説明

電力を変換するための方法と変換装置

【課題】送電網における電圧の変動を適応させることができる改良された変換装置を提供する。
【解決手段】変換装置が、少なくとも2つの相の各相に関して、それぞれの相の電圧を表す電圧信号を受信する電圧入力側と、少なくとも2つの相の各相に対する個別のコントローラとを有し、各コントローラは、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲から外れると、有効電流を0に設定するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力を電気的な出力に変換する変換装置の分野に属する。殊に、本発明は風力タービンの変換装置の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
接続されている送電網に変動する電力を供給するエネルギ生成装置が公知である。例えば、風力タービンは風速が低い場合には比較的少ない電力を供給する。別の例は太陽エネルギプラントであり、その出力は太陽光の利用可能性および強度に依存する。変動する電力は送電網において電圧擾乱を生じさせるおそれがある。さらには、送電網から電力を取り出す電量消費部も送電網において擾乱を生じさせる可能性がある。考えられる他の障害としては雷、短絡などが挙げられる。
【0003】
EP 1 386 078 B1には、風力タービンが存在しない状況に比べて送電網における電圧の不所望な変動を低減することができるか、少なくとも顕著には増大させない風力タービンまたは風力発電所を提供するための風力エネルギプラントの運転方法が記載されている。風力エネルギプラントは発電機を有し、この発電機はロータによって駆動され、電力を送電網に供給するが、送電網に供給される電力には無効成分も含まれている。無効成分は供給されるボルトアンペアの電流と電圧との間の角度を表す位相角Φによって予め定められたものである。位相角Φは回路網において検出された少なくとも1つの電圧の振幅に依存して変化するので、回路網電圧が所定の下側電圧閾値と所定の上側電圧閾値との間にある場合には位相角は変化しない。ただし、所定の下側電圧閾値は公称電圧値よりも低く、また所定の上側電圧閾値は所定の公称電圧値よりも大きい。所定の上側電圧閾値を上回るか、所定の下側電圧閾値を下回ると、電圧はさらに上昇するか下降するので、位相角の振幅は増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 1 386 078 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の状況を鑑み、送電網における電圧の変動に適応させることができる改良された変換装置および方法を提供することである。また、その種の変換装置を有する発電装置、その種の発電装置の作動方法、本方法を実施するコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能媒体、ならびに、本方法を実施するよう構成されているプログラム要素が提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
変換装置に関する課題は、変換装置が、少なくとも2つの相の各相に関して、それぞれの相の電圧を表す電圧信号を受け取る電圧入力側と、少なくとも2つの相の各相に対する個別のコントローラとを有し、各コントローラは、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲から外れると、有効電流を0に設定するよう構成されていることによって解決される。
【0007】
発電装置に関する課題は、発電装置が本発明による変換装置を有することによって解決される。
【0008】
方法に関する課題は、方法が、少なくとも2つの相の各相に関して、それぞれの相の電圧を表す電圧信号を受信するステップと、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲から外れると、少なくとも2つの相の各相の有効電流を0に設定するステップとを有することによって解決される。
【0009】
発電装置コントローラの作動方法は、入力を電気的な出力に変換するよう構成されている変換装置のコントローラに制御信号を供給するステップと、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲外にある場合に、少なくとも1つの相の無効成分を制御するために変換装置によって使用される無効成分勾配を変換装置に設定するよう制御信号を構成するステップとを有することによって解決される。
【0010】
コンピュータ読み取り可能媒体に関する課題は、コンピュータ読み取り可能媒体には、変換装置において少なくとも2つの相の各相の有効電流を設定するためのコンピュータプログラムが記憶されており、該コンピュータプログラムは、データプロセッサによって実行される場合に、本発明による方法を制御または実行するよう適合されていることによって解決され、また、コンピュータ読み取り可能媒体には、変換装置の少なくとも1つの相に関する無効成分勾配を設定するためのコンピュータプログラムが記憶されており、該コンピュータプログラムは、データプロセッサによって実行される場合に、本願発明による方法を制御または実行するよう適合されていることによって解決される。
【0011】
さらに、プログラム要素に関する課題は、プログラム要素が、変換装置の電気的な出力の少なくとも2つの相の各相の有効電流を設定するよう構成されており、かつ、データプロセッサによって実行される場合に、本願発明による方法を制御または実行するよう適合されていることによって解決され、また、プログラム要素が、変換装置の少なくとも1つの相に関する無効成分勾配を設定するよう構成されており、かつ、データプロセッサによって実行される場合に、本願発明による方法を制御または実行するよう適合されていることによって解決される。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、入力を、少なくとも2つの相を有する電気的な出力に変換する変換装置が提供される。第1の態様による変換装置は、少なくとも2つの相のそれぞれの相に関する電圧信号を受信する電圧入力側を有する。電圧信号はそれぞれの相の電圧を表す。さらに、変換装置は少なくとも2つの相のそれぞれに対する個別コントローラを有し、各個別コントローラは、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲外にある場合に、有効電流を0に設定する。そのような所定の電圧範囲はしばしばデッドバンドと称される。1つの実施形態によれば、電気システム、例えば発電装置は、電流が供給される出力側の他に中性線を有する。
【0013】
電圧信号をあらゆる適切なやり方で形成することができる。例えば、1つの実施形態によれば、少なくとも2つの相のそれぞれの相において変換装置によって供給される電気的な出力から電圧信号が導出される。別の1つの実施形態によれば、電圧信号によって表される電圧は、変換装置が接続されている送電網におけるそれぞれの相の電圧である。
【0014】
1つの実施形態によれば、変換装置は機械的な入力を受け取るように構成されている。例えば、1つの実施形態によれば、変換装置は例えばUS 6,448,735 B1から公知であるタイプの二重給電誘導発電機を有することができる。
【0015】
別の実施形態によれば、入力は電気的な入力である。換言すれば、この実施形態によれば、変換装置は電気的な入力を受け取るように構成されている。最後に、変換装置は電気的な入力を電気的な出力に変換するための少なくとも1つの変換器、例えば周波数変換器を有することができる。この場合、変換装置は電気的な側面でしか動作しないので、電気的な変換装置とも称される。
【0016】
1つの実施形態によれば、変換装置は風力タービンの変換装置である。別の1つの実施形態によれば、変換装置は風力タービンの電気的な変換装置であり、したがって風力タービンの発電機によって生成された電気的な入力を電気的な出力に変換するよう構成されている。
【0017】
一般的に、電気的な変換装置の電気的な入力を提供するために、電気的なエネルギシステムのあらゆる発電機によって生成される電力を事前変換することができる。この事前変換は公知のあらゆるタイプのものであってよい。例えば、整流器を発電機の出力側と、電気的な入力を受け取る変換装置の入力側との間に接続することができる。
【0018】
所定の電圧範囲を変換装置において固定的に事前プログラミングすることができる。別の1つの実施形態によれば、変換装置は少なくとも1つの電圧範囲制御信号を受信するための制御入力側を有する。さらに変換装置を、受信した電圧範囲制御信号に応答して所定の電圧範囲を設定するよう構成することができる。
【0019】
所定の電圧範囲の幅を定格電圧の0%〜20%の範囲とすることができる。別の1つの実施形態によれば、所定の電圧範囲の幅は定格電圧の5%〜15%の範囲にある。本願の実施形態によれば、パーセンテージは本明細書においてそれぞれ正負(+または−)の値に関するので、パーセンテージ値はそれぞれの間隔の半分に関する。例えば、定格電圧が240Vで所定の電圧範囲の幅が定格電圧の10%である場合、所定の電圧範囲の幅は±24Vになる。すなわち、所定の電圧範囲は[定格電圧−24V;定格電圧+24V]。別の実施形態においては、パーセンテージ値は間隔全体に関する。
【0020】
1つの実施形態によれば、所定の電圧範囲は定格電圧を中心としている。別の複数の実施形態によれば、所定の電圧範囲は定格電圧に関して非対称的に設けられている。
【0021】
第1の態様の別の1つの実施形態によれば、各個別コントローラは、自身の相の無効成分、例えば無効電流を自身の相に対応する電圧信号に依存して設定するよう構成されている。1つの実施形態によれば、電圧信号によって表される電圧が所定の電圧範囲外にある場合にのみ、無効成分の設定が行われる。さらに別の1つの実施形態によれば、電圧信号によって表される電圧の値に関わらず、すなわち電圧が所定の電圧範囲内にあるか電圧範囲外にあるかに関わらず、無効成分の設定が行われる。上述のケースにおいては、電気的な出力の無効成分が、考慮する相に関する電圧信号に依存して、各相に対して別個に設定される。
【0022】
本明細書において、一般的に「設定」という語句は広義に解釈されるべきである。例えば、電圧信号に依存する所定量(例えば有効成分、無効成分など)の設定は、特定の期間における電圧信号に依存する量の設定、電圧信号の変化に応答した量の変化などを含む。殊に「電圧信号に依存する無効成分の設定」には、例えば、特定の期間における電圧信号に依存する無効成分の設定、電圧信号の変化に応答した無効成分の変化などを含む。
【0023】
1つの実施形態によれば、無効成分は無効電流である。無効成分の別の例として、無効電力、位相角または力率が挙げられる。それらの無効成分は当業者には周知であるので、ここでは詳細に説明しない。
【0024】
1つの実施形態によれば、各コントローラは、自身の相の電圧の値が所定の電圧範囲内に収まるように自身の相の無効成分を設定するよう構成されている。さらに別の1つの実施形態によれば、電圧信号が連続的に変化する信号であっても、電圧信号に応答して段階的に無効成分を変更するようコントローラを構成することができる。1つの実施形態においては、例えばそれぞれの相の電圧が所定の電圧範囲の境界に達すると、無効成分、例えば無効電流を所定の値に設定することができる。別の複数の実施形態によれば、少なくとも1つの相のコントローラは、電圧信号に応じて、所定の電圧範囲の境界を越えて無効成分を連続的に変更するよう構成されている。
【0025】
別の1つの実施形態によれば、電気的な出力はn個の複数の相を有し、また変換装置はn個の前述の個別コントローラを複数有している。さらに、第1の態様の1つの実施形態によれば、変換装置は、n個の個別コントローラのうちのn−1個の個別コントローラを選択するよう構成されているセレクタを有する。さらに、セレクタは選択されたn−1個の個別コントローラにセレクタ信号を出力するよう構成されている。この実施形態においては、変換装置の少なくとも1つの個別コントローラは、セレクタ信号に応答して、自身の相の無効成分を、自身の相の電圧信号には依存するが、その他の相には依存せずに、例えばその他の相の電圧信号または無効電流には依存せずに設定するよう構成されている。
【0026】
したがって、セレクタはセレクタ信号を用いて、その他の相に依存せずに自身の相の無効成分を変更するn−1個のコントローラを選択する。1つの実施形態によれば、残りの個別コントローラは、変換装置の中性線における電流を低減するか、それどころか最小化するように、自身の相の無効成分を設定するよう構成されている。これによって僅かな中性線電流が実現され、他方では、選択された各相の無効成分がその他の相に依存せずに制御される。
【0027】
他の複数の実施形態によれば、その他の相における電流を考慮する残りのコントローラが1つだけ提供されるのではない。むしろ、1つの実施形態によれば、電気的な出力がn個の複数の相を有する場合、セレクタ装置を、複数ある個別コントローラのうちのn−x個を選択し、もしくは、選択されたn−x個の個別コントローラにセレクタ信号を出力するためにn個の複数のコントローラのうちのn−x個を選択し、それに応答して自身の相の無効成分を自身の相の電圧信号には依存するが、その他の相の電圧信号には依存せずに設定するよう構成することができる。したがって、その他のx個の個別コントローラはそれぞれ、自身の相の無効成分を自身の相の電圧信号に依存して、またその他の相の少なくとも1つの量(例えば無効成分、電圧、有効電流など)に依存して設定することができる。例えば、独立して制御されるn−x個のコントローラの電流を考慮するx個の個別コントローラは、例えば制御入力側において各非選択信号を受信することによって、もしくは単純に、前述のセレクタ信号を受信しないことによって、セレクタによって選択されていないことを識別することができる。
【0028】
コントローラが自身の相または他の相の電流信号を考慮するときは常に、コントローラによって考慮される各相の電流を表す電流信号を測定するために電流測定ユニットが設けられる。
【0029】
第1の態様の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、電圧信号によって表される電圧の変化の電圧単位毎の無効成分の所定の変更を実施するよう構成されている。この電圧単位毎の無効成分の所定の変更は無効成分勾配を規定するものであり、以下では単に「勾配」と記す。別の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、電圧信号によって表される電圧が所定の電圧範囲内にある場合に、インバンド勾配にしたがい自身の相の無効成分を制御し、電圧信号によって表される電圧が所定の電圧範囲外にある場合に、アウトオブバンド勾配にしたがい自身の相の無効成分を制御するよう構成されている。
【0030】
別の1つの実施形態によれば、インバンド勾配はアウトオブバンド勾配とは異なる勾配である。別の1つの実施形態によれば、勾配はパーセンテージ値として規定され、例えば2%の無効成分勾配の値は、電圧信号によって表される電圧における1%の変化によって無効成分における2%の変化をもたらすことを意味する。1つの実施形態によれば、勾配の傾きはそれぞれの相の電圧の値が所定の電圧範囲に収まるようになっていることを言及しておく。
【0031】
1つの実施形態によれば、インバンド勾配は一定である。すなわち、インバンド勾配は電圧信号に依存せず、所定の電圧範囲内にある。別の1つの実施形態によれば、アウトオブバンド勾配は一定である。すなわち、インバンド勾配は電圧信号に依存せず、所定の電圧範囲外にある。1つの実施形態によれば、(無効成分のインバンド制御に応じた)所定の電圧範囲の境界における無効成分の実測値は、アウトオブバンド勾配を適用するための起点として使用される。別の実施形態によれば、コントローラは所定の電圧範囲の境界における無効成分の値を所定の値、例えば0アンペアに設定するよう構成されている。これによって、所定の電圧範囲の境界における無効成分を段階的なやり方で変更することができる。
【0032】
第1の態様の1つの実施形態によれば、変換装置は勾配制御信号を受信するための制御入力側を有し、各個別コントローラは、勾配制御信号に応答して、コントローラのアウトオブバンド勾配およびインバンド勾配のうちの少なくとも1つを設定するよう構成されている。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様またはその実施形態による変換装置を有する発電装置が提供される。
【0034】
1つの実施形態によれば、発電装置はさらに、電気的な入力を形成する発電部を有する。例えば、1つの実施形態によれば、発電部は風力タービンの発電機である。別の1つの実施形態によれば、発電部は太陽エネルギモジュールである。しかしながら、あらゆる発電部を本発明による変換装置と共に使用することができる。
【0035】
第2の態様の別の1つの実施形態によれば、発電装置は、例えば変換装置の個別コントローラにおいて無効成分勾配を設定するため、または、上述のように1つまたは複数の個別コントローラを選択するために、少なくとも1つの制御信号を変換装置の個別コントローラに供給する発電装置コントローラを有する。
【0036】
アウトオブバンド無効成分勾配の制御によって、例えば、所定の電圧範囲外の無効電流の寄与を送電網のインピーダンスに適合させることができる。1つの実施形態によれば、発電装置コントローラを、アウトオブバンド勾配および/またはインバンド勾配の自動的な最適化が行われるよう構成することができる。
【0037】
本発明の第3の態様によれば、入力を電気的な出力に変換する方法が提供され、この方法は、(i)少なくとも2つの相のそれぞれの相に関して、それらのそれぞれの相の電圧を表す電圧信号を受信するステップと、(ii)それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲外にある場合には、少なくとも2つの相のそれぞれの相の有効電流を0に設定するステップとを有する。
【0038】
第3の態様の1つの実施形態によれば、方法は、少なくとも2つの相のうちの少なくとも1つの相の無効成分を、この相に対応する電圧信号に依存して設定するステップを有する。
【0039】
第3の態様の1つの別の実施形態によれば、方法は、少なくとも2つの相のサブセットの無効成分を、それぞれの相の電圧信号には依存するが、その他の相の電圧信号および/または電流には依存せずに設定するステップを有する。別の1つの実施形態によれば、上述の相のサブセットには含まれない残りの相に関して、無効成分がその他の相のうちの少なくとも1つの相の少なくとも1つの量(例えば無効成分)に依存して設定される。
【0040】
第3の態様の1つの別の実施形態によれば、少なくとも2つの相のそれぞれの相の無効成分が、それぞれの相の電圧信号には依存するが、その他の相の電圧信号または電流には依存せずに設定される。
【0041】
第3の態様の別の1つの実施形態によれば、無効成分は、電圧信号によって表される電圧が所定の電圧範囲内にある場合にはインバンド勾配にしたがい設定され、各相の無効成分は、電圧信号によって表される電圧がこの相に関する所定の電圧範囲外にある場合にはアウトオブバンド勾配にしたがい設定される。
【0042】
第3の態様の1つの実施形態によれば、無効成分は所定の電圧範囲の境界を越えて連続的に変更される。別の1つの実施形態によれば、無効成分は所定の電圧範囲の境界を越えて段階的なやり方で変更され、この実施形態では所定の電圧範囲外の起点を事前に求めることができる。
【0043】
本発明の第4の態様によれば、発電装置コントローラの作動方法が提供され、この方法は、変換装置の個別コントローラに制御信号を供給するステップを有する。変換装置は入力を電気的な出力に変換するよう構成されており、また電気的な出力の各相に関して前述の個別コントローラのうちの1つを有する。さらに本方法は、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲外にある場合に、少なくとも1つの相の無効成分を制御するために変換装置によって使用される無効成分勾配を設定するステップを有する。
【0044】
本発明の第5の態様によれば、コンピュータ読み取り可能媒体が提供され、コンピュータ読み取り可能媒体には、変換装置において少なくとも2つの相の各相の有効電流を設定するためのコンピュータプログラムが記憶されており、コンピュータプログラムは、データプロセッサによって実行される場合に、上記において第3の態様またはその実施形態として説明した方法を制御または実行するよう適合されている。
【0045】
本発明の第6の態様によれば、プログラム要素が提供され、プログラム要素は、変換装置の電気的な出力の少なくとも2つの相の各相の有効電流を設定するよう構成されており、またプログラム要素は、データプロセッサによって実行される場合に、上記において第3の態様またはその実施形態として説明した方法を制御または実行するよう適合されている。
【0046】
本発明の第7の態様によれば、コンピュータ読み取り可能媒体が提供され、コンピュータ読み取り可能媒体には、変換装置の少なくとも1つの相に関して無効成分勾配を設定するためのコンピュータプログラムが記憶されており、コンピュータプログラムは、データプロセッサによって実行される場合に、上記において第4の態様またはその実施形態として説明した方法を制御または実行するよう適合されている。
【0047】
本発明の第8の態様によれば、プログラム要素が提供され、プログラム要素は、変換装置の少なくとも1つの相に関して無効成分勾配を設定するよう構成されており、またプログラム要素は、データプロセッサによって実行される場合に、上記において第4の態様またはその実施形態として説明した方法を制御または実行するよう適合されている。
【0048】
本明細書において使用されている限りにおいて、プログラム要素および/またはコンピュータ読み取り可能媒体についての記載は、上述の方法の機能と相互的に作用するコンピュータシステムを制御するための命令を含むコンピュータプログラムについての記載に相当するものであることを意図している。
【0049】
コンピュータプログラムはあらゆる適切なプログラミング言語、例えばJAVA、C++などを使用することによって、コンピュータ読み取り可能な命令コードとして実施できるものであり、また、コンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能媒体(リムーバルディスク、揮発性メモリまたは不揮発性メモリ、組み込みメモリ、組み込みプロセッサなど)に記憶することができる。命令コードは、意図された機能を実行するために、コンピュータまたは他のあらゆるプログラミング可能な装置をプログラミングするために使用される。コンピュータプログラムはWorld Wide Webのようなネットワークからダウンロードすることによって入手することができる。
【0050】
コンピュータプログラムを用いることにより、本発明をそれぞれソフトウェアにおいて実現することができる。しかしながら、1つまたは複数の特別な電子回路を用いることにより、本発明をそれぞれハードウェアにおいて実現することができる。さらには、本発明をハイブリッドの形態、すなわちソフトウェアモジュールとハードウェアモジュールが組み合わされた形態で実現することもできる。
【0051】
以下では、入力を電気的な出力に変換する変換装置および方法を参照しながら、本発明の実施例を説明する。もちろん、本発明の異なる態様に関係する種々の特徴のあらゆる組み合わせが可能であることを言及しておく。殊に、幾つかの実施形態は装置を特定する請求項に関して説明したが、その他の実施形態は方法を特定する請求項に関して説明した。しかしながら当業者であれば、前述の記載および後述の記載から、ことわりが無い限り、1つの態様に関連する特徴のあらゆる組み合わせの他に、それとは異なる態様または実施形態に関連する複数の特徴の組み合わせ、例えば、装置を特定する請求項に記載の特徴と、方法を特定する請求項に記載の特徴の組み合わせ、また、変換装置に関連する複数の特徴と、発電装置に関連する複数の特徴の組み合わせも本願の開示内容と見なせることが分かる。
【0052】
本発明の上記において規定した態様および実施形態ならびに別の態様および実施形態は以下の記載より明らかになり、また図面を参照しながらそれらの態様および実施形態を説明するが、本発明はそれらの態様および実施形態に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態による発電装置を概略的に示す。
【図2A】本発明の実施形態による、3つの相を有する変換装置の第1の相に関する例示的な電圧信号の時間的な経過と、この第1の相の無効成分における変換装置のそれぞれの応答とを示す。
【図2B】本発明の実施形態による、3つの相を有する変換装置の第2の相に関する例示的な電圧信号の時間的な経過と、この第2の相の無効成分における変換装置のそれぞれの応答とを示す。
【図2C】本発明の実施形態による、3つの相を有する変換装置の第3の相に関する例示的な電圧信号の時間的な経過と、この第3の相の無効成分における変換装置のそれぞれの応答とを示す。
【図3】本発明の実施形態による、変換装置の1つの例示的な相に関する無効成分対電圧信号の変化を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
各図は概略的に示されたものである。また異なる図において、同様または同一の要素には同一の参照番号を付しているか、対応する参照番号とは追記された文字のみが異なっている参照番号を付していることを言及しておく。
【0055】
図1は、本発明の実施形態による発電装置100の一部を概略的に示したものである。発電装置100は変換装置102および発電部104を有する。
【0056】
変換装置102は、発電部104によって供給される、図1において参照番号106によって表されている入力を、図1において参照番号108によって表されている電気的な出力に変換するよう構成されている。図1に示されているように、電気的な出力108は少なくとも2つの相、例えば図1に示されているように3つの相110a,110b,110cを有する。電気的な出力108の相110a,110b,110cを、図1において参照番号112によって表されている送電網の各相L1,L2,L3と結合することができる。変換装置102と送電網112との接続を、あらゆる適切な手段、例えばスイッチングコンポーネント114a,114b,114cによって実施することができる。1つの実施形態において、これらのスイッチングコンポーネント114a,114b,114cは一緒に1つのメインスイッチ114を形成することができる。
【0057】
1つの実施形態によれば、相110a,110b,110cのそれぞれに対して1つの個別コントローラ116a,16b,116cが設けられている。
【0058】
さらに、変換装置は相110a,110b,110cのそれぞれに関する電圧信号を受信するための電圧入力側を有する。図1に示されている実施形態によれば、各コントローラ116a,116b,116cは、相応の相110a,110b,110cの電圧信号120a,120b,120cを受信するための電圧入力側118a,118b,118cをそれぞれ1つ有する。1つの実施形態によれば、コントローラ116a,116b,116cの個々の電圧入力側118a,118b,118cが一緒に、変換装置の1つの「電圧入力側」を形成する。各電圧信号120a,120b,120cは、電気的な出力108のそれぞれの相の電圧を表す。各電圧信号は、この電圧信号と、少なくとも1つの別の量、例えば相の電流を表す電流信号とを含むフィードバック信号の一部であってもよい。電流信号によって表されるこの電流は有効電流または無効電流であるか、または、有効電流と無効電流を含む全電流(複素電流)である。
【0059】
個別コントローラ116a,116b,116cはそれぞれ、電圧信号120a,120b,120cによって表されるそれぞれの相の電圧が所定の電圧範囲外にある場合に、電気的な出力108の有効電流を0に設定するよう構成されている。
【0060】
1つの実施形態によれば、発電装置は、所望の有効電力および/または無効電力を伝送する電気的な出力の相の他に中性線(図1には図示せず)を有する。1つの実施形態によれば、有効電流を0に設定するために個別の変換器122a,122b,122c、例えば周波数変換器が各相に対して設けられている。図1に示されている実施形態によれば、変換器122a,122b,122cはそれぞれ1つの入力側124a,124b,124cを有し、これらの入力側は交流電流の形態の電気的な入力106を受け取るよう構成されている。その他の実施形態によれば、変換器122a,122b,122cを、直流電流の形態の電気的な入力106を受け取るよう構成することができる。さらには、変換器122a,122b,122cは、電気的な出力108の相110a,110b,110cのうちの1つを供給する出力側126a,126b,126cをそれぞれ1つ有する。図1に示されているように、送電網において検出されるべき各相110a,110b,110cの電圧を、個別の変換器122a,122b,122cのそれぞれの出力側126a,126b,126cにおいて測定することができる。
【0061】
さらに発電装置100は、個別コントローラ116a,116b,116cに制御信号を供給する発電装置コントローラ128を有する。図1においては複数ある制御信号の全てに対して参照番号130が付されている。これらの制御信号には、それぞれ電力制御信号130aでもって表されている、所望の電力Pを設定するための制御信号と、それぞれパワースロープ制御信号130bでもって表されている、時間単位毎の電力の所定の変化に対応するパワースロープdP/dtを設定するための制御信号と、それぞれ電圧制御信号130cでもって表されている、所望の電圧Usに調整するための制御信号とを含ませることができる。3つの例示的な制御信号130a,130b,130cは個別コントローラ116a,116b,116cのそれぞれに関して同一の参照番号でもって表されているが、これらの制御信号は個別コントローラ116a,116b,116c全てに対して同一のものであるか、個別コントローラ116a,116b,116cに対して部分的に、もしくは全て異なるものであってもよい。
【0062】
個別コントローラ116a,116b,116cは、制御信号130,130a,130b,130cを受信するための制御入力側131a,131b,131cをそれぞれ1つ有する。それぞれのコントローラ116a,116b,116cは制御信号に応答して、自身に対応付けられている変換器122a,122b,122cをそれぞれの変換器制御信号132a,132b,132cでもって制御するよう構成されており、また選択的に、1つの実施形態によれば、それぞれの変換器122a,122b,122cからフィードバック信号134a,134b,134cを受信することもできる。
【0063】
図1に示されている発電装置100は風力タービンの一部である。風力タービンのギヤおよびロータは、発電機104を駆動させるための発電機104と接続されているが、図1においては図示されていない。動作時に、風力発電装置コントローラ128は各単一相110a,110b,110cの電圧を制御し、電圧制御信号120a,120b,120cによって表される各相の電圧レベルに依存して、各単一相に無効電流を供給(フィードイン)することによって、送電網における電圧をサポートする。
【0064】
1つの実施形態によれば、発電装置100は一定の無効力率を有する所定の電圧範囲内で動作する。1つの実施形態によれば、(電圧制御信号120a,120b,120cによって表される)電圧が所定の電圧範囲から外れると(上限または下限を超えると)、それぞれの相の有効電流が0に設定され、送電網112において検出されるそれぞれの相の電圧振幅に応じて無効電流が変更される。スイッチ114のスイッチングコンポーネント114a,114b,114cは図1において開かれた状態にあるが、動作時にこれらのスイッチングコンポーネント114a,114b,114cは閉じられ、それにより発電装置100と送電網112が接続されることを言及しておく。
【0065】
さらには、相110a,110b,110cのうちの1つまたは複数の相の電圧が所定の電圧範囲(デッドバンドとも称される)から外れている状態である送電網の擾乱時、また、発電装置100が要求された無効電流を各単一相に供給する場合、有効電流も各信号相において変換器の限界まで上昇する可能性がある(したがって電圧と総電流(有効電流+無効電流)との間の位相角が低減する)。
【0066】
1つの実施形態によれば、変換器によって供給することができる電力は所定量に制限されている。幾つかのタイプの変換器に関しては、有効電流および無効電流の合計がこの量を下回っていなければならず、したがって低い方を有効電流とし、高い方を無効電流とすることができる。しかしながら、変換器の設計によって制限が課せられ、この制限は変換器のタイプおよび設計に応じて広範に変化することが考えられる。
【0067】
1つの実施形態によれば、発電装置100は電圧制御下で電圧デッドバンド内で動作し、このことは、電圧を一定の値、少なくとも所定の限界内、例えば所定の電圧範囲の境界内に維持するために、各相における力率がその相における電圧に依存して変更されることを意味する。1つまたは複数の相の電圧が所定の電圧範囲から外れると(上限または下限を超えると)、力率が送電網における各相の電圧に依存して変更される。1つの実施形態によれば、無効電流がデッドバンド内および/またはデッドバンド外の所定の勾配に従い、個別コントローラ116a,116b,116cによって変更される。以下の記載においては、デッドバンド内の所定の無効電流勾配をインバンド勾配と表記し、デッドバンド外の所定の無効電流勾配をアウトオブバンド勾配と表記する。1つの実施形態によれば、インバンド勾配とアウトオブバンド勾配は異なる。
【0068】
1つの実施形態によれば、変換器122a,122b,122cの出力側126a,126b,126cにおいて供給される無効電流は変換器の定格電流に制限される。電圧信号120a,120b,120cによって表される電圧がデッドバンドから外れると(上限または下限を超えると)、無効電流は所定のアウトオブバンド勾配に従う。1つの実施形態によれば、デッドバンドの境界における無効電流に関する初期値は0アンペアである。このことは、この実施形態においては、デッドバンド外のアウトオブバンド勾配にしたがった無効電流制御のために、無効電流がデッドバンド内の以前の値から所定の所期値に跳躍的に変化することを意味する。この点に関して、デッドバンド内の以前の値はデッドバンド内の電圧制御に応じて設定されている。
【0069】
インバンド勾配、アウトオブバンド勾配および上述の制御信号の設定などの動作パラメータを、それぞれのコントローラ116a,116b,116cのメモリ136a,136b,136cに記憶することができる。メモリ136a,136b,136cにおけるそれぞれの設定を少なくとも部分的に固定的に記憶することができる、および/または、例えば発電装置コントローラ128によって変更することができる。1つの実施形態によれば、電力装置コントローラ128はそれぞれの設定を、実際の特性、例えば送電網のインピーダンスに依存して、継続的に更新することができる。送電網(グリッド網)のインピーダンスを、短い期間にわたる無効電力を所期のように供給し、また送電網の関連するパラメータを測定することによって求めることができる。
【0070】
その他の実施形態によれば、電力装置コントローラ128によるそれぞれの設定の更新を手動で開始することができる。
【0071】
図2A、図2Bおよび図2Cはそれぞれ、3つの相110a,110b,110cに関する、図1の電力装置の電圧および無効電流の時間tにわたる経過を示す。
【0072】
図2Aにおいて、第1の相110aの電圧V1はレベルU1にある。t=t1の時点において、擾乱が発生し、電圧V1が所定の電圧範囲ΔUb内にあるレベルU1から、所定の電圧範囲ΔUb外にあるレベルU2に低下する。相110aにおける電圧降下に応答して、変換装置102、また殊に、第1の相110aの個別コントローラ116aは第1の相110aの無効電流RC1をレベルゼロ(0)からレベルI1に上昇させ、このレベルI1は、アウトオブバンド勾配の実測値と、所定の電圧範囲の境界における無効電流の所定の実測値にしたがいコントローラ116aによって決定される。t=t2の時点において、電圧V1は再び所定の電圧範囲ΔUb内に戻り、無効電流RC1は変換装置102によって0に設定される。
【0073】
図2Bにおいて、第2の相110bの電圧V2は時点t1において、所定の電圧範囲内にあるレベルU3から、所定の電圧範囲外にあるレベルU4に降下する(図2Bにおいて、所定の電圧範囲は示していない)。この電圧降下に応答して、変換装置102は第2の相110bの無効電流RC2をレベルI2まで上昇させる。t=t2の時点において、電圧V2は再び所定の電圧範囲内に戻り、無効電流RC2は変換装置102によって0に設定される。
【0074】
第3の相110cにおいては、電圧V3は考察する期間全体にわたり、所定の電圧範囲(図3においては図示せず)内でレベルU5に留まる。したがって、相が別個に制御されることに起因して、無効電流RC3は第3の相110cに関して0に維持される。その他の実施形態によれば、電圧信号によって表される電圧が所定の電圧範囲内にある場合、無効電流RC3は0とは異なる値を取る。
【0075】
図3は、本発明の実施形態による無効電流のインバンド制御およびアウトオブバンド制御を概略的に示したものである。個々の相において変換装置によって供給される電圧を制御するために、無効電流の代わりに、その他の任意の無効成分を考慮できるものと解するべきである。
【0076】
図3は、第1の相110aの無効電流RC1に関するアウトオブバンド勾配150a,150bを示し、このアウトオブバンド勾配150a,150bによって、図1の電圧信号120aによって表される電圧V1の単位変化当りの無効電流における変化の量が求められる。無効電流RC1および電圧V1に関するインバンド勾配は図3において参照番号152でもって表されている。無効電流RC1の正の値は図3において参照符号pvでもって表されており、負の値は図3において参照符号nvでもって表されている。さらに図3においては、所定の電圧範囲ΔUbがこの所定の電圧範囲の下側の境界154と上側の境界156と共に示されている。1つの実施形態によれば、所定の電圧範囲ΔUbの幅157は電圧V1の定格値の5%である。別の実施形態によれば、幅157を、定格電圧の0%〜20%の範囲で任意の値に設定することができる。別の実施形態によれば、別の値も考えられる。
【0077】
1つの実施形態によれば、インバンド勾配152は原点158からのオフセットを有している。原点158は電圧V1=定格電圧+無効電流RC1=0によって規定されている。インバンド勾配のオフセット159は、定格電圧における勾配曲線152の無効電流I0として規定されている。
【0078】
1つの実施形態においては、インバンド勾配152の実測値とアウトオブバンド勾配150a,150bの実測値は異なる。1つの実施形態によれば、インバンド勾配152およびアウトオブバンド勾配150a,150bのうちの少なくとも1つに関する値は一時的に固定される。別の1つの実施形態によれば、インバンド勾配152およびアウトオブバンド勾配150a,150bのうちの少なくとも1つに関する値を、例えば図1に示した発電装置コントローラ128からのそれぞれの勾配制御信号によって変更することができる。1つの実施形態によれば、アウトオブバンド勾配を、図3において参照番号160によって表されている所定の勾配間隔内、例えば1%〜4%の範囲内で変更することができる。この場合、例えばx%の勾配は、電圧V1の検出された1%の変化に関してx%だけ変更されるべき無効電流RC1を規定する。第1の相110aの無効電流および電圧はここでは説明を目的として参照したに過ぎないと解されるべきである。
【0079】
同様に、インバンド勾配152を規定することができ、また同一の勾配間隔内の値または異なる勾配間隔内の値に設定することができる。
【0080】
本発明の実施形態によれば、発電装置または変換装置のあらゆる適切なコンポーネント、例えば個別コントローラが、本明細書において説明したそれぞれの構成要素の機能をプロセッサによって実行させるコンピュータプログラム製品の形態でそれぞれ提供される。別の実施形態によれば、発電装置または変換装置のあらゆるコンポーネント、例えば個別コントローラをハードウェアの形態で提供することができる。他の(組み合わされた)実施形態によれば、幾つかのコンポーネントをソフトウェアの形態で提供し、その他のコンポーネントをハードウェアの形態で提供することができる。
【0081】
本発明の実施形態によって提供される機能を、ソフトウェアまたはファームウェアの更新などによって、既存の変換装置または既存の発電装置コントローラに組み込むことができる。
【0082】
本明細書において、「〜を含む」という表記はそれ以外の要素またはステップを含むことを除外するものではなく、また「1つの」という表記はその要素が複数個設けられることを除外するものではないことを言及しておく。異なる実施形態に関連させて説明した構成要素を組み合わせることもできる。また、特許請求の範囲の記載にされている参照番号は請求の範囲を制限するものではないことを言及しておく。
【0083】
上記において説明した本発明の実施形態を要約すると、以下のようになる:
例えば、風力タービンのようは発電装置における電力変換用の変換装置が提供される。個別コントローラが変換装置の出力の各相に対して提供される。1つの相の電圧が所定の電圧範囲から外れていることが表されると、この相の有効電流は0に設定され、また選択的に、この相の無効成分は表された電圧に依存する値に設定される。
【0084】
1つの実施形態によれば、変換装置は電気的な入力を電気的な出力に変換するよう構成されている。別の1つの実施形態によれば、変換装置は機械的な入力を電気的な出力に変換するよう構成されている。
【0085】
1つの実施形態によれば、個別コントローラのうちの少なくとも1つは、自身の相の無効成分をその他の相の無効成分に依存して設定または変更するよう構成されている。例えば、1つの実施形態によれば、個別コントローラの内の少なくとも1つを、信号の選択が行われないこと、または上述のセレクタ信号を受信しなかったことに応答して、そのコントローラの相の無効成分をその他の相の無効成分に依存して変更するよう構成することができる。そのような実施形態によって、電気的な出力の相の個別の独立した制御と、低い中性線電流との間の良好な妥協案を選択することができる。
【0086】
別の1つの実施形態によれば、電気的な出力はn個の複数の相を有し、また変換装置はn個の複数の個別コントローラを有し、個別コントローラはそれぞれ、セレクタ信号に応答して、自身の相の無効成分を自身の相の電圧信号には依存するが、その他の相の電圧信号には依存せずに変更するよう構成されている。付加的に、もしくは択一的に、個別コントローラを、セレクタ信号に応答して、自身の相の無効成分を自身の相の電圧信号には依存するが、その他の相の電流には依存せずに変更するよう構成することができる。
【0087】
本発明の実施形態によれば、殊に非対称的な障害の場合には、障害のある相においてのみ電圧のサポートが行われる。したがって送電網の安定性がサポートされる。何故ならば、全ての相に無効電流が供給されているので、障害の無い電圧が上限を超えることはないからである。さらに本発明の実施形態によれば、幾つかの実施においては複数の要求が各相において満たされているので、需要に応じた電圧のより正確なサポートが実現される。
【0088】
各信号相が制御されるので、要求される無効電流を提供するための応答時間を従来に比べて短縮することができる。
【0089】
変換器の負荷、したがって変換装置の負荷は、供給される無効電流の全電位の使用に限定される。さらに、複数の実施形態によれば、殊に電圧ディップの深さを求めるために短時間しか要しない送電網(グリッド)の障害の開始点中に応答時間を実現することができる。
【0090】
発電装置が要求された無効電流を供給した後の有効電流の供給は、例えば風力発電装置の場合、風力タービンの機械的な負荷を低減する。
【0091】
さらに、送電網(グリッド)の安定性が有効電流の供給によってサポートされる。
【0092】
本発明の実施形態によって、発電装置のより安定した送電網運転が実現される。電圧はより安定し、したがって殊に風速が変化している間の送電網における影響は低減されるか、それどころか最小化される。コレクタグリッドまたはケーブルまた変換器における通常の幾つかの無効電力消費部を補償するために、電圧設定点を定格電圧よりも(僅かに)高い値に設定することができる。これによって発電装置における損失を低減することができる。さらに、変換ステーションにおけるタブ切換器の切換動作も低減される。これによってタブ切換器の寿命も延びる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力(106)を、少なくとも2つの相(110a,110b,110c)を有する電気的な出力(108)に変換する変換装置(102)において、
該変換装置(102)は、
前記少なくとも2つの相(110a,110b,110c)の各相に関して、それぞれの相の電圧を表す電圧信号(120a,120b,120c)を受信する電圧入力側(118a,118b,118c)と、
前記少なくとも2つの相(110a,110b,110c)の各相に対する個別のコントローラ(116a,116b,116c)とを有し、各コントローラ(116a,116b,116c)は、それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲から外れると、有効電流を0に設定するよう構成されていることを特徴とする、変換装置(102)。
【請求項2】
前記個別のコントローラはそれぞれ、自身の相の無効成分を、自身の相に対応する電圧信号(120a,120b,120c)に依存して設定するよう構成されている、請求項1記載の変換装置(102)。
【請求項3】
前記電気的な出力(108)は、複数のn個の相(110a,110b,110c)を有し、
前記変換装置(102)は、複数のn個の前記個別のコントローラを有し、
前記n個の個別のコントローラの中からn−1個の個別のコントローラを選択し、n−1個の選択された個別のコントローラに対してセレクタ信号を出力するよう構成されているセレクタを有し、
前記個別のコントローラの少なくとも1つは、前記セレクタ信号に応答して、自身の相の無効成分を、自身の相の電圧信号(120a,120b,120c)には依存するが、その他の相の電圧信号(120a,120b,120c)には依存せずに設定するよう構成されている、請求項2記載の変換装置(102)。
【請求項4】
少なくとも1つの個別のコントローラ(116a,116b,116c)は、少なくとも前記セレクタ信号を受信しないことに応答して、自身の相の無効成分を、その他の相(110a,110b,110c)の無効成分に依存して設定するよう構成されている、請求項3記載の変換装置(102)。
【請求項5】
前記電気的な出力(108)は、複数のn個の相(110a,110b,110c)を有し、
前記変換装置(102)は、複数のn個の前記個別のコントローラを有し、
前記個別のコントローラはそれぞれ、前記セレクタ信号に応答して、自身の相の無効成分を、自身の相の電圧信号(120a,120b,120c)には依存するが、その他の相の電圧信号(120a,120b,120c)には依存せずに設定するよう構成されている、請求項2記載の変換装置(102)。
【請求項6】
前記個別のコントローラのうちの少なくとも1つの個別コントローラは、電圧信号(120a,120b,120c)によって表される電圧の変化の電圧単位毎の無効成分の所定の変更を実施するよう構成されており、前記電圧単位毎の無効成分の所定の変更は無効成分勾配を規定し、
前記少なくとも1つの個別コントローラ(116a,116b,116c)は、電圧信号(120a,120b,120c)によって表される電圧が所定の電圧範囲内にある場合には、インバンド無効成分勾配にしたがい自身の相の無効成分を制御し、電圧信号(120a,120b,120c)によって表される電圧が所定の電圧範囲外にある場合には、アウトオブバンド無効成分勾配にしたがい自身の相の無効成分を制御するよう構成されており、
インバンド無効成分勾配はアウトオブバンド勾配とは異なる、請求項1から5までのいずれか1項記載の変換装置(102)。
【請求項7】
少なくとも1つの個別のコントローラ(116a,116b,116c)は、前記所定の電圧範囲の境界において無効成分を段階的に変更するよう構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の変換装置(102)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の変換装置(102)を有することを特徴とする、発電装置。
【請求項9】
変換装置(102)の個別のコントローラにおいて無効成分勾配を設定するために、変換装置(102)の個別のコントローラに制御信号を供給する発電装置コントローラをさらに有する、請求項8記載の発電装置。
【請求項10】
入力(106)を、少なくとも2つの相(110a,110b,110c)を有する電気的な出力(108)に変換する方法において、
該方法は、
前記少なくとも2つの相(110a,110b,110c)の各相に関して、それぞれの相の電圧を表す電圧信号(120a,120b,120c)を受信するステップと、
それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲から外れると、前記少なくとも2つの相(110a,110b,110c)の各相の有効電流を0に設定するステップとを有することを特徴とする、方法。
【請求項11】
発電装置コントローラ(128)の作動方法において、
該方法は、
入力(106)を電気的な出力(108)に変換するよう構成されている変換装置(102)のコントローラ(116a,116b,116c)に制御信号を供給するステップと、
それぞれの相の電圧が所定の電圧範囲外にある場合に、少なくとも1つの相の無効成分を制御するために変換装置(102)によって使用される無効成分勾配を変換装置(102)に設定するよう制御信号を構成するステップとを有することを特徴とする、方法。
【請求項12】
コンピュータ読み取り可能媒体において、
該コンピュータ読み取り可能媒体には、変換装置(102)において少なくとも2つの相(110a,110b,110c)の各相の有効電流を設定するためのコンピュータプログラムが記憶されており、該コンピュータプログラムは、データプロセッサによって実行される場合に、請求項10記載の方法を制御または実行するよう適合されていることを特徴とする、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項13】
プログラム要素において、
該プログラム要素は、変換装置(102)の電気的な出力(108)の少なくとも2つの相(110a,110b,110c)の各相の有効電流を設定するよう構成されており、かつ、データプロセッサによって実行される場合に、請求項10記載の方法を制御または実行するよう適合されていることを特徴とする、プログラム要素。
【請求項14】
コンピュータ読み取り可能媒体において、
該コンピュータ読み取り可能媒体には、変換装置(102)の少なくとも1つの相に関する無効成分勾配を設定するためのコンピュータプログラムが記憶されており、該コンピュータプログラムは、データプロセッサによって実行される場合に、請求項11記載の方法を制御または実行するよう適合されていることを特徴とする、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項15】
プログラム要素において、
該プログラム要素は、変換装置(102)の少なくとも1つの相に関する無効成分勾配を設定するよう構成されており、かつ、データプロセッサによって実行される場合に、請求項11記載の方法を制御または実行するよう適合されていることを特徴とする、プログラム要素。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−147336(P2011−147336A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6403(P2011−6403)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】