説明

電動パワーステアリング装置

【課題】減速機にウォームギヤを使用する電動パワーステアリング装置において、ウォームホイールの歯面付近の外観品質や強度を維持しつつ異音の発生を抑制する。
【解決手段】操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を、金属製ウォームと、このウォームに噛み合うウォームホイール成形品は、ウォームホイール10の歯部を発泡性を有する第1合成樹脂材料で発泡成形された第1成形部PB1と、発泡性を有しない第2合成樹脂材料により、前記第1成形部PB1と一体的に成形された第2成形部PS1とを有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵捕助力発生用電動アクチュエータの回転をウォームとウォームホイールを介して車輪に伝達する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転をウォームとウォームホイールを介して車輪に伝達する電動パワーステアリング装置が用いられ、そのウォームホイールを合成樹脂材製とすることで軽量化および低騒音化が図られている。
【0003】
最近の環境対応およびコスト低減の要求から、軽量化や小型化が求められる背景があり、そのために樹脂材にはさらに高強度化や耐熱性、耐摩耗性の要求がある。
先行技術文献1では、軽量化のため樹脂材料の強度を維持して衝撃吸収性を向上するため、発泡技術を利用されている。一般的に発泡すると、強度が低下するため、密度や気泡の大きさの管理が重要となる。また、先行技術文献2では、低騒音化のため、樹脂材を発泡させた合成樹脂材製ウォームホイールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−155366号公報
【特許文献2】特開2010−151288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。発泡材料で形成された成形品は、多孔質であるため、曲げ強度や衝撃強度、ヒンジ部の強度、歯車の場合は歯元強度等が10〜50%程度低下するという問題が生じる。また発泡材料のみで歯車を成形した場合には歯形表面の面粗度も良好ではなく、強度不足も懸念される。
【0006】
特に、合成樹脂材製ウォームホイールは、軽量化や小型化による使用条件の過酷化しており、大型車での実用では荷重が大きくなるためウォームとウォームホイール特に噛み合う歯面で高温になり、歯面付近の高温時のクリープや摩耗により寸法変化が大きくなりやすくそのため起こるバックラッシ増加による異音の発生防止および耐久性向上がますます必要となっている。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、歯面付近の外観品質や強度を維持しつつ異音の発生を抑制できる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を、金属製ウォームと、この駆動ウォームに噛み合う従動ウォームホイールとを有する減速ギヤ機構を介して車輪を左右に転舵させる操舵機構の電動パワーステアリングにおいて、そのウォームホイール成形品は、ウォームホイールの樹脂部を発泡性を有する第1合成樹脂材で発泡成形された第1成形部と、未発泡性を有する第2合成樹脂材により、前記第1成形部と一体的にソリッド成形された第2成形部とを有することを要旨としている。
【0009】
即ち、歯面で発生した振動音を発泡部で吸収抑制し、異音防止できるとともに、発泡により軽量化したウォームホイールができる。更に、発泡成形によりウォームホイールを軽量かでき、電動パワーステアリング装置全体を軽量化できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、第2成形部は、外部に露出され、ギヤとしての機能部に設けられ、前記第1成形部を外囲して設けられることを要旨としている。即ち、合成樹脂成形品に要求される歯面付近の外観品質や強度を確保でき、耐摩耗性や、疲労性に優れ耐久性の良いウォームホイールができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第2成形部は高粘度のポリアミド樹脂の未発泡材で、前記第1成形部は発泡したポリアミド樹脂で、発泡倍率は1.5〜2とし、1〜50μmの独立気泡径とすることを要旨としている。
【0012】
即ち、合成樹脂成形品に要求される強度を確保でき、耐摩耗性や、疲労性に優れ耐久性の良いウォームホイールができる。材料自身の引っ張り強度や曲げ強度等の初期強度は、通常粘度の合成樹脂とかわりないが、歯元強度が高くなり、粘度が高くなっても成形性が優れると共に長寿命化を図れる。
また、発泡倍率を1.5〜2とし、1〜50μmの独立気泡径としており、そのため、強度が低下せず、また、超臨界状態により、溶融樹脂の溶解性が高く気泡の結合が発生しにくく、異常欠陥が発生しにくく、さらに衝撃による振動減衰のみの効果が得られ、ウォームホイールの強度が低下せず、軽量のウォームホイールができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記ウォームホイールは金属製スリーブに一体化され、金属製スリーブが挿入された状態の成形型内に発泡性を有する合成樹脂材が注入されることにより成形され、金属製スリーブにおけるウォームホイールとの接合部に、ウォームホイールの歯列が沿う円と同心の歯列が形成され、ウォームホイールを構成する合成樹脂材が、金属製スリーブに形成された歯の間の凹部内に充填されることを要旨としている。
【0014】
即ち、ウォームホイールと金属製スリーブとの軸中心の相対変位が阻止されウォームホイールの強度を維持できると共にウォームの駆動する力を正確に伝達できる。また、歯面の振動は発泡性を有する第1成形部で減衰吸収して金属製スリーブへ伝達しにくいため、低騒音化できる。また、第1成形部が直接金属部と接触しているため第1成形部の収縮によりインサートする金属スリーブ外周部の特に端部に発生しやすい局部的な応力集中を減少できるため、応力集中で発生しやすい疲労への影響が減少でき、耐久性が向上できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、成形品金型形状としてはフィルムゲートで、ゲートの肉厚は2.5mm以上、フィルム直径は50mm以下で成形されることを要旨としている。
即ち、この金型形状であれば溶融した樹脂の粘度が大きい際にせん断による自己発熱による分解を低減できるとともに、成形圧力をあげずに金型充填性を向上できるため、充填不良、ボイド等の成形不良を発生しにくく、製品の品質を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
外観品質や強度を維持しつつ軽量化と共に異音の発生を抑制できる合成樹脂成形品及びその合成樹脂成形品を使用した電動パワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成を示す断面図
【図2】図1のA−Aの断面図
【図3】本発明の実施形態のウォームホイールの成形型の構成説明図
【図4】ウォームホイールの断面図であり、(a)は図3のB−B断面図、(b)は図4のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に示す電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2の操舵により発生する操舵トルクを、ステアリングシャフト3によりピニオン4に伝達することで、ピニオン4に噛み合うラック5を移動させ、そのラック5の動きをタイロッドやナックルアーム等(図示省略)を介して車輪6に伝達することで舵角を変化させる。
【0019】
そのステアリングシャフト3により伝達される操舵トルクに応じた操舵補助力を付与するため、操舵トルクを検出するトルクセンサー7と、その検出された操舵トルクに応じて駆動されるモータ(電動アクチュエータ)8と、モータ8により駆動される駆動シャフト50の外周に設けられる金属製ウォーム9と、ウォーム9に噛み合うと共にステアリングシャフト3に取り付けられるウォームホイール10とが設けられている。そのモータ8の回転をウォーム9およびウォームホイール10を介してステアリングシャフト3から車輪6に伝達することで操舵補助力を付与できる。図2に示すように、ハウジング21に取り付けられるモータ8により駆動される駆動シャフト50は、そのハウジング21により、軸受62,63を介して支持される。
【0020】
ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2に連結される第1シャフト3aと、この第1シャフト3aにピン22により連結される筒状の第2シャフト3bと、この第2シャフト3bの外周にブッシュ25を介して相対回転可能に嵌め合わされる筒状の第3シャフト3cとに分割されている。各シャフト3a、3b、3cの中心に沿って弾性部材としてトーションバー23が挿入されている。そのトーションバー23の一端は第1シャフト3aと第2シャフト3bとに前記ピン22により連結され、他端はピン24により第3シャフト3cに連結されている。これにより、その第2シャフト3bと第3シャフト3cとは操舵トルクに応じて弾性的に相対回転可能とされている。
【0021】
第2シャフト3bは、ハウジング21に圧入されたステアリングコラム30によりブッシュ31を介して支持される。第3シャフト3cは、ハウジング21により軸受26,27を介して支持される。その第3シャフト3cの外周に嵌め合わされる金属製スリーブ11の外周に、合成樹脂製の歯部12が一体化されている。なお、金属製スリーブ11は第3シャフト3cに圧入されたり、あるいはキー等を介して固定されてもよい。また、過大なトルクが作用した場合にウォームホイール10とステアリングシャフト3とが相対回転するように、トルクリミッター機構が金属製スリーブ11と第3シャフト3cとの間に設けられてもよい。
【0022】
トルクセンサー7は、第2シャフト3bに固定される磁性材製の第1検出リング36と、第3シャフト3cに固定される磁性材製の第2検出リング37と、両検出リング36,37の対向間を覆う検出コイル33とを有する。第1検出リング36の端面に周方向に沿って設けられる複数の歯36aと、第2検出リング37の端面に周方向に沿って設けられる複数の歯37aとの対向面積が、第2シャフト3bと第3シャフト3cの操舵トルクに応じた弾性的な相対回転に応じて変化し、その変化に対応して、検出コイル33の発生磁束に対する磁気抵抗が変化することから、検出コイル33の出力に基づき操舵トルクが検出できる。このトルクセンサー7は公知の構成のものを用いることができる。その検出された操舵トルクに対応した信号に応じて上記モータ8が駆動され、このモータ8の回転はウォーム9、ウォームホイール10を介してステアリングシャフト3に伝達される。
【0023】
モータ8の回転の減速ギヤであるウォームホイール10は心金としての金属製スリーブ11と該金属製スリーブ11を外囲する歯部12から構成され、射出成形工程を経て成形されている。歯部12は合成樹脂材料から形成され、その相対粘度は6000Pas
以上7000Pas以下とされている。その合成樹脂材料は、本実施形態ではPA(ポリアミド)6、PA66、PA46、PA12、PA11、PPA(ポリパラバン酸)11、PA6T、PA6・6T等のナイロン系合成樹脂材料とされる。その合成樹脂材料の相対粘度が大きくなると、射出成形時に成形型のキャビテイ内に射出されにくくなり、成形性が低下する。そのため本実施形態では図3に示すように、ウォームホイール10の成形型90のゲート90aはフィルムゲートとされている。これにより、合成樹脂材料の相対粘度が大きくても、キャビテイ90b内に合成樹脂材料を均一に充填できるようにしている。なお、キャビテイ90b内に合成樹脂材料を均一に充填できるようにするためにゲート90aの肉厚tは2.5mm以上とするのが好ましく、ランナー90cの長さLは短い程に好ましいが金型剛性を確保する必要があることから40mm以上50mm以下とするのが好ましく、ランナー90cの入口径D1は材料の流動抵抗低減のために4mm以上とすると共に合成樹脂材料射出ノズルの径(通常3mm)との段差による抵抗低減のために6mm以下とするのが好ましく、そのランナー90cの出口径D2は合成樹脂材料の流動抵抗低減のために13mm以上として、最大径はゲート90aの直径に等しくしてもよい。本実施形態では、成形型90に上記金属製スリーブ11を挿入した状態で射出成形を行うことでウォームホイール10を金属製スリーブ11に一体化し、その成形後にゲート90aやランナー90cに充填された合成樹脂材料の除去やウォームホイール10の歯部12の仕上げ等を機械加工により行ってもよい。
【0024】
上記構成によれば、モータ8の回転を伝達するウォームホイール10の歯部12を合成樹脂材料とすることで軽量化および低騒音化を図ることができ、且つ、その合成樹脂材の相対粘度を6000Pas以上とすることで歯部12の歯元強度を向上でき、7000Pas以下とすることで成形性を確保できる。その合成樹脂材料はナイロン系合成樹脂材料であるので初期強度が高く、吸水や熱劣化による強度低下を防止でき、また、成形性に優れると共に長寿命化も図れる。そのウォームホイール10を合成樹脂材料から射出成形することで成形コストを低減できる。
【0025】
本発明のウォームホイール10の歯部12の組成物はポリアミド組成物である。
歯部12の組成物のポリアミドは少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドである。ポリアミドは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたはより高次のポリマーであってもよい。2つ以上のポリアミドのブレンドを用いてもよい。適するポリアミドは、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体とジアミンの縮合生成物および/またはアミノカルボン酸および/またはラクタムの開環重合生成物であることが可能である。適するジカルボン酸には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタール酸およびテレフタール酸が挙げられる。適するジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミンおよびp−キシリレンジアミンが挙げられる。適するアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸である。適するラクタムには、カプロラクタムおよびラウロラクタムが挙げられる。
【0026】
本発明のウォームホイール10の歯部12の組成物は、難燃剤、潤滑剤、離型剤、染料および顔料、酸化防止剤および無機充填剤などの他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0027】
本発明のウォームホイール10の歯部12の組成物は、ブレンドが一体的全体を形成するように高分子成分のすべてがよく分散され、非高分子原料のすべてが高分子マトリックスに分散され、高分子マトリックスによって結合されている溶融混合されたブレンドである。本発明の高分子成分および非高分子原料を組み合わせるために、いかなる溶融混合方法を用いてもよい。
【0028】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、ウォームホイール10の歯部12の材料としてナイロン系以外のPPS(ポリフェニレンスルフィド)、PES(ポリエーテルスルホン)、POM(ポリアセタール)等の熱可塑性合成樹脂材料を用いてもよい。また、ウォームホイール10の歯部12の材料である合成樹脂材料に強化繊維が充填されてもよい。強化繊維の充填により、その合成樹脂材料の吸水や熱による寸法変化を防止して寸法安定性を向上できる。その強化繊維としては、一般的なガラス繊維があるがその他に、ウォームホイールに噛み合うウォームの摩耗を防止する上でチタン酸カリウムウィスカーやアラミド繊維等とする場合もある。
【0029】
(実施例)
ウォームホイール10の歯部12の材料として、GF強化ポリアミド材を使用してシャフトニーダ内で溶融ブレンドし、押し出し、固化し、ペレットに切断した。
【0030】
発泡剤としては、炭酸アンモニウムや無反応の窒素ガス等の無機系発泡剤や、ベンゼンスルホヒドラジン系、アゾカルボン酸系、ジアゾアセトアミド系、ニトロソ化合物系等の有機系発泡剤が用いられる。上記無機系発泡剤は、ベースレジンとなる合成樹脂材料を溶融状態で金型内に充填後に加圧して吹き込むことにより、連続泡として気泡が生じる(発泡する)ものであり、本発明とは異なる。また、上記有機系発泡剤は、ベースレジンに対して所定量を練り込み、型入れした後に圧縮や加熱を行うことにより、発泡剤を分解してガス(ここでは窒素ガス)を生じさせ、独立泡として気泡が生じる(発泡する)ものであり、強度低下の恐れが少なく強度を要求される機能部材には適している。さらに、本発明のベースレジンの合成樹脂材料中に超臨界状態にした窒素ガスや炭酸ガスを溶け込ませ、金型内で発泡させる構成とする場合、さらに均質な発泡が可能であり、強度低下のない成形が可能である。
【0031】
超臨界流体による発泡は、超臨界状態により、溶融樹脂の溶解性が高く気泡の結合が発生しにくく、発泡倍率は1.5〜2とし、1〜50μmの独立気泡径とすることが容易であり、そのため、強度が低下せず、異常欠陥が発生しにくい。本発明の吸音体では、前記発泡層の発泡倍率は、1.2〜5倍であることが好ましく、より好ましくは1.5〜2倍である。発泡倍率が1.2倍未満の場合は吸音性能が低下して、5倍を超えると吸音体の強度が低下して、例えば、使用時に耐久性が低下して破損する場合がある。また本発明の発泡成形品は、耐疲労特性を有する耐衝撃性の高い熱可塑性樹脂組成物でなるが、その高い耐衝撃性を十分に反映させるためには、発泡成形品中の発泡粒子の平均気泡径が、0.1〜1000μmの範囲であることが好ましい。また、発泡成形品は、高い疲労性をより高める目的で、発泡成形品中の、発泡粒子の平均気泡径を、1〜500μmの範囲とすることが好ましく、さらには1〜50μmの範囲とすることがより好ましい。
【0032】
そして、この合成樹脂成形品は、例えば、第1成形部PB1に応じたキャビテイを有する金型及び第1合成樹脂材料を用いた上述の発泡成形で成形・固化した後に、第2成形部PS1に応じたキャビテイを有する金型に、第1成形部PB1を装着し、その後、第2合成樹脂を用いてインサート成形により一体成形することができる。なお、インサート成形の他に、第1成形部PB1を成形した金型の中、例えば固定型のみを第2成形部PS1に応じた金型に交換(変更)し、第1成形部PB1が未排出(未突き出し)状態の移動型との間で第2合成樹脂材料を用いた2色成形を行ってもよい。
【0033】
図4に発泡成形したウォームホイールの断面図を示す。
図4は、第1成形部PB1をインサート成形で成形した後、第2合成樹脂を用いて一体成形している。このため、第1成形発泡部により、振動や音を吸収できるので、異音が低減でき、さらに、金属スリーブ11への伝達が起こりにくいため、ステアリングシャフト3およびステアリングコラム30への伝達を防止できる。
【0034】
さらに、上記の合成樹脂成形品においては、多孔質性の第1成形部PB1を含んでいるため、同等の機械的性質を確保する場合、使用する樹脂の削減及び軽量化を図ることが可能になる。また、発泡成形をおこなうことにより、ベースレジンの量が減ることから冷却/保圧工程を短縮することができ、サイクルタイムを短くすることが可能になるとともに、内部残留応力の減少による寸法精度向上や、インサート成形における異常な局部的残留応力発生の問題の解決に寄与改善できる。さらに、低圧での成形が可能になることから、成形機における型締め力を低下させることができ、結果として、より多数個の同時成形が可能になる。
【0035】
また、本実施形態では、一次成形で発泡成形を行い、二次成形で一体成形を行っているため、一次成形で成形された第1成形部PB1の孔に、二次成形時の第2合成樹脂材料が食い込んでアンカー効果を奏するため、密着力を容易に向上させることが可能になる。さらに、本実施形態では、第1合成樹脂材料と第2合成樹脂材料とのベースレジンが同一材料もしくは共通の共重合体で構成されているため、用いる材料の種類を削減できるとともに、リサイクルも容易となりコストダウンを実現することができる。
【符号の説明】
【0036】
6 車輪
8 モータ
9 金属製ウォーム
10 ウォームホイール
11 金属製スリーブ
PB1 第1成形部
PS1 第2成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵補助力発生用電動アクチュエータの回転を、金属製ウォームと、この金属製ウォームに噛み合うウォームホイールとを有する減速ギヤ機構を介して車輪に伝達する電動パワーステアリングにおいて、前記ウォームホイールは、心金としての金属製スリーブと該金属製スリーブを外囲する合成樹脂材料製の歯部からなり、該歯部は第1合成樹脂材料で発泡成形された第1成形部と、発泡性を有しない第2合成樹脂材料により、前記第1成形部と一体的に成形された第2成形部から成ることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記第2成形部は、外部に露出され、ギヤとしての機能する歯部であり、前記第1成形部を外囲して設けられることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記第2成形部はポリアミド樹脂の未発泡材で、前記第1成形部は発泡したポリアミド樹脂で、発泡倍率は1.5〜2とし、1〜50μmの独立気泡径とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記ウォームホイールは金属製スリーブに一体化され、その金属製スリーブが挿入された状態の成形型内に発泡性を有する合成樹脂材料が注入されることにより成形され、その金属製スリーブにおけるそのウォームホイールとの接合部に、そのウォームホイールの歯列が沿う円と同心の歯列が形成され、そのウォームホイールを構成する合成樹脂材料が、その金属製スリーブに形成された歯の間の凹部内に充填されることを特徴とする請求項1から3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記成形金型はフィルムゲートで、ゲートの肉厚は2.5mm以上、フィルム直径は50mm以下で成形される請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46168(P2012−46168A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57905(P2011−57905)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】