説明

電動車両の排気構造

【課題】本発明は、車室内の温度を上昇させることなく、車室内の圧力調整を可能とし、車外にバッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気を排出することのできる電動車両の排気構造を提供する。
【解決手段】バッテリ(2)と排気ダクト(3)とを連通する排気通路(4)が設けられ、排気ダクト(3)は、一側部(3a)から対面の他側部(3b)にかけて断面積が大きくなる箱状であり、一側部(3a)の下部には排気通路(4)が連通するように接続され、対面の他側部(3b)には開口する排出口(3b)が形成され、一側部(3a)と隣り合う他側部(3c)の上部にはフラップ(3e)を有し、車室内の空気を排気ダクト(3)内に排出する内気合流領域が形成される内気排出口(3d)が設けられている。このような排気ダクト(3)が、排出口(3b)と車室外とを連通するように車両(1)の後方側面に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の排気構造に係り、詳しくは、モータ駆動用バッテリの加熱又は冷却後の空気を車外へ排出する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源として電動機(モータ)を備えるハイブリット自動車或いは電気自動車等の電動車両では、電力を蓄電し、蓄電した電力をモータへ供給する繰り返し充放電が可能なニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池或いはリチウムイオン電池等の蓄電池(バッテリ)が設けられている。これらのバッテリは、充放電を行うと発熱することが知られている。
【0003】
そこで、特許文献1のように電動車両に搭載されるバッテリには、当該バッテリの冷却を行う冷却装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−117599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のバッテリは、バッテリを冷却し高温となった温風に外気を混入させ、温風の温度を低下させた後に車体の外板と内装トリムとの間に排出し、外板に設けられた車室内の気圧を調整する外気口より車外に排出するようにしている。
しかしながら、車体の外板と内装トリムとの間に温風を排出しているため、温風が車室内に侵入する虞があり、温風の車室内への侵入は、車室内の温度上昇に繋がり好ましいことではない。
【0006】
一方で、温風によってバッテリを暖める(加熱する)場合が考えられるが、その場合はバッテリ加熱後の冷風が外板と内装トリムとの間に排出することとなり、冷風が車室内に侵入する虞があり、冷風の車室内への侵入は、逆に車室内の温度下降に繋がり好ましいことではない。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車室内の温度を上昇、又は下降させることなく、車室内の圧力調整を可能とし、車外にバッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気を排出することのできる電動車両の排気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の電動車両の排気構造では、車両の動力源としての電動機に電力を供給するバッテリと、前記バッテリを加熱又は冷却した空気を排気口より車室外に排出するよう前記バッテリと前記排気口とを連通するように設けられる排気ダクトと、を備える電動車両の排気構造において、前記排気ダクトと前記車両の車室とを連通する内気排出口と、前記内気排出口に前記排気ダクトと前記車室とを隔て前記排気ダクト内側に開作動可能な仕切弁とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の電動車両の排気構造では、請求項1において、前記排気ダクトは、前記バッテリを加熱又は冷却した空気が排気口に向かって通過する通過領域と、前記内気排出口と前記仕切弁とを有し前記車両の車室内気を排気可能とする内気合流領域とが設けられることを特徴とする。
また、請求項3の電動車両の排気構造では、請求項2において、前記内気合流領域は、前記通過領域の上部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、バッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気を車外に排出する排気ダクトに、排気ダクトと車室とを隔て排気ダクト内側に開作動可能な仕切弁を有する内気排出口を設けている。
このように、排気ダクトに車室内の空気を排気ダクト内に排出する内気排出口を設けているので、例えば車両のドアの開閉等により車室内の圧力が上昇した場合に内気排出口より車室内の空気を排気ダクトに排出することができるので車室内の圧力を調整することができる。また、仕切弁により排気ダクトに流入するバッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気の排気ダクトから車室内への流出を抑制することができるので車室内の温度上昇、又は下降を抑制することができる。
【0010】
従って、車室内の温度を上昇、又は下降させることなく、車室内の圧力調整を可能としつつ、車外にバッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気を排出することができる。
また、請求項2の発明によれば、バッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気を排気ダクトの通過領域に流入させ、排気ダクト内での空気の流れの主流を形成し、バッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気の主流に内気合流領域より流入する車室内の空気を巻き込むようにして車外に排出できるので、効率的に車室内の圧力を調整することができる。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、バッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気を排気ダクトの一側部の下部より通過領域に流入させ、排気ダクト内での空気の流れの主流を形成し、バッテリを冷却し温風となった空気、又はバッテリを加熱し冷風となった空気の主流に通過領域の上部に配置した内気合流領域より流入する車室内の空気を巻き込むようにして車外に排出できるので、より効率的に排気を行いつつ車室内の圧力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両の排気構造が適用された車両の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電動車両の排気構造の斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両の排気構造が適用された車両の概略構成図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る電動車両の排気構造の斜視図である。なお、図中黒塗り矢印はバッテリを冷却し温風となった空気の流れを、白抜き矢印は車室内の空気の流れをそれぞれ示す。また、図中矢印「上」は車両上方向、矢印「前」は車両前方向、矢印「横」は車両幅方向をそれぞれ示す。以下、電動車両の排気構造の構成を説明する。
【0014】
尚、本実施例は、バッテリを冷却した例を示すが、逆にバッテリを加熱した場合でも本発明は適用可能で、その場合は「温風」と「冷風」が逆になるのは言うまでもない。
本実施形態の車両1は、当該車両1の走行装置として、図示しないエンジンと、バッテリ2より電力が供給されインバータにより制御される図示しない走行用モータ(電動機)とを備えるハイブリット自動車である。
【0015】
図1及び図2に示すように、車両のバッテリ排気構造は、走行用モータに電力を供給するバッテリ2と、温風となった空気を車室外に排出する排気ダクト3と、バッテリ2と排気ダクト3とを連通するように設けられ温風の通路である排気通路4と、排気通路4に介装されバッテリ2を冷却し温風となった空気を排出するファン5とで構成されている。
バッテリ2は、複数の電池セルで構成される電池モジュールを直列に配列し、バッテリーケース内に収納して形成されている。そして、バッテリ2は、車両1の後方に配設されている。
【0016】
排気ダクト3は、排気ダクト3の一側部3aから対面の他側部にかけて断面積が大きくなり対面の他側部が開口し排出口3bが形成される箱状である。排気ダクト3の一側部3aの下部には、排気通路4が連通するように接続されている。また、排気ダクト3の一側部3aと隣り合う両他側部3c(通過領域)の上部には、車室内の空気を排気ダクト3内に排出する内気排出口3dがそれぞれ設けられている。また、それぞれの内気排出口3dには、排気ダクト3内に開作動可能で車室から排気ダクト3内に空気の排出を可能とする内気合流領域を形成し、バッテリ2から排出される温風の車室内への流入を抑制するフラップ(仕切弁)3eが設けられている。
【0017】
このような排気ダクト3が、排出口3bが車室外と連通するように車両1の後方側面に配設されている。
以下、このように構成された本発明の実施形態に係る電動車両の排気構造の作用及び効果について説明する。
図3は、図1のA−Aでの断面図である。なお、図中黒塗り矢印はバッテリを冷却し温風となった空気の流れを、白抜き矢印は車室内の空気の流れをそれぞれ示す。また、図中矢印「上」は車両上方向、矢印「横」は車両幅方向をそれぞれ示す。
【0018】
図3に示すように、バッテリ2より排出される温風は、排気通路4を通り排気ダクト3の一側部3aの下部より排気ダクト3内に排出され車室外に排出される。また、車室内の空気は、車両1のドアの開閉やエアコン等の空調装置の作動による車室内の圧力が上昇すると一側部3aと隣り合う他側部3cの上部に設けられた内気排出口3dより排気ダクト3内に流入し、主流であるバッテリ2より排出される温風に巻き込まれつつ、排出口3bより排出される。
【0019】
このように構成された本発明の実施形態に係る電動車両の排気構造では、排気通路4を排気ダクト3の一側部3aの下部に設け、排気ダクト3の排気通路4が設けられる一側部3aと隣り合う他側部3cにフラップ3eを有する車室内の空気を排気ダクト3内に排出する内気排出口3dを設けているので、排気ダクト3の下部にバッテリ2より排出される温風で主流を形成することができ、例えば車両1のドアの開閉等やエアコン等の空調装置の作動により車室内の圧力が上昇した場合に、バッテリ2より排出される温風で形成される主流に内気排出口3dより排気ダクト3内に流入した車室内の空気が巻き込まれようにして排気口3bより車外に排出することができる。また、フラップ3eによりバッテリ2より排出される温風が車室内に流入することを抑制することができる。
【0020】
従って、バッテリ2より排出される温風による車室内の温度上昇を抑制しつつ、車室内の圧力調整を可能とし、車外にバッテリ2を冷却し温風となった空気を排出することができる。
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0021】
上記実施形態では、排出口3bと排気通路4とを排気ダクト3の互いに対面する側部に設けるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば排出口3bが形成される側部に隣り合う側部に排気通路4を設け、更に排出口3bが形成される側部の対面に内気排出口3dを設けるようにしても良い。
上記実施形態は、車両1をハイブリット自動車として説明したが、駆動源として電動機(モータ)を備える車両であればよく、電気自動車も含む電動車両に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 車両
2 バッテリ
3 排気ダクト
3e フラップ(仕切弁)
4 排気通路
5 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源としての電動機に電力を供給するバッテリと、前記バッテリを加熱又は冷却した空気を排気口より車室外に排出するよう前記バッテリと前記排気口とを連通するように設けられる排気ダクトと、を備える電動車両の排気構造において、
前記排気ダクトと前記車両の車室とを連通する内気排出口と、
前記内気排出口に前記排気ダクトと前記車室とを隔て前記排気ダクト内側に開作動可能な仕切弁とを備えることを特徴とする電動車両の排気構造。
【請求項2】
前記排気ダクトは、
前記バッテリを加熱又は冷却した空気が排気口に向かって通過する通過領域と、
前記内気排出口と前記仕切弁とを有し前記車両の車室内気を排気可能とする内気合流領域とが設けられることを特徴とする、請求項1に記載の電動車両の排気構造。
【請求項3】
前記内気合流領域は、前記通過領域の上部に配置されることを特徴とする請求項2に記載の電動車両の排気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158261(P2012−158261A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19810(P2011−19810)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】