説明

難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター

【課題】第1に、難分解性の有機化合物の酸化,分解について、正確で精密なデータが得られると共に、第2に、しかも効率面や時間面にも優れつつ、このように正確で精密なデータを得ることができる、難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターを提案する。
【解決手段】このマイクロリアクター1は、難分解性の有機化合物2を含有した第1流体3と、オゾンや過酸化水素を含有した第2流体11とが、流路形成面21に光触媒18が付着された微細構造のマイクロ流路4を、層流となって流れつつ、対向配設された紫外線照射手段19から紫外線が照射される。そして、生成されたOHラジカルにより、第1流体3と第2流体11との界面22、および第1流体3と光触媒18との界面24における分子拡散に基づき、第1流体3中の難分解性の有機化合物2が、酸化,分解される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターに関する。すなわち、流体中に含有された難分解性の有機化合物を酸化,分解して、そのデータを取得するために用いられる、マイクロリアクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術背景1について》
化学的処理設備から排出された難分解性の有機化合物を含有した排水は、通常そのまま生物処理されていた。
例えば、ダイオキシンDioxin,ビスフェノールA(BPA)や、モノクロロベンゼンCB,メチルイソブチルケトンMIBK,ベンジルアルコールBA,イソプロピルアルコールIPA,ジメチルホルムアミドDMF等の難分解性の有機化合物を含有した大量の排水は、従来一般的に、タンクローリ等にて遠隔地の一般貯蔵所へと運搬されて、活性汚泥法等にて生物処理されていた。
しかしながら、この技術背景1については、処理設備,処理能力,処理時間,処理コスト等に、問題が指摘されていた。すなわち、まず、一旦貯留用の大型タンク,運搬用のタンクローリ,生物処理用の一般貯蔵所、等々の大型処理設備を要し、更に、これらの処理設備は処理能力に限界があり、処理に長期日数を要し処理コストもかさむ、等々の問題が指摘されていた。
【0003】
《技術背景2について》
これに対し、このような排水を化学的処理設備の現場で、つまり一般貯蔵所へと運搬することなく排出現場で分解,廃棄せんとすることも、試みられていた。代表的には、オゾンOを使用して、排水に含有された難分解性の有機化合物を、炭酸ガスCOや水HO等に酸化,分解,浄化させて、一般廃水せんとすることも試みられていた。
しかしながら、この技術背景2については、難分解性の有機化合物の酸化,分解が非常に遅く、分解反応が先へ進まず、不完全,不確実のままで止まり易い、という問題が指摘されていた。
すなわち、オゾンOによるメチルイソブチルケトンMIBK,イソプロピルアルコールIPA,ジメチルホルムアミドDMF等のオレフィン系化合物やパラフィン系化合物等、鎖状炭化水素の分解は、オゾニドozonide段階までに止まっていた。つまり、オゾニドを形成して結合を切り、アルデヒド類段階までは進むが、その先の分解反応へは、極めて時間を要し進みにくかった。
又、オゾンOによるモノクロロベンゼンCB,ベンジルアルコールBA等の芳香環を持った環状炭化水素,その他の環状炭化水素の分解は、グリオキサールglyoxal(CHO−CHO)段階までに止まっていた。つまり、進んでもせいぜいグリオキサールを含むアルデヒド類レベルまでであり、その先の分解反応へは極めて時間を要し進みにくかった。
このように、排出現場で浄化せんとする試みは、酸化,分解が工業的許容時間内では実現困難であり、実用化に至っていなかった。
【0004】
《従来技術について》
そこで発明者は、このような状況に鑑み、第1に、上記技術背景1の問題点を克服し、処理設備,能力,時間,コスト等に優れると共に、第2に、上記技術背景2の問題点を克服し、難分解性の有機化合物を迅速かつ確実に酸化,分解することができる、難分解性の有機化合物の酸化分解装置を研究,開発し、特願2005−022495号として特許出願した。
そして、この酸化分解装置の浄化装置では、予め排水にオゾンOや過酸化水素Hを導入すると共に、これと併用的に、光触媒と紫外線照射手段を採用したことを、特徴とする。
すなわち、この浄化装置では、光触媒とオゾンOや過酸化水素Hとに紫外線が照射され、もって、生成されたOHラジカルの強力な酸化力,分解力により、特に、光触媒とオゾンや過酸化水素との併用による相乗作用により一段と強力な酸化力,分解力により、難分解性の有機化合物が、迅速かつ確実に酸化されて炭酸ガスや水等に分解され、排水が浄化されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来技術については、次のような指摘があった。
《第1の指摘について》
第1に、難分解性の有機化合物について、酸化,分解の精密なデータが集めるのが、容易でなかった。
すなわち、この酸化分解装置,浄化装置は、難分解性の有機化合物を、初めて確実かつ迅速に酸化,分解可能であり、非常に優れている。そこで実用化を目指し、研究,テスト,実験中の段階にある。そして、浄化装置の実物大の実験機を使用し、バッチ式にて各種データを取得しているが、精密なデータ、定量的に安定したデータ、条件が制御されコントロールされた反応に基づくデータ、正確なデータが得られにくかった。
すなわち、この浄化装置の実験機では、難分解性の有機化合物を含有した排水に、オゾンOや過酸化水素Hが導入され、乱流となって流れつつ、光触媒中で紫外線が照射される。
このように、排水が乱流となり、含有物質の混合が進み、物質オーダーでの物質移動が活発で、拡散距離の長い拡散が行われる、等々の状況下では、精密なデータが得られにくかった。目的とする純粋反応以外の外的諸条件が複雑に絡み合い、外的諸条件に左右されて、目的とする酸化,分解反応が十分にコントロール制御できず、副生成物質等の他物質も混入しやすく、目的とする酸化,分解反応の幅が広がる等々、定量的に安定したデータが得られにくかった。
例えば、排水の流量、難分解性の有機化合物の種類,濃度,酸化分解率、紫外線の波長,照射時間、光触媒の構成内容,付着態様、オゾンOや過酸化水素Hの状況、温度条件、等々の各ポイント相互間の関係,その他について、正確なデータが得られにくかった。
【0006】
《第2の指摘について》
第2に、データ取得に時間がかかると共に、大量の排水等を使用し効率も悪かった。
すなわち前述したように、浄化装置の実物大の実験機を使用し、バッチ式にてデータを取得していたので、データ取得という目的に対し、効率が悪く反応速度も遅く、例えば1つのデータ取得に数時間を要していた。又、大量の排水,オゾンO,過酸化水素H,光触媒等々を使用すると共に、長時間にわたる紫外線照射も要する等、これらの面からも効率が悪かった。
【0007】
《本発明について》
本発明の難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターは、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべく、発明者の鋭意研究努力の結果なされたものである。
そして、難分解性の有機化合物を含有した第1流体と、オゾンや過酸化水素を含有した第2流体とが、光触媒が付着されたマイクロ流路を層流となって流れつつ、紫外線が照射される。そして、生成されたOHラジカルにより、界面における分子拡散に基づき、第1流体の難分解性の有機化合物が酸化,分解されること、を特徴とする。
もって本発明は、第1に、酸化,分解の精密なデータが得られると共に、第2に、効率面や時間面にも優れた、難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターを、提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターは、流体中に含有された難分解性の有機化合物を、酸化,分解するために用いられ、微細構造のマイクロ流路を備えている。
そして該マイクロ流路は、該有機化合物を含有した第1流体と、オゾンや過酸化水素を含有した第2流体とが供給され、紫外線照射手段が対向配設されると共に、紫外線照射面以外の流路形成面に光触媒が付着せしめられていること、を特徴とする。
請求項2については次のとおり。請求項2のマイクロリアクターでは、請求項1において、該マイクロ流路は、入口部が略Y字状に分岐されており、一方の入口から該第1流体が圧入されると共に、他方の入口から該第2流体が圧入される。
そして該マイクロ流路内では、該第1流体と該第2流体とが、それぞれ層流を形成しつつ界面接触する。これと共に、該紫外線照射手段による紫外線照射により、該光触媒および該オゾンや過酸化水素にて生成されたOHラジカルが、該光触媒と該第1流体との界面および該第2流体と該第1流体との界面において、分子拡散に基づき、該第1流体の該有機化合物を酸化,分解すること、を特徴とする。
【0009】
請求項3については次のとおり。請求項3のマイクロリアクターでは、請求項2において、該マイクロ流路は、流路幅が、100μm以上で500μm以下程度で、流路深さが、25μm以上で100μm以下程度よりなること、を特徴とする。
請求項4については次のとおり。請求項4のマイクロリアクターでは、請求項3において、該有機化合物は、パラフィン系化合物,オレフィン系化合物,その他の鎖状炭化水素や、芳香環を持った環状炭化水素、その他の環状炭化水素よりなること、を特徴とする。請求項3に記載した難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター。
請求項5については次のとおり。請求項5のマイクロリアクターでは、請求項3において、該マイクロ流路の途中に添加流路が接続されており、該添加流路は、補充用の該第2流体を、該マイクロ流路の該第2流体に対して圧入すること、を特徴とする。
【0010】
《作用について》
本発明の難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターは、このようになっているので、次のようになる。
(1)そのマイクロ流路は、流路幅が100μm〜500μm程度で、流路深さが25μm〜100μm程度の微細構造よりなる。
(2)マイクロ流路の入口部は、略Y字状に分岐されており、一方の入口から、難分解性の有機化合物を含有した第1流体が圧入供給され、他方の入口から、オゾンや過酸化水素を含有した第2流体が圧入供給される。なお第2流体は、途中の補充用の添加流路からも、圧入供給される。
(3)そして、レイノルズ数が小さいので、マイクロ流路の第1流体と第2流体は、それぞれ層流となり、界面で接触しつつ平行に流れる。
(4)これと共に、紫外線照射手段から紫外線が照射され、流路形成面の光触媒および第2流体のオゾンや過酸化水素にて、OHラジカルが生成される。
(5)OHラジカルは、強力な酸化力,分解力を備えており、光触媒と第1流体との界面、および第2流体と第1流体との界面において、それぞれ分子拡散に基づき、第1流体の有機化合物を酸化,分解する。難分解性の有機化合物は、炭素連鎖,有機結合を切断され、迅速かつ確実に酸化されて、炭酸ガスや水等に分解される。
(6)そして第1流体は、第2流体と共に、出口部から排出される。
【0011】
(7)さてそこで、本発明によると、次のようになる。第1に、マイクロ流路が微細なので、第1流体等の層流の界面は、単位容積あたりの表面積が極めて大きい。もって、第2流体や光触媒との界面において、OHラジカルによる有機化合物の酸化,分解が、効率良く広く直接的に促進される。
これと共に、第1流体等は層流となっており、物質の拡散は、(乱流の場合のように、流れ方向に対して直角方向・流路幅方向への拡散距離の長い物質移動ではなく、)界面での拡散距離の短い分子拡散のみとなる。そこで、OHラジカルによる酸化,分解が、他の外的諸条件や他物質の影響を受けることなく、効率良く純粋に実施される。
これらにより、有機化合物の酸化,分解が、条件コントロールされ定量的に安定して行われるので、精密なデータが得られるようになる。
【0012】
第2に、マイクロオーダーでの微視的な反応場において、つまりマイクロ流路の層流界面において、分子拡散により有機化合物を酸化,分解するので、効率が向上し時間も短縮される。
例えば、マイクロ流路は流路幅が極めて小さいので、流路幅方向への分子拡散を支配する界面や流路形成面からの温度勾配,圧力勾配が、流路幅に対して相対的に大きく、又、このため熱伝導にも優れており、又、分子拡散の拡散距離も格段に小さい等々により、効率面や時間面に優れている。なお、第1流体,第2流体,有機化合物,オゾン,過酸化水素等の使用量や紫外線照射等も、僅かで済む。
【発明の効果】
【0013】
《本発明の特徴》
本発明に係る難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターは、このように、難分解性の有機化合物を含有した第1流体と、オゾンや過酸化水素を含有した第2流体とが、光触媒が付着されたマイクロ流路を層流となって流れつつ、紫外線が照射される。
そして、生成されたOHラジカルにより、界面における分子拡散に基づき、第1流体の難分解性の有機化合物が酸化,分解されること、を特徴とする。
そこで本発明は、次の効果を発揮する。
【0014】
《第1の効果》
第1に、難分解性の有機化合物の酸化,分解について、正確で精密なデータが得られる。すなわち本発明では、生成されたOHラジカルが、層流の界面つまり単位容積あたりの表面積が極めて大きな界面での分子拡散に基づき、難分解性の有機化合物を酸化,分解して、そのデータを取得する。
前述したこの種従来技術のように、つまり浄化装置の実験機を使用して、バッチ式にてデータを取得していた従来技術のように、乱流中で混合が行われ、物質オーダーでの物質移動により、拡散距離の長い拡散が行われる状況下で、データが取得される訳ではない。
そこで、目的とする酸化,分解反応以外の外的諸条件の介入が防止され、外的諸条件に左右されずに純粋に目的とする反応のみが進行し、目的とする酸化,分解が十分にコントロール制御され、副生成物等の他物質の混入も阻止される。
もって、難分解性の有機化合物の酸化,分解について、精密なデータ、定量的に安定したデータ、十分に条件が制御されコントロールされた反応に基づく、正確なデータが得られる。
【0015】
《第2の効果》
第2に、しかも効率面や時間面にも優れつつ、このように正確で精密なデータが得られる。すなわち本発明では、化学反応データは、マイクロオーダーでの微視的反応場において把握するという技術思想の基に、マイクロリアクターを採用し、層流の界面において分子拡散により、難分解性の有機化合物を酸化,分解する。
そこで、前述したこの種従来技術、つまり浄化装置の実験機を使用して、バッチ式にてデータを取得していた従来技術に比し、反応効率が向上し、全体の反応時間も、例えば数分間程度まで大幅短縮され、効率良く短時間でデータが取得可能となる。
又、使用する流体,有機化合物,オゾン,過酸化水素,光触媒等も、従来技術に比し極めて少量で済み、紫外線照射も僅かで済む等、この面からも効率的である。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
《図面について》
以下、本発明の難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1,図2,図3,図4は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして、図1,図2は第1例を示し、図1の(1)図は、正断面説明図であり、(2)図は、斜視説明図である。図2の(1)図は、平面説明図であり、(2)図は、その要部拡大図である。
図3は、他の例を示し、正断面説明図であり、(1)図は第2例を、(2)は第3例を、(3)図は第4例を示す。図4は、酸化,分解の計測データのグラフである。
【0017】
《マイクロリアクター1の概要について》
まず、図1,図2,図3等を参照して、この難分解性の有機化合物2の酸化,分解用のマイクロリアクター1の概要について、説明する。
このマイクロリアクター1は、第1流体3中に含有された難分解性の有機化合物2を酸化,分解し、もってそのデータを取得するために用いられる。
まず、酸化,分解の対象となる難分解性の有機化合物2は、パラフィン系化合物,C=C結合を持ったオレフィン系化合物,その他の鎖状炭化水素や、芳香環つまりフェニル基C−を持った環状炭化水素,その他の環状炭化水素よりなる。
例えば、モノクロロベンゼンCB,メチルイソブチルケトンMIBK,ベンジルアルコールBA,イソプロピルアルコールIPA,ジメチルホルムアミドDMF等や、ダイオキシンDioxinやビスフェノールA(BPA)のような環境ホルモンが、代表的である。
そして、このような有機化合物2は、例えば溶剤として使用され、接着工程,塗装工程,その他の化学的処理設備から排出される排ガス等の気体中や、このような排ガスが水に混入された液体中、つまり流体中に含有されている。図示例の第1流体3は、試料としてモデル化された液体よりなる。
【0018】
そしてマイクロリアクター1は、マイクロメートルオーダーの微細構造のマイクロ流路4を備えた反応器よりなる。このマイクロ流路4は、流路幅Wが100μm〜500μm程度で、流路深さDが25μm〜100μm程度よりなる。
すなわち、図示のマイクロリアクター1は、例えば縦80mm,横40mm,肉厚2mm程度の3枚重ねのガラスプレートよりなり、プレート本体5の上下にプレートホルダー6,7が、密に重積,被覆,固定されたサンドイッチ構造よりなる。そして、プレート本体5にマイクロ流路4が形成され、上位のプレートホルダー6は、図示例では紫外線照射との関係から、必須的に透明であり、下位のホルダー7は、図示例では透明でなくてもよい。
マイクロ流路4は、チャネル状をなし、プレート本体5の長手方向に直線的、かつ短手方向に複数回繰り返して、略ジグザク状に連続的に往復折曲形成されており、各折曲箇所は湾曲状にカーブしている。
なお図示例では、1セットのプラズマリアクター1が示されているが、このような図示例によらず、複数セットのプラズマリアクター1を積層使用し、相互のマイクロ流路4間を、微網チューブ等で接続,連結することにより、マイクロ流路4の総延長を長く確保することも考えられる。
【0019】
《マイクロリアクター1の詳細について》
マイクロリアクター1のマイクロ流路4は、入口部8が略Y字状の2流路に分岐されており(図2を参照)、一方の入口9から第1流体3が圧入されると共に、同時に、他方の入口10から第2流体11が圧入される。
第1流体3は、難分解性の有機化合物2を含有している。第2流体11は、オゾンOや過酸化水素Hを含有している。すなわち、オゾンOと過酸化水素Hのいずれか一方又は双方を、含有している。
そして、第1流体3や第2流体11は、それぞれの供給部12,13から供給される。供給部12,13は、それぞれポンプ等を備えており、供給部12は、第1流体3を微細チューブ14を介し、マイクロ流路4の入口部8の一方の入口9へと、圧送供給する。供給部13は、第2流体11を微細チューブ14を介し、マイクロ流路4の入口部8の他方の入口10へと、圧送供給する。
【0020】
又、マイクロ流路4の途中には添加流路15が接続されており、添加流路15は、不足した分を補充するための第2流体11を、マイクロ流路4の第2流体11に対して圧入する(図1の(2)図,図2の(1)図を参照)。
すなわち、ポンプ等を備えた供給部16は、微細チューブ14を介し、補充用の第2流体11を添加流路15に圧送供給する。そして、添加流路15を経由した第2流体11は、マイクロ流路4中を流れる第2流体11に対して、圧入される。なお図示例では、このような添加流路15等が1本設けられているが、第2流体11の補充ニーズに応じ、更に複数本を間隔を置いて設けることも考えられる。
図中17はフィルタであり(図2の(1)図を参照)、第1流体3中に含有された他物質や微細ゴミ等を、酸化,分解に支障が生じないように、予め除去する。
又、第1流体3は、有機化合物1が水に対し、例えば、分散・混濁したエマルジョン状態として供給されるが、均一に飽和した溶解状態,その他の状態でも供給可能である。
第2流体11は、オゾンOや過酸化水素Hが水に対し、例えば、均一に飽和した溶解状態、その他の状態で供給される。因にオゾンOは、例えば、酸素Oを電気放電によりオゾンOに転化させるオゾナイザーや、185nm近傍にピーク値を有する紫外線波長のオゾンランプにて、生成されたものが供給部13,16に供給される。
マイクロリアクター1は、概略このようになっている。
【0021】
《光触媒18や紫外線照射手段19について》
次に、図1の(1)図,図3の各図を参照して、このマイクロリアクター1の光触媒18や紫外線照射手段19について、説明する。マイクロ流路4の紫外線照射面20以外の流路形成面21には、光触媒18が付着せしめられている。
すなわちマイクロ流路4は、内部に第1流体3や第2流体11の流路を形成すべく、上面,両側面,底面を備えている。そして、上面(開放されると共に、上位のプレートホルダー6で密閉しても可)が、紫外線が通過する紫外線照射面20となる。
そして、このような紫外線照射面20を除く、両側面および底面の流路形成面21に、光触媒18が付着せしめられている。光触媒18は、通常、チタニアつまり酸化チタンTiOの粒子を、例えば金属微粒子や吸着材と共に、流路形成面21に対し、塗布や焼結等の膜状担持方式により、付着せしめられている。
【0022】
ところで、図1の(1)図に示した例のマイクロ流路4は、断面において、略半円形が2個連続した形状よりなるが、その他各種形状のものも可能である。例えば、図3の(1)図に示した例のように、断面において浅い弧状の略半円形状をなすマイクロ流路4や、図3の(2)図に示した例のように、断面において横長の長方形状をなすマイクロ流路4も、考えられる。
又、図3の(3)図に示した例のマイクロ流路4は、図1の(1)図等の例のように、プレート本体5の1面(上面)に形成されるだけでなく、プレート本体5の両面(上面と下面)に形成されている。この例では、両面のマイクロ流路4が、接続,連結されると共に、紫外線照射手段19がそれぞれに対向配設されている。
なお、図3の各図の例について、その他の構成,機能等は、図1,図2の例について前述した所に準じるので、同符号を付し、その説明は省略する。
【0023】
紫外線照射手段19は、マイクロ流路4に対向配設されている。すなわち紫外線照射手段19は、マイクロ流路4が形成されたプレート本体5に対し、プレートホルダー6(図3の(3)図の例では、更に透明なプレートホルダー7)を介し、若干の間隔空間を存しつつ、対向配設されている。
そして紫外線照射手段19は、例えば、240nm〜280nm(例えば254nm)の中波長紫外線を、マイクロ流路4に対して照射する。又、160nm〜190nm(例えば185nm)の短波長紫外線や、310nm〜390nm(例えば360nm)の長波長紫外線を、照射するものも使用可能である。
又、このような紫外線照射手段19の光源としては、水銀灯等の専用ランプの他、ブラックライトやLED等も使用可能である。
光触媒18や紫外線照射手段19は、このようになっている。
【0024】
《有機化合物2の酸化,分解等について》
次に、図1の(1)図,図2の(2)図,図3の(1)図,(2)図,(3)図等を参照して、難分解性の有機化合物2の酸化,分解等について、説明する。
マイクロ流路4に供給された第1流体3と第2流体11とは、それぞれ層流を形成しつつ界面22接触する。第1流体3と第2流体11は、マイクロ流路4内を、入口部8から出口部23(図1の(2)図,図2の(1)図を参照)へと流れるが、それぞれ層流となって流れる。
すなわちマイクロ流路4は、流路幅Wが極めて小さく狭いと共に、供給される第1流体3や第2流体11もポンプ等で圧入される等により、レイノズル数(慣性力と粘性による摩擦力との比である無次元数)が小さく、層流が生じる。マイクロ流路4を流れる第1流体3と第2流体11は、その粘性力が支配的で乱れがなく、流体粒子が入り乱れることなく、滑り合うように、それぞれ層流となって流れる。
そして、このように層流となって流れる第1流体3と第2流体11とは、相間の境界面である界面22で接触しつつ、左右平行状態で併送される。
【0025】
このように層流を形成して流れる第1流体3と第2流体11に対して、紫外線照射手段19から、紫外線が照射される。
そして紫外線照射により、光触媒18およびオゾンOや過酸化水素Hにて生成されたOHラジカルが、光触媒18と第1流体3との界面24、および第2流体11と第1流体3との界面22において、分子拡散に基づき、第1流体3の有機化合物2を酸化,分解する。
すなわち、マイクロ流路4の流路形成面21に付着された光触媒18は、第1流体3や第2流体11を介した紫外線照射により、OHラジカルを生成する。又、第2流体11のオゾンOや過酸化水素Hも、紫外線照射によりOHラジカルを生成する。そして、このように生成されたOHラジカルが、界面22や界面24において、分子拡散に基づき、第1流体3中の有機化合物2を酸化,分解する。
OHラジカルは、層流の界面22および界面24において、(乱流の場合のように、物質オーダーでの流路幅W方向への物質移動ではなく、)層間の分子拡散,分子移動のみによって物質拡散し、もって、第1流体3中の有機化合物2を酸化,分解する。
有機化合物2は、このように酸化,分解される。
【0026】
《OHラジカルの生成について》
ここで、上述したOHラジカルの生成について、更に詳述しておく。まず、光触媒18によるOHラジカルの生成については、次のとおり。
すなわち、光触媒18に例えば中波長や長波長の紫外線の光エネルギー(光量子)hνを照射すると、→酸化チタンTiO表面の外殻電子域にある価電子帯の電子eが、励起され飛び出して伝導体に移り、電流になる。→その結果、価電子帯に、電子eが抜け出て欠損した正孔holeが生じる。→次の化1の式を参照。
【0027】
【化1】

【0028】
そして正孔holeは、電子欠損を埋めるべく、→接触する他物質、例えば接触する水HOから、電子eを引き抜こうとする性質、つまり強い酸化力を持つ。
一方、水HOは、光エネルギーの照射により電離して、→次の化2の式により、水酸イオンOHを生成する。
【0029】
【化2】

【0030】
そこで、前述により強い酸化力の正孔holeは、水HOの水酸イオンOHから電子eを引き抜く。→もって、電子eを奪われる水酸イオンOHは、次の化3の式により、→ヒドロキシラジカル(・OH)つまりOHラジカルを生成する。
【0031】
【化3】

【0032】
次に、第2流体11中のオゾンOによるOHラジカルの生成については、次のとおり(なお、過酸化水素HによるOHラジカルの生成も、これに準じる)。
すなわち、オゾンOに例えば中波長紫外線の光エネルギー(光量子)hνを照射すると、→励起一重項酸素原子O(D)つまり極めて反応性に富んだ酸素原子が、生成される。→次の化4の式を参照。
【0033】
【化4】

【0034】
そして、この一重項酸素原子O(D)は、接する水HOと反応して、→次の化5の式により、→ヒドロキシラジカル(・OH)つまりOHラジカルを生成する。
【0035】
【化5】

【0036】
《OHラジカルによる酸化,分解について》
又、このようなOHラジカルによる酸化,分解について、更に詳細に説明しておく。
このように光触媒18,オゾンO,過酸化水素Hと紫外線にて生成されたOHラジカルは、活性酸素種として、他に類を見ない極めて強力な酸化力,活性力,分解力を有しており、→近くの有機化合物2から強力に電子を奪って安定化しようとする。
すなわち、OHラジカルに接する第1流体3中の難分解性の有機化合物2は、このようなOHラジカルにて電子を奪われ、→その炭素連鎖(例えば単結合,2重結合,3重結合,芳香環結合等),有機結合,分子結合そのものを、切断,分解,分断され、→もって迅速かつ強力に酸化される。
例えば、オゾンOでは相対的に酸化,分解が容易なオレフィン系化合物の鎖状炭化水素についても、→オゾニド段階を介してのアルデヒド類までに止まっていたが、又、酸化,分解が困難視されていた芳香環を持った環状炭化水素等についても、オゾンOではグリオキサール段階に止まっていたが、→OHラジカルによれば、更に先へとスムーズに、迅速かつ強力に酸化,分解が進展する。
すなわち、電子を奪う酸化活性力に極めて優れたOHラジカルにより、→例えば芳香環は、直ちに開環,鎖状化され、アルデヒド化そしてカルボン酸化されて、→最終的に、炭酸ガスCOと水HOとその他の低分子化合物に、即分解される。
OHラジカルは、このように優れた酸化力,分解力を備えている。
【0037】
《作用等》
本発明の難分解性の有機化合物2の酸化分解用のマイクロリアクター1は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)マイクロリアクター1のマイクロ流路4は、微細構造よりなり、その流路幅Wが100μm〜500μm程度で、流路深さDが25μm〜100μm程度よりなる。そして、紫外線照射手段19が対向配設されると共に、紫外線照射面20以外の流路形成面21に、光触媒18が付着せしめられている(図1の(1)図,図3の各図を参照)。
【0038】
(2)そしてマイクロ流路4の入口部8は、略Y字状に分岐されており、一方の入口9から第1流体3が圧入され、他方の入口10から第2流体11が圧入される(図2の各図を参照)。
この第1流体3は、難分解性の有機化合物2を、含有している。例えば、パラフィン系化合物,オレフィン系化合物,その他の鎖状炭化水素や、芳香環を持った環状炭化水素、その他の環状炭化水素を、含有している。
第2流体11は、オゾンOや過酸化水素Hを、含有している。なお、マイクロ流4の途中には添加流路15が接続されており、補充用の第2流体11を、マイクロ流路4を流れる第2流体11に、圧入供給する。
【0039】
(3)そして、レイノルズ数が小さいので、マイクロ流路4内に供給された第1流体3と第2流体11は、マイクロ流路4内を、それぞれ層流となって流れる。第1流体3と第2流体11とは、層流の界面22で接触しつつ平行に流れると共に、第1流体3や第2流体11は、流路形成面21の光触媒18と界面24で接触しつつ平行に流れる(図2の(2)図を参照)。
【0040】
(4)これと共に、マイクロ流路4に対し、紫外線照射手段19から紫外線照射面20を介して、紫外線が照射される。そこで、マイクロ流路4内では、照射された紫外線と流路形成面21の光触媒18にて、OHラジカルが生成されると共に、照射された紫外線と第2流体11のオゾンOや過酸化水素Hにて、OHラジカルが生成される(図1の(1)図,図3の各図を参照)。
【0041】
(5)そして、このように生成されたOHラジカルは、強力な酸化力,分解力を備えており、光触媒18と第1流体3との界面24、および第2流体11と第1流体3との界面22において、それぞれ分子拡散に基づき、第1流体3の有機化合物2を酸化,分解する(図1の(1)図,図3の各図を参照)。例えば、第2流体11のオゾンOや過酸化水素Hで生成されたOHラジカルと、第1流体3の有機化合物2とは、界面22を介し相互間で分子拡散し、もって有機化合物2が酸化,分解される。
すなわち、難分解性の有機化合物2は、OHラジカルにて炭素連鎖,有機結合を切断され、もって迅速かつ確実に酸化されて、炭酸ガスCOや水HO等に分解される。
特に、光触媒18とオゾンOや過酸化水素Hとを併用したことにより、相乗的に一段と強力に酸化,分解が実施される。すなわち、照射される紫外線の光エネルギー(光量子)効率に優れ、一度に多量のOHラジカルが生成されると共に、このように生成されたOHラジカルにより、界面22と界面24の両面から酸化,分解が、くまなく実施される。
【0042】
(6)このように第1流体3は、含有されていた難分解性の有機化合物2が酸化,分解され、第2流体11と共に、マイクロ流路4の出口部23から排出される(図1の(2)図,図2の(1)図を参照)。
【0043】
(7)さてそこで、本発明の難分解性の有機化合物2の酸化分解用のマイクロリアクター1を使用すると、次の第1,第2のようになる。
第1に、本発明では、マイクロ流路4内を第1流体2と第2流体11が、それぞれ平行に規則的に整然と滑り合うように、層流を形成して流れる。→そして、第1流体3に含有された難分解性の有機化合物2は、第1流体3と第2流体11との接触面である界面22や、第1流体3と光触媒18との接触面である界面24において、第2流体11側や光触媒18側で生成されたOHラジカルの分子拡散により、酸化,分解される。
→そしてその際、まず、a.マイクロ流路4は、微細構造よりなっており、極めて小さいので、→この第1流体3等の層流の界面22,24は、単位容積(単位体積)あたりの表面積が極めて大きい。→このように、層流をなす第1流体3等の単位容積あたりの界面22,24面積(比界面積,比表面積)が、極めて大きいので、→反応が、広い面積において直接的に効率良く起きるようになり、→OHラジカルによる難分解性の有機化合物2の酸化,分解が、広く直接的に促進される。
→これと共に、b.このようなOHラジカルによる難分解性の有機化合物2の酸化,分解は、分子拡散により行なわれる。→すなわち、第1流体3等は層流となっており、→物質の拡散は、(乱流の場合のように、流れ方向に対して直角方向・流路幅W方向への物質移動、つまり、流路幅W方向への拡散距離の長い物質オーダーでの物質移動ではなく)、界面22,24での流路幅W方向への拡散距離が極めて短い分子拡散,分子移動のみにて行われる。→このように界面22,24での反応となるので、OHラジカルによる酸化,分解は、他の外的諸条件や他物質の影響を受けることなく、効率良く純粋に実施される。
【0044】
これらa,bにより、OHラジカルによる難分解性の有機化合物2の酸化,分解は、定量的に安定し、条件が十分に制御されコントロールされた状態で行われる。もって、難分解性の有機化合物2の酸化,分解について、測定幅の少ない精密なデータが得られるようになる。
例えば、第1流体3や第2流体11の流量、難分解性の有機化合物2の種類,濃度,酸化分解率、紫外線の波長,照射時間、マイクロ流路4の総延長長さ、光触媒18の構成内容,付着態様、オゾンOや過酸化水素Hの状態、温度条件、等々の各ポイント相互間の関係,その他について、正確なデータが得られるようになる。
【0045】
第2に、本発明では、マイクロオーダーでの微視的な反応場において、化学反応データを把握すると言うコンセプトの基に、この種技術分野において初めて、マイクロリアクター1を採用した。
そして、マイクロ流路4に形成された層流の界面22,24において、分子拡散により、難分解性の有機化合物2を酸化,分解するので、反応効率が向上し、反応速度も速くなる。
例えば、マイクロリアクター1のマイクロ流路4は、極めて微細な構造よりなり、流路幅Wが100μm〜500μm程度と極めて小さい。そこで、流路幅W方向への分子拡散を支配する界面22,24や流路形成面21からの温度勾配,圧力勾配が、流路幅Wに対して相対的に大きく、又、このため熱伝導にも優れているので、拡散効率が向上し反応時間も短縮される。又、分子拡散の拡散距離も格段に小さくなり、分子拡散が高速化される。
これらにより、OHラジカルによる難分解性の有機化合物2の酸化,分解について、反応効率が向上し反応速度も速くなるので、効率良く迅速にデータが取得可能となる。
なお、マイクロリアクター1を用いるので、使用される第1流体3や第2流体11,難分解性の有機化合物2,オゾンO,過酸化水素H等も、極めて少量で良く、紫外線照射手段19による紫外線の照射も僅かで済む。
【0046】
《テスト結果について》
図4は、図1,図2に示したマイクロリアクター1を用いて、第1流体3中の難分解性の有機化合物2を、酸化,分解テストした計測データである。
すなわち、第1流体3は、有機化合物2としてビスフェノールA(BPA)を含有し、マイクロ流路4は、流路幅Wが500μmで流路深さDが100μmのものを使用し、第2流体11はオゾンOを含有し、第1流体3や第2流体11の流量を0.1ml/minとし、紫外線照射手段19が254nmの中波長紫外線を照射する、等々の条件のもとで、テストを行った。
その結果、時間の経過と伴に有機化合物2の分解率が向上して、40分程度でほぼ完全に分解されると共に、TOC計測器を用いて計測された全有機体炭素量TOC(Total Organic Carbon)除去率、つまり液中の有機化合物2の炭素量の除去率も、時間の経過と伴に向上して、40分程度でほぼ完全に除去された。これらにより、第1流体3中の難分解性の有機化合物2の酸化,分解が、確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクターについて、発明を実施するための最良の形態の第1例の説明に供し、(1)図は、正断面説明図であり、(2)図は、斜視説明図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の同第1例の説明に供し、(1)図は、平面説明図であり、(2)図は、その要部拡大図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の他の例の説明に供し、正断面説明図であり、(1)図は、第2例を、(2)図は、第3例を、(3)図は、第4例を示す。
【図4】同発明を実施するための最良の形態の他の例の説明に供し、酸化,分解の計測データのグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 マイクロリアクター
2 有機化合物
3 第1流体
4 マイクロ流路
5 プレート本体
6 プレートホルダー
7 プレートホルダー
8 入口部
9 一方の入口
10 他方の入口
11 第2流体
12 供給部
13 供給部
14 微細チューブ
15 添加流路
16 供給部
17 フィルタ
18 光触媒
19 紫外線照射手段
20 紫外線照射面
21 流路形成面
22 界面
23 出口部
24 界面
D 流路深さ
W 流路幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に含有された難分解性の有機化合物を、酸化,分解するために用いられるマイクロリアクターであって、微細構造のマイクロ流路を備えており、
該マイクロ流路は、該有機化合物を含有した第1流体と、オゾンや過酸化水素を含有した第2流体とが供給され、紫外線照射手段が対向配設されると共に、紫外線照射面以外の流路形成面に光触媒が付着せしめられていること、を特徴とする、難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター。
【請求項2】
該マイクロ流路は、入口部が略Y字状に分岐されており、一方の入口から該第1流体が圧入されると共に、他方の入口から該第2流体が圧入され、
該マイクロ流路内では、該第1流体と該第2流体とが、それぞれ層流を形成しつつ界面接触すると共に、
該紫外線照射手段による紫外線照射により、該光触媒および該オゾンや過酸化水素にて生成されたOHラジカルが、該光触媒と該第1流体との界面、および該第2流体と該第1流体との界面において、分子拡散に基づき、該第1流体の該有機化合物を酸化,分解すること、を特徴とする、請求項1に記載した難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター。
【請求項3】
該マイクロ流路は、流路幅が、100μm以上で500μm以下程度で、流路深さが、25μm以上で100μm以下程度よりなること、を特徴とする、請求項2に記載した難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター。
【請求項4】
該有機化合物は、パラフィン系化合物,オレフィン系化合物,その他の鎖状炭化水素や、芳香環を持った環状炭化水素、その他の環状炭化水素よりなること、を特徴とする、請求項3に記載した難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター。
【請求項5】
該マイクロ流路の途中に添加流路が接続されており、該添加流路は、補充用の該第2流体を、該マイクロ流路の該第2流体に対して圧入すること、を特徴とする、請求項3に記載した難分解性有機化合物の酸化分解用のマイクロリアクター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−239640(P2006−239640A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61899(P2005−61899)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(505252698)株式会社アイエムイー総合研究所 (14)
【Fターム(参考)】