説明

電力用半導体モジュールおよびその電力用半導体モジュールを用いた電力変換器

【課題】電力用半導体モジュールの過電流検出器において、外部の磁気的な外乱による影響を少なくした構造、簡単で低コストの検出器を提供する。
【解決手段】トロイド状に巻線されて形成されたトロイダルコイル2が設けられた電流検出器1を有する電力用半導体モジュール11において、トロイダルコイル2の上部あるいは下部のいずれか一方の部位にトロイダルコイル2の平面投影形状を覆うような大きさを有する導電材5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、IGBT(insulated gate bipolar transistor)等の電圧駆動型の半導体スイッチ素子からなる電力用半導体モジュールに関するものであり、特に過電流保護用の電流検出器を有する電力用半導体モジュールおよびその電力用半導体モジュールを用いた電力変換器に係るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体モジュールでは、保護機能の一つとして過電流保護機能がある。これは、アーム短絡や負荷短絡などで発生した過剰な電流を検出して、半導体スイッチ素子をターンオフし、保護するための機能である。半導体スイッチ素子の過電流保護は、素子の短絡耐量を越えない範囲で検知・動作する必要があり、このため、過電流を正確により早く検出することは、半導体モジュールやこれを用いた電力変換器の信頼性向上に重要である。
従来の過電流検出方法として、2層の短冊状の導電層とこれらをスルーホールで連続的に接続することでトロイダル状のコイルを形成し、そのコイルの中間にリターン導体を形成した3層構造のプリント基板や、さらにこの周囲にシールド導体を形成したプリント基板を電流検出器とし、半導体スイッチ素子のエミッタ配線に取り付けた構造がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−50254号公報(図1、図2、図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されている技術はトロイダル状のコイルと、返り導体(リターン導体)等を3層構造のプリント基板を採用し、さらに静電的な外乱を防止するため全体をシールド導体で覆う構造は高コストとなるという問題がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、外部の磁気的、静電的な外乱の影響を少なくした電流検出器構造の簡素化により低コスト化を図り、半導体モジュールの過電流を正確にいち早く検知して半導体モジュールを保護し、信頼性の高い電力用半導体モジュールおよびそれを用いた電力変換器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、トロイダルコイルの上部あるいは下部のいずれか一方の部位に、トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有する導電材が設けられているものである。
また、第2の発明は、トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、電力用半導体モジュールの第1の主電流端子の上部に電流検出器のトロイダルコイルが設けられているとともに、第1の主電流端子がトロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有しているものである。また、第3の発明は前記電力用半導体モジュールを用いた電力変換器である。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明に係る電力用半導体モジュールは、電流検出器のトロイダルコイルの上部あるいは下部のいずれか一方の部位に、トロイダルコイル平面投影形状を覆うような大きさを有する導電材が設けられた構成であるので導電材によって外部磁束を打ち消し、その結果半導体モジュールの過電流を正確に測定することが可能となり、半導体モジュールの保護性能の向上が小型な構造でかつ低コストで達成でき、また簡単な構造であるため、長期の使用が可能となるという効果がある。
また第2の発明に係る電力用半導体モジュールは、半導体モジュールの第1の主電流端子上に電流検出器のトロイダルコイルが設けられ、第1の主電流端子がトロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有しているので、この第1の電流端子によって外部磁束を打ち消すことができ、前記第1の発明と同様の効果があり、第3の発明によれば低コストで信頼性の高い電力変換器が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1による電流検出器を示す平面図である。
【図2】図1のA−A部分の断面図である。
【図3】電流検出器の出力を変換する回路図である。
【図4】IGBTモジュールと電流検出器の回路図である。
【図5】電流検出器の中空部に外部磁束が鎖交した場合に発生する渦電流と磁束を示す図である。
【図6】実施の形態1による他の電流検出器を示す平面図とその断面図を示す図である。
【図7】実施の形態1による他の電流検出器を示す平面図とその断面図を示す図である。
【図8】実施の形態2による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図である。
【図9】実施の形態2による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す側面図である。
【図10】図9の断面を示す図である。
【図11】実施の形態3による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図である。
【図12】実施の形態3による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す側面図である。
【図13】実施の形態4による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図である。
【図14】実施の形態4による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す側面図である。
【図15】実施の形態4の他の取付構造を示す正面図である。
【図16】実施の形態5による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図である。
【図17】実施の形態5による、電流検出器を有するIGBTモジュールの構造を示す側面図である。
【図18】実施の形態5の電流検出器取り付け部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
以下この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電流検出器1の構造を示す平面図、図2は電流検出器1のA−A部分の断面図である。電流検出器1は、絶縁被覆された導体3などでトロイド状に等間隔で巻いて形成されたトロイダルコイル2と、トロイダルコイル2の上部に図2に示すように、トロイダルコイル2の平面投影形状を覆うような大きさの導電材5がトロイダルコイル2の一方の部位である上部に設けられている。図1に示すように導電材5はトロイダルコイル2の外径Dより大きい一辺Wの正方形状である。なおトロイダルコイル2は樹脂2aなどによって固着されている。図3は電流検出器1の出力を変換する回路図である。トロイダルコイル2の両端は終端抵抗6で接続され、終端抵抗6の両端は積分器7に接続される。図4にIGBTモジュールと電流検出器1の回路図を示す。この回路の詳細は後述する。
図2,図3に示すトロイダルコイル2の中空部4に図示省略した通電路にパルス状の通電電流Icが流れるとトロイダルコイル2に磁束が鎖交して、トロイダルコイル2には次式に示す誘導起電力eが発生する。
e=M・(dIc/dt)=L・(di/dt)+R・i
ここでMは通電路とトロイダルコイル2の相互インダクタンス、Lはトロイダルコイル2の自己インダクタンス、Rは終端抵抗6の抵抗値、iはトロイダルコイル2に流れる電流である。さらに、ω・L≪Rとすると、終端抵抗6の両端には次式に示す電圧Vが発生する。
V=M・(dIc/dt)
上式より、終端抵抗6の両端に発生する電圧は、通電電流Icの微分値に比例することがわかる。このため、終端抵抗6の両端に積分器7を接続すると、積分器7から通電電流Icを測定することができる。
【0009】
一方、半導体モジュールや複数の半導体モジュールで構成される電力変換装置は、大電流をスイッチングし、かつ配線構造が複雑なため、様々な箇所で磁束が発生している。トロイダルコイル2の外側に流れるパルス電流で発生した磁束による誘導起電力は、トロイダルコイル2内では相殺される。また、図5に示すように中空部4に外部磁束8が鎖交した場合、トロイダルコイル2の上部に配置した導電材5でも外部磁束8が鎖交し、渦電流9が発生する。渦電流9は外部磁束8と逆方向に磁束10を発生させるので、外部磁束8による影響を打ち消すことができる。このため、電流検出器1は、中空部4を流れる電流のみを正確に測定することができる。この電流検出器1をIGBTモジュールに搭載した構成は後述する図8に示す。
導電材5は図1に示した正方形状に限ったものではなく、図6に示すトロイダルコイル2の直径Dを覆うような円板状や図7に示すトロイダルコイル2の平面投影形状を覆うドーナツ状でもよく、外部磁束8を打ち消す磁束10を発生させる渦電流9が流れるような形状であればよい。さらには上部でなく下部でもよく、両方の部位でもよい。なお、図6、図7の(a)、(b)は正面図、断面図を示す。
また、トロイダルコイル2をプリント基板化してもよく、2層の導体パターンをスルーホールで連続的に接続してトロイダル状に形成してもよい。
【0010】
導電材5の厚さは以下のようにして設定している。導電材5の電流検出器1の外部磁束との鎖交により渦電流が発生する表皮厚さδは以下の式で求めることができる。
δ=√{2/(ω・σ・μ0・μr)}=√{1/(π・f・σ・μ0・μr)}
ここで、ω:角振動数、σ:導体の導電率、μ0:真空の透磁率(=4π×10−7[H/m])、μr:導体の比透磁率、f:周波数である。
導電材5の材質を銅とし、厚さを1mmとすると、σ=5.8×10[S/m]、μr=1、δ=1×10−3[mm]から、
f=4.4[kHz}
となる。
従って、導電材5を銅とし、厚さを少なくとも1mm以上とすると、周波数4.4kHz以上の外部磁束は導電材5に発生する渦電流により打ち消すことができる。なお、導電材5の厚さは半導体モジュールを構成する他の部品との整合性、工作性、コスト等を考慮して、最適な厚さが設定される。また、材質を銅としたが、これに限らず、適宜選定してよい。
一般的にIGBTモジュールの主電流端子であるエミッタ端子やコレクタ端子、これらの端子につながる外部配線に使用される材質は銅であり、厚さは1mm程度である。また、IGBTモジュールのスイッチング時の周波数は数100kHz〜数MHzであるので、これによって発生する外部磁束は導電材に発生する渦電流により打ち消すことができる。
【0011】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2による、電流検出器1を有するIGBTモジュール11の構造を示す正面図、図9は側面図、図10は電流検出器1の取り付け部分の図8のA−A断面図である。
図8に示すように、半導体スイッチ素子であるIGBTチップ12のコレクタ電極とダイオードチップ13のカソード電極は絶縁基板14a上の金属箔にはんだ付けされる。IGBTモジュール11の第2の主電流端子であるコレクタ端子18は、コレクタ配線電極16と絶縁基板14a上の金属箔を介して、IGBTチップ12のコレクタ電極とダイオードチップ13のカソード電極に接続される。IGBTチップ12のエミッタ電極とダイオードチップ13のアノード電極は、エミッタワイヤ15によって絶縁基板14b上の金属箔に接続される。IGBTモジュール11の第1の主電流端子であるエミッタ端子19は、エミッタ配線電極17と絶縁基板14b上の金属箔、エミッタワイヤ15を介して、IGBTチップ12のエミッタ電極とダイオードチップ13のアノード電極に接続される。第2の主電流端子のコレクタ端子18には第2の外部配線であるコレクタ外部配線20が接続され、図8,図9に示すように、電流測定器1のセンサ部であるトロイダルコイル2は、トロイダルコイル2の平面投影形状Dφを覆うような大きさのWを有する第1の主電流端子であるエミッタ端子19上に設置される。第1の外部配線であるエミッタ外部配線21は、図10に示すようにトロイダルコイル2の中空部4を通るエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aを有しており、円筒部21aを介してエミッタ外部配線21とエミッタ端子19が接続される。また、IGBTチップ12のゲート電極はゲートワイヤ、ゲート配線電極を介してゲート端子に接続される(図示せず)。また、コレクタ外部配線20はエミッタ外部配線21上に配置される。これらエミッタ外部配線21およびコレクタ外部配線20は図9では同一寸法を示しているが、必ずしも同一寸法である必要はない。
【0012】
IGBTモジュール11では、IGBTチップ12のスイッチ動作によって電流の通電・遮断が繰り返され、パルス電流がコレクタ端子18からIGBTチップ12を経由してエミッタ端子19に、またはエミッタ端子19からダイオードチップ13を経由してコレクタ端子18に流れる。さらにパルス電流はエミッタ端子19からエミッタ外部配線21の円筒部21aを経由してエミッタ外部配線21に、またはエミッタ外部配線21からエミッタ外部配線21の円筒部21aを経由してエミッタ端子19に流れる。
【0013】
このように構成したことにより、IGBTモジュール11に流れるパルス電流は、エミッタ端子19上に設置したセンサ部であるトロイダルコイル2で検知し、終端抵抗6、積分器7を経由して測定することができる。
また、電流測定器1を、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいエミッタ端子19上に設置したため、中空部4に外部磁束が鎖交した場合、エミッタ端子19に渦電流が発生し、更にこの渦電流によって発生する磁束が外部磁束を打ち消す。このため、円筒部21aを流れる電流を正確に測定することができるので、IGBTモジュール11の過電流も精度よく検知し、保護することができる。
また、センサ部であるトロイダルコイル2を第1の主電流端子であるエミッタ端子19上に設置したため、電流測定器1をより簡素化して、低コスト化することができる。さらに、トロイダルコイル2の取外しや取付けが容易になる。
なお、本実施の形態2では、電流検出器1のセンサ部であるトロイダルコイル2をトロイダルコイル2の平面投影形状の大きいエミッタ端子19上に設置したが、これに限ったものではなく、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいコレクタ端子18上に設置しても同様な効果が得られる。すなわち、この実施の形態2ではエミッタを第1の主電流端子とし、コレクタを第2の主電流端子とし、これにつながる外部配線をそれぞれ第1,第2の外部配線としたが、これに替わりエミッタを第2の主電流端子、コレクタを第1の主電流端子、及びそれにつながる第2,第1の外部配線としてもよい。
【0014】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3による、電流検出器1を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図、図12は側面図である。また、電流検出器1の取り付け部分のA−A断面図は図10と同様であり、IGBTモジュールと電流検出器1の回路図は図4と同様である。
電流測定器1のセンサ部であるトロイダルコイル2は、第1の主電流端子のエミッタ端子19上に設置される。第1の外部配線であるエミッタ外部配線21および第2の外部配線であるコレクタ外部配線20は、図12に示すようにWbと同一寸法で、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいWbを有する。そしてトロイダルコイル2の中空部4を通るエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aを有しており、円筒部21aを介してエミッタ外部配線21とエミッタ端子19が接続される。なお、エミッタ外部配線21とコレクタ外部配線20は同一寸法Wbの例を示しているが、コレクタ外部配線20の寸法形状Wbはエミッタ外部配線21と異なる形状寸法であってもよい。
このように構成したことにより、IGBTモジュール11に流れるパルス電流は、エミッタ端子19上に設置したセンサ部であるトロイダルコイル2で検知し、終端抵抗6、積分器7を経由して測定することができる。
また、トロイダルコイル2を、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいエミッタ外部配線21の下に設置したため、中空部4に外部磁束が鎖交した場合、エミッタ外部配線21に渦電流が発生し、更にこの渦電流によって発生する磁束が外部磁束は打ち消す。このため、円筒部21aを流れる電流を正確に測定することができるので、IGBTモジュール11の過電流も精度よく検知し、保護することができる。
また、トロイダルコイル2をエミッタ外部配線21の下に設置したため、電流測定器1をより簡素化して、低コスト化することができる。さらに、センサ部2の取外しや取付けが容易になる。
なお、本実施の形態では、電流検出器1のトロイダルコイル2をトロイダルコイル2の平面投影形状より大きい第1の外部配線のエミッタ外部配線21の下に設置したが、これに限ったものではなく、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいWbを有する第2の外部配線のコレクタ外部配線20の下に設置しても同様な効果が得られる。
【0015】
実施の形態4.
図13はこの発明の実施の形態4による、電流検出器1を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図、図14は側面図である。また、電流検出器1の取り付け部分のA−A断面図は図10と同様であり、IGBTモジュールと電流検出器の回路図は図4と同様である。
電流測定器1のセンサ部であるトロイダルコイル2は、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きい図14に示すWを有するエミッタ端子19上に設置される。エミッタ外部配線21およびコレクタ外部配線20は、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいWbを有する。そしてトロイダルコイル2の中空部4を通るエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aを有しており、円筒部21aを介してエミッタ外部配線21とエミッタ端子19が接続される。なお、エミッタ外部配線21とコレクタ外部配線20の形状寸法は実施の形態3と同様な関係を有している。
このように構成したことにより、IGBTモジュール11に流れるパルス電流は、エミッタ端子19上に設置したセンサ部2であるトロイダルコイルで検知し、終端抵抗6、積分器7を経由して測定することができる。このような構成を採用したので、前記実施の形態3と同様の作用、効果を奏する。
なお、本実施の形態4では、電流検出器1をトロイダルコイル2の平面投影形状より大きい第1の主電流端子のエミッタ端子19と第1の外部配線であるエミッタ外部配線21に挟むように設置したが、これに限ったものではなく、図15に示すように電流検出器1をトロイダルコイル2の平面投影形状寸法より大きいWbを有する第2の主電流端子であるコレクタ端子18と第2の外部配線であるコレクタ外部配線20に挟むように設置しても同様な効果が得られる。
【0016】
実施の形態5.
図16は、この発明の実施の形態5による、電流検出器1を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図、図17は側面図、図18は電流検出器1の取り付け部分の図16のA−A断面図である。また、IGBTモジュールと電流検出器の回路図は図4と同様である。
この実施の形態5は実施の形態4と同様にエミッタ端子19上には電流測定器1のトロイダルコイル2が設置される。エミッタ外部配線21は、トロイダルコイル2の中空部4を通るようにエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aと、この実施の形態5の特有の構成であるトロイダルコイル2の外周部に沿ったエミッタ外部配線21と一体化されたリング部21bを有している。エミッタ外部配線21と一体化した円筒部21aはエミッタ端子19に接続されるが、リング部21bはエミッタ端子19に接続しない。なお、エミッタ端子19の大きさW、トロイダルコイル外径Dφ、エミッタ外部配線21、およびコレクタ外部配線20の寸法Wbは前記実施の形態4と同一である。
このように構成したことにより、実施の形態3と同様の作用、効果を奏し、さらにまた、トロイダルコイル2の外周部に沿ってリング部21bを設けたことにより、センサ部であるトロイダルコイル2の周囲は、エミッタ電位であるエミッタ端子19、エミッタ外部配線21、円筒部21a、リング部21bで覆われ、静電シールドを形成する。これにより、外部からの容量性結合による静電ノイズを大幅に抑制することができるので、より正確に電流を測定することができるとともに低コスト化することができる。
【0017】
さらに、実施の形態1〜実施の形態5で説明した電力用半導体モジュール(IGBTモジュール)を用いた図示省略した電力変換器は、低コスト化が行え、かつ信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 電流検出器、2 トロイダルコイル、11 IGBTモジュール、
17 エミッタ配線電極、18 コレクタ端子、19 エミッタ端子、
20 コレクタ外部配線、21 エミッタ外部配線、21b リング部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、前記電流検出器のトロイダルコイルの上部あるいは下部のいずれか一方の部位に、前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有する導電材が設けられていることを特徴とする電力用半導体モジュール。
【請求項2】
前記導電材の材質を銅とし、かつその厚さを少なくとも1mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項3】
トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、該電力用半導体モジュールの第1の主電流端子の上部に前記電流検出器のトロイダルコイルが設けられているとともに、前記第1の主電流端子が前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有していることを特徴とする電力用半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1の主電流端子の材質を銅とし、かつその厚さを少なくとも1mm以上とすることを特徴とする請求項3に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項5】
トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、該電力用半導体モジュールの第1の主電流端子の上部に前記電流検出器のトロイダルコイルが設けられているとともに、該トロイダルコイルの上部には前記電力用半導体モジュールの第1の主電流端子に接続された第1の外部配線が前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有していることを特徴とする電力用半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1の主電流端子が前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有していることを特徴とする請求項5に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項7】
前記第1の主電流端子および前記第1の外部配線の材質を銅とし、かつその厚さを少なくとも1mm以上とすることを特徴とする請求項5に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項8】
前記第1の外部配線には、前記トロイダルコイルの外周に沿ってリング部が設けられていることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項9】
前記リング部は前記第1の主電流端子と同電位であることを特徴とする請求項8に記載の電力用半導体モジュール。
【請求項10】
前記請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュールを用いたことを特徴とする電力変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−197346(P2010−197346A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45700(P2009−45700)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】