説明

雌型コネクタ、モータケース、モータユニットおよびモータケースの製造方法

【課題】雄型コネクタが挿入される挿入口の剛性の確保が可能で、かつ、雄型コネクタの円滑な挿入が可能な雌型コネクタを提供すること。
【解決手段】雄型コネクタが挿入される挿入口3nを有する雌型コネクタは、端子7と、端子7が固定される端子固定部材8と、端子7が固定された端子固定部材8を収納する端子収納部3fが形成されるコネクタ本体部3bとを備えている。端子収納部3fのZ1方向端には、端子7が固定された状態の端子固定部材8が通過可能な開口部が形成され、コネクタ本体部3bは、雄型コネクタを支持する支持部3mを備えている。支持部3mは、X方向から見たとき、コネクタ本体部3bの全周にわたって連続して形成されている。また、支持部3mによって挿入口3nが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型コネクタ、モータケース、モータユニットおよびモータケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雄型コネクタと、この雄型コネクタが係合する雌型コネクタとから構成されるコネクタ装置が広く利用されている。かかるコネクタ装置を構成する雌型コネクタとして、コネクタハウジングと蓋部とから構成される雌型コネクタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の雌型コネクタでは、コネクタハウジングの前面および上面が開口している。また、この雌型コネクタでは、前面の開口と上面の開口とが繋がっており、蓋部がこの開口を覆っている。なお、この雌型コネクタには、前面側から雄型コネクタが挿入される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−222731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の雌型コネクタでは、コネクタハウジングの前面の開口と上面の開口とが繋がるように形成されている。そのため、前面側から挿入される雄型コネクタの挿入口の剛性を確保することが困難である。また、このコネクタハウジングがたとえば、樹脂成型品である場合には、コネクタハウジングの成型時に、挿入口に反り等が生じるおそれがある。したがって、挿入口において雄型コネクタの適切な位置決めを行うことができず、挿入される雄型コネクタを端子に向かって適切に案内することができないといった問題も生じる。すなわち、雄型コネクタの円滑な挿入が困難になるといった問題も生じる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、雄型コネクタが挿入される挿入口の剛性の確保が可能で、かつ、雄型コネクタの円滑な挿入が可能な雌型コネクタを提供することにある。また、本発明の課題は、かかる雌型コネクタを備えるモータケースおよびモータユニットを提供することにある。さらに、本発明の課題は、かかる雌型コネクタを備えるモータケースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、雄型コネクタが挿入される挿入口を有する雌型コネクタにおいて、端子と、端子が固定される端子固定部材と、端子が固定された端子固定部材を収納する端子収納部が形成されるコネクタ本体部とを備え、雄型コネクタの挿入方向に略直交する第1方向における端子収納部の一方向端には、端子が固定された状態の端子固定部材が通過可能な開口部が形成され、コネクタ本体部は、雄型コネクタを支持する支持部を備え、支持部は、挿入方向から見たとき、コネクタ本体部の全周にわたって連続して形成され、挿入口は、支持部によって形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の雌型コネクタでは、雄型コネクタを支持する支持部が、雄型コネクタの挿入方向から見たとき、コネクタ本体部の全周にわたって連続して形成されるとともに、支持部によって雄型コネクタが挿入される挿入口が形成されている。そのため、挿入口の剛性の確保が可能になる。また、コネクタ本体部が樹脂成型品であっても、その成型時に、挿入口に反り等が生じるのを抑制することができる。したがって、挿入口において雄型コネクタの適切な位置決めを行うことが可能になり、雄型コネクタを端子に向かって適切に案内することが可能になる。すなわち、雄型コネクタの円滑な挿入が可能になる。また、本発明では、端子収納部と挿入口とがコネクタ本体部に一体で形成されているため、端子収納部と挿入口との位置精度を向上させることができ、雄型コネクタの円滑な挿入が可能になる。
【0009】
また、本発明では、雄型コネクタの挿入方向に略直交する第1方向における端子収納部の一方向端には、端子が固定された状態の端子固定部材が通過可能な開口部が形成されている。そのため、この開口部から端子収納部へ端子固定部材を収納することができる。また、端子収納部へ端子固定部材を収納する際には、たとえば、端子とこの端子に接続されるケーブルとの接続部分を目視で確認することができる。したがって、端子収納部へ端子固定部材を収納する際に、端子とケーブルとの接続部分に不具合が生じても、この不具合を発見することが可能になる。
【0010】
ここで、一般的には、半田付けによって端子にケーブルが接続されるため、端子が固定される端子固定部材には半田付け時に熱がかかるが、本発明では、端子固定部材がコネクタ本体部とは別体で形成されているため、端子固定部材を端子収納部に収納する前に端子とケーブルとの半田付けを行えば、耐熱性材料でコネクタ本体部を形成する必要がなくなる。したがって、コネクタ本体部を形成するための材料の選択肢を増やすことが可能となり、コネクタ本体部の設計の自由度を向上させることが可能となる。
【0011】
本発明において、支持部は、第1方向の一方向側に配置され開口部の縁部を構成する第1支持部と、第1方向の他方向側に配置される第2支持部とを備え、第1支持部と第2支持部とは、第1方向から見たときに互いに重ならないように形成されていることが好ましい。このように構成すると、第1方向に分割される2個の金型を用いて、コネクタ本体部を形成することができる。したがって、コネクタ本体部を形成するための金型の構造が簡素化される。
【0012】
本発明において、コネクタ本体部は、雄型コネクタと雌型コネクタとが係合する係合位置で、雄型コネクタに形成される第1係合部に係合する第2係合部を備えることが好ましい。このように構成すると、挿入口と第2係合部とを一体で形成することができ、挿入口と第2係合部との位置精度を向上させることができる。したがって、雄型コネクタと雌型コネクタとの円滑な係合が可能になる。
【0013】
本発明において、端子収納部には、端子固定部材を固定するための固定溝部が形成され、端子固定部材は、第1方向の他方向に突出するとともに固定溝部に圧入される圧入突起部を備えることが好ましい。このように構成すると、端子収納部に対して、端子固定部材を容易に位置決めし、かつ、固定することが可能になる。
【0014】
本発明において、雌型コネクタは、開口部を覆う蓋部を備え、蓋部は、端子固定部材の、第1方向の一方向側に形成される当接面に当接する当接突起部を備えることが好ましい。このように構成すると、蓋部に形成される当接突起部によって、端子固定部材を端子収納部に確実に固定することが可能になる。
【0015】
本発明の雌型コネクタは、この雌型コネクタを備えるとともに、開口部を覆う蓋部とモータの一部を収納する第1モータ収納部とを有する第1ケース体と、コネクタ本体部とモータの一部を収納する第2モータ収納部とを有する第2ケース体とを備え、第1ケース体と第2ケース体とは、モータの軸方向で組み合わされ、挿入方向が、軸方向と略直交しているモータケースに用いることができる。このモータケースでは、雄型コネクタが挿入される挿入口の剛性の確保が可能になる。また、雄型コネクタの円滑な挿入が可能になる。
【0016】
本発明において、第1方向における第2モータ収納部の一方向端には、第2モータ収納部へモータの一部を挿入するためのモータ挿入開口部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、モータと端子固定部材とを同じ方向から第2ケース体に挿入して収納することが可能になる。したがって、たとえば、モータに形成されるモータ側端子と端子とをケーブルで接続した状態で、モータおよび端子固定部材を第2ケース体に挿入して収納することが可能になり、作業性を向上させることができる。
【0017】
本発明のモータケースは、モータケースに収納されるモータと、モータに形成されるモータ側端子と端子とを接続するケーブルとを備えるモータユニットに用いることができる。このモータユニットでは、雄型コネクタが挿入される挿入口の剛性の確保が可能になる。また、雄型コネクタの円滑な挿入が可能になる。
【0018】
本発明の雌型コネクタを備えるとともに、開口部を覆う蓋部とモータの一部を収納する第1モータ収納部とが形成される第1ケース体と、コネクタ本体部とモータの一部を収納する第2モータ収納部とが形成される第2ケース体とを備え、モータの軸方向と挿入方向とが略直交しているモータケースの製造方法では、たとえば、第2ケース体は、軸方向の一方向へ移動する第1の金型と、軸方向の他方向へ移動する第2の金型とによって、樹脂成型で形成される。この場合には、軸方向に分割される第1の金型と第2の金型とを用いて、コネクタ本体部を形成することができる。したがって、モータケースの製造が容易になる。また、コネクタ本体部を形成するための金型の構造が簡素化される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の雌型コネクタ、モータケースおよびモータユニットでは、雄型コネクタが挿入される挿入口の剛性の確保が可能になり、かつ、雄型コネクタの円滑な挿入が可能になる。また、本発明のモータケースの製造方法を用いると、モータケースの製造が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(モータユニットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるモータユニット1の斜視図である。図2は、図1のモータユニット1を他の方向から示す斜視図である。図3は、図1のモータユニット1の分解斜視図である。
【0022】
本形態のモータユニット1は、図1〜図3に示すように、第1ケース体としての上ケース体2および第2ケース体としての下ケース体3によって構成されるモータケース4と、モータケース4の内部に配置されるモータ5とを備えている。また、モータユニット1は、雄型コネクタ11(図1参照)が係合する雌型コネクタ6を備えている。本形態の雌型コネクタ6は、上ケース体2の一部と、下ケース体3の一部と、複数の端子7と、複数の端子7が固定される端子固定部材としての端子台8とによって構成されている。また、モータユニット1は、図3に示すように、モータ5に固定されるモータ側端子9と端子7とを接続するケーブル10を備えている。
【0023】
上ケース体2と下ケース体3とは、モータ5の軸方向で組み合わされて互いに固定されている。この上ケース体2および下ケース体3の詳細な構成については後述する。
【0024】
モータ5は、ギア付きのモータであり、複数のギアを有するギア部13と、モータ本体部14とを備えている。ギア部13の出力側端には、モータ5の軸方向に向かって突出する出力軸15が配置されている。モータ側端子9は、図3に示すように、モータ本体部14の径方向外側に向かって突出するようにモータ本体部14に固定されている。
【0025】
ケーブル10は、たとえば、フレキシブルプリント基板である。このケーブル10の一端には、モータ側端子9が半田付けによって固定され、ケーブル10の他端には、端子7が半田付けによって固定されている。
【0026】
(下ケース体、上ケース体および端子台の構成)
図4は、図1に示す下ケース体3の平面図である。図5は、図1に示す下ケース体3の下面図である。図6は、図4のE−E方向から下ケース体3を示す側面図である。図7は、図4に示すコネクタ本体部3bの前端側を上側から示す斜視図である。図8は、図1に示す上ケース体2の下面図である。図9は、図2のF−F断面の断面図である。図10は、図1に示す下ケース体3の製造に使用される金型21、22の概略構成を説明するための断面図である。
【0027】
以下の説明では、モータ5の軸方向(図3のZ方向)を「上下方向」、軸方向に直交する端子7の突出方向(図3のX方向)を「前後方向」、図3のZ方向およびX方向に直交するY方向を「左右方向」とする。また、以下では、図3のZ1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側、X1方向側を「前」側、X2方向側を「後(後ろ)」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側とする。さらに、以下では、X方向とY方向とから形成される平面を「XY平面」、Z方向とX方向とから形成される平面を「ZX平面」とする。
【0028】
なお、本形態では、X2方向は、雌型コネクタ6に挿入される雄型コネクタ11の挿入方向である。また、モータ5の軸方向(Z方向)は、雄型コネクタ11の挿入方向に略直交する第1方向である。また、Z1方向は、第1方向の一方向であり、Z2方向は、第1方向の他方向である。
【0029】
下ケース体3は、樹脂で形成されている。たとえば、下ケース体3は、耐熱性を有しないABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)によって形成されている。また、下ケース体3は、成型によって形成されている。この下ケース体3は、モータ5の下端側を収納する第2モータ収納部としてのモータ収納部3aと、雌型コネクタ6の一部を構成するコネクタ本体部3bとを備えている。なお、下ケース体3の材質は、ABSには限定されない。
【0030】
モータ収納部3aは、図3に示すように、下端に底面部を有する有底円筒状に形成されている。また、モータ収納部3aの上面は開口している。モータ5の下端側は、この開口を通過してモータ収納部3aに収納される。すなわち、モータ収納部3aの上端には、モータ収納部3aへモータ5の下端側を挿入するためのモータ挿入開口部が形成されている。
【0031】
コネクタ本体部3bは、モータ収納部3aから前側に突出するように形成されている。このコネクタ本体部3bは、底面部3cと、底面部3cの左右方向の両端から上方向に向かって立ち上がる2個の側壁部3dと、2個の側壁部3dの前端側で側壁部3dの上端同士を接続する上壁部3eとを備えている。底面部3cおよび上壁部3eは、XY平面と略平行に形成され、2個の側壁部3dは、ZX平面と略平行に形成されており、コネクタ本体部3bは、上下方向から見たときの形状が略矩形となるように形成されている。また、上壁部3eは、左右方向に細長い矩形の帯状に形成されている。
【0032】
本形態では、底面部3cと2個の側壁部3dとによって、端子7が固定された状態の端子台8を収納する端子収納部3fが形成されている。すなわち、端子収納部3fの上端には、開口部が形成されている。この開口部は、端子7が固定された状態の端子台8が通過可能な大きさに形成されている。また、2個の側壁部3dと上壁部3eとは、この開口部の縁部を構成している。
【0033】
底面部3cには、端子台8を固定するための固定溝部3gが形成されている。具体的には、図4に示すように、左右方向を長手方向とする細長い固定溝部3gが底面部3cの上面に形成されている。
【0034】
底面部3cの下面には、図6等に示すように、雄型コネクタ11と雌型コネクタ6とが係合する係合位置で、雄型コネクタ11に形成される係合片(図示省略)に係合する係合突起3jが形成されている。本形態では、雄型コネクタ11に形成される係合片は、第1係合部であり、係合突起3jは、第1係合部である係合片に係合する第2係合部である。なお、左右方向における側壁部3dの外側面には、上ケース体2に形成される後述の係合片2eに係合する係合突起3kが形成されている。
【0035】
底面部3cの前端側は、雌型コネクタ6に挿入される雄型コネクタ11の下面を支持する機能を果たしている。側壁部3dは、雌型コネクタ6に挿入される雄型コネクタ11の左右の側面を支持する機能を果たしている。上壁部3eは、雌型コネクタ6に挿入される雄型コネクタ11の上面を支持する機能を果たしている。すなわち、本形態では、底面部3cと側壁部3dと上壁部3eとによって、雄型コネクタ11を支持する支持部3mが構成されている。なお、本形態の上壁部3eは、端子収納部3fの上端の開口部の縁部を構成する第1支持部であり、底面部3cは、第1方向の他方向側となる下端側に配置される第2支持部である。
【0036】
上述のように、側壁部3dは、底面部3cの左右方向の両端から立ち上がるように形成され、上壁部3eは、2個の側壁部3dの前端側で側壁部3dの上端同士を接続するように形成されている。すなわち、前後方向から見たとき、支持部3mは、コネクタ本体部3bの全周にわたって連続して形成されている(図6、図7参照)。本形態では、支持部3mによって(すなわち、底面部3cと2個の側壁部3dと上壁部3eとによって)、雄型コネクタ11が挿入される挿入口3nが形成されている。具体的には、前後方向から見たときの形状が略矩形状となる挿入口3nがコネクタ本体部3bの前端側に形成されている。また、本形態では、図4、図5に示すように、上下方向から見たとき、底面部3cと上壁部3eとは、互いに重なっておらず、前後方向における底面部3cと上壁部3eとの間には、隙間Sが形成されている。
【0037】
上述のように、本形態の下ケース体3は、樹脂成型で形成されている。また、本形態では、上下方向から見たとき、底面部3cと上壁部3eとは互いに重なっていない。そのため、本形態では、下ケース体3に上壁部3eが形成されているにもかかわらず、下ケース体3の製造には、図10に示すように、上方向へ移動する第1の金型21と、下方向へ移動する第2の金型22とが使用されている。
【0038】
上ケース体2は、樹脂で形成されている。たとえば、上ケース体2は、下ケース体3と同様に、耐熱性を有しないABSによって形成されている。また、上ケース体2は、成型によって形成されている。この上ケース体2は、図8に示すように、モータ5の上端側を収納する第1モータ収納部としてのモータ収納部2aと、端子収納部3fの上端の開口部を覆う蓋部2bとを備えている。なお、上ケース体3の材質は、ABSには限定されない。
【0039】
モータ収納部2aは、上端に底面部を有する有底円筒状に形成されている。また、モータ収納部2aの下面は開口している。モータ5の上端側は、この開口を通過してモータ収納部2aに収納される。また、モータ収納部2aの底面部には、出力軸15が挿通される貫通孔2cが形成されている。
【0040】
蓋部2bは、モータ収納部2aから前側に突出するように形成されている。この蓋部2bは、XY平面と略平行に形成され端子収納部3fの上端の開口部を覆う平板状の上壁部2dと、下ケース体3の係合突起3kに係合する係合片2eとを備えており、上下方向から見たときの形状が略矩形となるように形成されている。
【0041】
上壁部2dの下面には、後述のように、下ケース体3に軽圧入されて固定される端子台8の上面8cに当接する当接突起部2fが形成されている。係合片2eは、ZX平面と略平行に形成されている。この係合片2eには、係合突起3kに係合する係合溝2gが形成されている(図3参照)。
【0042】
端子台8は、樹脂で形成されている。たとえば、端子台8は、耐熱性を有するガラス繊維入りのPBT(ポリブチレンテレフタレート)によって形成されている。また、端子台8は、成型によって形成されている。この端子台8は、図3に示すように、左右方向を長手方向とする細長い直方体状に形成された端子固定部8aと、下ケース体3の固定溝部3gに軽圧入される圧入突起部8bとを備えている。圧入突起部8bは、前後方向における端子固定部8aの底面の略中心位置から下方向に突出するように形成されており、端子台8は、左右方向から見たときの形状が略T形状となるように形成されている。なお、端子台8の材質は、PBTには限定されず、耐熱性を有する他の樹脂であっても良い。
【0043】
端子固定部8aには、直線状に形成された複数の端子7が固定されている。具体的には、前後方向を長手方向として端子固定部8aに形成された端子圧入孔に複数の端子7が圧入されることで、複数の端子7が端子固定部8aに固定されている。すなわち、複数の端子7は、前後方向を長手方向として端子固定部8aに固定されている。
【0044】
図9に示すように、端子7が固定された状態の端子台8は、端子収納部3fに収納されている。具体的には、圧入突起部8bが固定溝部3gに軽圧入されて固定された状態で、端子台8が端子収納部3fに収納されている。また、上ケース体2の当接突起部2fが端子台8の上面8cに当接した状態で、端子台8が端子収納部3fに収納されている。すなわち、端子台8は、コネクタ本体部3bの底面部3cと蓋部2bの上壁部2dとに挟まれた状態で、端子収納部3fに収納されている。本形態の上面8cは、当接突起部2fが当接する当接面である。
【0045】
上述のように、雌型コネクタ6は、上ケース体2の一部と、下ケース体3の一部と、複数の端子7と、端子台8とによって構成されている。すなわち、本形態では、上ケース体2の蓋部2bと、下ケース体3のコネクタ本体部3bと、複数の端子7と、端子台8とによって、雌型コネクタ6が構成されている。
【0046】
(モータユニットの組立手順)
以上のように構成されたモータユニット1では、まず、モータ5を組み立てる。また、端子台8に端子7を圧入固定する。その後、ケーブル10の一端をモータ側端子9に半田付けで固定し、ケーブル10の他端を端子7に半田付けで固定する。その後、モータ5の下端側を下ケース体3のモータ収納部3aに収納する。また、端子収納部3fの上端の開口部から端子台8を端子収納部3fに収納する。具体的には、端子台8の圧入突起部8bを下ケース体3の固定溝部3gに軽圧入して、端子台8を端子収納部3fに収納する。その後、上ケース体2の係合片2eを下ケース体3の係合突起3kに係合させる等して、モータ5の軸方向で下ケース体3に上ケース体2を組み合わせて、下ケース体3と上ケース体2とを固定する。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、雄型コネクタ11を支持するコネクタ本体部3bの支持部3mが、前後方向から見たとき、コネクタ本体部3bの全周にわたって連続して形成されている。また、支持部3mによって挿入口3nが形成されている。そのため、挿入口3nの剛性を確保することが可能になる。また、下ケース体3の成型時に、挿入口3nに反り等が生じるのを抑制することができ、挿入口3nにおいて雄型コネクタ11の適切な位置決めをすることができる。したがって、雄型コネクタ11を端子7に向かって適切に案内することができ、雌型コネクタ6への雄型コネクタ11の円滑な挿入が可能になる。また、本形態では、端子収納部3fと挿入口3nとがコネクタ本体部3bに一体で形成されているため、端子収納部3fと挿入口3nとの位置精度を向上させることができる。したがって、雌型コネクタ6への雄型コネクタ11の、より円滑な挿入が可能になる。
【0048】
本形態では、端子収納部3fの上端に開口部が形成されている。そのため、この開口部から端子収納部3fへ端子台8を収納する際には、端子7とケーブル10との接続部分を目視で確認することができる。したがって、端子収納部3fへ端子台8を収納する際に、端子7とケーブル10との接続部分に不具合が生じても、この不具合を発見することが可能になる。
【0049】
本形態では、下ケース体3と端子台8とが別体で形成され、ケーブル10の他端を端子7に半田付けで固定した後に、端子台8を下ケース体3に固定している。そのため、耐熱性を有しない材料で下ケース体3を形成することができる。したがって、下ケース体3を形成するための材料の選択肢を増やすことができ、下ケース体3の設計の自由度を向上させることができる。
【0050】
本形態では、上下方向から見たとき、底面部3cと上壁部3eとが互いに重なっていない。そのため、コネクタ本体部3bに上壁部3eが形成されている場合であっても、図10に示すように、上下方向に分割される第1の金型21と第2の金型22とを用いて、下ケース体3を形成することができる。したがって、下ケース体3を形成するための金型21、22の構造が簡素化される。また、下ケース体3の製造が容易になる。
【0051】
本形態において、雄型コネクタ11に形成される係合片に係合する係合突起3jがコネクタ本体部3bに形成されている。すなわち、挿入口3nと係合突起3jとがコネクタ本体部3bに一体で形成されている。そのため、挿入口3nと係合突起3jとの位置精度を向上させることができる。したがって、雄型コネクタ11と雌型コネクタ6とを円滑に係合させることができる。
【0052】
本形態では、端子収納部3fを構成する底面部3cに固定溝部3gが形成され、端子台8に固定溝部3gに軽圧入される圧入突起部8bが形成されている。そのため、端子収納部3fに端子台8を容易に位置決めし、かつ、固定することができる。特に本形態では、端子台8の上面8cに、上ケース体2の蓋部2bに形成される当接突起部2fが当接しているため、当接突起部2fによって、端子台8を端子収納部3fに確実に固定することができる。
【0053】
本形態では、モータ収納部3aの上面が開口している。そのため、モータ5と端子台8とを同じ方向から下ケース体3に挿入して収納することができる。したがって、上述のように、モータ側端子9と端子7とをケーブル10で接続した状態で、モータ5および端子台8を下ケース体3に挿入して収納することができ、作業性を向上させることができる。
【0054】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0055】
上述した形態では、底面部3cと上壁部3eとは、上下方向から見たときに互いに重ならないように形成されている。この他にもたとえば、上下方向から見たときに、底面部3cの一部と上壁部3eの一部とが重なるように、底面部3cと上壁部3eとが形成されても良い。
【0056】
上述した形態では、コネクタ本体部3bに、雄型コネクタ11に形成される係合片に係合する係合突起3jが形成されている。この他にもたとえば、蓋部2bに、雄型コネクタ11に形成される係合片に係合する係合突起が形成されても良い。
【0057】
上述した形態では、モータケース4に雌型コネクタ6が一体で形成される場合を例に本発明の実施の形態にかかる雌型コネクタ6を説明しているが、本発明の実施の形態にかかる雌型コネクタ6は、モータケース4以外の各種のケースに一体で形成されても良い。また、蓋部2bに相当する部材、コネクタ本体部3bに相当する部材、端子7および端子台8によって構成される雌型コネクタがケースとは別体に形成され、この雌型コネクタがケースに固定されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態にかかるモータユニットの斜視図である。
【図2】図1のモータユニットを他の方向から示す斜視図である。
【図3】図1のモータユニットの分解斜視図である。
【図4】図1に示す下ケース体の平面図である。
【図5】図1に示す下ケース体の下面図である。
【図6】図4のE−E方向から下ケース体を示す側面図である。
【図7】図4に示すコネクタ本体部の前端側を上側から示す斜視図である。
【図8】図1に示す上ケース体の下面図である。
【図9】図2のF−F断面の断面図である。
【図10】図1に示す下ケース体の製造に使用される金型の概略構成を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 モータユニット
2 上ケース体(第1ケース体)
2a モータ収納部(第1モータ収納部)
2b 蓋部
2f 当接突起部
3 下ケース体(第2ケース体)
3a モータ収納部(第2モータ収納部)
3b コネクタ本体部
3c 底面部(第2支持部)
3e 上壁部(第1支持部)
3f 端子収納部
3g 固定溝部
3j 係合突起(第2係合部)
3m 支持部
3n 挿入口
4 モータケース
5 モータ
6 雌型コネクタ
7 端子
8 端子台(端子固定部材)
8b 圧入突起部
8c 上面(当接面)
9 モータ側端子
10 ケーブル
11 雄型コネクタ
21 第1の金型
22 第2の金型
X2 挿入方向
Z 第1方向、軸方向
Z1 第1方向の一方向
Z2 第1方向の他方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型コネクタが挿入される挿入口を有する雌型コネクタにおいて、
端子と、前記端子が固定される端子固定部材と、前記端子が固定された前記端子固定部材を収納する端子収納部が形成されるコネクタ本体部とを備え、
前記雄型コネクタの挿入方向に略直交する第1方向における前記端子収納部の一方向端には、前記端子が固定された状態の前記端子固定部材が通過可能な開口部が形成され、
前記コネクタ本体部は、前記雄型コネクタを支持する支持部を備え、
前記支持部は、前記挿入方向から見たとき、前記コネクタ本体部の全周にわたって連続して形成され、
前記挿入口は、前記支持部によって形成されていることを特徴とする雌型コネクタ。
【請求項2】
前記支持部は、前記第1方向の一方向側に配置され前記開口部の縁部を構成する第1支持部と、前記第1方向の他方向側に配置される第2支持部とを備え、
前記第1支持部と前記第2支持部とは、前記第1方向から見たときに互いに重ならないように形成されていることを特徴とする請求項1記載の雌型コネクタ。
【請求項3】
前記コネクタ本体部は、前記雄型コネクタと前記雌型コネクタとが係合する係合位置で、前記雄型コネクタに形成される第1係合部に係合する第2係合部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の雌型コネクタ。
【請求項4】
前記端子収納部には、前記端子固定部材を固定するための固定溝部が形成され、
前記端子固定部材は、前記第1方向の他方向に突出して前記固定溝部に圧入される圧入突起部を備えることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の雌型コネクタ。
【請求項5】
前記開口部を覆う蓋部を備え、
前記蓋部は、前記端子固定部材の、前記第1方向の一方向側に形成される当接面に当接する当接突起部を備えることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の雌型コネクタ。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の雌型コネクタを備えるとともに、
前記開口部を覆う蓋部とモータの一部を収納する第1モータ収納部とを有する第1ケース体と、前記コネクタ本体部と前記モータの一部を収納する第2モータ収納部とを有する第2ケース体とを備え、
前記第1ケース体と前記第2ケース体とは、前記モータの軸方向で組み合わされ、
前記挿入方向は、前記軸方向と略直交していることを特徴とするモータケース。
【請求項7】
前記第1方向における前記第2モータ収納部の一方向端には、前記第2モータ収納部へ前記モータの一部を挿入するためのモータ挿入開口部が形成されていることを特徴とする請求項6記載のモータケース。
【請求項8】
請求項6または7記載のモータケースと、前記モータケースに収納される前記モータと、前記モータに形成されるモータ側端子と前記端子とを接続するケーブルとを備えることを特徴とするモータユニット。
【請求項9】
請求項2記載の雌型コネクタを備えるとともに、前記開口部を覆う蓋部とモータの一部を収納する第1モータ収納部とが形成される第1ケース体と、前記コネクタ本体部と前記モータの一部を収納する第2モータ収納部とが形成される第2ケース体とを備え、前記モータの軸方向と前記挿入方向とが略直交しているモータケースの製造方法であって、
前記第2ケース体は、前記軸方向の一方向へ移動する第1の金型と、前記軸方向の他方向へ移動する第2の金型とによって、樹脂成型で形成されることを特徴とするモータケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−61957(P2010−61957A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225802(P2008−225802)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】