説明

集積電気部品用2重センサ温度安定化

恒温槽に設けられ、予め規定した温度(Tset)で、集積電気部品の温度(Tcomp)を安定化する方法及びシステム(1)。集積電気部品の温度は、温度感知手段によって感知され、この温度感知手段は、第1及び第2の感知素子(61,62)と感知回路(72)とを備え、第1及び第2の感知素子は、集積電気部品と良好な熱接触にて配置され、第1及び第2の温度依存特性(63、64)を有し、第2の温度依存は、第1及び第2の特性(63,64)が予め規定した温度(Tset)にて交わるように第1の温度依存とは異なる。感知回路は、第1及び第2の感知素子(61,62)を感知するため、及び第1及び第2の温度依存特性(63,64)を示す第1及び第2の測定信号(83,84)を制御回路(71)に供給するために適合され、これはそこからの加熱手段用の制御信号を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には温度制御システムに関し、特には恒温化された(ovenized)2重センサ制御システムに関し、及び集積電気部品用の温度を安定させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロメカニカル・システム(MEMS)及び特にMEMS共振器は、非常に高い品質要因(Q)を有して発振器を構築するために用いることができ、このことは、図1に示すように、それらを周波数基準装置として役立つように実施可能にすることが知られている。しかしながら、伝統的には水晶振動子がそれらのより良好な温度安定度のため、周波数基準としてしばしば用いられる。放送送信機システムにおけるように、より高い安定性が要求されるときには、恒温槽型水晶発振器がしばしば用いられる。しかしながら、そのような石英デバイスは大きく、また、石英基準を用いるシステムは、低い集積化に悩まされる。一方、MEMS発振器は、小さく、集積化可能であり、よって、コストを著しく低下させる。しかしながら、補償無しでのMEMS共振器は、温度に関して周波数ドリフトの高い感度を示し(例えば100℃の周囲温度範囲に関して±5000ppm)、よって、図2に示すように、水晶振動子よりも温度に関してより不安定な周波数特性を有している。
【0003】
MEMS共振器は、周囲温度を感知することにより、及び測定された温度によって、例えば電気的にMEMS共振器を補償することによって、広い周囲温度範囲(例えば100℃の周囲温度範囲)にわたり、より良好に安定させることができる。図3は、そのような従来の解決策を図示している。周囲温度は、MEMSデバイスと良好に熱接触する外部の温度センサによって感知され、MEMS発振器システムは、測定された温度に基づいて周波数制御手段によって電気的に補正される。言い換えれば、周囲温度センサは、共振器システムの周波数補償ノブを駆動する。このように、MEMS共振器は、100℃の周囲温度範囲(例えば−20℃から+80℃周囲温度まで)にわたり、±100ppm精度まで典型的に制御されるかもしれない。
【0004】
しかしながら、それらのメカニズムの問題は、温度センサ自体の精度及び温度安定性である。温度に関するそれらのドリフトは、MEMS共振器の達成可能な温度安定性を制限する。これが、システムにおいて信頼できる(かつ高価な)温度基準がしばしば必要とされる理由である。
【0005】
図4に示されるように、米国特許出願 2009/0243747は、1つの安定した周波数を発生するために2つの共振器を用いる。温度安定性は、温度変化に対する周波数の変化である、周波数の異なる温度係数、TCF=Δf/f.1/ΔTを有する2つの共振器を用いることにより、及び、温度ドリフトによる共振器間の周波数差を補償することによって達成される。(補償が適用されなかったならば)両方の周波数が同一のところで、所定温度Tsetが存在する。制御ループは、温度変化を補償し、周波数が他の温度においても同一に維持されることを保証する。したがって、共振器周波数の安定性が達成される。しかしながら、この概念には、周波数の異なる温度係数(TCF)を有する2つの共振器を必要とし、大きなチップ面積を必要とするという欠点がある。また、両方の共振器は、さらなる回路類を必要としながら、発振器として構成されるべきである。また、所望の周波数を達成するために、両方の共振器帯(bars)での温度は同一であるべきであり、このことは、概念的には設計を一致することによって容易であるかもしれないが、実際には保証するのは非常に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願 2009/0243747号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、予め規定した温度(Tset)で、集積電気部品の温度を安定化させ、複雑ではない、システム及び方法を提供することである。
【0008】
この目的は、独立請求項のシステム及び方法による本発明に従い達成される。
そのことに本発明は、予め規定した温度で集積電気部品の温度を安定化させるための恒温化されるシステムを提供し、このシステムは、
− 恒温温度に恒温槽を加熱する加熱手段と、
− 恒温槽に設けられる電気デバイスであり、該電気デバイスは集積電気部品を備え、この集積電気部品は温度依存特性を有する、電気デバイスと、
− 集積電気部品の温度を感知する温度感知手段と、
− 感知された温度を示す測定信号を受け入れる温度感知手段に接続され、及び、予め規定した温度で集積電気部品の温度を維持するため制御信号をそれに供給する加熱手段に接続される制御回路と、
を備え、
ここで上記温度感知手段は、
− 上記集積電気部品と良好な熱接触に位置する第1及び第2の感知素子であって、この第1及び第2の感知素子は、集積電気部品とほぼ同じ温度を有し、また、第1及び第2の温度依存特性を有し、第2温度依存性は、第1及び第2の特性が上記予め規定した温度で交わるように第1の温度依存性とは異なる、第1及び第2の感知素子と、
− 第1及び第2の感知素子を感知するよう適合され、及び、第1及び第2の温度依存特性を示す第1及び第2の測定信号を制御回路へ供給するよう適合された感知回路と、
を備える。
【0009】
集積電気部品は、例えば、マイクロエレクトロメカニカル・システム(MEMS)デバイス、例えばMEMS共振器、あるいは、例えばコンデンサー、抵抗器などのような電気部品であってもよい。この出願において、用語「MEMS構造」、「MEMS部品」及び「MEMSデバイス」は、同意語として用いられる。
【0010】
集積電気部品は、当業者に知られる、コンデンサー、抵抗器、誘導子、電流源、電圧源、ADCコンバーター、アンプ、あるいは他の集積電気部品であることができる。
【0011】
2つの感知素子が集積電気部品とほぼ同じ温度を有し、及び、測定されたときに予め規定した温度Tsetに対応した予め規定した交差点で測定曲線が交差するように両方の感知素子が異なる温度依存特性を有するように、集積電気部品と十分に良好な熱接触において2つの感知素子を用いることによって、集積電気部品の実温度が所定温度Tsetよりも上か、下か、あるいは等しいかを容易に決定することができ、相応してヒーターを制御することができる。制御ループにおいて測定された信号を用いることによって、所望の温度を正確に維持することができる。
【0012】
異なる温度依存性(技術分野内で用いられるような)を有する2つの集積電気部品を設ける代わりに、集積電気部品の実温度を感知するために異なる温度依存性を有する2つの感知素子を加えることによって、集積電気部品のいずれの温度ドリフトも補償するために感知手段が存在することから、温度ドリフトを考慮することなく所望の機能(例えば加速度計、共振器、圧力計など)を実施するように単一の集積電気部品が使用され最適化可能であるので、余分な回路類は排除することができる。
【0013】
MEMS構造の所望の機能から温度感知機能を分離することによって、感知素子のトリミング(例えばレーザートリミング)あるいは較正が実行可能であり、MEMS構造に影響を与えず及び望まない副作用をそれに導入することなく、それらの特性がわずかに変更される。
【0014】
相対的な温度誤差のみを検出する必要があるので(つまり、実際の温度が所望温度よりも高いか低いかどうかを検知する)、誤差の大きさの絶対測定を検出する必要はない。したがって、温度に関して非常に正確で安定した特性を必要とするであろうアンプもA−D変換器も必要ない。このことは、システムを大いに単純化し、より実現可能にする。温度誤差の検出における利得誤差は、関係する唯一の測定が「高すぎる」、「低すぎる」であるので、求められたTsetを達成することには無関係である。正確にではなく、どれくらい高すぎる、あるいは低すぎるかである。
【0015】
もう一つの利点は、本発明の技術をMEMS共振器のためだけでなく種々様々のMEMS構造及び他の集積電気部品に用いることができるということである。
【0016】
好ましくは、しかし必ずではなく、第1及び第2の感知素子は、例えば、ほぼ同じ振幅(amplitude)を有するが、必ずしも同じ符号又は位相又は継続時間ではないことを指し、それは好ましくは同一である第1及び第2の感知信号で感知される。
【0017】
ある実施態様において、制御回路は、第1及び第2の測定信号を減算して差信号とし、この差信号を増幅し、及びこの増幅した差信号を制御信号として供給することに適している。
【0018】
このような制御回路は、最小のハードウェア資源(つまりチップ面積と電源消費)、及びその単純さにより最低限の設計労力及びテスト労力ですむので容易に実行することができる。得られた増幅差信号は、所望温度Tsetでゼロであり、集積電気部品の温度Tcompが所望温度Tsetよりも高い及び低いとき、正及び負である、あるいはその逆である、曲線を典型的には有する。制御ループは、この増幅差信号を用いることができ、集積電気部品の温度が所望温度Tsetよりも低いときに恒温槽2のヒーター21を関与させる。それによって、典型的に、増幅された差信号がより大きいときに、より多くの加熱パワーを用いる。
【0019】
別の実施態様では、制御回路は、例えば、どちらが他方よりも大きいかを決めるために第1及び第2の測定信号を比較し、その比較結果を制御信号として提供することに適している。
【0020】
これは、最小の資源のみを必要とする単純な制御回路のもう一つの例である。比較は、例えば、差動増幅器あるいは演算増幅器またはコンパレーターを用いて容易に達成することができる。
【0021】
好ましくは、第1及び第2の感知素子は、第1及び第2の抵抗の温度係数を有する第1及び第2の抵抗値を有する第1及び第2の電気抵抗器を備え、第2抵抗の温度係数は、第1抵抗の温度係数とは異なっている。
【0022】
異なる抵抗の温度係数(TCR)及び適切な感知信号(例えば各抵抗器の抵抗値に反比例する大きさを有する電流信号、又は、各抵抗器の抵抗値に正比例する電圧信号)を有する一対の抵抗器を使用するとき、Tsetで交差点を有する、上述したような温度依存特性が得られる。このことは、制御ループを測定された信号間の比率上でのみ機能可能とし、したがってシステムは、レシオメトリック(ratiometric)であると言われる。
【0023】
比較的小さな感知素子、つまり典型的なMEMS構造あるいは大きなコンデンサーよりも少ないスペースを占める感知素子、を使用することによって、感知素子は、集積電気部品に極めて接近して位置することができ、感知素子の温度は、より少ないスペースを占める間、実質的にMEMS構造の温度と同じである。さらに、基板に実装される必要はないが、例えば堆積されるかもしれない抵抗器のような単純な感知素子を選択することにより、これらの感知素子は、感知素子と集積電気部品との間の温度差をさらに縮小するので、集積電気部品自身の上方あるいはその上部にさらに取り付けられるかもしれない。
【0024】
任意として、システムは、さらに、システムにおける残余誤差を除去するポスト補償回路を備える。このポスト補償回路は、制御信号を受け入れるため制御回路に接続され、制御信号の例えば直線的な、二次あるいは多項式の変化のようなポスト補償信号を発生する、あるいは例えばルックアップテーブルを使用する部品を有し、かつ、集積電気部品の温度と予め規定した温度との差を減じるためのバイアス信号あるいはオフセット信号としてのポスト補償信号を供給するためシステムへ戻り接続される。
【0025】
そのようなポスト補償回路を用いることによって、例えば、オフセットのため、熱の潜在性のため、あるいは他の非理想による不正確さによってもたらされる残余誤差はさらに減じられるであろう。
【0026】
実施態様において、恒温化されるシステムは、加熱手段及び集積電気部品が配置される実質的な真空パッケージを備え、ここで集積電気部品は、周囲温度から十分に熱的に分離されており、加熱手段は、集積電気部品と良好な熱接触にある。
【0027】
また、予め規定した温度で集積電気部品の温度を安定させる方法を提供することも本発明の目的である。この目的は、独立請求項の特徴を有する方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、発振器及びフィルタに適用されたMEMS共振器を示す。
【図2】図2は、恒温制御された水晶振動子の温度に関する、補償されていないMEMS共振器に関する典型的な周波数ドリフトのプロットを示す。
【図3】図3は、MEMSに基づいた従来のシステムを示す。
【図4】図4は、別の、MEMSに基づいた従来のシステムを示す。
【図5A】図5Aは、感知抵抗器を有しない典型的なMEMS共振器構造の平面図を示す。
【図5B】図5Bは、図6AのMEMS共振器の平面図を示し、その上部では、本発明による、異なるTCRを有する感知抵抗器がMEMS共振器と非常に接近してかつ良好な熱接触を有して配置されている。
【図5C】図5Cは、A−Aラインにおける、図5Aの構造の断面を示し、ここで感知抵抗器は、互いに隣接して設けられる。
【図5D】図5Dは、別の断面を示し、ここで感知抵抗器は、互いの上に設けられる。
【図5E】図5Eは、本発明の実施形態によるMEMSデバイスを備えた真空パッケージを示す。
【図6】図6は、本発明によるシステムの実施形態を示す。
【図7A】図7Aは、温度依存抵抗器の値に対応する測定電圧信号の例を示す。
【図7B】図7Bは、図7Aの測定された電圧信号間の差を示す。
【図7C】図7Cは、図7Aの測定された電圧信号間の比較の出力を示す。
【図8】図8は、ヒーターも示して、本発明によるシステムの実施形態を示す。
【図9】図9は、第1及び第2の温度依存特性を示す。
【図10】図10は、ポスト補償制御ループを加えた図8のシステムを示す。
【図11】図11は、2重のセンサ制御の無い、本発明による2重のセンサ制御を有し、並びに本発明による2重のセンサ及びポスト補償制御を有する恒温制御されたMEMSパラメーター用の出力信号の安定性の効果を提供する。
【図12】図12は、図10の実施形態を示し、ポスト補償信号がMEMS構造のバイアス電圧である。
【図13】図13は、図10の別の変形を示し、ポスト補償信号が位相同期ループに作用している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明は、添付の図面及び発明の好ましい実施形態を説明する図説明においてさらに明瞭にされる。図は、縮尺によって描かれていない点に注意されたい。図は、発明の原理を記述することを意図している。さらに発明の実施形態は、異なる図の異なる特徴及び要素の組み合わせを用いることができる。
【0030】
参考
1 システム
11 MEMS構造、MEMS部品、MEMSデバイス
2 恒温槽
21 ヒーター、加熱手段
22 真空パッケージ
31 温度補償された水晶振動子対温度の周波数曲線
32 補償されていないMEMS共振器対温度の周波数曲線
5 温度センサ
6 基準温度センサ
61 第1感知素子
62 第2感知素子
63 第1感知素子の温度依存特性
64 第2感知素子の温度依存特性
65 交差点
7 電気デバイス
71 制御回路
81 第1感知信号
82 第2感知信号
83 第1測定信号
84 第2測定信号
85 差信号
86 比較信号
87 出力信号
88 制御信号
90 ポスト補償回路
91 ポスト補償信号
92 ポスト補償を含む出力信号
Toven 恒温槽温度
Tamb 周囲温度
Tset 予め規定した温度
Tcomp 集積電気部品の温度
【0031】
本発明は、特定の実施形態に関して、及びある図に関して記述されるだろうが、しかし発明はそれに制限されない。記述された図は、単に模式的であり、非限定的である。図において、要素のいくつかのサイズは、説明の目的のため、誇張され尺度に沿って描かれないかもしれない。寸法及び相対的な寸法は、発明の実施への実際の縮小に必ずしも対応してない。
【0032】
さらに、実施形態及び請求範囲における第1、第2等の用語は、類似の要素間を区別するために使用され、必ずしも連続的、経時的な順を述べるためのものではない。それらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、発明の実施形態は、ここに記述されあるいは図示された以外の他の順序における動作が可能である。
【0033】
さらに、実施形態及び請求範囲における上、底、上方、下方、等の用語は、便宜上、使用されるものであり、必ずしも相対的な位置を述べるものではない。それらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、ここに記述された発明の実施形態は、ここに記述されあるいは図示された以外の他の配向における動作が可能である。
【0034】
請求範囲において使用される、用語「備える」は、それ以後に列挙する手段に限定されるように解釈すべきではない。即ち、それは、他の構成部分又は工程を排除しない。よって、そのように述べられた特徴、整数、工程、又は部品の存在を特定するように解釈されるべきであり、1つ以上の他の特徴、整数、工程、又は部品、あるいはそれらのグループの存在や追加を妨げない。したがって、表現「手段A及びBを備えたデバイス」の権利範囲は、部品A及びBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの唯一関連ある部品がA及びBであるということを意味する。
【0035】
本発明は、予め規定した温度Tsetにてマイクロエレクトロメカニカル(MEMS)デバイス11の温度を安定化させるための方法及びシステムを提供する。MEMS構成11は、一般に知られており、圧力センサ、共振器、圧力センサなどのような種々様々の応用例に用いられている。それらの最も大きな利点の1つは、それらが小さく、例えばCMOSチップに集積可能であるということである。
【0036】
しかしながら、MEMS構造11に関する問題は、それらの特性が温度とともに大きくドリフトするかもしれないということである。それは、例えばMEMS共振器の場合、その周波数が100℃の温度範囲(例えば−20℃から+80℃まで)で例えば5000ppmドリフトするかもしれないということである。例えば、MEMS共振器のシリコンは、典型的にはその共振周波数fres(T)に関して温度に対して−30ppm/Kの感度を有している。その、周波数の温度係数TCFは、−30ppm/Kであると言われる。
【0037】
MEMS共振器11の周波数を安定させるためのいくつかの技術がある。一つは、例えば、発振器回路のフィードバック信号を修正することによる電気的な補償によるもの(ここではさらに議論しない)であり、別のものは、予め規定した温度TsetにMEMS構造11の温度Tmpを維持することによるものである。後者は、例えば、MEMS構造11を恒温槽2に置き、恒温槽温度Tovenを維持することによって行うことができる。しかしながら後者は、恒温槽内の温度が所定値Tsetよりも高いかあるいは低いか否かを決定するいくつかの手段を必要とする。米国特許出願2009/0243747号において、後者は、異なった周波数温度係数TCF1、TCF2を有する2つのMEMS共振器を用いることによって実行され、それら周波数を混合することに基づいた制御信号88を発生する。本発明で用いられる原理は、MEMS共振器に適用可能なだけでなく、例えば加速度計あるいは圧力センサのような他の種類のMEMS構造11にも適用可能であるシステム及び方法を提供する。
【0038】
図5Bを参照して、本発明の実施形態によれば、第1及び第2の抵抗値r1、r2及び抵抗の温度係数TCR1、TCR2を有する少なくとも2つの抵抗器61、62が、MEMS共振器11の共振器バーの上に、電気的に絶縁された方法で、しかしそれに良好な熱接触にて処理され、システムの所望の精度に十分である。それらの抵抗値は、2つの感知信号81(11in)、82(12in)、例えば、得られた電圧曲線83、84(図7A)が予め規定した温度Tsetに対応する交差点85で交差するように、第1の抵抗器61を流れる第1の直流電流81、及び第2の抵抗器62を流れる第2の直流電流82、を組み合わせて選択される。それらの抵抗器は、本発明の方法による、2つの温度感知のために使用される一対の感知素子61、62を形成する。実施形態において、2つの感知電流11、12は、実質的に同じであってもよく、例えば、当該技術にて既知の回路類によるカレントミラーによって生成された2つの直流電流であってもよい。別の実施形態において、単一の感知信号(例えば直流電流11)は、対応する第1及び第2の測定結果83,84が第1及び第2のストレージ手段(例えば測定コンデンサー(不図示))に保管されながら、代わりに、例えばスイッチを用いて、第1及び第2の感知素子61、62(例えば抵抗器)に適用されてもよい。感知後、ストレージ手段に保管された測定信号83,84(例えば電圧)は、制御信号88を生成するため比較され、あるいは減算されてもよい。このように、第1及び第2の感知信号81、82間のいかなる差も回避することができる。
【0039】
温度依存特性63、64の交差が予め規定した温度で得られる限り、抵抗器に加えて感知素子としてまた他の要素、例えばコンデンサー、ダイオード、又はその組み合わせが用いられてもよい。交差は、個々の特性あるいは他の操作の単純なスケーリングによって作成することができる。温度特性は、両方の要素に関して同じである必要はない(例えば一方の要素に関してキャパシタンス、及び他の要素に関して抵抗)。ダイオードの抵抗が温度に関して実質的に指数関数的な依存を有し、一方、電気抵抗器の依存が実質的に線形的であることは良く知られており、このように温度依存性は全く異なる。単純化のため、発明の原理は抵抗器に関してさらに記述する。比較のため、図5Aは、図5Bと同じMEMS共振器を示すが、温度センサ61、62を有していない。
【0040】
図5Bに参照して実施形態において、第1及び第2の感知信号81、82は電気デバイス7によって発生される。それらは、例えば、MEMSデバイス11を備える同じチップにおいて発生されてもよい。別の実施形態では、感知信号81、82は、電気デバイス7の外部から、例えば恒温槽2の外部から供給される。所望の交差点65(図7A)及び対応の所望温度Tsetは、固定されてもよいし、感知信号81、82の変更によって変更あるいは調整可能であってもよい。外部の感知信号81、82を供給可能とすることは、また、いくつかの補正あるいは較正を行なうことを可能にする。
【0041】
2つの抵抗器61、62をMEMS構造11と、特に共振器バーと、熱接触にて配置することは、電気デバイス7(例えばチップ)の動作の間、共振器バーの温度Tcompが、予め規定した温度Tsetにできるだけ接近して一致するようにし、それによって、共振器周波数が共振器バーの局所的な温度に最も敏感であるように、MEMS11の共振器周波数をできるだけ良好に安定させる。電気デバイス(例えばチップ)の動作の間、恒温槽の内部TovenとMEMSデバイス11の温度との間に一般的に温度差が存在することに注意すべきである。したがって、MEMSデバイスの近くに感知素子61、62を配置することは、恒温槽の内側だがチップの外側に置かれた温度センサを用いることよりもより正確となる。
【0042】
図5Cは、図5Bの構造の断面を示し、ここで、感知する抵抗器61、62は、共振器の上に配置された電気的な絶縁体上に位置する。このようにして、熱接触だが電気的絶縁が達成される。図5Dは、本発明による別の実施形態を示す。他の多くの形態を用いることができることは当業者に明らかである。
【0043】
ある実施形態において、集積電気部品、例えばMEMSデバイス11を有するチップ、は、真空パッケージ22内に設けられる。パッケージ内に加熱手段21が予想される。パッケージ22は、真空パッケージの外部でMEMSデバイス11から周囲温度まで熱的な隔離を提供し、加熱手段21とともに恒温槽2あるいは恒温化されるシステム1を形成する。好ましい実施形態において、MEMS素子11は、その支持脚を通して電流を導き、ジュール加熱によるMEMSデバイス11を加熱することによって加熱可能である。MEMS素子11及び温度感知手段61、62が、良好な熱接触にある限り、即ち実質的に同じ温度を有する限り、他のタイプの加熱手段21を用いることができる。
【0044】
好ましくは、感知素子61、62は、MEMS素子11の上、下、あるいは隣接して、互いに隣接してあるいは互いの上方に配置され、電気的に絶縁されるが熱的に伝導性の層によって分離される。良好な熱接触を提供し、MEMS素子11の性能をひどく悪化させない他のいずれの実施もまた使用可能である。
【0045】
異なったTCR値は、例えば、2つのセンサループに必要な抵抗器61、62に関して2つの異なった材料を使用することによって達成されてもよい。図7Aは、温度Tに対する第1及び第2の抵抗器61、62の相対的な電気抵抗r=AR/Rの例、つまり、一般的に第1、第2の感知素子61、62の温度依存特性63、64を示している。
【0046】
予め規定されたTCR値を有する電気抵抗器の存在及び製造は、当該技術において既知である。例えば、nまたはp型シリコンに関する抵抗の温度係数TCRは、既知の公式により、ドーピング濃度に依存する。A.Razborsek及びF Schwagerは、「Thin film systems for low RCR resistors」において、−150ppm/℃と+500ppm/℃との間で調節可能なTCRを有するNiパッドを載せたTaNを備えた抵抗をどのように製造できるかを記述している。米国出願US7,659,176は、調整可能な抵抗の温度係数の抵抗器及びその製造方法について記述する。抵抗器のTCR値は、異なる材料を用いることにより変化するかもしれないが、しかし、同じ材料を含むが異なった結晶構造あるいは結晶方位、又は異なったドーピングレベルあるいは不純物準位を有する抵抗器は、また、異なるTCR値を有するかもしれない。
【0047】
Tset付近の小さな温度範囲では、温度依存特性63、64の曲線は、下記の式によって近似できる:
【0048】
R(T)=R0(1+αΔT) (1)
【0049】
ここで、αは、抵抗の温度係数と呼ばれ、TCRとして知られる材料特性である。「抵抗器」の用語が使用されているが、合成抵抗値r1及び合成TCR1値を有する合成抵抗器を得るために、2つ以上の個々の抵抗器の並列又は直列の組み合わせも使用されてもよい。
【0050】
感知素子として抵抗器を用いた、本発明の実施形態において、TCR値のうちの1つは実質的に0であり、一方、別のTCR値は正である。
【0051】
別の実施形態では、TCR値のうちの1つは、実質的に0であり、一方、別のTCR値は負である。
【0052】
別の実施形態において、TCR値のうちの1つは負であり、一方、別のTCR値は正である。
【0053】
別の実施形態では、両方のTCR値は負であるが、異なった値を有している。
【0054】
別の実施形態において、両方のTCR値は正であるが、異なった値を有している。
【0055】
本発明の実施形態において、第1及び第2の感知信号81、82は、AC電流、DC電流であり、第1及び第2の測定信号83、84は、AC電圧、DC電圧である。
【0056】
別の実施形態では、第1及び第2の感知信号81、82は、AC電圧、DC電圧であり、第1及び第2の測定信号83、84は、AC電流、DC電流である。
【0057】
感知信号81、82は、連続信号あるいは中断された信号であってもよい。
【0058】
制御回路71の実施形態において、感知素子61、62(例えば抵抗器)から来る測定信号83、84(例えば電圧)は、減算され、任意的に増幅され、図7Bに示すように例えば差信号85を生成する(あるいは、第1測定信号が第2測定信号から減算される、又はその逆、か否かに応じて、その逆数)。任意的に、測定信号83、84のうちの1つは、減算前に縮小する(scaled)ことができる。図7Bの差信号85が正であるとき、MEMSデバイス11の温度Tcompは、Tsetよりも高く、恒温槽2は冷やされるべきである。これは、受動的な場合、ヒーター21に電力を供給しないことにより冷却を達成してもよい。差信号85が負であるときには、MEMSデバイス11の温度Tcompは、Tsetよりも低く、恒温槽2を加熱する必要がある。実際上、恒温槽温度Tovenは、典型的に、周囲温度よりも少なくとも10℃高く選択され、その結果、受動的な冷却が使用可能である。ヒーター21へ供給される実際の加熱電力は、例えば、差信号85の大きさ(amplitude)に、比例するか、二次的、あるいは指数関数的、あるいは別の関係であってもよい。言い換えれば、方法は、1つの温度センサ61の温度特性(例えば抵抗)を第2の温度センサ62の温度特性(例えば抵抗)と比較することを含むことができる。温度制御ループによって、恒温槽温度Tovenは、特性が交差する(比較結果の差が0である)ところの温度Tsetとされ、その結果、MEMS構造11の出力(例えばMEMS共振器の場合、周波数)は、安定した出力信号を発生するように調整される。その方法は、発振器、フィルタ、ミキサー、及び他をものを含む、すべての種類のMEMS構造に関して用いることができる。その方法は、また、抵抗器またはコンデンサーの特性を安定させるためのように、電気機械的な目的のため以外の他の統合電気要素に関しても用いることができる。
【0059】
別の実施形態において、測定信号83、84は、例えばコンパレーター(図示せず)を用いて、互いに比較され、図7Cに示すように例えば比較信号86を生成する。図7Cの信号86が正であるとき、MEMSデバイス11の温度Tは、Tsetよりも低く、恒温槽2は加熱されるべきである。コンパレーターの構造に応じて、他の比較信号86が発生されてもよく、例えば正または負電圧を切り取ってもよく、しかし、当業者は、加熱手段21によって必要とされるようにそのような信号を容易に適応させることができる。
【0060】
図6は、本発明によるシステム1の実施形態を示す。恒温槽温度Tovenの制御は、2つの要素61、62の間の特性の比率または差に基づく。システム1は、恒温槽2を備え、この恒温槽には、MEMSデバイス11を備える電気デバイスが設けられ、電気デバイス7は、MEMS構造11、及び上述したような異なる温度依存特性63、64を有する2つの温度センサ61、62つまり例えばTCR1、TCR2を有する2つの抵抗器R1、R2を備える。このシステムは、さらに、MEMS構造11、特にその要素11の温度Tcompを、制御するための、又は、固定したあるいは所望の温度Tsetに設定するための制御ループを実行する制御回路71を備える。制御回路71は、電気デバイス7の一部、あるいは恒温槽2の一部であってもよい。そのシステムは、以下のように動作する。各抵抗器R1、R2の抵抗rの変化が図7Aに図示され、関数r1(T)及びr2(T)として記されている。両抵抗は、温度Tの関数である。考察の温度範囲において、r1(T)及びr2(T)が等しい1(一つだけ)点が存在する。この点は、所定温度Tsetによって定義される。この温度、つまりr1(Tset)=r2(Tset)に関して、この式は、Tset、つまり目標とされた恒温槽温度でのみ有効である。制御ループは、r1(Tset)=r2(Tset)となるように恒温槽温度を制御する。これが実現されたとき、恒温槽の温度は、Tsetであり、Tsetに維持される。実際、Tsetは、測定曲線83、84の交点に位置し、それは、感知信号61、62が同一であるとき、特性曲線の交点に同じである。そうでなければ、曲線はファクターmでシフトされる。ここでmは、感知信号61、62の大きさ(amplitude)の比率である。
【0061】
定常状態動作において、MEMSデバイス11の温度は、Tsetで維持され、温度ドリフトが除去される。制御ループがDC(積分器)で無限の利得を有しているならば、この制御ループは、感知回路類における温度依存オフセットのような、非理想の他の回路のない絶対的な平均温度精度を達成する。
【0062】
制御ループ71は、当業者に知られたいかなるアルゴリズムを用いて、アナログまたはデジタルの方法で実行されてもよい。追加的に、制御ループ71は、恒温槽2においてMEMS構造11を制御し監視するための回路を提供してもよい。制御ループは、一般的に、システム7を効果的に操作する、あるいは上述したように出力信号87(例えば図6においてMEMS構造の共振器の周波数)を調整するのに必要ないかなる要素あるいはメカニズムを含むことができる。特に、制御ループは、MEMSデバイス11の温度がTsetに維持されることを保証するだろう。MEMS構造11の信号品質要因及びパラメータも、また、制御ループによって記録され及び/又は監視されてもよい。共振器材料、特性及び構造と同様に、熱変動、ノイズ、弾性、応力、圧力、負荷ひずみ(applied strain)、及び電圧、電界及び電流を含む電気的なバイアスのような要因は、共振器11の出力に影響するかもしれない。これらの要因を監視することは、共振器の出力信号の寄与因子と共振器の出力信号特性との間の関係を進展させるのに有用かもしれない。これらの関係を理解することは、発生した出力信号87にわたりより多くの制御を有することを可能にする。
【0063】
図8は、図6の変形であり、本発明による恒温化されるシステム1を示す。第1及び第2の感知素子61、62及び制御回路71の目的は、周囲温度にかかわらず、Tsetに等しい、恒温槽2内の温度を安定して維持することである。結果として、部品のパラメータ変動は、非常に小さくなる。2つの温度センサ61、62は、MEMS部品11の温度を感知する。センサ61、62は、温度に異なった依存性を有している。それらは、2つの温度依存値S1、S2、例えば上述したように測定電圧V1、V2、を出力する。制御ループ71は、MEMS部品11の温度Tcompを制御するヒーター21を駆動する。制御ループは、mS2=S1であるように恒温槽温度を制御する。ここで、mは予め規定した一定の実数である。この式は、1つの単一温度Tsetでのみ有効である。したがって、ループが安定したとき、部品11の温度は、Tsetであり、よって、その温度依存パラメータは安定している。これは図9に示される。
【0064】
ヒーター制御信号88は、周囲温度Tambの関数であることを観察することができる。実際に、周囲温度が下がると、恒温槽2を囲む周囲温度により、マイクロ恒温槽2における部品温度も下がるだろうということが推測される。したがって、S1及びm.S2の両方が同様に変化するであろう(それらは温度依存性の符号によって増加あるいは減少するかもしれない)。このことは、目標とした温度Tsetへ再び恒温槽2を加熱するように、ヒーター制御信号88を補正するために制御ループ71のきっかけとなるであろう。実際に、ループは、m.S2をS1に等しく戻させるだろう。制御信号74が周囲温度Tambの関数であることは、この例から見ることができる。したがって、2重センサ温度安定化ループ71は、温度センサとして用いることができる。
【0065】
図8に示される2重のセンサ制御ループ71は、理論的に完全であるが、実際には非理想に苦しむかもしれない。これは、加熱された部品パラメータ(例えば周波数)の残余の温度依存性に帰着するかもしれない。言い換えれば、Tsetは、周囲温度変化にわたり一定であると思われているが、図11(「2重のセンサ制御のみ」によって示された曲線)に示されるように、Tsetは、周囲温度に関して僅かな残留変化を有するかもしれない。このことは、部品のパラメータが温度に関して依然として変化するであろうということを意味する。これは望まないものである。本発明の別の態様によれば、図10に図示するように、この残余の温度依存性は、ポスト補償によってさらに減少されるかもしれない。この方法では、周囲温度Tambを感知する必要がある。Tambの測定は、補償機構を操作し、このことは、ループの非理想部品を修正する。非理想による元の残余の温度ドリフトは小さいので、Tambの測定は、あまり正確である必要がない。ポスト補償機構は、興味のあるパラメータ(例えば共振器周波数)に影響を与えることができ、温度には影響を与えないあらゆる独立した種類のものであることができる。例えば、周囲温度Tambを表す制御信号88は、MEMS部品11(図12)のバイアス電圧を操作してもよい。別の実施形態は、入力としてMEMS発振器を設け、調整された出力周波数を提供する後段のPLL(図13)を調整する。この追加の補償90は、数学のいずれの種類のもの、例えば、線形的、二次的、多項式的なもの、ルックアップテーブルに基づくもの、あるいは当業者に既知の他のいずれの補償に基づくものであることができる。ポスト補償90の動作、及び部品パラメータあるいは出力パラメーター(例えば周波数)における効果92は、ポスト補償90の無いシステムに対応する曲線87よりもより平坦な曲線を有する図11に図示されている。
【0066】
以前に述べたように、2重のセンサループ71は、アナログループあるいはデジタルループとして実行されるかもしれない。したがって、周囲温度出力Tambは、アナログまたはデジタルになりえる。また、ポスト補償機構90もまた、アナログまたはデジタルになりえる。
【0067】
ポスト補償90は、独立した制御信号(例えばMEMS部品11のバイアス電圧)を制御することができるが、それはまた、温度ループ部品に作用することができる。ポスト補償機構90は、また、システムの一部ではなく外部パラメーターに作用してもよい。例えば、周囲温度測定は、部品パラメータを用いて、外部システムにおけるポスト補償として役立つことができる。例えば、ポスト補償は、恒温化されたMEMSに基づいた発振器を用いる外部PLLにおいて行うことができる。
【0068】
要約すると、マイクロエレクトロメカニカル構造11に関する温度Tcompを制御するための制御システム1がこの明細書に記述されている。本発明の1つの態様によって、システム1が提供される。そのシステム1は、熱源21、マイクロエレクトロメカニカルデバイス11、及び、それぞれ異なった温度特性63、64を有する2つのセンサ61、62(2重のセンサ)好ましくは、抵抗の異なった温度係数TCRを有する2つの抵抗器を有する恒温槽2を備える。そのシステム1は、温度Tcompを一定の(あるいは所望の)温度Tsetに設定するための制御ループを実行するための制御回路71をさらに備える。発明の別の態様によれば、方法が提供される。この方法は、第1の温度センサ61の温度依存特性63,64を、第2の温度センサ62の温度依存特性64と比較すること/第2の温度センサ62の温度依存特性64から減算することを備える。制御ループ71は、MEMS構造11の温度Tcompを比較/減算の出力に基づいた一定の(あるいは所望の)温度Tsetに設定する。任意的に、ヒーター21用の制御信号88が周囲温度Tambの表示として用いられてもよく、システム1における残余誤差を補償するためにポスト補償ループ90を駆動するために用いられもよい。このポスト補償90は、例えばMEMSデバイスのバイアス電圧、PLLなどへのオフセット、あるいは温度ループに依存しない他のいずれの制御信号であることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め規定した温度(Tset)で集積電気部品の温度(Tcomp)を安定化するための恒温化されるシステム(1)であって、このシステム(1)は、
− 恒温槽温度(Toven)に恒温化されるシステムを加熱する加熱手段(21)と、
− 恒温槽(2)に配置され、温度依存特性(f)を有する集積電気部品を備えた電気デバイス(7)と、
− 集積電気部品の温度(Tcomp)を感知する温度感知手段(61、62、72)と、
− 感知温度(Tcomp)を示す測定信号(83、84)を受け入れるため温度感知手段(61、62、72)に接続し、制御信号(88)を供給するため加熱手段(21)に接続して、集積電気部品の温度(Tcomp)を予め規定した温度(Tset)に維持する制御回路(71)と、を備え、
上記温度感知手段は、
− 第1及び第2の感知素子(61,62)であって、この感知素子(61,62)は、集積電気部品と実質的に同じ温度(Tcomp)を有するように集積電気部品と良好な熱接触で配置され、第1及び第2の温度依存特性(63,64)を有し、第1及び第2の温度依存特性が予め規定した温度(Tset)で交差するように第2の温度依存特性が第1の温度依存特性とは異なる、第1及び第2の感知素子(61,62)と、
− 第1及び第2の感知素子(61、62)に適用される感知回路(72)であって、第1及び第2の温度依存特性(63,64)を示す第1及び第2の測定信号(83,84)を制御回路(71)に供給する感知回路(72)と、
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
上記第1及び第2の感知素子(61、62)は、実質的に同一である第1及び第2の感知信号(81、82)で感知される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記制御回路(71)は、第1及び第2の測定信号(83、84)を減算して差信号(85)とし、この差信号を増幅して制御信号(88)として提供する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
上記制御回路(71)は、第1及び第2の測定信号(83、84)を比較し、この比較結果を制御信号(88)として提供する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
第1及び第2の感知素子(61、62)は、第1及び第2の抵抗の温度係数(TCR1、TCR2)とともに第1及び第2の抵抗値(r1、r2)を有する第1及び第2の電気抵抗器を備え、第2の抵抗の温度係数(TCR2)は、第1の抵抗の温度係数(TCR1)とは異なる、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
第1の感知素子(61)は、第1の温度特性(63)を有するダイオードを備え、第2の感知素子(62)は、第1の抵抗の温度係数(TCR1)とともに第1の抵抗値(r1)を有する第1の電気抵抗器を備える、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
当該システムにおける残余誤差を除去するポスト補償回路(90)であって、制御信号(88)を受け入れるための制御回路(71)に接続され、制御信号(88)の変換としてのポスト補償信号(91)を発生する部品を有し、かつ、集積電気部品の温度(Tcomp)と予め規定した温度(Tset)との差を縮小するためバイアス信号又はオフセット信号としてのポスト補償信号(91)を当該システムへ戻り供給するポスト補償回路(90)をさらに備えた、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
当該システムは、上記制御信号(88)の多項式変換を実行し、その結果を当該システムへ戻す手段を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
当該システムは、制御信号(88)の変換を行うためのルックアップテーブルを備え、その結果を当該システムへ戻す、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
恒温化されるシステム(1)は、実質的な真空パッケージ(22)を備え、この真空パッケージは、加熱手段(21)及び集積電気部品を配置し、集積電気部品は周囲温度から熱的に分離され、加熱手段(21)は集積電気部品と良好な熱接触である、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
集積電気部品は、MEMSデバイス(11)である、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
上記MEMSデバイス(11)は、温度依存共振振動数(f)を有するMEMS発振器である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
集積電気部品の温度(Tcomp)を予め規定した温度(Tset)にて安定化する方法であって、この方法は、
− 恒温槽温度(Toven)へ恒温化されるシステムを加熱する加熱手段(21)を恒温化されるシステム(1)に設けること、
− 電気デバイス(7)を恒温槽(2)に設けること、ここで電気デバイスは、温度依存特性(f)を有する集積電気部品を備える、
− 温度感知手段(61、62、72)を用いて、集積電気部品の温度(Tcomp)を感知すること、
− 制御回路(71)において感知された温度(Tcomp)を示す測定信号(83、84)を感知手段(61、62、72)から受け入れて、予め規定した温度(Tset)に集積電気部品の温度(Tcomp)を維持するために加熱手段(21)へ制御信号(88)を供給すること、を備え、
上記温度を感知することは、
− 第1及び第2の感知素子(61、62)が集積電気部品と実質的に同じ温度(Tcomp)を有するように上記感知素子(61、62)を集積電気部品と良好な熱接触にて設けること、ここで第1及び第2の感知素子(61、62)は、第1及び第2の温度依存特性(63、64)を有し、第2の温度依存性は第1の温度依存性とは異なり、それにより第1及び第2の特性(63,64)は予め規定した温度(Tset)で交差する、
− 感知回路を用いて第1及び第2の感知素子(61、62)を感知して、第1及び第2の温度依存特性(61,62)を示す第1及び第2の測定信号(83、84)を制御回路(71)に供給すること、
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項14】
上記第1及び第2の感知素子(61、62)は、同一の第1及び第2の感知信号(81、82)で感知される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記制御信号(88)は、第1及び第2の測定信号(83、84)を減算して差信号(85)となり、この差信号が増幅されて制御信号(88)に形成されることによって決定される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
上記制御信号(88)は、第1及び第2の測定信号(83、84)を比較して、その比較結果を制御信号(88)として提供することによって決定される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
上記第1及び第2の感知素子(61、62)は、第1及び第2の抵抗の温度係数(TCR1、TCR2)とともに第1及び第2の抵抗値(r1、r2)を有する第1及び第2の電気抵抗器(R1、R2)を備え、第2の抵抗の温度係数(TCR2)は、第1の抵抗の温度係数(TCR1)とは異なる、請求項13から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
上記第1の感知素子(61)は、第1の温度特性(63)を有するダイオードを備え、第2の感知素子(62)は、第1の抵抗の温度係数(TCR1)とともに第1の抵抗値(r1)を有する第1の電気抵抗器を備える、請求項13から16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
当該方法は、システム(1)における残余誤差を除去するポスト補償ステップをさらに備え、
このポスト補償は、周囲温度の指示として制御回路(71)から制御信号(88)を受け入れるステップと、制御信号(88)の変換としてポスト補償信号(91)を発生するステップと、MEMSデバイス(11)の温度(Tcomp)と予め規定した温度(Tset)との間の差を縮小するためバイアス信号又はオフセット信号としてポスト補償信号(91)をシステム(1)へ戻して供給するステップと、を備える、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
上記変換は、線形の、二次の、多項式の変換グループから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記変換は、ルックアップテーブルの使用を備える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記恒温化されるシステム(1)は、加熱手段(21)及び集積電気部品が配置される実質的な真空パッケージ(22)を備え、集積電気部品は周囲温度から熱的に分離され、加熱手段(21)は集積電気部品と良好な熱接触にある、請求項13から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
集積電気部品は、MEMSデバイス(11)である、請求項13から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
上記MEMSデバイス(11)は、温度依存共振振動数(f)を有するMEMS発振器である、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−512635(P2013−512635A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541471(P2012−541471)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068577
【国際公開番号】WO2011/064405
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【Fターム(参考)】