイッチがオンされているときにシフト位置がリアに切替えられ、ECU3から指令信号が送信されと、ステップ100においてECU3からの指令信号が受信され、それがトリガとなってステップ110以降の処理に移行する。
【0048】
ステップ110では、ECU3から送られてきた指令信号を構成するフレーム内に格納されたデータに基づき、障害物検知を行うのか、それとも障害物検知の結果の応答を行うのかを判定する。そして、障害物検知の指令信号であれば、ステップ120に進む。
【0049】
ステップ120では、指令信号を構成するフレーム内に格納されたデータに基づき、送受信モードと受信モードのいずれを設定するかの判定を行う。例えば、「超音波ソナー2a:送受信モード、超音波ソナー2b:受信モード」等のように、フレーム内に格納されたデータにその旨を示すデータが含まれているため、そのデータに基づいて各超音波ソナー2a、2bは自分自身がどのモードとなるかを判定する。
【0050】
このステップ120で送受信モードと判定された場合には、ステップ130に進み、送受信モード用、つまり通常状態のときのゲイン/閾値を設定したのち、ステップ140に進む。そして、ステップ140において送受波動作、つまりマイク7から送波を送信すると共に、マイク7で受波を受信し、送波の送信から受波の受信までの検知時間測定を行うと共に、測定した検知時間に基づいて障害物までの距離を測定する処理を行う。これにより、超音波ソナー2a、2bのうち送受信モードが設定された側から障害物までの距離が測定される。
【0051】
一方、ステップ120で受信モードと判定された場合には、ステップ150に進み、送受信モード用、つまり通常状態より受信感度を高くできるようにゲイン/閾値を設定したのち、ステップ160に進む。そして、ステップ160において受波動作、つまり超音波ソナー2a、2bのうち送受信モードが設定された側のマイク7から送信された送波の反射波を受波として受信し、送波の送信から受波の受信までの検知時間測定を行うと共に、測定した検知時間に基づいて障害物までの距離を測定する処理を行う。これにより、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードが設定された側から障害物までの距離が測定される。
【0052】
このようにして、超音波ソナー2a、2bのうち送受信モードが設定されたものと受信モードが設定されたものそれぞれから障害物までの距離を測定することができる。
【0053】
また、ステップ110で応答の指令信号であった場合には、ステップ170に進み、指令信号を構成するフレーム内に格納されたデータに基づき、自分自身が結果要求を受けているのか否かを判定する。そして、ステップ170で肯定判定されたときにはステップ180に進んで障害物検知の検出結果を応答信号としてECU3に向けて送信し、否定判定されたときには応答しない。
【0054】
このようにして、送受波動作や受波動作もしくは応答動作が行われると、その後、ステップ190に進んで再びECU3からの指令信号を受信する待機状態に戻る。
【0055】
図6は、障害物検知装置による障害物検知の動作手順(シーケンス)の一例を示したタイミングチャートである。
【0056】
この図に示されるように、先ず、シーケンス1として、ECU3から指令信号が送信される。この指令信号を構成するフレームには、超音波ソナー2aを送受信モードに設定し、超音波ソナー2bを受信モードに設定することを指示するデータが格納されている。この指令信号が超音波ソナー2a、2bに同時に受信され、超音波ソナー2a、2bは、時点T1において同期して動作する。すなわち、超音波ソナー2aについては送受信モード用のゲイン/閾値を設定した状態で送受波動作を行い、超音波ソナー2bについては受信モード用に受信感度を高めるゲイン/閾値を設定した状態で受波動作を行う。
【0057】
そして、ECU3から超音波ソナー2aに対する結果要求を示す指令信号が送られると、時点T2の際に超音波ソナー2aのみから応答信号が返される。さらに、その後ECU3から超音波ソナー2bに対する結果要求を示す指令信号が送られると、時点T3の際に超音波ソナー2bのみから応答信号が返される。このようにして、ECU3は、超音波ソナー2aから送波を送信させた場合における各超音波ソナー2a、2bから障害物までの距離を得ることができる。
【0058】
次に、シーケンス2としてECU3から指令信号が送信される。この指令信号を構成するフレームには、超音波ソナー2aを受信モードに設定し、超音波ソナー2bを送受信モードに設定することを指示するデータが格納されている。この指令信号が超音波ソナー2a、2bに同時に受信され、超音波ソナー2a、2bは、時点T4において同期して動作する。すなわち、超音波ソナー2aについては受信モード用に受信感度を高めるゲイン/閾値を設定した状態で受波動作を行い、超音波ソナー2bについては送受信モード用にゲイン/閾値を設定した状態で送受波動作を行う。
【0059】
そして、ECU3から超音波ソナー2aに対する結果要求を示す指令信号が送られると、時点T5の際に超音波ソナー2aのみから応答信号が返される。さらに、その後ECU3から超音波ソナー2bに対する結果要求を示す指令信号が送られると、時点T6の際に超音波ソナー2bのみから応答信号が返される。このようにして、ECU3は、超音波ソナー2bから送波を送信させた場合における各超音波ソナー2a、2bから障害物までの距離を得ることができる。
【0060】
このようにして、超音波ソナー2a、2bそれぞれから送波を送信させた場合における各超音波ソナー2a、2bから障害物までの距離を得ることができる。これにより、図4(a)に示したように、障害物検知エリアD1a、D1b、Dc、Ddに障害物が存在している場合には超音波ソナー2a、2bのいずれか一方から障害物までの距離を測定することができる。そして、障害物検知エリアD2に障害物が存在している場合には超音波ソナー2a、2bの両方から障害物までの距離を測定することができるため、障害物の位置を特定することが可能となる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の障害物検知装置では、超音波ソナー2a、2bのいずれか一方を送受信モードにすると共に他方を受信モードとし、かつ、受信モードに設定する方に関しては受信感度を高めるようにしている。これにより、隣り合う2つの超音波ソナー2a、2bの双方で障害物検知が行えるエリアD2を広げることが可能となり、広範囲で障害物の位置特定を行うことが可能となる。
【0062】
また、このようにエリアD2を広げられることにより、車両1の後方のいずれかに障害物が存在するという報知だけでなく、それがどこに存在するかをある程度特定した報知を行うことが可能となる。例えば、障害物が存在するエリアによって報知の手法を変更することもできる。さらに、ゲインや閾値の設定に基づいて車両1の左右方向においてエリアD1a、D1b、D2の幅が同じとなるようにし、障害粒検知エリアを3分割することも可能である。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して超音波ソナー2a、2bの製品間のバラツキに対する補正を行うものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
一般的に、超音波ソナーでは、マイクの音圧や受信感度に製品間でのバラツキがある。このため、製品出荷前に受信感度を調整することによりマイクの音圧のバラツキを吸収し、各製品の総合的に障害物検知エリアが同じになるようにしている。例えば超音波ソナーの音圧が標準製品と比べて大きい場合には、受信感度を他の製品と比べて小さくする補正を行う。逆に、超音波ソナーの音圧が標準製品と比べて小さい場合には、受信感度を他の製品と比べて大きくする補正を行う。これを総合感度保証と呼んでいる。
【0065】
しかしながら、総合感度保証を行ったときに障害物検知エリアを同じにできるのは同じ超音波ソナーで送受波の送受信を行った場合であり、他の超音波ソナーで受波の受信を行う場合には想定している障害物検知エリアにならない。
【0066】
図7は、超音波ソナー2a、2bの音圧や受信感度が標準製品からずれているときの障害物検知エリアの様子を示した模式図である。
【0067】
例えば、超音波ソナー2aの音圧が標準製品と比べて大きい場合、もしくは超音波ソナー2bの受信感度が標準製品と比べて高い場合において、超音波ソナー2aから送波を送信した場合について考えてみる。この場合、図7(a)に示すように、超音波ソナー2aの障害物検知エリアDaに関しては総合感度保証により想定しているエリア(図中破線参照)と同じになる。しかしながら、超音波ソナー2bの障害物検知エリアDbに関しては想定しているエリア(図中破線参照)よりも広くなる。
【0068】
一方、例えば、超音波ソナー2aの音圧が標準製品と比べて小さい場合、もしくは超音波ソナー2bの受信感度が標準製品と比べて低い場合において、超音波ソナー2bから送波を送信した場合について考えてみる。この場合、図7(b)に示すように、超音波ソナー2bの障害物検知エリアDbに関しては総合感度保証により想定しているエリア(図中破線参照)と同じになる。しかしながら、超音波ソナー2aの障害物検知エリアDaに関しては想定しているエリア(図中破線参照)よりも狭くなる。
【0069】
このため、図7(a)、(b)の場合に得られるトータルの障害物検知エリアは、図7(c)に示すように、隣り合う2つの超音波ソナー2a、2bの双方で障害物検知が行えるエリアD2、近距離エリアDcおよび遠距離エリアDdが超音波ソナー2a側(車両右側)に歪むことになる。
【0070】
このような現象を防止するために、本実施形態では、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードが設定される側の受信感度を高くするときに、送受信モードが設定される側の音圧のバラツキや受信モードが設定される側の受信感度のバラツキに応じた補正値を見込んだ受信感度とする。
【0071】
すなわち、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードが設定される側の受信感度について、標準製品と比較してその受信感度が小さい場合もしくは送受信モードが設定される側の音圧が大きい場合には、その受信感度を高める量を低下させる補正を行う。逆に、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードが設定される側の受信感度について、標準製品と比較してその受信感度が大きい場合もしくは送受信モードが設定される側の音圧が小さい場合には、その受信感度を高める量を増加させる補正を行う。
【0072】
例えば、超音波ソナー2a、2bのうち受信モードが設定される側の受信感度の調整を行う際の増幅器11のゲインについて以下の式で定義する。
【0073】
(数1)
受信モード用のゲイン=送受信モード用のゲイン+受信感度UP相当ゲイン+補正値
(数2)
補正値=自分自身の送波の音圧−隣接ソナーの送波の音圧
ここで、受信モード用のゲインとは、受信モードの時に増幅器11のゲインとして設定されるゲインであり、上述した図5のステップ150で設定されるものである。送受信モード用のゲインとは、送受信モード時に増幅器11のゲインとして設定されるゲインであり、上述した図5のステップ130で設定されるものである。受信感度UP相当ゲインとは、受信モード時に送受信モード時よりも受信感度を増加させるときのその増加分に対応するゲインのことであり、超音波ソナー2a、2bが標準製品であると想定したときの受信感度の基準上昇量に相当するゲインである。補正値は、上述した送受信モードが設定される側の音圧のバラツキや受信モードが設定される側の受信感度のバラツキに応じた補正値である。
【0074】
この数式の意味について、図8を参照して説明する。図8は、総合感度保証のイメージ図であり、図8(a)が製品間のバラツキを考慮していない場合のイメージ図、図8(b)が製品間のバラツキを考慮した場合のイメージ図である。
【0075】
総合感度保証は、超音波ソナー2a、2bが送受信モードとされているとき、送波音圧とマイク7の感度(以下、マイク感度という)と受波の受信感度を決めるゲイン(以下、受波ゲインという)との組み合わせのイメージとして認識できる。すなわち、マイク感度が一定であると仮定すると、図8(a)のパターンAのように、標準製品と比較して、送波音圧が大きい場合には受波ゲインが小さく設定される。また、図8(a)のパターンBのように、標準製品と比較して、送波音圧が小さい場合には受波ゲインが大きく設定される。ただし、これら両方共に、送波音圧とマイク感度と受波ゲインすべてを組み合わせたときのトータルでは同じになる(図8では、同じ長さのイメージで表してある)。
【0076】
一方、これら超音波ソナー2a、2bが受信モードとされたときには、送受信モードに対して一定の受信感度上昇を見込んで増幅器11のゲインを設定しているため、図8(a)のパターンA、Bに示されるように送受信モードの時に対して受波ゲインが受信感度UP相当ゲイン分増加させられるだけになる。このため、受信モードとされるときには、マイク感度と受波ゲインおよび受信感度UP相当ゲインの組み合わせたときのトータルが同じにならない(トータルA≠トータルB)。
【0077】
これに対して、本実施形態の場合の総合感度保証は、超音波ソナー2a、2bが送受信モードとされているときには、上記と同様、送波音圧とマイク感度と受波ゲインとの組み合わせのイメージとして認識されるが、受信モードとされたときには、マイク感度と受波ゲインおよび受信感度UP相当ゲインに更に補正値分を組み合わせたイメージとして認識される。したがって、図8(b)に示されるように、パターンA、B共に、マイク感度と受波ゲインおよび感度アップに対して更に補正値を組み合わせたときのトータルが同じになる。これにより、超音波ソナー2a、2bの一方の送波の音圧が標準製品に対してばらついていたとしても、他方の受信モード用のゲインを補正することにより、隣り合う2つの超音波ソナー2a、2bの双方で障害物検知が行えるエリアD2、近距離エリアDcおよび遠距離エリアDdが歪むことを抑制することができる。
【0078】
なお、超音波ソナー2a、2bの音圧情報については、総合感度保証を行う際に各超音波ソナー2a、2bに備え付けてある記憶媒体14に予め記憶保持させておけば、ECU3に通信で伝えることができる。このため、ECU3は受け取った音圧情報を用い、数式1に基づいて各超音波ソナー2a、2bそれぞれで用いる補正値を演算しておけば、それを各超音波ソナー2a、2bに伝えることができる。これにより、各超音波ソナー2a、2bにて図5に示すステップ150の処理が実行されるときに、その都度補正値を演算しなくても、速やかに受信モード用のゲインを設定することが可能となる。
【0079】
図9は、本実施形態の障害物検知装置の初期動作の一例を示したタイミングチャートである。
【0080】
この図に示されるように、先ず、初期動作として、ECU3から超音波ソナー2aに対して音圧情報を要求する指令信号が出力され、超音波ソナー2aから音圧情報を含む応答信号が送信される。続いて、ECU3から超音波ソナー2bに対して音圧情報を要求する指令信号が出力され、超音波ソナー2bから音圧情報を含む応答信号が送信される。これにより、ECU3が数式1に基づいて各超音波ソナー2a、2bそれぞれで用いる補正値を演算する。そして、超音波ソナー2a、2bに対して順番に、補正値を含め、送受信モード用のゲインや受信モード用のゲインなどの各種パラメータを指示する指令信号を送る。これにより、各超音波ソナー2a、2bは、記憶媒体14に補正値を含めた各種パラメータを記憶し、障害物検知処理を行う際に、記憶しておいたパラメータを読み出すことにより、受信感度の調整などを行う。なお、障害物検知処理については、上述した図6と同様である。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、受信モード用に受信感度を高める際に、受信感度UP相当ゲインに加えて各超音波ソナー2a、2bの音圧に基づく補正値を用いることで、超音波ソナー2a、2bの製品間のバラツキに対する補正を行うことが可能となる。これにより、超音波ソナー2a、2bの一方の送波の音圧が標準製品に対してばらついていたとしても、他方の受信モード用のゲインを補正することにより、隣り合う2つの超音波ソナー2a、2bの双方で障害物検知が行えるエリアD2、近距離エリアDcおよび遠距離エリアDdが歪むことを抑制することができる。
【0082】
(他の実施形態)
上記第2実施形態では、超音波ソナー2a、2bの製品間のバラツキに対する補正の一例として増幅器11のゲインを補正することを例に挙げて説明したが、ゲインに代えて比較器12の閾値を補正することによっても同様のことを行うことができる。すなわち、隣接する超音波ソナー2a、2bの音圧の差を閾値換算した補正値を求め、閾値を下げて受信感度を高めるときに、補正値分を加味して閾値の下げ方を決めるようにすれば良い。具体的には、比較器12の閾値を送受信モードに設定されたときの閾値に対して受信感度の基準上昇量に相当する閾値と閾値換算した補正値とを引いた値に設定することにより、受信感度を高くすればよい。
【0083】
また、マイク感度をほぼ一定と想定し、隣接する超音波ソナー2a、2bの送受信モード用のゲイン差から補正値を算出し、その補正値を用いて受信モード用のゲインを補正しても、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、上記各実施形態では、2つの超音波ソナー2a、2bを備えた障害物検知装置について説明したが、それ以上の数の超音波ソナーが備えられる障害物検知装置に対しても本発明を適用することができる。その場合、複数の超音波ソナーのうち隣り合うもの同士に関して、上記各実施形態を適用すればよい。
【0085】
さらに、上記各実施形態では、図1に示すように、一方の超音波ソナー2aが他方の超音波ソナー2bを介してECU3に接続されたデイジーチェーンタイプの障害物検知装置を例に挙げたが、各超音波ソナー2a、2bがそれぞれ直接ECU3に接続されたスター結線タイプの障害物検知装置であっても構わない。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
2a、2b 超音波ソナー
3 ECU
4 警報装置
7 マイク
8 通信ブロック
9 制御ブロック
10 昇圧回路
11 増幅器
12 比較器
13 発振ブロック
14 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送波として送信すると共に、該送波が障害物で反射した反射波を受波として受け取るマイク(7)を有し、隣接して配置された2つの超音波ソナー(2a、2b)と、
前記2つの超音波ソナー(2a、2b)のうちの一方に対して送波の送信と受波の受信の双方を行わせる送受信モードを設定すると共に他方に対して受波の受信のみを行わせる受信モードを設定したのち、前記一方を前記受信モードに設定すると共に前記他方を送受信モードに設定する制御手段(3)と、
車両(1)から前記障害物までの距離に応じた警報を行う警報手段(4)とを備えた障害物検知装置であって、
前記超音波ソナー(2a、2b)は、前記受信モードが設定されたときには、前記送受信モードが設定されたときよりも前記受波の受信感度を高く設定する受信感度調整手段(9、150)を有していることを特徴とする障害物検知装置。
【請求項2】
前記2つの超音波ソナー(2a、2b)のうちの前記一方を前記送受信モードに設定すると共に前記他方を受信モードに設定したときに前記一方のみによって前記障害物を検知できるエリア(D1a)と、前記一方を前記受信モードに設定すると共に前記他方を送受信モードに設定したときに前記他方のみによって前記障害物を検知できるエリア(D1b)と、前記一方および前記他方の双方で前記障害物を検知できるエリア(D2)とが、前記車両(1)の左右方向において同じ幅とされていることを特徴とする請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項3】
前記2つの超音波ソナー(2a、2b)は、それぞれ、自分自身の前記送波の音圧を記憶する記憶媒体(14)を有しており、
前記2つの超音波ソナー(2a、2b)それぞれの前記送波の音圧の差に基づく補正値に基づいて、前記受信モードが設定されたときに設定する前記受信感度を補正して設定することを特徴とする請求項1または2に記載の障害物検知装置。
【請求項4】
前記2つ超音波ソナー(2a、2b)は、それぞれ、前記受波を所定ゲインで増幅させる増幅器(11)と該増幅器(11)で増幅された前記受波を所定の閾値と比較することで前記受波を受け取ったことを検知する比較器(12)とを有し、
前記受信感度調整手段(9、150)は、前記受信モードが設定されたときには、前記送受信モードが設定されたときと比較して、前記増幅器(11)における前記ゲインを高くすること、もしくは、前記比較器(12)における前記閾値を低くすることの少なくとも一方を行うことにより、前記受波の前記受信感度を高く設定することを特徴とする請求項3に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
前記2つの超音波ソナー(2a、2b)の前記一方については該一方の前記送波の音圧から前記他方の前記送波の音圧を引いた差を前記補正値とし、前記他方については該他方の前記送波の音圧から前記一方の前記送波の音圧を引いた差を前記補正値として、前記一方または前記他方が前記受信モードに設定されるときに、前記増幅器(11)のゲインを前記送受信モードに設定されたときのゲインに対して前記受信感度の基準上昇量に相当するゲインと前記補正値とを足した値に設定することにより、前記受信感度を高くすることを特徴とする請求項4に記載の障害物検知装置。
【請求項6】
前記制御手段(3)は、前記2つの超音波ソナー(2a、2b)から音圧情報を得て前記補正値を演算したのち、前記2つの超音波ソナー(2a、2b)に対して前記補正値を伝え、前記2つの超音波ソナー(2a、2b)は前記補正値を前記記憶媒体(14)に記憶しておくことで、前記受信モードが設定されたときに前記記憶媒体(14)から前記補正値を読み出すことにより、前記受信モードが設定されたときの前記ゲインを設定することを特徴とする請求項5に記載の障害物検知装置。
【請求項7】
前記2つの超音波ソナー(2a、2b)の前記一方については該一方の前記送波の音圧から前記他方の前記送波の音圧を引いた差の閾値換算値を前記補正値とし、前記他方については該他方の前記送波の音圧から前記一方の前記送波の音圧を引いた差の閾値換算値を前記補正値として、前記一方または前記他方が前記受信モードに設定されるときに、前記比較器(12)の閾値を前記送受信モードに設定されたときの閾値に対して前記受信感度の基準上昇量に相当する閾値と前記補正値とを引いた値に設定することにより、前記受信感度を高くすることを特徴とする請求項4に記載の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−223918(P2010−223918A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74565(P2009−74565)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】