説明

集積回路

【課題】電源ノイズが存在する環境下において、位相同期回路の出力信号の特性劣化を軽減する。
【解決手段】基準信号源は、基本周波数を有する基準信号を生成する。位相同期回路102は、制御電圧に応じた周波数の信号を生成する電圧制御発振器106と、前記周波数の信号をN分周して第1分周信号を生成する第1分周器107と、第1分周信号と基準信号との位相差を検出する位相検出器103と、チャージポンプ104と、ループフィルタ105と、を含む。第2分周器は、電圧制御発振器により生成された信号をM分周して第2分周信号を生成する。信号処理回路は、第2分周信号に同期して動作する。基本周波数のK倍と、第2分周信号の周波数との差分の絶対値が、電圧制御発振器の入力から位相同期回路の出力までの伝達関数によって表される帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上となるように、NおよびMの値が決定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、集積回路に関し、たとえば位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位相同期回路(PLL)では、内部電源の配線を、内部回路を先に経由してからクロック信号出力回路に至るように引き回している。内部回路からクロック信号出力回路に至る配線経路中には、電源ノイズ低減手段が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-121179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電源ノイズ低減手段は、抵抗素子およびコンデンサで構成される低域通過フィルタにより実現される。これら回路素子は、回路規模の増大、さらにコスト上昇等の問題につながる。
【0005】
この発明の一側面は、電源ノイズが存在する環境下において、位相同期回路の出力信号の特性劣化を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての集積回路は、基準信号源と、位相同期回路と、第2分周器と、信号処理回路とを備える。
【0007】
前記基準信号源は、基本周波数を有する基準信号を生成する。
【0008】
前記位相同期回路は、与えられた制御電圧に応じた周波数の信号を生成する電圧制御発振器と、前記周波数の信号をN分周して第1分周信号を生成する第1分周器と、前記第1分周信号と前記基準信号との位相差を検出する位相検出器と、前記位相差に応じた電流信号を生成するチャージポンプと、前記電流信号に応じて前記制御電圧を生成するループフィルタと、を含む。
【0009】
前記第2分周器は、前記電圧制御発振器により生成された信号をM分周して第2分周信号を生成する。
【0010】
前記信号処理回路は、前記第2分周信号に同期して動作する。
【0011】
前記基本周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記第2分周信号の周波数との差分の絶対値の最小値が、前記電圧制御発振器の入力から前記位相同期回路の出力までの伝達関数によって表される帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上となるように、前記Nおよび前記Mの値が決定されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る集積回路の構成を示す図である。
【図2】電圧制御発振器における制御電圧−発振周波数の関係を示す図である。
【図3】信号処理回路の動作により電源電圧変動を模式的に示す図である。
【図4】電圧制御発振器の構成を示す図である。
【図5】位相同期回路をモデル化した図である。
【図6】帯域通過フィルタの帯域と、各種不要波の周波数を示す図である。
【図7】相互変調ひずみを考慮して位相同期回路をモデル化した図である。
【図8】第2の実施の形態に係る位相同期回路を含む集積回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の第1の実施の形態に係る位相同期回路102を含む集積回路100の構成を示す図である。
【0015】
図1の集積回路100は、位相同期回路102、分周器(第2分周器)108および信号処理回路109を備える。
【0016】
位相同期回路102は、位相検出器103、チャージポンプ104、ループフィルタ105、電圧制御発振器106および分周器(第1分周器)107を備える。
【0017】
集積回路100の入力側には、基準信号源101が配置される。基準信号源101は、所定の基本周波数f1を有する基準信号を生成する。基準信号は、基本周波数f1の整数倍K倍となる周波数成分を含む。基準信号源101は、生成した基準信号を、集積回路100に出力する。位相同期回路102は、基準信号源101により生成される基準信号の供給を受ける。
【0018】
電圧制御発振器106は、与えられた制御電圧に応じた周波数の信号を生成する。
【0019】
図2に、電圧制御発振器106の制御電圧−周波数変換特性の例を示す。図示のように、電圧制御発振器106の制御電圧−周波数変換特性は、非線形であるという特徴がある。
【0020】
電圧制御発振器106は、生成した信号を、分周器107および分周器108に出力する。
【0021】
分周器107は、電圧制御発振器106により生成された信号を分周比Nで分周し、分周信号(第1分周信号)を位相検出器103に出力する。
【0022】
分周器108は、電圧制御発振器106により生成された信号を、分周比Mで分周し、分周信号(第2分周信号)を、信号処理回路109に出力する。なお、分周器108から出力される分周信号の周波数は、基準信号の周波数をf1とすると、f1×N/Mとなる。
【0023】
位相検出器103は、基準信号源101により生成される基準信号と、分周器107からの分周信号との位相差Δφを検出する。具体的に、当該基準信号と、分周器107からの分周信号との位相差Δφを、直接、電圧に変換する。
【0024】
ここで、位相差Δφとは基準信号の位相(φref)からみた分周信号の位相(φdiv)であり、Δφ=φrefdivと表すことができる。位相差Δφが負のときは、分周信号の方が、基準信号よりも位相が進んでおり、Δφが正のときは分周信号の方が、基準信号よりも位相が遅れている。
【0025】
ただし、この定義は一例であり、位相差をこれと逆に定義することも可能である。すなわち、分周信号の位相から見た基準信号の位相を、位相差と定義してもよい。
【0026】
チャージポンプ104は、位相検出器103による検出電圧に応じて電流信号を生成し、生成した電流信号を、ループフィルタ105に出力する。
【0027】
ループフィルタ105は、チャージポンプから供給される電流信号を平滑化して、電圧制御発振器106に与える制御電圧を生成する。
【0028】
信号処理回路109は、分周器108から入力される分周信号に同期して動作する回路部分を含む。
【0029】
ここで、集積回路100は、基本周波数のK倍(Kは1以上の任意の整数)と、分周器108の出力信号の周波数との差分の絶対値が、位相同期回路102のフィードバックにより作用する帯域通過フィルタ(電圧制御発振器106の入力から位相同期回路102の出力間の伝達関数によって示される帯域通過フィルタ)の低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上であるという特徴を有する。
【0030】
特に、基準信号源101の基準信号の周波数の整数倍と、分周器108の出力信号の周波数との差分の絶対値のうちの最小値に生じた不要波(不要信号)の周波数が、当該帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下、特に当該低域遮断周波数の5分の1以下である。
【0031】
このような特徴は、分周比N、Mの値、チャージポンプの出力電流、ループフィルタ105のカットオフ周波数を調整することにより、実現される。
【0032】
以下、このような特徴を本願発明者が着想するに至った経緯について、述べる。
【0033】
集積回路100は、各回路ブロックのアイレーションを、有限にしか持つことが出来ない。このため、各ブロック間で発生する信号成分が他のブロックに不要信号として漏れこんでしまい、性能が劣化するという問題がある。
【0034】
基準信号源101から出力される基準信号は、基本周波数f1の整数倍Kとなる周波数成分を持つ。また、信号処理回路109では、入力されるクロック信号(分周器108の出力信号)に同期して動作する回路部分を含んでおり、動作状況に応じて消費電流ΔIが変動する。電源配線やグランド配線のインピーダンスRVDD、RGNDとする。信号処理回路109は、入力されるクロックに同期して動作するため、クロックの立ち上がりもしくは立ち下がり(あるいはその両方)のタイミングで電源−グランド間の電圧変動としてΔI(RVDD+RGND)が生じる。
【0035】
図3に、クロックの立ち上がりで動作する信号処理回路109の電圧変動を模式的に示す。クロックの立ち上がりで動作するため、電圧変動がクロックの周期で周期的に生じることが分かる。
【0036】
前述したように、集積回路100内のブロック間のアイソレーション特性が有限であることから、この電圧変動に応じて発生する不要信号が、他のブロックに漏れこみ、特性を劣化させてしまう。この特性劣化は、電圧制御発振器106で特に大きい。
【0037】
図4に示すように、電圧制御発振器(VCO)106は、制御電圧-周波数変換器401と周波数-位相変換器402の2つの機能を有するとみなすことができる。電圧制御発振器106は、制御電圧に比例した周波数で発振する(後述する図5の504参照)。位相同期回路(PLL)の入力は位相で入力する必要があるため、当該周波数を積分して位相情報に変換する(後述する図5中の505参照)。制御電圧-周波数変換器401では、微小な電圧変動が、周波数変動に変換されてしまうため、干渉信号が他ブロックから少量でも漏れこんでしまうと、電圧制御発振器401の出力信号の特性劣化が、顕著に現われる。
【0038】

図5に、信号処理回路109で発生する電源電圧変動により、電圧制御発振器106の電源配線、グラウンド配線や入力信号配線に不要信号が漏れこんでしまった場合における、基準信号の入力から電圧制御発振器106の出力までの伝達関数特性を示す。
【0039】
図5に示す伝達関数特性は、減算501、位相検出器の利得KPD502、伝達関数503、電圧−周波数変換利得504、積分特性505、加算器506、および分周508の各ブロックからなる。
【0040】
伝達関数503は、チャージポンプ104およびループフィルタ105を合成した特性を表す。
【0041】
電圧−周波数変換利得504および積分特性505は、電圧制御発振器の伝達関数を表す。積分特性505は、周波数−位相変換を表している。
【0042】
分周508は、分周器107をモデル化したものである。
【0043】
加算器506は、電圧制御発振器106の電源配線、グラウンド配線や入力信号配線に漏れこむ不要波507を表す。不要波507は、不要波N1、N2の合成(N1+N2)である。
【0044】
不要波N1は、基準信号源101から出力される信号により電圧制御発振器106に発生する波であり、基本周波数f1の整数倍Kとなる周波数成分を持つ。
【0045】
また不要波N2は、信号処理回路109で発生する電源電圧変動により電圧制御発振器106に発生する波であり、信号処理回路109へ入力されるクロックの周波数(分周器108の出力信号の周波数)f2の周波数成分を持つ。
【0046】
なお、信号処理回路109への入力信号の周波数は、前述したように、基準信号源の周波数f1×N/Mとなる。
【0047】
したがって、不要波507(N1+N2)の入力から、位相同期回路102の出力までの閉ループ伝達関数は以下となる。
【数1】

【0048】
この閉ループ伝達関数は、バンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)となる。図6に示すように、バンドパスフィルタの高域遮断周波数を基準信号源の周波数f1の1/5以下とすることにより、漏れ込む不要波N1,N2を抑圧できることが分かる。
【0049】
また、電圧−周波数変換器401は非線形特性を持つため(図2参照)、不要波N1、N2による相互変調ひずみも、電圧−周波数変換器401の出力に発生する。このひずみ成分をN3とすると、図7に示すように、位相同期回路をモデル化できる。電圧−周波数変換利得704および積分特性705間の加算器706により、ひずみ成分N3の入力を表現している。要素701,702,703,704,705,708は、図5の501,502,503,504,505,508と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
ひずみ成分N3の入力から、位相同期回路の出力までの閉ループ伝達関数は、以下となる。
【数2】

【0051】
この伝達関数は、式1と同様にバンドパスフィルタとなる。不要波N1とN2がそれぞれ周波数成分K*f1、f2を持つとすると、2次歪みとしてはK*f1+f2、K*f1-f2の周波数成分を持つ不要波が、生じる。また、3次歪みとしては、2*K*f1-f2, 2*K*f1+f2、K*f1-2*f2、K*f1+2*f2の周波数成分を持つ不要波が、生じる。
【0052】
すなわち、非線形モデルを式で表すと、以下の通りである。
【数3】

例えば、2波の余弦波を入力信号
【数4】

とすると出力信号は3次の歪までを考慮すると次式となる。
【数5】

上式で示すように、f1+f2、f1-f2、2f1-f2, 2f1+f2、f1-2f2、f1+2f2の周波数成分に、ひずみ成分が生じる。なお、ω1=2πf1、ω2=2πf2 である。
【0053】
相互変調ひずみとして、周波数が高い信号成分(K*f1+f2、2*K*f1+f2、K*f1+2*f2)に発生する不要波については、バンドパスフィルタの高域遮断周波数を、基準信号源の基本周波数の1/5以下とすることで、抑圧することができる。
【0054】
しかしながら、相互変調ひずみは前述したように、周波数の差成分(K*f1-f2、2*K*f1-f2、K*f1-2*f2)にも発生するため、この差成分が、フィルタの通過帯域内に含まれてしまい、不要波を抑圧することができず、特性が著しく劣化してしまう。すなわち、K*f1-f2、2*K*f1-f2、K*f1-2*f2の絶対値が最小となるKの場合に、バンドパスフィルタの高域遮断周波数の5倍以下の帯域に、不要波が発生する可能性がある。なお、絶対値が最小となるKは、f1およびf2の値により異なる。例えば、2Kf1-f2で考えると、f1=36MHz、f2=351MHzを仮定すると、K=5の時に、2*5*36M-351M=9Mと最小になる。また、同様に|Kf1-f2|で考えると、K=10の時に、10*36M-351M=9Mと最小になる。
【0055】
そこで、バンドパスフィルタの低域遮断周波数を、2次歪に生じる不要波の最小周波数|Kf1-f2|の5倍以上となるように、分周器107と108の分周比N、Mを設定する。これにより、2次歪による不要波を抑圧することができ、特性劣化を低減することができる。ここで、絶対値が最小となるKをKminと仮定すると、Kmin±1,Kmin±2、・・・といったように値を変更した場合に、低域遮断周波数を超える場合があるが、その場合の不要波の周波数|Kf1-f2|はf1以上になり、したがって、フィルタの高域遮断周波数以上となる。したがって、そのような不要波も除去することができる。
【0056】
また、バンドパスフィルタの低域遮断周波数を、3次歪に生じる不要波の最小周波数|2Kf1-f2|、|Kf1-2f2|の5倍以上となるように、分周器107と108の分周比N、Mを変更する。これにより、3次歪による不要波を抑圧することができ、特性劣化を低減することができる。
【0057】
このように分周比N,Mを調整することで、特性劣化を低減できる。以下、このように特性劣化が低減された集積回路100の動作を、具体的に説明する。
【0058】
まず比較例として、分周比N,Mを、本実施形態に従って調整しなかった場合の動作を示す。例えば、基準信号源101の周波数を36MHz、分周器107の分周を1/78(すなわち分周比N=78)、分周器108の分周を1/8(すなわち分周比M=8)とする。電圧制御発振器106へ漏れこむ不要波の周波数成分として、基準信号源101から36MHzの整数倍の不要波、および信号処理回路109からの不要波351MHzが漏れ込むとする。また、バンドパスフィルタの低域遮断周波数を3.4MHz、高域遮断周波数を3.8MHzとする。この場合、バンドパスフィルタの高域遮断周波数は、基準信号源の不要波の1/5以下になっており、不要波を抑圧できる。しかしながら、相互変調により2次歪成分として、9MHz(=10*36M-351M)に不要波を生じ、さらに3次歪成分として、9MHz(=2*5*36M-351M)および18MHz(=20*36M-2*351M)に不要波を生じるが、これらの不要波は、バンドパスフィルタで十分に抑圧することが出来ず(これらの不要波の周波数は、バンドパスフィルタの低域遮断周波数より大きい)、特性が劣化してしまう。
【0059】
これに対し、分周比をN,Mを、本実施形態に従って調整した場合の動作は、以下のようになる。基準信号源101の周波数を36MHz、分周器107の分周を1/80、分周器108の分周を1/7.99とする。電圧制御発振器106へ漏れこむ不要波の周波数成分は、基準信号源101から36MHzの整数倍の周波数の不要波、および信号処理回路106からの不要波360MHzが漏れ込むとする。バンドパスフィルタの低域遮断周波数を3.4MHz、高域遮断周波数を3.8MHzとする。バンドパスフィルタの高域遮断周波数は、基準信号源101の不要波の1/5以下になっており十分抑圧することができる。また、相互変調により2次歪成分として、約451kHz(=10*36M-360.45M)に最小周波数成分の不要波が生じ、3次歪成分として、約451kHz(=2*5*36M-360.45M)および約901kHz(20*36M-2*360.45M)に最小周波数成分の不要波が生じる。これらの不要波は、バンドパスフィルタの低域遮断周波数より十分小さいことから、バンドパスフィルタで十分に不要波を抑圧することができ、特性劣化を防ぐことができる。
【0060】
ここで、バンドパスフィルタは、周波数が低くなればなるほど、抑圧量も向上する。したがって、不要波の絶対値の最小周波数がゼロ(DC)に近いほど、不要波を抑圧することができ、特性劣化を防ぐことができる。前述したように、2次歪成分の最小周波数は|K*f1-f2|であり、|K-N/M|*f1と展開できる。そこで、K=N/Mという条件、すなわち分周器107の分周比Nと分周器108の分周比Mの比が整数(=K)となるようにNとMの値を調整することで、2次歪の最小周波数をゼロにすることができ、特性を改善することができる。
【0061】
同様に、3次歪成分の最小周波数は|2K-N/M|*f1および|K-2N/M|*f1と展開できる。そこで、分周器107の分周比Nと分周器108の分周比Mの比が偶数となるようにNとMの値を調整することで、3次歪の最小周波数をゼロにすることができ、特性劣化を防ぐことができる。
【0062】
図8は、第2の実施の形態に係る位相同期回路802を含む集積回路800の構成を示す図である。
【0063】
図8の集積回路800は、位相同期回路802、p個の分周器808_1, 808_2,…808_pおよびp個の信号処理回路809_1, 809_2,…809_pを備える。分周器808_1〜808_pは、異なる分周比M1,M2,…Mpを有する。
【0064】
位相同期回路802は、位相検出器803、チャージポンプ804、ループフィルタ805、電圧制御発振器806および分周器807を備える。電圧制御発振器806は、第1の実施の形態と同様に、非線形の制御電圧−周波数変換特性を持つ
各ブロックの動作は、第1の実施の形態における同一名称のブロックと同様であり、詳細な説明を省略する。
【0065】
信号処理回路809_1〜809_pで発生する不要波が、電圧制御発振器806の入力に漏れ込む。基準信号源801の不要波と、それぞれの信号処理回路809_1〜809_pからの不要波との相互変調ひずみにより、電圧制御発振器806の特性が劣化する。
【0066】
そこで、バンドパスフィルタの低域遮断周波数を、各相互ひずみで発生する不要波の周波数の周波数の5倍以上とすることにより、特性劣化を防ぐことができる。この際、消費電力が最も大きい信号処理回路に起因するひずみを優先的に除去することが好ましい。消費電力の大きい回路ほど、不要波としての回り込む量が大きくなるため、消費電力の大きい回路をケアすることにより、特性劣化を効果的に防止できる。したがって、消費電力が最も大きい信号処理回路からの波と、基準波との相互ひずみで発生する不要波の周波数の5倍以上に、バンドパスフィルタの低域遮断周波数を設定するのが効果的である。
【0067】
また、前述したように、相互ひずみの周波数成分は、2次歪として|K-N/Mq|*f1、3次歪として、|2*K-N/ Mq|*f1および|K-2*N/ Mq|*f1が生じる(qは1〜pの整数)。そこで分周器の分周比NおよびMqを、2のべき乗とすることで、N/Mが整数かつ偶数になるため、|2*K-N/ Mq|および|K-2*N/ Mq|の少なくとも一方を、ゼロにすることが可能になる。これにより、複数の信号処理回路がある場合にも、少なくともその1つに起因する2次歪及び3次歪の周波数成分はDCとできる。これにより、不要波を除去して、特性劣化を防ぐことができる。
【0068】
この際、上述と同様の理由で、消費電力が最も大きい信号処理回路による不要波を優先的に除去することがよい。したがって、消費電力が最も大きい信号処理回路に関して、|2*K-N/ Mq|および|K-2*N/ Mq|の少なくとも一方がゼロにすることが、効果的である。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本周波数を有する基準信号を生成する基準信号源と、
与えられた制御電圧に応じた周波数の信号を生成する電圧制御発振器と、前記周波数の信号をN分周して第1分周信号を生成する第1分周器と、前記第1分周信号と前記基準信号との位相差を検出する位相検出器と、前記位相差に応じた電流信号を生成するチャージポンプと、前記電流信号に応じて制御電圧を生成するループフィルタと、を含む位相同期回路と、
前記電圧制御発振器により生成された信号をM分周して第2分周信号を生成する第2分周器と、
前記第2分周信号に同期して動作する信号処理回路と、
を備え、
前記基本周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記第2分周信号の周波数との差分の絶対値の最小値が、前記電圧制御発振器の入力から前記位相同期回路の出力までの伝達関数により表される帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上であることを特徴とする集積回路。
【請求項2】
前記基準周波数の2以上の偶数倍と、前記第2分周信号の周波数との差分の絶対値の最小値、および
前記基準周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記第2分周信号の2倍の周波数との差分の絶対値の最小値が、
前記帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記Mに対する前記Nの比率は、前記Kに一致する
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項4】
前記Mに対する前記Nの比率は、前記Kの2倍に一致する
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項5】
前記絶対値のうちの最小値が、前記低域遮断周波数の5分の1以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項6】
前記基準周波数の2以上の偶数倍と、前記第2分周信号の周波数との差分の絶対値のうちの最小値、および前記基準周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記第2分周信号の2倍の周波数との差分の絶対値のうちの最小値が、前記低域遮断周波数の5分の1以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の集積回路。
【請求項7】
P個の前記第2分周器と、
前記P個の前記第2分周器に対応するP個の前記信号処理回路と、を備え、
前記P個の第2分周器は、異なる分周比で分周を行ってP個の第2分周信号を生成し、
前記P個の信号処理回路は、それぞれ対応する前記P個の第2分周信号に同期して動作し、
前記基本周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記P個の第2分周信号のうちの少なくとも1つの周波数との差分の絶対値が、前記帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項8】
前記基本周波数のK倍と、前記P個の第2分周信号のうちの少なくとも1つの周波数との差分の絶対値のうちの最小値が、前記低域遮断周波数の5分の1以下である
ことを特徴とする請求項7に記載の集積回路。
【請求項9】
前記基準周波数の2以上の偶数倍と、前記P個の第2分周信号のうちの少なくとも1つの周波数との差分の絶対値、および
前記基準周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記P個の第2分周信号のうちの少なくとも1つの周波数の2倍との差分の絶対値が、
前記帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または前記高域遮断周波数以上である
ことを特徴とする請求項7に記載の集積回路。
【請求項10】
前記P個の第2分周器の分周比は、それぞれ2のべき乗である
ことを特徴とする請求項9に記載の集積回路。
【請求項11】
前記基準周波数の2以上の偶数倍と、前記P個の第2分周信号のうちの少なくとも1つの周波数との差分の絶対値のうちの最小値、および前記基準周波数のK(Kは1以上の任意の整数)倍と、前記P個の第2分周信号のうちの少なくとも1つの周波数の2倍との差分の絶対値のうちの最小値が、前記低域遮断周波数の5分の1以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の集積回路。
【請求項12】
P個の前記第2分周器と、
前記P個の前記第2分周器に対応するP個の前記信号処理回路と、を備え、
前記P個の第2分周器は、異なる分周比で分周を行ってP個の第2分周信号を生成し、
前記P個の信号処理回路は、それぞれ対応する前記P個の第2分周信号に同期して動作し、
前記基本周波数のK倍と、前記P個の信号処理回路のうち消費電力が最も大きい信号処理回路が用いる前記第2分周信号の周波数との差分の絶対値が、前記帯域通過フィルタの低域遮断周波数以下または高域遮断周波数以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の集積回路。
【請求項13】
前記基本周波数のK倍と、前記P個の信号処理回路のうち消費電力が最も大きい信号処理回路が用いる前記第2分周信号の周波数との差分の絶対値のうちの最小値が、前記低域遮断周波数の5分の1以下である
ことを特徴とする請求項12に記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46392(P2013−46392A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185229(P2011−185229)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】