説明

電動パワーステアリング装置

【課題】起動時以外の操舵補助制御時にメモリ異常診断を制限しながら効率的にメモリ異常を検出することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】操舵機構に対して操舵補助力を発生する電動モータを制御する電子制御装置を備えた電動パワーステアリング装置であって、前記電子制御装置は、前記電動モータを制御する操舵補助制御処理を実行する際に必要とするデータ格納部と、該データ格納部の異常診断を行なう異常診断部と、該記憶異常診断部の診断結果に応じて前記操舵補助制御処理態様を変更する異常時制御部とを備え、前記異常診断部は、前記電子制御装置の起動時及び前記データ格納部に影響を与える状態変化が生じた時に異常診断を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵系に対して操舵補助力を付与する電動機を制御する電動パワーステアリング装置に係り、特に、操舵補助制御時の記憶部の異常診断時期を制限するようにした電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動パワーステアリング装置は、電動モータを制御する操舵補助制御処理がメモリを備えたマイクロコンピュータで実行されるようにしている。
このマイクロコンピュータではメモリの異常が操舵補助制御処理に与える影響が大きいため、メモリの異常診断を行なうようにしている。
このメモリの異常診断としては、エンジンの始動前かそれ以外の通常時(エンジン運転中)かを判定し、始動前は、時間同期ジョブにより予め定められた診断単位バイト数×設定回数の1ジョブ分のバイト数ずつ診断することにより、メモリの診断を全領域にわたって連続的に実行し、通常時は、複数回に1回の時間同期ジョブにより予め定められた診断単位バイト数ずつ診断することにより、所定の周期で割込んでメモリの診断を分割された領域毎に間欠的に実行するようにしたマイコン用メモリの診断装置が提案されている。
(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2000−66963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載れた従来例にあっては、通常時に複数回に1回の時間同期ジョブにより予め定められた診断単位バイト数ずつ診断することにより、所定の周期で割込んでメモリ診断を分化された領域毎に間欠的に実行するようにしているが、異常発生から異常検出までの時間を優先させた場合には、単位毎の演算対象が増加することになり定常的に演算負荷増となり、演算負荷の減少を優先した場合には異常発生から検出までの時間が長くなってしまい、メモリの異常を効率良く検出することができないという未解決の課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、起動時以外の操舵補助制御時にメモリ異常診断を制限しながら効率的にメモリ異常を検出することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載の電動パワーステアリング装置は、操舵機構に対して操舵補助力を発生する電動モータを制御する電子制御装置を備えた電動パワーステアリング装置であって、前記電子制御装置は、前記電動モータを制御する操舵補助制御処理を実行する際に必要とするデータ格納部と、該データ格納部の異常診断を行なう異常診断部と、該記憶異常診断部の診断結果に応じて前記操舵補助制御処理態様を変更する異常時制御部とを備え、前記異常診断部は、前記電子制御装置の起動時及び前記データ格納部に影響を与える状態変化が生じた時に異常診断を行なうことを特徴としている。
【0007】
このような構成であれば、メモリやレジスタ等のデータ格納部の異常診断を電子制御装置の起動時に行なうとともに、通常制御時には、データ格納部に影響を与える状態変化が生じたときのみに制限することにより、電子制御装置の演算負荷を減少させながら効率よくデータ格納部の異常診断を行なうことができる。
また、本発明に係る請求項2記載の電動パワーステアリング装置は、前記データ格納部は、操舵補助制御プログラムを格納するメモリ及びデータを格納するレジスタの少なくとも一方で構成されていることを特徴としている。
【0008】
このような構成であれば、メモリやレジスタの異常診断を演算負荷を減少させながら効率良く行なうことができる。
また、本発明に係る請求項3記載の電動パワーステアリング装置は、前記データ格納部に影響を与える状態変化は、電源電圧が設定電圧以下である時及び温度が設定範囲を超えた時の少なくとも一方であることを特徴としている。
【0009】
このような構成であれば、データ格納部に影響を与える電源電圧が変動した時や温度変化が生じた時にデータ格納部の異常診断を行なうことにより、データ格納部の異常を効率よく検出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子制御装置の操舵捕縄制御処理に必要とするメモリやレジスタ等のデータ格納部の異常診断を、電子制御装置の起動時と起動後はデータ格納部に影響を与える状態変化が生じた時に行なうことにより、演算負荷を減少させながらデータ格納部の異常診断を効率良く行なうことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による電動パワーステアリング装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】コントローラの具体的構成を示すブロック図である。
【図3】操舵補助制御処理を示すフローチャートである。
【図4】記憶異常診断処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図1において、1は、ステアリングホイールであり、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。ステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は、トルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
【0013】
出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。ピニオンシャフト7に伝達された操舵力は、ステアリングギヤ8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
【0014】
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、補助操舵力を出力軸2bに伝達する減速ギヤ10が連結されており、減速ギヤ10には、補助操舵力を発生する電動モータ12の出力軸が連結されている。
トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を例えば非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
【0015】
トルクセンサ3から出力されるトルク検出値Tは、コントローラ13に入力される。コントローラ13には、トルク検出値Tの他に車速センサ14で検出した車速検出値Vおよび電動モータ12に流れるモータ電流検出値Imdも入力され、入力されるトルク検出値Tおよび車速検出値Vに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生する操舵補助指令値Irefを算出し、算出した操舵補助指令値Irefとモータ電流検出値Imdとにより、電動モータ12に供給する駆動電流をフィードバック制御する。
【0016】
コントローラ13は、図2に示すように、電動モータ12の制御処理を実行するマイクロコンピュータ15と、マイクロコンピュータ15から出力されるモータ駆動電流Imtに基づいて電動モータ12に供給する駆動電流を制御するモータ駆動回路17と、電動モータ12の出力電流であるモータ電流を検出するモータ電流検出回路18とを備えている。
【0017】
マイクロコンピュータ15には、トルクセンサ3で検出したトルク検出値Tおよびモータ電流検出回路18で検出したモータ電流検出値ImdがそれぞれA/D変換器21および22でデジタル値に変換されて入力される。
マイクロコンピュータ15は、トルク検出値T、車速検出値Vおよびモータ電流検出値Imdが入力される入力インタフェース回路15aと、トルク検出値T、車速検出値Vおよびモータ電流検出値Imdに基づいて電動モータ12を駆動制御して操舵トルクに応じた操舵補助力を発生する操舵補助制御処理を実行する中央処理装置15bと、中央処理装置15bで実行する操舵補助制御処理に必要なプログラム及びデータを記憶する記憶部としてのROM15cと、トルク検出値Tおよびモータ電流検出値Imd等の検出データ、中央処理装置15bで実行する操舵制御処理の処理過程で必要とするデータや処理結果を記憶するRAM15dと、出力インタフェース回路15eとを有する。
【0018】
ROM15cには、図3に示すように、操舵制御処理を中央処理装置15bに実行させるためのメインプログラムとなる操舵制御処理プログラム、ROM15c、RAM15dやレジスタ(図示せず)で構成されるデータ格納部の異常診断を行なう異常診断プログラム等のプログラムやパラメータ等のデータが記憶されている。
中央処理装置15bは、ROM15cに格納されている操舵補助制御プログラムを実行することにより、操舵補助制御処理を行なうとともに、異常診断プログラムを実行することにより、異常診断処理を行なう。
【0019】
この操舵補助制御処理は、図3に示すように、先ず、ステップS1で、後述する異常診断処理で設定されるデータ格納部異常フラグFs1及びFS2の少なくとも一方が“1”であるか否かを判定し、Fs1及びFS2の少なくとも一方が“1”であるときには、ステップS2に移行して、モータ電流指令値Imtを“0”に設定してこのモータ電流指令値Imtをモータ駆動回路17に出力してから前記ステップS1に戻る。
【0020】
また、ステップS1の判定結果が、データ格納部異常フラグFs1及びFs2の双方が“0”であるときにはステップS3に移行して、トルクセンサ3で検出したトルク検出値Tを読込み、次いでステップS4に移行して車速検出値Vを読込み、次いでステップS5に移行して、トルク検出値T及び車速検出値Vに基づいて図示しない操舵補助指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出してからステップS6に移行する。
【0021】
このステップS6では、モータ電流検出回路18で検出したモータ電流検出値Imdを読込み、次いでステップS7に移行して、操舵補助電流指令値Irefからモータ電流検出値Imdを減算して電流偏差ΔIを算出してからステップS8に移行する。
このステップS8では、算出した電流偏差ΔIに基づいてPI制御処理を行なって、モータ駆動電流Imtを算出し、次いでステップS9に移行して、モータ駆動電流Imtをモータ駆動回路17に出力してから前記ステップS1に戻る。
【0022】
また、メモリ異常診断処理は、所定時間毎のタイマ割込処理として実行され、図4に示すように、先ず、ステップS21に移行して、マイクロコンピュータ15が通電開始された起動時であるか否かを判定し、起動時であるときにはステップS22に移行して、ROM15c及びRAM15dのメモリ異常診断処理を実行し、次いでステップS23に移行してレジスタの異常診断処理を実行してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。ここで、メモリ異常診断処理は、ROM15cに対しては例えばチェックサムによる異常診断を行ない、RAM15dについては所定データを書込んでから読出し、書込データと読出データとが一致するか否かで異常診断を行い、ROM15c及びRAM15dの双方が正常であるときにはデータ格納部異常フラグFs1を“0”にリセットし、ROM15c及びRAM15dの少なくとも一方が異常であるときにはデータ格納部異常フラグFs1を“1”にセットする。同様にレジスタの異常診断処理はレジスタに指定データの書込みを行なってから読出し、書込データと読出データとが一致するか否かで異常診断を行い、レジスタが正常であるときにはデータ格納部異常フラグFs2を“0”にリセットし、レジスタが異常であるときにはデータ格納部異常フラグFS2を“1”にセットする。
【0023】
また、ステップS21の判定結果が起動時ではないときにはステップS24に移行して、ROM15c及びRAM15dで構成されるメモリやレジスタで構成されるデータ格納部に影響を与える状態変化が生じたか否かを判定する。ここで、データ格納部に影響を与える状態変化としては、電源電圧の設定電圧以下への変動を生じた時や、マイクロコンピュータ15の周囲の温度が設定範囲を超える変動を生じた時が設定されている。
【0024】
ステップS24の判定結果が、状態変化が生じないときにはそのままタイマ割込処理を終了し、状態変化が生じた時には、ステップS25に移行して、前記ステップS22と同様のメモリ診断処理を実行し、次いでステップS26に移行して、前記ステップS23のレジスタ診断処理と同様のレジスタ診断処理を実行してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0025】
ここで、前述した図3のステップS1及びS2の処理が異常時制御部に対応し、ステップS3〜S9の処理が操舵補助制御部に対応し、図4の処理が異常診断部に対応している。
【0026】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、コントローラ13に電源を投入してマイクロコンピュータ13に通電を開始した起動時には、前述した図4の異常診断処理で、ROM15c及びRAM15dのメモリ異常診断処理が実行され(ステップS22)、次いでレジスタの異常診断処理が実行される(ステップS23)。
【0027】
これらの初期異常診断処理で、メモリ及びレジスタで構成されるデータ格納部が正常であると診断されたときには、データ格納部異常フラグFs1及びFs2がともに“0”にリセットされることにより、後に図3の操舵補助制御処理が実行されたときに、ステップS1からステップS3に移行して、通常の操舵補助制御処理を実行する。
このため、操舵補助制御処理では、トルク検出値Tが読み込まれるとともに車速検出値Vが読込まれ(ステップS3,S4)、トルク検出値Tと車速検出値Vとに基づいて操舵補助電流指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefが算出される(ステップS5)
【0028】
次いで、モータ電流検出値Imdを読込み(ステップS6)、操舵補助電流指令値Irefからモータ電流検出値Imdを減算して電流偏差ΔIを算出し(ステップS7)、算出した電流偏差ΔIをPI電流制御処理を行なってモータ電流Imtを算出し(ステップS8)、算出したモータ電流Imtをモータ駆動回路17に出力することにより(ステップS9)、電動モータ12をトルク検出値Tに応じた操舵補助力を発生するように駆動制御する。
【0029】
そして、電動モータ12で発生された操舵トルクに応じた操舵補助力が減速ギヤ10を介して出力軸2bに伝達される。
このとき、車両が停車している状態でステアリングホイール1を操舵するいわゆる据え切り状態では、図示しない操舵補助電流指令値算出マップの特性線の勾配が大きいことにより、小さいトルク検出値Tで大きな操舵補助電流指令値Irefを算出するので、電動モータ12で大きな操舵補助力を発生して軽い操舵を行うことができる。
【0030】
一方、車両が発進して、所定車速以上となると、操舵補助指令値算出マップの特性線の勾配が小さくなることにより、大きなトルク検出値Tでも小さな操舵補助指令値Irefを算出するので、電動モータ12で発生する操舵補助力が小さくなり、ステアリングホイール1の操舵が軽くなりすぎることを抑制して最適な操舵を行うことができる。
ところが、前述した図4のデータ格納部異常診断処理で、ROM15c及びRAM15dの何れか一方が異常と診断されたり、レジスタが異常と診断されたりした場合には、データ格納異常フラグFs1及びFs2の少なくとも一方が“1”にセットされることにより、図3の操舵補助制御処理で、ステップS1からステップS2に移行して、モータ電流指令値Imt=0がモータ駆動回路17に出力されることにより、モータ駆動回路17のモータ電流Imの出力が停止されて、電動モータ12の駆動が直ちに停止される。すなわち、正確な操舵補助制御を行なうことができないおそれが高いので、電動モータ12の駆動を停止して、操舵補助制御処理を終了する。
【0031】
一方、初期診断結果がメモリ及びレジスタで構成されるデータ格納部が正常である場合には、前述したように操舵補助制御処理が実行されるとともに、タイマ割込処理によってデータ格納部異常診断処理が実行される。
しかしながら、タイマ割込処理によってデータ格納部異常診断処理が実行されても、電源電圧が所定電圧を超えていたり、マイクロコンピュータ13の周囲温度が設定温度範囲内であったりする場合には、状態変化がないものと判断されて、実際のメモリ診断処理及びレジスタ診断処理は実行されずにタイマ割込処理を終了することにより、マイクロコンピュータ13の中央処理装置15bに大きな演算負荷を与えることはない。
【0032】
ところが、電源電圧が所定電圧以下となったり、マイクロコンピュータ13の周囲温度設定温度範囲を超えたりした場合には、データ格納部に影響を与える状態変化が生じたものと判断して、ステップS25でメモリ異常診断処理を実行し、次いでステップS26でレジスタの異常診断処理を実行してからタイマ割込処理を終了する。この異常診断結果がデータ格納部が正常である場合には操舵補助制御処理を継続し、データ格納部が異常でデータ格納部異常フラグFs1及びFs2の少なくとも一方が“1”にセットされたときには、電動モータ12へのモータ電流Imの供給を遮断して、電動モータ12の駆動を停止する。
【0033】
このように、上記実施形態によれば、マイクロコンピュータ13の起動時に、ROM15c及びRAM15dのメモリ異常診断を行なうとともに、レジスタの異常診断を行ない、メモリ異常診断及びレジスタの異常診断の診断結果が共に正常であるときに操舵補助制御処理を実行開始し、通常制御処理状態となるが、この通常制御処理状態では、ROM15c及びRAM15dのメモリとレジスタとで構成されるデータ格納部に影響を与える状態変化が生じたときにのみメモリ異常診断及びレジスタの異常診断を行なうので、前述した従来例のようにタイマ割込によって、所定周期でデータ格納部の異常診断を行なう場合に比較してマイクロコンピュータ13の中央処理装置15bに与える演算負荷を大幅に減少させることができると共に、メモリ異常又はレジスタ異常が発生しやすい状態では確実にメモリ異常診断及びレジスタ異常診断でなるデータ格納部異常診断が実行されるので、異常発生を迅速に診断することができ、効率の良いデータ格納部異常診断を行なうことができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、データ格納部の異常診断として、ROM15c及びRAM15dのメモリ異常診断と、レジスタの異常診断との双方を行なう場合について説明したが、これに限定されるものではなく、メモリ異常診断及びレジスタ異常診断の何れか一方を行なうようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、データ格納部に異常が発生した場合に、モータ電流指令値Imtを“0”に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、モータ駆動回路17に供給する電源を例えばリレーによって遮断したり、モータ駆動回路17から電動モータ12に出力されるモータ電流Imを例えばリレーによって遮断したりしてもよく、さらには操舵補助制御処理自体を中止するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態においてはデータ格納部異常を検出した場合に直ちに電動モータ12の駆動を停止する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えばROM15cを、プログラムを記憶するプログラム記憶領域とパラメータ等のデータを記憶するデータ記憶領域とで構成し、プログラム記憶領域とデータ記憶領域とで個別にメモリ異常診断を行ない、プログラム記憶領域の異常を検出した場合には直ちに電動モータ12の駆動を停止し、データ記憶領域の異常を検出した場合には操舵補助電流指令値を制限して操舵補助制御を継続するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、本発明をコラムアシスト形式の電動パワーステアリング装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ピニオンアシスト形式やラックアシスト形式の電動パワーステアリング装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…トルクセンサ、8…ステアリングギヤ、12…電動モータ、13…コントローラ、14…車速センサ、15…マイクロコンピュータ、15a…入力インタフェース回路、15b…中央処理装置、15c…ROM、15d…RAM、15e…出力インタフェース回路、17…モータ駆動回路、18…モータ電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵機構に対して操舵補助力を発生する電動モータを制御する電子制御装置を備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記電子制御装置は、前記電動モータを制御する操舵補助制御処理を実行する際に必要とするデータ格納部と、該データ格納部の異常診断を行なう異常診断部と、該記憶異常診断部の診断結果に応じて前記操舵補助制御処理態様を変更する異常時制御部とを備え、
前記異常診断部は、前記電子制御装置の起動時及び前記データ格納部に影響を与える状態変化が生じた時に異常診断を行なうことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記データ格納部は、操舵補助制御プログラムを格納するメモリ及びデータを格納するレジスタの少なくとも一方で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記データ格納部に影響を与える状態変化は、電源電圧が設定電圧以下である時及び温度が設定範囲を超えた時の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−195221(P2010−195221A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42999(P2009−42999)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】