電圧制御発振器
【課題】広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる電圧制御発振器を得る。
【解決手段】本発明に係る電圧制御発振器は、可変容量素子17の両端に印加する電圧により発振周波数を制御するものである。そして、この電圧制御発振器は、制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子17の一端に印加する周波数制御バイアス回路21と、制御電圧に応じた第1電流を発生させる第1電流源25と、制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる第2電流源26と、第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換する変換用抵抗27と、変換用抵抗27により変換された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子17の他端に印加する温度補償バイアス回路23とを備える。
【解決手段】本発明に係る電圧制御発振器は、可変容量素子17の両端に印加する電圧により発振周波数を制御するものである。そして、この電圧制御発振器は、制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子17の一端に印加する周波数制御バイアス回路21と、制御電圧に応じた第1電流を発生させる第1電流源25と、制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる第2電流源26と、第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換する変換用抵抗27と、変換用抵抗27により変換された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子17の他端に印加する温度補償バイアス回路23とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にマイクロ波・ミリ波領域で動作する電圧制御発振器に関し、特に広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる電圧制御発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタのベースに印加される電圧に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振器が用いられている。そして、このような電圧制御発振器において、各温度で同一の発振周波数を得るための工夫がなされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図14は、従来の電圧制御発振器の一例を示す回路図である。バイポーラトランジスタ11のエミッタと接地点との間に、直列帰還用のインダクタ12が設けられている。バイポーラトランジスタ11のコレクタと出力端子13との間に、出力整合回路14が設けられている。バイポーラトランジスタ11のベースには、発振開始の位相条件を満たすための位相調整用線路15の一端が接続されている。
【0004】
位相調整用線路15の他端と接地点との間には、インダクタ16と可変容量素子17が直列に接続されている。このインダクタ16と可変容量素子17はLC直列共振回路を構成している。周波数制御バイアス回路21は、端子22から入力された制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子17の一端に印加する。
【0005】
この電圧制御発振器において、温度に応じて可変容量素子17の一端に印加する電圧を制御することで発振周波数が制御される。これにより、温度による発振周波数の変動を補正している。
【0006】
図15は、従来の電圧制御発振器の発振周波数特性を示す模式図である。例えば、常温において可変容量素子17の両端にA点の電圧を印加する場合、高温になった場合はB点の電圧、低温になった場合はC点の電圧を印加すればよい。これにより、各温度で同一の発振周波数を得ることができる。しかし、図14の電圧制御発振器では、発振周波数の温度補正と、同一温度における周波数制御とを同じ端子に印加する電圧で行うため、電圧の制御が複雑であった。
【0007】
図16は、従来の電圧制御発振器の他の例を示す回路図である。可変容量素子17と接地点との間に直流阻止用のキャパシタ18が設けられている。そして、温度補償バイアス回路23は、温度補償バイアス発生回路24で発生された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子17の他端に印加する。その他の構成は図15の電圧制御発振器と同様である。
【0008】
温度補償バイアス発生回路24は、トランジスタ51と、抵抗52〜54と、端子55,56とを有する。トランジスタ51のコレクタには端子55から抵抗52を介して固定電圧が印加され、ベースには端子56から抵抗53を介して固定電圧が印加され、エミッタは抵抗54を介して接地されている。そして、トランジスタ51のコレクタ側から温度補償バイアス回路23に電圧が出力される。
【0009】
図17は、図16のX点の電圧の温度特性を示す模式図であり、図18は、図16の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度特性を示す模式図である。温度が高くなるとトランジスタ51のコレクタ電流が増大し、抵抗52での電圧降下量が大きくなり、X点での電圧が低下する。そして、可変容量素子17の他端の電圧がX点より大きい場合、可変容量素子17の両端にかかる電圧は高くなり、発振周波数が高くなる。従って、通常の電圧制御発振器の発振周波数は温度上昇に伴い低くなるが、図17の電圧制御発振器は温度上昇による発振周波数の低下を補償することができる。即ち、温度が変化しても同一周波数の信号を出力するように可変容量素子へ印加される電圧を自動で制御することができる。また、周波数制御用に使われる端子22と温度補償に使用される端子55,56が分離されているので、温度に応じて複雑な電圧を印加する必要が無い。従って、図16の電圧制御発振器は、図14の電圧制御発振器のような温度制御を省略又は簡易化することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2005−102148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、車載レーダーの信号周波数が76〜77GHzであるため、車載レーダー用の電圧制御発振器の出力周波数は一般的に76〜77GHzの1/8以上である。そして、システムを簡素化するために、この出力周波数はさらに高周波化される傾向にある。このような高周波で動作する電圧制御発振器では、組み立て精度が特性に及ぼす影響が大きいため、生産性の観点からモノリシック(MMIC)化することが望ましい。MMIC化する場合、可変容量素子としてはトランジスタのベース−コレクタ間又はベース−エミッタ間容量を利用した可変容量ダイオード(バラクタダイオード)が使用される。
【0012】
しかし、バラクタダイオードの容量−電圧特性は、発振素子であるトランジスタの高周波特性との整合性の観点から決定されるので、発振周波数の線形性に対して最適化することができない。この場合における図16の電圧制御発振器の発振周波数特性を図19に示す。制御電圧とは独立に一定の電圧がオフセットされる。このため、温度補償を行うことができる制御電圧が一点(図中Y点)のみとなり、その前後の電圧では温度による発振周波数の変動が残ってしまう。即ち、温度補償を行うことができる発振周波数の範囲が極めて限定されるという問題があった。
【0013】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる電圧制御発振器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電圧制御発振器は、可変容量素子の両端に印加する電圧により発振周波数を制御する電圧制御発振器において、制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子の一端に印加する周波数制御バイアス回路と、制御電圧に応じた第1電流を発生させる第1電流源と、制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる第2電流源と、第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換する変換用抵抗と、変換用抵抗により変換された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子の他端に印加する温度補償バイアス回路とを備える。本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電圧制御発振器を示す回路図である。バイポーラトランジスタ11のエミッタと接地点との間に、直列帰還用のインダクタ12が設けられている。バイポーラトランジスタ11のコレクタと出力端子13との間に、出力整合回路14が設けられている。バイポーラトランジスタ11のベースに、発振開始の位相条件を満たすための位相調整用線路15の一端が接続されている。位相調整用線路15の他端には、インダクタ16と可変容量素子17が直列に接続されている。このインダクタ16と可変容量素子17はLC直列共振回路を構成する。可変容量素子17と接地点との間に直流阻止用のキャパシタ18が設けられている。
【0017】
この電圧制御発振器は、可変容量素子17の両端に印加する電圧により発振周波数を制御する。即ち、抵抗フィード型の周波数制御バイアス回路21は、端子22から入力された制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子17の一端(インダクタ16との接続点)に印加する。また、抵抗フィード型の温度補償バイアス回路23は、温度補償バイアス発生回路24で発生された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子17の他端に印加する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1に係る温度補償バイアス発生回路を示す回路図である。温度補償バイアス発生回路24は、第1電流源25と、第2電流源26と、変換用抵抗27と、端子28,29とを有する。端子28,29には、外部からそれぞれ第1固定電圧,第2固定電圧が入力される。
【0019】
第1電流源25は、抵抗31(第1抵抗)と、抵抗32(第2抵抗)と、第1バイポーラトランジスタ33とを有する。抵抗31の一端には、制御電圧が印加される。抵抗32の一端には第1固定電圧が印加され、他端は抵抗31の他端に接続されている。第1バイポーラトランジスタ33のベースは抵抗31と抵抗32の接続点に接続され、コレクタは変換用抵抗27に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加される。この第1電流源25は、制御電圧に応じた第1電流を発生させる。
【0020】
第2電流源26は、抵抗34,35(第3抵抗)と、抵抗36と、抵抗37(第4抵抗)と、第2バイポーラトランジスタ38と、トランジスタ39とを有する。抵抗34の一端に第1固定電圧が印加される。抵抗34の他端と接地点との間に抵抗36が接続されている。抵抗35の一端は抵抗34の他端に接続されている。抵抗37の一端にトランジスタ39を介して第2固定電圧が印加され、他端が抵抗35の他端に接続されている。第2バイポーラトランジスタ38のベースは抵抗35と抵抗37の接続点に接続され、コレクタは変換用抵抗27に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加される。この第2電流源26は、制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる。
【0021】
変換用抵抗27の一端には第1,第2電流源25,26が並列に接続され、他端は接地されている。変換用抵抗27は、第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換して温度補償バイアス回路23に出力する。
【0022】
上記構成において、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38のコレクタ電流が温度上昇に伴って増大するので、変換用抵抗27による電圧降下が温度上昇に伴って増大する。これにより制御電圧が図中Z点の電圧より大きい場合、可変容量素子17の両端にかかる電圧は温度上昇に伴い大きくなる。従って、温度上昇に伴う発振周波数の低下を補償することができる。
【0023】
図3は、第1,第2電流源のトランジスタのコレクタ電流の温度依存性を示す図である。ここで、制御電圧を4つの値に変化させた場合について示している。図示のように、第2電流源26の第2バイポーラトランジスタ38のコレクタ電流(第2電流)は、制御電圧とは独立に概ね温度に対して一定の傾きを持つ。一方、第1電流源25の第1バイポーラトランジスタ33のコレクタ電流(第1電流)は、制御電圧の大きさに依存し、温度上昇に対して急激に立ち上がる。
【0024】
図4は、温度補償バイアス発生回路の出力電圧の温度依存性を示す図である。上記の特性を有する第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換することにより、目標の電圧−温度カーブを達成している。
【0025】
図5は、図1の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度依存性を示す図である。図示のように、可変容量素子の両端にかかる電圧は、どの制御電圧でも温度によらずほぼ一定となっている。よって、本実施の形態により、広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、能動素子としてバイポーラトランジスタ11を用い、このバイポーラトランジスタ11のベースに一つのLC直列共振回路が接続された直列帰還型の電圧制御発振器を示した。しかし、本発明は、能動素子の種類、共振回路の種類・数・接続位置には依らない。従って、例えば能動素子として電界効果トランジスタ(FET: Field effect transistor)を用いても構わないし、複数の共振回路がバイポーラトランジスタ11のベース以外の端子に接続されていても構わない。また、本発明は並列帰還型の電圧制御発振器にも適用することができる。
【0027】
また、可変容量素子17は、例えばpn接合ダイオードやショットキー接合ダイオードをオフ状態で用いことにより実現される。本実施の形態では周波数制御バイアス回路21,温度補償バイアス回路23として抵抗フィード型を用いているが、本発明はバイアス回路の種類に依存しないため、例えば1/4波長ショートスタブ型等を用いてもよい。なお、説明を容易にするため、バイポーラトランジスタ11のバイアス回路は省略してある。本実施の形態においては、温度変化を制御するための電圧を発生させるデバイスとして第1,第2バイポーラトランジスタ33,38を用いているが、この代わりにバイポーラトランジスタ11と同様の温度特性をもつFETを用いても構わない。
【0028】
また、本実施の形態に係る電圧制御発振器は、セラミック基板等に伝送線路パターンを形成した後に各回路部品を実装することで作製できる。ただし、本実施の形態に係る電圧制御発振器を半導体基板上に一体化形成すること、即ちMMIC(Microwave Monolithic IC)化することが望ましい。その理由を以下に説明する。
【0029】
例えばバイポーラトランジスタ11のコレクタ電流の温度変動を抑制して電圧制御発振器の動作を安定させるには、ベース又はエミッタに直列に抵抗を挿入して負帰還がかかるようにすればよい。しかし、この抵抗の製造ばらつきによりコレクタ電流が変化する。これにより、図6に示すように、抵抗の抵抗値が大きくなるほど、発振周波数の温度変動が大きくなる。一方、本実施の形態に係る温度補償バイアス発生回路24の出力電圧(図2のZ点での電圧)は主に変換用抵抗27の抵抗値で決まる。これにより、図7に示すように変換用抵抗27の抵抗値が大きくなるほど、温度補償用の電圧が大きくなり、より大きな温度変動を補償できるようになる。従って、これらの抵抗が互いに打ち消しあう方向に働くため、MMIC化した場合は抵抗の製造ばらつきに対する変動が小さくなる。
【0030】
また、本実施の形態に係る電圧制御発振器を低位相雑音特性が要求されるアプリケーション(例えば車載レーダーなど)に適用した場合、温度補償バイアス発生回路24で発生する低周波雑音が可変容量素子17へ入力されることにより位相雑音特性を劣化させることが予想される。この場合は、温度補償バイアス発生回路24と温度補償バイアス回路23との間に低周波雑音を除去するための低域通過フィルタを挿入することで位相雑音特性の劣化を抑制することができる。
【0031】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では変換用抵抗27を用いていたが、本実施の形態では変換用抵抗27a〜27cとトランジスタ41a〜41cを用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0032】
変換用抵抗27a〜27cの一端にはトランジスタ41a〜41cのコレクタがそれぞれ接続され、他端は接地されている。トランジスタ41a〜41cのエミッタには第1,第2電流源25,26が接続されている。トランジスタ41a〜41cは、外部からそれぞれのベースに入力された信号に応じて、変換用抵抗27a〜27cの何れか又は複数を選択する。即ち、本実施の形態では、変換用抵抗の抵抗値は可変である。これにより、温度補償量を外部から制御することができる。
【0033】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では変換用抵抗27を用いていたが、本実施の形態では変換用抵抗27a〜27cとボンディングパッド42a〜42fを用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
変換用抵抗27a〜27cの一端にはボンディングパッド42a〜42cがそれぞれ接続され、他端は接地されている。ボンディングパッド42d〜42fには第1,第2電流源25,26が接続されている。任意のボンディングパッド42a〜42cと従来のボンディングパッド42d〜42fをワイヤ43で接続することにより、変換用抵抗の抵抗値は可変となる。従って、実施の形態2と同様の効果を奏する。
【0035】
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では変換用抵抗27を用いていたが、本実施の形態ではトリミング抵抗44を用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。トリミング抵抗44の抵抗値はトリミングにより可変である。従って、実施の形態2と同様の効果を奏する。
【0036】
実施の形態5.
図11は、本発明の実施の形態5に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。この図は、外部から固定電圧が供給される端子28,29の近傍のみを抜き出したものである。
【0037】
端子29と接地点との間に、トランジスタ45及び抵抗46〜48が直列接続されている。トランジスタ45のベースは、抵抗47と抵抗48の接続点に接続されている。端子29から入力された第2固定電圧に基づいて、抵抗46と抵抗47によりトランジスタ45のオン電圧を分圧して得た図中W点の電圧を第1固定電圧としている。
【0038】
実施の形態1では、第1,第2固定電圧は外部から入力される。このため、第1,第2固定電圧が逆方向にばらつく(例えば第1固定電圧が大きく、第2固定電圧が小さくなる等)と、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38の動作状態が設計値から大きく変化してしまう。一方、本実施の形態では、第1固定電圧は、外部から印加される第2固定電圧に基づいて内部発生されるため、第2固定電圧と同一方向にばらつく。従って、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38の動作状態の設計値からの変化は比較的小さい。
【0039】
本実施の形態では、第2固定電圧が第1固定電圧に基づいて内部発生される場合について説明したが、その逆でも同様の効果を奏する。即ち、第1,第2固定電圧の一方が他方に基づいて内部発生されるため、実施の形態1と比較して外部印加電圧のばらつきに強い。
【0040】
実施の形態6.
図12は、本発明の実施の形態6に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では第2電流源26において抵抗37とトランジスタ39を用いていたが、本実施の形態では抵抗37a〜37cとトランジスタ39a〜39c,49a〜49cを用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0041】
第2固定電圧が印加される端子29と第2バイポーラトランジスタ38のベースとの間に、トランジスタ49a,39a及び抵抗37aが直列接続されている。そして、このトランジスタ49a,39a及び抵抗37aに対して、トランジスタ49b,39b及び抵抗37bと、トランジスタ49c,39c及び抵抗37cとが並列接続されている。トランジスタ49a〜49cは、外部からそれぞれのベースに入力された信号に応じて、抵抗37a〜37cの何れか又は複数を選択する。即ち、第4抵抗の抵抗値が可変である
【0042】
第2電流源26が発生する第2電流は、制御電圧とは独立に、概ね温度に対して一定の傾きを持つ。この傾きは、実施の形態1では図2の抵抗37(第4抵抗)の抵抗値で概ね決定される。本実施の形態では、第4抵抗の抵抗値が可変であるため、第2電流の大きさを外部から制御することができ、温度補償量を外部から制御することができる。
【0043】
実施の形態7.
本実施の形態7では、図2の抵抗31,35,36として半導体抵抗を用い、その他の抵抗として金属薄膜抵抗を用いる。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0044】
図13は、電圧制御発振器の発振周波数と、トランジスタのコレクタ電流、電流増幅率及びベース抵抗との関係を示す図である。図示のようにバイポーラトランジスタ11のコレクタ電流が大きくなると発振周波数の温度変動量が小さくなる。即ち、バイポーラトランジスタ11の電流増幅率が大きくなると発振周波数の温度変動量が小さくなる。また、一般にベース層厚が厚くなるとベース抵抗が小さくなり、電流増幅率が小さくなる。従って、ベース抵抗が小さくなると発振周波数の温度変動量が大きくなる。
【0045】
一方、抵抗31,35,36の抵抗値が小さくなると、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38のベース−エミッタ間電圧が大きくなる。このため、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38のコレクタ電流は大きくなり、図5のV、Uが大きくなる。この結果、温度補償バイアス回路から出力される温度補償電圧の温度変化が大きくなるため、発振周波数の温度補償量も大きくなる。これにより、バイポーラトランジスタ11の電流増幅率の変動を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電圧制御発振器を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る温度補償バイアス発生回路を示す回路図である。
【図3】第1,第2電流源のトランジスタのコレクタ電流の温度依存性を示す図である。
【図4】温度補償バイアス発生回路の出力電圧の温度依存性と制御電圧との関係を示す図である。
【図5】図1の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度依存性を示す図である。
【図6】電圧制御発振器のコレクタ電流と発振周波数の温度変動との関係を示す模式図である。
【図7】温度補償バイアス発生回路の出力電圧の温度依存性と抵抗値との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図12】本発明の実施の形態6に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図13】電圧制御発振器の発振周波数と、トランジスタのコレクタ電流、電流増幅率及びベース抵抗との関係を示す図である。
【図14】従来の電圧制御発振器の一例を示す回路図である。
【図15】従来の電圧制御発振器の発振周波数特性を示す模式図である。
【図16】従来の電圧制御発振器の他の例を示す回路図である。
【図17】図16のX点での電圧の温度特性を示す模式図である。
【図18】図16の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度特性を示す模式図である。
【図19】図16の電圧制御発振器の発振周波数特性を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
17 可変容量素子
21 周波数制御バイアス回路
23 温度補償バイアス回路
25 第1電流源
26 第2電流源
27,27a-27c 変換用抵抗
31 抵抗(第1抵抗)
32 抵抗(第2抵抗)
33 バイポーラトランジスタ(第1トランジスタ)
34,35 抵抗(第3抵抗)
37,37a〜37c 抵抗(第4抵抗)
38 バイポーラトランジスタ(第2トランジスタ)
44 トリミング抵抗(変換用抵抗)
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にマイクロ波・ミリ波領域で動作する電圧制御発振器に関し、特に広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる電圧制御発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランジスタのベースに印加される電圧に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振器が用いられている。そして、このような電圧制御発振器において、各温度で同一の発振周波数を得るための工夫がなされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図14は、従来の電圧制御発振器の一例を示す回路図である。バイポーラトランジスタ11のエミッタと接地点との間に、直列帰還用のインダクタ12が設けられている。バイポーラトランジスタ11のコレクタと出力端子13との間に、出力整合回路14が設けられている。バイポーラトランジスタ11のベースには、発振開始の位相条件を満たすための位相調整用線路15の一端が接続されている。
【0004】
位相調整用線路15の他端と接地点との間には、インダクタ16と可変容量素子17が直列に接続されている。このインダクタ16と可変容量素子17はLC直列共振回路を構成している。周波数制御バイアス回路21は、端子22から入力された制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子17の一端に印加する。
【0005】
この電圧制御発振器において、温度に応じて可変容量素子17の一端に印加する電圧を制御することで発振周波数が制御される。これにより、温度による発振周波数の変動を補正している。
【0006】
図15は、従来の電圧制御発振器の発振周波数特性を示す模式図である。例えば、常温において可変容量素子17の両端にA点の電圧を印加する場合、高温になった場合はB点の電圧、低温になった場合はC点の電圧を印加すればよい。これにより、各温度で同一の発振周波数を得ることができる。しかし、図14の電圧制御発振器では、発振周波数の温度補正と、同一温度における周波数制御とを同じ端子に印加する電圧で行うため、電圧の制御が複雑であった。
【0007】
図16は、従来の電圧制御発振器の他の例を示す回路図である。可変容量素子17と接地点との間に直流阻止用のキャパシタ18が設けられている。そして、温度補償バイアス回路23は、温度補償バイアス発生回路24で発生された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子17の他端に印加する。その他の構成は図15の電圧制御発振器と同様である。
【0008】
温度補償バイアス発生回路24は、トランジスタ51と、抵抗52〜54と、端子55,56とを有する。トランジスタ51のコレクタには端子55から抵抗52を介して固定電圧が印加され、ベースには端子56から抵抗53を介して固定電圧が印加され、エミッタは抵抗54を介して接地されている。そして、トランジスタ51のコレクタ側から温度補償バイアス回路23に電圧が出力される。
【0009】
図17は、図16のX点の電圧の温度特性を示す模式図であり、図18は、図16の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度特性を示す模式図である。温度が高くなるとトランジスタ51のコレクタ電流が増大し、抵抗52での電圧降下量が大きくなり、X点での電圧が低下する。そして、可変容量素子17の他端の電圧がX点より大きい場合、可変容量素子17の両端にかかる電圧は高くなり、発振周波数が高くなる。従って、通常の電圧制御発振器の発振周波数は温度上昇に伴い低くなるが、図17の電圧制御発振器は温度上昇による発振周波数の低下を補償することができる。即ち、温度が変化しても同一周波数の信号を出力するように可変容量素子へ印加される電圧を自動で制御することができる。また、周波数制御用に使われる端子22と温度補償に使用される端子55,56が分離されているので、温度に応じて複雑な電圧を印加する必要が無い。従って、図16の電圧制御発振器は、図14の電圧制御発振器のような温度制御を省略又は簡易化することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2005−102148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、車載レーダーの信号周波数が76〜77GHzであるため、車載レーダー用の電圧制御発振器の出力周波数は一般的に76〜77GHzの1/8以上である。そして、システムを簡素化するために、この出力周波数はさらに高周波化される傾向にある。このような高周波で動作する電圧制御発振器では、組み立て精度が特性に及ぼす影響が大きいため、生産性の観点からモノリシック(MMIC)化することが望ましい。MMIC化する場合、可変容量素子としてはトランジスタのベース−コレクタ間又はベース−エミッタ間容量を利用した可変容量ダイオード(バラクタダイオード)が使用される。
【0012】
しかし、バラクタダイオードの容量−電圧特性は、発振素子であるトランジスタの高周波特性との整合性の観点から決定されるので、発振周波数の線形性に対して最適化することができない。この場合における図16の電圧制御発振器の発振周波数特性を図19に示す。制御電圧とは独立に一定の電圧がオフセットされる。このため、温度補償を行うことができる制御電圧が一点(図中Y点)のみとなり、その前後の電圧では温度による発振周波数の変動が残ってしまう。即ち、温度補償を行うことができる発振周波数の範囲が極めて限定されるという問題があった。
【0013】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる電圧制御発振器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る電圧制御発振器は、可変容量素子の両端に印加する電圧により発振周波数を制御する電圧制御発振器において、制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子の一端に印加する周波数制御バイアス回路と、制御電圧に応じた第1電流を発生させる第1電流源と、制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる第2電流源と、第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換する変換用抵抗と、変換用抵抗により変換された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子の他端に印加する温度補償バイアス回路とを備える。本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電圧制御発振器を示す回路図である。バイポーラトランジスタ11のエミッタと接地点との間に、直列帰還用のインダクタ12が設けられている。バイポーラトランジスタ11のコレクタと出力端子13との間に、出力整合回路14が設けられている。バイポーラトランジスタ11のベースに、発振開始の位相条件を満たすための位相調整用線路15の一端が接続されている。位相調整用線路15の他端には、インダクタ16と可変容量素子17が直列に接続されている。このインダクタ16と可変容量素子17はLC直列共振回路を構成する。可変容量素子17と接地点との間に直流阻止用のキャパシタ18が設けられている。
【0017】
この電圧制御発振器は、可変容量素子17の両端に印加する電圧により発振周波数を制御する。即ち、抵抗フィード型の周波数制御バイアス回路21は、端子22から入力された制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を可変容量素子17の一端(インダクタ16との接続点)に印加する。また、抵抗フィード型の温度補償バイアス回路23は、温度補償バイアス発生回路24で発生された電圧に応じた温度補償用の電圧を可変容量素子17の他端に印加する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1に係る温度補償バイアス発生回路を示す回路図である。温度補償バイアス発生回路24は、第1電流源25と、第2電流源26と、変換用抵抗27と、端子28,29とを有する。端子28,29には、外部からそれぞれ第1固定電圧,第2固定電圧が入力される。
【0019】
第1電流源25は、抵抗31(第1抵抗)と、抵抗32(第2抵抗)と、第1バイポーラトランジスタ33とを有する。抵抗31の一端には、制御電圧が印加される。抵抗32の一端には第1固定電圧が印加され、他端は抵抗31の他端に接続されている。第1バイポーラトランジスタ33のベースは抵抗31と抵抗32の接続点に接続され、コレクタは変換用抵抗27に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加される。この第1電流源25は、制御電圧に応じた第1電流を発生させる。
【0020】
第2電流源26は、抵抗34,35(第3抵抗)と、抵抗36と、抵抗37(第4抵抗)と、第2バイポーラトランジスタ38と、トランジスタ39とを有する。抵抗34の一端に第1固定電圧が印加される。抵抗34の他端と接地点との間に抵抗36が接続されている。抵抗35の一端は抵抗34の他端に接続されている。抵抗37の一端にトランジスタ39を介して第2固定電圧が印加され、他端が抵抗35の他端に接続されている。第2バイポーラトランジスタ38のベースは抵抗35と抵抗37の接続点に接続され、コレクタは変換用抵抗27に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加される。この第2電流源26は、制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる。
【0021】
変換用抵抗27の一端には第1,第2電流源25,26が並列に接続され、他端は接地されている。変換用抵抗27は、第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換して温度補償バイアス回路23に出力する。
【0022】
上記構成において、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38のコレクタ電流が温度上昇に伴って増大するので、変換用抵抗27による電圧降下が温度上昇に伴って増大する。これにより制御電圧が図中Z点の電圧より大きい場合、可変容量素子17の両端にかかる電圧は温度上昇に伴い大きくなる。従って、温度上昇に伴う発振周波数の低下を補償することができる。
【0023】
図3は、第1,第2電流源のトランジスタのコレクタ電流の温度依存性を示す図である。ここで、制御電圧を4つの値に変化させた場合について示している。図示のように、第2電流源26の第2バイポーラトランジスタ38のコレクタ電流(第2電流)は、制御電圧とは独立に概ね温度に対して一定の傾きを持つ。一方、第1電流源25の第1バイポーラトランジスタ33のコレクタ電流(第1電流)は、制御電圧の大きさに依存し、温度上昇に対して急激に立ち上がる。
【0024】
図4は、温度補償バイアス発生回路の出力電圧の温度依存性を示す図である。上記の特性を有する第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換することにより、目標の電圧−温度カーブを達成している。
【0025】
図5は、図1の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度依存性を示す図である。図示のように、可変容量素子の両端にかかる電圧は、どの制御電圧でも温度によらずほぼ一定となっている。よって、本実施の形態により、広い範囲の発振周波数において温度補償を行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、能動素子としてバイポーラトランジスタ11を用い、このバイポーラトランジスタ11のベースに一つのLC直列共振回路が接続された直列帰還型の電圧制御発振器を示した。しかし、本発明は、能動素子の種類、共振回路の種類・数・接続位置には依らない。従って、例えば能動素子として電界効果トランジスタ(FET: Field effect transistor)を用いても構わないし、複数の共振回路がバイポーラトランジスタ11のベース以外の端子に接続されていても構わない。また、本発明は並列帰還型の電圧制御発振器にも適用することができる。
【0027】
また、可変容量素子17は、例えばpn接合ダイオードやショットキー接合ダイオードをオフ状態で用いことにより実現される。本実施の形態では周波数制御バイアス回路21,温度補償バイアス回路23として抵抗フィード型を用いているが、本発明はバイアス回路の種類に依存しないため、例えば1/4波長ショートスタブ型等を用いてもよい。なお、説明を容易にするため、バイポーラトランジスタ11のバイアス回路は省略してある。本実施の形態においては、温度変化を制御するための電圧を発生させるデバイスとして第1,第2バイポーラトランジスタ33,38を用いているが、この代わりにバイポーラトランジスタ11と同様の温度特性をもつFETを用いても構わない。
【0028】
また、本実施の形態に係る電圧制御発振器は、セラミック基板等に伝送線路パターンを形成した後に各回路部品を実装することで作製できる。ただし、本実施の形態に係る電圧制御発振器を半導体基板上に一体化形成すること、即ちMMIC(Microwave Monolithic IC)化することが望ましい。その理由を以下に説明する。
【0029】
例えばバイポーラトランジスタ11のコレクタ電流の温度変動を抑制して電圧制御発振器の動作を安定させるには、ベース又はエミッタに直列に抵抗を挿入して負帰還がかかるようにすればよい。しかし、この抵抗の製造ばらつきによりコレクタ電流が変化する。これにより、図6に示すように、抵抗の抵抗値が大きくなるほど、発振周波数の温度変動が大きくなる。一方、本実施の形態に係る温度補償バイアス発生回路24の出力電圧(図2のZ点での電圧)は主に変換用抵抗27の抵抗値で決まる。これにより、図7に示すように変換用抵抗27の抵抗値が大きくなるほど、温度補償用の電圧が大きくなり、より大きな温度変動を補償できるようになる。従って、これらの抵抗が互いに打ち消しあう方向に働くため、MMIC化した場合は抵抗の製造ばらつきに対する変動が小さくなる。
【0030】
また、本実施の形態に係る電圧制御発振器を低位相雑音特性が要求されるアプリケーション(例えば車載レーダーなど)に適用した場合、温度補償バイアス発生回路24で発生する低周波雑音が可変容量素子17へ入力されることにより位相雑音特性を劣化させることが予想される。この場合は、温度補償バイアス発生回路24と温度補償バイアス回路23との間に低周波雑音を除去するための低域通過フィルタを挿入することで位相雑音特性の劣化を抑制することができる。
【0031】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では変換用抵抗27を用いていたが、本実施の形態では変換用抵抗27a〜27cとトランジスタ41a〜41cを用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0032】
変換用抵抗27a〜27cの一端にはトランジスタ41a〜41cのコレクタがそれぞれ接続され、他端は接地されている。トランジスタ41a〜41cのエミッタには第1,第2電流源25,26が接続されている。トランジスタ41a〜41cは、外部からそれぞれのベースに入力された信号に応じて、変換用抵抗27a〜27cの何れか又は複数を選択する。即ち、本実施の形態では、変換用抵抗の抵抗値は可変である。これにより、温度補償量を外部から制御することができる。
【0033】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では変換用抵抗27を用いていたが、本実施の形態では変換用抵抗27a〜27cとボンディングパッド42a〜42fを用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
変換用抵抗27a〜27cの一端にはボンディングパッド42a〜42cがそれぞれ接続され、他端は接地されている。ボンディングパッド42d〜42fには第1,第2電流源25,26が接続されている。任意のボンディングパッド42a〜42cと従来のボンディングパッド42d〜42fをワイヤ43で接続することにより、変換用抵抗の抵抗値は可変となる。従って、実施の形態2と同様の効果を奏する。
【0035】
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では変換用抵抗27を用いていたが、本実施の形態ではトリミング抵抗44を用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。トリミング抵抗44の抵抗値はトリミングにより可変である。従って、実施の形態2と同様の効果を奏する。
【0036】
実施の形態5.
図11は、本発明の実施の形態5に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。この図は、外部から固定電圧が供給される端子28,29の近傍のみを抜き出したものである。
【0037】
端子29と接地点との間に、トランジスタ45及び抵抗46〜48が直列接続されている。トランジスタ45のベースは、抵抗47と抵抗48の接続点に接続されている。端子29から入力された第2固定電圧に基づいて、抵抗46と抵抗47によりトランジスタ45のオン電圧を分圧して得た図中W点の電圧を第1固定電圧としている。
【0038】
実施の形態1では、第1,第2固定電圧は外部から入力される。このため、第1,第2固定電圧が逆方向にばらつく(例えば第1固定電圧が大きく、第2固定電圧が小さくなる等)と、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38の動作状態が設計値から大きく変化してしまう。一方、本実施の形態では、第1固定電圧は、外部から印加される第2固定電圧に基づいて内部発生されるため、第2固定電圧と同一方向にばらつく。従って、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38の動作状態の設計値からの変化は比較的小さい。
【0039】
本実施の形態では、第2固定電圧が第1固定電圧に基づいて内部発生される場合について説明したが、その逆でも同様の効果を奏する。即ち、第1,第2固定電圧の一方が他方に基づいて内部発生されるため、実施の形態1と比較して外部印加電圧のばらつきに強い。
【0040】
実施の形態6.
図12は、本発明の実施の形態6に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。実施の形態1では第2電流源26において抵抗37とトランジスタ39を用いていたが、本実施の形態では抵抗37a〜37cとトランジスタ39a〜39c,49a〜49cを用いている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0041】
第2固定電圧が印加される端子29と第2バイポーラトランジスタ38のベースとの間に、トランジスタ49a,39a及び抵抗37aが直列接続されている。そして、このトランジスタ49a,39a及び抵抗37aに対して、トランジスタ49b,39b及び抵抗37bと、トランジスタ49c,39c及び抵抗37cとが並列接続されている。トランジスタ49a〜49cは、外部からそれぞれのベースに入力された信号に応じて、抵抗37a〜37cの何れか又は複数を選択する。即ち、第4抵抗の抵抗値が可変である
【0042】
第2電流源26が発生する第2電流は、制御電圧とは独立に、概ね温度に対して一定の傾きを持つ。この傾きは、実施の形態1では図2の抵抗37(第4抵抗)の抵抗値で概ね決定される。本実施の形態では、第4抵抗の抵抗値が可変であるため、第2電流の大きさを外部から制御することができ、温度補償量を外部から制御することができる。
【0043】
実施の形態7.
本実施の形態7では、図2の抵抗31,35,36として半導体抵抗を用い、その他の抵抗として金属薄膜抵抗を用いる。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0044】
図13は、電圧制御発振器の発振周波数と、トランジスタのコレクタ電流、電流増幅率及びベース抵抗との関係を示す図である。図示のようにバイポーラトランジスタ11のコレクタ電流が大きくなると発振周波数の温度変動量が小さくなる。即ち、バイポーラトランジスタ11の電流増幅率が大きくなると発振周波数の温度変動量が小さくなる。また、一般にベース層厚が厚くなるとベース抵抗が小さくなり、電流増幅率が小さくなる。従って、ベース抵抗が小さくなると発振周波数の温度変動量が大きくなる。
【0045】
一方、抵抗31,35,36の抵抗値が小さくなると、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38のベース−エミッタ間電圧が大きくなる。このため、第1,第2バイポーラトランジスタ33,38のコレクタ電流は大きくなり、図5のV、Uが大きくなる。この結果、温度補償バイアス回路から出力される温度補償電圧の温度変化が大きくなるため、発振周波数の温度補償量も大きくなる。これにより、バイポーラトランジスタ11の電流増幅率の変動を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電圧制御発振器を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る温度補償バイアス発生回路を示す回路図である。
【図3】第1,第2電流源のトランジスタのコレクタ電流の温度依存性を示す図である。
【図4】温度補償バイアス発生回路の出力電圧の温度依存性と制御電圧との関係を示す図である。
【図5】図1の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度依存性を示す図である。
【図6】電圧制御発振器のコレクタ電流と発振周波数の温度変動との関係を示す模式図である。
【図7】温度補償バイアス発生回路の出力電圧の温度依存性と抵抗値との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図11】本発明の実施の形態5に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図12】本発明の実施の形態6に係る温度補償バイアス発生回路の一部を示す回路図である。
【図13】電圧制御発振器の発振周波数と、トランジスタのコレクタ電流、電流増幅率及びベース抵抗との関係を示す図である。
【図14】従来の電圧制御発振器の一例を示す回路図である。
【図15】従来の電圧制御発振器の発振周波数特性を示す模式図である。
【図16】従来の電圧制御発振器の他の例を示す回路図である。
【図17】図16のX点での電圧の温度特性を示す模式図である。
【図18】図16の可変容量素子の両端にかかる電圧の温度特性を示す模式図である。
【図19】図16の電圧制御発振器の発振周波数特性を示す模式図である。
【符号の説明】
【0047】
17 可変容量素子
21 周波数制御バイアス回路
23 温度補償バイアス回路
25 第1電流源
26 第2電流源
27,27a-27c 変換用抵抗
31 抵抗(第1抵抗)
32 抵抗(第2抵抗)
33 バイポーラトランジスタ(第1トランジスタ)
34,35 抵抗(第3抵抗)
37,37a〜37c 抵抗(第4抵抗)
38 バイポーラトランジスタ(第2トランジスタ)
44 トリミング抵抗(変換用抵抗)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量素子の両端に印加する電圧により発振周波数を制御する電圧制御発振器において、
制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を前記可変容量素子の一端に印加する周波数制御バイアス回路と、
前記制御電圧に応じた第1電流を発生させる第1電流源と、
前記制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる第2電流源と、
前記第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換する変換用抵抗と、
前記変換用抵抗により変換された電圧に応じた温度補償用の電圧を前記可変容量素子の他端に印加する温度補償バイアス回路とを備えることを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
前記変換用抵抗の抵抗値は可変であることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記第1電流源は、一端に前記制御電圧が印加された第1抵抗と、一端に第1固定電圧が印加され他端が前記第1抵抗の他端に接続された第2抵抗と、ベースが前記第1抵抗と前記第2抵抗の接続点に接続され、コレクタが前記変換用抵抗に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加された第1トランジスタとを有し、
前記第2電流源は、一端に前記第1固定電圧が印加された第3抵抗と、一端に第2固定電圧が印加され他端が前記第3抵抗の他端に接続された第4抵抗と、ベースが前記第3抵抗と前記第4抵抗の接続点に接続され、コレクタが前記変換用抵抗に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加される第2トランジスタとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記第1,第2固定電圧の一方は、他方に基づいて内部発生されることを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記第4抵抗の抵抗値は可変であることを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記第1,第3抵抗は半導体抵抗であることを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項1】
可変容量素子の両端に印加する電圧により発振周波数を制御する電圧制御発振器において、
制御電圧に応じた周波数制御用の電圧を前記可変容量素子の一端に印加する周波数制御バイアス回路と、
前記制御電圧に応じた第1電流を発生させる第1電流源と、
前記制御電圧とは独立に温度に応じた第2電流を発生させる第2電流源と、
前記第1,第2電流を足し合わせた電流を電圧に変換する変換用抵抗と、
前記変換用抵抗により変換された電圧に応じた温度補償用の電圧を前記可変容量素子の他端に印加する温度補償バイアス回路とを備えることを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
前記変換用抵抗の抵抗値は可変であることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記第1電流源は、一端に前記制御電圧が印加された第1抵抗と、一端に第1固定電圧が印加され他端が前記第1抵抗の他端に接続された第2抵抗と、ベースが前記第1抵抗と前記第2抵抗の接続点に接続され、コレクタが前記変換用抵抗に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加された第1トランジスタとを有し、
前記第2電流源は、一端に前記第1固定電圧が印加された第3抵抗と、一端に第2固定電圧が印加され他端が前記第3抵抗の他端に接続された第4抵抗と、ベースが前記第3抵抗と前記第4抵抗の接続点に接続され、コレクタが前記変換用抵抗に接続され、エミッタに第2固定電圧が印加される第2トランジスタとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記第1,第2固定電圧の一方は、他方に基づいて内部発生されることを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記第4抵抗の抵抗値は可変であることを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
前記第1,第3抵抗は半導体抵抗であることを特徴とする請求項3に記載の電圧制御発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−252710(P2008−252710A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93698(P2007−93698)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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