電力変換装置及びその製造方法
【課題】半導体積層ユニットにおける半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電力変換装置1の製造方法である。電力変換装置1は、半導体積層ユニット10と、フレーム2と、加圧部材3とを有している。半導体積層ユニット10は、半導体モジュール11と冷却管121とを積層してなる。フレーム2は、底部21と、前方壁部221及び後方壁部222とを有している。加圧部材3は、半導体積層ユニット10とフレーム2の後方壁部222との間に配置される。電力変換装置1は、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配するにあたり、少なくとも半導体積層ユニット10に対し加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させてある。
【解決手段】電力変換装置1の製造方法である。電力変換装置1は、半導体積層ユニット10と、フレーム2と、加圧部材3とを有している。半導体積層ユニット10は、半導体モジュール11と冷却管121とを積層してなる。フレーム2は、底部21と、前方壁部221及び後方壁部222とを有している。加圧部材3は、半導体積層ユニット10とフレーム2の後方壁部222との間に配置される。電力変換装置1は、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配するにあたり、少なくとも半導体積層ユニット10に対し加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成する半導体モジュールの冷却手段を備えた電力変換装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ回路やインバータ回路等の電力変換回路は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電力の生成に用いられる。
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等では、交流モータから大きな駆動トルクを確保するため大きな駆動電力が必要となってきている。それゆえ、その交流モータ向けの駆動電力を生成する上記電力変換回路においては、該電力変換回路を構成するIGBT等の電力用半導体素子を含む半導体モジュールからの発熱が大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、電力変換回路を構成する複数の半導体モジュールを冷却することができるように、冷媒を内部に流す複数の冷却管を半導体モジュールと積層した電力変換装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
かかる電力変換装置9は、図10及び図11に示すごとく、半導体モジュール921と冷却管922との積層体である半導体積層ユニット92をフレーム93の内側に配置してなる。フレーム93は、半導体積層ユニット92の積層方向と直交する方向に配された底部931と、この底部931の周囲から立設した壁部932とからなる。壁部932における、立設方向の端部には、開口部933が形成されている。フレーム93の内側には、半導体積層ユニット92を上記積層方向に加圧する加圧部材96が、上記積層方向の一端に配されている。
【0005】
また、半導体モジュール921において、主面と直交する端面には、底部の法線方向に突出する制御端子923及び主電極端子924を配してある。制御端子923は、制御回路基板(図示略)に半田付けされ、主電極端子924は、バスバー(図示略)に溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−166819号公報
【特許文献2】特開2007−166820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電力変換装置9において、加圧部材96から半導体積層ユニット92に加圧力が加えられると、加圧部材96と対向する壁部932に反力がかかる。このとき、フレーム93は、底部931を配した側に比べ、開口部933側の剛性が低いため、加圧部材96と対向する壁部932における開口部933側の端部が上記積層方向に広がるように変形しやすい。
【0008】
このように壁部932が傾斜することにより、加圧部材96の加圧方向が開口部933側に向かって傾斜し、半導体積層ユニット92にかかる加圧力に偏りを生じさせる。これにより、半導体モジュール921と冷却管922との間の密着力が部分的に低下し、半導体積層ユニット92の冷却性能が低下するおそれがある。また、加圧力の偏りによって、半導体積層ユニット92の半導体モジュール921が開口部933側にずれることにより、制御端子923と制御回路基板との半田付け部や、主電極端子924とバスバーとの溶接部において、作業性の悪化や接続不良等が生じるおそれがある。
【0009】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、半導体積層ユニットにおける半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置の製造方法であって、
上記フレームの内側に上記半導体積層ユニット及び上記加圧部材を配するにあたり、少なくとも上記半導体積層ユニットに対し上記加圧部材の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることを特徴とする電力変換装置の製造方法にある(請求項1)。
【0011】
本発明の第2の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間及び上記加圧部材と上記後方壁部との間の少なくとも一方には介在部材を配してあり、該介在部材は、上記半導体積層ユニット又は上記後方壁部に当接する面と上記加圧部材に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置にある(請求項8)。
【0012】
本発明の第3の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部と、反力を受けない一般部とを有し、上記支持部と上記底部との間の内角における角度は、上記一般部と上記底部との間の内角における角度より小さいことを特徴とする電力変換装置にある(請求項11)。
【0013】
本発明の第4の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記フレームは、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を有しており、
上記加圧部材の加圧方向が上記底部に向かって傾斜するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項14)。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様にかかる上記電力変換装置の製造方法においては、少なくとも上記半導体積層ユニットに対し上記加圧部材の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させてある。そのため、上記電力変換装置の完成時においては、上記加圧部材の加圧方向を上記積層方向に近づけることができる。
【0015】
すなわち、上記加圧部材の加圧力が上記半導体積層ユニットに加わることにより反力が生じ、この反力は、上記フレームの上記後方壁部に加わる。このとき、上記フレームの剛性は、上記底部の法線方向において、上記底部を配した側に比べ上記底部を配していない側の剛性が低くなる。そのため、上記後方壁部に反力が加わることによって、上記後方壁部における上記底部を配していない側の端部が上記積層方向に広がるように、すなわち上記半導体積層ユニットから離れるように変形する。
【0016】
ここで、仮に加圧力付与開始時点において、上記加圧部材の加圧方向が上記積層方向に平行となっていると、加圧力の反力によって上記後方壁部が上記のように変形したとき、組付後の状態において、上記加圧部材の加圧方向が上記底部と反対側へ傾斜してしまうこととなる。これに対し、加圧力付与開始時点において、傾斜した上記加圧部材の加圧方向は、上記後方壁部が上記のように変形した時、積層方向と平行な方向に近づくこととなる。それゆえ、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材とを上記フレーム内に組付けた後の状態において、上記加圧部材の加圧力を積層方向に近い状態とすることができる。その結果、得られた上記電力変換装置においては、上記加圧部材の加圧力を効率よく、かつ均一に上記半導体積層ユニットへ伝達し、上記半導体モジュールと上記冷却管とのずれを防ぐと共に、上記半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することができる。
【0017】
第2の態様にかかる上記電力変換装置は、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間もしくは上記加圧部材と上記後方壁部との間に、上記のごとくテーパ形状を設けた上記介在部材を配してある。この上記介在部材を配することにより、上記加圧部材の加圧方向を上記介在部材のテーパ形状に沿って傾斜させることができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点において、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
また、上記電力変換装置においては、テーパ形状を有する上記介在部材を設けることにより、上記フレームや上記加圧部材等の構造及び構成を大きく変更する必要がなくなる。したがって、上記電力変換装置の製造方法をより容易に実現することができる。
【0018】
第3の態様にかかる上記電力変換装置は、上記後方壁部が、上記加圧部材の反力を受ける支持部と、反力を受けない一般部とを有し、上記支持部と上記底部との間の内角における角度は、上記一般部と上記底部との間の内角における角度より小さい。すなわち、上記支持部の法線方向を上記底部に向かうように傾斜させて形成することにより、上記加圧部材を傾斜して配することができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0019】
第4の態様にかかる上記電力変換装置においては、上記フレームの内側に上記半導体積層ユニット及び上記加圧部材を配し上記加圧部材の加圧力が加わった状態においても、上記加圧部材の加圧方向が上記底部に向かって傾斜している。また、上記フレームは、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する上記位置決め部材を有している。
【0020】
そのため、上記フレーム内に上記半導体積層ユニットを配した際には、上記半導体積層ユニットは、上記加圧部材の加圧力によって上記位置決め部材に向かって押圧されるように配される。このとき、上記半導体モジュールは、上記加圧部材の加圧力によって上記位置決め部材に向かって押し当てられ、その配設位置が決められる。したがって、上記半導体モジュールが上記底部の法線方向にずれることを確実に防止することができる。
【0021】
上記のごとく、本発明によれば、半導体積層ユニットにおける半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1における、電力変換装置を示す説明図。
【図2】図1のA−A矢視線断面図。
【図3】実施例1における、フレームを示す説明図。
【図4】図3のB−B矢視線断面図。
【図5】実施例1における、位置決め冶具を示す断面図。
【図6】実施例2における、電力変換装置の要部断面図。
【図7】実施例2における、位置決め部材を示す断面図。
【図8】実施例3における、電力変換装置の要部断面図。
【図9】実施例4における、電力変換装置の要部断面図。
【図10】背景技術における、電力変換装置を示す説明図。
【図11】図10のC−C矢視線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記電力変換装置の製造方法において、上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部を有しており、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記支持部と上記底部との間の内角における角度が鋭角であることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記後方壁部に上記支持部を設けることによって、加圧力付与開始時点において上記加圧部材を上記底部に向かって傾斜して配することができる。すなわち、上記支持部と上記底部との間における内角の角度を鋭角とすることにより、上記支持部における法線方向を上記底部に向かって傾斜して形成することができる。これにより、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0024】
また、上記後方壁部と上記加圧部材との間には、上記加圧部材を支承する支承部材を配し、該支承部材は、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記支承部材を配することによって、上記加圧部材を傾斜して配することができる。すなわち、上記加圧部材は、上記支承部材のテーパ形状に沿って配されるため、上記加圧部材の加圧方向を傾斜させることができる。これにより、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0025】
また、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記半導体積層ユニットに対して面接触する当接プレートを配してあり、該当接プレートは、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記当接プレートを配することによって、加圧力付与開始時点における上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。すなわち、上記加圧部材の加圧力は、上記当接プレートを介して上記半導体積層ユニットへと伝達される。上記当接プレートはテーパ形状を有しているため、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0026】
また、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を配置することが好ましい(請求項5)。この場合には、上記フレームの内側に上記半導体積層ユニットを配置する際に、上記半導体積層ユニットに加圧力が付与されていない状態においても、上記半導体モジュールが上記底部側にずれることを防止できる。したがって、上記半導体モジュールを適正な位置に配することが容易となる。それゆえ、上記半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットにおける冷却性能の低下を抑制した上記電力変換装置の生産を容易にし生産効率を向上することができる。
【0027】
また、上記位置決め部材は、上記電力変換装置の一部として、該電力変換装置に配設することが好ましい(請求項6)。この場合には、上記電力変換装置の完成状態においても上記位置決め部材を備え、その効果を得ることができる。そのため、上記半導体モジュールのずれをより確実に防止することができる。
【0028】
また、上記位置決め部材は、上記フレームと一体に形成されていることが好ましい(請求項7、請求項13)。この場合には、上記電力変換装置に上記位置決め部材を設けるに際して、上記電力変換装置における部品点数及び組付工数の増加を伴わない。したがって、構造の複雑化及び生産性の低下を防止することができる。
【0029】
また、上記電力変換装置において、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記介在部材として当接プレートが配されていることが好ましい(請求項9)。この場合には、容易に上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0030】
また、上記加圧部材と上記後方壁部との間には、上記介在部材として支承部材が配されていることが好ましい(請求項10)。この場合には、容易に上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0031】
また、上記電力変換装置は、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を備えていることが好ましい(請求項12)。この場合にも、上記フレームの内側に上記半導体積層ユニットを配置する際に、上記半導体モジュールが上記底部側にずれることを防止できる。したがって、上記半導体モジュールを適正な位置に配することができる。
また、上記電力変換装置の完成状態においても上記位置決め部材を備え、その効果を得ることができる。そのため、上記半導体モジュールのずれをより確実に防止することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
本発明の第1の態様にかかる電力変換装置及びその製造方法の実施例について、図1〜図5を参照して説明する。
尚、図1〜図5においては、電力変換装置1の形状等を誇張して描いてある(後述の図6〜図9も同様である)。
【0033】
電力変換装置1は、図1及び図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する半導体積層ユニット10と、底部21と前方壁部221及び後方壁部222とを少なくとも備えたフレーム2と、半導体積層ユニット10を積層方向Xに加圧する加圧部材3とを有している。半導体積層ユニット10は、複数の半導体モジュール11と該複数の半導体モジュール11を両主面から冷却する複数の冷却管121とを積層してなる。フレーム2は、半導体積層ユニット10の積層方向Xと直交する方向において、積層方向Xと略平行に配された底部21と、該底部21において積層方向Xの前端側及び後端側からそれぞれ半導体積層ユニット10側へ立設した前方壁部221及び後方壁部222とを有している。加圧部材3は、半導体積層ユニット10における積層方向Xの後端側とフレーム2の後方壁部222との間に配置されている。
【0034】
電力変換装置1は、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配するにあたり、少なくとも半導体積層ユニット10に対し加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させてある。
【0035】
以下、本例に示す電力変換装置1及びその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本例において、半導体モジュール11と冷却管121が積層された方向を積層方向X、冷却管121の長手方向を横方向Y、また、積層方向X及び横方向Yの両方に対して直交する方向を高さ方向Zとして、以下説明する。
また、積層方向Xにおいて、加圧部材3を配した側を後方とし、反対側を前方とする。また、高さ方向Zにおいて、フレーム2の底部21が配される側を下方とし、反対側を上方とする。
【0036】
電力変換装置1は、図1及び図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する半導体積層ユニット10と、半導体積層ユニット10を内包するフレーム2と、該フレーム2の内側に半導体積層ユニット10と共に配される加圧部材3とを有している。
半導体積層ユニット10は、同図中に示すごとく、複数の半導体モジュール11と、該複数の半導体モジュール11を両主面から冷却する複数の冷却管121とを積層してなる。
【0037】
半導体モジュール11は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子を内蔵してなる。半導体モジュール11は、図2及び図5に示すごとく、スイッチング素子を樹脂モールドしてなる平板状の本体部111と、該本体部111の端面から互いに反対方向に突出した主電極端子112及び制御端子113とからなる。平板状の本体部111における主面の法線方向が積層方向Xとなるように、半導体モジュール11は冷却管121と積層されている。主電極端子112は、高さ方向Zの下方に突出させてあり、制御端子113は、高さ方向Zの上方に突出させてある。主電極端子112は、バスバー(図示略)と接続されており、該バスバーを介して被制御電力が半導体モジュール11に入出力される。また、制御端子113は、制御回路基板(図示略)と接続されており、スイッチング素子を制御する制御電流が入力される。
【0038】
冷却管121は、図1及び図2に示すごとく、半導体モジュール11の両主面に配されると共に、冷却管121へ冷却媒体を循環させるための冷媒導入管122及び冷媒排出管123を有している。本例において、冷却管121は、アルミニウム等の金属によって構成され、複数の冷却管121が半導体モジュール11を両主面から挟持するように配されている。隣り合う冷却管121は、横方向Yの両端部付近において連結管124によって、互いに連結されている。これら冷却管121、連結管124、冷媒導入管122及び冷媒排出管123によって、冷却器12が構成されている。
【0039】
冷媒導入管122及び冷媒排出管123は、図1及び図2に示すごとく、半導体積層ユニット10の前端部に配された冷却管121の前面から、前方に向かって突出するよう設けてある。冷媒導入管122から導入された冷却媒体は、適宜連結管124を通り、各冷却管121に分配されると共にその長手方向(横方向Y)に流通する。そして、各冷却管121を流れる間に、冷却媒体は半導体モジュール11との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、適宜下流側の連結管124を通り、冷媒排出管123に導かれ排出される。冷却媒体としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0040】
半導体積層ユニット10は、図1及び図2に示すごとく、加圧部材3と共にフレーム2の内側に配される。加圧部材3は、その付勢力によって半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧保持している。また、フレーム2の内側には、加圧部材3と共に、下記の介在部材4を配してある。
図1に示すごとく、加圧部材3は湾曲して形成された板ばねからなり、加圧部材3の横方向Yの中央において当接プレート41を介して半導体積層ユニットを押圧する押圧部31と、横方向Yの両端部において支承部材42に支承される一対の被支承部32とを有している。
【0041】
介在部材4としては、図1及び図2に示すごとく、平板状をなす当接プレート41と、円筒状をなす支承部材42とがある。
当接プレート41は、加圧部材3と半導体積層ユニット10との間に配されており、半導体積層ユニット10の後端に配される冷却管121と面接触している。
支承部材42は、加圧部材3と、後述する後方壁部222の支持部223との間に配されている。
【0042】
上述した半導体積層ユニット10を内包するフレーム2は、図3及び図4に示すごとく、半導体積層ユニット10の下方に配される底部21と、底部21の外周において上方に立設すると共に高さ方向Zと直交する方向の全周を囲む壁部22とからなる。底部21には、半導体モジュール11の主電極端子112を挿通する底部挿通孔211が形成されている。また、図5に示すごとく、底部21は、冷却管121の下面と当接するように形成してある。
【0043】
フレーム2は、壁部22として、図3に示すごとく、積層方向Xの両側に配された前方壁部221及び後方壁部222と、その両端において連結する一対の側方壁部225とを有する。
後方壁部222には、図3及び図4に示すごとく、支承部材42と当接し加圧部材3の反力を受ける支持部223と、支承部材42とは当接せず反力を受けない一般部224とを設けてある。支持部223と底部21との間の内角における角度は、一般部224と底部21との間の内角における角度より小さい。また、支持部223は、加圧力付与開始時点において、支持部223と底部21との間の内角における角度が鋭角となるように形成してある。このように支持部223を形成することにより、少なくとも半導体積層ユニット10に対して加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向は底部21に向かって傾斜させることができる。
また、フレーム2は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属又は合金によって構成することができる。
【0044】
次に、上記のごとく構成された電力変換装置1の製造方法について説明する。
まず、図5に示す位置決め部材5の上方にフレーム2を配置する。次いで、位置決め部材5上に載置されたフレーム2の内側に半導体積層ユニット10を載置する。このとき、フレーム2の底部挿通孔211に半導体モジュール11の主電極端子112を差し入れ、冷却管121の横方向Yにおける両端部を底部21上に載置すると共に、半導体モジュール11の下方側の端面を位置決め部材5に当接させる。これにより、位置決め部材5は、複数の半導体モジュール11の底部21の法線方向(高さ方向Z)における位置を規制する。
【0045】
また、半導体積層ユニット10における後方側に配された冷却管121の後面に当接プレート41を配する。この当接プレート41と後方壁部222との間の空間に、圧縮変形させた加圧部材3と一対の支承部材42を挿入する。また、支承部材42は、加圧部材3の被支承部32と後方壁部222の支持部223とに当接するようにする。そして、加圧部材3の圧縮を解除することで、加圧部材3の加圧力によって半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧する。このとき、後方壁部222が上述のように変形すると、加圧力付与開始時点において、底部21に向かって傾斜していた加圧部材3の加圧方向は、半導体積層ユニット10の積層方向Xへと近づけられることとなる。その後、位置決め部材5を取り外す。
【0046】
次に、本例の作用効果について説明する。
本例の電力変換装置の製造方法においては、少なくとも半導体積層ユニット10に対し加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させてある。そのため、電力変換装置1の完成時においては、加圧部材3の加圧方向を積層方向Xに近づけることができる。
【0047】
すなわち、加圧部材3の加圧力が半導体積層ユニット10に加わることにより反力が生じ、この反力は、フレーム2の後方壁部222に加わる。このとき、フレーム2の剛性は、底部21の法線方向(高さ方向Z)において、底部21を配した側に比べ底部21を配していない側の剛性が低くなる。そのため、後方壁部222に反力が加わることによって、後方壁部222における底部21を配していない側の端部が積層方向Xに広がるように、すなわち半導体積層ユニット10から離れるように変形する。
【0048】
ここで、仮に加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向が積層方向Xに平行となっていると、加圧力の反力によって後方壁部222が上記のように変形したとき、組付後の状態において、加圧部材3の加圧方向が底部21と反対側へ傾斜してしまうこととなる。これに対し、加圧力付与開始時点において、傾斜した加圧部材3の加圧方向は、後方壁部222が上記のように変形した時、積層方向Xと平行な方向に近づくこととなる。それゆえ、半導体積層ユニット10と加圧部材3とをフレーム2内に組付けた後の状態において、加圧部材3の加圧力を積層方向Xに近い状態とすることができる。その結果、得られた電力変換装置1においては、加圧部材3の加圧力を効率よく、かつ均一に半導体積層ユニット10へ伝達し、半導体モジュール11と冷却管121とのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニット10の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0049】
電力変換装置1は、後方壁部222が、加圧部材3の反力を受ける支持部223と、反力を受けない一般部224とを有している。また、支持部223と底部21との間の内角における角度は、一般部224と底部21との間の内角における角度より小さく、少なくとも加圧力付与開始時点においては、支持部223と底部21との間の内角における角度が鋭角である。すなわち、支持部223の法線方向を底部21に向かうように傾斜させて形成することにより、加圧部材3を傾斜して配することができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点においては、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた電力変換装置1の製造方法を容易に実現することができる。
【0050】
また、少なくとも加圧力付与開始時点においては、半導体積層ユニット10における底部21側から複数の半導体モジュール11の端面に当接して、底部21の法線方向における複数の半導体モジュール11の位置を規制する位置決め部材5を配置してある。そのため、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10を配置する際に、半導体積層ユニット10に加圧力が付与されていない状態においても、半導体モジュール11が底部21側にずれることを防止できる。したがって、半導体モジュール11を適正な位置に配することが容易となる。それゆえ、半導体モジュール11のずれを防ぐと共に、半導体積層ユニット10における冷却性能の低下を抑制した電力変換装置1の生産を容易にし生産効率を向上することができる。
【0051】
上記のごとく、本例によれば、半導体積層ユニット10における半導体モジュール11のずれを防ぐと共に、半導体積層ユニット10の冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【0052】
(実施例2)
本例は、実施例1の電力変換装置1に対して、フレーム2及び支承部材42の形状を変更した例である。
図6に示すごとく、本例の電力変換装置1における支承部材42は、略円錐台形状をなしており、加圧部材3に当接する支承前面421と後方壁部222に当接する支承後面422とが底部21へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有している。
【0053】
また、フレーム2の後方壁部222における支持部223は、一般部224と同一平面状に形成されている。尚、加圧力付与開始時点において支持部223及び一般部224は、底部21に対して直角となるように形成されている。そして、加圧部材3の加圧力が付与された後、後方壁部222に反力が加わることによって、後方壁部222における底部21を配していない側の端部が積層方向Xに広がるように、すなわち半導体積層ユニット10から離れるように変形する。
また、図7に示すごとく、フレーム2の底部挿通孔211には、半導体モジュール11における底部21側の位置決めを行う位置決め部材5が積層方向Xに沿うように配してある。尚、位置決め部材5は、フレーム2と一体に形成されている。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0054】
本例の電力変換装置1の製造方法について説明する。
まず、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10を配置する。このとき、半導体モジュール11の下方端面をフレーム2が有する位置決め部材5に当接して、複数の半導体モジュール11の底部21の法線方向(高さ方向Z)における位置を規制する。
【0055】
また、半導体積層ユニット10における後方側に配された冷却管121の後面に当接プレート41を配する。この当接プレート41と後方壁部222との間の空間に、圧縮変形させた加圧部材3と一対の支承部材42を挿入する。そして、加圧部材3の圧縮を解除することで、加圧部材3の加圧力によって半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧する。加圧部材3の反力を受けた後方壁部222は、変形し、その法線方向が底部21とは反対側の方向に向かうように傾斜する。このとき、加圧部材3と後方壁部222との間には、上記のごとくテーパ形状を有する支承部材42を配してあるため、加圧部材3の加圧方向を積層方向Xに近づけることができる。
その他の製造方法については、実施例1と同様である。
【0056】
電力変換装置1において、加圧部材3と後方壁部222との間には、介在部材4として支承部材42が配されている。この支承部材42を配することにより、加圧部材3の加圧方向を支承部材42のテーパ形状に沿って傾斜させることができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた電力変換装置1の製造方法を容易に実現することができる。
また、電力変換装置1においては、テーパ形状を有する支承部材42を設けることにより、フレーム2や加圧部材3等の構造及び構成を大きく変更する必要がなくなる。したがって、電力変換装置1の製造方法をより容易に実現することができる。
【0057】
また、位置決め部材5は、電力変換装置1の一部として、フレーム2と一体に形成されている。そのため、電力変換装置1の完成状態においても位置決め部材5を備え、その効果を得ることができる。したがって、半導体モジュール11のずれをより確実に防止することができる。また、電力変換装置1における部品点数及び組付工数の増加を伴わない。これにより、構造の複雑化及び生産性の低下を防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
(実施例3)
本例は、実施例2に対して、当接プレート41及び支承部材42の形状を変更した例である。
本例の電力変換装置1における当接プレート41は、図8に示すごとく、加圧部材3に当接するプレート前面411と後方壁部222に当接するレート後面412とが底部21へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有している。
支承部材42は、実施例1と同様に、円柱形状を有している。
その他の構成は実施例2と同様である。
【0059】
電力変換装置1において、半導体積層ユニット10と加圧部材3との間には、介在部材4として当接プレート41が配されている。この当接プレート41を配することにより、加圧部材3の加圧方向を当接プレート41のテーパ形状に沿って傾斜させることができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた電力変換装置1の製造方法を容易に実現することができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
(実施例4)
本例は、組立後の電力変換装置1における加圧部材3の加圧方向が斜め下方となるようにした例である。
図9に示すごとく、本例の電力変換装置1において、フレーム2の底部挿通孔211には、半導体モジュール11における底部21側の位置決めを行う位置決め部材5を積層方向Xに沿うように設けてある。
【0061】
また、本例においては、フレーム2内に半導体積層ユニット10を配し、半導体積層ユニット10を加圧部材3によって押圧した状態においても、加圧部材3の加圧方向は、底部21に向かって傾斜している。つまり、フレーム2に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配置して、電力変換装置1を組み立てた状態においても、加圧部材3の加圧方向が斜め下方となる。この場合、半導体モジュール11には、下方へずれるように力が作用するが、半導体積層ユニット11は、位置決め部材5によって支持されるため、フレーム2内に安定保持することができる。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0062】
電力変換装置1においては、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配し加圧部材3の加圧力が加わった状態においても、加圧部材3の加圧方向が底部21に向かって傾斜している。また、フレーム2は、底部21の法線方向における複数の半導体モジュール11の位置を規制する位置決め部材5を有している。
【0063】
そのため、フレーム2内に半導体積層ユニット10を配した際には、半導体積層ユニット10は、加圧部材3の加圧力によって位置決め部材5に向かって押圧されるように配される。このとき、半導体モジュール11は、加圧部材3の加圧力によって位置決め部材5に向かって押し当てられ、その配設位置が決められる。したがって、半導体モジュール11が底部21の法線方向にずれることを確実に防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 電力変換装置
10 半導体積層ユニット
11 半導体モジュール
121 冷却管
2 フレーム
21 底部
221 前方壁部
222 後方壁部
3 加圧部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成する半導体モジュールの冷却手段を備えた電力変換装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータ回路やインバータ回路等の電力変換回路は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電力の生成に用いられる。
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等では、交流モータから大きな駆動トルクを確保するため大きな駆動電力が必要となってきている。それゆえ、その交流モータ向けの駆動電力を生成する上記電力変換回路においては、該電力変換回路を構成するIGBT等の電力用半導体素子を含む半導体モジュールからの発熱が大きくなる傾向にある。
【0003】
そこで、電力変換回路を構成する複数の半導体モジュールを冷却することができるように、冷媒を内部に流す複数の冷却管を半導体モジュールと積層した電力変換装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
かかる電力変換装置9は、図10及び図11に示すごとく、半導体モジュール921と冷却管922との積層体である半導体積層ユニット92をフレーム93の内側に配置してなる。フレーム93は、半導体積層ユニット92の積層方向と直交する方向に配された底部931と、この底部931の周囲から立設した壁部932とからなる。壁部932における、立設方向の端部には、開口部933が形成されている。フレーム93の内側には、半導体積層ユニット92を上記積層方向に加圧する加圧部材96が、上記積層方向の一端に配されている。
【0005】
また、半導体モジュール921において、主面と直交する端面には、底部の法線方向に突出する制御端子923及び主電極端子924を配してある。制御端子923は、制御回路基板(図示略)に半田付けされ、主電極端子924は、バスバー(図示略)に溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−166819号公報
【特許文献2】特開2007−166820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電力変換装置9において、加圧部材96から半導体積層ユニット92に加圧力が加えられると、加圧部材96と対向する壁部932に反力がかかる。このとき、フレーム93は、底部931を配した側に比べ、開口部933側の剛性が低いため、加圧部材96と対向する壁部932における開口部933側の端部が上記積層方向に広がるように変形しやすい。
【0008】
このように壁部932が傾斜することにより、加圧部材96の加圧方向が開口部933側に向かって傾斜し、半導体積層ユニット92にかかる加圧力に偏りを生じさせる。これにより、半導体モジュール921と冷却管922との間の密着力が部分的に低下し、半導体積層ユニット92の冷却性能が低下するおそれがある。また、加圧力の偏りによって、半導体積層ユニット92の半導体モジュール921が開口部933側にずれることにより、制御端子923と制御回路基板との半田付け部や、主電極端子924とバスバーとの溶接部において、作業性の悪化や接続不良等が生じるおそれがある。
【0009】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、半導体積層ユニットにおける半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置の製造方法であって、
上記フレームの内側に上記半導体積層ユニット及び上記加圧部材を配するにあたり、少なくとも上記半導体積層ユニットに対し上記加圧部材の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることを特徴とする電力変換装置の製造方法にある(請求項1)。
【0011】
本発明の第2の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間及び上記加圧部材と上記後方壁部との間の少なくとも一方には介在部材を配してあり、該介在部材は、上記半導体積層ユニット又は上記後方壁部に当接する面と上記加圧部材に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置にある(請求項8)。
【0012】
本発明の第3の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部と、反力を受けない一般部とを有し、上記支持部と上記底部との間の内角における角度は、上記一般部と上記底部との間の内角における角度より小さいことを特徴とする電力変換装置にある(請求項11)。
【0013】
本発明の第4の態様は、電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記フレームは、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を有しており、
上記加圧部材の加圧方向が上記底部に向かって傾斜するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項14)。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様にかかる上記電力変換装置の製造方法においては、少なくとも上記半導体積層ユニットに対し上記加圧部材の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させてある。そのため、上記電力変換装置の完成時においては、上記加圧部材の加圧方向を上記積層方向に近づけることができる。
【0015】
すなわち、上記加圧部材の加圧力が上記半導体積層ユニットに加わることにより反力が生じ、この反力は、上記フレームの上記後方壁部に加わる。このとき、上記フレームの剛性は、上記底部の法線方向において、上記底部を配した側に比べ上記底部を配していない側の剛性が低くなる。そのため、上記後方壁部に反力が加わることによって、上記後方壁部における上記底部を配していない側の端部が上記積層方向に広がるように、すなわち上記半導体積層ユニットから離れるように変形する。
【0016】
ここで、仮に加圧力付与開始時点において、上記加圧部材の加圧方向が上記積層方向に平行となっていると、加圧力の反力によって上記後方壁部が上記のように変形したとき、組付後の状態において、上記加圧部材の加圧方向が上記底部と反対側へ傾斜してしまうこととなる。これに対し、加圧力付与開始時点において、傾斜した上記加圧部材の加圧方向は、上記後方壁部が上記のように変形した時、積層方向と平行な方向に近づくこととなる。それゆえ、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材とを上記フレーム内に組付けた後の状態において、上記加圧部材の加圧力を積層方向に近い状態とすることができる。その結果、得られた上記電力変換装置においては、上記加圧部材の加圧力を効率よく、かつ均一に上記半導体積層ユニットへ伝達し、上記半導体モジュールと上記冷却管とのずれを防ぐと共に、上記半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することができる。
【0017】
第2の態様にかかる上記電力変換装置は、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間もしくは上記加圧部材と上記後方壁部との間に、上記のごとくテーパ形状を設けた上記介在部材を配してある。この上記介在部材を配することにより、上記加圧部材の加圧方向を上記介在部材のテーパ形状に沿って傾斜させることができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点において、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
また、上記電力変換装置においては、テーパ形状を有する上記介在部材を設けることにより、上記フレームや上記加圧部材等の構造及び構成を大きく変更する必要がなくなる。したがって、上記電力変換装置の製造方法をより容易に実現することができる。
【0018】
第3の態様にかかる上記電力変換装置は、上記後方壁部が、上記加圧部材の反力を受ける支持部と、反力を受けない一般部とを有し、上記支持部と上記底部との間の内角における角度は、上記一般部と上記底部との間の内角における角度より小さい。すなわち、上記支持部の法線方向を上記底部に向かうように傾斜させて形成することにより、上記加圧部材を傾斜して配することができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0019】
第4の態様にかかる上記電力変換装置においては、上記フレームの内側に上記半導体積層ユニット及び上記加圧部材を配し上記加圧部材の加圧力が加わった状態においても、上記加圧部材の加圧方向が上記底部に向かって傾斜している。また、上記フレームは、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する上記位置決め部材を有している。
【0020】
そのため、上記フレーム内に上記半導体積層ユニットを配した際には、上記半導体積層ユニットは、上記加圧部材の加圧力によって上記位置決め部材に向かって押圧されるように配される。このとき、上記半導体モジュールは、上記加圧部材の加圧力によって上記位置決め部材に向かって押し当てられ、その配設位置が決められる。したがって、上記半導体モジュールが上記底部の法線方向にずれることを確実に防止することができる。
【0021】
上記のごとく、本発明によれば、半導体積層ユニットにおける半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットの冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1における、電力変換装置を示す説明図。
【図2】図1のA−A矢視線断面図。
【図3】実施例1における、フレームを示す説明図。
【図4】図3のB−B矢視線断面図。
【図5】実施例1における、位置決め冶具を示す断面図。
【図6】実施例2における、電力変換装置の要部断面図。
【図7】実施例2における、位置決め部材を示す断面図。
【図8】実施例3における、電力変換装置の要部断面図。
【図9】実施例4における、電力変換装置の要部断面図。
【図10】背景技術における、電力変換装置を示す説明図。
【図11】図10のC−C矢視線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記電力変換装置の製造方法において、上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部を有しており、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記支持部と上記底部との間の内角における角度が鋭角であることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記後方壁部に上記支持部を設けることによって、加圧力付与開始時点において上記加圧部材を上記底部に向かって傾斜して配することができる。すなわち、上記支持部と上記底部との間における内角の角度を鋭角とすることにより、上記支持部における法線方向を上記底部に向かって傾斜して形成することができる。これにより、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0024】
また、上記後方壁部と上記加圧部材との間には、上記加圧部材を支承する支承部材を配し、該支承部材は、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることが好ましい(請求項3)。この場合には、上記支承部材を配することによって、上記加圧部材を傾斜して配することができる。すなわち、上記加圧部材は、上記支承部材のテーパ形状に沿って配されるため、上記加圧部材の加圧方向を傾斜させることができる。これにより、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0025】
また、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記半導体積層ユニットに対して面接触する当接プレートを配してあり、該当接プレートは、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることが好ましい(請求項4)。この場合には、上記当接プレートを配することによって、加圧力付与開始時点における上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。すなわち、上記加圧部材の加圧力は、上記当接プレートを介して上記半導体積層ユニットへと伝達される。上記当接プレートはテーパ形状を有しているため、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0026】
また、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を配置することが好ましい(請求項5)。この場合には、上記フレームの内側に上記半導体積層ユニットを配置する際に、上記半導体積層ユニットに加圧力が付与されていない状態においても、上記半導体モジュールが上記底部側にずれることを防止できる。したがって、上記半導体モジュールを適正な位置に配することが容易となる。それゆえ、上記半導体モジュールのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニットにおける冷却性能の低下を抑制した上記電力変換装置の生産を容易にし生産効率を向上することができる。
【0027】
また、上記位置決め部材は、上記電力変換装置の一部として、該電力変換装置に配設することが好ましい(請求項6)。この場合には、上記電力変換装置の完成状態においても上記位置決め部材を備え、その効果を得ることができる。そのため、上記半導体モジュールのずれをより確実に防止することができる。
【0028】
また、上記位置決め部材は、上記フレームと一体に形成されていることが好ましい(請求項7、請求項13)。この場合には、上記電力変換装置に上記位置決め部材を設けるに際して、上記電力変換装置における部品点数及び組付工数の増加を伴わない。したがって、構造の複雑化及び生産性の低下を防止することができる。
【0029】
また、上記電力変換装置において、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記介在部材として当接プレートが配されていることが好ましい(請求項9)。この場合には、容易に上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0030】
また、上記加圧部材と上記後方壁部との間には、上記介在部材として支承部材が配されていることが好ましい(請求項10)。この場合には、容易に上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた上記電力変換装置の製造方法を容易に実現することができる。
【0031】
また、上記電力変換装置は、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を備えていることが好ましい(請求項12)。この場合にも、上記フレームの内側に上記半導体積層ユニットを配置する際に、上記半導体モジュールが上記底部側にずれることを防止できる。したがって、上記半導体モジュールを適正な位置に配することができる。
また、上記電力変換装置の完成状態においても上記位置決め部材を備え、その効果を得ることができる。そのため、上記半導体モジュールのずれをより確実に防止することができる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
本発明の第1の態様にかかる電力変換装置及びその製造方法の実施例について、図1〜図5を参照して説明する。
尚、図1〜図5においては、電力変換装置1の形状等を誇張して描いてある(後述の図6〜図9も同様である)。
【0033】
電力変換装置1は、図1及び図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する半導体積層ユニット10と、底部21と前方壁部221及び後方壁部222とを少なくとも備えたフレーム2と、半導体積層ユニット10を積層方向Xに加圧する加圧部材3とを有している。半導体積層ユニット10は、複数の半導体モジュール11と該複数の半導体モジュール11を両主面から冷却する複数の冷却管121とを積層してなる。フレーム2は、半導体積層ユニット10の積層方向Xと直交する方向において、積層方向Xと略平行に配された底部21と、該底部21において積層方向Xの前端側及び後端側からそれぞれ半導体積層ユニット10側へ立設した前方壁部221及び後方壁部222とを有している。加圧部材3は、半導体積層ユニット10における積層方向Xの後端側とフレーム2の後方壁部222との間に配置されている。
【0034】
電力変換装置1は、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配するにあたり、少なくとも半導体積層ユニット10に対し加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させてある。
【0035】
以下、本例に示す電力変換装置1及びその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本例において、半導体モジュール11と冷却管121が積層された方向を積層方向X、冷却管121の長手方向を横方向Y、また、積層方向X及び横方向Yの両方に対して直交する方向を高さ方向Zとして、以下説明する。
また、積層方向Xにおいて、加圧部材3を配した側を後方とし、反対側を前方とする。また、高さ方向Zにおいて、フレーム2の底部21が配される側を下方とし、反対側を上方とする。
【0036】
電力変換装置1は、図1及び図2に示すごとく、電力変換回路の一部を構成する半導体積層ユニット10と、半導体積層ユニット10を内包するフレーム2と、該フレーム2の内側に半導体積層ユニット10と共に配される加圧部材3とを有している。
半導体積層ユニット10は、同図中に示すごとく、複数の半導体モジュール11と、該複数の半導体モジュール11を両主面から冷却する複数の冷却管121とを積層してなる。
【0037】
半導体モジュール11は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子を内蔵してなる。半導体モジュール11は、図2及び図5に示すごとく、スイッチング素子を樹脂モールドしてなる平板状の本体部111と、該本体部111の端面から互いに反対方向に突出した主電極端子112及び制御端子113とからなる。平板状の本体部111における主面の法線方向が積層方向Xとなるように、半導体モジュール11は冷却管121と積層されている。主電極端子112は、高さ方向Zの下方に突出させてあり、制御端子113は、高さ方向Zの上方に突出させてある。主電極端子112は、バスバー(図示略)と接続されており、該バスバーを介して被制御電力が半導体モジュール11に入出力される。また、制御端子113は、制御回路基板(図示略)と接続されており、スイッチング素子を制御する制御電流が入力される。
【0038】
冷却管121は、図1及び図2に示すごとく、半導体モジュール11の両主面に配されると共に、冷却管121へ冷却媒体を循環させるための冷媒導入管122及び冷媒排出管123を有している。本例において、冷却管121は、アルミニウム等の金属によって構成され、複数の冷却管121が半導体モジュール11を両主面から挟持するように配されている。隣り合う冷却管121は、横方向Yの両端部付近において連結管124によって、互いに連結されている。これら冷却管121、連結管124、冷媒導入管122及び冷媒排出管123によって、冷却器12が構成されている。
【0039】
冷媒導入管122及び冷媒排出管123は、図1及び図2に示すごとく、半導体積層ユニット10の前端部に配された冷却管121の前面から、前方に向かって突出するよう設けてある。冷媒導入管122から導入された冷却媒体は、適宜連結管124を通り、各冷却管121に分配されると共にその長手方向(横方向Y)に流通する。そして、各冷却管121を流れる間に、冷却媒体は半導体モジュール11との間で熱交換を行う。熱交換により温度上昇した冷却媒体は、適宜下流側の連結管124を通り、冷媒排出管123に導かれ排出される。冷却媒体としては、例えば、水やアンモニア等の自然冷媒、エチレングリコール系の不凍液を混入した水、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒等の冷媒を用いることができる。
【0040】
半導体積層ユニット10は、図1及び図2に示すごとく、加圧部材3と共にフレーム2の内側に配される。加圧部材3は、その付勢力によって半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧保持している。また、フレーム2の内側には、加圧部材3と共に、下記の介在部材4を配してある。
図1に示すごとく、加圧部材3は湾曲して形成された板ばねからなり、加圧部材3の横方向Yの中央において当接プレート41を介して半導体積層ユニットを押圧する押圧部31と、横方向Yの両端部において支承部材42に支承される一対の被支承部32とを有している。
【0041】
介在部材4としては、図1及び図2に示すごとく、平板状をなす当接プレート41と、円筒状をなす支承部材42とがある。
当接プレート41は、加圧部材3と半導体積層ユニット10との間に配されており、半導体積層ユニット10の後端に配される冷却管121と面接触している。
支承部材42は、加圧部材3と、後述する後方壁部222の支持部223との間に配されている。
【0042】
上述した半導体積層ユニット10を内包するフレーム2は、図3及び図4に示すごとく、半導体積層ユニット10の下方に配される底部21と、底部21の外周において上方に立設すると共に高さ方向Zと直交する方向の全周を囲む壁部22とからなる。底部21には、半導体モジュール11の主電極端子112を挿通する底部挿通孔211が形成されている。また、図5に示すごとく、底部21は、冷却管121の下面と当接するように形成してある。
【0043】
フレーム2は、壁部22として、図3に示すごとく、積層方向Xの両側に配された前方壁部221及び後方壁部222と、その両端において連結する一対の側方壁部225とを有する。
後方壁部222には、図3及び図4に示すごとく、支承部材42と当接し加圧部材3の反力を受ける支持部223と、支承部材42とは当接せず反力を受けない一般部224とを設けてある。支持部223と底部21との間の内角における角度は、一般部224と底部21との間の内角における角度より小さい。また、支持部223は、加圧力付与開始時点において、支持部223と底部21との間の内角における角度が鋭角となるように形成してある。このように支持部223を形成することにより、少なくとも半導体積層ユニット10に対して加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向は底部21に向かって傾斜させることができる。
また、フレーム2は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属又は合金によって構成することができる。
【0044】
次に、上記のごとく構成された電力変換装置1の製造方法について説明する。
まず、図5に示す位置決め部材5の上方にフレーム2を配置する。次いで、位置決め部材5上に載置されたフレーム2の内側に半導体積層ユニット10を載置する。このとき、フレーム2の底部挿通孔211に半導体モジュール11の主電極端子112を差し入れ、冷却管121の横方向Yにおける両端部を底部21上に載置すると共に、半導体モジュール11の下方側の端面を位置決め部材5に当接させる。これにより、位置決め部材5は、複数の半導体モジュール11の底部21の法線方向(高さ方向Z)における位置を規制する。
【0045】
また、半導体積層ユニット10における後方側に配された冷却管121の後面に当接プレート41を配する。この当接プレート41と後方壁部222との間の空間に、圧縮変形させた加圧部材3と一対の支承部材42を挿入する。また、支承部材42は、加圧部材3の被支承部32と後方壁部222の支持部223とに当接するようにする。そして、加圧部材3の圧縮を解除することで、加圧部材3の加圧力によって半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧する。このとき、後方壁部222が上述のように変形すると、加圧力付与開始時点において、底部21に向かって傾斜していた加圧部材3の加圧方向は、半導体積層ユニット10の積層方向Xへと近づけられることとなる。その後、位置決め部材5を取り外す。
【0046】
次に、本例の作用効果について説明する。
本例の電力変換装置の製造方法においては、少なくとも半導体積層ユニット10に対し加圧部材3の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させてある。そのため、電力変換装置1の完成時においては、加圧部材3の加圧方向を積層方向Xに近づけることができる。
【0047】
すなわち、加圧部材3の加圧力が半導体積層ユニット10に加わることにより反力が生じ、この反力は、フレーム2の後方壁部222に加わる。このとき、フレーム2の剛性は、底部21の法線方向(高さ方向Z)において、底部21を配した側に比べ底部21を配していない側の剛性が低くなる。そのため、後方壁部222に反力が加わることによって、後方壁部222における底部21を配していない側の端部が積層方向Xに広がるように、すなわち半導体積層ユニット10から離れるように変形する。
【0048】
ここで、仮に加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向が積層方向Xに平行となっていると、加圧力の反力によって後方壁部222が上記のように変形したとき、組付後の状態において、加圧部材3の加圧方向が底部21と反対側へ傾斜してしまうこととなる。これに対し、加圧力付与開始時点において、傾斜した加圧部材3の加圧方向は、後方壁部222が上記のように変形した時、積層方向Xと平行な方向に近づくこととなる。それゆえ、半導体積層ユニット10と加圧部材3とをフレーム2内に組付けた後の状態において、加圧部材3の加圧力を積層方向Xに近い状態とすることができる。その結果、得られた電力変換装置1においては、加圧部材3の加圧力を効率よく、かつ均一に半導体積層ユニット10へ伝達し、半導体モジュール11と冷却管121とのずれを防ぐと共に、半導体積層ユニット10の冷却性能の低下を抑制することができる。
【0049】
電力変換装置1は、後方壁部222が、加圧部材3の反力を受ける支持部223と、反力を受けない一般部224とを有している。また、支持部223と底部21との間の内角における角度は、一般部224と底部21との間の内角における角度より小さく、少なくとも加圧力付与開始時点においては、支持部223と底部21との間の内角における角度が鋭角である。すなわち、支持部223の法線方向を底部21に向かうように傾斜させて形成することにより、加圧部材3を傾斜して配することができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点においては、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた電力変換装置1の製造方法を容易に実現することができる。
【0050】
また、少なくとも加圧力付与開始時点においては、半導体積層ユニット10における底部21側から複数の半導体モジュール11の端面に当接して、底部21の法線方向における複数の半導体モジュール11の位置を規制する位置決め部材5を配置してある。そのため、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10を配置する際に、半導体積層ユニット10に加圧力が付与されていない状態においても、半導体モジュール11が底部21側にずれることを防止できる。したがって、半導体モジュール11を適正な位置に配することが容易となる。それゆえ、半導体モジュール11のずれを防ぐと共に、半導体積層ユニット10における冷却性能の低下を抑制した電力変換装置1の生産を容易にし生産効率を向上することができる。
【0051】
上記のごとく、本例によれば、半導体積層ユニット10における半導体モジュール11のずれを防ぐと共に、半導体積層ユニット10の冷却性能の低下を抑制することのできる電力変換装置及びその製造方法を提供することができる。
【0052】
(実施例2)
本例は、実施例1の電力変換装置1に対して、フレーム2及び支承部材42の形状を変更した例である。
図6に示すごとく、本例の電力変換装置1における支承部材42は、略円錐台形状をなしており、加圧部材3に当接する支承前面421と後方壁部222に当接する支承後面422とが底部21へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有している。
【0053】
また、フレーム2の後方壁部222における支持部223は、一般部224と同一平面状に形成されている。尚、加圧力付与開始時点において支持部223及び一般部224は、底部21に対して直角となるように形成されている。そして、加圧部材3の加圧力が付与された後、後方壁部222に反力が加わることによって、後方壁部222における底部21を配していない側の端部が積層方向Xに広がるように、すなわち半導体積層ユニット10から離れるように変形する。
また、図7に示すごとく、フレーム2の底部挿通孔211には、半導体モジュール11における底部21側の位置決めを行う位置決め部材5が積層方向Xに沿うように配してある。尚、位置決め部材5は、フレーム2と一体に形成されている。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0054】
本例の電力変換装置1の製造方法について説明する。
まず、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10を配置する。このとき、半導体モジュール11の下方端面をフレーム2が有する位置決め部材5に当接して、複数の半導体モジュール11の底部21の法線方向(高さ方向Z)における位置を規制する。
【0055】
また、半導体積層ユニット10における後方側に配された冷却管121の後面に当接プレート41を配する。この当接プレート41と後方壁部222との間の空間に、圧縮変形させた加圧部材3と一対の支承部材42を挿入する。そして、加圧部材3の圧縮を解除することで、加圧部材3の加圧力によって半導体積層ユニット10を積層方向Xに押圧する。加圧部材3の反力を受けた後方壁部222は、変形し、その法線方向が底部21とは反対側の方向に向かうように傾斜する。このとき、加圧部材3と後方壁部222との間には、上記のごとくテーパ形状を有する支承部材42を配してあるため、加圧部材3の加圧方向を積層方向Xに近づけることができる。
その他の製造方法については、実施例1と同様である。
【0056】
電力変換装置1において、加圧部材3と後方壁部222との間には、介在部材4として支承部材42が配されている。この支承部材42を配することにより、加圧部材3の加圧方向を支承部材42のテーパ形状に沿って傾斜させることができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた電力変換装置1の製造方法を容易に実現することができる。
また、電力変換装置1においては、テーパ形状を有する支承部材42を設けることにより、フレーム2や加圧部材3等の構造及び構成を大きく変更する必要がなくなる。したがって、電力変換装置1の製造方法をより容易に実現することができる。
【0057】
また、位置決め部材5は、電力変換装置1の一部として、フレーム2と一体に形成されている。そのため、電力変換装置1の完成状態においても位置決め部材5を備え、その効果を得ることができる。したがって、半導体モジュール11のずれをより確実に防止することができる。また、電力変換装置1における部品点数及び組付工数の増加を伴わない。これにより、構造の複雑化及び生産性の低下を防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
(実施例3)
本例は、実施例2に対して、当接プレート41及び支承部材42の形状を変更した例である。
本例の電力変換装置1における当接プレート41は、図8に示すごとく、加圧部材3に当接するプレート前面411と後方壁部222に当接するレート後面412とが底部21へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有している。
支承部材42は、実施例1と同様に、円柱形状を有している。
その他の構成は実施例2と同様である。
【0059】
電力変換装置1において、半導体積層ユニット10と加圧部材3との間には、介在部材4として当接プレート41が配されている。この当接プレート41を配することにより、加圧部材3の加圧方向を当接プレート41のテーパ形状に沿って傾斜させることができる。したがって、少なくとも加圧力付与開始時点において、加圧部材3の加圧方向を底部21に向かって傾斜させることができる。それゆえ、上述の優れた電力変換装置1の製造方法を容易に実現することができる。
その他、実施例2と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
(実施例4)
本例は、組立後の電力変換装置1における加圧部材3の加圧方向が斜め下方となるようにした例である。
図9に示すごとく、本例の電力変換装置1において、フレーム2の底部挿通孔211には、半導体モジュール11における底部21側の位置決めを行う位置決め部材5を積層方向Xに沿うように設けてある。
【0061】
また、本例においては、フレーム2内に半導体積層ユニット10を配し、半導体積層ユニット10を加圧部材3によって押圧した状態においても、加圧部材3の加圧方向は、底部21に向かって傾斜している。つまり、フレーム2に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配置して、電力変換装置1を組み立てた状態においても、加圧部材3の加圧方向が斜め下方となる。この場合、半導体モジュール11には、下方へずれるように力が作用するが、半導体積層ユニット11は、位置決め部材5によって支持されるため、フレーム2内に安定保持することができる。
その他の構成は実施例1と同様である。
【0062】
電力変換装置1においては、フレーム2の内側に半導体積層ユニット10及び加圧部材3を配し加圧部材3の加圧力が加わった状態においても、加圧部材3の加圧方向が底部21に向かって傾斜している。また、フレーム2は、底部21の法線方向における複数の半導体モジュール11の位置を規制する位置決め部材5を有している。
【0063】
そのため、フレーム2内に半導体積層ユニット10を配した際には、半導体積層ユニット10は、加圧部材3の加圧力によって位置決め部材5に向かって押圧されるように配される。このとき、半導体モジュール11は、加圧部材3の加圧力によって位置決め部材5に向かって押し当てられ、その配設位置が決められる。したがって、半導体モジュール11が底部21の法線方向にずれることを確実に防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 電力変換装置
10 半導体積層ユニット
11 半導体モジュール
121 冷却管
2 フレーム
21 底部
221 前方壁部
222 後方壁部
3 加圧部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置の製造方法であって、
上記フレームの内側に上記半導体積層ユニット及び上記加圧部材を配するにあたり、少なくとも上記半導体積層ユニットに対し上記加圧部材の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の製造方法において、上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部を有しており、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記支持部と上記底部との間の内角における角度が鋭角であることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置の製造方法において、上記後方壁部と上記加圧部材との間には、上記加圧部材を支承する支承部材を配し、該支承部材は、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置の製造方法において、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記半導体積層ユニットに対して面接触する当接プレートを配してあり、該当接プレートは、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置の製造方法において、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を配置することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置の製造方法において、上記位置決め部材は、上記電力変換装置の一部として、該電力変換装置に配設することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電力変換装置の製造方法において、上記位置決め部材は、上記フレームと一体に形成されていることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項8】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間及び上記加圧部材と上記後方壁部との間の少なくとも一方には介在部材を配してあり、該介在部材は、上記半導体積層ユニット又は上記後方壁部に当接する面と上記加圧部材に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記介在部材として当接プレートが配されていること特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電力変換装置において、上記加圧部材と上記後方壁部との間には、上記介在部材として支承部材が配されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部と、反力を受けない一般部とを有し、上記支持部と上記底部との間の内角における角度は、上記一般部と上記底部との間の内角における角度より小さいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電力変換装置において、上記位置決め部材は、上記フレームと一体に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記フレームは、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を有しており、
上記加圧部材の加圧方向が上記底部に向かって傾斜するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットの積層方向と直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置の製造方法であって、
上記フレームの内側に上記半導体積層ユニット及び上記加圧部材を配するにあたり、少なくとも上記半導体積層ユニットに対し上記加圧部材の加圧力を付与し始める加圧力付与開始時点においては、上記加圧部材の加圧方向を上記底部に向かって傾斜させることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の製造方法において、上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部を有しており、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記支持部と上記底部との間の内角における角度が鋭角であることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置の製造方法において、上記後方壁部と上記加圧部材との間には、上記加圧部材を支承する支承部材を配し、該支承部材は、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電力変換装置の製造方法において、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記半導体積層ユニットに対して面接触する当接プレートを配してあり、該当接プレートは、上記加圧部材に当接する面と上記後方壁部に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力変換装置の製造方法において、少なくとも加圧力付与開始時点においては、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を配置することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置の製造方法において、上記位置決め部材は、上記電力変換装置の一部として、該電力変換装置に配設することを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電力変換装置の製造方法において、上記位置決め部材は、上記フレームと一体に形成されていることを特徴とする電力変換装置の製造方法。
【請求項8】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間及び上記加圧部材と上記後方壁部との間の少なくとも一方には介在部材を配してあり、該介在部材は、上記半導体積層ユニット又は上記後方壁部に当接する面と上記加圧部材に当接する面とが底部へ向かうほど互いに近付くようなテーパ形状を有していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットと上記加圧部材との間には、上記介在部材として当接プレートが配されていること特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電力変換装置において、上記加圧部材と上記後方壁部との間には、上記介在部材として支承部材が配されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記後方壁部は、上記加圧部材の反力を受ける支持部と、反力を受けない一般部とを有し、上記支持部と上記底部との間の内角における角度は、上記一般部と上記底部との間の内角における角度より小さいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載の電力変換装置において、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電力変換装置において、上記位置決め部材は、上記フレームと一体に形成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
電力変換回路の一部を構成する複数の半導体モジュールと該複数の半導体モジュールを両主面から冷却する複数の冷却管とを積層してなる半導体積層ユニットと、
該半導体積層ユニットにおける積層方向に直交する方向において、積層方向と略平行に配された底部と、該底部において積層方向の前端側及び後端側からそれぞれ上記半導体積層ユニット側へ立設した前方壁部及び後方壁部とを少なくとも備えたフレームと、
上記半導体積層ユニットにおける積層方向の後端側と上記フレームの後方壁部との間に配置され、上記半導体積層ユニットを上記積層方向に加圧する加圧部材とを有する電力変換装置であって、
上記フレームは、上記半導体積層ユニットにおける上記底部側から上記複数の半導体モジュールの端面に当接して、上記底部の法線方向における上記複数の半導体モジュールの位置を規制する位置決め部材を有しており、
上記加圧部材の加圧方向が上記底部に向かって傾斜するよう構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−257416(P2012−257416A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129738(P2011−129738)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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