説明

電力制御装置およびそれを備えた車両

【課題】車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能であって、十分なノイズ抑制効果を有しつつフィルタを小型化可能な電力制御装置およびそれを備えた車両を提供する。
【解決手段】モータジェネレータMG1,MG2の中性点N1,N2に電力線ACL1,ACL2が接続される。ECU30は、蓄電装置Bとプラグ70に接続される負荷90との間で電力を授受するようにインバータ10,20を制御する。コモンモードチョークコイル40は、電力線対上に配設される。Yコンデンサ50は、コモンモードチョークコイル40とプラグ70との間において電力線ACL3,ACL4と車両アース80との間に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力制御装置およびそれを備えた車両に関し、特に、車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能な電力制御装置およびそれを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平4−295202号公報(特許文献1)は、車両外部の交流電源と車載直流電源との間で電力を授受可能な電動機駆動および動力処理装置を開示する。この装置は、直流電源と、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、以下「PWM」とも称する。)される2つのインバータと、2つの誘導電動機と、制御ユニットと、入力/出力ポートと、EMIフィルタとを備える。各誘導電動機は、Y結線された巻線を含み、各巻線の中性点に入力/出力ポートが接続される。
【0003】
この装置においては、再充電モード時、入力/出力ポートに接続される単相電源から各巻線の中性点に与えられる交流電力を直流電力に変換して直流電源を充電することができる。また、各巻線の中性点間に正弦波の調整された交流電力を発生し、その発生した交流電力を入力/出力ポートに接続される外部装置へ出力することができる。
【0004】
EMIフィルタは、各巻線の中性点と入力/出力ポートとの間に設けられ、入力/出力ポートに現れる高周波のコモンモードノイズを低減させる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−295202号公報
【特許文献2】特開2006−101632号公報
【特許文献3】特開2005−237133号公報
【特許文献4】特開2002−51566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、車両に搭載される種々の装置に対しては、限定的なスペースに各装置をレイアウトする関係上、省スペース化が強く要求される。特開平4−295202号公報に開示される装置は、既設のインバータを用いて蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能な点で有用である。
【0006】
しかしながら、上記の装置では、インバータが発生する高周波のコモンモード電圧を低減するためのフィルタが必須であり、このフィルタに対しても省スペース化の観点から小型化が要求される。ところが、特開平4−295202号公報では、そのような観点からのEMIフィルタの具体的な構成については何ら開示されていない。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能であって、十分なノイズ抑制効果を有しつつフィルタを小型化可能な電力制御装置およびそれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、電力制御装置は、車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能な電力制御装置であって、複数の交流回転電機と、複数のインバータと、プラグと、電力線対と、制御ユニットと、コモンモードチョークコイルと、ラインバイパスコンデンサとを備える。複数の交流回転電機の各々は、星形結線された多相巻線を固定子巻線として含む。複数のインバータは、複数の交流回転電機に対応して設けられ、パルス幅変調法により制御される。プラグは、電気負荷または電源に接続可能である。電力線対は、複数の交流回転電機のうち2つの交流回転電機の多相巻線の中性点とプラグとの間に配設される。制御ユニットは、上記2つの交流回転電機に対応するインバータを制御することによって蓄電装置と電気負荷または電源との間で電力を授受するように構成される。コモンモードチョークコイルは、電力線対に配設される。ラインバイパスコンデンサは、コモンモードチョークコイルとプラグとの間において電力線対と車両アースとの間に接続される。
【0009】
この発明においては、複数の交流回転電機のうち2つの交流回転電機の多相巻線の中性点に接続される電力線対を介して、蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力が授受される。そして、コモンモードチョークコイルとともにラインバイパスコンデンサが電力線対に設けられるので、インバータの高周波スイッチングに応じて発生するコモンモード電圧の抑制をコモンモードチョークコイルとラインバイパスコンデンサとで分担できる。したがって、この発明によれば、コモンモード電圧を十分に抑制し、かつ、コモンモードチョークコイルを小型化することができる。また、ラインバイパスコンデンサは、コモンモードチョークコイルに対して電気負荷または電源側に配設されるので、コモンモード電圧の周波数に対してコモンモードチョークコイルのインピーダンスを高くし車両アースへのリターン線インピーダンスを低く設計することで、インバータコモンモード電圧の大部分をコモンモードチョークコイルに印加させるとともに負荷中性点電位を低い値に抑制することができる。したがって、この発明によれば、負荷のコモンモードインピーダンス変化の広い範囲にわたり所望の抑制効果を得ることができる。
【0010】
また、この発明によれば、電力制御装置は、車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能な電力制御装置であって、複数の交流回転電機と、複数のインバータと、プラグと、電力線対と、制御ユニットと、コモンモードチョークコイルと、ラインバイパスコンデンサとを備える。電力線対は、複数の交流回転電機のうち2つの交流回転電機の多相巻線の中性点とプラグとの間に配設される。コモンモードチョークコイルは、電力線対に配設される。ラインバイパスコンデンサは、コモンモードチョークコイルと上記2つの交流回転電機の中性点との間において電力線対と車両アースとの間に接続される。
【0011】
この発明においては、ラインバイパスコンデンサがコモンモードチョークコイルに対して交流回転電機の中性点側に配設されるので、インバータのコモンモード電圧の多くが交流回転電機のコモンインピーダンスに印加され、ラインバイパスコンデンサ両端のコモンモード電圧は低い値となる。よって、負荷コモンモードインピーダンスが小さい条件でも、コモンモードチョークコイルに印加されるコモンモードが抑えられる。したがって、この発明によれば、コモンモード電圧を十分に抑制し、かつ、コモンモードチョークコイルをさらに小型化することができる。
【0012】
好ましくは、電力制御装置は、もう1つのラインバイパスコンデンサをさらに備える。もう1つのラインバイパスコンデンサは、コモンモードチョークコイルとプラグとの間において電力線対と車両アースとの間に接続される。
【0013】
この発明においては、ラインバイパスコンデンサがコモンモードチョークコイルに対して交流回転電機の中性点側に配設されるので、コモンモードチョークコイルに印加されるコモンモード電圧が抑えられる。また、もう1つのラインバイパスコンデンサがコモンモードチョークコイルに対して電気負荷または電源側に配設されるので、車両アースと電気負荷または電源との間の電位差が低い値に抑えられる。したがって、この発明によれば、さらに、電気負荷または電源のコモンモードインピーダンスの変化に対して広範囲にわたりコモンモード電圧の抑制効果を得ることができる。
【0014】
好ましくは、制御ユニットは、複数の信号生成部を含む。複数の信号生成部の各々は、対応するインバータのスイッチング素子をオン/オフするための信号を生成する。2つの交流回転電機に対応する信号生成部は、互いに位相が略180°ずらされた搬送波を用いて信号を生成する。
【0015】
この発明においては、2つの交流回転電機に対応する信号生成部は、互いに位相が略180°ずらされた搬送波を用いて信号を生成するので、各インバータが発生するコモンモード電圧が相殺され、コモンモード電圧が低減する。したがって、この発明によれば、コモンモードチョークコイルをさらに小型化することができる。
【0016】
さらに好ましくは、電力制御装置は、インダクタをさらに備える。インダクタは、2つの交流回転電機のうちコモンモードインピーダンスが小さい方の交流回転電機の中性点に接続された電力線上に配設される。
【0017】
この発明においては、上記インダクタが設けられることにより2つの交流回転電機のコモンモードインピーダンスが平衡化されるので、コモンモード電圧がさらに低減する。したがって、この発明によれば、コモンモードチョークコイルをさらに小型化することができる。
【0018】
また、好ましくは、制御ユニットは、対応するインバータのスイッチング素子をオン/オフするための信号を各々が生成する複数の信号生成部を含む。2つの交流回転電機に対応するインバータの各々は、三相インバータである。2つの交流回転電機に対応する信号生成部の各々は、互いに位相が略120°ずつずらされた第1から第3の搬送波を用いて、対応するインバータのU相スイッチング素子、V相スイッチング素子およびW相スイッチング素子をそれぞれオン/オフするための信号を生成する。
【0019】
この発明においては、搬送波の位相が各相ごとに互いに略120°ずつずらされるので、コモンモード電圧の振幅が1/3になり、かつ、周波数が3倍になる。したがって、この発明によれば、コモンモードチョークコイルをさらに小型化することができる。
【0020】
また、この発明によれば、車両は、複数の交流回転電機の少なくとも1つから駆動トルクを受ける車輪と、上述したいずれかの電力制御装置とを備える。したがって、この発明によれば、車両の小型化を阻害することなく、コモンモード電圧を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明によれば、蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受する際に発生するコモンモードノイズを十分に抑制し、かつ、コモンモードチョークコイルを小型化することができる。その結果、車両の小型化を阻害することなく、コモンモードノイズを十分に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図1を参照して、このハイブリッド車両100は、エンジン2と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構4と、車輪6とを備える。また、ハイブリッド車両100は、蓄電装置Bと、インバータ10,20と、電子制御装置(Electronic Control Unit:以下「ECU」と称する。)30と、平滑コンデンサC1と、正極線PLと、負極線NLとをさらに備える。
【0024】
さらに、ハイブリッド車両100は、電力線ACL1〜ACL4と、平滑コンデンサC2と、コモンモードチョークコイル40と、Yコンデンサ50と、ACポート60と、プラグ70とをさらに備える。
【0025】
動力分割機構4は、エンジン2とモータジェネレータMG1,MG2とに結合されてこれらの間で動力を分配する。たとえば、動力分割機構4として、サンギヤ、プラネタリキャリヤおよびリングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車を用いることができる。この3つの回転軸がエンジン2およびモータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続される。たとえば、モータジェネレータMG1のロータを中空としてその中心にエンジン2のクランク軸を通すことによって、エンジン2およびモータジェネレータMG1,MG2を動力分割機構4に機械的に接続することができる。
【0026】
エンジン2が発生する動力は、動力分割機構4によって車輪6とモータジェネレータMG1とに分配される。すなわち、エンジン2は、車輪6を駆動するとともにモータジェネレータMG1を駆動する動力源としてハイブリッド車両100に組込まれる。モータジェネレータMG1は、エンジン2によって駆動される発電機として動作し、かつ、エンジン2の始動を行ない得る電動機として動作するものとしてハイブリッド車両100に組込まれ、モータジェネレータMG2は、車輪6を駆動する動力源としてハイブリッド車両100に組込まれる。
【0027】
また、このハイブリッド車両100は、後ほど説明するように、車両外部の電気負荷または電源を総括的に示す負荷90にプラグ70を接続することによって、蓄電装置Bと負荷90との間で電力を授受することができる。
【0028】
蓄電装置Bの正極端子は、正極線PLに接続され、蓄電装置Bの負極端子は、負極線NLに接続される。平滑コンデンサC1は、正極線PLと負極線NLとの間に接続される。インバータ10は、U相アーム12、V相アーム14およびW相アーム16を含む。U相アーム12、V相アーム14およびW相アーム16は、正極線PLと負極線NLとの間に並列に接続される。U相アーム12は、直列に接続されたスイッチング素子Q11,Q12からなり、V相アーム14は、直列に接続されたスイッチング素子Q13,Q14からなり、W相アーム16は、直列に接続されたスイッチング素子Q15,Q16から成る。スイッチング素子Q11〜Q16には、それぞれダイオードD11〜D16が逆並列に接続される。インバータ20は、U相アーム22、V相アーム24およびW相アーム26を含む。インバータ20の構成は、インバータ10と同様である。
【0029】
なお、上記のスイッチング素子として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)などを用いることができる。
【0030】
モータジェネレータMG1は、Y結線された三相コイルを含み、各コイルの一端が互いに接続されて中性点N1を形成する。モータジェネレータMG2も、Y結線された三相コイルを含み、各コイルの一端が互いに接続されて中性点N2を形成する。そして、中性点N1,N2には、それぞれ電力線ACL1,ACL2が接続される。
【0031】
コモンモードチョークコイル40は、電力線ACL1,ACL2とACポート60に接続される電力線ACL3,ACL4との間に設けられる。Yコンデンサ50は、電力線ACL3,ACL4と車両アース80との間に設けられる。具体的には、Yコンデンサ50は、コンデンサC5,C6を含み、コンデンサC5,C6は、電力線ACL3,ACL4と車両アース80との間に接続される。そして、ACポート60にプラグ70が接続される。
【0032】
蓄電装置Bは、充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。蓄電装置Bは、インバータ10,20へ電力を供給し、また、インバータ10および/または20から出力される回生電力を受けて充電される。なお、蓄電装置Bとして、大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0033】
平滑コンデンサC1は、正極線PLと負極線NLとの間の電圧変動を平滑化する。容量C3は、正極線PLと車両アース80との間の浮遊容量を示す。容量C4は、負極線NLと車両アース80との間の浮遊容量を示す。なお、車両アース80としては、たとえば車両フレームが用いられる。
【0034】
インバータ10は、ECU30からの信号PWM1に基づいて、蓄電装置Bからの直流電圧を三相交流電圧に変換してモータジェネレータMG1へ出力する。また、インバータ10は、エンジン2の動力を用いてモータジェネレータMG1が発電した三相交流電圧を直流電圧に変換して正極線PLおよび負極線NLへ出力する。
【0035】
インバータ20は、ECU30からの信号PWM2に基づいて、蓄電装置Bからの直流電圧を三相交流電圧に変換し、その変換した三相交流電圧をモータジェネレータMG2へ出力する。また、インバータ20は、車両の回生制動時、車輪6の回転力を用いてモータジェネレータMG2が発電した三相交流電圧を直流電圧に変換して正極線PLおよび負極線NLへ出力する。
【0036】
ここで、車両外部の電源(たとえば系統電源)としての負荷90から蓄電装置Bの充電が要求されると、インバータ10,20は、プラグ70、ACポート60および電力線ACL1〜4を介して中性点N1,N2に与えられる交流電力を直流電力に変換して正極線PLおよび負極線NLへ出力し、蓄電装置Bを充電する。また、交流電気負荷(たとえば家電)としての負荷90への給電が要求されると、インバータ10,20は、所定の周波数(たとえば商用電源周波数)を有する交流電圧を中性点N1,N2間に発生させ、プラグ70から負荷90へ交流電力が出力される。
【0037】
モータジェネレータMG1,MG2の各々は、三相交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石を有する三相永久磁石同期モータから成る。モータジェネレータMG1は、インバータ10によって回生駆動され、エンジン2の動力を用いて発電した三相交流電力をインバータ10へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、エンジン2の始動時、インバータ10によって力行駆動され、エンジン2をクランキングする。モータジェネレータMG2は、インバータ20によって力行駆動され、車輪6を駆動するための駆動力を発生する。また、モータジェネレータMG2は、車両の回生制動時、インバータ20によって回生駆動され、車輪6の回転力を用いて発電した三相交流電力をインバータ20へ出力する。
【0038】
ECU30は、パルス幅変調法によって、インバータ10を駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWM1としてインバータ10へ出力する。また、ECU30は、インバータ20を駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWM2としてインバータ20へ出力する。
【0039】
ここで、外部電源としての負荷90から蓄電装置Bの充電が要求されると、ECU30は、中性点N1,N2に与えられる負荷90からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置Bを充電するようにインバータ10,20を制御する。また、交流電気負荷としての負荷90への給電が要求されると、ECU30は、中性点N1,N2間に交流電圧を発生して負荷90へ出力するようにインバータ10,20を制御する。
【0040】
平滑コンデンサC2は、電力線ACL1,ACL2間の電圧変動を抑制する。すなわち、平滑コンデンサC2は、インバータ10,20の高周波スイッチングに起因して発生するノーマルモードノイズを抑制する。
【0041】
コモンモードチョークコイル40は、リング状のフェライトコアと、互いに逆方向にコアに巻回された2つのコイルとから成る(図示せず)。コモンモードチョークコイル40とYコンデンサ50とから成るフィルタは、コモンモード電圧の周波数に対してコモンモードチョークコイル40のインピーダンスを高くし車両アース80へのリターン線インピーダンスを低く設計することで、インバータコモンモード電圧の大部分をコモンモードチョークコイル40に印加させるとともに負荷中性点電位を低い値に抑制し、負荷のコモンモードインピーダンス変化の広い範囲でコモンモード電圧を抑制する。すなわち、コモンモードチョークコイル40およびYコンデンサ50はいずれも、インバータ10,20の高周波スイッチングに起因して発生するコモンモードノイズを抑制する。
【0042】
ACポート60は、電力線ACL3,ACL4とプラグ70との接続/切離しを行なうリレーと、電力線ACL3,ACL4間の電圧VACを検出する電圧センサと、電力線ACL3またはACL4に流れる電流IACを検出する電流センサとを含む(いずれも図示せず)。ACポート60は、車両と負荷90との間で電力の授受が行なわれるとき、ECU30からの指令に応じてリレーをオンさせ、負荷90に接続されるプラグ70を電力線ACL3,ACL4と電気的に接続する。また、ACポート60は、電圧VACおよび電流IACの検出値をECU30へ出力する。
【0043】
プラグ70は、このハイブリッド車両100を負荷90と電気的に接続するための接続端子である。負荷90は、上述のように、蓄電装置Bを充電するための外部電源、またはハイブリッド車両100から電力の供給を受ける電気負荷を総括的に示したものであり、接地ノード95に接地される。
【0044】
次に、コモンモード電圧の発生原因について説明する。
図2は、三相インバータの回路図である。図2を参照して、正極線PLと負極線NLとの間に並列接続されたU,V,W各相アームのスイッチングパターンの変化により、直流側の中性点NDCからみたモータジェネレータMGの中性点Nの電圧すなわちコモンモード電圧Vcomが変化する。以下では、各相アームのスイッチングパターンとして、上アームがオン(下アームはオフ)しているときを「1」と定義し、下アームがオン(上アームはオフ)しているときを「0」と定義する。そして、U,V,W相アームのスイッチングパターンをそれぞれu,v,wとし、三相インバータのスイッチングパターンを(u,v,w)と表記する。
【0045】
図3は、第1のスイッチングパターン時の三相インバータの等価回路を示した図である。図3を参照して、スイッチングパターンが(1,1,1)のとき、すなわち各相アームとも上アームがオンしているとき、直流側の電圧をVDCとすると、コモンモード電圧Vcomは、VDC/2となる。
【0046】
なお、特に図示しないが、スイッチングパターンが(0,0,0)のとき、すなわち各相アームとも下アームがオンしているときは、コモンモード電圧Vcomは、−VDC/2となる。
【0047】
図4は、第2のスイッチングパターン時の三相インバータの等価回路を示した図である。図4を参照して、スイッチングパターンが(1,1,0)のとき、すなわちU,V相アームでは上アームがオンし、W相アームでは下アームがオンしているとき、コモンモード電圧Vcomは、VDC/6となる。
【0048】
なお、特に図示しないが、スイッチングパターンが(1,0,1)および(0,1,1)のときも、コモンモード電圧Vcomは、VDC/6となる。
【0049】
図5は、第3のスイッチングパターン時の三相インバータの等価回路を示した図である。図5を参照して、スイッチングパターンが(1,0,0)のとき、すなわちU相アームでは上アームがオンし、V,W相アームでは下アームがオンしているとき、コモンモード電圧Vcomは、−VDC/6となる。
【0050】
なお、特に図示しないが、スイッチングパターンが(0,1,0)および(0,0,1)のときも、コモンモード電圧Vcomは、−VDC/6となる。
【0051】
したがって、コモンモード電圧Vcomは、±VDC/6,±VDC/2の4段階となる。そして、電圧指令値の周波数に対してキャリア周波数が十分に高い場合には、キャリア周波数ごとにほぼ同じスイッチングパターンが現われることとなる。したがって、コモンモード電圧Vcomの変動周波数は、キャリア周波数(たとえば10kHz程度)に等しくなる。
【0052】
このように、三相インバータのスイッチング動作に応じて、キャリア周波数で変動する4レベルの電圧波形を有するコモンモード電圧がモータの中性点に発生する。そして、図1に示したように、中性点N1,N2を介して車両と車両外部の負荷90との間で電力の授受が行なわれるところ、この実施の形態1では、コモンモードチョークコイル40およびYコンデンサ50が設けられ、コモンモード電圧が抑制される。そして、コモンモードチョークコイル40に加えてYコンデンサ50が設けられることにより、コモンモードチョークコイル40を小型化することができる。
【0053】
再び図1を参照して、この実施の形態1では、Yコンデンサ50は、電力線ACL3,ACL4と車両アース80との間に接続される。すなわち、Yコンデンサ50は、コモンモードチョークコイル40に対して負荷90側に配設される。
【0054】
ここで、コモンモード電圧の変動周波数(キャリア周波数に相当)に対してコモンモードチョークコイル40のインピーダンスを高くし、Yコンデンサ50のインピーダンスが低くなるようにYコンデンサ50を適切に設計することにより車両アース80へのリターン線インピーダンスを低くすることで、インバータコモンモード電圧の大部分をコモンモードチョークコイル40に印加させるとともに、車両アース80と負荷90との間の電位差を小さくすることができる。したがって、負荷90のコモンモードインピーダンス変化に対して広範囲にわたりコモンモード電圧の抑制効果を得ることができる。
【0055】
図6は、図1に示したECU30の機能ブロック図である。図6を参照して、ECU30は、第1および第2のインバータ制御部32,34と、充放電制御部36とを含む。第1のインバータ制御部32は、正極線PLおよび負極線NL間の電圧VDCの検出値、モータジェネレータMG1のトルク指令値TR1、ならびにモータジェネレータMG1のモータ電流I1および回転角θ1の各検出値を受ける。そして、第1のインバータ制御部32は、上記各信号に基づいて、モータジェネレータMG1を駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWM1としてインバータ10へ出力する。
【0056】
第2のインバータ制御部34は、電圧VDCの検出値、モータジェネレータMG2のトルク指令値TR2、ならびにモータジェネレータMG2のモータ電流I2および回転角θ2の各検出値を受ける。そして、第2のインバータ制御部34は、上記各信号に基づいて、モータジェネレータMG2を駆動するためのPWM信号を生成し、その生成したPWM信号を信号PWM2としてインバータ20へ出力する。
【0057】
ここで、第1および第2のインバータ制御部32,34は、中性点N1,N2を介して車両と車両外部の負荷90との間で電力の授受が行なわれるとき、充放電制御部36からの零相電圧指令AC1,AC2に基づいて信号PWM1,PWM2をそれぞれ生成し、その生成した信号PWM1,PWM2をそれぞれインバータ10,20へ出力する。
【0058】
充放電制御部36は、負荷90から蓄電装置Bの充電を指示する信号CGが活性化されているとき、ACポート60において検出される電圧VACおよび電流IACに基づいて、モータジェネレータMG1,MG2およびインバータ10,20を単相PWMコンバータとして動作させるための零相電圧指令AC1,AC2を生成する。そして、充放電制御部36は、その生成した零相電圧指令AC1,AC2をそれぞれ第1および第2のインバータ制御部32,34へ出力する。
【0059】
また、充放電制御部36は、中性点N1,N2から負荷90への給電を指示する信号DCGが活性化されているとき、モータジェネレータMG1,MG2およびインバータ10,20を単相PWMインバータとして動作させるための零相電圧指令AC1,AC2を生成する。そして、充放電制御部36は、その生成した零相電圧指令AC1,AC2をそれぞれ第1および第2のインバータ制御部32,34へ出力する。
【0060】
なお、信号CG,DCGは、たとえば、プラグ70が負荷90に接続されているときに利用者により充電開始または給電開始が指示されると活性化される。
【0061】
図7は、図1に示したインバータ10,20およびモータジェネレータMG1,MG2の零相等価回路を示した図である。三相ブリッジ回路から成る各インバータ10,20においては、6個のスイッチング素子のオン/オフの組合わせは8パターン存在する。その8つのスイッチングパターンのうち(1,1,1)および(0,0,0)は相間電圧が零となり、そのような電圧状態は零電圧ベクトルと称される。零電圧ベクトルについては、上アームの3つのスイッチング素子は互いに同じスイッチング状態(全てオンまたはオフ)であり、また、下アームの3つのスイッチング素子も互いに同じスイッチング状態である。したがって、この図7では、インバータ10の上アームの3つのスイッチング素子は上アーム10Aとしてまとめて示され、インバータ10の下アームの3つのスイッチング素子は下アーム10Bとしてまとめて示されている。同様に、インバータ20の上アームの3つのスイッチング素子は上アーム20Aとしてまとめて示され、インバータ20の下アームの3つのスイッチング素子は下アーム20Bとしてまとめて示されている。
【0062】
図7に示されるように、この零相等価回路は、電力線ACL1,ACL2を介して中性点N1,N2に与えられる単相交流電力を入力とする単相PWMコンバータとみることができる。そこで、インバータ10,20の各々において零電圧ベクトルを変化させ、インバータ10,20を単相PWMコンバータのアームとして動作するようにスイッチング制御することによって、電力線ACL1,ACL2から入力される交流電力を直流電力に変換して正極線PLおよび負極線NLへ出力することができる。
【0063】
また、この零相等価回路は、正極線PLおよび負極線NLから供給される直流電圧を用いて中性点N1,N2間に単相交流電圧を生じさせる単相PWMインバータとみることもできる。そこで、インバータ10,20の各々において零電圧ベクトルを変化させ、インバータ10,20を単相PWMインバータのアームとして動作するようにスイッチング制御することによって、正極線PLおよび負極線NLから供給される直流電力を交流電力に変換して負荷90へ供給することができる。
【0064】
なお、特に図示しないが、コモンモードチョークコイル40とYコンデンサ50とによって構成されるLC回路の共振のQ値をキャリア周波数よりも低減する目的で、Yコンデンサ50と車両アース80との間に共振ダンピング用の抵抗を設けてもよい。
【0065】
以上のように、この実施の形態1においては、中性点N1,N2に接続される電力線対を介して、蓄電装置Bと車両外部の負荷90との間で電力が授受される。そして、コモンモードチョークコイル40とともにYコンデンサ50が電力線対に設けられるので、インバータ10,20の高周波スイッチングに応じて発生するコモンモード電圧の抑制をコモンモードチョークコイル40とYコンデンサ50とで分担できる。したがって、この実施の形態1によれば、コモンモード電圧を十分に抑制し、かつ、コモンモードチョークコイル40を小型化することができる。
【0066】
また、Yコンデンサ50は、コモンモードチョークコイル40に対して負荷90側に配設されるので、コモンモード電圧の周波数に対してコモンモードチョークコイル40のインピーダンスを高くし、インバータコモンモード電圧の大部分をコモンモードチョークコイル40に印加させると、車両アース80と負荷90との間の電位差が低い値に抑えられる。したがって、この実施の形態1によれば、負荷90のコモンモードインピーダンスの変化に対して広範囲にわたりコモンモード電圧の抑制効果を得ることができる。
【0067】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図8を参照して、このハイブリッド車両100Aは、図1に示した実施の形態1におけるハイブリッド車両100の構成において、Yコンデンサ50に代えてYコンデンサ55を備える。
【0068】
Yコンデンサ55は、電力線ACL1,ACL2と車両アース80との間に設けられる。具体的には、Yコンデンサ55は、コンデンサC7,C8を含み、コンデンサC7,C8は、電力線ACL1,ACL2と車両アース80との間に接続される。このYコンデンサ55は、電力線ACL1,ACL2上のコモンモード電圧を抑制する。
【0069】
この実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、中性点N1,N2とプラグ70との間にコモンモードチョークコイル40およびYコンデンサ55が設けられ、コモンモード電圧が抑制される。そして、コモンモードチョークコイル40に加えてYコンデンサ55が設けられることにより、コモンモードチョークコイル40を小型化することができる。
【0070】
ここで、この実施の形態2では、Yコンデンサ55は、電力線ACL1,ACL2と車両アース80との間に接続される。すなわち、Yコンデンサ55は、コモンモードチョークコイル40に対して中性点N1,N2側に配設される。このような構成により、コモンモード電圧をモータジェネレータMG1,MG2のコモンモードインピーダンスに分担させることができ、コモンモードチョークコイル40に印加されるコモンモード電圧が低減される。
【0071】
したがって、この実施の形態2によれば、コモンモードチョークコイル40をさらに小型化することが可能となる。
【0072】
[実施の形態3]
図9は、実施の形態3による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図9を参照して、このハイブリッド車両100Bは、図1に示した実施の形態1におけるハイブリッド車両100の構成において、Yコンデンサ55をさらに備える。
【0073】
すなわち、コモンモードチョークコイル40に対して負荷90側に配設されたYコンデンサ50により、車両アース80と負荷90との電位差が低減され、負荷90のコモンモードインピーダンスの変化に対して広範囲にわたりコモンモード電圧の抑制効果が得られる。また、コモンモードチョークコイル40に対して中性点N1,N2側に配設されたYコンデンサ55により、コモンモードチョークコイル40に印加されるコモンモード電圧が低減される。
【0074】
したがって、この実施の形態3によれば、コモンモード電圧抑制効果の負荷依存性を低減し、かつ、コモンモードチョークコイル40をさらに小型化することができる。
【0075】
[実施の形態4]
この実施の形態4では、中性点N1,N2を介して車両と車両外部の負荷90との間で電力の授受が行なわれるとき、各インバータのキャリア信号の位相が互いに180°ずらされる。言い換えると、インバータ10のキャリア信号に対してインバータ20のキャリア信号を反転させる。
【0076】
この実施の形態4によるハイブリッド車両の全体構成は、図1に示したハイブリッド車両100と同じである。
【0077】
再び図6を参照して、実施の形態4におけるECU30は、実施の形態1におけるECUの構成において、第2のインバータ制御部34に代えて第2のインバータ制御部34Aを含む。第2のインバータ制御部34Aは、充放電制御部36から零相電圧指令AC2を受けているとき、第1のインバータ制御部32において用いられるキャリア信号に対して位相を180°ずらしたキャリア信号を用いて、零相電圧指令AC2に基づいて信号PWM2を生成する。なお、第2のインバータ制御部34Aのその他の構成は、第2のインバータ制御部34と同じである。
【0078】
図10は、実施の形態4における各インバータのスイッチングパターンを示した図である。図10を参照して、第1のインバータ制御部32は、キャリア信号CR1を用いて、零相電圧指令AC1(=VAC/2)に基づいて信号PWM1を生成する。すなわち、零相電圧指令AC1がキャリア信号CR1よりも小さい時刻t1〜t2,t3〜t4において、インバータ10の各相下アームがオンされる。一方、零相電圧指令AC1がキャリア信号CR1よりも大きい時刻t1前,t2〜t3およびt4以降においては、インバータ10の各相上アームがオンされる。
【0079】
第2のインバータ制御部34Aは、キャリア信号CR1に対して位相を180°ずらしたキャリア信号CR2を用いて、零相電圧指令AC2(=−VAC/2)に基づいて信号PWM2を生成する。すなわち、零相電圧指令AC2がキャリア信号CR2よりも大きい時刻t1〜t2,t3〜t4においては、インバータ20の各相上アームがオンされる。一方、零相電圧指令AC2がキャリア信号CR2よりも小さい時刻t1前,t2〜t3およびt4以降においては、インバータ20の各相下アームがオンされる。
【0080】
そうすると、中性点N1の瞬時電位VN1と中性点N2の瞬時電位VN2との間には、VN1=−VN2の関係が成立するので、中性点N1,N2に電気的に接続される負荷90からみた場合、インバータ10,20が発生するコモンモード電圧は相殺されて常時零となる。
【0081】
なお、実際には、モータジェネレータMG1とMG2とのコモンモードインピーダンスが異なるので、コモンモード電圧が完全に相殺されて零となることはないが、キャリア信号CR1,CR2が同相の場合に比べてコモンモード電圧は抑制される。
【0082】
したがって、この実施の形態4によれば、コモンモードチョークコイル40をさらに小型化することができる。
【0083】
なお、上記においては、実施の形態1の構成において各インバータのキャリア信号を反転させるものとしたが、実施の形態2または3の構成において各インバータのキャリア信号を反転させてもよい。
【0084】
[実施の形態5]
図11は、実施の形態5による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。図11を参照して、このハイブリッド車両100Cは、実施の形態4におけるハイブリッド車両の構成において、インダクタ85をさらに備える。インダクタ85は、電力線ACL1上に設けられる。このインダクタ85は、モータジェネレータMG1とMG2とのコモンモードインピーダンスの差を補償するために設けられる。
【0085】
すなわち、主に発電用として用いられるモータジェネレータMG1は、車両走行用に用いられるモータジェネレータMG2に比べてサイズが小さく、モータジェネレータMG1のコモンモードインピーダンスは、モータジェネレータMG2のコモンモードインピーダンスよりも小さい。そこで、その差を補償するために、モータジェネレータMG1の中性点N1に接続される電力線ACL1上にインダクタ85が設けられる。
【0086】
インダクタ85が設けられることにより、モータジェネレータMG1側とMG2側との回路定数が平衡するので、インバータ10,20のキャリア信号を互いに反転させた場合、コモンモード電圧の相殺効果が高くなる。
【0087】
したがって、この実施の形態5によれば、コモンモード電圧をさらに抑制することができる。その結果、コモンモードチョークコイル40をさらに小型化することができる。
【0088】
なお、特に図示しないが、実施の形態2または3の構成において各インバータのキャリア信号を反転させ、さらに電力線ACL1上にインダクタ85を設けてもよい。
【0089】
また、モータジェネレータMG2のコモンモードインピーダンスの方がモータジェネレータMG1のコモンモードインピーダンスよりも小さいときは、モータジェネレータMG2の中性点N2に接続される電力線ACL2上にインダクタ85が設けられる。
【0090】
[実施の形態6]
この実施の形態6では、中性点N1,N2を介して車両と車両外部の負荷90との間で電力の授受が行なわれるとき、各インバータ10,20において、キャリア信号の位相が各相ごとに互いに120°ずつずらされる。
【0091】
この実施の形態6によるハイブリッド車両の全体構成は、図1に示したハイブリッド車両100と同じである。
【0092】
再び図6を参照して、実施の形態6におけるECU30は、実施の形態1におけるECUの構成において、第1および第2のインバータ制御部32,34に代えてそれぞれ第1および第2のインバータ制御部32A,34Bを含む。
【0093】
第1のインバータ制御部32Aは、充放電制御部36から零相電圧指令AC1を受けているとき、互いに120°ずつ位相がずらされた各相キャリア信号を用いて、零相電圧指令AC1に基づいて信号PWM1を生成する。同様に、第2のインバータ制御部34Bは、充放電制御部36から零相電圧指令AC2を受けているとき、互いに120°ずつ位相がずらされた各相キャリア信号を用いて、零相電圧指令AC2に基づいて信号PWM2を生成する。なお、第1および第2のインバータ制御部32A,34Bのその他の構成は、それぞれ第1および第2のインバータ制御部32,34と同じである。
【0094】
図12は、実施の形態6におけるインバータ10のスイッチングパターンを示した図である。図12を参照して、第1のインバータ制御部32Aは、互いに位相が120°ずつずらされたU相キャリア信号CR1u、V相キャリア信号CR1vおよびW相キャリア信号CR1wを用いて、零相電圧指令AC1(=VAC/2)に基づいて信号PWM1を生成する。
【0095】
すなわち、零相電圧指令AC1がU相キャリア信号CR1uよりも大きい時刻t2前、t3〜t8,t9以降においては、インバータ10のU相上アームがオンされる。また、零相電圧指令AC1がV相キャリア信号CR1vよりも大きい時刻t4前,t5〜t10においては、インバータ10のV相上アームがオンされる。さらに、零相電圧指令AC1がW相キャリア信号CR1wよりも大きい時刻t1〜t6,t7以降においては、インバータ10のW相上アームがオンされる。
【0096】
したがって、時刻t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6,t7〜t8およびt9〜t10においては、インバータ10のスイッチングパターンは(1,1,1)となり、中性点N1の電位VN1は、VDC/2となる。また、その他の時間帯においては、インバータ10のスイッチングパターンは(0,1,1),(1,0,1)および(1,1,0)のいずれかとなり、中性点N1の電位VN1は、VDC/6となる。
【0097】
図13は、実施の形態6におけるインバータ20のスイッチングパターンを示した図である。図13を参照して、第2のインバータ制御部34Bは、互いに位相が120°ずつずらされたU相キャリア信号CR2u、V相キャリア信号CR2vおよびW相キャリア信号CR2wを用いて、零相電圧指令AC2(=−VAC/2)に基づいて信号PWM2を生成する。
【0098】
すなわち、零相電圧指令AC2がU相キャリア信号CR2uよりも小さい時刻t14前,t15以降においては、インバータ20のU相下アームがオンされる。また、零相電圧指令AC2がV相キャリア信号CR2vよりも小さい時刻t11〜t16,t17以降においては、インバータ20のV相下アームがオンされる。さらに、零相電圧指令AC2がW相キャリア信号CR2wよりも小さい時刻t12前,t13〜t18,t19以降においては、インバータ20のW相下アームがオンされる。
【0099】
したがって、時刻t11〜t12,t13〜t14,t15〜t16,t17〜t18およびt19以降においては、インバータ20のスイッチングパターンは(0,0,0)となり、中性点N2の電位VN2は、−VDC/2となる。また、その他の時間帯においては、インバータ20のスイッチングパターンは(1,0,0),(0,1,0)および(0,0,1)のいずれかとなり、中性点N2の電位VN2は、−VDC/6となる。
【0100】
したがって、中性点N1,N2の電位VN1,VN2の和の1/2であるコモンモード電圧Vcomは、振幅が±VDC/6であり、かつ、キャリア周波数の3倍の周波数を有する3レベルの矩形波状電圧となる。
【0101】
このように、この実施の形態6においては、コモンモードチョークコイル40に印加されるコモンモード電圧が実施の形態1に比べて1/3となり、かつ、周波数が3倍となるので、コモンモードチョークコイル40のコアの最大磁束密度が1/9に低減する。したがって、この実施の形態6によれば、実施の形態1に比べてコモンモードチョークコイル40のコアを1/3の大きさに低減することができる。さらに、コモンモード電圧の低減により、コモンモードチョークコイル40のコイル絶縁の容易化も期待できる。
【0102】
なお、上記においては、実施の形態1の構成において各インバータの各相キャリア信号の位相をずらすものとしたが、実施の形態2または3の構成において各インバータの各相キャリア信号の位相を互いに120°ずつずらしてもよい。
【0103】
なお、上記の各実施の形態において、蓄電装置Bとインバータ10,20との間で電圧変換を行なうコンバータを蓄電装置Bとインバータ10,20との間に設けてもよい。なお、そのようなコンバータとしては、公知のチョッパ回路を用いることができる。
【0104】
また、上記の各実施の形態においては、ハイブリッド車両は2つのモータジェネレータを備えるものとしたが、この発明は、3つ以上のモータジェネレータを備えたハイブリッド車両にも適用し得る。その場合、3つ以上のモータジェネレータのうち2つのモータジェネレータおよびそれに対応するインバータを用いて上記の各実施の形態を実現することができる。
【0105】
また、上記の各実施の形態においては、ハイブリッド車両は、動力分割機構4によりエンジン2の動力を車軸とモータジェネレータMG1とに分割して伝達可能なシリーズ/パラレル型とした。しかしながら、この発明は、モータジェネレータMG1を駆動するためにのみエンジン2を用い、モータジェネレータMG2でのみ車両の駆動力を発生する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド車両にも適用可能である。
【0106】
また、この発明は、エンジン2を備えずに電力のみで走行する電気自動車や、電源として蓄電装置に加えて燃料電池をさらに備える燃料電池車にも適用可能である。
【0107】
なお、上記において、負荷90は、この発明における「車両外部の電気負荷または電源」に対応し、モータジェネレータMG1,MG2は、この発明における「複数の交流回転電機」に対応する。また、電力線ACL1,ACL2(ACL3,ACL4)は、この発明における「電力線対」を形成し、ECU30は、この発明における「制御ユニット」に対応する。
【0108】
さらに、Yコンデンサ50,55は、この発明における「ラインバイパスコンデンサ」に対応し、実施の形態3におけるYコンデンサ50は、この発明における「もう1つのラインバイパスコンデンサ」に対応する。また、さらに、第1および第2のインバータ制御部32(32A),34(34A,34B)は、この発明における「複数の信号生成部」に対応する。
【0109】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】この発明の実施の形態1による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。
【図2】三相インバータの回路図である。
【図3】第1のスイッチングパターン時の三相インバータの等価回路を示した図である。
【図4】第2のスイッチングパターン時の三相インバータの等価回路を示した図である。
【図5】第3のスイッチングパターン時の三相インバータの等価回路を示した図である。
【図6】図1に示すECUの機能ブロック図である。
【図7】図1に示すインバータおよびモータジェネレータの零相等価回路を示した図である。。
【図8】実施の形態2による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。
【図9】実施の形態3による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。
【図10】実施の形態4における各インバータのスイッチングパターンを示した図である。
【図11】実施の形態5による車両の一例として示されるハイブリッド車両の全体ブロック図である。
【図12】実施の形態6におけるインバータ10のスイッチングパターンを示した図である。
【図13】実施の形態6におけるインバータ20のスイッチングパターンを示した図である。
【符号の説明】
【0111】
2 エンジン、4 動力分割機構、6 車輪、10,20 インバータ、10A,20A 上アーム、10B,20B 下アーム、12,22 U相アーム、14,24 V相アーム、16,26 W相アーム、30 ECU、32,32A 第1のインバータ制御部、34,34A,34B 第2のインバータ制御部、36 充放電制御部、40 コモンモードチョークコイル、50,55 Yコンデンサ、60 ACポート、70 プラグ、80 車両アース、85 インダクタ、90 負荷、95 接地ノード、100,100A〜100C ハイブリッド車両、B 蓄電装置、C1,C2 平滑コンデンサ、C3,C4 容量、PL 正極線、NL 負極線、MG1,MG2 モータジェネレータ、N1,N2,NDC,N 中性点、ACL1〜ACL4 電力線、C5〜C8 コンデンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能な電力制御装置であって、
星形結線された多相巻線を固定子巻線として各々が含む複数の交流回転電機と、
前記複数の交流回転電機に対応して設けられ、パルス幅変調法により制御される複数のインバータと、
前記電気負荷または前記電源に接続可能なプラグと、
前記複数の交流回転電機のうち2つの交流回転電機の多相巻線の中性点と前記プラグとの間に配設される電力線対と、
前記2つの交流回転電機に対応するインバータを制御することによって前記蓄電装置と前記電気負荷または前記電源との間で電力を授受するように構成された制御ユニットと、
前記電力線対に配設されるコモンモードチョークコイルと、
前記コモンモードチョークコイルと前記プラグとの間において前記電力線対と車両アースとの間に接続されるラインバイパスコンデンサとを備える電力制御装置。
【請求項2】
車両に搭載された蓄電装置と車両外部の電気負荷または電源との間で電力を授受可能な電力制御装置であって、
星形結線された多相巻線を固定子巻線として各々が含む複数の交流回転電機と、
前記複数の交流回転電機に対応して設けられ、パルス幅変調法により制御される複数のインバータと、
前記電気負荷または前記電源に接続可能なプラグと、
前記複数の交流回転電機のうち2つの交流回転電機の多相巻線の中性点と前記プラグとの間に配設される電力線対と、
前記2つの交流回転電機に対応するインバータを制御することによって前記蓄電装置と前記電気負荷または前記電源との間で電力を授受するように構成された制御ユニットと、
前記電力線対に配設されるコモンモードチョークコイルと、
前記コモンモードチョークコイルと前記中性点との間において前記電力線対と車両アースとの間に接続されるラインバイパスコンデンサとを備える電力制御装置。
【請求項3】
前記コモンモードチョークコイルと前記プラグとの間において前記電力線対と前記車両アースとの間に接続されるもう1つのラインバイパスコンデンサをさらに備える、請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、対応するインバータのスイッチング素子をオン/オフするための信号を各々が生成する複数の信号生成部を含み、
前記2つの交流回転電機に対応する信号生成部は、互いに位相が略180°ずらされた搬送波を用いて前記信号を生成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記2つの交流回転電機のうちコモンモードインピーダンスが小さい方の交流回転電機の中性点に接続された電力線上に配設されるインダクタをさらに備える、請求項4に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、対応するインバータのスイッチング素子をオン/オフするための信号を各々が生成する複数の信号生成部を含み、
前記2つの交流回転電機に対応するインバータの各々は、三相インバータであり、
前記2つの交流回転電機に対応する信号生成部の各々は、互いに位相が略120°ずつずらされた第1から第3の搬送波を用いて、対応するインバータのU相スイッチング素子、V相スイッチング素子およびW相スイッチング素子をそれぞれオン/オフするための信号を生成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記複数の交流回転電機の少なくとも1つから駆動トルクを受ける車輪と、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力制御装置とを備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−193788(P2008−193788A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24436(P2007−24436)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】