説明

集積装置

【課題】長方形断面の被集積物を整然と集積できる集積装置を提供すること。
【解決手段】所定の長さを有する長方形断面の被集積物Pを、長さ方向と直交する集積方向Bへ搬送して複数の被集積物Pを集積するための集積装置1であって、前記集積方向Bの搬送経路内の上方に横倒し部材71を設け、搬送面から前記横倒し部材71の下端部までの高さ方向の隙間を、長方形断面の前記被集積物Pの長辺よりも狭く且つ短辺よりも広く設定したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積装置に係り、特に、所定の長さを有する長方形断面の被集積物を、その長さ方向に直交する集積方向へ搬送して被集積物を集積する集積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板状の鋼板などを成形して、長方形断面の角パイプを生成する成形装置が広く知られている。この種の成形装置では、成形後の角パイプを所定の長さに切断した上で、その後、成形された製品を払い出し部において払い出しを行い、数本の角パイプを集積して束ねる必要があった。この場合、通常は長方形断面の製品を倒す(長辺が床面に接する状態にする)ことで、製品を安定した状態にし、その状態で整列させて集積を行なう必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来は払い出し部に払い出される際に、搬送によって角パイプに加わる力や振動のみで角パイプの横倒しを調整していた為、確実に横倒しになるわけでもなく、横倒し状態と起立状態(短辺が床面に接する状態)とが混じっていた。このように、異なる姿勢の角パイプが混じってしまうと、適切に集積及び結束ができず、ラインが停止する場合があった。
【0004】
また、払い出し部において、人手によって起立状態の角パイプを横倒しすることは可能であるが、必要な人手が増大してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、大掛かりな装置を追加せず、簡易かつ低コストで被集積物の横倒しを行なうことを可能とする集積装置を提供することを目的とする。本発明により、横倒しの状態で被集積物の集積を行なうことができ、集積時における不具合を解消できる。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、所定の長さを有する長方形断面の被集積物を、長さ方向と直交する集積方向へ搬送して複数の被集積物を集積するための集積装置であって、前記集積方向の搬送経路内の上方に横倒し部材を設け、搬送面から前記横倒し部材の下端部までの高さを、長方形断面の前記被集積物の長辺よりも低く且つ短辺よりも高い位置に設定した、という構成を採っている。
【0007】
また、前記被集積物は、前記集積方向に沿って設けられた搬送手段によって搬送される、という構成を採っている。
【0008】
また、前記被集積物は磁石に吸着する材料で形成されており、前記横倒し部材の下方には前記搬送経路に外周面が接する磁石ローラが設けられ、この磁石ローラはその外周面が前記搬送手段と略同速度となるように回転する、という構成を採っている。
【0009】
また、前記磁石ローラには、この磁石ローラの外周面よりも外方に突出する突出部を備えたカム部材が併設されている、という構成を採っている。
【0010】
また、前記横倒し部材は、その下端の高さ方向位置が調整可能である、という構成を採っている。
【0011】
さらに、前記横倒し部材は、前記被集積物の長さ方向に沿った位置が調整可能である、という構成を採っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態の集積装置における、横倒し装置を示す三面図である。また、図2は図1に開示した横倒し装置で使用される磁石ローラとカム部材を示す図である。図3は、本実施形態に係る集積装置を上方から見た場合の全体レイアウト図である。更に、図4は、図1に開示した横倒し装置の作用を説明する図である。
【0013】
[全体レイアウト]
先ず、図3に基づいて、本実施形態に係る集積装置1の全体レイアウトについて説明する。被集積物(以下、被集積物の一例として「角パイプ」という語句を用いて説明する。)Pは、成形機(図示略)で成形された後に所定長さに切断されて、矢印Aの方向から集積装置1に導入されるようになっている。集積装置1の導入部にはローラ式コンベア3が設置されており、切断された角パイプPがローラ式コンベア3上を移動するようになっている。
【0014】
また、集積装置1には、角パイプPの長さ方向とは直角な方向(以下、「集積方向B」という。)に伸びる搬送手段5(例えば、ベルト状搬送手段)が設けられている。搬送手段5は、角パイプPの両端付近に対応する位置にそれぞれ1本ずつ、計2本設けられている。この搬送手段5は角パイプPを集積方向Bに搬送するためのものであり、後述する整列部9まで伸びている。
【0015】
また、搬送手段5の下流側には、整列部9が設けられている。この整列部9は、搬送されて集積された複数の角パイプPを、所定の本数づつ束ねる部分である。この整列部9は本願の特徴部分では無いので、詳細な説明は省略する。
【0016】
また、各搬送手段5の長さ方向の略中間部付近には、横倒し装置7が設けられている。この横倒し装置7は、搬送手段5によって搬送されてきた角パイプPのうち、起立状態(短辺が搬送手段5の表面に接している状態)のものを横倒し状態(長辺が搬送手段5の表面に接している状態)にするためのものである。本実施形態では、集積方向Bの左右にそれぞれ1組で計2組の横倒し装置7が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、左右の何れか一方に1組だけ設けても良いし、左右方向の中心領域に1組だけ設けるようにしてもよい。更には、3組以上設けるようにしてもよい。
【0017】
[横倒し装置の概要]
次に、図1及び図2に基づいて、本発明の特徴部分である横倒し装置7について詳細に説明する。この横倒し装置7は、角パイプPの搬送経路内に上方から垂下されている横倒し部材71と、この横倒し部材71の下方に配置される磁石ローラ81と、この磁石ローラ81に併設されているカム部材83とを主要な構成要素としている。この他、横倒し部材71を支持するクランプ部材73と、このクランプ部材73を所定の高さ位置に支持するクランプ支持部材75とを備えている。このクランプ支持部材75は、集積方向の左右両側に設けられたフレーム77に、所定の取付板79を介して固定されている。更に、上記磁石ローラ81の回転軸にはプーリ81aが取り付けられており、所定のベルト81bを介して電動モータ81cに係合されている。
【0018】
[横倒し部材]
横倒し部材71は、図1に示すように、断面円形の棒状の部材である。この棒状の横倒し部材71は、起立状態で搬送されてくる角パイプPの側面に接触して、角パイプPを横倒し状態にするためのものである。このため、搬送手段5の表面(搬送面)と横倒し部材71の下端との高さ方向の隙間h(図1(C)参照)は、角パイプPの長辺の長さよりも狭く且つ短辺の長さよりも広くなっている。こうすることで、起立状態にある角パイプPは横倒しされ、一方既に横倒し状態となっている角パイプPはそのまま通過できる。尚、本実施形態の横倒し部材71は単純な断面円形の棒状部材であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、円形の中空パイプ、四角柱、四角形パイプ、その他の多角柱や多角形パイプであってもよい。更には、棒状部材ではなく、板状の部材であってもよい。
【0019】
[クランプ部材]
クランプ部材73は、上記した横倒し部材71をクランプして固定するためのものである。クランプ部材73には円形の鉛直貫通穴が形成されており、この鉛直貫通穴に横倒し部材が挿入され固定されるようになっている。また、クランプ部材73には横倒し部材71を固定するための固定手段(例えば、ネジ)73aが設けられている。このため、必要に応じて固定手段73aを操作することで、クランプ部材73に対して横倒し部材71の位置を調整して固定することが可能である。具体的には、固定手段73aであるネジをねじ込むことで横倒し部材71はクランプ部材73に固定される一方、ネジを緩めることで横倒し部材71を鉛直方向に移動させることができる。これにより、断面の寸法が異なる角パイプPに対して柔軟に対応できると共に、横倒し装置7を使用しない場合には横倒し部材71を搬送経路から退避させることができる。
【0020】
また、クランプ部材73には、水平方向に向かって形成された水平貫通穴が設けられている。この水平貫通穴は後述するクランプ支持部材75が挿通される穴であり、本実施形態では鉛直方向に並んで2つの水平貫通穴が形成されている。また、クランプ部材73には、所定のハンドル73bが設けられている。このハンドル73bは、クランプ支持部材75上の所望の位置で、クランプ部材73を固定するためのものである。すなわち、クランプ部材73をクランプ支持部材75の所定位置に停止させた上で、ハンドル73bを締め込むことで、クランプ部材73が固定される。一方、ハンドル73bを緩めると、クランプ支持部材75の長手方向に沿ってクランプ部材73を移動させることができるようになる。これにより、長さの異なる角パイプPに対しても柔軟に対応することができる。また、hの寸法を一定の状態でユニット交換でき、他の断面形状の製品についても即座に対応が可能となり、作業効率が向上する。
【0021】
[クランプ支持部材]
クランプ支持部材75は、集積方向Bの左右両端から搬送経路に向かって突き出した2本の棒状の部材である。このクランプ支持部材75は、取付板79を介してフレーム77に固定されており、クランプ部材73に外力が加わった場合でも、クランプ部材73を所定位置に支持するようになっている。尚、本実施形態に係るクランプ支持部材75は、所定間隔を隔てて平行に設けられた円柱状の棒状部材であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、長さ方向に沿って一定の断面形状を有するものであれば、断面形状はどのようなものであってもよい。また、本実施形態では、2本のクランプ支持部材75を鉛直方向に並べているが、水平方向に並べるようにしてもよい。
【0022】
[磁石ローラ]
次に、磁石ローラ81について説明する。磁石ローラ81は、横倒し部材71の下方に配置されており、上側の外周面が搬送手段5の表面と略同一面となるように設置されている。そして、磁石ローラ81が回転した場合には、搬送手段5の移動速度と略同一の速度で外周面が移動するように、回転数が設定されている。このため、搬送手段5によって角パイプPが搬送されてきて横倒し装置7を通過する際には、角パイプPが磁石ローラ81の外周面に接触することとなる。尚、本実施形態の磁石ローラ81は電磁石で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、永久磁石を用いるようにしてもよい。また、磁石ローラ81の回転軸の一端には、所定のプーリ81aが取り付けられている。このプーリ81aは、ベルト81bを介して電動モータ81cに接続されており、電動モータ81cの駆動力によって磁石ローラ81が回転するようになっている。尚、本実施形態では、磁石ローラ専用の電動モータ81cを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、搬送手段5を駆動するためのモータ(図示略)から駆動力を取るようにしてもよい。こうすることで、搬送手段5の移動速度と磁石ローラ81の回転とを簡単に同期させることができ、複雑な同期制御が不要となる。
【0023】
[カム部材]
次に、図1および図2に基づいて、カム部材83について説明する。カム部材83は磁石ローラ81の一方の端面に取り付けられており、磁石ローラ81と一体として回転するようになっている。カム部材83の表面には、磁石ローラ81の外周面よりも外方に突出する突出部83aが形成されている。この突出部83aは、磁石ローラ81に吸着された角パイプPを引き離すためのものである。カム部材83の具体的な作用については、後述する。
【0024】
[作用]
次に、本実施形態の集積装置1の具体的な作用について、図3及び図4に基づいて説明する。ここで、角パイプPは、例えば鉄などの磁石に吸着される材料から形成されている。上記したように、成形機(図示略)によって成形された角パイプPは、切断装置で所定の長さに切断される。そして、図3の矢印Aの方向から集積装置1に導入される。集積装置1に導入された角パイプPは、ローラ式コンベア3上を移動し、所定位置に来たときに図示しない押込装置によって搬送手段5内に押込まれる。
【0025】
押込まれた角パイプPは、搬送手段5によって集積方向Bに搬送される。そして、横倒し装置7まで到達した時に、一連の横倒し作用を受けることとなる。具体的には、図4に示す通りである。すなわち、角パイプPが起立状態で搬送手段5によって搬送されて来ると、磁石ローラ81に吸着される(図4(A)参照)。しかし、磁石ローラ81の外周面は搬送手段5の移動速度と略等しい速度で回転しているので、角パイプPは磁石ローラ81に吸着された状態のまま、更に搬送手段5の下流側に搬送される。
【0026】
そして、角パイプPが横倒し部材71の位置まで来ると、角パイプPの上部が横倒し部材71に接触する(図4(B)参照)。それでも、角パイプPは磁石ローラ81に吸着されているため、磁石ローラ81の回転および搬送手段5の移動に伴ってより下流側へと搬送される。これにより、起立状態だった角パイプPは傾いて(図4(C)参照)、その後横倒し状態となる(図4(D)参照)。このとき、磁石ローラ81しか設けられていない場合には、角パイプPが磁石ローラ81に吸着したままとなり、集積ラインに詰まり等を発生させてしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、磁石ローラ81にカム部材83を併設している。このため、カム部材83の突出部83aが角パイプPを下流側に押すことで(図4(E)参照)、最終的に角パイプPが磁石ローラ81から引き離されて集積方向Bの下流側に搬送される(図4(F)参照)。
【0027】
横倒しにされた角パイプPは、図5に示すように、整列部9によって所定の本数を1組として起立状態で整列され、更に下流側の結束部へ配送され所定本数が結束されて、製品として出荷される状態となる。このように、全ての角パイプPが一旦横倒し状態にされたあと、一定の起立状態にされるため、多数の角パイプPを整然と集積して結束することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、複数の被集積物を整然と集積する集積装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態の集積装置における横倒し装置を示す三面図であり、図1(A)は上面図、図1(B)は側面図、図1(C)は正面図を示す。
【図2】図1に開示した横倒し装置で使用される磁石ローラとカム部材を示す図であり、図2(A)は側面図、図2(B)は正面図を示す。
【図3】本発明に係る集積装置を上面から見た場合の全体レイアウト図である。
【図4】図1に開示した横倒し装置の作用を説明する図であり、図4(A)は被集積物が横倒し装置に到達する前の状態を示し、図4(B)は被集積物が横倒し部材に接触した状態を示し、図4(C)は被集積物が倒れつつある状態を示し、図4(D)は被集積物が完全に倒れた状態を示し、図4(E)は被集積物がカム部材によって磁石ローラから引き離される状態を示し、図4(F)は被集積物が下流側に搬送される状態を示す。
【図5】整列部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0030】
1 集積装置
3 ローラ式コンベア
5 搬送手段
7 横倒し装置
71 横倒し部材
81 磁石ローラ
83 カム部材
P 角パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さを有する長方形断面の被集積物を、長さ方向と直交する集積方向へ搬送して複数の被集積物を集積するための集積装置であって、
前記集積方向の搬送経路内の上方に横倒し部材を設け、搬送面から前記横倒し部材の下端部までの高さ方向の隙間を、長方形断面の前記被集積物の長辺よりも狭く且つ短辺よりも広く設定したことを特徴とする集積装置。
【請求項2】
前記被集積物は、前記集積方向に沿って設けられた搬送手段によって搬送されることを特徴とする、請求項1に記載の集積装置。
【請求項3】
前記被集積物は磁石に吸着する材料で形成されており、前記横倒し部材の下方には前記搬送経路に外周面が接する磁石ローラが設けられ、この磁石ローラはその外周面が前記搬送手段と略同速度となるように回転することを特徴とする、請求項1又は2記載の集積装置。
【請求項4】
前記磁石ローラには、この磁石ローラの外周面よりも外方に突出する突出部を備えたカム部材が併設されていることを特徴とする、請求項3に記載の集積装置。
【請求項5】
前記横倒し部材は、その下端の高さ方向位置が調整可能であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の集積装置。
【請求項6】
前記横倒し部材は、前記被集積物の長さ方向に沿った位置が調整可能であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の集積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249068(P2009−249068A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95671(P2008−95671)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【特許番号】特許第4224523号(P4224523)
【特許公報発行日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(593060931)株式会社 英田エンジニアリング (16)
【Fターム(参考)】