説明

電力合成形増幅器

【課題】広帯域かつ高効率で、容易に実現可能な電力合成形増幅器を提供する。
【解決手段】所定の入力信号が分配される2つの経路の一方に設けられて入力信号を増幅するB級動作トランジスタ3と、他方の経路に設けられて入力信号を増幅するC級動作トランジスタ4と、B級動作トランジスタ3の出力電力とC級動作トランジスタ4の出力電力とを合成するT分岐11とを有する電力合成形増幅器である。B級動作トランジスタ3の出力電力は、第1アイソレータ9を介してT分岐11に送られ、C級動作トランジスタ4の出力電力は、第2アイソレータ10を介してT分岐11に送られる。第1アイソレータ9によりB級動作トランジスタ3の負荷インピーダンスを一定値にし、第2アイソレータ10がC級動作トランジスタ4の負荷インピーダンスを一定値にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばマイクロ波通信、移動体通信、衛星通信向けの通信装置等に用いることができる高効率な電力合成形増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
図8、図9は、Steve C.Cripps著“RF Power Amplifier for Wireless Communications”,London,Artech HouseのP.219-239に記載された、ドハティの考案による電力合成形増幅器の構成及び動作を説明するための図である。図8は、飽和出力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルにおける従来の電力合成形増幅器の等価回路図であり、図9は飽和出力電力レベルにおける従来の電力合成形増幅器の等価回路図である。
【0003】
図8、図9において、符号3はB級動作するトランジスタ(以下、「B級動作トランジスタ」という)、符号4はC級動作するトランジスタ(以下、「C級動作トランジスタ」という)、符号37は1/4波長インピーダンス変換線路である。
B級動作トランジスタ3は入力信号をB級増幅するものであり、その出力端は、1/4波長インピーダンス変換線路37を介して負荷インピーダンスRLにより終端される。C級動作トランジスタ4は入力信号をC級増幅するものであり、その出力端は、飽和出力から6dB以上のバックオフを取った出力電力レベルでは開放端となり、飽和出力電力レベルでは負荷インピーダンスRLにより終端される。
【0004】
B級動作トランジスタ3の最適負荷を“Ropt”とすると、負荷インピーダンスRLは“(1/2)×Ropt”、1/4波長インピーダンス変換線路37の特性インピーダンスは“Ropt”となる。C級動作トランジスタ4は、飽和出力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルにおいては “OFF”、飽和出力から6dB未満のバックオフをとった出力電力レベルにおいては“ON”となるように動作する。
【0005】
図10は、従来の電力合成形増幅器の回路図であり、図中、符号1は入力端子、符号2は出力端子、符号38は入力整合回路、符号39は出力整合回路、符号40は移相器である。符号3、4、37については、図8、図9に示すものと同じである。
B級動作トランジスタ3とC級動作トランジスタ4とは、入力整合回路38及び出力整合回路39の間に並列に接続されている。B級動作トランジスタ3の出力電力は、1/4波長インピーダンス変換線路37を介して出力整合回路39に供給される。C級動作トランジスタ4の出力電力は、直接、出力整合回路39に供給される。入力整合回路38とC級動作トランジスタ4との間に設けられる移相器40により、B級動作トランジスタ3とC級動作トランジスタ4の出力電力の位相差を補正される。
出力整合回路39は、“(1/2)×Ropt”である負荷インピーダンスRLを、マイクロ波部品の標準インタフェースのインピーダンスである“50Ω”に変換するものである。
【0006】
このような従来の電力合成形増幅器では、飽和出力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルにおいては、C級動作トランジスタ4が“OFF”しているので、2つのトランジスタをB級動作させて電力増幅する場合と比較して、効率は2倍になる。またピークファクタの大きい変調波信号を増幅する場合には、ピーク出力時のみC級動作トランジスタ4が“ON”となるので、平均的な効率が良くなる。このような方法で、バックオフの大きい出力電力レベルにおける効率を改善する技術は、ピーク電力注入と呼ばれている。
【0007】
飽和出力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルでは、図8に示すように、C級動作トランジスタ4が“OFF”となってその出力インピーダンスが開放となるために、B級動作トランジスタ3から負荷側を見込むインピーダンスは、“2×Ropt”となる。
他方、飽和出力電力レベルでは、図9に示すように、B級動作トランジスタ3及びC級動作トランジスタ4がいずれも“ON”である。このとき、図9中のb点、c点から負荷側を見込むインピーダンスは、それぞれ“Ropt”である。1/4波長インピーダンス変換線路37の特性インピーダンスは“Ropt”であるので、B級動作トランジスタ3から負荷側を見込むインピーダンスも“Ropt”である。
【0008】
このように飽和出力電力レベルにおいては、B級動作トランジスタ3、C級動作トランジスタ4のいずれも、負荷側を見込むインピーダンスが“Ropt”となる。なお、6dBバックオフ点と飽和出力の中間の出力電力レベルにおいては、負荷側を見込むインピーダンスが“2×Ropt”と“Ropt”の中間の値となる。出力電力レベルに応じて負荷側を見込むインピーダンスを変化させることにより、広範囲のレンジをカバーして増幅器の高効率化を図る技術は、負荷変調と呼ばれている。
【0009】
このように従来の電力合成形増幅器は、ピーク電力注入と負荷変調を利用して、増幅器の高効率化を図っている。上記の電力合成形増幅器の効率は、6dBバックオフ点から飽和出力までの出力電力レベルにおいて、70%〜78.5%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の電力合成形増幅器には、以下のような問題点がある。まず、1/4波長インピーダンス変換線路37よりも出力側に出力整合回路39が設けられているために帯域が狭くなる。また、6dBバックオフ点から飽和出力までの出力電力レベルにおける効率が悪くなる。さらに、高出力トランジスタを使用する場合に、特性インピーダンスの低い1/4波長インピーダンス変換線路37が必要となり実現が困難になる。例えば、出力180W級のLDMOSFETの場合、 “Ropt”は約2Ωである。
【0011】
本発明の課題は、このような問題点を解決するもので、広帯域かつ高効率で、容易に実現可能な電力合成形増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような課題を解決する本発明の電力合成形増幅器は、所定の入力信号が分配される2つの経路の一方に設けられており、前記入力信号をB級動作により増幅するための第1プッシュプル増幅器と、他方の経路に設けられて前記入力信号をC級動作により増幅するための第2プッシュプル増幅器と、前記第1プッシュプル増幅器の出力電力と前記第2プッシュプル増幅器の出力電力とを合成する合成器と、前記第1プッシュプル増幅器の負荷インピーダンスを一定値にするとともに前記第1プッシュプル増幅器の出力電力を前記合成器に入力するための第1アイソレータと、前記第2プッシュプル増幅器の負荷インピーダンスを一定値にするとともに前記第2プッシュプル増幅器の出力電力を前記合成器に入力するための第2アイソレータと、を備える。
前記第1プッシュプル増幅器は、前記入力信号をそれぞれ異なる複数の経路からなる第1経路群に分配する第1分配器と、前記第1経路群のそれぞれの経路に少なくとも一つずつ接続されて前記入力信号を増幅するトランジスタからなる、第1トランジスタ群と、前記第1トランジスタ群のそれぞれのトランジスタの出力電力を合成する第1合成器と、前記第1トランジスタ群のそれぞれのトランジスタと前記第1合成器との間に設けられて、各トランジスタの出力インピーダンス整合を図る第1出力整合回路と、を有している。
前記第2プッシュプル増幅器は、前記入力信号をそれぞれ異なる複数の経路からなる第2経路群に分配する第2分配器と、前記第2経路群のそれぞれの経路に少なくとも一つずつ接続されて前記入力信号を増幅するトランジスタからなる、第2トランジスタ群と、前記第2トランジスタ群のそれぞれのトランジスタの出力電力を合成する第2合成器と、前記第2トランジスタ群のそれぞれのトランジスタと前記第2合成器との間に設けられて、各トランジスタの出力インピーダンス整合を図る第2出力整合回路と、を有している。
【0013】
このような電力合成形増幅器は、第1アイソレータ及び第2アイソレータが、第1プッシュプル増幅器及び第2プッシュプル増幅器への負荷変調による影響を隠し、6dBバックオフ点から飽和出力までの出力電力レベルにおける負荷インピーダンスを一定値にするために、効率が良くなる。また、1/4波長インピーダンス変換線路を用いないために広帯域となり、容易に実現可能となる。また、第1トランジスタ群の各トランジスタ及び第2トランジスタ群の各トランジスタの出力インピーダンスが最適になる。
【0014】
本発明の電力合成形増幅器を構成する前記合成器は、例えば、T分岐、ウィルキンソン形電力分配器、90度ハイブリッド、180度ハイブリッド、又はバラン等により実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の電力合成形増幅器を示す回路図。
【図2】第1実施形態の電力合成形増幅器の出力電力特性を示す図。
【図3】第1実施形態の電力合成形増幅器の効率特性を示す図。
【図4】本発明の第2実施形態の電力合成形増幅器を示す回路図。
【図5】本発明の第3実施形態の電力合成形増幅器を示す回路図。
【図6】本発明の第4実施形態の電力合成形増幅器を示す回路図。
【図7】本発明の第5実施形態の電力合成形増幅器を示す回路図。
【図8】飽和出力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルにおける従来の電力合成形増幅器の等価回路図。
【図9】飽和出力電力レベルにおける従来の電力合成形増幅器の等価回路図。
【図10】従来の電力合成形増幅器の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の電力合成形増幅器の第1実施形態を示す回路図であり、符号1は入力端子、符号2は出力端子、符号3はB級動作トランジスタ、符号4はC級動作トランジスタ、符号5は第1入力整合回路、符号6は第1出力整合回路、符号7は第2入力整合回路、符号8は第2出力整合回路、符号9は第1アイソレータ、符号10は第2アイソレータ、符号11はT分岐、符号12は移相器である。B級動作トランジスタ3の最適負荷は、従来技術の説明と同じく “Ropt”とする。
【0017】
第1入力整合回路5は、入力端子1に接続される前段の回路との間でインピーダンス整合をとるための回路である。第1入力整合回路5は、入力端子1から入力される入力信号をB級動作トランジスタ3に入力する。B級動作トランジスタ3は、第1入力整合回路5から入力された入力信号をB級増幅する。
【0018】
第1出力整合回路6は、B級動作トランジスタ3の出力端と第1アイソレータ9との間に接続される。第1アイソレータ9は、第1出力整合回路6とT分岐11との間に接続される。第1アイソレータ9により、B級動作トランジスタ3の出力電力が出力端子2から反射されてB級動作トランジスタ3に戻ることがなくなる。
第1出力整合回路6及び第1アイソレータ9により、B級動作トランジスタ3の負荷側を見込むインピーダンスが一定値となる。この実施形態では、B級動作トランジスタ3の負荷側を見込むインピーダンスが、B級動作トランジスタ3の最適負荷の2倍である“2×Ropt”に設定される。
【0019】
移相器12は、入力端子1と第2入力整合回路7との間に接続され、B級動作トランジスタ3とC級動作トランジスタ4の出力電力の位相差を補正するものである。
第2入力整合回路7は、入力端子1に接続される前段の回路との間でインピーダンス整合をとるための回路である。第2入力整合回路7は、入力端子1から入力される入力信号をC級動作トランジスタ4に入力する。C級動作トランジスタ4は、第2入力整合回路7から入力された入力信号をC級増幅する。
【0020】
第2出力整合回路8は、C級動作トランジスタ4の出力端と第2アイソレータ10との間に接続される。第2アイソレータ10は、第2出力整合回路8とT分岐11との間に接続される。第2アイソレータ10により、C級動作トランジスタ4の出力電力が出力端子2から反射されてC級動作トランジスタ4に戻ることがなくなる。
第2出力整合回路8及び第2アイソレータ10により、C級動作トランジスタ4の負荷側を見込むインピーダンスが一定値となる。この実施形態では、C級動作トランジスタ4の負荷側を見込むインピーダンスが、C級動作トランジスタ4の最適負荷の2倍である“2×Ropt”に設定される。
【0021】
T分岐11は、B級動作トランジスタ3の出力電力及びC級動作トランジスタ4の出力電力を合成して、合成した出力電力を出力端子2を介して外部に出力するものである。
【0022】
このような電力合成形増幅器の動作について説明する。
入力端子1から入力された入力信号は、B級動作トランジスタ3の配される経路(以下、「第1経路」という)及びC級動作トランジスタ4の配される経路(以下、「第2経路」という)のそれぞれに供給される。第1経路に供給された入力信号は、第1入力整合回路5を介してB級動作トランジスタ3に入力される。B級動作トランジスタ3は、入力信号を増幅してその出力電力を第1出力整合回路6に入力する。第1出力整合回路6は、B級動作トランジスタ3の出力電力を第1アイソレータ9を介してT分岐11へ送る。
【0023】
第2経路に供給された入力信号は、移相器12で所定の量だけ位相が補正された後に、第2入力整合回路7を介してC級動作トランジスタ4に入力される。C級動作トランジスタ4は、入力信号を増幅してその出力電力を第2出力整合回路8に入力する。第2出力整合回路8は、C級動作トランジスタ4の出力電力を第2アイソレータ10を介してT分岐11へ送る。
【0024】
T分岐11は、第1経路及び第2経路のそれぞれから送られてきた出力電力を合成して、出力端子2から外部へ出力する。
【0025】
このような電力合成形増幅器では、従来技術で説明した電力合成形増幅器と同様に、B級動作トランジスタ3を流れる電流の量とC級動作トランジスタ4を流れる電流の量との差により負荷変調が起こり、図1中のb’点及びc’点から負荷側を見込むインピーダンスは、飽和出力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルにおいて“2×Ropt”から“Ropt”の間の値となる。しかし、第1アイソレータ9及び第2アイソレータ10により、B級動作トランジスタ3から負荷側を見込むインピーダンス及びC級動作トランジスタ4から負荷側を見込むインピーダンスは、出力電力のレベルに依らず、一定値 “2×Ropt”となる。
【0026】
図2、図3に第1実施形態の電力合成形増幅器の出力電力特性、効率特性を示す。これらの図から、この電力合成形増幅器は、6dBバックオフ点から飽和出力までの出力電力レベルにおいて80%以上の効率であることがわかる。この高い効率は、出力電力のレベルに依らず、負荷インピーダンスを一定値 “2×Ropt”に保持することにより得られたものである。なお、飽和電力から6dB以上のバックオフをとった出力電力レベルにおける効率は、従来の電力合成形増幅器と同様である。
本発明の電力合成形増幅器は、従来のような1/4波長インピーダンス変換線路37を用いずに、B級動作、C級動作トランジスタ3、4の近傍に第1、第2出力整合回路6、8を設けてインピーダンス整合を実現しているために広帯域となる。また、1/4波長インピーダンス変換線路37を用いないために、高出力トランジスタを使用する場合でも、容易に電力合成形増幅器を実現可能になる。
【0027】
なお、第1実施形態では、B級動作トランジスタ3、C級動作トランジスタ4のそれぞれを理想的にB級動作、C級動作させる場合について説明したが、理想的なB級動作トランジスタ3の代わりにAB級動作させるトランジスタを使用し、理想的なC級動作トランジスタ4の代わりにAB級〜C級動作させるトランジスタを用いても第1実施形態と同様の効果を奏することは明らかである。このことは、以下の実施の形態でも同様である。
【0028】
図4は、第2実施形態の電力合成形増幅器の回路図であり、図中、符号13は第1ウイルキンソン形電力分配器、符号14は第2ウイルキンソン形電力分配器である。符号1〜10、及び12は、図1に同じである。
この電力合成形増幅器は、入力端子1から入力された入力信号が第1ウイルキンソン形電力分配器13により、B級動作トランジスタ3の配される第1経路及びC級動作トランジスタ4の配される第2経路のそれぞれに供給される。また、T分岐11に代えて第2ウイルキンソン形電力分配器14を用いて、B級動作トランジスタ3の出力電力及びC級動作トランジスタ4の出力電力を合成して出力端子2から外部に出力するように構成されている。
このような第2実施形態の電力合成形増幅器の動作及び作用は、第1実施形態の電力合成形増幅器の場合と同様である。
【0029】
図5は、第3実施形態の電力合成形増幅器の回路図であり、図中、符号15は第1の90度ハイブリッド、符号16は第2の90度ハイブリッドである。符号1〜10、及び12は、図1に同じである。
この電力合成形増幅器は、入力端子1から入力された入力信号が第1の90度ハイブリッド15により、B級動作トランジスタ3の配される第1経路及びC級動作トランジスタ4の配される第2経路のそれぞれに供給される。また、T分岐11に代えて第2の90度ハイブリッド16を用いて、B級動作トランジスタ3の出力電力及びC級動作トランジスタ4の出力電力を合成して出力端子2から外部に出力するように構成されている。
このような第3実施形態の電力合成形増幅器の動作及び作用は、第1実施形態の電力合成形増幅器の場合と同様である。
【0030】
図6は、第4実施形態の電力合成形増幅器の回路図であり、図中、符号17は第1の180度ハイブリッド、符号18は第2の180度ハイブリッドである。符号1〜10、及び12は、図1に同じである。
この電力合成形増幅器は、入力端子1から入力された入力信号が第1の180度ハイブリッド17により、B級動作トランジスタ3の配される第1経路及びC級動作トランジスタ4の配される第2経路のそれぞれに供給される。また、T分岐11に代えて第2の180度ハイブリッド18を用いて、B級動作トランジスタ3の出力電力及びC級動作トランジスタ4の出力電力を合成して出力端子2から外部に出力するように構成されている。
このような第4実施形態の電力合成形増幅器の動作及び作用は、第1実施形態の電力合成形増幅器の場合と同様である。
なお、第1の180度ハイブリッド17、第2の180度ハイブリッド18のそれぞれの代わりに、バランを用いてもよい。
【0031】
図7は、第5実施形態の電力合成形増幅器の回路図であり、同じ構成の第1、第2プッシュプル増幅器101、102が並列に接続された構成をもつ電力合成形増幅器である。
図中、符号19は分配器、符号20は合成器であり、符号9、10、及び12は図1に同じである。分配器19により、入力端子1から入力された入力信号が第1プッシュプル増幅器101が設けられた経路と、第2プッシュプル増幅器102が設けられた経路とに分配される。第1プッシュプル増幅器101と第2プッシュプル増幅器102とは同じ構成であり、第1プッシュプル増幅器101がB級動作により入力信号を増幅し、第2プッシュプル増幅器102がC級動作により入力信号を増幅するようになっている。第1プッシュプル増幅器101の出力電力及び第2プッシュプル増幅器102の出力電力は、それぞれ第1アイソレータ9、第2アイソレータ10を通って合成器20に送られ、ここで合成される。
【0032】
符号21〜28は第1プッシュプル増幅器101の各構成要素に付されており、符号21は第1B級動作トランジスタ、符号22は第2B級動作トランジスタ、符号23は第1プッシュプル増幅器101の第1入力整合回路、符号24は第1プッシュプル増幅器101の第1出力整合回路、符号25は第1プッシュプル増幅器101の第2入力整合回路、符号26は第1プッシュプル増幅器101の第2出力整合回路、符号27は第1プッシュプル増幅器101の第1バラン、符号28は第1プッシュプル増幅器101の第2バランである。
【0033】
第1バラン27は、分配器19から送られてきた入力信号を第1B級動作トランジスタ21が設けられた経路と、第2B級動作トランジスタ22が設けられた経路とに分配する分配器である。
第1入力整合回路23及び第2入力整合回路25は、それぞれ第1バラン27から送られる入力信号を第1B級動作トランジスタ21、第2B級動作トランジスタ22に入力するものであり、各トランジスタの入力インピーダンス整合を図るものである。
第1B級動作トランジスタ21及び第2B級動作トランジスタ22は、それぞれ第1入力整合回路23、第2入力整合回路25から送られた入力信号をB級動作により増幅するものである。
第1出力整合回路24及び第2出力整合回路26は、それぞれ第1B級動作トランジスタ21、第2B級動作トランジスタ22の出力インピーダンス整合を図るものである。
第2バラン28は、第1出力整合回路24及び第2出力整合回路26から送られる第1B級動作トランジスタ21及び第2B級動作トランジスタ22の出力電力を合成する合成器である。
【0034】
符号29〜36は第2プッシュプル増幅器102の各構成要素に付されており、符号29は第1C級動作トランジスタ、符号30は第2C級動作トランジスタ、符号31は第2プッシュプル増幅器102の第1入力整合回路、符号32は第2プッシュプル増幅器102の第1出力整合回路、符号33は第2プッシュプル増幅器102の第2入力整合回路、符号34は第2プッシュプル増幅器102の第2出力整合回路、符号35は第2プッシュプル増幅器102の第1バラン、符号36は第2プッシュプル増幅器102の第2バランである。
【0035】
上述のように第1プッシュプル増幅器101と第2プッシュプル増幅器102とは同じ構成であり、動作もほぼ同じである。異なる点は、第1プッシュプル増幅器101がB級動作により増幅を行うために、第1B級動作トランジスタ21、第2B級動作トランジスタ22を用いるのに対して、第2プッシュプル増幅器102がC級動作により増幅を行うために、第1C級動作トランジスタ29、第2C級動作トランジスタ30を用いる点である。
【0036】
この実施形態では、第1プッシュプル増幅器101がB級動作により入力信号を増幅し、第2プッシュプル増幅器102がC級動作により入力信号を増幅するようになっており、第1プッシュプル増幅器101が、第1〜第4実施形態の第1入力整合回路5、B級動作トランジスタ3、及び第1出力整合回路6を含む回路に相当し、第2プッシュプル増幅器102が、第1〜第4実施形態の第2入力整合回路7、C級動作トランジスタ4、及び第1出力整合回路8を含む回路に相当する。
なお、分配器19及び合成器20には、例えばT分岐、ウイルキンソン形電力分配器、90度ハイブリッド、180度ハイブリッド、又はバラン等を使用することができる。
【0037】
第5実施形態の電力合成形増幅器においても、B級動作させる第1B級動作トランジスタ21及び第2B級動作トランジスタ22を流れる電流の量と、C級動作させる第1C級動作トランジスタ29及び第2C級動作トランジスタ30を流れる電流の量との相違により負荷変調が起こり、図7中のb’’点とc’’点における負荷インピーダンスは、出力電力レベルに応じて変化する。しかし、第1アイソレータ9及び第2アイソレータ10により、この負荷インピーダンスの変化は、各トランジスタ21、22、29、30から隠される。したがって、6dBバックオフ点から飽和出力までの出力電力レベルにおいて、高い効率を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 入力端子
2 出力端子
3 B級動作トランジスタ
4 C級動作トランジスタ
5 第1入力整合回路
6 第1出力整合回路
7 第2入力整合回路
8 第2出力整合回路
9 第1アイソレータ
10 第2アイソレータ
11 T分岐
12 移相器
13 第1ウイルキンソン形電力分配器
14 第2ウイルキンソン形電力分配器
15 第1の90度ハイブリッド
16 第2の90度ハイブリッド
17 第1の180度ハイブリッド
18 第2の180度ハイブリッド
19 分配器
20 合成器
21 第1B級動作トランジスタ
22 第2B級動作トランジスタ
23 第1プッシュプル増幅器の第1入力整合回路
24 第1プッシュプル増幅器の第1出力整合回路
25 第1プッシュプル増幅器の第2入力整合回路
26 第1プッシュプル増幅器の第2出力整合回路
27 第1プッシュプル増幅器の第1バラン
28 第1プッシュプル増幅器の第2バラン
29 第1C級動作トランジスタ
30 第2C級動作トランジスタ
31 第2プッシュプル増幅器の第1入力整合回路
32 第2プッシュプル増幅器の第1出力整合回路
33 第2プッシュプル増幅器の第2入力整合回路
34 第2プッシュプル増幅器の第2出力整合回路
35 第2プッシュプル増幅器の第1バラン
36 第2プッシュプル増幅器の第2バラン
101 第1プッシュプル増幅器
102 第2プッシュプル増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の入力信号が分配される2つの経路の一方に設けられており、前記入力信号をB級動作により増幅するための第1プッシュプル増幅器と、
他方の経路に設けられて前記入力信号をC級動作により増幅するための第2プッシュプル増幅器と、
前記第1プッシュプル増幅器の出力電力と前記第2プッシュプル増幅器の出力電力とを合成する合成器と、
前記第1プッシュプル増幅器の負荷インピーダンスを一定値にするとともに前記第1プッシュプル増幅器の出力電力を前記合成器に入力するための第1アイソレータと、
前記第2プッシュプル増幅器の負荷インピーダンスを一定値にするとともに前記第2プッシュプル増幅器の出力電力を前記合成器に入力するための第2アイソレータと、を備え、
前記第1プッシュプル増幅器は、
前記入力信号をそれぞれ異なる複数の経路からなる第1経路群に分配する第1分配器と、
前記第1経路群のそれぞれの経路に少なくとも一つずつ接続されて前記入力信号を増幅するトランジスタからなる、第1トランジスタ群と、
前記第1トランジスタ群のそれぞれのトランジスタの出力電力を合成する第1合成器と、
前記第1トランジスタ群のそれぞれのトランジスタと前記第1合成器との間に設けられて、各トランジスタの出力インピーダンス整合を図る第1出力整合回路と、を有しており、
前記第2プッシュプル増幅器は、
前記入力信号をそれぞれ異なる複数の経路からなる第2経路群に分配する第2分配器と、
前記第2経路群のそれぞれの経路に少なくとも一つずつ接続されて前記入力信号を増幅するトランジスタからなる、第2トランジスタ群と、
前記第2トランジスタ群のそれぞれのトランジスタの出力電力を合成する第2合成器と、
前記第2トランジスタ群のそれぞれのトランジスタと前記第2合成器との間に設けられて、各トランジスタの出力インピーダンス整合を図る第2出力整合回路と、を有している、
電力合成形増幅器。
【請求項2】
前記合成器は、T分岐、ウィルキンソン形電力分配器、90度ハイブリッド、180度ハイブリッド、又はバランのいずれかである、
請求項1記載の電力合成形増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−153193(P2009−153193A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53726(P2009−53726)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【分割の表示】特願2003−315953(P2003−315953)の分割
【原出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】