説明

電動式作業車両及びその電源ユニット

【課題】密閉型バッテリを含む電動式作業車両の電源ユニットにおいて、バッテリ内部から排出されたガスを効率よく車体外部に排出する。
【解決手段】この電源ユニットは、電動式ショベルの電動モータ18に駆動用の電力を供給するものであって、複数の密閉型バッテリ24と、連絡ホース96と、ドレインホース97と、を備えている。複数の密閉型バッテリ24は、横方向に並べて配置され、それぞれが並べて配置された両方向に沿って設けられた内部のガスを排出するための1対の排出口4aを有する。連絡ホース96は隣り合うバッテリ24の排出口24a同士を接続する。ドレインホース97は、複数のバッテリ24のうちの少なくとも一端部に配置されたバッテリ24の一方の排出口24aに接続され、連絡ホース96を通じて排出されてきたガスを外部に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源ユニット、特に、電動式作業車両の電動モータに駆動用の電力を供給する電源ユニット及びそれを備えた電動式作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ショベル等の作業車両においては、環境問題等を配慮して電動式作業車両が提案されている。例えば特許文献1に示された電動式ショベルでは、従来の油圧ショベルにおけるエンジンに代えて、バッテリにより駆動される電動モータが用いられる。そして、電動モータによって油圧ポンプが駆動され、この油圧ポンプから作業機を駆動するための油圧シリンダにコントロールバルブを介して油圧が供給されるようになっている。
【0003】
以上のような電動式ショベルにおいては、現状では電動モータを駆動するために多くのバッテリを必要とする。そこで、特許文献2に示されるようなバッテリの保持構造が提案されている。この特許文献2に示されたバッテリ保持構造は、筐体と、架台と、固定手段と、を有している。ここでは、複数のバッテリが筐体に収納され、さらに複数の筐体が架台に積層される。そして、固定手段によって、架台に複数の筐体が固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−121328号公報
【特許文献2】特開2008−44408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような作業車両に用いられるバッテリとしては、メンテナンスが容易な密閉型のバッテリが用いられる。この密閉型バッテリでは、充電時や稼働中において大電流が流れるとガスを発生するが、発生したガスはバッテリ内部でバッテリ液に戻される処理が行われる。しかし、充電状態によっては、発生したガスをバッテリ内部で処理仕切れない場合が生じる。このために、密閉型バッテリには内圧制御弁が設けられている。そして、充電時に発生したガスをバッテリ内部で処理しきれず、バッテリ内部の圧力が所定圧より高くなった場合は、内圧制御弁を介して内部のガスは外部に排出されるようになっている。また、バッテリの温度がさらに上昇すると、ガス以外にバッテリ内部の電解液(バッテリ液)が排出される場合がある。
【0006】
このため、例えば小型の電動式フォークリフトでは、ユーザに対して、充電時には車体カバーを開放するように注意を促し、バッテリの外部に排出されたガスが車両内部に留まらないようにしている。
【0007】
ここで、電動式ショベルにおいては、前述のように多数のバッテリが必要になる。このため、多数のバッテリが搭載された電源ユニット周囲には、高電圧部が存在することになる。そこで、安全対策のために、すなわち作業者が高電圧部に触れることがないように、充電時においても車体カバーが閉じられていることが好ましい。
【0008】
以上のような状況では、バッテリ充電時に発生するガスを、効率よく外部に排出させることが重要になる。
【0009】
本発明の課題は、密閉型バッテリを含む電動式作業車両の電源ユニットにおいて、バッテリ内部から排出されたガスを効率よく車両外部に排出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る電動式作業車両の電源ユニットは、電動式作業車両の電動モータに駆動用の電力を供給するものであって、複数の密閉型のバッテリと、連絡ホースと、ドレインホースと、を備えている。複数の密閉型のバッテリは、横方向に並べて配置され、それぞれが並べて配置された両方向に沿って設けられた内部のガスを排出するための1対の排出口を有する。連絡ホースは隣り合うバッテリの排出口同士を接続する。ドレインホースは、複数のバッテリのうちの少なくとも一端部に配置されたバッテリの一方の排出口に接続され、連絡ホースを通じて排出されてきたガスを外部に排出する。
【0011】
この電源ユニットでは、バッテリからの電力によって電動モータが駆動される。そして、この電動モータの駆動力がエンジンに代わって各部の作動に用いられる。バッテリは、例えば外部の充電器によって充電される。この充電時には、バッテリ内部でガスが発生し、発生したガスはバッテリ内部で処理される。しかし、充電状態によっては、発生したガスは、バッテリ内部で処理仕切れず、バッテリの排出口を介して外部に排出される場合がある。ここで、隣り合うバッテリの排出口同士は連絡ホースによって接続され、また複数のバッテリのうちの端部に配置されたバッテリの排出口にはドレインホースが接続されているので、バッテリ外部に排出されたガスは、連絡ホース及びドレインホースを通じて車両外部に排出される。
【0012】
このような電源ユニットでは、バッテリ外部に排出されたガスは、連絡ホース及びドレインホースを介して車両外部に排出されるので、充電時に車体カバーを開放する必要がない。このため、充電時において、作業者が誤って高電圧部に触れるのを防止でき、しかもバッテリ外部に排出されたガスを効率よく車両外部に排出できる。
【0013】
第2発明に係る電動式作業車両の電源ユニットは、第1発明の電源ユニットにおいて、ドレインホースは、複数のバッテリのうちの両端部に配置されたそれぞれのバッテリの一方の排出口に接続されている。
【0014】
ここで、前述のように、充電時あるいは稼働中において大電流が流れた場合には、バッテリの温度が上昇し、ガスやバッテリ液がバッテリ外部に排出される。これらのガスやバッテリ液はドレインホースを介して車両外部に排出される。
【0015】
以上のような状況で、車体が側方に大きく傾いた場合には、一方側からガスやバッテリ液を排出することが困難な場合が生じる可能性がある。
【0016】
そこで、この第2発明では、複数のバッテリからなるバッテリ群の両端にドレインホースが接続されており、車体が側方に大きく傾いた場合でも、バッテリ外部に排出されたガスをスムーズに車両外部に排出することができる。
【0017】
第3発明に係る電動式作業車両の電源ユニットは、第1又は第2発明の電源ユニットにおいて、複数のバッテリを内部に収納可能なように箱状に形成され、側壁にホース用開口を有するバッテリケースをさらに備えている。そして、ドレインホースは、一端がバッテリの排出口に接続され、他端がホース用開口を通して外部に引き出されている。
【0018】
ここでは、バッテリケースの側壁に形成されたホース用開口を通してドレインホースが引き出されているので、ドレインホースの折れ等によってガスの排出が妨げられるのを防止できる。
【0019】
第4発明に係る電動式作業車両の電源ユニットは、第3発明の電源ユニットにおいて、バッテリケースの上方に配置され、バッテリと接続される電装品が収納された電装品ユニットと、バッテリと電装品ユニットとを接続する電気配線と、をさらに備えている。そして、バッテリケースは、ホース用開口が形成された側壁とは異なる方向の側壁に電気配線が通過可能な配線用開口を有している。
【0020】
この電源ユニットでは、例えばヒューズやセンサ等の電装品が収納された電装品ユニットがバッテリケースの上方に配置されている。そして、バッテリと電装品ユニットとは電気配線によって接続されている。
【0021】
以上のような構成では、バッテリケースの側壁に沿って、ドレインホースと電気配線とが配置されることになる。ドレインホースからはバッテリ内部のガスや液が排出されるので、これらのガスや液が電気配線に接触すると、電気配線を劣化させるおそれがある。
【0022】
そこで第4発明では、バッテリケースからドレインホースを外部に引き出すホース用開口と電気配線を引き出す配線用開口を、別の側壁に形成している。このため、電気配線にバッテリ内部から排出されたガスや液が触れるのを防止でき、配線を保護することができる。
【0023】
第5発明に係る電動式作業車両は、車体フレームと、車体フレームに支持された走行機構と、作業機及び作業機を駆動する作業機駆動部を有する作業機ユニットと、走行機構及び作業機ユニットを駆動するための電動モータと、第1から第4発明のいずれかに記載の電源ユニットと、を備えている。
【発明の効果】
【0024】
以上のような本発明では、電動式作業車両の電源ユニットにおいて、充電時等にバッテリ内部から排出されたガスを効率よく車両外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による電源ユニットが採用された電動式ショベルの側面図。
【図2】電動式ショベルの上部旋回体の構造を示す外観図。
【図3】電動式ショベルのシステムブロック図。
【図4】旋回フレーム及び第1バッテリ群の外観斜視図。
【図5】バッテリ群及びバッテリ保持構造を示す外観斜視図。
【図6】図5の一部拡大図。
【図7】ガス排出構造を示す模式図。
【図8】ガス排出構造の一部を示す外観斜視図。
【図9】ガス排出構造の一部を示す外観斜視図。
【図10】本発明のガス排出構造を電動式ホイールローダに適用した場合の一部外観図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、本発明の一実施形態によるバッテリ保持構造を備えた電動式ショベルを示している。この電動式ショベル1は、本発明が対象とする電動式作業車両の一例であり、従来のショベルにおけるエンジンに代わって、バッテリにより駆動される電動モータを備えている。なお、以下の説明における「前」、「後」は車両の前後方向における前方、後方を示している。また、「左」、「右」は、車両の前方に向かって、車両幅方向の左方、右方を示している。
【0027】
[全体構成]
図1に示すように、電動式ショベル1は主に、下部走行体2と、上部旋回体3と、ショベル機構4と、キャノピ型の運転室5と、を有している。また、下部走行体2の前部には、上下方向に揺動自在にブレード6が支持されている。
【0028】
下部走行体2は、トラックフレーム10と、左右の走行機構11と、を有している。左右の走行機構11のそれぞれは、トラックフレーム10の後端部に支持された駆動輪12と、トラックフレーム10の前端部に支持された従動輪13と、駆動輪12と従動輪13との間に掛け渡された履帯14と、を有している。駆動輪12は走行用モータによって駆動される。
【0029】
上部旋回体3は、下部走行体2の上部に、下部走行体2に対して旋回自在に支持されている。具体的には、下部走行体2側には旋回ベアリングが設けられており、上部旋回体3には旋回ベアリングに噛み合うピニオンギアが設けられている。そして、ピニオンギアが旋回用モータ(図示せず)によって駆動されることにより、上部旋回体3は下部走行体2上において任意の方向に旋回が可能である。
【0030】
図2に、上部旋回体3における各機器の配置を示している。ここでは、車体カバーや運転室を取り外した状態を示している。上部旋回体3は、底部に配置された旋回フレーム(ベースフレーム)16を有している。旋回フレーム16は、トラックフレーム10のほぼ中央部に旋回自在に支持されており、前述のように、旋回用モータによって旋回駆動される。この旋回フレーム16には、電動モータ18、電源ユニット19、インバータ装置20、油圧ポンプ21、コントロールバルブ22等が配置されている。なお、旋回フレーム16の詳細な構造については後述する。
【0031】
電源ユニット19は、電動モータ18に電力を供給するものであり、旋回フレーム16の後端部に配置されている。電源ユニット19は、複数の密閉型のバッテリ24と、コンタクタボックス25(図2では二点差線で示している)と、を有している。複数のバッテリ24はバッテリ保持構造26によって保持されている。バッテリ保持構造26の詳細については後述する。なお、電源ユニット19の前方には、遮熱板28を挟んでキャノピマウント29が配置されている。
【0032】
電動モータ18及び油圧ポンプ21はキャノピマウント29のさらに前方に配置されている。電動モータ18は回転軸が左右方向に延びるように横置きで設置され、油圧ポンプ21は電動モータ18の左方に連結されている。また、油圧ポンプ21は油圧配管を介してコントロールバルブ22に接続されている。
【0033】
インバータ装置20は、キャノピマウント29から前方に延びる1対の支持部材32に支持されており、電動モータ18の上方に配置されている。インバータ装置20は、直流電力を任意の周波数の交流電力に変換するインバータ回路や、インバータ回路を制御するマイクロコンピュータ等を備えている。インバータ装置20のへの電力の入力はコンタクタボックス25に接続され、出力は電動モータ18に接続されている。
【0034】
コントロールバルブ22は油圧ポンプ21のさらに前方に配置されている。そして、このコントロールバルブ22は、油圧ポンプ21と、各作業機を駆動するための油圧シリンダ、旋回用モータ及び走行用モータと、の間に接続されている。
【0035】
なお、旋回フレーム16には、以上の機器の他に、ラジエータを含む冷却ユニット33や、旋回フレーム16上の運転室5以外の部分を覆う車体カバー34(図1参照)等が配置されているが、詳細は省略する。
【0036】
ショベル機構4は、図1に示すように、旋回フレーム16に装着されたスイングポスト36と、スイングポスト36を介して旋回フレーム16に装着されたブーム40、アーム41及びバケット42と、ブーム等を駆動するための複数のシリンダ43,44,45と、を有している。
【0037】
スイングポスト36は旋回フレーム16の先端にピンを介して垂直軸回りに回動自在に支持されている。ブーム40は、基端部がスイングポスト36に水平軸回りに回動可能に連結されている。そして、ブーム40のほぼ中間部とスイングポスト36との間にブーム用油圧シリンダ43が接続されている。アーム41は、基端部がブーム40の先端部に水平軸回りに回動自在に連結され、ブーム40のほぼ中間部とアーム41の基端部との間にアーム用油圧シリンダ44が接続されている。バケット42はアーム41の先端部に水平軸回りに回動自在に連結され、アーム41の基端部とバケット42との間にバケット用油圧シリンダ45が接続されている。
【0038】
運転室5は、図1に示すように、運転者が着座する座席48と、座席48の左右に設けられたコンソールボックス(図示せず)と、を備えている。また、座席48の左右後方には、下端部がキャノピマウント29に支持された左右の支柱49が設けられている。この左右の支柱49によってキャノピ50が支持されている。さらに、座席48の前方には、走行機構11やショベル機構4等の操作を行うための操作レバー51等が設けられている。
【0039】
[システムブロック]
本実施形態の電動式ショベル1は、前述のように、バッテリ24によって電動モータ18が駆動され、この電動モータ18によって、ショベル機構4や走行機構11を作動させるための油圧ポンプ21が駆動される。図3に、本電動式ショベル1のシステムブロックを示す。なお、この図3では、主な構成のみを示している。
【0040】
バッテリ24はコンタクタボックス25に接続され、このコンタクタボックス25の出力がインバータ装置20及びDC/DCコンバータ54に接続されている。コンタクタボックス25には、電磁接触器(コンタクタ)、ヒューズ、電圧及び電流を検出するセンサ等が設けられている。インバータ装置20は電動モータ18に接続され、電動モータ18の出力が油圧ポンプ21に接続されている。油圧ポンプ21からの油圧は、コントロールバルブ22を介してショベル機構の各油圧シリンダ43〜45や旋回用モータ及び走行用モータ55に供給される。一方、DC/DCコンバータ54で適切な電圧に変換された直流電圧は、運転室5に設けられたモニタ56や車体制御部57の駆動電圧として供給される。車体制御部57は、インバータ装置20、バッテリ24、及び急速充電器61に接続されている。なお、このショベル1には、電動モータ駆動用のバッテリ24以外に、従来のショベルにおいて設けられている補機用ドライバッテリ58も設けられている。
【0041】
また、この電動式ショベル1は充電用コネクタ60を有しており、この充電用コネクタ60を介して、外部の急速充電器61によってバッテリ24を充電することが可能である。急速充電器61は充電用コネクタ60を介してコンタクタボックス25に接続される。車体制御部57は、バッテリ24の充電電圧を監視しており、バッテリ24が過充電にならないように急速充電器61の作動を制御している。
【0042】
[旋回フレーム]
図4に示すように、旋回フレーム16は、前後方向に延びて形成されたベースプレート62と、それぞれベースプレート62上に固定された機器設置用区画プレート63及びバッテリ収納用区画プレート64と、を有している。
【0043】
ベースプレート62の前端部には、複数の支持プレート65を介して作業機支持用のブラケット66が固定されている。複数の支持プレート65は、それぞれ下端がベースプレート62に固定された左支持プレート65a及び右支持プレート65bと、左右の支持プレート65a,65bの上面に固定され平面視でほぼ三角形状の上支持プレート65cと、を有している。ブラケット66は、上下方向に貫通孔66aを有する円筒状に形成されており、この貫通孔66aに挿入されたピン(図示せず)を介してスイングポスト36が支持されている。なお、左右の支持プレート65a,65b及び上支持プレート65cは、ベースプレート62よりも厚いプレートで形成されている。
【0044】
機器設置用区画プレート63は、左右方向に間隔を開けて配置された左右の縦仕切プレート68a,68bと、1つの横仕切プレート69と、を有している。左縦仕切プレート68aは、左支持プレート65aとバッテリ収納用区画プレート64との間に配置されている。また、右縦仕切プレート68bは、右支持プレート65bとバッテリ収納用区画プレート64との間に配置されている。そして、これらの左右の縦仕切プレート68a,68bはベースプレート62よりも厚いプレートで形成されている。横仕切プレート69は、左右の縦仕切プレート68a,68bの前後方向のほぼ中央部に配置されており、旋回フレーム16の左端部から右端部にわたって配置されている。なお、横仕切プレート69には、各機器を接続する配管等を通すための切欠き69aや貫通孔69bが形成されている。
【0045】
以上のような各プレートにより、旋回フレーム16上において、各機器を設置するための領域が形成されている。具体的には、領域Aには電動モータ18や油圧ポンプ21が配置され、領域Bにはラジエータ等を含む冷却ユニット33が配置される。また、領域Cにはコントロールバルブ22等の油圧機器が配置され、領域Dには旋回フレーム16を旋回させるためのピニオンギア等の機構が配置される。
【0046】
バッテリ収納用区画プレート64は、旋回フレーム16の後端部に配置されており、内部に複数のバッテリを収納するための領域Eを形成している。このバッテリ収納用区画プレート64は、上方が開放されたバッテリ収納領域Eを形成するために、前プレート72及び後プレート73と、左側プレート74及び右側プレート75とを有している。また、左右の縦仕切プレート68a,68bはバッテリ収納領域E内まで延び、このバッテリ収納領域E内に延びた左右の縦仕切プレート68a,68bは前プレート72と後プレート73を連結している。
【0047】
後プレート73は旋回フレーム16の後端縁に沿って配置され、前プレート72は後プレート73の前方に後プレート73と間隔を開けて配置されている。また、前プレート72及び後プレート73は、旋回フレーム16の後端部において、左端部から右端部にまで延びて配置されている。左側プレート74及び右側プレート75はそれぞれ旋回フレーム16の左右の端縁に沿って配置されている。
【0048】
ここでは、各区画を形成するための複数のプレート63,64が、旋回フレーム16の強度を補強するリブとして機能している。このため、特別な部材等を設けることなく、旋回フレーム16の強度を増加させることができる。特に、左右の縦仕切プレート68a,68bは、左右の支持プレート65a,65bとバッテリ収納用区画プレート64との間に連続して形成されているので、旋回フレーム16の強度をより増加させることができる。また、バッテリ収納領域Eにおいて2つの仕切プレート68a,68bによって、旋回フレーム16の後部の強度がより補強されている。
【0049】
[バッテリ保持構造]
電源ユニット19を構成する複数のバッテリ24は、旋回フレーム16の後端部に設けられたバッテリ収納領域Eに配置されている。複数のバッテリ24は、図2に示すように、左右方向に並べて配置されるとともに、縦方向に積層されている。この実施形態では、複数のバッテリ24は4段に積層されており、以下の説明では、図4及び図5に示す最下段の複数のバッテリを第1バッテリ群B1、図5に示す第2段目、第3段目、第4段目の複数のバッテリをそれぞれ第2バッテリ群B2、第3バッテリ群B3、第4バッテリ群B4と記す。
【0050】
まず、第1バッテリ群B1は、図4に示すように、旋回フレーム16上において、バッテリ収納用区画プレート64によって囲まれたバッテリ収納領域Eに載置されている。また、第2、第3、第4のバッテリ群B2〜B4は、図5に示すように、それぞれ第2、第3、第4のバッテリケース82,83,84に収納されている。
【0051】
各バッテリケース82〜84は、前後左右の側壁及び底壁を有し、上方が開放された箱状に形成されている。そして、各バッテリケース82〜84は2本の同形状の支柱85によって旋回フレーム16の後端部に固定されている。
【0052】
図6に、支柱85と各バッテリケース82〜84との固定部を拡大して示している。この図6に示すように、旋回フレーム16の後端部には、後方に突出して2つのマウント部16aが設けられている。このマウント部16aは、バッテリ収納用区画プレート64の後プレート73の後面において、左右の縦仕切プレート68a,68bに対応する位置に形成されている。各支柱85は、下端に形成されたフレーム固定部86と、フレーム固定部86から上方に延びるケース固定部87と、を有している。フレーム固定部86はボルトによって旋回フレーム16のマウント部16aに固定される。また、ケース固定部87の後面には、上下に延びるリブ87aが形成され、強度が補強されている。
【0053】
ここで、各バッテリケース82〜84と支柱85との固定部についてはいずれも同じであるので、ここでは、第2バッテリケース82と支柱85との関係について説明する。図6に示すように、第2バッテリケース82の後壁82aには、複数のナット取付台82bが固定されている。そして、支柱85のケース固定部87には、第2バッテリケース82のナット取付台82bに対応する位置に貫通孔が形成されており、この貫通孔を貫通するボルト88が第2バッテリケース82のナット取付台82bに形成されたナット部にねじ込まれて固定されている。
【0054】
以上のように、2本の支柱85が旋回フレーム16の後端部に固定され、この2本の支柱85に第2〜第4バッテリケース82〜84が固定されている。このようにして、第2〜第4バッテリケース82〜84が旋回フレーム16に固定されている。
【0055】
また、各バッテリケース82〜84の左右の側壁には、位置決め構造91及び側方支持構造92が設けられている。位置決め構造91はバッテリケース82〜84が前後方向に相対的にずれるのを規制するための構造である。また、側方支持構造92はバッテリケース82〜84の左右側壁を旋回フレーム16に対して固定するための構造である。
【0056】
位置決め構造91は、各バッテリケース82〜84の側壁に形成された凹凸部によって構成されている。具体的には、まず、第2及び第3バッテリケース82,83の側壁上面には、前後方向の中央部に側面視で台形状の凸部82c,83cが形成されている。また、第3及び第4バッテリケース83,84の側壁下面には、それぞれ第2及び第3バッテリケース82,83の凸部82c,83cが嵌り込む凹部83d,84dが形成されている。これらの互いに嵌り込む凹凸部によって、第2〜第4バッテリケース82〜84は、前後方向の移動が規制されて位置決めされている。
【0057】
側方支持構造92は、各バッテリケース82〜84の側壁に形成された連結ブラケットによって構成されている。具体的には、各バッテリケース82〜84のそれぞれにおいて、側壁の前後両端でかつ上下両端部に4つの連結ブラケット82e〜84eが形成されている。そして、第2バッテリケース82の下端部の連結ブラケット82eは、旋回フレーム16に形成された連結ブラケット16bにボルトにより固定されている。また、第2バッテリケース82の上端部の連結ブラケット82eが第3バッテリケースの下端部の連結ブラケット83eに、さらに第3バッテリケース83の上端部の連結ブラケット83eが第4バッテリケース84の下端部の連結ブラケット84eに、それぞれボルトにより連結されている。
【0058】
このように、各バッテリケース82〜84同士を連結ブラケット82e〜84eによって連結し、かつ第2バッテリケースの連結ブラケット82eを旋回フレーム16に固定することによって、すべてのバッテリケース82〜84の側壁が旋回フレーム16に固定されることになる。
【0059】
[配線保護]
複数のバッテリ24は、それらの端子同士が電気配線(以下、単に配線と記す)によって接続されている。そして、図5に示すように、積層された各段のバッテリ群B1〜B4のうちの、右端部のバッテリは配線W1によって上下に隣接するバッテリの端子同士が接続され、左端部のバッテリの端子は配線W2によって各バッテリケース82〜84よりコンタクタボックス25に接続されている。また、各段のバッテリ群B1〜B4において、左右方向のほぼ中央部のバッテリの端子は、それぞれ配線W3によってコンタクタボックス25に接続されている。そして、これらの各配線W1,W2,W3は、それぞれバッテリケース82〜84の後壁に形成された開口を介して、各バッテリケースの後方に引き出されている。
【0060】
以上のように、各段のバッテリ群B1〜B4において、左右両端部及び中央部には、バッテリケース82〜84の外側後方に複数の配線が露出することになる。そこで、本実施形態では、これらの配線を保護するための3つのガード部材94が設けられている。
【0061】
3つのガード部材94はすべて同じ形状である。各ガード部材94は、上方及び下方が開放された断面コ字状の部材であり、左右の側壁と後壁とを有している。そして、このガード部材94の内部に配線が収納されている。各ガード部材94は、左右側壁の下部及び上部に、横方向に突出する固定部94a,94bを有している。そして、下部の固定部94aがボルトにより第2バッテリケース82の後壁に固定され、上部の固定部94bがボルトにより第4バッテリケース84の後壁に固定されている。
【0062】
なお、各バッテリケース82〜84の前壁には、それぞれのバッテリケース82〜84を旋回フレーム16に固定したり、あるいはバッテリケース同士を固定したりするための部材や機構は設けられていない。このため、バッテリケース82〜84を遮熱板28に接近させて配置でき、電源ユニット19全体を前方に配置することができる。言い換えれば、旋回フレーム16の後部が後方へ飛び出すのを抑えることができる。
【0063】
[バッテリのガス排出構造]
電源ユニット19を構成する密閉型の複数のバッテリ24は、鉛シールドバッテリであり、充電時や稼働中において大電流が流れ、温度が上昇すると、ガスを発生する。発生したガスはバッテリ内部でバッテリ液に戻される処理がなされるが、内部でガスを処理仕切れない場合がある。そこで、バッテリ内部の圧力が所定圧以上になった場合に、内部のガスをバッテリ外部に排出するためのガス排出構造が設けられている。また、さらに温度が上昇すると、バッテリ液が放出されるようになっており、この構造は緊急時においても作動するものである。
【0064】
図7にガス排出構造の模式図を示す。また、図8にガス排出構造の一部を示す。これらの図に示すように、各バッテリ24の上面には、バッテリ24の並べられた両方向、すなわち左方向及び右方向のそれぞれに突出する1対の排出口24a,24aが設けられている。バッテリ内部で発生し、処理しきれなかったガスは、バッテリ内部に設けられた内圧制御弁(図示せず)を介して1対の排出口24a,24aから排出される。また、隣り合うバッテリの排出口24a同士が、連絡ホース96によって接続されている。さらに、各段におけるバッテリ群B1〜B4のうちの両端に配置されたバッテリのそれぞれの外側の排出口24aにはドレインホース97が接続されている。ドレインホース97は、一端がバッテリ24の排出口24aに接続され、他端は、図10に示すように、各バッテリケース82〜84の左右の側壁に形成されたホース用開口84fを通して車体の外部に引き出されている。そして、このドレインホース97からは、各連絡ホース96を通じて排出されてきたガスが外部に排出される。
【0065】
[動作]
電源ユニット19のバッテリ24からの直流電力は、インバータ装置20によって任意の周波数の交流電力に変換される。電動モータ18は、インバータ装置20から供給される交流電力によって駆動され、さらにこの電動モータ18によって油圧ポンプ21が駆動される。そして、油圧ポンプ21からの油圧は、コントロールバルブ22を介して各油圧シリンダ43〜45や旋回用モータ及び走行用モータ55に供給される。
【0066】
運転操作や作業操作については、従来のエンジンを備えた油圧ショベルと同様である。すなわち、オペレータが各操作レバーを操作することにより、油圧ポンプ21から供給される油圧が操作に応じてコントロールバルブ22で制御される。これにより、操作に応じた速度で走行機構11が駆動され、また操作に応じた作業が実行される。
【0067】
また、バッテリ24に対して充電を行う場合は、充電用コネクタ60に急速充電器61が接続される。急速充電器61から供給された直流電力は、コンタクタボックス25を介してバッテリ24に供給される。これによりバッテリ24が充電される。充電中のバッテリ24からはガスが発生する。発生したガスは内部で処理されるが、充電状態によっては内部で処理しきれない場合が生じる。この場合は、バッテリ内部に設けられた内圧制御弁が作用し、ガスがバッテリ外部に排出される。各バッテリ24から排出されたガスあるいはバッテリ液は、連絡ホース96を介して各バッテリ群B1〜B4の両端部に導かれ、両側のドレインホース97を介して車体外部に排出される。
【0068】
[特徴]
(1)各バッテリ24から外部に排出されたガス、あるいはガスとともに排出されたバッテリ液は、連絡ホース96及びドレインホース97を介して車体外部に排出される。このため、充電時に車体カバーを開放する必要がなく、作業が容易になる。また、充電時に車体カバーを開放する必要性がないので、作業者が誤って高電圧部に触れるのを防止できる。
【0069】
(2)各バッテリ群B1〜B4の両端にドレインホース97が接続されているので、車体が側方に大きく傾いて一方側のドレインホースからのガスやバッテリ液の排出が困難になった場合でも、他方のドレインホースによってガス及びバッテリ液を車体外部に排出することができる。
【0070】
(3)ドレインホース97は、バッテリケース82〜84のホース用開口を通して外部に引き出されているので、ドレインホース97の折れ等によってガスの排出が妨げられるのを防止できる。
【0071】
(4)ドレインホース97はバッテリケース82〜84の左右の側壁のホース用開口を通してバッテリケース外部に引き出され、一方、配線W1〜W3はバッテリケース82〜84の後壁の配線用開口を通してバッテリケース外部に引き出されている。このように、ドレインホース97と配線W1〜W3とが異なる方向に引き出されているので、配線がドレインホースから排出されたガスやバッテリ液に接触するのを防止できる。このため、配線の劣化を防止できる。
【0072】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0073】
(a)作業車両として電動式ショベルを例にとって説明したが、他の例えば電動式ホイールローダ等の作業車両にも、本発明を同様に適用することができる。図10に本発明を電動ホイールローダに適用した場合の例を示している。
【0074】
この電動ホイールローダは、車体フレームの後端部に複数のバッテリが搭載されている。具体的には、まず、左右のリアフェンダ100a,100bの間の車体フレームに、2つのバッテリケース101,102が積載されている。各バッテリケース101,102のそれぞれには、複数のバッテリ24が横方向に並べて配置されている。また、これらのバッテリケース101,102の下方で、かつアンダーガードの上方には、3つのバッテリケース103,104,105が配置されている。各バッテリケース103〜105は、それぞれ支持フレーム106に支持されている。なお、バッテリ24及び各バッテリケース101〜105の構成は、バッテリケースの寸法を除いて前記実施形態と同様である。また、図10では、側方の支持構造等は省略して示している。
【0075】
そして、これらの各バッテリ24及びバッテリケース101〜105においても、前記同様のガス排出構造が設けられている。すなわち、各バッテリ24の上面には、1対の排出口24a,24aが設けられ、隣り合うバッテリの排出口24a,24aが連絡ホース96によって接続されている。また、各段におけるバッテリ群のうちの両端に配置されたバッテリのそれぞれの外側の排出口にはドレインホース97が接続されている。ドレインホース97は、一端がバッテリ24の排出口に接続され、他端は、前記実施形態と同様に、各バッテリケース101〜105の左右の側壁に形成されたホース用開口を通して車体の外部に引き出されている。
【0076】
(b)前記実施形態では、ドレインホースを各バッテリ群B1〜B4の両端部から外部に引き出すようにしたが、一端側は連絡ホースの端部を閉じて、他端側にのみドレインホースを接続してガス等を排出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 電動式ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ショベル機構
10 トラックフレーム
11 走行機構
16 旋回フレーム
18 電動モータ
19 電源ユニット
24 バッテリ
24a 排出口
25 コンタクタボックス(電装品ユニット)
82〜84 第2〜第4バッテリケース
96 連絡ホース
97 ドレインホース
101〜105 バッテリケース
B1〜B4 第1〜第4バッテリ群
W1〜W3 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式作業車両の電動モータに駆動用の電力を供給する電源ユニットであって、
横方向に並べて配置され、それぞれが並べて配置された両方向に沿って設けられた内部のガスを排出するための1対の排出口を有する複数の密閉型のバッテリと、
隣り合う前記バッテリの排出口同士を接続する連絡ホースと、
複数の前記バッテリのうちの少なくとも一端部に配置されたバッテリの一方の排出口に接続され、前記連絡ホースを通じて排出されてきたガスを前記車両外部に排出するドレインホースと、
を備えた電動式作業車両の電源ユニット。
【請求項2】
前記ドレインホースは、複数の前記バッテリのうちの両端部に配置されたそれぞれのバッテリの一方の排出口に接続されている、請求項1に記載の電動式作業車両の電源ユニット。
【請求項3】
前記複数のバッテリを内部に収納可能なように箱状に形成され、側壁にホース用開口を有するバッテリケースをさらに備え、
前記ドレインホースは、一端が前記バッテリの排出口に接続され他端が前記ホース用開口を通して外部に引き出されている、
請求項1又は2に記載の電動式作業車両の電源ユニット。
【請求項4】
前記バッテリケースの上方に配置され、前記バッテリと接続される電装品が収納された電装品ユニットと、
前記バッテリと前記電装品ユニットとを接続する電気配線と、
をさらに備え、
前記バッテリケースは、前記ホース用開口が形成された側壁とは異なる方向の側壁に前記電気配線が通過可能な配線用開口を有している、
請求項3に記載の電動式作業車両の電源ユニット。
【請求項5】
車体フレームと、
前記車体フレームに支持された走行機構と、
作業機及び前記作業機を駆動する作業機駆動部を有する作業機ユニットと、
前記走行機構及び前記作業機ユニットを駆動するための電動モータと、
請求項1から4のいずれかに記載の電源ユニットと、
を備えた電動式作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−202066(P2012−202066A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66121(P2011−66121)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】