説明

電力変換装置

【課題】予め接続している回生制動抵抗の許容電力容量を設定しておけば、その電力容量に応じて出力電圧や減速時間を自動調整し、回生制動抵抗の許容電力容量を効果的に使用出来るようなインバータ装置を提供する。
【解決手段】誘導モータの駆動制御を行う電圧型インバータ装置3で回生電力消費用の回路8および抵抗4を具備する装置において、接続されている回生制動抵4の許容電力容量値とその抵抗値を予めインバータ装置3に設定しておき、その許容電力容量値と抵抗値に応じて減速時にモータへの出力電圧を変化させて運転する事を特徴とするインバータ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータの駆動制御を行う電圧型電力変換装置に関するもので、モータ減速時の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平7−7981(特許文献1)や特開平7−267525(特許文献2)がある。この公報には、「誘導電動機を駆動する電圧形電力変換装置の直流中間回路に設置された制動抵抗などの小容量化或いはその不要化により前記電力変換装置の小形低廉化を図る。
インバータ部を経由しコンデンサに吸収される誘導電動機からの回生電力を検出する回生電力検出器を設け、この検出器の検出信号をインバータ制御回路における関数発生器に加え、電圧指令発生器にて生成される力行運転時のインバータ出力電圧指令値に対し加算する電圧指令補正値を前記関数発生器において演算生成し、制動制御時のインバータ出力電圧指令値の対周波数指令値率をその力行運転時の値に比して大として前記電動機を過励磁状態となし、その内部熱損失の増大による前記電動機の減速を図る。」
また「回生モード時にインバータの出力電圧安定制御を切り替えて回生電力量を減少させ、回生電力消費用抵抗を不要又は小容量のものとする。CPUが出力電圧指令を演算してインバータ出力電圧の安定制御をするエレベータ装置において、主回路の直流電圧検出回路の検出値が主回路直流電圧の基準値より高くなった場合にCPUがエレベータシステムの回生モードと判断し、出力電圧の安定化制御を解除し、出力電圧指令を演算方式で演算してインバータの出力電圧を制御する。この制御により回生モード時に回生電力により主回路電圧が上昇すると、電動機IMの励磁電流が増加し電動機の電力損失が増加して回生電力量が減少するので、回生電力消費用抵抗R1を不要又は小容量とすることが可能となる。」と記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−7981号公報
【特許文献2】特開平7−267525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1や特許文献2では、接続されている回生制動抵抗の許容電力容量に関係なく、出力電圧を高くしモータの消費電力を増やす動作を行うため、回生制動抵抗に余裕があるにもかかわらず不用意にモータでの損失を増やしてしまったり、逆に回生制動抵抗の許容電力容量以上に抵抗に電力を消費させてしまったりする問題があった。
【0005】
本発明は、予め接続している回生制動抵抗の許容電力容量値とその抵抗値に応じてモータへの出力電圧や減速時間を自動調整し、回生制動抵抗で消費される電力容量を効果的に使用できるような電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、例えば、回生電力消費用回路と、回生制動抵抗と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記回生制動抵抗の許容電力容量値とその抵抗値に応じて減速時に前記モータへの出力電圧を変化させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回生制動抵抗の許容電力容量値とその抵抗値に応じてモータの出力電圧を変化させることにより、減速時に回生制動抵抗に消費される電力が適正に調整されるインバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のブロック図である。
【図2】実施例1のフローチャート図である。
【図3】実施例1の動作タイミングチャート例である。
【図4】未実施の場合の動作タイミングチャート例である。
【図5】実施例2のフローチャート図である。
【図6】実施例2の動作タイミングチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1が本実施例の構成図である。コンバータ部1とコンデンサ2によって交流電源を整流し直流電圧に変換する。インバータ部3は前記直流電圧を所要の交流電圧に変換し、モータへ出力を行う。トランジスタ6は、回生制動抵抗4を動作させるためのスイッチの役割をはたす。モータの減速運転時における回生運転状態により、インバータにエネルギーが回生された場合にオン動作し、回生制動抵抗4でこの回生エネルギーを熱として消費させる。
【0010】
電圧検出器7は、直流部20の電圧を常時監視し制御回路5に直流電圧信号Vpnを送る。設定器10はインバータの出力周波数などの各種設定を行う装置であり、各種設定値を制御回路5に送る。制御回路5に実装された図示していないMCUが、直流電圧信号、設定値などを元に回生制動抵抗動作やPWMなどの各種演算を行い、回生制動ドライブ回路8、インバータ部ドライブ回路9に動作信号を送る。回生制動ドライブ回路8は回生制動抵抗用トランジスタ6を、インバータ部ドライブ回路9はインバータ部を制御回路からの動作信号に従い駆動する回路である。
【0011】
図2が実施例のフローチャートである。設定器10より運転指令が入り運転が開始され
る(S1)。設定器10から運転周波数を取込み(S2)運転が開始される。運転周波数に応
じて出力電圧が演算される(S3)。
【0012】
制御回路5に実装されたMCUが前記設定器10より運転周波数の取込値に従い、出力運転周波数と前記出力電圧を演算出力する働きをしている。このため、前記MCUは前記出力運転周波数が、加速状態か、一定速状態か、減速状態かを正確に認識している。
【0013】
制御回路5に実装されたMCUが減速でないと判断した場合は、制御回路5は運転周波数と出力電圧からPWM演算(S13)を行い、インバータ部駆動回路9によりインバータ部3を駆動し所要の交流電圧を出力する(S14)。
【0014】
制御回路5に実装されたMCUが減速と判断した場合は、制御回路5は、電圧検出器7から直流電圧Vpnを取込み(S5)、予め設定されている回生制動回路の動作電圧Vbrと比較する(S6)。制御回路5が、Vpn<Vbrと判断した場合には、制御回路5に実装されたMCUが減速運転でない場合と同様にPWM演算を実行し(S13)、その後、所要の交流電圧がモータに出力(S14)される。
【0015】
制御回路5がVpn≧Vbrと判断した場合には、回生制動ドライブ回路8に動作信号が送られトランジスタ6がオンする(S7)。その後、制御回路5に実装されたMCUは、予め設定されている接続回生制動抵抗4の抵抗値RとVbrから制動抵抗で消費される電力Pbrの演算を行う(S8)。
【0016】
この場合、図4から、回生制動抵抗4で消費される電力Pbr1は、下式で表される。
(数1)
Pbr1=(Vb/R)*t1/td1
ここで、Vbは回生制動抵抗の印加電圧であり、t1は、図1に記載した回生制動ドライブ回路8が動作した時間であり、td1は次に回生制動ドライブ回路8が動作するまでの時間である。
【0017】
前記回生制動抵抗4で消費される電力Pbr1を正確に演算する場合、放電抵抗スイッチ用トランジスタ6の電圧降下ΔVを直流電圧Vpnから差し引きいた値(Vb=Vpn−ΔV)を用いて、
(数2)
Pbr1={(Vpn−ΔV)/R}*t1/td1
となるが、一般にスイッチ用トランジスタ6の導通時電圧降下ΔVは1V〜3V程度であり、直流電圧Vpn(数百V)に比べて極めて小さく無視できる値である。
【0018】
このため、前記回生制動抵抗4で消費される電力Pbr1とPbrnは、
(数3)
Pbr1={(Vpn−ΔV)/R}*t1/td1
≒(Vpn/R)*t1/td1 (∵Vpn−ΔV≒Vpn)
Pbrn≒(Vpn/R)*tn/tdn(∵Vpn−ΔV≒Vpn)
となることは自明である。
【0019】
また、モータが停止するまでに前記回生制動抵抗4で消費された全電力Pbrは、下式で表される。
(数4)
Pbr≒(Vpn/R)*Σ(tn/tdn)
ここで、前記回生制動抵抗4で消費される電力をPbrnとして毎回演算し、許容電力容量Prと比較してもよいし、全電力Pbrとして演算し、許容電力容量Prと比較してもよい。もちろん、上記放電抵抗スイッチ用トランジスタ6の電圧降下ΔVを直流電圧Vpnから差引いて制動抵抗で消費される電力PbrnあるいはPbrを演算しても、本発明の意図は何も変わらない。
【0020】
また、前記回生制動抵抗4に流れる電流の実効値Irmsを検出し、下式で回生制動抵抗4の制動抵抗で消費される電力Pbrを求めることもできる。
(数5)
Pbr1=(Irms*R)*t1/td1
Pbr1=(Irms*R)*Σ(tn/tdn)
前記回生制動抵抗4で消費される電力Pbrは、前記直流電圧Vpnを用いても、前記電流の実効値Irmsを用いても演算することができる。
さらには、前記Σtdnは、設定器10より予め設定されたインバータの減速時間としてもよい。
【0021】
本実施例は、前記電圧Vpnを用いて制動抵抗で消費される電力Pbrを演算した例であるが、電圧に限定したものではない。
【0022】
次いで、予め設定されている接続回生制動抵抗4の許容電力容量Prと前記Pbrと比較を行う(S9)。制御回路5に実装されたMCUがPr>Pbrと判断した場合には、加算電圧V+を増加させ(S11)、制御回路5に実装されたMCUがPr≦Pbrと判断した場合には、加算電圧V+を減少させる(S10)。その後出力電圧Voに加算電圧V+を加算{Vo+(V+)}あるいは減算{Vo−(V+)}し、(S13)、(S14)が実行されインバータから所要の交流電圧が出力される。
【0023】
ここで、接続回生制動抵抗4の許容電力容量Prを回生制動抵抗4の許容電力値として設定器10から予め設定しておけば、制動抵抗で消費される電力Pbrが、このPr値以下で動作するように自動的にインバータの出力電圧Voを制御する。
【0024】
出力電圧Voに対し、加算電圧V+を加算した場合{Vo+(V+)}、前記モータの出力端子電圧が加算電圧V+分高くなるため、モータ内部の巻線抵抗などで消費される損失電力が大きくなる。
【0025】
ここで、出力電圧Voに対し、加算電圧V+が加算{Vo+(V+)}された場合(S11)、前記モータは過励磁状態となり、モータ内部の巻線抵抗などで消費される電力(モータ内部で発生する損失)と前記回生制動抵抗4で消費される電力の双方が増大することになる。
【0026】
つまり、モータからの回生電力から前記モータ内部の巻線抵抗などで消費される電力を差引いた分がモータ端子からインバータに帰還される電力となるため、モータ内部の巻線抵抗などで消費された電力を差引いた分を前記回生制動抵抗4で電力消費すればよいことになる。
【0027】
すなわち、モータの減速時に回生制動抵抗4の電力容量値とその抵抗値に応じてモータの出力電圧Voに加算電圧V+を加算{Vo+(V+)}することにより、前記モータ内部の巻線抵抗などで消費される電力分だけ回生制動抵抗4の電力容量Prを低減することが可能である。
【0028】
この動作により、減速時の回生エネルギーを回生制動抵抗4の設定許容電力容量に応じて出力電圧が自動的に調整されるため、回生制動抵抗4の許容電力容量内で十分効果的に使用することもできる。
【0029】
図3に本実施例の動作タイムチャート例、図4に未実施の場合の動作タイムチャート例を示す。これはインバータの出力周波数を加速、一定速、減速の順に運転した場合の例である。
【0030】
まず本実施例にかかる発明を用いない場合について、図4のタイミングチャートを用いて説明する。t1で設定器10より運転指令がはいり加速が始まり、t2で目的の運転周波数に達し一定速運転状態となる。t3で設定器10より停止の指令が入り減速運転を始めるとモータは発電機動作となり、モータからの回生電力により、コンデンサの両端直流電圧Vpnが上昇する。Vpnが予め設定されている回生制動回路動作電圧Vbrを超えると放電抵抗スイッチ用トランジスタ6が動作し、回生制動抵抗4により回生電力を熱として消費することによりVpnが上昇するのを抑えつつ減速運転を行う。
【0031】
ここで、上記放電抵抗スイッチ用トランジスタ6が動作し、回生制動抵抗4により回生電力を熱として消費することを回生制動抵抗動作として、以下BRと表記する。
モータの電力は、回転数とトルクの積に比例する(P∝N*T)ため、減速トルクが一定の条件の場合、周波数に対し比例の関係がある。
【0032】
本制御では減速時のモータ内部で消費される電力Plは、周波数に関係なくほぼ一定となるため、回生制動抵抗4で消費される電力Pbrは、周波数が高い(回転数が高い)領域で大きく、周波数の低下とともに小さくなるような動作となる。
【0033】
次に図3の本実施例について説明する。
t3で減速が入りBRが働くと、回生制動抵抗4により回生電力を熱として消費するまでは未実施と同じ動作であるが、ここでフローのS8以降が実行され、回生制動抵抗の消費電力Pbrと予め設定された回生制動抵抗4の許容電力容量Prに応じて出力電圧の加算が行われる。
【0034】
すなわち、前記回生制動抵抗4で消費される電力演算値Pbrが、予め設定器10で設定された回生制動抵抗4の許容電力容量Prと比較し、Pr>Pbr場合には、出力電圧VoにV+が加算{Vo+(V+)}されてインバータから所要の交流電圧が出力される。
この加算電圧V+が、図3における時間t3以降の減速期間中にインバータ出力電圧Vo(破線部分)に上乗せされた実線で描かれた部分に相当する。
【0035】
本実施例では、減速時の出力周波数の低下とともに前記加算電圧V+も小さくしているが、モータの容量、負荷率、回生制動抵抗4の許容電力容量に依存しており、加算電圧V+を一定にし、出力周波数の低下とともに一定値として加算電圧V+を常に加算しても本発明の意図を損なうものではない。
【0036】
これによりモータの端子電圧が上昇するためモータは過励磁状態となり、モータ内で消費される電力Pl(モータ内部の巻線抵抗などで消費された損失電力)が増え、この電力Plを前記回生電力から差引いた分がモータ端子からインバータに回生される電力であり、
この電力を回生制動抵抗4で消費すればよいことになる。
【0037】
すなわち、前記回生制動抵抗4の許容電力容量Prを効果的に使用しようとすれば、回生電力の内、前記電力Pl分をモータ内で熱として消費負担するため、モータの減速時間はTdd2となり、図4と比較し、ΔTddだけ短くすることができコンベアなどの生産設備のタクトタイムを短縮することが可能であり生産性を向上することができる。
【0038】
一方、図3における減速時間Tdd2を図4で示した減速時間Tdd1と同じにした場合、出力電圧Voに対し、加算電圧V+が加算された場合(S11)、前記モータは過励磁状態となり、モータ内部の巻線抵抗などで消費される電力(モータ内部で発生する損失)が増大する。このため、モータからの回生電力から前記モータ内部の巻線抵抗などで消費される増大した電力を差引いた分がモータ端子からインバータに帰還される電力となるため、モータ内部の巻線抵抗などで消費された電力を差引いた分を前記回生制動抵抗4で電力消費すればよい訳であるから、この分だけ回生制動抵抗4の許容電力容量Prの小さい抵抗器を使用することが可能であり、抵抗器の小型化を実現することもできる。
【0039】
本実施例では、予め設定されている回生制動抵抗4の抵抗値Rと直流電圧Vpnの取込み値から回生制動抵抗4に消費されている電力Pbrを演算し、予め設定されている回生制動抵抗4の許容電力容量Prと比較し、これを超えていなければ(Pr>Pbr)出力電圧を上昇させる動作を行う。これはモータに印加する電圧を高くすることにより、モータは過励磁状態となりモータ内の損失電力が増大する。このため、前記のように回生回路が動作している最中に出力電圧Voを上昇{Vo+(V+)}させると、回生電力のうちモータ内部の巻線抵抗などで消費される電力が増え、回生電力の一部を熱としてモータが負担するため、モータ端子からインバータに戻ってくる電力が減り、回生制動抵抗4で消費すべき電力が低減することになる。この作用を利用して、前記方法により出力電圧を変化させることにより、回生制動抵抗4の消費電力Pbrを制御することができる。
【0040】
従って、予め回生制動抵抗4の抵抗値Rと許容電力容量Prを設定しておけば、回生制動抵抗4の許容電力容量内で効率よく使用することができ、回生制動抵抗4のオーバーロードによる過熱などを防ぐことができる。
【実施例2】
【0041】
出力電圧を上昇させる値を大きくし過ぎると、モータの発熱がさらに大きくなりモータ自体を焼損させる恐れがでてくる。このため、電圧加算V+にはモータの特性に応じてリミットを設ける必要がある。
【0042】
実施例1において、回生量が多く出力電圧Voがリミット値に達してしまった場合、回生電力が回生制動抵抗4では消費しきれなくなり、直流部20の電圧Vpnが上昇し最終的には過電圧の保護がかかってインバータが停止に至ることになる。
【0043】
前記回生制動抵抗4には、一般的に温度センサが内蔵されており、過度の回生量を熱として消費する場合には抵抗エレメントの温度が急激に上昇し、前記温度センサが動作し、回生制動抵抗4を異常発熱から保護する目的で前記トランジスタ6を停止する構成になっている。このため、回生電力が回生制動抵抗4で消費しきれない場合、トランジスタ6を停止するため、インバータの直流部20の電圧がさらに上昇し最終的には過電圧の保護がかかって停止することになる訳である。
【0044】
このような状態においても、過電圧の保護を回避するようにしたフローチャートが図5である。
S12までの動作は実施例1と同一であるが、出力電圧Voに予めリミット値を設定しておきV+とΔVolimの比較を行う(S15)。V+<ΔVolimだった場合、減速動作停止フラグLIをOFF(S18)、V+≧ΔVolimだった場合、減速動作停止フラグLIをONにする(S16)。S13、S14で出力が実行された後、LIのフラグがOFFの場合、引き続き運転周波数に応じて減速動作を行い、LIのフラグがONの場合、運転周波数の取込みは行わず、現在の運転周波数を継続(一時的に停止)し、交流電圧の出力動作を実行する。
【0045】
以上の処理を行うことにより、出力電圧の電圧加算V+にリミット値(V+<ΔVolim)を設けることができ、減速時に出力電圧が上昇し、電圧加算V+が予め設定されたリミット値ΔVolimを超えた場合、減速動作を一時的に停止させることができる。減速動作が一時的に停止すると、減速による回生電力が減少し直流電圧Vpnが低下するため再び減速動作が実行される。
【0046】
図6が本実施例の動作タイムチャートの例である。t4までは実施例1と同じ動作であ
るが、減速動作にはいりBRが働くと共にVoが上昇し、t4でVoの値がリミッタ値ΔVolimを超える(電圧加算V+≧ΔVolim)と減速動作が一時的に停止し、その後、t5でリミッタ値Volim未満(電圧加算V+<ΔVolim)になれば再び減速を開始し、Volimを超える(電圧加算V+≧ΔVolim)と減速動作が一時的に停止するという動作を繰返しながら減速停止を継続的に実行することになる。
【0047】
この結果、実際の減速時間Tdd3は、図4における減速時間Tdd1よりは短い時間でモータを減速停止することができる。
これにより、モータに過度の電圧を印加し極端な過励磁状態を行うことなく、モータへの過大電圧印加を防止しながら回生制動抵抗4での消費電力Pbrを許容電力容量Pr内で効率よく使用し、インバータが過電圧保護動作に陥ることなく減速停止を行うことができることになる。
また、前記リミット値ΔVolimは、減速時の出力周波数の低下とともにΔVolim値を可変してもよいし、出力周波数の低下に無関係に一定値としても本発明の意図を損なうものではない。
【0048】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置換ることが可能であり、さらには、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除あるいは置換えをすることが可能である。
【0049】
さらに、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、上記の各構成、機能などは、マイクロプロセッサ(MCU)がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全
ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続さ
れていると考えてもよい。
【0050】
以上のように、本実施例にかかる発明に拠れば、電力変換装置を使用してモータを駆動
する用途において、モータの減速時に回生電力が発生し、その回生電力を回生制動抵抗4を使用して消費させる場合に、接続する回生制動抵抗4の許容電力容量内で効果的に使用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…コンバータ部、2…コンデンサ、3…インバータ部、4…回生制動抵抗、5…制御回路、6…放電抵抗スイッチ用トランジスタ、7…直流電圧検出器、8…回生制動ドライブ回路、9…インバータ部ドライブ回路、10…設定器、20…直流部、fo…インバータ出力周波数、Vpn…インバータ直流電圧、Vo…インバータ出力基本波実効値電圧、BR…回生制動抵抗動作、Pbr…回生制動抵抗の消費電力、Pl…モータ内部で消費される電力、LI…減速動作停止、Vbr…回生制動回路の動作電圧、Vb…回生制動抵抗の印加電圧、Pr…回生制動抵抗の許容電力容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生電力消費用回路と、
回生制動抵抗と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記回生電力消費用回路の動作量から前記回生制動抵抗における消費電力値を算出し、算出された消費電力値に応じて減速時にモータへの出力電圧を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、算出された前記回生制動抵抗における消費電力値と、予め設定された回生制動抵抗の許容電力容量値とを比較し、前記消費電力値が前記許容電力値より小さければ前記モータへの出力電圧を増加し、前記消費電力値が前記許容電力値以上であれば前記モータへの出力電圧を減少するように制御することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータの出力電圧を制御する際に増加あるいは減少させる電圧値が、予め設定された前記モータの出力電圧を増加あるいは減少させる電圧値の上限値以上である場合には、前記モータの減速動作を一時的に停止させることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−217317(P2012−217317A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253436(P2011−253436)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】