説明

電力供給システム

【課題】停電時に電源のバックアップが必要な負荷が増えた場合でも、優先度が高い負荷の電源をより長い時間バックアップできる低コストの電力供給システムを提供する。
【解決手段】電力供給システムは、複数の負荷機器Ak,Bm,Cnと、それぞれ優先度が設定されるとともに、負荷機器Ak,Bm,Cnが接続された複数の電力供給線La,Lb,Lcと、商用交流電源ACの停電時にバックアップが可能な二次電池4を備えて電力供給線La,Lb,Lcに電力を供給する直流電力供給部2と、優先度が最も高い電力供給線La以外の電力供給線Lb,Lcについて優先度に応じた停電補償時間が設定された優先度記憶部7と、停電時に二次電池4からの給電を開始させ、停電発生時から停電補償時間が経過すると電力供給線Lb,Lcへの電力供給を停止させるとともに、電力供給線Laには二次電池4の残容量がなくなるまで電力を供給させるCPU10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗、オフィスなどの建築物に配置された負荷機器への給電に際して、商用交流電源のような主電源とは別に、主電源の停電時などに電源供給のバックアップを行う二次電池を設けた電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電力供給システムは、商用電源のような主電源の停電時に、二次電池の電力を用いて電源のバックアップを行うように構成されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、電源のバックアップを行う給電制御装置から電源を供給する電力線に出力側開閉器を介して負荷を接続した構成であって、負荷ごとに設けた出力側開閉器のオンオフを信号により制御する技術が記載されている。また、交流電源が停電すると、予め登録されたバックアップ対象の負荷のみに電力が供給されるよう、出力側開閉器のオンオフを制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−135541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停電時における電源のバックアップについては、従来からの防災・防犯などのセキュリティ機器に加えて、ADSLやFTTHを利用したIP電話の普及に伴いIP電話用の通信機器の電源をバックアップすることが要望されている。また停電時の安全を確保する観点から、階段照明についても電源をバックアップしたいという要望がある。
【0005】
このように停電時にバックアップしたい負荷が増えた場合、特許文献1に開示された給電システムでは、バックアップ対象の負荷に対応した出力側開閉器が停電時にオンされ、対象の負荷全てに電力が供給されるので、バックアップ用の二次電池に大容量のものを用意する必要があり、電力供給システムの大型化やコスト増を招くという問題があった。
【0006】
また停電時においてセキュリティ機器には優先的に電力を供給し、できるだけ長い時間動作させることが望ましいが、IP電話用の通信機器の場合は停電発生を知らせるためや安否確認のために通話を行う間だけ電力供給を行えればよいし、照明器具の場合は懐中電灯や蝋燭、ランタンなどの代替照明を用意する間だけ電力供給を行えればよい。しかしながら、特許文献1の給電システムでは、停電発生時にバックアップ対象の負荷全てに電力が供給されるため、IP電話用の通信機器や照明器具のように電源のバックアップが短時間でよい負荷機器にも電源が必要以上に長い時間供給されてしまい、それによってバックアップ用の二次電池が消耗することになるから、長時間に亘って電源をバックアップしたいセキュリティ機器については、バックアップの可能な時間が短くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、停電時に電源のバックアップが必要な負荷が増えた場合でも、優先度が高い負荷の電源をより長い時間バックアップできる低コストの電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の負荷機器と、それぞれ優先度が設定されるとともに1乃至複数の負荷機器が接続された複数の電力供給線と、主電源の停電時にバックアップが可能な二次電池を備えて複数の電力供給線に電力を供給する電力供給手段と、主電源の停止を検出する停電検出手段と、停電発生時からの経過時間を計時する計時手段と、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線について優先度に応じた停電補償時間を設定する停電補償時間設定手段と、停電発生時から停電補償時間設定手段に設定された停電補償時間が経過すると、当該停電補償時間に対応する電力供給線への電力供給を停止させるとともに、優先度が最も高い電力供給線には二次電池の残容量がなくなるまで電力を供給させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、複数の電力供給線の各々に、優先度を設定する優先度設定手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、停電補償時間設定手段が、優先度に応じた停電補償時間を可変に設定可能な手段からなることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、二次電池の残容量を監視する電池残量監視手段と、各々の電力供給線毎に電気消費量を監視する電気消費量監視手段と、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線の電気消費量および停電補償時間に基づいて当該電力供給線に停電補償時間だけ給電する場合に必要な電池容量を計算し、この計算結果と二次電池の残容量とをもとに優先度が最も高い電力供給線に対して二次電池から給電が可能な給電時間を求める給電時間演算手段と、給電時間の演算結果を報知する給電時間報知手段とを備えたことを特徴とする。ここにおいて、電気消費量監視手段により監視される電気消費量としては、例えば電力供給線毎の消費電力や、電力供給線毎の消費電流などがある。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、停電補償時間設定手段には、優先度が最も高い電力供給線以外の低優先度の電力供給線について、優先度に応じて停電補償時間を延長する給電延長時間が設定されており、制御手段は、停電発生時から低優先度の電力供給線に設定された停電補償時間が経過するまでの所定の判定時点において、二次電池の残容量が所定閾値以上であれば当該電力供給線への給電を給電延長時間まで延長し、二次電池の残容量が所定閾値未満であれば当該電力供給線への給電を停止させることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか1つのの発明において、停電発生時から停電補償時間が経過する時点よりも所定時間前に、電力供給線への給電を停止することを事前に報知する停止報知手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、各々の電力供給線に優先度が設定されており、制御手段は、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線に対して、その優先度に応じた停電補償時間が経過すると二次電池からの電力供給を停止させているので、バックアップ対象の負荷機器の台数が増加した場合でも、優先度が相対的に低い電力供給線に対して必要以上に長い時間二次電池から電力が供給されることがなく、二次電池の消耗を抑制することができる。しかも、制御手段は、優先度が最も高い電力供給線に対して、二次電池の残容量がなくなるまで電力を供給しており、優先度が相対的に低い電力供給線への給電時間を短くして二次電池の消耗を抑制することで、二次電池に大容量のものを使用しなくても、優先度が最も高い電力供給線に接続された負荷機器に対して、より長い時間電力を供給可能な低コストの電力供給システムを実現できるという効果がある。
【0015】
請求項2の発明によれば、優先度設定手段を用いて各々の電力供給線に優先度を設定することによって、各電力供給線に接続される負荷機器の停電補償時間が決定されるので、電源のバックアップが必要な負荷機器の台数が増加した場合でも、個々の負荷機器毎に優先度を設定する場合に比べて、設定の手間が少なくて済むという効果がある。
【0016】
請求項3の発明によれば、停電補償時間設定手段を用いて優先度に応じた停電補償時間を可変設定することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線について、その電気消費量および停電補償時間に基づいて、当該電力供給線に停電補償時間給電する場合に必要な電池容量を計算するとともに、必要な電池容量の計算結果と二次電池の残容量とをもとに優先度が最も高い電力供給線に給電が可能な給電時間を求め、その演算結果を報知しているので、最も優先度が高い電力供給線にどの程度の時間給電が可能かをユーザが把握することができ、安心感が増すという効果がある。また優先度に応じた停電補償時間が変更可変な場合に、給電時間の報知内容を受けて優先度が最も高い電力供給線への給電時間が短いとユーザが感じた場合は、ユーザが優先度の低い電力供給線の停電補償時間を短くすることによって、優先度の最も高い電力供給線への給電時間を延ばすことができる。また更に、給電時間の報知内容を受けて優先度が最も高い電力供給線への給電時間が十分長いとユーザが感じた場合は、ユーザが優先度の低い電力供給線の停電補償時間を長くすることで、優先度の最も高い電力供給線への給電時間は短くなるものの、優先度が低い他の電力供給線への給電時間を延ばすことができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、停電発生時から停電補償時間が経過するまでの間の所定の判定時点において二次電池の残容量が所定閾値以上あり、二次電池の残容量に余裕がある場合、制御手段は、さらに給電延長時間が経過するまで二次電池からの電源供給を継続させているので、優先度が低い電力供給線に接続される負荷機器への給電時間を延ばすことができる。一方、上記判定時点において二次電池の残容量が所定閾値未満となっており、二次電池の残容量に余裕が無い場合、制御手段は、電力供給線への給電時間を延長しないので、二次電池の消耗を抑えて、優先度が最も高い電力供給線に接続された負荷機器に対して、より長い時間給電することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、停止報知手段により、電力供給線への給電が停止されることを所定時間前に把握することができるから、電力供給線への電源バックアップの停止に予め備えておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1の電力供給システムの概略構成図である。
【図2】同上の動作を説明するフローチャートである。
【図3】実施形態2の電力供給システムの概略構成図である。
【図4】実施形態3の電力供給システムの概略構成図である。
【図5】実施形態4の電力供給システムの概略構成図である。
【図6】実施形態5の電力供給システムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】(a)(b)は実施形態6の電力供給システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
本発明に係る電力供給システムの実施形態1を図1及び図2に基づいて説明する。図1は本実施形態のシステム構成図であり、この電力供給システムは、停電時における電源バックアップの優先度が異なる複数種類の負荷機器Ak(k=1,2…),Bm(m=1,2…),Cn(n=1,2…)と、それぞれ1乃至複数の負荷機器Ak,Bm,Cnが接続された複数の電力供給線La,Lb,Lcと、各電力供給線La,Lb,Lcに対して電力供給を行う電力供給装置1とを備えている。ここにおいて、電力供給線Laには防災・防犯のためのセキュリティ機器からなる負荷機器Akが、電力供給線LbにはIP電話機のような負荷機器Bmが、電力供給線Lcには照明器具のような負荷機器Cnがそれぞれ接続されており、電力供給線La,Lb,Lcの優先度はLc<Lb<Laの順番に高くなっている。尚、本実施形態ではそれぞれ異なる優先度が設定された3本の電力供給線La,Lb,Lcにそれぞれ複数台の負荷機器Ak,Bm,Cnが接続されているが、負荷機器Ak,Bm,Cnの台数や電力供給線La,Lb,Lcの数は上記の形態に限定されるものではなく、電力供給線La,Lb,Lcの優先度も負荷機器の種類に応じて複数段階に設定されていればよい。
【0023】
電力供給装置1は、電力供給線La,Lb,Lcに対して直流電源を供給する直流電力供給部2(電力供給手段)を備えている。この直流電力供給部2は、主電源である商用交流電源ACの通電時に商用交流電源ACを整流、平滑して得た直流電源を各々の電力供給線La,Lb,Lcに供給するとともに二次電池4を充電するAC/DCコンバータ3と、商用交流電源ACの通電時にAC/DCコンバータ3によって充電されるとともに、商用交流電源ACの停電時にダイオードD1を介して各電力供給線La,Lb,Lcに電力を供給する二次電池4とで構成される。なお、二次電池4からの放電電流は電力供給線La〜Lc側に流れ、AC/DCコンバータ3側には逆流しないように、回路が形成されている。
【0024】
また電力供給装置1は、商用交流電源ACの電源電圧を監視することによって停電を検出する停電検出部5と、現在時刻を計時するRTC(Real Time Clock)6と、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線について優先度に応じて設定された停電補償時間を記憶する優先度記憶部7と、RTC6のクロック信号をCPU10が計数することによって求められた停電発生時からの経過時間を記憶する停電経過時間記憶部8と、直流電力供給部2の出力端と各電力供給線La,Lb,Lcとの間にそれぞれ接続されたリレーRa,Rb,Rcと、リレーRa,Rb,Rcを開閉駆動するリレー駆動部9と、商用交流電源ACの通電時および停電時に各電力供給線La,Lb,Lcへの電力供給を制御するCPU10(制御手段)とを備えている。
【0025】
下記の表1は優先度記憶部7に予め記憶された電力供給線毎の停電補償時間を示している。優先度が最も高い電力供給線La以外の電力供給線Lb,Lcについては、優先度に応じた停電補償時間が設定されており、優先度が2番目に高い電力供給線Lbの停電補償時間は例えば30分に設定されている。また、優先度が最も高い電力供給線Laについては、停電補償時間として、二次電池4から給電可能な最長の時間よりも長い時間(例えばFFF)が設定されているので、二次電池4の残容量がなくなるまで給電が続けられる。また更に、優先度が最も低い電力供給線Lcについては、停電補償時間がゼロに設定されており、停電時に給電を行わないようになっている。ここにおいて、優先度に応じた停電補償時間が予め登録された優先度記憶部7により、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線について優先度に応じた停電補償時間を設定する停電補償時間設定手段が構成される。
【0026】
【表1】

【0027】
ここで、本システムの制御動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。CPU10は、所定の制御間隔が経過する毎に制御プログラムを実行しており、制御プログラムを開始すると、CPU10は停電検出部5の検出結果から停電中か否かを判定する(S1)。停電中でなければ(つまり商用交流電源ACの通電中であれば)、CPU10は、停電経過時間記憶部8に記憶された経過時間のデータをクリアした後(S2)、リレーRa,Rb,Rcを全てオンさせる閉極制御信号をリレー駆動部9に出力して、リレー駆動部9に全てのリレーRa,Rb,Rcをオンさせており、AC/DCコンバータ3から出力される直流電圧がリレーRa,Rb,Rcを介して各々の電力供給線La,Lb,Lcに接続された負荷機器Ak,Bm,Cnへ供給される(S3)。またこの時、CPU10は、二次電池4の充電電圧と所定のしきい値電圧との高低を比較することによって、二次電池4が満充電か否かの判定を行っており(S4)、二次電池4が満充電になっていなければ、AC/DCコンバータ3により二次電池4を充電させた後(S5)、制御プログラムを終了する。またS4の判定で二次電池4が満充電であると判定されれば、CPU10は、AC/DCコンバータ3による二次電池4の充電を停止させた後(S6)、制御プログラムを終了する。
【0028】
一方、停電検出部5が商用交流電源ACの停電を検出して停電検出信号をCPU10に出力すると、CPU10は、RTC6から入力されるクロック信号の計数処理を開始することによって、停電発生時からの経過時間を計時するとともに、計時結果を停電経過時間記憶部8に記憶させている。ここにおいて、RTC6とそのクロック信号をカウントするCPU10とで、停電発生時からの経過時間を計時する計時手段が構成される。
【0029】
そして、S1の判定で商用交流電源ACが停電中であると判定された場合、CPU10は、停電発生時からの経過時間を停電経過時間記憶部8から読み込むとともに(S7)、各電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を優先度記憶部7から読み込む(S8)。
【0030】
次にCPU10は、停電発生時からの経過時間が電力供給線Lcの停電補償時間を超えているか否かの判定を行い(S9)、経過時間が停電補償時間を超えていれば、電力供給線Lcに接続されたリレーRcを開極させる開極制御信号をリレー駆動部9に出力し、リレー駆動部9にリレーRcを開極させることによって、電力供給線Lcへの給電を遮断する(S10)。なお電力供給線Laの停電補償時間はゼロに設定されているので、経過時間がゼロより大きくなれば、リレーRcが開極されることになり、電力供給線Laに接続された負荷機器Cnに対しては停電時の電源バックアップは行われない。
【0031】
その後CPU10は、停電発生時からの経過時間が電力供給線Lbの停電補償時間を超えているか否かの判定を行い(S11)、経過時間が停電補償時間を超えていなければ、CPU10は、電力供給線Lbに接続されたリレーRbを閉極したままにして、電力供給線Lbに接続された負荷機器Bmへの電力供給を継続させる。またS9の判定で停電発生時からの経過時間が停電補償時間を超えていれば、CPU10は、リレーRbを開極させる開極制御信号をリレー駆動部9に出力し、リレー駆動部9にリレーRbを開極させることによって、電力供給線Lbへの給電を遮断する(S12)。ここで、電力供給線Lbの停電補償時間は30分に設定されているので、停電発生時から30分が経過するまでは、電力供給線Lbに接続された負荷機器Bmに対して二次電池4側から電力が供給され、停電発生時から30分が経過した後は二次電池4側から電力供給線Lbへの電源供給が停止される。
【0032】
その後さらにCPU10は、停電発生時からの経過時間が電力供給線Laの停電補償時間を超えているか否かの判定を行い(S13)、経過時間が停電補償時間を超えていなければ、CPU10は、電力供給線Laに接続されたリレーRaを閉極したままにして、電力供給線Laに接続された負荷機器Bmへの電力供給を継続させる。またS13の判定で停電発生時からの経過時間が停電補償時間を超えていれば、CPU10は、リレーRaを開極させる開極制御信号をリレー駆動部9に出力し、リレー駆動部9によってリレーRaを開極させる。ただし、電力供給線Laの停電補償時間は、二次電池4から電源供給が可能な最長の時間よりも長い時間に設定されているので、実際には停電時からの経過時間が電力供給線Laの停電補償時間を超えることはなく、電力供給線Laには二次電池4の残容量がなくなるまで給電が続けられる。
【0033】
以上のように本実施形態の電力供給システムでは、各々の電力供給線La,Lb,Lcに優先度が設定されるとともに、優先度記憶部7には優先度に応じた停電補償時間が設定されており、制御手段としてのCPU10は、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線に対して、その優先度に応じた停電補償時間が経過すると二次電池4からの電力供給を停止させているので、バックアップ対象の負荷の台数が増加した場合でも、優先度が相対的に低い電力供給線に対して必要以上に長い時間二次電池4から電力が供給されることがなく、二次電池の消耗を抑制することができる。しかも、制御手段としてのCPU10は、優先度が最も高い電力供給線に対して、二次電池4の残容量がなくなるまで電力を供給しており、優先度が相対的に低い電力供給線への給電時間を短くして二次電池4の消耗を抑制することで、二次電池4に大容量のものを使用しなくても、優先度が最も高い電力供給線に接続された負荷に対して、より長い時間電力を供給可能な低コストの電力供給システムを実現することができる。
【0034】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図3に基づいて説明する。図3は本実施形態の概略的なシステム構成図である。上述の実施形態1では、優先度記憶部7に、各々の電力供給線La,Lb,Lcについてその優先度に応じた停電補償時間が設定されているのに対して、本実施形態では、各電力供給線La,Lb,Lcの優先度をそれぞれ設定する例えば2ビットのディップスイッチSa,Sb,Scを備えるとともに、優先度と停電補償時間の対応関係を示すテーブル(表2参照)が停電補償時間設定手段としての優先度記憶部7に予め登録されており、CPU10が、ディップスイッチSa,Sb,Scの設定値をもとに、優先度記憶部7に登録されたテーブルを参照して、各々の電力供給線La,Lb,Lcに設定された停電補償時間を求めている。尚、ディップスイッチSa,Sb,Scと優先度記憶部7以外の構成およびシステムの動作は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0035】
【表2】

【0036】
ディップスイッチSa,Sb,Scは、電力供給装置1において、電力供給線La,Lb,Lcが引き出される出線部Pa,Pb,Pcの近傍に取り付けられており、ディップスイッチSa,Sb,Scを用いて、各々の電力供給線La,Lb,Lc毎に優先度を設定することができる。したがって、レイアウト変更や負荷機器の優先度の変更などによって、各電力供給線La,Lb,Lcに接続される負荷機器Ak,Bm,Cnの優先度を変更したい場合には、ディップスイッチSa、Sb,Scの設定を変更することで、電力供給線La,Lb,Lcの優先度を容易に変更することができる。
【0037】
本システムの動作は、実施形態1で説明した図2のフローチャートと同様であり、実施形態1ではS8の処理でCPU10が優先度記憶部7から各電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を読み取っているのに対して、本実施形態ではS8の処理で、CPU10がディップスイッチSa,Sb,Scの設定値を読み込むとともに、優先度記憶部7に登録されたテーブルを参照し、各々の電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を求めている。ここで、ディップスイッチSaの値が「11」であれば、電力供給線Laの停電補償時間はFFF、ディップスイッチSbの値が「01」であれば、電力供給線Lbの停電補償時間は30分、ディップスイッチScの値が「00」であれば、電力供給線Lcの停電補償時間は0分となる。尚、S8の処理以外は実施形態1で説明した動作と同じであるから、その説明は省略する。
【0038】
上述のように本実施形態では、優先度設定手段としてのディップスイッチSa,Sb,Scを用いて各々の電力供給線La,Lb,Lcに優先度を設定することによって、各電力供給線La,Lb,Lcに接続される負荷機器Ak,Bm,Cnの停電補償時間が決定されるので、電源のバックアップが必要な負荷機器の台数が増加した場合でも、個々の負荷機器毎に優先度を設定する場合に比べて、設定の手間が少なくて済むという効果がある。
【0039】
なお、本実施形態ではディップスイッチSa,Sb,Scにより各電力供給線La,Lb,Lcの優先度を設定する優先度設定手段を実現しているが、ディップスイッチ以外のロータリスイッチやジャンパスイッチなどで優先度設定手段を構成してもよい。
【0040】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図4に基づいて説明する。図4は本実施形態の概略的なシステム構成図である。上述の実施形態1では、優先度記憶部7に、各々の電力供給線La,Lb,Lcについてその優先度に応じた停電補償時間が設定されているのに対して、本実施形態では、各々の電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を直接設定するディップスイッチSa,Sb,Scを備えている。尚、優先度記憶部7の代わりにディップスイッチSa,Sb,Scを備えた点以外は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
ディップスイッチSa,Sb,Scは例えば5ビットのディップスイッチからなり、電力供給装置1において、対応する電力供給線La,Lb,Lcが引き出される出線部Pa,Pb,Pcの近傍に取り付けられており、ディップスイッチSa,Sb,Scを用いて、各々の電力供給線La,Lb,Lc毎に停電補償時間を直接設定することができる。したがって、レイアウト変更や負荷機器の優先度の変更などによって、各電力供給線La,Lb,Lcに接続される負荷機器Ak,Bm,Cnの停電補償時間を変更したい場合でも、ディップスイッチSa、Sb,Scの設定を変更することで、電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を容易に変更することができる。ここにおいて、下記の表3はディップスイッチSa、Sb,Scの設定値と停電補償時間との対応関係を示しており、ビット数削減のためにディップスイッチの設定値を5倍した値(分)が停電補償時間に設定される。また、ディップスイッチの設定値が最大値(11111)の場合には、停電補償時間が、二次電池4から給電可能な最長の時間よりも長い時間(例えばFFF)に設定される。
【0042】
【表3】

【0043】
本システムの動作は、実施形態1で説明した図2のフローチャートと同様であり、実施形態1ではS8の処理でCPU10が優先度記憶部7から各電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を読み取っているのに対して、本実施形態ではS8の処理で、CPU10がディップスイッチSa,Sb,Scの設定値を読み込み、この設定値を5倍した値を停電補償時間としている。尚、S8の処理以外は実施形態1で説明した動作と同じであるから、その説明は省略する。
【0044】
上述のように本実施形態では、停電補償時間設定手段として、優先度に応じた停電補償時間を可変に設定可能なディップスイッチSa,Sb,Scを用いているので、各々の電力供給線La,Lb,Lcに接続される負荷機器Ak,Bm,Cnの停電補償時間を直接設定することができ、また電源のバックアップが必要な負荷機器の台数が増加した場合でも、個々の負荷機器毎に停電補償時間を設定する場合に比べて、設定の手間が少なくて済む。なお本実施形態では、優先度に応じた停電補償時間を可変に設定可能な手段としてディップスイッチSa,Sb,Scを用いているが、ディップスイッチ以外のロータリスイッチやジャンパスイッチなどの設定手段を用いてもよいことは言うまでもない。
【0045】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図5に基づいて説明する。図5は本実施形態の概略的なシステム構成図である。本実施形態では、実施形態3で説明した電力供給システムの構成に加えて、各電力供給線La,Lb,Lcに流れる電流値をそれぞれ計測する電流計測部13a,13b,13cと、各電力供給線La,Lb,Lcの電流値を格納する計測電流値格納部11と、各電力供給線La,Lb,Lcに流れる電流値の計測結果や停電補償時間をもとに優先度が最も高い電力供給線に給電可能な時間を求めた結果を表示する液晶ディスプレイのような表示部12(給電時間報知手段)とを備えている。ここで、ディップスイッチSaの設定値は11111であり、電力供給線Laの停電補償時間は、二次電池4から給電可能な最長の時間よりも長い時間に設定されている。またディップスイッチSb,Scの設定値はそれぞれ01100、00110であり、ディップスイッチSb,Scの設定値を5倍した値(60分と30分)がそれぞれ電力供給線Lb,Lcの停電補償時間となっている。尚、計測電流値格納部11、表示部12および電流計測部13a〜13cを追加した点を除いては、実施形態1〜3で説明した電力供給システムと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0046】
上述した各実施形態の電力供給システムでは、電力供給線La,Lb,Lc毎に想定された最大消費電流とその停電補償時間をもとに、優先度が最も高い電力供給線Laに給電可能な時間を予測しているが、各電力供給線La,Lb,Lcの実際の消費電流は想定値を下回っていると考えられるので、優先度が最も高い電力供給線Laには、停電時において想定されている時間よりも長い時間給電が可能であると考えられる。
【0047】
そこで、本実施形態の電力供給システムでは、電力供給線La,Lb,Lc毎の消費電流を実際に計測し、その計測結果に基づいて以下に説明する方法で優先度が最も高い電力供給線に給電可能な時間を演算し、その結果を表示部12に表示させている。尚、給電可能な時間を報知する処理以外の動作は実施形態1又は3で説明したシステムと同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
電池残量監視手段たるCPU10は、二次電池4からその残容量を逐次検出する。またCPU10は、商用交流電源ACの停電の有無に関わらず、電気消費量監視手段としての電流計測部13a,13b,13cから各電力供給線La,Lb,Lcに流れる電流の計測値を逐次取り込み、各々の電力供給線La,Lb,Lcについて計測電流値格納部11に格納済みの電流計測値と新たに計測された電流計測値とを比較し、新たに計測された電流計測値が格納済みの電流計測値よりも大きければ、その値を計測電流値格納部11に上書きするように格納することで、各電力供給線La,Lb,Lcの最大消費電流が計測電流値格納部11に格納される。下記の表4は計測電流値格納部11に格納された電流計測値の一例を示し、電力供給線La,Lb,Lc毎に最大消費電流が格納されることになる。
【0049】
【表4】

【0050】
そして、CPU10では、二次電池4の残容量と、計測電流値格納部11に格納された各電力供給線La,Lb,Lcの最大消費電流と、ディップスイッチSa,Sb,Scにより設定された停電補償時間とを用いて以下の演算を行うことによって、優先度が最も高い電力供給線Laへの給電時間を求めている。すなわち、停電発生時からの経過時刻tが、電力供給線Lb,Lcの停電補償時間Tb,Tcより短い場合[数1の(i)]、CPU10は、時刻tにおける残容量Q(t)から、電力供給線Lb,Lcに所定の停電補償時間Tb,Tcだけ給電するのに必要な電池容量を差し引いて、電力供給線Laへの給電に使用できる電池容量を求めた後、この電池容量を電力供給線Laの最大消費電流で除算することによって、優先度が最も高い電力供給線Laに二次電池4から給電が可能な給電時間Taを求める。またTb<Tcの場合に、停電発生時からの経過時刻tが停電補償時間Tb以後で、且つ、停電補償期間Tcよりも短い場合[数1の(ii)]、CPU10は、時刻tにおける残容量Q(t)から、電力供給線Lcに所定の停電補償時間Tcだけ給電するのに必要な電池容量を差し引いて、電力供給線Laへの給電に使用できる電池容量を求めた後、この電池容量を電力供給線Laの最大消費電流で除算することによって給電時間Taを求める。またTb>Tcの場合に、停電発生時からの経過時刻tが停電補償時間Tc以後で、且つ、停電補償期間Tbよりも短い場合[数1の(iii)]、CPU10は、時刻tにおける残容量Q(t)から、電力供給線Lbに所定の停電補償時間Tbだけ給電するのに必要な電池容量を差し引いて、電力供給線Laへの給電に使用できる電池容量を求めた後、この電池容量を電力供給線Laの最大消費電流で除算することによって給電時間Taを求める。また停電発生時からの経過時刻tが停電補償時間Tb,Tc以後の場合[数1の(iv)]、二次電池4の残容量は全て電力供給線Laへの給電に使用できるので、CPU10は、時刻tにおける残容量Q(t)を電力供給線Laの最大消費電流で除算することによって給電時間Taを求める。
【0051】
【数1】

【0052】
但し、tは停電発生時からの経過時刻、Taは停電時において優先度が最も高い電力供給線Laに給電可能な給電時間、Tb,Tcは電力供給線Lb,Lcに設定された停電補償時間である。またQ(t)は時刻tにおいて二次電池4から獲得した残容量であり、IAmax,IBmax,ICmaxはそれぞれ計測電流値格納部11から読み込んだ電力供給線La,Lb,Lc毎の最大消費電流である。尚、本実施形態では二次電池4から、各電力供給線La,Lb,Lcへの給電電圧と同じ電圧値の直流電圧が出力され、且つ、その出力電圧の変動は小さく略一定電圧と見なせるので、各電力供給線La,Lb,Lc毎の消費電流のみを測定し、消費電流の測定結果と停電補償時間とをもとに、給電に必要な電池容量を算出している。
【0053】
以上の演算により給電時間Taが求まると、CPU10は、給電時間Taの演算結果を表示部12に表示させ、ユーザに対して給電時間Taの報知を行っている。尚、給電時間報知手段として例えば液晶ディスプレイからなる表示部12を用いているが、表示部12の代わりに音声などで報知する手段を用いてもよい。
【0054】
このように、本実施形態では、給電時間演算手段としてのCPU10が、優先度の最も高い電力供給線La以外の電力供給線Lb,Lcの消費電流および停電補償時間に基づいて当該電力供給線Lb,Lcに停電補償時間だけ給電する場合に必要な電池容量を計算し、この計算結果と二次電池4の残容量とをもとに優先度が最も高い電力供給線Laに対して二次電池4から給電が可能な給電時間を求め、その結果を表示部12に表示させている。
【0055】
ところで、優先度が最も高い電力供給線Laには二次電池4の容量がある限り給電が行われるのであるが、各電力供給線La,Lb,Lcの最大消費電流の想定値をもとに、最も優先度が高い電力供給線に給電が可能な時間を予め想定しており、ユーザはこの想定に基づいて停電時に行動を行っている。例えば優先度が最も高い電力供給線にIP電話機が接続されている場合、この電力供給線について予め想定された給電時間が4時間であれば、IP電話機を使用するのなら4時間以内にという制約をユーザに課すことになる。しかしながら、優先度が最も高い電力供給線の給電時間は、各電力供給線の最大消費電流の想定値をもとに算出されたものであり、各電力供給線の消費電流が想定値よりも小さければ、優先度が最も高い電力供給線には当初想定された時間よりも長い時間給電が可能になる。そこで、本実施形態では電力供給線La,Lb,Lc毎の実際の消費電流と二次電池4の残容量とを計測し、その計測結果を用いて上述の演算を行うことで、優先度が最も高い電力供給線Laに給電可能な給電時間を求め、その結果を表示部12に表示させているので、最も優先度が高い電力供給線に、どの程度の時間二次電池4から給電が可能なのかをユーザに知らしめることができ、ユーザに安心感を与えることができる。例えば上述の例では優先度が最も高い電力供給線に接続されたIP電話機への給電時間が4時間と想定されていたものが、実際には各電力供給線の消費電流が想定値を下回っているために、最大で5時間給電が可能であると表示されれば、ユーザにとってはIP電話機を使用できる時間が延びるため、IP電話機の使用が制限される時間を短くでき、ユーザに安心感を与えることができる。
【0056】
また実施形態3で説明したように各々の電力供給線毎に、優先度に応じた停電補償時間が変更可能な場合、給電時間Taの表示内容を受けて優先度が最も高い電力供給線Laへの給電時間Taが短いとユーザが感じた場合は、ユーザが優先度の低い電力供給線Lb,Lcの停電補償時間Tb,Tcを短くすることによって、優先度の最も高い電力供給線Laへの給電時間Taを延ばすことができる。また上述とは逆に、給電時間Taの報知内容を受けて優先度が最も高い電力供給線Laへの給電時間Taが十分長いとユーザが感じた場合は、ユーザが優先度の低い電力供給線Lb,Lcの停電補償時間Tb,Tcを長くすることで、優先度の最も高い電力供給線Laへの給電時間Taは多少短くなるものの、優先度が低い他の電力供給線Lb,Lcへの給電時間Tb,Tcを延ばすことができる。
【0057】
尚、上記の数1では、優先度の最も高い電力供給線Laの給電時間Taを算出するために、電流計測部13aによって計測された電流計測値の最大値(最大消費電流)IAmaxを用いているが、確実を期すために、電流計測部13aによって計測された電流計測値の最大値に代えて、電力供給線Laに流れると想定される電流値の最大値(例えば電力供給線Laの定格電流や、電力供給線Laに接続される負荷機器の最大消費電流の合計値など)を用いて給電時間Taを算出してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、電流計測部13a,13b,13cが停電時においてリアルタイムで計測した電流値をもとに各電力供給線La,Lb,Lcの最大消費電流を求めているが、単位時間当たりの平均消費電流を検出するようにしてもよいし、停電前に測定した電流値の履歴データをもとに、電力供給線La,Lb,Lc毎の消費電流を求めてもよい。
【0059】
また更に本実施形態では、二次電池4の出力電圧が、各電力供給線の給電電圧と同じ電圧値であって、略一定の直流電圧となっているので、電流計測部13a,13b,13cを用いて各電力供給線毎の消費電流を電気消費量として検出し、消費電流の検出結果と停電補償時間とに基づいて当該電力供給線La,Lb,Lcに停電補償時間だけ給電する場合に必要な電池容量を求めているが、例えば電力供給線La,Lb,Lc側でDC/DCコンバータ(図示せず)により二次電池4の出力電圧を電圧変換している場合には、各電力供給線La,Lb,Lc毎に消費電流と給電電圧とを測定して、その測定結果から各電力供給線La,Lb,Lc毎の消費電力を求め、この消費電力と停電補償時間とに基づいて当該電力供給線La,Lb,Lcに停電補償時間だけ給電する場合に必要な電池容量を求めるようにしてもよい。
【0060】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を図6に基づいて説明する。上述の実施形態1〜3では優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線は、停電補償時間が経過すると給電が停止されるのであるが、本実施形態では、優先度が最も高い電力供給線以外の低優先度の電力供給線(例えばLb)について、優先度に応じて停電補償時間を延長する給電延長時間が優先度記憶部7に設定されている。そして、制御手段たるCPU10では、停電発生時から低優先度の電力供給線に設定された停電補償時間が経過した時点において、二次電池4の残容量が所定閾値未満であれば当該電力供給線Lbへの給電を停止させているのに対して、二次電池4の残容量が所定閾値以上であれば当該電力供給線Lbへの給電を給電延長時間まで延長しており、二次電池4の残容量に余裕がある場合は低優先度の電力供給線に接続されている負荷機器への給電時間を延ばすことができる。ここにおいて、電力供給線La,Lb,Lcの優先度はLc<Lb<Laの順番で高くなっており、優先度が最も高い電力供給線La以外の電力供給線Lb,Lcの停電補償時間Tb,Tcは、Tb>Tcのように設定されている。尚、電力供給システムの構成は実施形態1〜3と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、図示および説明は省略する。
【0061】
CPU10による制御内容は、低優先度の電力供給線への給電時間を延長する処理を除いては、上述した実施形態1とほぼ同様であるので、異なる制御内容について図6のフローチャートを参照して説明する。CPU10は、先ず停電発生時から、電力供給線Laへの給電を補償する給電時間Taが経過したか否かの判定を行い(図6のS21)、給電時間Taが経過していなければ、電力供給線Lbの停電補償時間Tbが経過したか否かの判定を行う(図6のS22)。
【0062】
ここで、停電発生時から停電補償時間Tbが経過していなければ、CPU10は、停電発生時から電力供給線Lcの停電補償時間Tcが経過したか否かの判定をさらに行い(S25)、停電補償時間Tcが経過していれば電力供給線Lcへの給電を停止する処理を行い(S26)、停電補償時間Tcが経過していなければS21の判定処理に戻る。
【0063】
またS22において停電補償時間Tbが経過したと判定されると、CPU10は、二次電池4の残容量Q(t)と所定閾値との高低を比較し(S23)、残容量が所定閾値以上であれば電力供給線Lbへの給電を、優先度記憶部7に設定された給電延長時間だけ延長した後、電力供給線Lbへの給電を停止させる。また、S23の判定で残容量が所定閾値未満であれば、CPU10は、給電時間を延長することなく、その時点で電力供給線Lbへの給電を停止させる(S24)。ここで、所定閾値としては、現時点(停電発生時より時間t経過時)から、優先度が最も高い電力供給線Laへの給電を停電補償時間Taまで継続する場合に必要な電池容量を用い、電力供給線Laに流れる最大消費電流をIAmaxとすると、必要な電池容量はIAmax×(Ta−t)と表される。而して、停電発生時より時間tが経過した時点において、電池残量Q(t)がIAmax×(Ta−t)以上であれば、電池残量に余裕があると判断して、電力供給線Lbへの給電時間を給電延長時間だけ延長するのである。
【0064】
このように本実施形態では、停電発生時から、優先度が相対的に低い電力供給線の停電補償時間が経過した時点で二次電池4の残容量が所定閾値以上ある場合(すなわち二次電池4の残容量に余裕がある場合)、CPU10は、当該電力供給線に対してさらに給電延長時間が経過するまで電源供給を継続させているので、優先度が低い電力供給線に接続される負荷機器への給電時間を延ばすことができる。一方、停電発生時から、優先度が相対的に低い電力供給線の停電補償時間が経過した時点で二次電池4の残容量が所定閾値未満となっている場合(すなわち二次電池4の残容量に余裕が無い場合)、CPU10は、電力供給線への給電時間を延長しないので、二次電池4の消耗を抑えて、優先度が最も高い電力供給線に接続された負荷機器に対して、より長い時間給電することができる。
【0065】
なお上記の所定閾値として、現時点(停電発生時より時間t経過時)から、優先度が最も高い電力供給線Laへの給電を停電補償時間Taまで継続した場合に必要な電池容量を用いているが、予め定められた容量値(固定値)を用いてもよい。
【0066】
また給電延長時間は、二次電池4の残容量Q(t)に応じて複数時間設定してもよく、例えば電池残量Q(t)がQ1以上且つQ2未満であれば給電延長時間を2分、電池残量Q(t)がQ2以上且つQ3未満であれば給電延長時間を4分、電池残量Q(t)がQ3以上であれば給電延長時間を6分というように複数段階に設定してもよい。
【0067】
また本実施形態では、優先度が中の電力供給線Lbのみに給電延長時間を設定しているが、優先度が最も高い電力供給線以外の複数段階の優先度の電力供給線に給電延長時間を設定してもよい。
【0068】
また本実施形態では、CPU10が、停電発生時から低優先度の電力供給線に設定された停電補償時間が経過した時点において二次電池4の残容量と所定閾値との大小を比較し、所定閾値以上であれば給電時間を延長し、所定閾値未満であれば給電を停止させているが、この判定処理は、停電発生時から停電補償時間が経過するまでの所定のタイミングで行うようにしてもよい。なお判定処理後に消費電力が急増して、残容量が急激に低下する可能性もあるため、上記の判定処理は、停電発生時から停電補償時間が経過する時点にできるだけ近いタイミングで行われるのが好ましい。
【0069】
(実施形態6)
本発明の実施形態5を図7(a)(b)に基づいて説明する。上述の各実施形態では、停電発生時から電力供給線毎に設定された停電補償時間が経過した時点で、当該電力供給線への給電を停止しているのに対して、本実施形態の電力供給システムでは停電発生時から停電補償時間が経過する時点よりも所定時間前に、電力供給線への給電を停止することを事前に報知しており、停電時に給電が停止されることを事前に報知している。尚、電力供給システムのシステム構成は実施形態1〜5で説明したものと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0070】
以下に、本システムの制御動作を図7(a)(b)のフローチャートにしたがって説明する。尚、図7(a)において実施形態1で説明した図2のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付してある。
【0071】
CPU10は、所定の制御間隔が経過する毎に制御プログラムを実行しており、制御プログラムを開始すると、CPU10は停電検出部5の検出結果から停電中か否かを判定する(S1)。
【0072】
停電中でなければ(つまり商用交流電源ACの通電中であれば)、CPU10は、停電経過時間記憶部8に記憶された経過時間のデータをクリアした後(S2)、リレーRa,Rb,Rcを全てオンさせる閉極制御信号をリレー駆動部9に出力して、リレー駆動部9に全てのリレーRa,Rb,Rcをオンさせており、AC/DCコンバータ3から出力される直流電圧がリレーRa,Rb,Rcを介して各々の電力供給線La,Lb,Lcに接続された負荷機器Ak,Bm,Cnへ供給される(S3)。ここにおいて本実施形態では、電力供給線La,Lb,Lcへの給電を遮断する処理を保留する所定の遮断保留時間をそれぞれ計時するタイマ(図示せず)を備えており、CPU10では、各電力供給線La,Lb,Lcへの給電を行った後、上記の遮断保留時間を計時するタイマを停止させる(S15〜S17)。またこの時、CPU10は、二次電池4の充電電圧と所定のしきい値電圧との高低を比較することによって、二次電池4が満充電か否かの判定を行っており(S4)、二次電池4が満充電になっていなければ、AC/DCコンバータ3により二次電池4を充電させた後(S5)、制御プログラムを終了する。またS4の判定で二次電池4が満充電であると判定されれば、CPU10は、AC/DCコンバータ3による二次電池4の充電を停止させた後(S6)、制御プログラムを終了する。
【0073】
一方、停電検出部5が商用交流電源ACの停電を検出して停電検出信号をCPU10に出力すると、CPU10は、RTC6から入力されるクロック信号をカウントすることによって、停電発生時からの経過時間を計時するとともに、計時結果を停電経過時間記憶部8に記憶させている。そして、S1の判定で商用交流電源ACが停電中であると判定された場合、CPU10は、停電発生時からの経過時間を停電経過時間記憶部8から読み込むとともに(S7)、各電力供給線La,Lb,Lcの停電補償時間を優先度記憶部7から読み込む(S8)。
【0074】
次にCPU10は、停電発生時からの経過時間が電力供給線Lcの停電補償時間Tcを超えているか否かの判定を行い(S9)、経過時間が停電補償時間Tcを超えていなければ、CPU10は、電力供給線Lcに接続されたリレーRcを閉極したままにして、電力供給線Lcに接続された負荷機器Cnへの電力供給を継続させる。またS9の判定で経過時間が停電補償時間Tcを超えていれば、電力供給線Lcへの給電を遮断する処理を行う(S18)。
【0075】
その後CPU10は、停電発生時からの経過時間が電力供給線Lbの停電補償時間Tbを超えているか否かの判定を行い(S11)、経過時間が停電補償時間Tbを超えていなければ、CPU10は、電力供給線Lbに接続されたリレーRbを閉極したままにして、電力供給線Lbに接続された負荷機器Bmへの電力供給を継続させる。またS11の判定で停電発生時からの経過時間が所定の停電補償時間Tbを超えていれば、CPU10は、電力供給線Lbへの給電を遮断する処理を行う(S18)。
【0076】
その後さらにCPU10は、停電発生時からの経過時間が電力供給線Laの停電補償時間Taを超えているか否かの判定を行い(S13)、経過時間が停電補償時間Taを超えていなければ、CPU10は、電力供給線Laに接続されたリレーRaを閉極したままにして、電力供給線Laに接続された負荷機器Bmへの電力供給を継続させる。またS13の判定で停電発生時からの経過時間が停電補償時間Taを超えていれば、CPU10は、電力供給線Laへの給電を遮断する処理を行う(S20)。ただし、電力供給線Laの停電補償時間は、二次電池4から電源供給が可能な最長の時間よりも長い時間に設定されているので、実際には停電時からの経過時間が電力供給線Laの停電補償時間を超えることはなく、電力供給線Laには二次電池4の残容量がなくなるまで給電が続けられる。
【0077】
ここで、CPU10が、電力供給線Lcへの給電を遮断する処理S19について、図7(b)のフローチャートを参照して説明する。尚、電力供給線Lb,Laへの給電を遮断する処理S19,S20aは、電力供給線Lcへの給電を遮断する処理S18と同様であるので、その説明は省略する。
【0078】
CPU10は、電力供給線Lcへの給電を遮断する処理を開始すると、先ず電力供給線Lcについて遮断保留時間をカウントするタイマ(図示せず)がカウントアップしているか否かの判定を行い(S30)、カウントアップしていなければ、当該タイマが起動中であるか否かの判定をさらに行う(S31)。ここで、タイマが起動していなければ、CPU10は、リレー駆動部9を用いて電力供給線Lcへの給電を一旦遮断させるとともに(S33)、タイマにより遮断保留時間のカウントを開始させる(S34)。またS31の判定でタイマが起動していれば、CPU10は、リレー駆動部9を用いて電力供給線Lcへの給電を継続させる。またS30の判定で遮断保留時間をカウントするタイマがカウントアップしていれば、CPU10は、リレー駆動部9を用いて電力供給線Lcへの給電を遮断させる。CPU10では、以上のような遮断処理を行うことによって、電力供給線Lcへの給電が遮断される時刻よりも所定時間前(上記の遮断保留時間前)に、電力供給線Lcへの給電を一時的に遮断することができ、例えば電力供給線Lcに接続された負荷機器Cnが照明器具の場合には照明器具を一時的に消灯させることができる。而して、給電の一時的な遮断によって、電力供給線Lcへの給電が停止されることを事前に報知することができ、この報知を受けて、ユーザが電力供給線Lcへの給電停止に備えることができる。ここにおいて、CPU10やリレー駆動部9などから停止報知手段が構成される。
【0079】
尚、本実施形態では、停電時において二次電池4から電力供給線への給電が停止される前に、電力供給線への給電を一時的に停止させることで、給電停止を事前に報知しているが、音や光や文字表示などで給電停止を事前に報知する手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 電力供給装置
2 直流電力供給部(電力供給手段)
3 AC/DCコンバータ
4 二次電池
5 停電検出部
6 RTC(計時手段)
7 優先度記憶部(停電補償時間設定手段)
8 停電経過時間記憶部
9 リレー駆動部
10 CPU(制御手段、計時手段)
Ak,Bm,Cn 負荷機器
La,Lb,Lc 電力供給線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷機器と、それぞれ優先度が設定されるとともに1乃至複数の前記負荷機器が接続された複数の電力供給線と、主電源の停電時にバックアップが可能な二次電池を備えて複数の前記電力供給線に電力を供給する電力供給手段と、前記主電源の停止を検出する停電検出手段と、停電発生時からの経過時間を計時する計時手段と、前記優先度が最も高い前記電力供給線以外の電力供給線について優先度に応じた停電補償時間を設定する停電補償時間設定手段と、停電発生時から前記停電補償時間設定手段に設定された前記停電補償時間が経過すると、当該停電補償時間に対応する電力供給線への電力供給を停止させるとともに、前記優先度が最も高い電力供給線には前記二次電池の残容量がなくなるまで電力を供給させる制御手段とを備えたことを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
複数の前記電力供給線の各々に、優先度を設定する優先度設定手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記停電補償時間設定手段が、前記優先度に応じた前記停電補償時間を可変に設定可能な手段からなることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記二次電池の残容量を監視する電池残量監視手段と、各々の電力供給線毎に電気消費量を監視する電気消費量監視手段と、優先度が最も高い電力供給線以外の電力供給線の電気消費量および停電補償時間に基づいて当該電力供給線に停電補償時間だけ給電する場合に必要な電池容量を計算し、この計算結果と前記二次電池の残容量とをもとに優先度が最も高い電力供給線に対して前記二次電池から給電が可能な給電時間を求める給電時間演算手段と、前記給電時間の演算結果を報知する給電時間報知手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記停電補償時間設定手段には、優先度が最も高い電力供給線以外の低優先度の電力供給線について、前記優先度に応じて前記停電補償時間を延長する給電延長時間が設定されており、前記制御手段は、停電発生時から前記低優先度の電力供給線に設定された前記停電補償時間が経過するまでの所定の判定時点において、前記二次電池の残容量が所定閾値以上であれば当該電力供給線への給電を前記給電延長時間まで延長し、前記二次電池の残容量が所定閾値未満であれば当該電力供給線への給電を停止させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
停電発生時から前記停電補償時間が経過する時点よりも所定時間前に、前記電力供給線への給電を停止することを事前に報知する停止報知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−259201(P2010−259201A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105504(P2009−105504)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】