電動二輪車
【課題】車体におけるマスの集中化を図ることができるとともに、組み付け作業性を向上させることができる電動二輪車の提供。
【解決手段】走行駆動力を発生する電動モータ70と、電動モータ70に給電するバッテリ91とを有するもので、電動モータ70の前方および上方にバッテリ91を配置し、これら電動モータ70およびバッテリ91をケース51に収納してパワーユニットアッセンブリ50を構成する。
【解決手段】走行駆動力を発生する電動モータ70と、電動モータ70に給電するバッテリ91とを有するもので、電動モータ70の前方および上方にバッテリ91を配置し、これら電動モータ70およびバッテリ91をケース51に収納してパワーユニットアッセンブリ50を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動二輪車において、走行駆動力を発生する電動モータを車体フレームの略中央位置に配置するとともに、電動モータに給電するバッテリを車体フレームの電動モータよりも前側の上下に配置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−105176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、比較的重量のある電動モータとバッテリとを分けて配置するものであると、車体における重量の大きい部分が分散してしまうとともに、組み付け作業が面倒になるという課題がある。
【0005】
本発明は、車体におけるマスの集中化を図ることができるとともに、組み付け作業性を向上させることができる電動二輪車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、走行駆動力を発生する電動モータ(例えば実施形態における電動モータ70)と、該電動モータに給電するバッテリ(例えば実施形態におけるバッテリ91)とを有する電動二輪車であって、前記電動モータの前方および上方に前記バッテリを配置し、これら電動モータおよびバッテリをケース(例えば実施形態におけるケース51)に収納してパワーユニットアッセンブリ(例えば実施形態におけるパワーユニットアッセンブリ50)を構成することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記パワーユニットアッセンブリには、前記電動モータおよび前記バッテリの下方にモータドライバ(例えば実施形態におけるモータドライバ107)が設けられ、前記モータドライバが前記ケースの下面に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、車体フレーム(例えば実施形態における車体フレーム11)が前記モータドライバの下側で前後に延在する保護フレーム(例えば実施形態におけるロアフレーム部25)を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に係る発明において、前記ケースの前面には、上下方向に延在するフィン(例えば実施形態におけるフィン101)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記モータドライバの下面には、前後方向に延在するフィン(例えば実施形態におけるフィン111)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、前記ケースの前側上部にエア取り入れ用の吸気口(例えば実施形態における吸気口99)が設けられ、前記ケースの後側下部にエア排気用の排気口(例えば実施形態における排気口104)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、前記ケースはアルミニウム合金製であり、車体フレームの断続部(例えば実施形態における断続部65)を繋ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、電動モータの前方および上方にバッテリを配置するため、比較的重量物である電動モータおよびバッテリを纏めてコンパクトに配置することができ、車体におけるマスの集中化を図ることができる。また、これら電動モータおよびバッテリをケースに収納してパワーユニットアッセンブリとするため、組み付け作業性を向上させることができ、電動モータおよびバッテリを良好に保護できる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、パワーユニットアッセンブリには、電動モータおよびバッテリの下方にモータドライバが設けられているため、車体におけるマスの集中化をさらに図ることができ、組み付け作業性をさらに向上させることができる。また、モータドライバがケースの下面に取り付けられているため、取り外しが容易となり、モータドライバのメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、車体フレームの保護フレームがモータドライバの下側で前後に延在することにより、モータドライバをグランドヒットから保護することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、ケースの前面に設けられたフィンが上下方向に延在するため、ケースの前面に当たった走行風をケースの下面に取り付けられたモータドライバに流すことができ、モータドライバを効率良く冷却することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、モータドライバの下面に設けられたフィンが前後方向に延在するため、走行風をモータドライバの前後に流すことができ、モータドライバを効率良く冷却することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、ケースの前側上部に設けられた吸気口からエアを取り入れ、ケース内で後方および下方に流して、ケースの後側下部の排気口から排気することができるため、ケース内の電動モータおよびバッテリを効率良く冷却することができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、ケースがアルミニウム合金製であって、車体フレームの断続部を繋ぐため、車体フレームの一部をケースが兼ねることになり、車体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動二輪車を示す側面図である。
【図2】同電動二輪車の車体フレームおよびパワーユニットアッセンブリを示す平面図である。
【図3】同電動二輪車の車体フレームおよびパワーユニットアッセンブリを示す部分側断視図である。
【図4】同電動二輪車のパワーユニットアッセンブリを示す正面図である。
【図5】同電動二輪車のパワーユニットアッセンブリを示す下面図である。
【図6】同電気二輪車の制御系のブロック図である。
【図7】同電動二輪車の車体フレームおよびパワーユニットアッセンブリの変形例を示す部分側断視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る電動二輪車を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、車体フレーム11の前端のヘッドパイプ12には、ステム13に設けられたステアリングシャフト14が回転可能に軸支されており、このステム13には左右一対のフロントフォーク15が取り付けられている。これらフロントフォーク15の下端部には前輪16が軸支され、ステム13の上部には、ハンドル17が取り付けられている。これにより、ハンドル17を操作することで、前輪16が転舵可能となっている。
【0023】
また、車体フレーム11は、上記ヘッドパイプ12から後方に延びるアッパフレーム部20とアッパフレーム部20の後端から下方に延びるバックフレーム部21とからなり左右方向中央に配置される一本のメインフレーム22と、ヘッドパイプ12のメインフレーム22よりも下側から下方に延びるフロントフレーム部24とフロントフレーム部24の下端から後方に延びるロアフレーム部(保護フレーム)25とからなり左右方向の中央に配置される一本のダウンチューブ26と、メインフレーム22のバックフレーム部21の下端に固定されるピボットブラケット28とを有している。
【0024】
そして、ピボットブラケット28にはピボット軸29が軸支されており、このピボット軸29にスイングアーム30の前端が軸支されている。スイングアーム30の後端には、後輪31が軸支されている。これにより、後輪31が上下動可能となっている。メインフレーム22には、そのアッパフレーム部20を覆うようにタンク型カバー32が設けられている。
【0025】
さらに、車体フレーム11は、バックフレーム部21の上部の左右二カ所から、図2に示すようにそれぞれ後方に延出し後端部で互いに繋がるシートフレーム34と、図1に示すバックフレーム部21の下部の左右二カ所から後上がりに延出してシートフレーム34の左右にそれぞれ結合される左右一対のリヤサブフレーム35と、シートフレーム34と各リヤサブフレーム35との連結位置にそれぞれ固定される支持プレート36とを有している。各支持プレート36とスイングアーム30との間にはリヤクッション37がそれぞれ介装されている。また、シートフレーム34にはシート38およびシートカウル39が取り付けられている。
【0026】
メインフレーム22のバックフレーム部21は、上部に左右一対の取付プレート42を有している。また、ダウンチューブ26のフロントフレーム部24は、中間部に左右一対の取付プレート43を、下部に左右一対の取付プレート44を有している。加えて、ロアフレーム部25は後端部に左右一対の取付プレート45を有している。そして、これらとピボットブラケット28とに支持される形で、メインフレーム22とダウンチューブ26とで囲まれた部分に、パワーユニットアッセンブリ50が配置されている。
【0027】
パワーユニットアッセンブリ50の外観を構成するケース51は、アルミニウム合金製であり、前後方向に対し略直交する前板部52と、前板部52の上縁部から略水平に沿って後方に延出する上板部53と、前板部52の左右両縁部から略鉛直に沿ってそれぞれ後方に延出する左右一対の側板部54と、前板部52の下縁部から略水平に沿って後方に延出する下板部55と、これら上板部53、左右一対の側板部54および下板部55の後端縁部を繋ぐように前板部52と略平行に設けられる後板部56とを有する略直方体の箱形状をなしている。
【0028】
ケース51の前板部52の前面には、上部の左右方向の中央に、前方に突出する取付座部58が形成されており、下部の左右方向の中央にも、前方に突出する取付座部59が形成されている。ケース51の後板部56の後面には、上部の左右方向の中央に、後方に突出する取付座部60が形成されており、下部の左右方向の中央にも、後方に突出する取付座部61が形成されている。ケース51の下板部55の下面には、後部の左右方向の中央に、下方に突出する取付座部62が形成されている。
【0029】
そして、パワーユニットアッセンブリ50は、その前面上部の取付座部58がフロントフレーム部24の取付プレート43にボルト・ナット等の締結具64で組み付けられ、前面下部の取付座部59がフロントフレーム部24の取付プレート44に同様の締結具64で組み付けられ、後面上部の取付座部60がバックフレーム部21の取付プレート42に同様の締結具64で組み付けられ、後面下部の取付座部61がピボットブラケット28に同様の締結具64で組み付けられ、下面の取付座部62がロアフレーム部25の取付プレート45に同様の締結具64で組み付けられる。これにより、パワーユニットアッセンブリ50が車体フレーム11に搭載される。
【0030】
このようにして車載されたパワーユニットアッセンブリ50が、車体フレーム11の離間したピボットブラケット28とロアフレーム部25との断続部65を繋ぐことになり、これにより、パワーユニットアッセンブリ50は車体フレーム11の一部を兼ねる。つまり、車体フレーム11は、一本のメインフレーム22を有し、メインフレーム22に固定されたピボットブラケット28とダウンチューブ26との断続部65をパワーユニットアッセンブリ50で繋ぐモノバックダイヤモンドフレームとなっている。
【0031】
また、ケース51内には、図3に示すように、下板部55の前後方向の中間位置から前板部52と平行をなして上方に延出する縦板部66と、縦板部66の上縁部から後方に略水平に延出して後板部56の上下方向の中間位置に繋がる横板部67とを有している。これらの縦板部66および横板部67は、左右一対の側板部54から離れてケース51内の左右方向中央位置に形成されている。
【0032】
ケース51内の縦板部66と横板部67と下板部55の後部と後板部56の下部とで囲まれた後方下部の空間に、走行駆動力を発生する電動モータ70が収納されている。具体的には、縦板部66の後面と下板部55の上面との境界位置には取付座部71が、縦板部66の後面と横板部67の下面との境界位置には取付座部72が、横板部67の下面の後部位置に取付座部73が、それぞれ形成されている。そして、これに合わせて、電動モータ70には、前側下部に連結部75が、前側上部に連結部76が、後側上部に連結部77がそれぞれ形成されている。そして、取付座部71に連結部75がボルト・ナット等の締結具79で取り付けられ、取付座部72に連結部76が同様の締結具79で取り付けられ、取付座部73に連結部77が同様の締結具79で取り付けられている。
【0033】
電動モータ70は、回転軸81を左右方向に配置した横置き状態で、ケース51内に収納されており、左側方に配置された回転軸81に固定されたギア82が、ケース51内に回転可能に設けられたリダクションギア83に噛み合い、このリダクションギア83が同じくケース51内に回転可能に設けられたカウンタシャフト84のギア85に噛み合っている。このカウンタシャフト84は、ケース51から左側方に突出しており、この突出部分に図1に示すフロントスプロケット86が固定されている。このフロントスプロケット86と、後輪31に取り付けられたリヤスプロケット87と、これらに掛けられたチェーン88とによって、電動モータ70の駆動力が後輪31に伝達される。
【0034】
図3に示すように、ケース51内の前板部52と上板部53と下板部55の前部と縦板部66と横板部67と後板部56の上部とで囲まれた側面視L字状の空間に、電動モータ70に給電するバッテリ91が収納されている。バッテリ91は、直方体形状の三つのバッテリモジュール92,93,94で構成されており、バッテリモジュール92が前板部52の下部と縦板部66との間に配置され、このバッテリモジュール92の上側であって上板部53の上部の後側にバッテリモジュール93が配置され、このバッテリモジュール93の後側であって上板部53の後部と横板部67との間にバッテリモジュール94が配置されている。これにより、バッテリモジュール92が電動モータ70の水平前方に配置され、バッテリモジュール94が電動モータ70の鉛直上方に配置され、バッテリモジュール93が、バッテリモジュール92の鉛直上方かつバッテリモジュール94の水平前方に配置されている。言い換えれば、バッテリモジュール92は、電動モータ70に対し上下方向の位置を重ね合わせて前方に配置され、バッテリモジュール94は、電動モータ70に対し前後方向の位置を重ね合わせて上方に配置され、バッテリモジュール93は、バッテリモジュール92に対し、前後方向の位置を重ね合わせて上方に配置されるとともに、バッテリモジュール94に対し上下方向の位置を重ね合わせて前方に配置されている。。しかも、これら電動モータ70およびバッテリモジュール92〜94は、すべて左右方向の位置を重ね合わせている。以上により、バッテリ91は、全体として、矩形の後側の下部を矩形状に切り欠いた側面視L字状をなしており、この切り欠きの位置に、電動モータ70が配置されている。なお、三つのバッテリモジュール92〜94は、相互間およびケース51との間に隙間を形成するように支持部材95を介在させた状態でケース51に支持されている。
【0035】
バッテリモジュール92〜94内には、複数の仕切96が平行に形成されており、各仕切96の間に図示略の棒状のバッテリ本体が配置されている。前側のバッテリモジュール92,93は、仕切96の延在方向を前後方向にする一方、後側のバッテリモジュール94は、仕切96の延在方向を上下方向にしている。バッテリモジュール92〜94には、仕切96の延在方向の前後にエアを通過させる図示略の通気口が形成されている。
【0036】
以上のように、電動モータ70およびバッテリ91をケース51に収納してパワーユニットアッセンブリ50が構成されている。
【0037】
ケース51の前板部52の前面には、図4に示すように、その上端部の左右両端位置それぞれに吸気ダクト98が水平前方に突出するように形成されている。これら吸気ダクト98の内側には、ケース51の前板部52を貫通することでケース51の内外を連通させる吸気口99が、吸気ダクト98の突出方向に沿って形成されている。つまり、ケース51の前側上部にエア取り入れ用の吸気口99が設けられている。なお、これら吸気口99は、左右方向の位置を、上記した左右一対の側板部54と、中央の縦板部66および横板部67との間に形成された隙間と一致させている。また、ケース51の前面には、吸気ダクト98およびその下側と上記した上下の取付座部58,59とを除く範囲に、前方に突出し上下方向に延在するフィン101が左右方向に複数並べられて形成されている。
【0038】
また、図5に示すように、ケース51の下板部55の下面の取付座部62よりも後側には、その左右方向の中央位置に、排気ダクト103が図3に示すように後下がりに傾斜して突出するように形成されている。排気ダクト103の内側には、ケース51の下板部55を貫通することでケース51の内外を連通させる排気口104が、排気ダクト103の突出方向に沿って形成されている。この排気口104には、ケース51内のエアを強制的に排気する電動ファン105が配置されている。つまり、ケース51には、後側下部にエア排気用の排気口104が設けられている。ここで、走行時には走行風が吸気口99からケース51内に入り、排気口104に向けて後方および下方に流れ、排気口104から排気されることになって、電動モータ70およびバッテリ91を冷却することになる。また、停車時には電動ファン105を駆動することで排気口104からケース51内のエアを強制的に排気することにより、エアが吸気口99からケース51内に入り、上記と同様に流れて電動モータ70およびバッテリ91を冷却することになる。
【0039】
パワーユニットアッセンブリ50は、ケース51の下板部55の下面の取付座部62よりも前側に取り付けられて、モータドライバ(PDU:power driver unit)107を備えている。モータドライバ107は、高圧電装部品であるモータドライバ本体108と、モータドライバ本体108の前後左右および下側を覆うアルミニウム合金製の下部カバー109とからなっており、モータドライバ本体108を収納した下部カバー109がボルト等の締結具110によりケース51の下面に取り付けられている。モータドライバ107の下部カバー109の下面には、下方に突出し前後方向に延在するフィン111が図5に示すように左右方向に複数並べられて形成されている。
【0040】
モータドライバ107は、ケース51に取り付けられた状態で、図3に示すように、ケース51内にある、電動モータ70およびバッテリ91の前側のバッテリモジュール92,93の鉛直下方に配置されている。言い換えれば、モータドライバ107は、ケース51に取り付けられた状態で、電動モータ70とバッテリ91の前側のバッテリモジュール92,93とに前後方向および左右方向の位置を重ね合わせて、これらの下方に配置されている。そして、このモータドライバ107の鉛直下方で、モータドライバ107の全長にわたって前後に延在するように車体フレーム11のロアフレーム部25が配置されている。
【0041】
パワーユニットアッセンブリ50は、ケース51の上板部53の上面に、DC−DCコンバータ114を有している。DC−DCコンバータ114は、高圧電装部品であるDC−DCコンバータ本体115と、DC−DCコンバータ本体115の前後左右および上側を覆うアルミニウム合金製の上部カバー116とからなっており、DC−DCコンバータ本体115を収納した上部カバー116がボルト等の締結具117によりケース51の上面に取り付けられている。DC−DCコンバータ114の上部カバー116の上面には、上方に突出し前後方向に延在するフィン118が図2に示すように左右方向に複数並べられて形成されている。
【0042】
DC−DCコンバータ114は、ケース51に取り付けられた状態で、ケース51内の電動モータ70およびバッテリ91の後側のバッテリモジュール94の鉛直上方に配置されている。言い換えれば、DC−DCコンバータ114は、ケース51に取り付けられた状態で、ケース51内の電動モータ70およびバッテリ91の後側のバッテリモジュール94に対し、前後方向および左右方向の位置を重ね合わせて、これらの上方に配置されている。
【0043】
図1に示すように、タンク型カバー32内には、充電器121と、充電器121を商用電源等の外部電源に電気接続させるためのコンセントコード122と、高圧電装部品であるモータコントロールユニット123(MCU:motor control unit)と、高圧電装部品であるバッテリ管理ユニット(BMU:battery managing unit)124とが配置されている。タンク型カバー32には上部に開閉可能な蓋部125が設けられ、この蓋部125を開いてコンセントコード122が引き出されるようになっている。また、メインフレーム22のバックフレーム部21とシートフレーム34とリヤサブフレーム35との間の空間にはサブバッテリ127が配置されている。
【0044】
ここで、図6に示すように、バッテリ91からの電力は、図示略のメインスイッチと連動するコンタクタ128を介してモータドライバたるモータドライバ107に供給され、モータドライバ107にて直流から3相交流に変換された後に、3相交流モータである電動モータ70に供給される。また、バッテリ91からの出力電圧は、DC−DCコンバータ114を介して降圧されて、12Vの低圧のサブバッテリ127や灯火器、電動ファン105等の一般電装部品129、並びにモータコントロールユニット123等の制御系部品に供給される。
【0045】
バッテリ91は、例えばAC100Vの電源に接続される充電器121により充電される。バッテリ91の充放電状況や温度等は、バッテリ管理ユニット124に監視され、この情報がモータコントロールユニット123と共用される。モータコントロールユニット123には、スロットル(アクセル)センサ130からの出力要求情報が入力され、この出力要求情報に基づきモータコントロールユニット123がモータドライバ107を介して電動モータ70を駆動制御する。
【0046】
以上に述べた本実施形態に係る電動二輪車によれば、電動モータ70の前方および上方にバッテリ91を配置するため、比較的重量物である電動モータ70およびバッテリ91を纏めてコンパクトに配置することができ、車体におけるマスの集中化を図ることができる。また、これら電動モータ70およびバッテリ91をケース51に収納してパワーユニットアッセンブリ50とするため、組み付け作業性を向上させることができ、電動モータ70およびバッテリ91を良好に保護できる。
【0047】
また、パワーユニットアッセンブリ50には、電動モータ70およびバッテリ91の下方にモータドライバ107が設けられているため、車体におけるマスの集中化をさらに図ることができ、組み付け作業性をさらに向上させることができる。
【0048】
また、モータドライバ107がケース51の下面に取り付けられているため、取り外しが容易となり、モータドライバ107のメンテナンス性を向上させることができる。
【0049】
また、車体フレーム11のロアフレーム部25がモータドライバ107の下側で前後に延在することにより、モータドライバ107をグランドヒットから保護することができる。
【0050】
また、ケース51の前面に設けられたフィン101が上下方向に延在するため、ケース51の前面に当たった走行風をケース51の下面に取り付けられたモータドライバ107に向けて流すことができ、モータドライバ107を効率良く冷却することができる。
【0051】
また、モータドライバ107の下面に設けられたフィン111が前後方向に延在するため、走行風をモータドライバ107の前後に流すことができ、モータドライバ107を効率良く冷却することができる。
【0052】
また、ケース51の前側上部に設けられた吸気口99からエアを取り入れ、ケース51内で後方および下方に流して、ケース51の後側下部の排気口104から排気することができるため、ケース51内の電動モータ70およびバッテリ91を効率良く冷却することができる。
【0053】
また、ケース51がアルミニウム合金製であって、車体フレーム11の断続部65を繋ぐため、車体フレーム11の一部をケース51が兼ねることになり、車体の軽量化を図ることができる。
【0054】
また、電動二輪車の走行および電動ファン105の駆動による排気口104からの排気により吸気口99からケース51内に導入されるエアが、各バッテリモジュール92〜94内を通過する際に仕切96に沿って流れることになるが、前側かつ下側のバッテリモジュール92および前側かつ上側のバッテリモジュール93は、仕切96の延在方向を前後方向にしているため、前から後にエアが流れ、後側かつ上側のバッテリモジュール94は、仕切96の延在方向を上下方向にしているため、下方の電動モータ70に向けてエアが流れることになる。よって、三つのバッテリモジュール92〜94および電動モータ70を効率良く冷却することができる。
【0055】
なお、図7に示すように、メインフレーム22のアッパフレーム部20の位置が低くなるとともにバックフレーム部21が緩やかに後下がりに傾斜する場合、干渉を避けるために、DC−DCコンバータ114を上板部53の前側に配置するとともに、パワーユニットアッセンブリ50のケース51の後部かつ上部に後下がりの傾斜板部135を形成し、さらに取付座部60の位置を下げてピボットブラケット28に結合することが可能である。この場合、これに合わせて、バッテリモジュール94の後部かつ上部に後下がりの切欠部136を形成することになる。これにより、バッテリモジュール94の容量は減るものの、アッパフレーム部20の位置が低くバックフレーム部21が後下がりに傾斜する車体フレーム11の電気二輪車に搭載可能となる。
【0056】
また、メインフレーム22をヘッドパイプ12の左右二カ所から延出させてこれら二本のメインフレーム22でパワーユニットアッセンブリ50の後部の左右を支持したり、ダウンチューブ26をヘッドパイプの左右二カ所から延出させてこれら二本のダウンチューブ26でパワーユニットアッセンブリ50の前部の左右および下部の左右を支持したり、これらを組み合わせて二本のメインフレーム22と二本のダウンチューブ26とでパワーユニットアッセンブリ50を支持したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
11 車体フレーム
25 ロアフレーム部(保護フレーム)
50 パワーユニットアッセンブリ
51 ケース
65 断続部
70 電動モータ
91 バッテリ
96 仕切
99 吸気口
101 フィン
104 排気口
107 モータドライバ
111 フィン
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動二輪車において、走行駆動力を発生する電動モータを車体フレームの略中央位置に配置するとともに、電動モータに給電するバッテリを車体フレームの電動モータよりも前側の上下に配置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−105176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、比較的重量のある電動モータとバッテリとを分けて配置するものであると、車体における重量の大きい部分が分散してしまうとともに、組み付け作業が面倒になるという課題がある。
【0005】
本発明は、車体におけるマスの集中化を図ることができるとともに、組み付け作業性を向上させることができる電動二輪車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、走行駆動力を発生する電動モータ(例えば実施形態における電動モータ70)と、該電動モータに給電するバッテリ(例えば実施形態におけるバッテリ91)とを有する電動二輪車であって、前記電動モータの前方および上方に前記バッテリを配置し、これら電動モータおよびバッテリをケース(例えば実施形態におけるケース51)に収納してパワーユニットアッセンブリ(例えば実施形態におけるパワーユニットアッセンブリ50)を構成することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記パワーユニットアッセンブリには、前記電動モータおよび前記バッテリの下方にモータドライバ(例えば実施形態におけるモータドライバ107)が設けられ、前記モータドライバが前記ケースの下面に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、車体フレーム(例えば実施形態における車体フレーム11)が前記モータドライバの下側で前後に延在する保護フレーム(例えば実施形態におけるロアフレーム部25)を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に係る発明において、前記ケースの前面には、上下方向に延在するフィン(例えば実施形態におけるフィン101)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記モータドライバの下面には、前後方向に延在するフィン(例えば実施形態におけるフィン111)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に係る発明において、前記ケースの前側上部にエア取り入れ用の吸気口(例えば実施形態における吸気口99)が設けられ、前記ケースの後側下部にエア排気用の排気口(例えば実施形態における排気口104)が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、前記ケースはアルミニウム合金製であり、車体フレームの断続部(例えば実施形態における断続部65)を繋ぐことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、電動モータの前方および上方にバッテリを配置するため、比較的重量物である電動モータおよびバッテリを纏めてコンパクトに配置することができ、車体におけるマスの集中化を図ることができる。また、これら電動モータおよびバッテリをケースに収納してパワーユニットアッセンブリとするため、組み付け作業性を向上させることができ、電動モータおよびバッテリを良好に保護できる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、パワーユニットアッセンブリには、電動モータおよびバッテリの下方にモータドライバが設けられているため、車体におけるマスの集中化をさらに図ることができ、組み付け作業性をさらに向上させることができる。また、モータドライバがケースの下面に取り付けられているため、取り外しが容易となり、モータドライバのメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、車体フレームの保護フレームがモータドライバの下側で前後に延在することにより、モータドライバをグランドヒットから保護することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、ケースの前面に設けられたフィンが上下方向に延在するため、ケースの前面に当たった走行風をケースの下面に取り付けられたモータドライバに流すことができ、モータドライバを効率良く冷却することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、モータドライバの下面に設けられたフィンが前後方向に延在するため、走行風をモータドライバの前後に流すことができ、モータドライバを効率良く冷却することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、ケースの前側上部に設けられた吸気口からエアを取り入れ、ケース内で後方および下方に流して、ケースの後側下部の排気口から排気することができるため、ケース内の電動モータおよびバッテリを効率良く冷却することができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、ケースがアルミニウム合金製であって、車体フレームの断続部を繋ぐため、車体フレームの一部をケースが兼ねることになり、車体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動二輪車を示す側面図である。
【図2】同電動二輪車の車体フレームおよびパワーユニットアッセンブリを示す平面図である。
【図3】同電動二輪車の車体フレームおよびパワーユニットアッセンブリを示す部分側断視図である。
【図4】同電動二輪車のパワーユニットアッセンブリを示す正面図である。
【図5】同電動二輪車のパワーユニットアッセンブリを示す下面図である。
【図6】同電気二輪車の制御系のブロック図である。
【図7】同電動二輪車の車体フレームおよびパワーユニットアッセンブリの変形例を示す部分側断視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る電動二輪車を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、車体フレーム11の前端のヘッドパイプ12には、ステム13に設けられたステアリングシャフト14が回転可能に軸支されており、このステム13には左右一対のフロントフォーク15が取り付けられている。これらフロントフォーク15の下端部には前輪16が軸支され、ステム13の上部には、ハンドル17が取り付けられている。これにより、ハンドル17を操作することで、前輪16が転舵可能となっている。
【0023】
また、車体フレーム11は、上記ヘッドパイプ12から後方に延びるアッパフレーム部20とアッパフレーム部20の後端から下方に延びるバックフレーム部21とからなり左右方向中央に配置される一本のメインフレーム22と、ヘッドパイプ12のメインフレーム22よりも下側から下方に延びるフロントフレーム部24とフロントフレーム部24の下端から後方に延びるロアフレーム部(保護フレーム)25とからなり左右方向の中央に配置される一本のダウンチューブ26と、メインフレーム22のバックフレーム部21の下端に固定されるピボットブラケット28とを有している。
【0024】
そして、ピボットブラケット28にはピボット軸29が軸支されており、このピボット軸29にスイングアーム30の前端が軸支されている。スイングアーム30の後端には、後輪31が軸支されている。これにより、後輪31が上下動可能となっている。メインフレーム22には、そのアッパフレーム部20を覆うようにタンク型カバー32が設けられている。
【0025】
さらに、車体フレーム11は、バックフレーム部21の上部の左右二カ所から、図2に示すようにそれぞれ後方に延出し後端部で互いに繋がるシートフレーム34と、図1に示すバックフレーム部21の下部の左右二カ所から後上がりに延出してシートフレーム34の左右にそれぞれ結合される左右一対のリヤサブフレーム35と、シートフレーム34と各リヤサブフレーム35との連結位置にそれぞれ固定される支持プレート36とを有している。各支持プレート36とスイングアーム30との間にはリヤクッション37がそれぞれ介装されている。また、シートフレーム34にはシート38およびシートカウル39が取り付けられている。
【0026】
メインフレーム22のバックフレーム部21は、上部に左右一対の取付プレート42を有している。また、ダウンチューブ26のフロントフレーム部24は、中間部に左右一対の取付プレート43を、下部に左右一対の取付プレート44を有している。加えて、ロアフレーム部25は後端部に左右一対の取付プレート45を有している。そして、これらとピボットブラケット28とに支持される形で、メインフレーム22とダウンチューブ26とで囲まれた部分に、パワーユニットアッセンブリ50が配置されている。
【0027】
パワーユニットアッセンブリ50の外観を構成するケース51は、アルミニウム合金製であり、前後方向に対し略直交する前板部52と、前板部52の上縁部から略水平に沿って後方に延出する上板部53と、前板部52の左右両縁部から略鉛直に沿ってそれぞれ後方に延出する左右一対の側板部54と、前板部52の下縁部から略水平に沿って後方に延出する下板部55と、これら上板部53、左右一対の側板部54および下板部55の後端縁部を繋ぐように前板部52と略平行に設けられる後板部56とを有する略直方体の箱形状をなしている。
【0028】
ケース51の前板部52の前面には、上部の左右方向の中央に、前方に突出する取付座部58が形成されており、下部の左右方向の中央にも、前方に突出する取付座部59が形成されている。ケース51の後板部56の後面には、上部の左右方向の中央に、後方に突出する取付座部60が形成されており、下部の左右方向の中央にも、後方に突出する取付座部61が形成されている。ケース51の下板部55の下面には、後部の左右方向の中央に、下方に突出する取付座部62が形成されている。
【0029】
そして、パワーユニットアッセンブリ50は、その前面上部の取付座部58がフロントフレーム部24の取付プレート43にボルト・ナット等の締結具64で組み付けられ、前面下部の取付座部59がフロントフレーム部24の取付プレート44に同様の締結具64で組み付けられ、後面上部の取付座部60がバックフレーム部21の取付プレート42に同様の締結具64で組み付けられ、後面下部の取付座部61がピボットブラケット28に同様の締結具64で組み付けられ、下面の取付座部62がロアフレーム部25の取付プレート45に同様の締結具64で組み付けられる。これにより、パワーユニットアッセンブリ50が車体フレーム11に搭載される。
【0030】
このようにして車載されたパワーユニットアッセンブリ50が、車体フレーム11の離間したピボットブラケット28とロアフレーム部25との断続部65を繋ぐことになり、これにより、パワーユニットアッセンブリ50は車体フレーム11の一部を兼ねる。つまり、車体フレーム11は、一本のメインフレーム22を有し、メインフレーム22に固定されたピボットブラケット28とダウンチューブ26との断続部65をパワーユニットアッセンブリ50で繋ぐモノバックダイヤモンドフレームとなっている。
【0031】
また、ケース51内には、図3に示すように、下板部55の前後方向の中間位置から前板部52と平行をなして上方に延出する縦板部66と、縦板部66の上縁部から後方に略水平に延出して後板部56の上下方向の中間位置に繋がる横板部67とを有している。これらの縦板部66および横板部67は、左右一対の側板部54から離れてケース51内の左右方向中央位置に形成されている。
【0032】
ケース51内の縦板部66と横板部67と下板部55の後部と後板部56の下部とで囲まれた後方下部の空間に、走行駆動力を発生する電動モータ70が収納されている。具体的には、縦板部66の後面と下板部55の上面との境界位置には取付座部71が、縦板部66の後面と横板部67の下面との境界位置には取付座部72が、横板部67の下面の後部位置に取付座部73が、それぞれ形成されている。そして、これに合わせて、電動モータ70には、前側下部に連結部75が、前側上部に連結部76が、後側上部に連結部77がそれぞれ形成されている。そして、取付座部71に連結部75がボルト・ナット等の締結具79で取り付けられ、取付座部72に連結部76が同様の締結具79で取り付けられ、取付座部73に連結部77が同様の締結具79で取り付けられている。
【0033】
電動モータ70は、回転軸81を左右方向に配置した横置き状態で、ケース51内に収納されており、左側方に配置された回転軸81に固定されたギア82が、ケース51内に回転可能に設けられたリダクションギア83に噛み合い、このリダクションギア83が同じくケース51内に回転可能に設けられたカウンタシャフト84のギア85に噛み合っている。このカウンタシャフト84は、ケース51から左側方に突出しており、この突出部分に図1に示すフロントスプロケット86が固定されている。このフロントスプロケット86と、後輪31に取り付けられたリヤスプロケット87と、これらに掛けられたチェーン88とによって、電動モータ70の駆動力が後輪31に伝達される。
【0034】
図3に示すように、ケース51内の前板部52と上板部53と下板部55の前部と縦板部66と横板部67と後板部56の上部とで囲まれた側面視L字状の空間に、電動モータ70に給電するバッテリ91が収納されている。バッテリ91は、直方体形状の三つのバッテリモジュール92,93,94で構成されており、バッテリモジュール92が前板部52の下部と縦板部66との間に配置され、このバッテリモジュール92の上側であって上板部53の上部の後側にバッテリモジュール93が配置され、このバッテリモジュール93の後側であって上板部53の後部と横板部67との間にバッテリモジュール94が配置されている。これにより、バッテリモジュール92が電動モータ70の水平前方に配置され、バッテリモジュール94が電動モータ70の鉛直上方に配置され、バッテリモジュール93が、バッテリモジュール92の鉛直上方かつバッテリモジュール94の水平前方に配置されている。言い換えれば、バッテリモジュール92は、電動モータ70に対し上下方向の位置を重ね合わせて前方に配置され、バッテリモジュール94は、電動モータ70に対し前後方向の位置を重ね合わせて上方に配置され、バッテリモジュール93は、バッテリモジュール92に対し、前後方向の位置を重ね合わせて上方に配置されるとともに、バッテリモジュール94に対し上下方向の位置を重ね合わせて前方に配置されている。。しかも、これら電動モータ70およびバッテリモジュール92〜94は、すべて左右方向の位置を重ね合わせている。以上により、バッテリ91は、全体として、矩形の後側の下部を矩形状に切り欠いた側面視L字状をなしており、この切り欠きの位置に、電動モータ70が配置されている。なお、三つのバッテリモジュール92〜94は、相互間およびケース51との間に隙間を形成するように支持部材95を介在させた状態でケース51に支持されている。
【0035】
バッテリモジュール92〜94内には、複数の仕切96が平行に形成されており、各仕切96の間に図示略の棒状のバッテリ本体が配置されている。前側のバッテリモジュール92,93は、仕切96の延在方向を前後方向にする一方、後側のバッテリモジュール94は、仕切96の延在方向を上下方向にしている。バッテリモジュール92〜94には、仕切96の延在方向の前後にエアを通過させる図示略の通気口が形成されている。
【0036】
以上のように、電動モータ70およびバッテリ91をケース51に収納してパワーユニットアッセンブリ50が構成されている。
【0037】
ケース51の前板部52の前面には、図4に示すように、その上端部の左右両端位置それぞれに吸気ダクト98が水平前方に突出するように形成されている。これら吸気ダクト98の内側には、ケース51の前板部52を貫通することでケース51の内外を連通させる吸気口99が、吸気ダクト98の突出方向に沿って形成されている。つまり、ケース51の前側上部にエア取り入れ用の吸気口99が設けられている。なお、これら吸気口99は、左右方向の位置を、上記した左右一対の側板部54と、中央の縦板部66および横板部67との間に形成された隙間と一致させている。また、ケース51の前面には、吸気ダクト98およびその下側と上記した上下の取付座部58,59とを除く範囲に、前方に突出し上下方向に延在するフィン101が左右方向に複数並べられて形成されている。
【0038】
また、図5に示すように、ケース51の下板部55の下面の取付座部62よりも後側には、その左右方向の中央位置に、排気ダクト103が図3に示すように後下がりに傾斜して突出するように形成されている。排気ダクト103の内側には、ケース51の下板部55を貫通することでケース51の内外を連通させる排気口104が、排気ダクト103の突出方向に沿って形成されている。この排気口104には、ケース51内のエアを強制的に排気する電動ファン105が配置されている。つまり、ケース51には、後側下部にエア排気用の排気口104が設けられている。ここで、走行時には走行風が吸気口99からケース51内に入り、排気口104に向けて後方および下方に流れ、排気口104から排気されることになって、電動モータ70およびバッテリ91を冷却することになる。また、停車時には電動ファン105を駆動することで排気口104からケース51内のエアを強制的に排気することにより、エアが吸気口99からケース51内に入り、上記と同様に流れて電動モータ70およびバッテリ91を冷却することになる。
【0039】
パワーユニットアッセンブリ50は、ケース51の下板部55の下面の取付座部62よりも前側に取り付けられて、モータドライバ(PDU:power driver unit)107を備えている。モータドライバ107は、高圧電装部品であるモータドライバ本体108と、モータドライバ本体108の前後左右および下側を覆うアルミニウム合金製の下部カバー109とからなっており、モータドライバ本体108を収納した下部カバー109がボルト等の締結具110によりケース51の下面に取り付けられている。モータドライバ107の下部カバー109の下面には、下方に突出し前後方向に延在するフィン111が図5に示すように左右方向に複数並べられて形成されている。
【0040】
モータドライバ107は、ケース51に取り付けられた状態で、図3に示すように、ケース51内にある、電動モータ70およびバッテリ91の前側のバッテリモジュール92,93の鉛直下方に配置されている。言い換えれば、モータドライバ107は、ケース51に取り付けられた状態で、電動モータ70とバッテリ91の前側のバッテリモジュール92,93とに前後方向および左右方向の位置を重ね合わせて、これらの下方に配置されている。そして、このモータドライバ107の鉛直下方で、モータドライバ107の全長にわたって前後に延在するように車体フレーム11のロアフレーム部25が配置されている。
【0041】
パワーユニットアッセンブリ50は、ケース51の上板部53の上面に、DC−DCコンバータ114を有している。DC−DCコンバータ114は、高圧電装部品であるDC−DCコンバータ本体115と、DC−DCコンバータ本体115の前後左右および上側を覆うアルミニウム合金製の上部カバー116とからなっており、DC−DCコンバータ本体115を収納した上部カバー116がボルト等の締結具117によりケース51の上面に取り付けられている。DC−DCコンバータ114の上部カバー116の上面には、上方に突出し前後方向に延在するフィン118が図2に示すように左右方向に複数並べられて形成されている。
【0042】
DC−DCコンバータ114は、ケース51に取り付けられた状態で、ケース51内の電動モータ70およびバッテリ91の後側のバッテリモジュール94の鉛直上方に配置されている。言い換えれば、DC−DCコンバータ114は、ケース51に取り付けられた状態で、ケース51内の電動モータ70およびバッテリ91の後側のバッテリモジュール94に対し、前後方向および左右方向の位置を重ね合わせて、これらの上方に配置されている。
【0043】
図1に示すように、タンク型カバー32内には、充電器121と、充電器121を商用電源等の外部電源に電気接続させるためのコンセントコード122と、高圧電装部品であるモータコントロールユニット123(MCU:motor control unit)と、高圧電装部品であるバッテリ管理ユニット(BMU:battery managing unit)124とが配置されている。タンク型カバー32には上部に開閉可能な蓋部125が設けられ、この蓋部125を開いてコンセントコード122が引き出されるようになっている。また、メインフレーム22のバックフレーム部21とシートフレーム34とリヤサブフレーム35との間の空間にはサブバッテリ127が配置されている。
【0044】
ここで、図6に示すように、バッテリ91からの電力は、図示略のメインスイッチと連動するコンタクタ128を介してモータドライバたるモータドライバ107に供給され、モータドライバ107にて直流から3相交流に変換された後に、3相交流モータである電動モータ70に供給される。また、バッテリ91からの出力電圧は、DC−DCコンバータ114を介して降圧されて、12Vの低圧のサブバッテリ127や灯火器、電動ファン105等の一般電装部品129、並びにモータコントロールユニット123等の制御系部品に供給される。
【0045】
バッテリ91は、例えばAC100Vの電源に接続される充電器121により充電される。バッテリ91の充放電状況や温度等は、バッテリ管理ユニット124に監視され、この情報がモータコントロールユニット123と共用される。モータコントロールユニット123には、スロットル(アクセル)センサ130からの出力要求情報が入力され、この出力要求情報に基づきモータコントロールユニット123がモータドライバ107を介して電動モータ70を駆動制御する。
【0046】
以上に述べた本実施形態に係る電動二輪車によれば、電動モータ70の前方および上方にバッテリ91を配置するため、比較的重量物である電動モータ70およびバッテリ91を纏めてコンパクトに配置することができ、車体におけるマスの集中化を図ることができる。また、これら電動モータ70およびバッテリ91をケース51に収納してパワーユニットアッセンブリ50とするため、組み付け作業性を向上させることができ、電動モータ70およびバッテリ91を良好に保護できる。
【0047】
また、パワーユニットアッセンブリ50には、電動モータ70およびバッテリ91の下方にモータドライバ107が設けられているため、車体におけるマスの集中化をさらに図ることができ、組み付け作業性をさらに向上させることができる。
【0048】
また、モータドライバ107がケース51の下面に取り付けられているため、取り外しが容易となり、モータドライバ107のメンテナンス性を向上させることができる。
【0049】
また、車体フレーム11のロアフレーム部25がモータドライバ107の下側で前後に延在することにより、モータドライバ107をグランドヒットから保護することができる。
【0050】
また、ケース51の前面に設けられたフィン101が上下方向に延在するため、ケース51の前面に当たった走行風をケース51の下面に取り付けられたモータドライバ107に向けて流すことができ、モータドライバ107を効率良く冷却することができる。
【0051】
また、モータドライバ107の下面に設けられたフィン111が前後方向に延在するため、走行風をモータドライバ107の前後に流すことができ、モータドライバ107を効率良く冷却することができる。
【0052】
また、ケース51の前側上部に設けられた吸気口99からエアを取り入れ、ケース51内で後方および下方に流して、ケース51の後側下部の排気口104から排気することができるため、ケース51内の電動モータ70およびバッテリ91を効率良く冷却することができる。
【0053】
また、ケース51がアルミニウム合金製であって、車体フレーム11の断続部65を繋ぐため、車体フレーム11の一部をケース51が兼ねることになり、車体の軽量化を図ることができる。
【0054】
また、電動二輪車の走行および電動ファン105の駆動による排気口104からの排気により吸気口99からケース51内に導入されるエアが、各バッテリモジュール92〜94内を通過する際に仕切96に沿って流れることになるが、前側かつ下側のバッテリモジュール92および前側かつ上側のバッテリモジュール93は、仕切96の延在方向を前後方向にしているため、前から後にエアが流れ、後側かつ上側のバッテリモジュール94は、仕切96の延在方向を上下方向にしているため、下方の電動モータ70に向けてエアが流れることになる。よって、三つのバッテリモジュール92〜94および電動モータ70を効率良く冷却することができる。
【0055】
なお、図7に示すように、メインフレーム22のアッパフレーム部20の位置が低くなるとともにバックフレーム部21が緩やかに後下がりに傾斜する場合、干渉を避けるために、DC−DCコンバータ114を上板部53の前側に配置するとともに、パワーユニットアッセンブリ50のケース51の後部かつ上部に後下がりの傾斜板部135を形成し、さらに取付座部60の位置を下げてピボットブラケット28に結合することが可能である。この場合、これに合わせて、バッテリモジュール94の後部かつ上部に後下がりの切欠部136を形成することになる。これにより、バッテリモジュール94の容量は減るものの、アッパフレーム部20の位置が低くバックフレーム部21が後下がりに傾斜する車体フレーム11の電気二輪車に搭載可能となる。
【0056】
また、メインフレーム22をヘッドパイプ12の左右二カ所から延出させてこれら二本のメインフレーム22でパワーユニットアッセンブリ50の後部の左右を支持したり、ダウンチューブ26をヘッドパイプの左右二カ所から延出させてこれら二本のダウンチューブ26でパワーユニットアッセンブリ50の前部の左右および下部の左右を支持したり、これらを組み合わせて二本のメインフレーム22と二本のダウンチューブ26とでパワーユニットアッセンブリ50を支持したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
11 車体フレーム
25 ロアフレーム部(保護フレーム)
50 パワーユニットアッセンブリ
51 ケース
65 断続部
70 電動モータ
91 バッテリ
96 仕切
99 吸気口
101 フィン
104 排気口
107 モータドライバ
111 フィン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動力を発生する電動モータ(70)と、
該電動モータ(70)に給電するバッテリ(91)とを有する電動二輪車であって、
前記電動モータ(70)の前方および上方に前記バッテリ(91)を配置し、これら電動モータ(70)およびバッテリ(91)をケース(51)に収納してパワーユニットアッセンブリ(50)を構成することを特徴とする電動二輪車。
【請求項2】
前記パワーユニットアッセンブリ(50)には、前記電動モータ(70)および前記バッテリ(91)の下方にモータドライバ(107)が設けられ、
前記モータドライバ(107)が前記ケース(51)の下面に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の電動二輪車。
【請求項3】
車体フレーム(11)が前記モータドライバ(107)の下側で前後に延在する保護フレーム(25)を備えることを特徴とする請求項2記載の電動二輪車。
【請求項4】
前記ケース(51)の前面には、上下方向に延在するフィン(101)が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の電動二輪車。
【請求項5】
前記モータドライバ(107)の下面には、前後方向に延在するフィン(111)が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項記載の電動二輪車。
【請求項6】
前記ケース(51)の前側上部にエア取り入れ用の吸気口(99)が設けられ、前記ケース(51)の後側下部にエア排気用の排気口(104)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電動二輪車。
【請求項7】
前記ケース(51)はアルミニウム合金製であり、車体フレーム(11)の断続部(65)を繋ぐことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の電動二輪車。
【請求項1】
走行駆動力を発生する電動モータ(70)と、
該電動モータ(70)に給電するバッテリ(91)とを有する電動二輪車であって、
前記電動モータ(70)の前方および上方に前記バッテリ(91)を配置し、これら電動モータ(70)およびバッテリ(91)をケース(51)に収納してパワーユニットアッセンブリ(50)を構成することを特徴とする電動二輪車。
【請求項2】
前記パワーユニットアッセンブリ(50)には、前記電動モータ(70)および前記バッテリ(91)の下方にモータドライバ(107)が設けられ、
前記モータドライバ(107)が前記ケース(51)の下面に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の電動二輪車。
【請求項3】
車体フレーム(11)が前記モータドライバ(107)の下側で前後に延在する保護フレーム(25)を備えることを特徴とする請求項2記載の電動二輪車。
【請求項4】
前記ケース(51)の前面には、上下方向に延在するフィン(101)が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の電動二輪車。
【請求項5】
前記モータドライバ(107)の下面には、前後方向に延在するフィン(111)が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項記載の電動二輪車。
【請求項6】
前記ケース(51)の前側上部にエア取り入れ用の吸気口(99)が設けられ、前記ケース(51)の後側下部にエア排気用の排気口(104)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の電動二輪車。
【請求項7】
前記ケース(51)はアルミニウム合金製であり、車体フレーム(11)の断続部(65)を繋ぐことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の電動二輪車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−96594(P2012−96594A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243975(P2010−243975)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]