説明

電動圧縮機

【課題】循環経路中に含まれる水分を回収することができ、内蔵する永久磁石の特性劣化を抑制することができる電動圧縮機を提供すること。
【解決手段】吸入ポート11と吐出ポート12とを設けたハウジング10と、ハウジング10内に配置され吸入ポート11から吸入する冷媒を圧縮して吐出ポート12から吐出する圧縮部15と、ハウジング10内に配置され圧縮部15を駆動する回転軸21を回転させる電動モータ2とを有し、電動モータ2が、永久磁石3を内蔵したロータ22とハウジング10に支持されたステータ23とを備えてなる。ハウジング10の下方外部に配置された水分を収容可能なトラップ室7と、トラップ室7とハウジング10の内部とを連通させる連通路75とを設けてなる。ハウジング10内部に冷媒及び潤滑油と共に循環してくる水分を連通路75を介してトラップ室7に回収できるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに用いられる電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車載空調機などの冷凍サイクルに用いられる電動圧縮機は、圧縮部を駆動する電動モータを、冷媒等の循環経路となるハウジング内部に内蔵している。また、電動モータは、フェライト磁石あるいは希土類磁石等の永久磁石を内蔵している。そのため、永久磁石は、冷凍サイクルの循環経路を循環する冷媒及び潤滑油と接触しうる環境に晒されていることとなる。
【0003】
また、冷凍サイクルの循環経路には、例えば経年的な冷媒や潤滑油の変質や使用環境の影響などによって、水分が含まれる状態になる場合がある。また、水分の存在下においては、冷媒あるいは潤滑油から酸が生じる場合もある。水分や酸が冷媒等と共に循環している場合には、永久磁石が水分あるいは酸と接触し、これらとの反応によって劣化しやすくなる。
このような問題に対処するため、電動圧縮機の電動モータが内蔵する永久磁石の表面に、永久磁石の耐食性を向上させるための保護膜を形成することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−225636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記保護膜の形成は、これを形成しない場合よりも永久磁石の劣化防止効果を高めることができる。しかしながら、保護膜に傷等が生じた場合には、保護膜による劣化防止効果が減少してしまう。そこで、やはり、保護膜の有無にかかわらず、永久磁石の劣化の原因となる循環経路中に含まれる水分をできる限り回収し、水分あるいは水分に起因して生じた酸と永久磁石との接触機会を減少させることが有効な対策であると考えられる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、循環経路中に含まれる水分を回収することができ、内蔵する永久磁石の特性劣化を抑制することができる電動圧縮機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸入ポートと吐出ポートとを設けたハウジングと、該ハウジング内に配置され上記吸入ポートから吸入する冷媒を圧縮して上記吐出ポートから吐出する圧縮部と、上記ハウジング内に配置され上記圧縮部を駆動する回転軸を回転させる電動モータとを有し、該電動モータが、永久磁石を内蔵したロータと上記ハウジングに支持されたステータとを備えてなる電動圧縮機において、
上記ハウジングの下方外部に配置された水分を収容可能なトラップ室と、該トラップ室と上記ハウジングの内部とを連通させる連通路とを設けてなり、
上記ハウジング内部に冷媒及び潤滑油と共に循環してくる水分を上記連通路を介して上記トラップ室に回収できるよう構成されていることを特徴とする電動圧縮機にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記電動圧縮機を含む冷凍サイクルの循環経路に水分が含まれている場合には、電動圧縮機の運転を停止した際に、比重の関係からハウジングの底部に遊離水として溜まりやすい傾向にある。本発明の電動圧縮機は、上記のごとく、ハウジングの下方外部に上記トラップ室を有しており、該トラップ室と上記ハウジングの内部とを上記連通路により連通させている。そのため、上記電動圧縮機のハウジング内に存在する遊離水は、電動圧縮機のハウジングの底部に溜まるたびに上記連通路を通ってハウジング外部の上記トラップ室内に回収される。このトラップ室は、ハウジングの外部下方に設けられており、電動圧縮機運転時の冷媒等の循環経路から外れている。そのため、一旦トラップ室内に回収された水分がハウジング内に戻ることは抑制される。それ故、循環経路に水分が含まれる状態となっても、上記電動圧縮機の運転と停止を繰り返すたびに、遊離水となった水分が上記トラップ室に回収され、水分に起因する永久磁石の特性劣化などを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1における、電動圧縮機の構成を示す説明図。
【図2】実施例1における、車載空調機の構成を示す説明図。
【図3】実施例2における、電動圧縮機の構成を示す説明図。
【図4】実施例3における、電動圧縮機の構成を示す説明図。
【図5】実施例3における、連通路の縦拡大説明図。
【図6】実施例3における、連通路の横拡大説明図(図5のB矢視図)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記電動圧縮機において、上記連通路の開口面積は、0.75〜650mm2であることが好ましい(請求項2)。上記連通路の開口面積は、遊離水の表面張力の影響を受けにくいレベル以上の大きさであって、かつ、循環経路の循環状態を乱すレベルの大きさにならないように抑えることが有効である。このため、上記範囲の開口面積が好ましい。上記開口面積が0.75mm2未満の場合には、遊離水の表面張力の影響で開口部を閉塞するなどして遊離水をスムーズにトラップ室に誘導することが困難となるおそれがある。一方、上記開口面積が650mm2を超える場合には、冷媒等の循環経路に影響を与え、トラップ室に回収した水分が再び循環経路に戻るおそれも生じうる。したがって、上記連通路が断面円形状である場合には、その開口径は上記開口面積の範囲を満足する1mmφ〜50mmφが好ましい。
【0011】
また、上記連通路には、上記トラップ室に流入した水分が上記ハウジング内に逆流することを抑制するための逆流抑制機構が設けられていることが好ましい(請求項3)。上記逆流抑制機構としては、連通路の内周面に、先端がトラップ室に近づくように傾斜した返し板を1又は複数設ける構造などを採用できる。この場合には、トラップ室に回収した水分がハウジング内に向けて逆流することを抑制する効果をさらに高めることができる。
【0012】
また、上記連通路は、上記トラップ室から上記ハウジングに向かう中心軸方向が、上記循環経路における循環方向に対して鋭角に交わるように傾斜していることも好ましい(請求項4)。この場合にも、トラップ室に回収した水分がハウジング内に向けて逆流することを抑制する効果をさらに高めることができる。
【0013】
また、上記トラップ室は、上記ハウジングに対して着脱可能に配設されていることが好ましい(請求項5)。この場合には、定期点検を行う機会などを利用して上記トラップ室を取り外すことにより、上記トラップ室に回収した水分を廃棄することができる。着脱可能な機構としては、公知の様々な接続機構を採用できる。
【0014】
また、上記トラップ室内には、水分を吸着する吸着剤と酸を中和する中和剤の少なくとも一方を含む機内環境改善剤が配設されていることが好ましい(請求項6)。上記機内環境改善剤がトラップ室に配設されていることによって、トラップ室に導入した水分を吸着剤によって吸着する、あるいはトラップ内に導入した酸を中和剤によって中和することができ、水分や酸に起因する永久磁石の特性劣化などをより強く抑制することができる。
【0015】
また、上記吸着剤は、ゼオライト、活性炭、アルミナ及びシリカゲルのうち少なくとも1種以上よりなることが好ましい。これらの吸着剤は、単位体積当たりの水分吸着性能に優れ、ロータ内という限られたスペースに配置するのに有効である。なお、これらの吸着剤は、一般に乾燥剤と呼ばれることもある。
【0016】
また、上記中和剤は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種以上よりなることが好ましい。これらは、固体状で長期間安定して存在するため好適である。
【0017】
また、上記永久磁石は希土類磁石とすることができる(請求項7)。電動圧縮機用の永久磁石としては、フェライト磁石等も適用可能であるが、磁気的特性からみれば希土類磁石の方が適している。一方、希土類磁石はフェライト磁石に比べて、腐食しやすい傾向にある。そのため、腐食の原因となる水分を、電動圧縮機自体に設けた上記トラップ室に早期に回収することが有効である。
【0018】
また、上記電動圧縮機は、循環経路に非金属製配管を備えた車載空調機用であることが好ましい(請求項8)。車載空調機は、圧縮機の他に凝縮器、膨張弁、蒸発器等を備え、これらを連絡する循環経路中に冷媒及び潤滑油を封入する構成が取られる。循環経路を構成する配管の一部には、可撓性を持たせたり制振性を高めたりするために樹脂製配管等の非金属製配管を採用することがある。ここでいう樹脂は、広義の意味での樹脂であり、いわゆる天然樹脂、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム等を含む概念である。この樹脂製配管等の非金属製配管は、非常にわずかながらも水分を透過させる特性を有している場合が多い。そのため、例えば高温多湿の環境において長年使用を続ければ、樹脂製配管等の非金属製配管を通して空気中から循環経路内に水分が浸入するおそれがある。また、循環経路内に浸入した水分の影響で冷媒や潤滑油が変質し、酸等が生じる場合も考えられる。それ故、車載用空調機においては、上記のごとく、ハウジング内に溜まった水分を上記トラップ室に早期に回収することが有効である。
【0019】
また、上記電動圧縮機は、分子式:C3mn(但し、mは1〜5の整数、nは1〜5の整数、かつ、m+n=6)で表され分子構造中に二重結合を1個有する冷媒又は該冷媒を含む混合冷媒を循環させる冷凍サイクルに用いられることが好ましい(請求項9)。
冷凍サイクルに用いられる冷媒としては、従来のフロンと称される冷媒よりもオゾン層破壊への影響が少ない冷媒が使われるようになって来た。このような新しいタイプの冷媒としては、CF3−CF=CH2(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン)等に代表されるような、分子式:C3mn(但し、mは1〜5の整数、nは1〜5の整数、かつ、m+n=6)で表され分子構造中に二重結合を1個有する冷媒が注目されている(以下、適宜、「HFO1234yfタイプ冷媒」という。)。
【0020】
HFO1234yfタイプ冷媒は、上記のごとく二重結合を含むことから、水の存在下において比較的分解しやすい特徴を有する。そのため、製造過程や市場による使用時に何らかの原因で冷媒循環路中に水が混入した場合には、冷媒が分解し、冷媒を構成していたFからフッ酸(HF)が生じるおそれがある。フッ酸などのいわゆる酸は、上記永久磁石を比較的早期に腐食させる原因となる。それ故、HFO1234yfタイプ冷媒を用いた冷凍サイクルにおいては、上記のごとく、ハウジング内に溜まった水分を上記トラップ室に早期に回収することが有効である。
【0021】
また、上記電動圧縮機は、ポリオールエステル(POE)、ポリビニルエーテル(PVE)及びポリアルキレングリコール(PAG)の少なくとも一つを含有する潤滑油を上記ハウジング内に含む場合にも有効である(請求項10)。これらの潤滑油を含む場合においても、冷媒循環経路中への水、酸等の浸入は好ましくない。例えば、ポリオールエステルは、水分存在下において加水分解して有機カルボン酸を発生する。有機カルボン酸も上述したフッ酸と同様に、永久磁石を腐食させる原因となりうる。そのため、この場合にも、ハウジング内に溜まった水分を上記トラップ室に早期に回収することが有効である。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる電動圧縮機につき、図1、図2を用いて説明する。
本例の電動圧縮機1は、図1に示すごとく、吸入ポート11と吐出ポート12とを設けたハウジング10と、ハウジング10内に配置され吸入ポート11から吸入する冷媒を圧縮して吐出ポート12から吐出する圧縮部15と、ハウジング10内に配置され圧縮部15を駆動する回転軸21を回転させる電動モータ2とを有する。
【0023】
圧縮部15は、ハウジング10内に固定された固定スクロール13と、これに対向配置された可動スクロール14とにより構成されている。固定スクロール13と可動スクロール14との間には、冷媒を圧縮するための容積可変の圧縮室150が形成されている。可動スクロール14は、ベアリング216及び偏心ブッシュ215を介して回転軸21の偏心ピン210に連結されており、回転軸21の回転に応じて揺動し、上記圧縮室150の容積を変化させるよう構成されている。
【0024】
回転軸21は、電動モータ2を構成するロータ22の中心穴221に固定され、中心穴221から両側へ突出した両端が、軸受け部41、42を介して回転可能にハウジング10に固定されている。
図1に示すごとく、電動モータ2は、上記回転軸21の周囲に固定されたロータ22と、ロータ22の外周側に配置されハウジング10に支持されたステータ23とを有する。ステータ23には、コイル235が配設されており、コイル235に通電することにより、永久磁石3を内蔵したロータ22が回転するよう構成されている。
【0025】
図1に示すごとく、ロータ22は、複数枚の電磁鋼板を積層することにより円筒状に構成され、軸方向に貫通する複数の磁石配設穴225を有すると共に、該磁石配設穴225には、それぞ永久磁石3を挿入配置してある。永久磁石3としては、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ボロン(B)を主成分とする公知のネオジム磁石(希土類磁石)を採用した。
【0026】
さらに、本例の電動圧縮機1は、ハウジング10の下方外部に配置された水分を収容可能なトラップ室7と、該トラップ室7と上記ハウジング10の内部とを連通させる連通路75とを設けてなる。連通路75は、断面円形状を呈し、その内径寸法を20mmφ(開口面積314mm2)とし、その中心軸の方向が鉛直方向に向くように配置した。また、トラップ室7の内容積は、発生しうると予想される遊離水8のすべてを回収可能となるよう十分に大きなものとした。
【0027】
また、本例では、図2に示すごとく、上記構成の電動圧縮機1を車載空調機5の圧縮機として用いる。
車載空調機5は、同図に示すごとく、電動圧縮機1の吐出ポート12側から、循環経路55によって順次連絡される凝縮器51、レシーバ52、膨張弁53、蒸発器54を有している。膨張弁53は、蒸発器54の下流側に配置された温度センサ56により測定された冷媒の温度に応じて、制御部57によって弁開度が調整されるにようになっている。
【0028】
また、上記レシーバ52は、冷媒の気液分離を図って液状冷媒のみを膨張弁に送るよう機能するとともに、内蔵したレシーバ内吸着剤(図示略)によって冷媒中に含まれる水分を除去するように構成されている。
また、循環経路55内、つまり電動圧縮機1内には、冷媒として、CF3−CF=CH2(2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン)が封入され、かつ、潤滑油として、ポリオールエステルが封入されている。そして、循環経路55を構成する配管の一部は、非金属製配管である樹脂製配管が採用されている。
【0029】
このような構成の車載空調機5を長期間運転すると、循環経路55を構成する樹脂製配管を透過して、徐々に循環経路55内に水分が入り込んでくる。電動圧縮機1を含む冷凍サイクルの循環経路55に水分が含まれている場合には、電動圧縮機1の運転を停止した際に、ハウジング10の底部に遊離水として溜まりやすい傾向にある。
【0030】
ここで、電動圧縮機1は、上記のごとく、ハウジング10の下方外部に配置された水分を収容可能なトラップ室7と、該トラップ室7と上記ハウジング10の内部とを連通させる連通路75とを設けてなる。そのため、電動圧縮機1のハウジング内に存在する遊離水8は、電動圧縮機1のハウジング10の底部に溜まるたびに連通路75を通ってハウジング10外部のトラップ室7内に回収される。
【0031】
また、トラップ室7は、ハウジング10の外部下方に設けられており、電動圧縮機1運転時の冷媒等の循環経路55から外れている。そのため、一旦トラップ室7内に回収された水分がハウジング10内に戻ることは抑制される。それ故、循環経路55に水分が含まれる状態となっても、電動圧縮機1の運転と停止を繰り返すたびに、遊離水8となった水分がトラップ室7に回収され、水分に起因する永久磁石3の特性劣化などを抑制することができる。
【0032】
(実施例2)
本例は、図3に示すごとく、実施例1の電動圧縮機1を基本構成として、ハウジング10とトラップ室7とを繋ぐ連通路の形態を変更した例である。
すなわち、同図に示すごとく、本例の連通路76は、トラップ室7からハウジング10に向かう中心軸Cの方向と、循環経路における循環方向Aとが交わる角度αが鋭角となるように、中心軸Cが傾斜している。
その他は実施例1と同様である。
【0033】
本例の場合には、連通路76が上記のごとく傾斜しているため、電動圧縮機1が運転している場合に冷媒等が循環することに影響して、トラップ室7内に回収した遊離水8がハウジング10内に逆流したり、冷媒等がトラップ室7内に流入することを抑制する効果をさらに高めることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0034】
(実施例3)
本例も、図4、図5に示すごとく、実施例1の電動圧縮機1を基本構成として、ハウジング10とトラップ室7とを繋ぐ連通路の形態を変更した例である。
すなわち、同図に示すごとく、本例の連通路77には、トラップ室7に流入した水分がハウジング10内に逆流することを抑制するための逆流抑制機構としての3枚の返し板79が設けられている。返し板79は、図5に示すごとく、連通路77の内周面に固定され、先端部791がトラップ室7に近づくように傾斜している。また、連通路77の中心軸方向から見ると、図6に示すごとく、円形状である連通路の断面の一部を直線状の先端部791によって切り取った形状を呈している。
【0035】
この場合には、遊離水8を回収する場合には、斜めに配置された返し板79の表面を順次伝わせてトラップ室7に導くことができる。一方、一旦トラップ室7に回収された遊離水8は、たとえ連通路77を逆流しようとしても返し板79によって押し返され、ハウジング10内に向けて逆流することを抑制する効果をさらに高めることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0036】
なお、上述した実施例1〜3に示した各トラップ室7には、水分を吸着する吸着剤と酸を中和する中和剤の少なくとも一方を含む機内環境改善剤を配設することができる。この場合には、トラップ室7に導入した水分を吸着剤によって吸着する、あるいはトラップ内に導入した酸を中和剤によって中和することができ、水分や酸に起因する永久磁石の特性劣化などをより強く抑制することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 電動圧縮機
10 ハウジング
11 吸入ポート
12 吐出ポート
15 圧縮部
2 電動モータ
21 回転軸
22 ロータ
23 ステータ
225 磁石配設穴
3 永久磁石
7 トラップ室
75、76、77 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入ポートと吐出ポートとを設けたハウジングと、該ハウジング内に配置され上記吸入ポートから吸入する冷媒を圧縮して上記吐出ポートから吐出する圧縮部と、上記ハウジング内に配置され上記圧縮部を駆動する回転軸を回転させる電動モータとを有し、該電動モータが、永久磁石を内蔵したロータと上記ハウジングに支持されたステータとを備えてなる電動圧縮機において、
上記ハウジングの下方外部に配置された水分を収容可能なトラップ室と、該トラップ室と上記ハウジングの内部とを連通させる連通路とを設けてなり、
上記ハウジング内部に冷媒及び潤滑油と共に循環してくる水分を上記連通路を介して上記トラップ室に回収できるよう構成されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、上記連通路の開口面積は、0.75〜650mm2であることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記連通路には、上記トラップ室に流入した水分が上記ハウジング内に逆流することを抑制するための逆流抑制機構が設けられていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記連通路は、上記トラップ室から上記ハウジングに向かう中心軸方向が、上記循環経路における循環方向に対して鋭角に交わるように傾斜していることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記トラップ室は、上記ハウジングに対して着脱可能に配設されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記トラップ室内には、水分を吸着する吸着剤と酸を中和する中和剤の少なくとも一方を含む機内環境改善剤が配設されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、上記永久磁石は希土類磁石であることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、上記電動圧縮機は、循環経路に非金属製配管を備えた車載空調機用であることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、上記電動圧縮機は、分子式:C3mn(但し、mは1〜5の整数、nは1〜5の整数、かつ、m+n=6)で表され分子構造中に二重結合を1個有する冷媒又は該冷媒を含む混合冷媒を循環させる冷凍サイクルに用いられることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項の記載において、上記電動圧縮機は、ポリオールエステル(POE)、ポリビニルエーテル(PVE)及びポリアルキレングリコール(PAG)の少なくとも一つを含有する潤滑油を上記ハウジング内に含むことを特徴とする電動圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−52497(P2012−52497A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197392(P2010−197392)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】