説明

電動パワーステアリング装置

【課題】ハンドル切り込み状態時における、快適な操舵フィーリングを得ることのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【解決手段】操舵トルクが所定値以上であり、かつ操舵トルクの微分値が0より大きい場合か、又は、操舵トルクが所定値以下であり、かつ操舵トルクの微分値が0より小さい場合には、切り込み状態と判定し、切り込み状態と判定した条件以外の場合には、切り戻し状態と判定する。そして、切り込み状態と判定した場合のみ、ダンパー補償制御、及び慣性補償制御を有効となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリング装置において、操舵トルクと車速から基本アシスト電流を演算し、それに対して、モータ回転を制限するダンパー補償電流や、モータ及びシステムの慣性モーメントを打ち消すための慣性補償電流を加算する制御構成が一般的となっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置では、モータの電圧方程式により、ダンパー補償電流に必要なモータ回転角速度を演算している。そして、モータの電圧方程式に使用するモータパラメータを、種々のモータパラメータを事前に多数サンプリングしておくことで、精度の高いダンパー補償電流を算出している。
【0004】
また、例えば、特許文献2に記載の電動パワーステアリング装置では、操舵トルクと慣性補償制御量とが互いに相反する方向に作用するときには、慣性補償制御量を制限することによって操舵フィーリングの低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−066999号公報
【特許文献2】特開2001−114121号公報
【特許文献3】特開2003−182616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の場合、モータの電圧方程式により、推定したモータ回転角速度にオフセットが発生した場合には、車両直進状態で無保舵に近い運転をしているにもかかわらず、ダンパー補償が有効となって操舵フィーリングを低下させるという虞がある。
【0007】
また、特許文献2の場合、操舵トルクと慣性補償制御量とが互いに相反する方向に作用するときには、慣性補償制御量を制限するので、そのことによって、一時的に操舵フィーリングの低下は避けられない虞がある。この点において、特許文献1及び特許文献2の場合、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、特に、ハンドル切り込み時における、快適な操舵フィーリングを得ることのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータ(12)と、操舵角度を検出する操舵角センサ(17)と、操舵トルクを検出するトルクセンサ(15)と、前記操舵角センサ(17)から検出した操舵角度を微分した操舵角速度と、前記操舵角速度を微分した操舵角加速度と、前記操舵角速度に応じたダンパー補償制御(マイコン、21)と、前記操舵角加速度に応じた慣性補償制御(マイコン、21)とを、備えた電動パワーステアリング装置(1)において、前記トルクセンサ(15)から検出した操舵トルクの大きさ、及び前記操舵トルクの変化方向に応じて操舵状態を判定する操舵状態判定手段(マイコン、21)と、前記操舵状態判定手段(マイコン、21)が切り込み状態と判定した場合のみ、前記ダンパー補償制御(マイコン、21)及び前記慣性補償制御(マイコン、21)を有効にすること、を要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、トルクセンサから検出した操舵トルクの絶対値の大きさ、及び操舵トルクの絶対値の変化方向に応じて操舵状態を判定する操舵状態判定手段が、切り込み状態と判定した場合のみ、ダンパー補償制御、及び慣性補償制御を有効にできる。その結果、切り込み状態と判定した場合のみ、操舵トルクを減少させることができるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記操舵状態判定手段(マイコン、21)は、前記操舵トルクが所定値以上であり、かつ前記操舵トルクの微分値が0より大きい場合か、又は、前記操舵トルクが所定値以下であり、かつ前記操舵トルクの微分値が0より小さい場合には、切り込み状態と判定し、前記切り込み状態と判定した条件以外の場合には、切り戻し状態と判定すること、を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、操舵トルクが所定値以上であり、かつ操舵トルクの微分値が0より大きい場合か、又は、操舵トルクが所定値以下であり、かつ操舵トルクの微分値が0より小さい場合には、切り込み状態と判定し、切り込み状態と判定した条件以外の場合には、切り戻し状態と判定する。
その結果、切り込み状態か、切り戻し状態かを正確に判定できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、切り込み状態と判定した場合のみ、ダンパー補償制御、及び慣性補償制御を有効となるようにして、操舵トルクを減少させることができるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を示すブロック図。
【図3】本発明の実施形態のダンパー・慣性補償演算部における操舵状態判定部の処理手順を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、コラム型の電動パワーステアリング装置1(以下、EPSという)に具体化した本発明の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のEPS1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角が変更される。
【0016】
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ13と、EPSアクチュエータ13の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0017】
本実施形態のEPSアクチュエータ13は、コラム型のEPSアクチュエータであり、その駆動源であるモータ12は、減速機構14を介してコラムシャフト8と駆動連結されている。EPSアクチュエータ13は、モータ12の回転を減速機構14により減速してコラムシャフト8に伝達することによって、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する。
【0018】
ECU11には、車速センサ16、トルクセンサ15、操舵角センサ17及びモータ回転角センサ18が接続されている。ECU11は、これら各センサの出力信号に基づいて、車速V、操舵トルクτ、操舵角θs及びモータ回転角θmを検出する。例えば、本実施形態のトルクセンサ15は、一対のレゾルバが図示しないトーションバーの両端に設けられたツインレゾルバ型のトルクセンサである。また、ECU11は、これらの検出される各状態量に基づいて目標アシスト力を演算し、モータ12への駆動電力の供給を通じて、EPSアクチュエータ13の作動、即ち、操舵系に付与するアシスト力を制御する。
【0019】
次に、本実施形態のEPSにおけるアシスト制御の態様について説明する。
図2に示すように、ECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン21と、そのモータ制御信号に基づいて、モータ12に駆動電力を供給する駆動回路40とを備えて構成されている。
【0020】
本実施形態では、ECU11には、モータ12に通電される実電流値Imを検出するための電流センサ41、及びモータ12の回転角θmを検出するためのモータ回転角センサ18(図1参照)が接続されている。そして、マイコン21は、上記各車両状態量、並びにこれら電流センサ41及びモータ回転角センサ18の出力信号に基づき検出されたモータ12の実電流値Im及びモータ回転角θmに基づいて、駆動回路40に出力するモータ制御信号を生成する。
【0021】
尚、以下に示す各制御ブロックは、マイコン21が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。そして、同マイコン21は、所定のサンプリング周期で上記各状態量を検出し、所定周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行することにより、モータ制御信号を生成する。
【0022】
詳述すると、マイコン21は、モータ12に対する電力供給の目標値である電流指令値Ias*を演算する電流指令値演算部22と、電流指令値演算部22により演算された電流指令値Ias*に基づいてモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力部35とを備えている。
【0023】
電流指令値演算部22には、上記アシスト力目標値の基礎成分としての基礎アシスト制御量Ias**を演算する基本アシスト制御部24が設けられており、本実施形態では、この基本アシスト制御部24には、車速V及び操舵トルクτが入力されるようになっている。そして、基本アシスト制御部24は、当該操舵トルクτの絶対値が大きいほど、また車速Vが小さいほど、より大きなアシスト力を付与すべき旨の基礎アシスト制御量Ias**を演算する構成となっている。
【0024】
また、本実施形態では、上記電流指令値演算部22には、上記操舵トルクτ、車速V及び操舵角θsに基づいて慣性補償制御量Iah*及びダンパー補償制御量Iad*を演算するダンパー・慣性補償演算部23が設けられている。そして、本実施形態の電流指令値演算部22は、ハンドルの切り込みを行なった場合には、このダンパー・慣性補償演算部23が演算する慣性補償制御量Iah*及びダンパー補償制御量Iad*に基づく値を、上記基礎アシスト制御量Ias**に加算して、電流指令値Ias*としてモータ制御信号出力部35に出力する構成となっている。
【0025】
詳述すると、本実施形態のダンパー・慣性補償演算部23には、操舵トルクτ、車速V及び操舵角θsが入力されるようになっている。そして、ダンパー・慣性補償演算部23は、これらの各状態量に基づいて、慣性補償制御部25にて慣性補償制御量Iah*、及びダンパー補償制御部26にてダンパー補償制御量Iad*の演算を実行する。
尚、この慣性補償制御量Iah*及びダンピング補償制御量Iad*の演算の詳細については、例えば、上記特許文献3に記載の内容を参照されたい。
【0026】
また、本実施形態のダンパー・慣性補償演算部23には、上記慣性補償制御部25及びダンパー補償制御部26以外に、操舵状態を判定する操舵状態判定部27が設けられている。そして、上記慣性補償制御部25の後段には、慣性補償切替制御部28が、また、上記ダンパー補償制御部26の後段には、ダンパー補償切替制御部29が設けられている。
【0027】
詳述すると、本実施形態の操舵状態判定部27には、操舵トルクτが入力されるようになっている。そして、操舵状態判定部27は、操舵トルクτの大きさ、及び操舵トルクτの変化方向によって操舵状態を判定する。そして、操舵状態判定部27は、操舵状態を判定した結果である操舵状態判定フラグFLG1を、上記慣性補償切替制御部28及びダンパー補償切替制御部29に出力する。
【0028】
更に、詳述すると、本実施形態のマイコン21は、操舵状態判定部27が切り込み状態にあると判定した場合には、操舵状態判定フラグFLG1を「1」に、操舵状態判定部27が切り込み状態以外にあると判定した場合には、操舵状態判定フラグFLG1を「0」とする。
【0029】
そして、本実施形態のマイコン21は、操舵状態判定部27が切り込み状態にあると判定した場合(操舵状態判定フラグFLG1=「1」)には、慣性補償切替制御部28の接点28cと接点28aを接続し、慣性補償制御部25が出力する慣性補償制御量Iah*を加算器34に出力する。
【0030】
一方、操舵状態判定部27が切り込み状態以外にあると判定した場合(操舵状態判定フラグFLG1=「0」)には、慣性補償切替制御部28の接点28cと接点28bを接続し、メモリ30に記憶されているデータ「0」を加算器34に出力する。
【0031】
また、本実施形態のマイコン21は、操舵状態判定部27が切り込み状態にあると判定した場合(操舵状態判定フラグFLG1=「1」)には、ダンパー補償切替制御部29の接点29cと接点29aを接続し、ダンパー補償制御部26が出力するダンパー補償制御量Iad*を加算器34に出力する。
【0032】
一方、操舵状態判定部27が切り込み状態以外にあると判定した場合(操舵状態判定フラグFLG1=「0」)には、ダンパー補償切替制御部29の接点29cと接点29bを接続し、メモリ31に記憶されているデータ「0」を加算器34に出力する。
【0033】
即ち、操舵状態判定部27が切り込み状態にあると判定した場合(操舵状態判定フラグFLG1=「1」)には、電流指令値Ias*は、基本アシスト制御量Ias**と、慣性補償制御量Iah*と、ダンパー補償制御量Iad*の加算値となって、モータ制御信号出力部35に出力される。
【0034】
一方、操舵状態判定部27が切り込み状態以外にあると判定した場合(操舵状態判定フラグFLG1=「0」)には、電流指令値Ias*は、基本アシスト制御量Ias**のみの値がモータ制御信号出力部35に出力される。
【0035】
また、モータ制御信号出力部35には、この電流指令値演算部22が出力する電流指令値Ias*とともに、電流センサ41により検出された実電流値Im、及び回転角センサ18により検出されたモータ12の回転角θmが入力される。そして、モータ制御信号出力部35は、この電流指令値Ias*に実電流値Imを追従させるべくフィードバック制御を実行することによりモータ制御信号を演算する。
【0036】
具体的には、本実施形態では、モータ12には、三相(U,V,W)の駆動電力の供給により回転するブラシレスモータが用いられている。そして、モータ制御信号出力部35は、実電流値Imとして検出されたモータ12の相電流値(Iu,Iv,Iw)をd/q座標系のd、q軸電流値に変換(d/q変換)することにより、上記電流フィードバック制御を行う。
【0037】
即ち、電流指令値Ias*は、q軸電流指令値としてモータ制御信号出力部35に入力され、モータ制御信号出力部35は、回転角センサ18により検出されたモータ回転角回転角θmに基づいて相電流値(Iu,Iv,Iw)をd/q変換する。また、モータ制御信号出力部35は、そのd、q軸電流値及びq軸電流指令値に基づいてd、q軸電圧指令値を演算する。そして、そのd、q軸電圧指令値をd/q逆変換することにより相電圧指令値(Vu*,Vv*,Vw*)を演算し、当該相電圧指令値に基づいてモータ制御信号を生成する。
【0038】
このようにして生成されたモータ制御信号は、マイコン21から駆動回路40へと出力され、同駆動回路40により当該モータ制御信号に基づく三相の駆動電力がモータ12へと供給される。そして、その操舵トルクτに基づくアシスト力目標値としての電流指令値Ias*に相当するモータトルクが発生することにより、当該アシスト力目標値に対応するアシスト力が操舵系に付与される構成となっている。
【0039】
次に、上記のように構成されたダンピング・慣性補償演算部23における操舵状態判定部27の処理手順について説明する。
図3のフローチャートに示すように、マイコン21は、操舵トルクτを読み込む(ステップS101)。次に、読み込んだ操舵トルクτを微分して、操舵トルクτの変化量dτ/dtを演算する(ステップS102)。そして、操舵トルクτが所定の操舵トルク値τ1以上であり、かつ操舵トルクτの変化量dτ/dtが0より大きいか否かを判定する(ステップS103)。
【0040】
そして、操舵トルクτが所定の操舵トルク値τ1以上であり、かつ操舵トルクτの変化量dτ/dtが0より大きい場合(τ≧τ1かつdτ/dt>0、ステップS103、YES)、操舵状態判定フラグFLG1に「1」を書き込み(FLG1=「1」、ステップS104)、ステップS105、ステップS106に推移する。
【0041】
ステップS105では、慣性補償切替制御部28の接点28cと接点28aを接続し、ステップS106では、ダンパー補償切替制御部29の接点29cと接点29aを接続して、処理を終わる。即ち、切り込み状態であるので、基本アシスト制御量Ias**に慣性補償制御量Iah*を加算し、ダンパー補償制御量Iad*を減算する。
【0042】
また、操舵トルクτが所定の操舵トルク値τ1以上であり、かつ操舵トルクτの変化量dτ/dtが0より大きい場合ではない場合(ステップS103、NO)、操舵トルクτが所定の操舵トルク値−τ1以下であり、かつ操舵トルクτの変化量dτ/dtが0より小さいか否かを判定する(ステップS107)。
【0043】
そして、操舵トルクτが所定の操舵トルク値−τ1以下であり、かつ操舵トルクτの変化量dτ/dtが0より小さい場合(τ≦−τ1かつdτ/dt<0、ステップS107、YES)、操舵状態判定フラグFLG1に「1」を書き込み(FLG1=「1」、ステップS104)、ステップS105、ステップS106に推移する。
【0044】
また、操舵トルクτが所定の操舵トルク値−τ1以下であり、かつ操舵トルクτの変化量dτ/dtが0より小さい場合ではない場合(ステップS107、NO)、操舵状態判定フラグFLG1に「0」を書き込み(FLG1=「0」、ステップS108)、ステップS109、ステップS110に推移する。
【0045】
ステップS109では、慣性補償切替制御部28の接点28cと接点28bを接続し、ステップS110では、ダンパー補償切替制御部29の接点29cと接点29bを接続して、処理を終わる。即ち、切り込み状態以外であるので、基本アシスト制御量Ias**慣性補償制御量Iah*(=0)を加算し、ダンパー補償制御量Iad*(=0)を減算する。
【0046】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
操舵トルクが所定値以上であり、かつ操舵トルクの微分値が0より大きい場合か、又は、操舵トルクが所定値以下であり、かつ操舵トルクの微分値が0より小さい場合には、切り込み状態と判定し、切り込み状態と判定した条件以外の場合には、切り戻し状態と判定する。そして、切り込み状態と判定した場合のみ、ダンパー補償制御、及び慣性補償制御を有効となるようにした。
【0047】
その結果、車両の操舵状態を正確に判定できるとともに、ハンドル切り込み時のみに、慣性補償制御量Iah*と、ダンパー補償制御量Iad*を出力させることができるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【0048】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、本発明は、所謂ピニオン型やラックアシスト型のEPSに適用してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、本発明を、ブラシレスモータを駆動源とするEPSに具体化したが、本発明は、ブラシ付の直流モータを駆動源とするEPSに適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:電動パワーステアリング装置(EPS)、2:ステアリング、
3:ステアリングシャフト、4:ラックアンドピニオン機構、5:ラック軸、
6:タイロッド、7:転舵輪、8:コラムシャフト、
9:インターミディエイトシャフト、10:ピニオンシャフト、11:ECU、
12:モータ、13:EPSアクチュエータ、14:減速機構、
15:トルクセンサ、16:車速センサ、17:操舵角センサ、
18:モータ回転角センサ、21:マイコン、22:電流指令値演算部、
23:ダンパー・慣性補償演算部、24:基本アシスト制御部、
25:慣性補償制御部、26:ダンパー補償制御部、27:操舵状態判定部、
28:慣性補償切替制御部、29:ダンパー補償切替制御部、
30、31:メモリ、34:加算器、35:モータ制御信号出力部、
40:駆動回路、41:電流センサ、
V:車速、τ:操舵トルク、θs:操舵角、θm:モータ回転角、
ωm:モータ回転角速度、Im:実電流値、Ias*:電流指令値、
Ias**:基礎アシスト制御量、Iah*:慣性補償制御量、
Iad*:ダンパー補償制御量、FLG1:操舵状態判定フラグ、
28a、28b、28c、29a、29b、29c:接点、τ1:所定の操舵トルク値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵系に操舵補助力を付与するモータと、
操舵角度を検出する操舵角センサと、
操舵トルクを検出するトルクセンサと、
前記操舵角センサから検出した操舵角度を微分した操舵角速度と、
前記操舵角速度を微分した操舵角加速度と、
前記操舵角速度に応じたダンパー補償制御と、
前記操舵角加速度に応じた慣性補償制御とを、備えた電動パワーステアリング装置において、
前記トルクセンサから検出した操舵トルクの大きさ、及び前記操舵トルクの変化方向に応じて操舵状態を判定する操舵状態判定手段と、
前記操舵状態判定手段が切り込み状態と判定した場合のみ、前記ダンパー補償制御及び前記慣性補償制御を有効にすること、を特徴とした電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記操舵状態判定手段は、前記操舵トルクが所定値以上であり、かつ前記操舵トルクの微分値が0より大きい場合か、又は、前記操舵トルクが所定値以下であり、かつ前記操舵トルクの微分値が0より小さい場合には、切り込み状態と判定し、前記切り込み状態と判定した条件以外の場合には、切り戻し状態と判定すること、を特徴とした請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171523(P2012−171523A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36765(P2011−36765)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】