説明

電動送風機及びそれを用いた電気掃除機

【課題】送風効率が高く、高い回転数で使用可能な電気掃除機用の電動送風機を提供する。
【解決手段】インペラ120を上下2部品で構成し、上流側のインペラA120aを熱伝導性の高い金属で構成し、下流側のインペラB120bを樹脂材料で構成するとともに、インペラ120の吸気口195とファンケース192の吸込口194とを接触式のシール構成とすることにより、送風効率が高く、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱がインペラA120aの翼部A126aから放熱されるので、インペラB120bの樹脂製部品が変形したり損傷したりすることがなく、また、インペラA120aはインペラB120bに対して回転軸方向、回転軸の円周方向ともに位置ずれ防止手段を設けているため、翼部A126aと、翼部B126bとがずれることによる漏れ損失や流れの乱れによる損失が生じることがないので、送風効率の高い電動送風機を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機及び電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動送風機としては、図12に示すように、回転軸1を有する電動機2と、ナット3によって回転軸1に固定され電動機2によって回転駆動されるインペラ4と、インペラ4から排出された空気の流速のエネルギーを圧力のエネルギーに変換するためのエアガイド5と、インペラ4とエアガイド5を内包するファンケース6とを有したものがある。
【0003】
インペラ4の詳細を図13に基づいて説明する。インペラ4は、板金製の後面シュラウド11と、後面シュラウド11と間隔を置いて配した板金製の前面シュラウド12と、1対の後面シュラウド11、前面シュラウド12とで挟持される複数枚の板金製ブレード13と、前面シュラウド12の中央に設けた吸気口14に対応して設けた樹脂製インデューサ15とから構成されている。板金製ブレード13は各後面シュラウド11、前面シュラウド12にかしめ加工により取り付けている。また、樹脂製インデューサ15は略円錐状のハブ16とそのハブ16上に形成される羽根部17から構成されており、特に吸気口14から板金製ブレード13側へ流れる空気を整流するため、羽根部17の形状を3次元的曲面を持った形状としている。
【0004】
図14(a)、(b)は、インデューサ15の金型構造を示す。このような複雑な形状のインデューサ15を作成するために、インデューサ羽根部17の外周方向へ略放射状にスライドする側方スライド金型21を用いた樹脂成型加工を行っている。成型金型は羽根部17と同数の側方スライド金型21とコア22、キャビティ23から構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、図15に示すように、樹脂材料から成るインペラ31を、後面シュラウド32と前面シュラウド33にブレード単位で分割し、後面シュラウド32には後面側ブレード34を、同じく前面シュラウド33には前面側ブレード35を一体化し、各ブレードと対向するシュラウドを超音波溶着加工により接合することにより、各ブレード全面を気流の流れに合せた複雑な形状に成型することを可能にした構成もある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、図16(a)、(b)に示すように、金属材料から成る前面シュラウド41および後面シュラウド42に突起用穴43、44を設けるとともに、三次元的な曲面を持った樹脂材料から成るブレード45に突起46、47を設け、この突起46、47を突起用穴43、44に圧入し、前面シュラウド41、後面シュラウド42と一体化させる、あるいは、突起46、47を突起用穴43、44に挿入後、突起用穴43、44から突き出た突起46、47を溶かして前面シュラウド41、後面シュラウド42と一体化させる構成もある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、図17(a)、(b)に示すように、中央部に吸気口51を有し、樹脂製の前面シュラウド52と、樹脂製後面シュラウド53と、3次元的な曲面形状を持つ複数枚の樹脂製ブレード54とで構成されたインペラ55と、中央部に吸込口56を有し、インペラ55を覆うように構成されたファンケース57とを有し、前面シュラウド52の吸気口51側の端部に設けられた金属環などの耐熱耐磨耗部58と、ファンケース57の吸込口56側の端部に設けられた樹脂製シール部59とが当接することで、インペラ55の吸気
口51とファンケース57の吸込口56とを接触式のシール構成としているため、インペラ55から吐出された空気が再び吸気口51からインペラ55内部に入り込む還流を防いで送風効率を高めるとともに、接触式のシール構成の一方を樹脂、他方を金属などの耐熱耐磨耗性を有する材料で構成することにより、樹脂製の前面シュラウド52がシール部の摺動摩擦熱により変形したり、損傷したりすることがない構成もある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−45993号公報
【特許文献2】特開平11−107990号公報
【特許文献3】特開平7−127597号公報
【特許文献4】特開平10−141279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、当時の特許文献1では、ブレードが板金製であることや、前面シュラウドと後面シュラウドにかしめ加工により取り付けられていることから、ひねり形状など複雑な3次元曲面形状を構成することが困難であるため、樹脂製のインデューサ部分しか気流の流れに合せた複雑な3次元曲面形状で構成することができないので、形状の制限が大きいという課題を有していた。
【0010】
また、図15に示す前記従来の構成では、各ブレードを全て樹脂製とすることで、ブレード全面を気流の流れに合せた複雑な形状にすることが可能となるが、送風性能向上のために、図17(a)に示すような、ファンケース57の吸込口56とインペラ55の吸気口51とを接触式のシール構成とした場合、シール部での摺動摩擦熱により、樹脂製の前面シュラウド33が変形したり、破損したりする可能性が生じるため、非接触式のシール構成とせざるを得ないため、インペラから吐出した空気が再びインペラの吸気口から入り込む還流損失を防ぐことができないという課題を有していた。
【0011】
また、図16(a)、(b)に示す前記従来の構成では、ブレードを樹脂製とすることで、ブレード全面を気流の流れに合せた複雑な形状にすることが可能となり、さらに、前面シュラウドを金属製にすることにより、接触式のシール構成としても、前面シュラウドがシール部の摺動摩擦熱によって変形したり破損したりすることはないが、樹脂製の突起部のみで金属製の前面シュラウドおよび後面シュラウドに保持されているため、回転数の高い電動送風機に使用した場合、シール部の摺動摩擦熱が増大し、その熱が金属製の前面シュラウドを伝わり樹脂製の突起部を溶かしてしまい、ブレードが前面シュラウドから外れてしまうという課題を有していた。
【0012】
さらに、図17(a)、(b)に示す前記従来の構成では、ブレードを樹脂製とすることで、ブレード全面を気流の流れに合せた複雑な形状にすることが可能となり、さらに、接触式のシール構成の一方を樹脂、他方を金属などの耐熱耐磨耗性を有する材料で構成することにより、樹脂製の前面シュラウドがシール部の摺動摩擦熱により変形したり、損傷したりすることがないよう構成しているが、耐熱耐磨耗部に気流があまり当たらないため、回転数の高い電動送風機に使用した場合、耐熱耐磨耗部での放熱量よりもシール部の摺動摩擦熱の方が大きくなり、その結果、耐熱耐磨耗部の耐熱性能を超えてしまったり、耐熱耐磨耗部の熱が前面シュラウドに伝わり、樹脂製の前面シュラウドが変形したり、損傷したりしてしまう可能性があるという課題を有していた。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、気流に沿った複雑な3次元曲面形状の翼
部を用いたり、インペラの吸気口での還流損失を低減したりすることを可能にすることで、送風効率を高め、シール部の摺動摩擦熱を放熱させるとともに摺動摩擦によって回転方向と逆方向に上流側のインペラAがずれてしまうことを防止することで、高い回転数で使用することを可能とした電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機及びそれを用いた電気掃除機は、回転軸を有する電動機と、前記電動機により回転駆動され、中央に吸気口を有するインペラと、前記インペラを覆い前記吸気口と連通する吸込口を有するファンケースとを備え、前記インペラは、金属材料から成る上流側のインペラAと、樹脂材料から成る下流側のインペラBとで構成され、前記インペラBは、前面シュラウドと、この前面シュラウドと間隔をおいて配され、ハブ部Bを有する後面シュラウドと、この1対のシュラウドとで挟持される複数枚の翼部Bとで構成され、前記インペラAは、複数枚の翼部Aと、これらの翼部Aの少なくとも一部に当接する、外周側のリング部および内周側のハブ部Aとで構成され、前記翼部Aと前記翼部Bには、係合部が各々の合わせ面に設けられ、前記ハブ部Bの外周に前記ハブ部Aを挿入し前記ハブ部Bの上部から締結体により前記インペラBを前記回転軸に固定することで前記翼部Bと前記翼部Aが前記係合部にて連結される構成とし、前記ハブ部Aの上面部が前記締結体の下面部に対し当接して覆われる様に配置することで前記回転軸方向の移動が規制されるよう構成するとともに、前記インペラの吸気口と前記ファンケースの吸込口とを接触式シール構成としたものである。
【0015】
これによって、翼部Bを樹脂材料とすることで気流に沿った複雑な3次元曲面形状を用いることができるようになるとともに、インペラの吸気口での還流損失を低減することが可能になるため、送風効率が高く、さらに、気流が直接当たる翼部Aと、リング部とが熱的に接触しているため、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱が効果的に放熱されるので、樹脂製の翼部Bや前面シュラウドなどの部品が変形したり損傷したりすることを防ぐことができる。
【0016】
また、シール部の摩擦抵抗により、インペラAにはインペラの回転方向と逆の方向の力がかかるが、翼部Bと翼部Aが係合部にて連結される構成とすることで、回転軸の円周方向にインペラAがインペラBに対してずれることを防止している。さらに、回転軸方向においても、締結体により、インペラAがインペラBに対してずれることを防止しているため、翼部Bと翼部Aがずれることによる空気の流れの乱れを防止することができる。
【0017】
そして、この電動送風機を用いた電気掃除機は、送風効率が高く、吸引力が強いきわめて実用的なものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電動送風機およびそれを用いた電気掃除機は、インペラを上下2部品で構成し、上流側のインペラAを、熱伝導性の高い金属材料で構成し、下流側のインペラBを、形状自由度の高い樹脂材料で構成するとともに、インペラの吸気口とファンケースの吸込口とを接触式のシール構成とすることにより、送風効率が高く、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱がインペラAの翼部Aから放熱されるので、樹脂製部品が変形したり損傷したりすることがない。また、インペラAはインペラBに対して回転軸方向、回転軸の円周方向ともに移動を防止する手段を設けているため、翼部Bと翼部Aがずれることによって生じる問題を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す電動送風機の断面図
【図2】同、電動送風機のインペラAとインペラBの斜視図
【図3】同、電動送風機のインペラBの部分断面図
【図4】(a)同、電動送風機の翼部Bと後面シュラウドの金型構成を示す平面図(b)同、電動送風機の翼部Bと後面シュラウドの金型構成を示す側方断面図
【図5】同、電動送風機の前面シュラウドの裏側斜視図
【図6】(a)同、電動送風機のインペラAの上方斜視図(b)同、電動送風機のインペラAの裏側斜視図
【図7】(a)同、電動送風機のインペラAの平面図(b)同、電動送風機のインペラAの金型構成を示す側方断面図
【図8】(a)同、電動送風機のインペラの平面図(b)同、電動送風機のインペラの翼部を示す図8(a)のY−Y部分断面図
【図9】本発明の第2の実施の形態のインペラAとインペラBの斜視図
【図10】(a)同、電動送風機のインペラAの上方斜視図(b)同、電動送風機のインペラAの裏側斜視図
【図11】本発明の第3の実施の形態を示す電気掃除機の全体構成図
【図12】従来の電動送風機の部分断面図
【図13】同、電動送風機のインペラの部分断面図
【図14】(a)同、電動送風機のインデューサの金型構成を示す平面図(b)同、電動送風機のインデューサの金型構成を示す側方断面図
【図15】同、電動送風機の別形態のインペラの斜視図
【図16】(a)同、電動送風機の別形態のインペラの各部品の断面図(b)同、電動送風機のインペラの側方断面図
【図17】(a)同、電動送風機の別形態の部分断面図(b)同、電動送風機の図17(a)でのB部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、回転軸を有する電動機と、前記電動機により回転駆動され、中央に吸気口を有するインペラと、前記インペラを覆い前記吸気口と連通する吸込口を有するファンケースとを備え、前記インペラは、金属材料から成る上流側のインペラAと、樹脂材料から成る下流側のインペラBとで構成され、前記インペラBは、前面シュラウドと、この前面シュラウドと間隔をおいて配され、ハブ部Bを有する後面シュラウドと、この1対のシュラウドとで挟持される複数枚の翼部Bとで構成され、前記インペラAは、複数枚の翼部Aと、これらの翼部Aの少なくとも一部に当接する、外周側のリング部および内周側のハブ部Aとで構成され、前記翼部Aと前記翼部Bには、係合部が各々の合わせ面に設けられ、前記ハブ部Bの外周に前記ハブ部Aを挿入し前記ハブ部Bの上部から締結体により前記インペラBを前記回転軸に固定することで前記翼部Bと前記翼部Aが前記係合部にて連結される構成とし、前記ハブ部Aの上面部が前記締結体の下面部に対し当接して覆われる様に配置することで前記回転軸方向の移動が規制されるよう構成するとともに、前記インペラの吸気口と前記ファンケースの吸込口とを接触式シール構成とした。
【0021】
この構成により、翼部Bを樹脂材料とすることで気流に沿った複雑な3次元曲面形状を用いることができるようになるとともに、インペラの吸気口での還流損失を低減することが可能になるため、送風効率が高く、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱がインペラAの翼部Aから放熱されるので、樹脂製部品が変形したり損傷したりすることがない。また、インペラAはインペラBに対して回転軸方向、回転軸の円周方向ともに移動を防止する手段を設けているため、翼部Bと翼部Aがずれることによって生じる問題を回避することが可能である。
【0022】
第2の発明は、特に、第1の発明において、係合部を、翼部Bにおける負圧面側に凸部が設けられるよう構成された段差部としたことにより、シール部の摺動摩擦抵抗や空気の抵抗により、翼部Aが回転方向と逆の方向に移動することを防止可能となる。
【0023】
第3の発明は、特に、第1の発明において、係合部を、翼部Bにおける外周側の負圧面側に凸部が設けられるよう構成した第1の段差部と、前記翼部Bにおける内周側の圧力面側に凸部が設けられるよう構成した第2の段差部としたことにより、インペラAとインペラBとを組み立てる際に、それぞれの羽根で位置が決まるため、翼部Aと翼部Bがずれて組みあがることがない。
【0024】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、係合部の、回転軸に対する円周方向における合わせ面を、略垂直になるよう構成したことにより、円周方向に力がかかった場合でも、その力が回転軸方向に分散しないため、翼部Aと翼部Bが回転軸方向にずれてしまうことを防止することができる。
【0025】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、ハブ部Aとハブ部Bの回転軸方向における合わせ面に、テーパ部を有する凹凸状の係合部を、翼部Aと翼部Bの合わせ面に設けられた係合部よりも上端面が高くなるよう設けたことにより、インデューサAとインデューサBを組み立てる際に、多少位置がずれそうになったとしても、このテーパ部によって所定の位置に導かれるため、組立性が向上する。
【0026】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明における電動送風機を有する電気掃除機とすることにより、送風効率が高く、吸引力が強い、きわめて実用的な電気掃除機を得ることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1から図8は、本発明の実施の形態1における電動送風機を示すものである。
図1に示すように、本実施の形態における電動送風機101には、電動機102が配置されている。電動機102は、ブラシレスモータと呼ばれるタイプのモータであり、回転軸103を有するローター部104と、ステータ部105と、それらを覆うブラケット106と制御装置(図示せず)とで構成されている。そして、回転軸103にナット107によってインペラ120が接続されている。
【0029】
インペラ120は、図2に示すように、上流側のインペラA120aと下流側のインペラB120bで構成されている。
【0030】
インペラB120bは、図3に示すように、略円錐形状のハブ部B123bを有する樹脂製の後面シュラウド124、これに対向する樹脂製の前面シュラウド125、この1対のシュラウド124、125内に設けた3次元的な曲面形状を持つ7枚の樹脂製の翼部B126bから構成されている。
【0031】
そして、翼部B126bは後面シュラウド124と一体に成形されている。この翼部B126bと後面シュラウド124の金型構造は、図4(a)、(b)に示すように、約51度角間隔で構成された7方向のスライド金型131と、コア132、キャビティ133より構成されている。本実施の形態では、隣接する翼部B126bがコア132側から見て互いにオーバーラップしないように構成することで、翼部B126bと後面シュラウド124とは図4(a)、(b)に示すような平易な金型構造で、一体に射出成型可能となっている。
【0032】
また、前面シュラウド125には、図5に示すように、翼部B126bの接触面141
に沿った溝部142が設けられており、接触面141を含む翼部B126bの突出部143を溝部142にはめ込んだ後、熱溶着処理を行うことにより両者を固定している。
【0033】
そしてインペラA120aは、図6(a)、(b)に示すように、リング部151、翼部A126a、ハブ部A123aにより構成されており、熱伝導性の高い金属であるアルミを用いて一体に成型されている。本実施の形態では、図7(a)に示すように、隣接する翼部A126aをコア161側およびキャビティ162側から見てオーバーラップしないよう構成することで、インペラA120aの金型構造は、図7(b)に示すように、単純なコア161とキャビティ162の2プレート金型により一体にダイカスト成型可能となっている。
【0034】
インペラA120aとインペラB120bには、図3、図6(b)に示すように、翼部A126aと翼部B126bのそれぞれの合わせ面171a、合わせ面171bに、階段状の段差部172a、172bが設けられている。この段差部172a、172bは、図8に示すように、翼部B126bの負圧面174側に凸部175が設けられるよう構成されている。
【0035】
ここで、段差部172a、172bの、回転軸103に対する円周方向の合わせ面176a、176bには、テーパを設けず、略垂直面で合わさるよう構成している。また、リング部151と前面シュラウド125との合わせ面173a、173bにそれぞれピン177と穴部178が設けられている。
【0036】
さらに、インペラA120aのハブ部A123aと、インペラB120bのハブ部B123bには、両側にテーパ部181a、181bを有する係合部182a、182bが複数個設けられており、この係合部182a、182bの回転軸103方向の高さは、翼部A126a、翼部B126bに設けられた段差部172a、172bやリング部151に設けられたピン177の高さよりも高くなるように構成されている。
【0037】
インペラA120aは、インペラB120bのハブ部B123bに設けられた円筒部183の外周側に、ハブ部A123aを挿入する形で組み立てられる。この際、多少位置がずれてしまっても、係合部182a、182bに設けられたテーパ部181a、テーパ部181bによって、所定の位置に導かれるため、組立性を大幅に向上させることができる。
【0038】
なお、インペラA120aとインペラB120bとの間に隙間が開いていると、そこから空気が漏れて損失となるため、接着剤または塗装を施してこれらの隙間を埋めることが望ましい。
【0039】
このようにして組み立てられたインペラ120は、ナット107によって回転軸103に取り付けられている。ここで、ナット107は、インペラA120aのハブ部A123aに当接するように、すなわち、ハブ部A123aにナット107の締結力がかかるように、円筒部183とハブ部A123aの高さを等しく、あるいは、円筒部183の方が微小に短くなるように構成する(円筒部183上部の下面部185がハブ部A123aの上面部184と同一面となるあるいは微小に下がように構成するる)ことで、インペラA120aとインペラB120bが回転軸103の円周方向および回転軸103方向にずれないように押さえている。なお、ハブ部A123aは金属材料で設けられているため、インペラA120aの回転軸103の軸方向の軸方向の厚みを薄くしても、ナット107による締結力でインペラA120aが破損することを防ぐことができる。
【0040】
そして、インペラ120の周囲には、エアガイド191が設けられている。これは、イ
ンペラ120から吐出される空気の流速を徐々に減速することで、流速のエネルギーを圧力のエネルギーに変換し、送風効率を高めるものである。そして、金属製のファンケース192によって、インペラ120とエアガイド191が内包されている。
【0041】
また、ファンケース192にはPTFE製のファンケーススペーサ193が接着剤によって取りつけられている。ここで、ファンケーススペーサ193とリング部151とが当接するようにファンケース192およびファンケーススペーサ193を取り付けることにより、ファンケース192の吸込口194とインペラ120の吸気口195とを接触式のシール構成としている。
【0042】
以上のように構成された電動送風機について、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
まず、電動送風機101を起動すると、電動機102のローター部104が回転し、それに伴って回転軸103が回転し、回転軸103にナット107によって取り付けられているインペラ120が図2の矢印が示す回転方向Zの方向に回転する。
【0044】
インペラ120の回転に伴い、空気がファンケース192の吸込口194から流入し、インペラ120の吸気口195を通ってインペラ120内部に流入する。そしてインペラ120の内部流路を通って、インペラ120の外周部から吐出される。
【0045】
ここで、インペラ120の内部流路を空気が通る際、インペラA120aのリング部151と翼部A126a、あるいは、翼部A126aとハブ部A123aとの間に隙間が生じると、その隙間から空気が漏れ、気流の乱れが生じるため、送風効率を低下させてしまう。しかし、本実施の形態では、リング部151と翼部A126aとハブ部A123aとを、ダイカスト成型により一体に成型しているため、各部品間に隙間が生じないよう容易に構成することが可能となるので、隙間に起因する気流の乱れによる送風効率の低下を防止することができる。
【0046】
同様に、インペラB120bの後面シュラウド124と翼部B126bとを射出成型により一体に成型するとともに、前面シュラウド125に設けられた溝部142に翼部B126bの突出部143をはめ込んだ後、熱溶着処理を施すことにより、後面シュラウド124と翼部B126bとの間だけでなく、翼部B126bと前面シュラウド125との間にも隙間が生じないよう構成することが可能となるため、インペラB120bにおいても、これらの隙間に起因する気流の乱れによる送風効率の低下を防止することができる。
【0047】
さらに、インペラB120bの翼部B126bを形状自由度の高い樹脂製としているため、図3に示すように、翼部B126bを後面シュラウド124に対して複雑にひねった形状にすることが可能となっている。そのため、翼部B126bの全面に渡ってインペラ120内部を流れる気流に合った3次元曲面形状とすることで、インペラ120内部での気流の乱れを抑えて、送風効率を高めることが可能となっている。
【0048】
そして、インペラ120の外周部から吐出された空気はエアガイド191に流入する。ここで、インペラ120の吸気口195とファンケース192の吸込口194との間に隙間が生じている場合、インペラ120から吐出された空気が、インペラ120とファンケース192との間の空間を通り、再びインペラ120の吸気口195からインペラ120内部へ流入してしまう。この流れは、送風効率に寄与しない流れであるので、還流損失となり、送風効率を低下させてしまう。
【0049】
しかし、本実施の形態では、ファンケーススペーサ193とリング部151を当接するよう構成することで、ファンケース192の吸込口194をインペラ120の吸気口19
5とを接触式のシール構成としているので、還流損失が生じず、送風効率を向上させることができる。
【0050】
この際、インペラ120の回転に伴い、当接するファンケーススペーサ193とリング部151との間で摺動摩擦熱が生じてしまう。しかし、本実施の形態では、リング部151と翼部A126aとを熱伝導性の高いアルミ製とするとともに、リング部151と気流が直接当たる翼部A126aとを隙間が生じないよう一体に成型しているため、摺動摩擦熱が効果的にリング部151から翼部A126aに伝わり、気流へと放熱されるので、樹脂製の翼部B126bや前面シュラウド125、そしてファンケーススペーサ193が、摺動摩擦熱によって、変形したり損傷したりすることを防ぐことができる。このことにより、回転数の早い電動送風機や、吸気口が広いインペラなど、当接部分の周速が速く、摺動摩擦熱が多く生じる電動送風機でも使用することが可能となる。
【0051】
なお、本実施の形態では、PTFE製のファンケーススペーサ193をファンケース192に接着剤で取りつける構成としているが、ファンケーススペーサ193をPETなどの樹脂製とし、金属製のファンケース192と一体成型する構成とし、インペラ120を回転させながら組立を行い、金属製のリング部151が樹脂製のファンケーススペーサ193を切削することで当接シールさせる構成としても良い、この場合でも、当接するリング部151とファンケーススペーサ193との間で生じる摺動摩擦熱が効果的に翼部A126aより放熱されるため、樹脂製のファンケーススペーサ193が、使用時に摺動摩擦熱によって、変形したり損傷したりすることを防ぐことができる。
【0052】
さらに、本実施の形態では、リング部151を、金属製のアルミで構成したことにより、耐熱性や強度および耐磨耗性が一般的な樹脂よりも優れているため、リング部151が、摺動摩擦熱や磨耗によって変形したり、損傷したりすることを防ぐことができるので、50000r/min以上といった高速回転域でも使用することができる。
【0053】
また、インペラ120がZ方向に回転すると、リング部151は、摺動摩擦抵抗により、回転方向Zとは反対方向に力がかかるため、一体に成型されているインペラA120aは、インペラB120bに対して、回転方向Zとは反対方向にずれようとする。しかし、本実施の形態では、翼部A126aと翼部B126bとの間の合わせ面171a、171bに設けられた階段状の段差部172a、172bを、翼部B126bの負圧面174側すなわち回転方向Zに対する翼部B126bの背面側に凸部がくるように構成することで、インペラA120aがインペラB120bに対して、回転方向Zの反対方向にずれることを防止している。
【0054】
さらに、段差部172a、172bの回転軸103に対する円周方向の合わせ面176a、176bにテーパを設けず略垂直面で合わさるよう構成されているため、翼部A126aに回転方向Zの反対方向にかかる力が回転軸103に対する軸方向に分散しにくいので、合わせ面171a、171bが軸方向にずれることも防止している。
【0055】
ここで、段差部172a、173aを介して翼部B126bにも回転方向Zの反対方向に力が加わるが、翼部B126bと後面シュラウド124は射出成型により一体に成型されているとともに、翼部B126bは前面シュラウド125に設けられた溝部142に突出部143をはめ込んだ後、熱溶着処理を施して固定しているため、十分な強度を有しているので、摺動摩擦による力により、樹脂製のブレードが変形したり、破損したりすることがない構成となっている。
【0056】
そして、エアガイド191に流入した空気は、エアガイド191外周部から流出し、電動機102のブラケット106外周部とファンケース192の間の流路を通ることで、電
動機102を外側から冷却する構成となっている。
【0057】
以上のように、本実施の形態では、インペラ120を上下2部品で構成し、上流側のインペラA120aを熱伝導性の高い金属であるアルミで構成し、下流側のインペラB120bを形状自由度の高い樹脂材料で構成するとともに、インペラ120の吸気口195とファンケース192の吸込口194とを接触式のシール構成とすることにより、送風効率が高く、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱がインペラA120aの翼部A126aから放熱されるので、前面シュラウド125などの樹脂製部品が変形したり損傷したりすることがない。
【0058】
また、インペラA120aはインペラB120bに対して回転軸103方向、回転軸103の円周方向ともに位置がずれることを防止する手段を設けているため、翼部B126bと翼部A126aがずれることによる漏れ損失や流れの乱れによる損失が生じることがない。
【0059】
(実施の形態2)
図9、図10は、本実施の形態2におけるインペラ201を示すものである。
【0060】
本実施の形態が、実施の形態1と異なる点は、インペラA201aの翼部A202aと、インペラB201bの翼部B202bのそれぞれの合わせ面203a、203bに、翼部B202bにおける外周側の負圧面204側に凸部205が設けられるよう構成した第1の段差部206a、206bと、翼部B202bにおける内周側の圧力面207側に凸部208が設けられるよう構成した第2の段差部209a、第2の段差部209bを有し、第1の段差部206a、第1の段差部206bの径方向の長さを第2の段差部209a、209bの径方向の長さよりも長くなるように構成した点である。その他は実施の形態1と同様であり、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施の形態では、各翼部202a、202bの合わせ面203a、203bにそれぞれ第1の段差部206a、206bと、逆の位置に第2の段差部209a、209bを設けているため、インペラA201aとインペラB201bとを組み立てる際に、第1の段差部206a、206bと第2の段差部209a、209bによって、各翼部202でそれぞれ位置がずれないように係止されているため、翼部A202aと翼部B202bとがずれて組みあがることがない。
【0062】
ここで、インペラ201が回転することによって、翼部202の圧力面207にかかる力は、周速が速い外周側のほうが強くなるため、翼部B202bにおける外周側の負圧面204側に凸部を設ける構成とするとともに、第1の段差部206a、206bを、第2の段差部209a、209bよりも長くなるよう構成することで、インペラA201aがインペラB201bに対して矢印Zで示す回転方向と逆方向にずれることを防止している。
【0063】
よって、以上のように構成することで、インペラB201bとインペラA201aがずれることによって空気の流れが乱れ、送風性能を低減してしまう問題を回避することが可能となる。
【0064】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3における電気掃除機を示すものである。
図11において、電気掃除機301は、ホース302、延長管303及び床面上を移動して塵埃を吸引する吸引具304を有しており、掃除機本体306には、実施の形態1に示したインペラ307を有する電動送風機308が内蔵されている。
【0065】
以上のように構成された電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0066】
まず、電気掃除機301を起動すると電動送風機308が送風を行う。電動送風機308は、内部に実施の形態1に示したインペラ307が設けられているため、送風効率が高く、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱によって樹脂製部品が変形したり損傷したりすることがないため掃除機本体としても、吸引力が強く、きわめて実用的なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかる電動送風機及びそれを用いた電気掃除機は、インペラを上下2部品で構成し、上流側のインペラAを熱伝導性の高い金属であるアルミで構成し、下流側のインペラBを形状自由度の高い樹脂材料で構成するとともに、インペラの吸気口とファンケースの吸込口とを接触式のシール構成とすることにより、送風効率が高く、高い回転数で使用してもシール部の摺動摩擦熱がインペラAの翼部Aから放熱されるので、前面シュラウドなどの樹脂製部品が変形したり損傷したりすることがない。また、インペラAはインペラBに対して回転軸方向、回転軸の円周方向ともに位置がずれることを防止する手段を設けているため、翼部Bと翼部Aがずれることによる漏れ損失や流れの乱れによる損失が生じることがないので、家庭用はもちろんのこと業務用の機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
101 電動送風機
102 電動機
103 回転軸
107 ナット(締結体)
120 インペラ
120a インペラA
120b インペラB
123a ハブ部A
123b ハブ部B
124 後面シュラウド
125 前面シュラウド
126a 翼部A
126b 翼部B
151 リング部
171a 合わせ面
171b 合わせ面
172a 段差部(係合部)
172b 段差部(係合部)
173a 合わせ面
173b 合わせ面
174 負圧面
175 凸部
176a 合わせ面
176b 合わせ面
181a テーパ部
181b テーパ部
182a 係合部
182b 係合部
184 上面部
185 下面部
192 ファンケース
194 吸込口
195 吸気口
201 インペラ
201a インペラA
201b インペラB
202a 翼部A
202b 翼部B
203a 合わせ面
203b 合わせ面
204 負圧面
205 凸部
206a 第1の段差部(係合部)
206b 第1の段差部(係合部)
207 圧力面
208 凸部
209a 第2の段差部(係合部)
209b 第2の段差部(係合部)
301 電気掃除機
307 インペラ
308 電動送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する電動機と、
前記電動機により回転駆動され、中央に吸気口を有するインペラと、
前記インペラを覆い前記吸気口と連通する吸込口を有するファンケースとを備え、
前記インペラは、金属材料から成る上流側のインペラAと、
樹脂材料から成る下流側のインペラBとで構成され、
前記インペラBは、
前面シュラウドと、
この前面シュラウドと間隔をおいて配され、ハブ部Bを有する後面シュラウドと、
この1対のシュラウドとで挟持される複数枚の翼部Bとで構成され、
前記インペラAは、
複数枚の翼部Aと、
これらの翼部Aの少なくとも一部に当接する、外周側のリング部および内周側のハブ部Aとで構成され、
前記翼部Aと前記翼部Bには、係合部が各々の合わせ面に設けられ、
前記ハブ部Bの外周に前記ハブ部Aを挿入し前記ハブ部Bの上部から締結体により前記インペラBを前記回転軸に固定することで前記翼部Bと前記翼部Aが前記係合部にて連結される構成とし、
前記ハブ部Aの上面部が前記締結体の下面部に対し当接して覆われる様に配置することで前記回転軸方向の移動が規制されるよう構成するとともに、
前記インペラの吸気口と前記ファンケースの吸込口とを接触式シール構成とした電動送風機。
【請求項2】
係合部は、翼部Bにおける負圧面側に凸部が設けられるよう構成された段差部である請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
係合部は、翼部Bにおける外周側の負圧面側に凸部が設けられるよう構成した第1の段差部と、前記翼部Bにおける内周側の圧力面側に凸部が設けられるよう構成した第2の段差部である請求項1に記載の電動送風機。
【請求項4】
係合部の、回転軸に対する円周方向における合わせ面は、略垂直になるよう構成された請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項5】
ハブ部Aとハブ部Bの回転軸方向における合わせ面に、テーパ部を有する凹凸状の係合部を、翼部Aと翼部Bの合わせ面に設けられた係合部よりも上端面が高くなるように設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動送風機を有する電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−60874(P2013−60874A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199667(P2011−199667)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】