電圧制御発振器
【課題】5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整するコルピッツ回路を用いた電圧制御発振器において、出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えると共に、位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を提供すること。
【解決手段】可変周波数帯域内における周波数fに対応する波長をλとすると、共振部1のバリキャップダイオード13とトランジスタ21のベース端子との間に直列となるように、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路6を配置して、トランジスタ21のベース端子からバリキャップダイオード13側を見た時に、当該バリキャップダイオード13と伝送線路6とがいわば可変インダクタンス素子Lと等価になるようにする。
【解決手段】可変周波数帯域内における周波数fに対応する波長をλとすると、共振部1のバリキャップダイオード13とトランジスタ21のベース端子との間に直列となるように、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路6を配置して、トランジスタ21のベース端子からバリキャップダイオード13側を見た時に、当該バリキャップダイオード13と伝送線路6とがいわば可変インダクタンス素子Lと等価になるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルピッツ回路を用いた電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)は、例えば図32に示すように、制御電圧に応じて静電容量が変化するバリキャップダイオードVDと、インダクタンス素子L及び容量素子(コンデンサ)Cを含む共振部100と、増幅部であるトランジスタ101と、2つのコンデンサC1、C2からなる帰還部102と、を備えたコルピッツ回路を用いた構成が知られている。このVCOでは、前記制御電圧を変化させることにより、バリキャップダイオードVDを介して共振部100における発振周波数が調整される。そして、共振部100において発生した周波数信号がトランジスタ101により増幅されて、帰還部102を介して共振部100に帰還するように、これら共振部100、トランジスタ101及び帰還部102により発振ループが構成されている。図32中103は入力端子、104はバッファアンプであり、105は発振出力が取り出される端子部である。
【0003】
既述のインダクタンス素子Lや容量素子C、トランジスタ101などに対応する電子部品は、例えばアルミナ(Al2O3)などのベース基板上に搭載され、例えば当該ベース基板上あるいはベース基板の内部を引き回された導電線路を介して、図32の電気回路をなすように互いに電気的に接続されることになる。
【0004】
このようなVCOにおいて、発振周波数を例えば5GHz以上まで高くしようとすると、即ちこのようなVCOを5GHz以上もの高周波数帯域で駆動しようとすると、前記導電線路などの浮遊容量や寄生インダクタンスの影響が顕著になるので、バリキャップダイオードVDにおける容量値の可変幅は、発振周波数が例えば5GHz以下の場合よりも小さくなる。そのため、5GHz以上の周波数帯におけるVCOの発振周波数の可変幅は、比帯域(発振周波数の可変幅÷当該可変幅内における中心周波数×100)で見た時に10〜20%程度と極めて狭帯域になってしまう。
【0005】
特許文献1には、トランジスタ1のベース側に、発振周波数帯でほぼ1/4波長相当線路長を有するハイインピーダンスのマイクロストリップラインからなるバイアスライン5を接続した電圧制御発振器について記載されているが、既述の課題は検討されていない。また、特許文献2には、電圧制御発振回路について記載されているが、共振回路については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−6504(第1図等)
【特許文献2】特開2003−17934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整するコルピッツ回路を用いた電圧制御発振器において、出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えると共に、位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電圧制御発振器は、
制御電圧に応じて5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整する電圧制御発振器において、
外部から入力される周波数制御用の制御電圧に応じて静電容量が変化する可変容量素子及びインダクタンス素子を含み、前記静電容量に応じて直列共振周波数が調整される共振部と、
この共振部にベース端子が接続された増幅用のトランジスタと、
前記トランジスタのベース端子とアースとの間に互いに直列に接続されると共に、その間が前記トランジスタのエミッタ端子に接続された2つの帰還容量素子と、
前記共振部の可変帯域内における周波数に対応する波長または、前記可変帯域よりも高い周波数に対応する波長をλとすると、前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に直列に接続され、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に設けられた引き回し電極と、
前記トランジスタを駆動するバイアス電圧を供給するために、当該トランジスタのベース端子に接続されたバイアス電源部と、
前記トランジスタに供給するバイアス電圧を調整するために、前記バイアス電源部と前記トランジスタのベース端子との間に接続された第1のバイアス抵抗素子及び、前記トランジスタ及び前記可変容量素子に対して並列となるように前記引き回し電極に接続された第2のバイアス抵抗素子と、を備え、
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていても良い。
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていることに代えて、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記可変容量素子側に設けられていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整するコルピッツ回路を用いた電圧制御発振器において、可変帯域内における周波数に対応する波長または、前記可変帯域よりも高い周波数に対応する波長をλとすると、共振部の可変容量素子と増幅用のトランジスタのベース端子との間に直列となるように、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路を配置している。そのため、トランジスタのベース端子から可変容量素子側を見た時に、当該可変容量素子と伝送線路とがいわば可変インダクタンス素子と等価になり、出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えることができるので、可変幅が広く且つ位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のVCOの一例を示す電気回路図である。
【図2】前記VCOの概観を示す斜視図である。
【図3】前記VCOを示す縦断面図である。
【図4】前記VCOを示す平面図である。
【図5】前記電気回路を示す模式図である。
【図6】前記電気回路を示す模式図である。
【図7】前記電気回路の一部を示す模式図である。
【図8】シミュレーションに用いた構成を示す電気回路図である。
【図9】シミュレーションに用いた構成を示す電気回路図である。
【図10】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図11】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図12】シミュレーションに用いた構成を示す電気回路図である。
【図13】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図14】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図15】シミュレーションの結果に基づいて得られる前記一部を示す電気回路図である。
【図16】前記電気回路を示す模式図である。
【図17】前記電気回路を示す模式図である。
【図18】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図19】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図20】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図21】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図22】前記VCOの特性を説明するためのシミュレーションに用いた電気回路図である。
【図23】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図24】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図25】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図26】本発明の他の例のVCOを示す電気回路図である。
【図27】前記他の例のVCOの出力周波数の可変幅を示す特性図である。
【図28】前記他の例のVCOにの位相雑音を示す特性図である。
【図29】本発明の更に他の例のVCOを示す電気回路図である。
【図30】前記更に他の例のVCOの出力周波数の可変幅を示す特性図である。
【図31】前記更に他の例のVCOにの位相雑音を示す特性図である。
【図32】従来のVCOを示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[VCOの回路構成]
本発明の電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)の実施の形態の一例について、始めに回路構成の概略について図1を参照して説明する。このVCOは、5GHz以上の帯域この例ではオクターブの周波数(例えば5〜10GHz、6〜12GHzあるいは7〜14GHzなど)にて出力周波数を調整できるように構成されたコルピッツ回路を用いている。具体的には、このVCOは、図1に示すように、制御電圧に応じて容量値が調整される可変容量素子である第1のバリキャップダイオード13と、インダクタンス素子11及び容量素子(コンデンサ)12を含み、第1のバリキャップダイオード13の容量値により共振点が変化するように構成された共振部1と、増幅部であるトランジスタ21と、2つのコンデンサ22、23からなる帰還部2と、を備えている。そして、後で詳述するように、第1のバリキャップダイオード13とトランジスタ21のベース端子との間に金属薄膜からなる伝送線路6を配置することにより、可変容量素子(第1のバリキャップダイオード13)に代えて、いわば可変インダクタンス素子を用いたコルピッツ回路により前記出力周波数を調整している。
【0013】
次に、VCOの回路構成について詳述する。共振部1は、インダクタンス素子11とコンデンサ12との直列共振用の直列回路を備えている。インダクタンス素子11には、可変容量素子である第1のバリキャップダイオード13及び第2のバリキャップダイオード14からなる直列回路が並列に接続されていて、並列共振用の並列回路を構成している。即ちこの共振部1は、前記直列回路の直列共振周波数(共振点)と前記並列回路の並列共振周波数(反共振点)とを有しており、共振点の周波数により発振周波数が決まる。この例では、共振点が反共振点よりも大きくなるように各回路要素の定数が設定されており、このように反共振点を持たせることにより共振点付近の周波数特性が急峻になる。
【0014】
また図1中、16は制御電圧用の入力端子であり、この入力端子16に供給される制御電圧により第1のバリキャップダイオード13及び第2のバリキャップダイオード14の各々の容量値が調整され、これにより前記並列回路の反共振点が移動し、その結果共振点も移動して発振周波数が調整される。第1のバリキャップダイオード13に加えて第2のバリキャップダイオード14を用いた理由は、周波数の調整幅を大きくとるためである。図1中、17はダイオード、18、19は各々インダクタンスである。
尚、共振部1は、バリキャップダイオードとインダクタンス素子とを直列に接続して、この直列回路の直列共振周波数により発振周波数が決まる回路構成であっても良い。
【0015】
共振部1の後段側には、後述の伝送線路6を介して、帰還部2が設けられている。この帰還部2は、既述のコンデンサ12に前記伝送線路6を介してベース端子が接続されるように配置された増幅部をなすNPN型トランジスタ21を備えている。このベース端子には、伝送線路6を介してトランジスタ21を駆動するための電源部30が接続されている。そして、電源部30からトランジスタ21のベース端子に供給する分圧を調整するために、この電源部30と伝送線路6との間に直列に第1のバイアス抵抗素子31が設けられると共に、前記コンデンサ12と伝送線路6との間に並列に第2のバイアス抵抗素子32が設けられている。第2のバイアス抵抗素子32は接地されている。
【0016】
伝送線路6とトランジスタ21のベース端子との接続点と、アースとの間には、夫々帰還容量素子をなす第1のコンデンサ22及び第2のコンデンサ23の直列回路が配置されている。トランジスタ21のエミッタ端子は、インダクタンス24を介してコンデンサ22、23間の接続点に接続され、またインダクタンス25及び抵抗26を介して接地されている。これらコンデンサ22、23と、トランジスタ21とにより、帰還部2が構成されている。図1中破線で示す3は、内部にトランジスタ21が設けられたIC回路部(LSI)であり、8はこのIC回路部3に設けられた端子部である。
【0017】
IC回路部3内には、例えばトランジスタ21のコレクタ端子に互いに並列に接続された2つのバッファアンプ33、34が設けられている。一方のバッファアンプ33からは発振出力(発振周波数の信号)が端子部T3を介して取り出され、また他方のバッファアンプ34からは発振出力が分周回路35及び端子部T4を介して取り出される。トランジスタ21のコレクタ端子は、インダクタ27及び抵抗28を介して、既述の電源部30に接続されている。図1中29はコンデンサである。
【0018】
[VCOの概観]
次に、このVCOの具体的な概観や共振部1及び回路部3のレイアウトについて、図2〜図4を参照して説明する。VCOは、厚み寸法が例えば200μmのアルミナ(Al2O3)(比誘電率εr=7)などのセラミックスからなるベース基板5に設けられており、既述のダイオード13、14、17、コンデンサ12、22、23、29、インダクタンス11、18、19、24、25、27及び抵抗26、28、31、32などを夫々構成する電子部品4と、IC回路部3とがこのベース基板5上に配置されている。そして、このベース基板5上あるいはベース基板5の内部を引き回された引き回し電極10を介して、既述の図1の電気回路となるように各々の電子部品4及びIC回路部3が互いに電気的に接続されている。尚、図2では電子部品4の数量や配置については簡略化して示しており、引き回し電極10についても一部省略している。また、伝送線路6の各寸法については、図2〜図4では模式的に示している。
【0019】
続いて、本発明の伝送線路6について詳述する。この伝送線路6は、例えば銅(Cu)などの金属薄膜により構成されており、既述の図1に示したように、トランジスタ21のベース端子とコンデンサ12との間に設けられている。具体的には、伝送線路6は、図2〜図4に示すように、ベース基板5の内部領域に埋設されており、当該ベース基板5の内部において各々上下方向に伸びる例えば概略円筒状に形成された銅などからなるビアプラグ5aにより、トランジスタ21のベース端子及びコンデンサ12に一端側及び他端側が夫々電気的に接続されている。そして、この伝送線路6は、VCOの可変域におけるある周波数f例えば10GHzに対応する波長をλ(f=V/λ、V:ベース基板5内を伝搬する電磁波の速度)とすると、当該伝送線路6の線路長(長さ寸法)Dは、λ/4即ち2.83mmとなっている。この線路長Dについて具体的に計算すると、以下のように算出される。
【0020】
誘電体(ベース基板5)内を伝搬する電磁波の速度は、真空中を伝搬する電磁波の速度よりも遅くなる。即ち、真空中の光の速度を2.9979×108(m/s)とすると、誘電率εr=7.0のベース基板5を用いているので、前記速度Vは、以下のように真空中の光の速度÷(誘電率εrの平方根;√7=2.646)となる。
V=2.9979×108(÷2.646)=1.1331×108
よって、10GHzに対応するλは、1.1331×108÷(10×109)=0.01133mとなり、λ/4=0.01133÷4=0.00283m=2.83mmとなる。
また、伝送線路6は、当該伝送線路6の特性インピーダンスが10Ω以下となるように、幅寸法W及び厚み寸法tが例えば夫々621μm及び10μmに設定されている。
【0021】
このような伝送線路6の作製方法の一例について、以下に簡単に説明する。即ち、ベース基板5は、セラミックス粉末をバインダーによりシート状に成形したシート体5bと、金属粉末及びバインダーを含む配線構造(伝送線路6やビアプラグ5aの一部)を前記シート体5bに平面的に配置した配線シート体5cと、を積層した積層セラミックスとして構成されている。そして、伝送線路6及びビアプラグ5aが既述の図2〜図4のように配置されるように前記シート体5b及び配線シート体5cを上下方向に組み合わせて積層し、その後焼結することによってベース基板5が得られる。尚、図2〜図4において、トランジスタ21の端子部8のうちベース端子に接続される端子部8について、「B」の符号を付している。また、ベース基板5上にトランジスタ21及び電子部品4を配置するにあたって、これらトランジスタ21及び電子部品4を引き回し電極10に電気的に接続すると共に固定する半田ボールなどを用いているが、図2〜図4では省略している。
【0022】
[伝送線路6を考慮した電気回路]
次に、本発明のVCOにおいて既述の伝送線路6を設けた理由について、以下に詳述する。既述の図1の電気回路において、バリキャップダイオード13が可変容量素子と等価であることから、図1の回路は図5の回路に置き換えられる。また、この図5から直流電圧回路を取り除いて交流電圧回路だけを見ると、図1(図5)は図6のように表される。即ち、トランジスタ21のベース端子側から伝送線路6側を見ると、図7に示すように、伝送線路6と可変容量素子13とが直列に接続されていることになる。
【0023】
ここで、伝送線路6と可変容量素子13とが直列に接続されている構成について、特性をシミュレーションした結果について説明する。先ず、図8に示すように、ポートP側からある一つのコンデンサCを見た時の特性(S11)と、図9に示すように、10GHzの周波数fに対応する波長λの4分の1の長さの伝送線路6と前記コンデンサCとを直列に接続した構成を見た時の特性(S22)とについて、各々10GHzの電気信号が流れる場合のシミュレーションを行った。尚、コンデンサCの容量値は1pF、伝送線路6の特性インピーダンスは50Ωとした。
【0024】
その結果、コンデンサCだけを配置した時の特性(S11)は、図10及び図11に示すように、容量性を示していた。一方、伝送線路6及びコンデンサCを配置した時の特性(S22)は、コンデンサCだけを配置した時と比べて、位相が180°反転(回転)し、インダクタンス性を示していた。即ち、電気信号が共振している状態(定在波)では、元の電気信号(コンデンサCだけを配置した状態)と比べて、他の電気信号(伝送線路6及びコンデンサCを配置した状態)では当該電気信号の伝搬する伝搬路(引き回し電極10など)の長さ寸法がλ/2分だけ異なると互いに同相となり、一方前記長さ寸法がλ/4分だけ異なると互いに逆相となる。言い換えると、λ/4の長さの伝送線路6を配置することにより、当該伝送線路6を伝搬する電気信号は、コンデンサCだけを配置した場合(伝送線路6を伝搬しない場合)の逆相となる。従って、伝送線路6及びコンデンサCの直列回路は、10GHzもの高域ではインダクタンスに見えることになる。このようにコンデンサCの前段(ポートP側)に伝送線路6を直列に接続することにより、当該コンデンサCがいわばインダクタンスLに変換されると言える。
【0025】
次に、図12に示すように、前記コンデンサCが可変容量素子Cであるものとして同様にシミュレーションを行った。その結果、図13及び図14に示すように、前記可変容量素子Cの容量値が1pF、0.5pF、0.1pFのいずれの場合においても、可変容量素子Cだけを配置した時の特性(S11)に対して、この可変容量素子Cの前段に伝送線路6を直列に配置した時の特性(S22)は、位相が180°反転してインダクタンス性を示していた。従って、可変容量素子Cを用いた場合においても、可変容量素子C及び伝送線路6からなる直列回路は、10GHzではインダクタンスLに見えることになる。そして、可変容量素子Cの容量値に応じて、このインダクタンスLのインダクタンス値も変化しており、従って可変容量素子Cを用いて得られるインダクタンスLは、いわば可変インダクタンスLをなしていると言える。
【0026】
以上のシミュレーションにより、既述の図7に示す構成(可変容量素子13の前段に伝送線路6を直列に配置した回路)は、このVCOの発振帯域においては、図15に示すように、可変インダクタンス素子Lをなしている。従って、可変インダクタンス素子Lを用いると、既述の図6の電気回路は、図16のように表され、即ち図17のように可変インダクタンス素子Lを用いたコルピッツ回路と等価になる。具体的には、トランジスタ21のベース端子には、既述のコンデンサ22、23の直列回路と、可変インダクタンス素子Lと、が互いに並列に接続されている。
【0027】
[VCOの特性]
以上の結果を踏まえて、伝送線路6を配置した状態のVCOの特性について、シミュレーションを行った。この時、伝送線路6の線路長Dをλ/4に設定するにあたり、この波長λに対応する発振周波数fを20GHzに設定し、即ち線路長Dを1420μmに設定した。また、伝送線路6の特性インピーダンスを50Ωとした。
【0028】
その結果、図18に示すように、入力端子16に印加する制御電圧(0V〜10V)に応じて、6.911GHz〜12.02GHzまでの広い帯域に亘って、端子部T3から取り出される発振周波数を調整できることが分かった。従って、比帯域(発振周波数の可変幅÷当該可変幅内における中心周波数×100)で見ると、53.9%もの広い可変幅を持つVCOが得られた。一方、100kHzでの離調時における位相雑音は、図19に示すように、−97〜−99dBcとなっていた。そこで、より一層良好な(低い)位相雑音が得られるように、また更に広い可変幅となるように、伝送線路6の特性インピーダンスについて以下のように検討した。
【0029】
具体的なシミュレーションの条件としては、伝送線路6の線路長Dをλ/4に設定するにあたり、この波長λに対応する発振周波数fを10GHzに設定し、即ち線路長Dを2830μmに設定した。また、伝送線路6の特性インピーダンスを10Ωとした。その結果、出力周波数の可変幅は、図20に示すように、入力端子16に0〜10Vの制御電圧を印加した時には、5.154GHz〜12.64GHzもの極めて広い帯域となり、比帯域で見ると84.14%になっていた。また、この時の100kHz離調時の位相雑音は、−106〜−111dBcとなっていた。従って、伝送線路6の特性インピーダンスを10Ωに設定することにより、既述の図18及び図19の結果(伝送線路6の特性インピーダンス:50Ω)と比べて、出力周波数の可変幅が広く、且つ位相雑音の良好なVCOとなることが分かった。
【0030】
ここで、このように伝送線路6の特性インピーダンス50Ωよりも10Ωに低くした方がVCOの特性(出力周波数の可変幅及び位相雑音)が良好になる理由について述べる。以下に、QL=ωCR(ω:周波数、C:容量値、R:抵抗)で表される、出力周波数の曲線(ピーク位置)の急峻の度合いを示すQL値(負荷Q値)について検討した。
【0031】
先ず、トランジスタ21のベース端子から入力端子16側を見た時に、当該ベース端子に対してコンデンサ22と伝送線路6とが互いに並列に接続されているので、図22に示すように、既述の帰還部2がこれらコンデンサ22及び伝送線路6(インダクタンスL)の並列回路により構成されているものとする。このような構成では、例えば伝送線路6のインダクタンス値とコンデンサ22の容量値との積がある一定の値を取るようにすると、コンデンサ22の容量値及び伝送線路6のインダクタンス値の組み合わせは様々挙げられる。
【0032】
そして、図23は、様々な周波数において、インダクタンス値及び容量値を種々変えて、既述のQL値(負荷Q)についてシミュレーションした結果を示す。図23から、インダクタンス値に応じて、QL値(曲線の急峻の程度)が変わっていることが分かる。また、周波数ωを10GHzとすると共に、抵抗を25ΩとしてこのQL値について計算すると、以下の表及び図24の結果が得られる。
【0033】
(表)
【0034】
この表及び図24から、インダクタンス値が低い程、QL値が大きくなり、出力周波数の曲線が急峻となって良好な特性の得られることが分かる。次に、QL値と位相雑音との相関関係についてシミュレーションしたところ、図25に示す結果が得られた。図25では、QL値が高い程、位相雑音が良くなって(小さくなって)いた。そのため、位相雑音が少なく、出力周波数の曲線が急峻なVCOを得るためには、高いQL値のインダクタンス素子、即ちインダクタンス値の低いインダクタンス素子が適していることが分かった。そして、このインダクタンス素子(バリキャップダイオード13及び伝送線路6により構成されるインダクタンス素子)について、良好なインダクタンス値となるようにするためには、伝送線路6の特性インピーダンスが10Ω以下であることが分かった。
【0035】
このような回路では、外部から制御電圧が入力端子16に入力されると、この制御電圧に応じてバリキャップダイオード13(14)の容量値が変化し、共振部1及び帰還部2からなる発振ループにおいて、前記容量値に対応して例えば10GHzで発振する。そして、バリキャップダイオード13と伝送線路6とによって可変インダクタンス素子Lを構成していることから、本発明のVCOではこの可変インダクタンス素子Lにより発振周波数を調整していることになる。
【0036】
上述の実施の形態によれば、可変帯域内における周波数fに対応する波長をλとすると、共振部1のバリキャップダイオード13とトランジスタ21のベース端子との間に直列となるように、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路6を配置している。そのため、トランジスタ21のベース端子からバリキャップダイオード13側を見た時に、当該バリキャップダイオード13と伝送線路6とがいわば可変インダクタンス素子Lと等価になる。従って、10GHzもの高周波数帯域にて出力周波数を調整する場合であっても、引き回し電極10などの浮遊容量や寄生インダクタンスの影響を抑えることができる。そのため、位相雑音出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えることができるので、可変幅が広く且つ位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を得ることができる。
【0037】
ここで、可変インダクタンス素子Lを用いることによりVCOにおける出力周波数の可変幅が広くなることは既に述べたが、電子部品として可変インダクタンス素子を用いようとした場合には、当該電子部品が大型であることから、例えばベース基板5上に配置することは極めて難しい。一方、本発明では、既述のようにバリキャップダイオード13と伝送線路6とにより可変インダクタンス素子Lを構成していることから、VCOを小型化できると言える。
【0038】
[他の実施の形態]
図1の例では、伝送線路6について、第2のバイアス抵抗素子32よりもトランジスタ21のベース端子側に配置したが、伝送線路6をバリキャップダイオード13側に配置しても良い。言い換えると、第2のバイアス抵抗素子32を伝送線路6よりもトランジスタ21のベース端子側に配置しても良い。図26は、このような構成例を示しており、トランジスタ21のベース端子は、互いに直列に接続される伝送線路6と第2のバイアス抵抗素子32との間の接続点に接続されている。そして、伝送線路6は、コンデンサ12と第1のバイアス抵抗素子31との間に接続されている。図27及び図28は、この図26の構成のVCOにて得られる特性を示しており、出力周波数の可変幅は、入力端子16に0〜10Vの制御電圧を印加した時には、5.161GHz〜12.64GHzとなっていた。
【0039】
また、図29は、本発明のVCOの更に他の例を示しており、伝送線路6は、第2のバリキャップダイオード14とコンデンサ12との間に設けられている。このコンデンサ12からトランジスタ21のベース端子に向かって伸びる引き回し電極10には、バイアス抵抗素子31、32間の接続点から伸びる引き回し電極10と、コンデンサ22、23の直列回路とが接続されている。図30及び図31は、この更に他の例において得られる特性を示しており、出力周波数の可変幅は、入力端子16に0〜10Vの制御電圧を印加した時には、4.854GHz〜12.52GHzとなっていた。
【0040】
以上述べたように、伝送線路6は、トランジスタ21のベース端子とバリキャップダイオード13との間に直列に設けている構成であれば良い。
既述の例では、伝送線路6について、各寸法W、tを調整することにより特性インピーダンスを調整したが、これら各寸法W、tの一方だけを調整しても良い。更に、伝送線路6の特性インピーダンスが既述のように設定されるように、これら寸法W、tの少なくとも一方を調整すると共に、あるいはこれら寸法W、tの少なくとも一方を調整することに代えて、当該伝送線路6をアース端子(第2のバイアス抵抗素子32)に近接配置しても良いし、ベース基板5の材質(比誘電率)を調整しても良い。即ち、このように伝送線路6の特性インピーダンスを小さくするためには、当該伝送線路6内を電気信号が通りやすくすれば良い。また、伝送線路6をベース基板5内に埋設したが、ベース基板5の表面に形成しても良い。更に、ベース基板5上に伝送線路6を形成する場合には、例えばフォトリソグラフィー法を用いて当該伝送線路6を形成しても良い。
【0041】
更に、伝送線路6の線路長Dをλ/4に設定するにあたり、この波長λに対応する発振周波数fを10GHzあるいは20GHzに設定した例について説明したが、この発振周波数fとしては、VCOにおける出力周波数の可変幅内の周波数あるいはこの周波数よりも高い周波数に設定すれば良い。即ち、VCOにおいて、出力周波数の可変幅がf1〜f2(f1<f2)だとすると、伝送線路6の線路長Dのλ/4の「λ」に対応する周波数fは、周波数f1以上であれば良く、高い方が線路長Dを短くできる(VCOを小型化できる)ので好ましい。即ち、既述の図10及び図11では、特性S11及び特性S22として夫々コンデンサC(コンデンサ12)だけを配置した場合と、このコンデンサCに伝送線路6を付加した場合とにおいてシミュレーションを行ったが、図1の電気回路では、コンデンサCの容量としてコンデンサ12の容量値に加えてバリキャップダイオード13(14)の容量値も付加される。従って、既述の「λ」について、バリキャップダイオード13(14)の容量値の分だけ短くなるように、言い換えるとコンデンサC12だけを配置した場合の位相に対して伝送線路6を配置した時の位相が逆相となるように、可変帯域よりも高い周波数に対応する波長に設定しても良い。具体的には、例えば10GHz〜12GHzにて発振させる場合には、「λ」は、12GHzよりも高い周波数に対応する波長としても良い。
【0042】
ここで、この周波数fを高くしすぎると、伝送線路6の線路長Dが短くなりすぎ、当該伝送線路6を形成しにくくなることから、この周波数fは、10GHz〜20GHz程度(線路長Dで見ると1400μm〜2800μm)であることが好ましい。また、各コンデンサ12、22、23、29について、電子部品4として構成したが、例えばIDT(インターデジタルトランスデューサ)電極や2枚の電極膜を互いに対向させた構成を採っても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 共振部
2 帰還部
3 回路部
6 伝送線路
11 インダクタンス素子
12 コンデンサ
13 バリキャップダイオード
16 入力端子
21 トランジスタ
22、23 コンデンサ
31 第1のバイアス抵抗素子
32 第2のバイアス抵抗素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルピッツ回路を用いた電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)は、例えば図32に示すように、制御電圧に応じて静電容量が変化するバリキャップダイオードVDと、インダクタンス素子L及び容量素子(コンデンサ)Cを含む共振部100と、増幅部であるトランジスタ101と、2つのコンデンサC1、C2からなる帰還部102と、を備えたコルピッツ回路を用いた構成が知られている。このVCOでは、前記制御電圧を変化させることにより、バリキャップダイオードVDを介して共振部100における発振周波数が調整される。そして、共振部100において発生した周波数信号がトランジスタ101により増幅されて、帰還部102を介して共振部100に帰還するように、これら共振部100、トランジスタ101及び帰還部102により発振ループが構成されている。図32中103は入力端子、104はバッファアンプであり、105は発振出力が取り出される端子部である。
【0003】
既述のインダクタンス素子Lや容量素子C、トランジスタ101などに対応する電子部品は、例えばアルミナ(Al2O3)などのベース基板上に搭載され、例えば当該ベース基板上あるいはベース基板の内部を引き回された導電線路を介して、図32の電気回路をなすように互いに電気的に接続されることになる。
【0004】
このようなVCOにおいて、発振周波数を例えば5GHz以上まで高くしようとすると、即ちこのようなVCOを5GHz以上もの高周波数帯域で駆動しようとすると、前記導電線路などの浮遊容量や寄生インダクタンスの影響が顕著になるので、バリキャップダイオードVDにおける容量値の可変幅は、発振周波数が例えば5GHz以下の場合よりも小さくなる。そのため、5GHz以上の周波数帯におけるVCOの発振周波数の可変幅は、比帯域(発振周波数の可変幅÷当該可変幅内における中心周波数×100)で見た時に10〜20%程度と極めて狭帯域になってしまう。
【0005】
特許文献1には、トランジスタ1のベース側に、発振周波数帯でほぼ1/4波長相当線路長を有するハイインピーダンスのマイクロストリップラインからなるバイアスライン5を接続した電圧制御発振器について記載されているが、既述の課題は検討されていない。また、特許文献2には、電圧制御発振回路について記載されているが、共振回路については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−6504(第1図等)
【特許文献2】特開2003−17934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整するコルピッツ回路を用いた電圧制御発振器において、出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えると共に、位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電圧制御発振器は、
制御電圧に応じて5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整する電圧制御発振器において、
外部から入力される周波数制御用の制御電圧に応じて静電容量が変化する可変容量素子及びインダクタンス素子を含み、前記静電容量に応じて直列共振周波数が調整される共振部と、
この共振部にベース端子が接続された増幅用のトランジスタと、
前記トランジスタのベース端子とアースとの間に互いに直列に接続されると共に、その間が前記トランジスタのエミッタ端子に接続された2つの帰還容量素子と、
前記共振部の可変帯域内における周波数に対応する波長または、前記可変帯域よりも高い周波数に対応する波長をλとすると、前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に直列に接続され、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に設けられた引き回し電極と、
前記トランジスタを駆動するバイアス電圧を供給するために、当該トランジスタのベース端子に接続されたバイアス電源部と、
前記トランジスタに供給するバイアス電圧を調整するために、前記バイアス電源部と前記トランジスタのベース端子との間に接続された第1のバイアス抵抗素子及び、前記トランジスタ及び前記可変容量素子に対して並列となるように前記引き回し電極に接続された第2のバイアス抵抗素子と、を備え、
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていても良い。
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていることに代えて、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記可変容量素子側に設けられていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整するコルピッツ回路を用いた電圧制御発振器において、可変帯域内における周波数に対応する波長または、前記可変帯域よりも高い周波数に対応する波長をλとすると、共振部の可変容量素子と増幅用のトランジスタのベース端子との間に直列となるように、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路を配置している。そのため、トランジスタのベース端子から可変容量素子側を見た時に、当該可変容量素子と伝送線路とがいわば可変インダクタンス素子と等価になり、出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えることができるので、可変幅が広く且つ位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のVCOの一例を示す電気回路図である。
【図2】前記VCOの概観を示す斜視図である。
【図3】前記VCOを示す縦断面図である。
【図4】前記VCOを示す平面図である。
【図5】前記電気回路を示す模式図である。
【図6】前記電気回路を示す模式図である。
【図7】前記電気回路の一部を示す模式図である。
【図8】シミュレーションに用いた構成を示す電気回路図である。
【図9】シミュレーションに用いた構成を示す電気回路図である。
【図10】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図11】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図12】シミュレーションに用いた構成を示す電気回路図である。
【図13】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図14】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図15】シミュレーションの結果に基づいて得られる前記一部を示す電気回路図である。
【図16】前記電気回路を示す模式図である。
【図17】前記電気回路を示す模式図である。
【図18】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図19】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図20】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図21】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図22】前記VCOの特性を説明するためのシミュレーションに用いた電気回路図である。
【図23】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図24】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図25】シミュレーションの結果を示す特性図である。
【図26】本発明の他の例のVCOを示す電気回路図である。
【図27】前記他の例のVCOの出力周波数の可変幅を示す特性図である。
【図28】前記他の例のVCOにの位相雑音を示す特性図である。
【図29】本発明の更に他の例のVCOを示す電気回路図である。
【図30】前記更に他の例のVCOの出力周波数の可変幅を示す特性図である。
【図31】前記更に他の例のVCOにの位相雑音を示す特性図である。
【図32】従来のVCOを示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[VCOの回路構成]
本発明の電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)の実施の形態の一例について、始めに回路構成の概略について図1を参照して説明する。このVCOは、5GHz以上の帯域この例ではオクターブの周波数(例えば5〜10GHz、6〜12GHzあるいは7〜14GHzなど)にて出力周波数を調整できるように構成されたコルピッツ回路を用いている。具体的には、このVCOは、図1に示すように、制御電圧に応じて容量値が調整される可変容量素子である第1のバリキャップダイオード13と、インダクタンス素子11及び容量素子(コンデンサ)12を含み、第1のバリキャップダイオード13の容量値により共振点が変化するように構成された共振部1と、増幅部であるトランジスタ21と、2つのコンデンサ22、23からなる帰還部2と、を備えている。そして、後で詳述するように、第1のバリキャップダイオード13とトランジスタ21のベース端子との間に金属薄膜からなる伝送線路6を配置することにより、可変容量素子(第1のバリキャップダイオード13)に代えて、いわば可変インダクタンス素子を用いたコルピッツ回路により前記出力周波数を調整している。
【0013】
次に、VCOの回路構成について詳述する。共振部1は、インダクタンス素子11とコンデンサ12との直列共振用の直列回路を備えている。インダクタンス素子11には、可変容量素子である第1のバリキャップダイオード13及び第2のバリキャップダイオード14からなる直列回路が並列に接続されていて、並列共振用の並列回路を構成している。即ちこの共振部1は、前記直列回路の直列共振周波数(共振点)と前記並列回路の並列共振周波数(反共振点)とを有しており、共振点の周波数により発振周波数が決まる。この例では、共振点が反共振点よりも大きくなるように各回路要素の定数が設定されており、このように反共振点を持たせることにより共振点付近の周波数特性が急峻になる。
【0014】
また図1中、16は制御電圧用の入力端子であり、この入力端子16に供給される制御電圧により第1のバリキャップダイオード13及び第2のバリキャップダイオード14の各々の容量値が調整され、これにより前記並列回路の反共振点が移動し、その結果共振点も移動して発振周波数が調整される。第1のバリキャップダイオード13に加えて第2のバリキャップダイオード14を用いた理由は、周波数の調整幅を大きくとるためである。図1中、17はダイオード、18、19は各々インダクタンスである。
尚、共振部1は、バリキャップダイオードとインダクタンス素子とを直列に接続して、この直列回路の直列共振周波数により発振周波数が決まる回路構成であっても良い。
【0015】
共振部1の後段側には、後述の伝送線路6を介して、帰還部2が設けられている。この帰還部2は、既述のコンデンサ12に前記伝送線路6を介してベース端子が接続されるように配置された増幅部をなすNPN型トランジスタ21を備えている。このベース端子には、伝送線路6を介してトランジスタ21を駆動するための電源部30が接続されている。そして、電源部30からトランジスタ21のベース端子に供給する分圧を調整するために、この電源部30と伝送線路6との間に直列に第1のバイアス抵抗素子31が設けられると共に、前記コンデンサ12と伝送線路6との間に並列に第2のバイアス抵抗素子32が設けられている。第2のバイアス抵抗素子32は接地されている。
【0016】
伝送線路6とトランジスタ21のベース端子との接続点と、アースとの間には、夫々帰還容量素子をなす第1のコンデンサ22及び第2のコンデンサ23の直列回路が配置されている。トランジスタ21のエミッタ端子は、インダクタンス24を介してコンデンサ22、23間の接続点に接続され、またインダクタンス25及び抵抗26を介して接地されている。これらコンデンサ22、23と、トランジスタ21とにより、帰還部2が構成されている。図1中破線で示す3は、内部にトランジスタ21が設けられたIC回路部(LSI)であり、8はこのIC回路部3に設けられた端子部である。
【0017】
IC回路部3内には、例えばトランジスタ21のコレクタ端子に互いに並列に接続された2つのバッファアンプ33、34が設けられている。一方のバッファアンプ33からは発振出力(発振周波数の信号)が端子部T3を介して取り出され、また他方のバッファアンプ34からは発振出力が分周回路35及び端子部T4を介して取り出される。トランジスタ21のコレクタ端子は、インダクタ27及び抵抗28を介して、既述の電源部30に接続されている。図1中29はコンデンサである。
【0018】
[VCOの概観]
次に、このVCOの具体的な概観や共振部1及び回路部3のレイアウトについて、図2〜図4を参照して説明する。VCOは、厚み寸法が例えば200μmのアルミナ(Al2O3)(比誘電率εr=7)などのセラミックスからなるベース基板5に設けられており、既述のダイオード13、14、17、コンデンサ12、22、23、29、インダクタンス11、18、19、24、25、27及び抵抗26、28、31、32などを夫々構成する電子部品4と、IC回路部3とがこのベース基板5上に配置されている。そして、このベース基板5上あるいはベース基板5の内部を引き回された引き回し電極10を介して、既述の図1の電気回路となるように各々の電子部品4及びIC回路部3が互いに電気的に接続されている。尚、図2では電子部品4の数量や配置については簡略化して示しており、引き回し電極10についても一部省略している。また、伝送線路6の各寸法については、図2〜図4では模式的に示している。
【0019】
続いて、本発明の伝送線路6について詳述する。この伝送線路6は、例えば銅(Cu)などの金属薄膜により構成されており、既述の図1に示したように、トランジスタ21のベース端子とコンデンサ12との間に設けられている。具体的には、伝送線路6は、図2〜図4に示すように、ベース基板5の内部領域に埋設されており、当該ベース基板5の内部において各々上下方向に伸びる例えば概略円筒状に形成された銅などからなるビアプラグ5aにより、トランジスタ21のベース端子及びコンデンサ12に一端側及び他端側が夫々電気的に接続されている。そして、この伝送線路6は、VCOの可変域におけるある周波数f例えば10GHzに対応する波長をλ(f=V/λ、V:ベース基板5内を伝搬する電磁波の速度)とすると、当該伝送線路6の線路長(長さ寸法)Dは、λ/4即ち2.83mmとなっている。この線路長Dについて具体的に計算すると、以下のように算出される。
【0020】
誘電体(ベース基板5)内を伝搬する電磁波の速度は、真空中を伝搬する電磁波の速度よりも遅くなる。即ち、真空中の光の速度を2.9979×108(m/s)とすると、誘電率εr=7.0のベース基板5を用いているので、前記速度Vは、以下のように真空中の光の速度÷(誘電率εrの平方根;√7=2.646)となる。
V=2.9979×108(÷2.646)=1.1331×108
よって、10GHzに対応するλは、1.1331×108÷(10×109)=0.01133mとなり、λ/4=0.01133÷4=0.00283m=2.83mmとなる。
また、伝送線路6は、当該伝送線路6の特性インピーダンスが10Ω以下となるように、幅寸法W及び厚み寸法tが例えば夫々621μm及び10μmに設定されている。
【0021】
このような伝送線路6の作製方法の一例について、以下に簡単に説明する。即ち、ベース基板5は、セラミックス粉末をバインダーによりシート状に成形したシート体5bと、金属粉末及びバインダーを含む配線構造(伝送線路6やビアプラグ5aの一部)を前記シート体5bに平面的に配置した配線シート体5cと、を積層した積層セラミックスとして構成されている。そして、伝送線路6及びビアプラグ5aが既述の図2〜図4のように配置されるように前記シート体5b及び配線シート体5cを上下方向に組み合わせて積層し、その後焼結することによってベース基板5が得られる。尚、図2〜図4において、トランジスタ21の端子部8のうちベース端子に接続される端子部8について、「B」の符号を付している。また、ベース基板5上にトランジスタ21及び電子部品4を配置するにあたって、これらトランジスタ21及び電子部品4を引き回し電極10に電気的に接続すると共に固定する半田ボールなどを用いているが、図2〜図4では省略している。
【0022】
[伝送線路6を考慮した電気回路]
次に、本発明のVCOにおいて既述の伝送線路6を設けた理由について、以下に詳述する。既述の図1の電気回路において、バリキャップダイオード13が可変容量素子と等価であることから、図1の回路は図5の回路に置き換えられる。また、この図5から直流電圧回路を取り除いて交流電圧回路だけを見ると、図1(図5)は図6のように表される。即ち、トランジスタ21のベース端子側から伝送線路6側を見ると、図7に示すように、伝送線路6と可変容量素子13とが直列に接続されていることになる。
【0023】
ここで、伝送線路6と可変容量素子13とが直列に接続されている構成について、特性をシミュレーションした結果について説明する。先ず、図8に示すように、ポートP側からある一つのコンデンサCを見た時の特性(S11)と、図9に示すように、10GHzの周波数fに対応する波長λの4分の1の長さの伝送線路6と前記コンデンサCとを直列に接続した構成を見た時の特性(S22)とについて、各々10GHzの電気信号が流れる場合のシミュレーションを行った。尚、コンデンサCの容量値は1pF、伝送線路6の特性インピーダンスは50Ωとした。
【0024】
その結果、コンデンサCだけを配置した時の特性(S11)は、図10及び図11に示すように、容量性を示していた。一方、伝送線路6及びコンデンサCを配置した時の特性(S22)は、コンデンサCだけを配置した時と比べて、位相が180°反転(回転)し、インダクタンス性を示していた。即ち、電気信号が共振している状態(定在波)では、元の電気信号(コンデンサCだけを配置した状態)と比べて、他の電気信号(伝送線路6及びコンデンサCを配置した状態)では当該電気信号の伝搬する伝搬路(引き回し電極10など)の長さ寸法がλ/2分だけ異なると互いに同相となり、一方前記長さ寸法がλ/4分だけ異なると互いに逆相となる。言い換えると、λ/4の長さの伝送線路6を配置することにより、当該伝送線路6を伝搬する電気信号は、コンデンサCだけを配置した場合(伝送線路6を伝搬しない場合)の逆相となる。従って、伝送線路6及びコンデンサCの直列回路は、10GHzもの高域ではインダクタンスに見えることになる。このようにコンデンサCの前段(ポートP側)に伝送線路6を直列に接続することにより、当該コンデンサCがいわばインダクタンスLに変換されると言える。
【0025】
次に、図12に示すように、前記コンデンサCが可変容量素子Cであるものとして同様にシミュレーションを行った。その結果、図13及び図14に示すように、前記可変容量素子Cの容量値が1pF、0.5pF、0.1pFのいずれの場合においても、可変容量素子Cだけを配置した時の特性(S11)に対して、この可変容量素子Cの前段に伝送線路6を直列に配置した時の特性(S22)は、位相が180°反転してインダクタンス性を示していた。従って、可変容量素子Cを用いた場合においても、可変容量素子C及び伝送線路6からなる直列回路は、10GHzではインダクタンスLに見えることになる。そして、可変容量素子Cの容量値に応じて、このインダクタンスLのインダクタンス値も変化しており、従って可変容量素子Cを用いて得られるインダクタンスLは、いわば可変インダクタンスLをなしていると言える。
【0026】
以上のシミュレーションにより、既述の図7に示す構成(可変容量素子13の前段に伝送線路6を直列に配置した回路)は、このVCOの発振帯域においては、図15に示すように、可変インダクタンス素子Lをなしている。従って、可変インダクタンス素子Lを用いると、既述の図6の電気回路は、図16のように表され、即ち図17のように可変インダクタンス素子Lを用いたコルピッツ回路と等価になる。具体的には、トランジスタ21のベース端子には、既述のコンデンサ22、23の直列回路と、可変インダクタンス素子Lと、が互いに並列に接続されている。
【0027】
[VCOの特性]
以上の結果を踏まえて、伝送線路6を配置した状態のVCOの特性について、シミュレーションを行った。この時、伝送線路6の線路長Dをλ/4に設定するにあたり、この波長λに対応する発振周波数fを20GHzに設定し、即ち線路長Dを1420μmに設定した。また、伝送線路6の特性インピーダンスを50Ωとした。
【0028】
その結果、図18に示すように、入力端子16に印加する制御電圧(0V〜10V)に応じて、6.911GHz〜12.02GHzまでの広い帯域に亘って、端子部T3から取り出される発振周波数を調整できることが分かった。従って、比帯域(発振周波数の可変幅÷当該可変幅内における中心周波数×100)で見ると、53.9%もの広い可変幅を持つVCOが得られた。一方、100kHzでの離調時における位相雑音は、図19に示すように、−97〜−99dBcとなっていた。そこで、より一層良好な(低い)位相雑音が得られるように、また更に広い可変幅となるように、伝送線路6の特性インピーダンスについて以下のように検討した。
【0029】
具体的なシミュレーションの条件としては、伝送線路6の線路長Dをλ/4に設定するにあたり、この波長λに対応する発振周波数fを10GHzに設定し、即ち線路長Dを2830μmに設定した。また、伝送線路6の特性インピーダンスを10Ωとした。その結果、出力周波数の可変幅は、図20に示すように、入力端子16に0〜10Vの制御電圧を印加した時には、5.154GHz〜12.64GHzもの極めて広い帯域となり、比帯域で見ると84.14%になっていた。また、この時の100kHz離調時の位相雑音は、−106〜−111dBcとなっていた。従って、伝送線路6の特性インピーダンスを10Ωに設定することにより、既述の図18及び図19の結果(伝送線路6の特性インピーダンス:50Ω)と比べて、出力周波数の可変幅が広く、且つ位相雑音の良好なVCOとなることが分かった。
【0030】
ここで、このように伝送線路6の特性インピーダンス50Ωよりも10Ωに低くした方がVCOの特性(出力周波数の可変幅及び位相雑音)が良好になる理由について述べる。以下に、QL=ωCR(ω:周波数、C:容量値、R:抵抗)で表される、出力周波数の曲線(ピーク位置)の急峻の度合いを示すQL値(負荷Q値)について検討した。
【0031】
先ず、トランジスタ21のベース端子から入力端子16側を見た時に、当該ベース端子に対してコンデンサ22と伝送線路6とが互いに並列に接続されているので、図22に示すように、既述の帰還部2がこれらコンデンサ22及び伝送線路6(インダクタンスL)の並列回路により構成されているものとする。このような構成では、例えば伝送線路6のインダクタンス値とコンデンサ22の容量値との積がある一定の値を取るようにすると、コンデンサ22の容量値及び伝送線路6のインダクタンス値の組み合わせは様々挙げられる。
【0032】
そして、図23は、様々な周波数において、インダクタンス値及び容量値を種々変えて、既述のQL値(負荷Q)についてシミュレーションした結果を示す。図23から、インダクタンス値に応じて、QL値(曲線の急峻の程度)が変わっていることが分かる。また、周波数ωを10GHzとすると共に、抵抗を25ΩとしてこのQL値について計算すると、以下の表及び図24の結果が得られる。
【0033】
(表)
【0034】
この表及び図24から、インダクタンス値が低い程、QL値が大きくなり、出力周波数の曲線が急峻となって良好な特性の得られることが分かる。次に、QL値と位相雑音との相関関係についてシミュレーションしたところ、図25に示す結果が得られた。図25では、QL値が高い程、位相雑音が良くなって(小さくなって)いた。そのため、位相雑音が少なく、出力周波数の曲線が急峻なVCOを得るためには、高いQL値のインダクタンス素子、即ちインダクタンス値の低いインダクタンス素子が適していることが分かった。そして、このインダクタンス素子(バリキャップダイオード13及び伝送線路6により構成されるインダクタンス素子)について、良好なインダクタンス値となるようにするためには、伝送線路6の特性インピーダンスが10Ω以下であることが分かった。
【0035】
このような回路では、外部から制御電圧が入力端子16に入力されると、この制御電圧に応じてバリキャップダイオード13(14)の容量値が変化し、共振部1及び帰還部2からなる発振ループにおいて、前記容量値に対応して例えば10GHzで発振する。そして、バリキャップダイオード13と伝送線路6とによって可変インダクタンス素子Lを構成していることから、本発明のVCOではこの可変インダクタンス素子Lにより発振周波数を調整していることになる。
【0036】
上述の実施の形態によれば、可変帯域内における周波数fに対応する波長をλとすると、共振部1のバリキャップダイオード13とトランジスタ21のベース端子との間に直列となるように、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路6を配置している。そのため、トランジスタ21のベース端子からバリキャップダイオード13側を見た時に、当該バリキャップダイオード13と伝送線路6とがいわば可変インダクタンス素子Lと等価になる。従って、10GHzもの高周波数帯域にて出力周波数を調整する場合であっても、引き回し電極10などの浮遊容量や寄生インダクタンスの影響を抑えることができる。そのため、位相雑音出力周波数の可変幅(調整幅)の劣化(低下)を抑えることができるので、可変幅が広く且つ位相雑音の良好な特性を持つ電圧制御発振器を得ることができる。
【0037】
ここで、可変インダクタンス素子Lを用いることによりVCOにおける出力周波数の可変幅が広くなることは既に述べたが、電子部品として可変インダクタンス素子を用いようとした場合には、当該電子部品が大型であることから、例えばベース基板5上に配置することは極めて難しい。一方、本発明では、既述のようにバリキャップダイオード13と伝送線路6とにより可変インダクタンス素子Lを構成していることから、VCOを小型化できると言える。
【0038】
[他の実施の形態]
図1の例では、伝送線路6について、第2のバイアス抵抗素子32よりもトランジスタ21のベース端子側に配置したが、伝送線路6をバリキャップダイオード13側に配置しても良い。言い換えると、第2のバイアス抵抗素子32を伝送線路6よりもトランジスタ21のベース端子側に配置しても良い。図26は、このような構成例を示しており、トランジスタ21のベース端子は、互いに直列に接続される伝送線路6と第2のバイアス抵抗素子32との間の接続点に接続されている。そして、伝送線路6は、コンデンサ12と第1のバイアス抵抗素子31との間に接続されている。図27及び図28は、この図26の構成のVCOにて得られる特性を示しており、出力周波数の可変幅は、入力端子16に0〜10Vの制御電圧を印加した時には、5.161GHz〜12.64GHzとなっていた。
【0039】
また、図29は、本発明のVCOの更に他の例を示しており、伝送線路6は、第2のバリキャップダイオード14とコンデンサ12との間に設けられている。このコンデンサ12からトランジスタ21のベース端子に向かって伸びる引き回し電極10には、バイアス抵抗素子31、32間の接続点から伸びる引き回し電極10と、コンデンサ22、23の直列回路とが接続されている。図30及び図31は、この更に他の例において得られる特性を示しており、出力周波数の可変幅は、入力端子16に0〜10Vの制御電圧を印加した時には、4.854GHz〜12.52GHzとなっていた。
【0040】
以上述べたように、伝送線路6は、トランジスタ21のベース端子とバリキャップダイオード13との間に直列に設けている構成であれば良い。
既述の例では、伝送線路6について、各寸法W、tを調整することにより特性インピーダンスを調整したが、これら各寸法W、tの一方だけを調整しても良い。更に、伝送線路6の特性インピーダンスが既述のように設定されるように、これら寸法W、tの少なくとも一方を調整すると共に、あるいはこれら寸法W、tの少なくとも一方を調整することに代えて、当該伝送線路6をアース端子(第2のバイアス抵抗素子32)に近接配置しても良いし、ベース基板5の材質(比誘電率)を調整しても良い。即ち、このように伝送線路6の特性インピーダンスを小さくするためには、当該伝送線路6内を電気信号が通りやすくすれば良い。また、伝送線路6をベース基板5内に埋設したが、ベース基板5の表面に形成しても良い。更に、ベース基板5上に伝送線路6を形成する場合には、例えばフォトリソグラフィー法を用いて当該伝送線路6を形成しても良い。
【0041】
更に、伝送線路6の線路長Dをλ/4に設定するにあたり、この波長λに対応する発振周波数fを10GHzあるいは20GHzに設定した例について説明したが、この発振周波数fとしては、VCOにおける出力周波数の可変幅内の周波数あるいはこの周波数よりも高い周波数に設定すれば良い。即ち、VCOにおいて、出力周波数の可変幅がf1〜f2(f1<f2)だとすると、伝送線路6の線路長Dのλ/4の「λ」に対応する周波数fは、周波数f1以上であれば良く、高い方が線路長Dを短くできる(VCOを小型化できる)ので好ましい。即ち、既述の図10及び図11では、特性S11及び特性S22として夫々コンデンサC(コンデンサ12)だけを配置した場合と、このコンデンサCに伝送線路6を付加した場合とにおいてシミュレーションを行ったが、図1の電気回路では、コンデンサCの容量としてコンデンサ12の容量値に加えてバリキャップダイオード13(14)の容量値も付加される。従って、既述の「λ」について、バリキャップダイオード13(14)の容量値の分だけ短くなるように、言い換えるとコンデンサC12だけを配置した場合の位相に対して伝送線路6を配置した時の位相が逆相となるように、可変帯域よりも高い周波数に対応する波長に設定しても良い。具体的には、例えば10GHz〜12GHzにて発振させる場合には、「λ」は、12GHzよりも高い周波数に対応する波長としても良い。
【0042】
ここで、この周波数fを高くしすぎると、伝送線路6の線路長Dが短くなりすぎ、当該伝送線路6を形成しにくくなることから、この周波数fは、10GHz〜20GHz程度(線路長Dで見ると1400μm〜2800μm)であることが好ましい。また、各コンデンサ12、22、23、29について、電子部品4として構成したが、例えばIDT(インターデジタルトランスデューサ)電極や2枚の電極膜を互いに対向させた構成を採っても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 共振部
2 帰還部
3 回路部
6 伝送線路
11 インダクタンス素子
12 コンデンサ
13 バリキャップダイオード
16 入力端子
21 トランジスタ
22、23 コンデンサ
31 第1のバイアス抵抗素子
32 第2のバイアス抵抗素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じて5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整する電圧制御発振器において、
外部から入力される周波数制御用の制御電圧に応じて静電容量が変化する可変容量素子及びインダクタンス素子を含み、前記静電容量に応じて直列共振周波数が調整される共振部と、
この共振部にベース端子が接続された増幅用のトランジスタと、
前記トランジスタのベース端子とアースとの間に互いに直列に接続されると共に、その間が前記トランジスタのエミッタ端子に接続された2つの帰還容量素子と、
前記共振部の可変帯域内における周波数に対応する波長または、前記可変帯域よりも高い周波数に対応する波長をλとすると、前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に直列に接続され、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路と、を備えたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に設けられた引き回し電極と、
前記トランジスタを駆動するバイアス電圧を供給するために、当該トランジスタのベース端子に接続されたバイアス電源部と、
前記トランジスタに供給するバイアス電圧を調整するために、前記バイアス電源部と前記トランジスタのベース端子との間に接続された第1のバイアス抵抗素子及び、前記トランジスタ及び前記可変容量素子に対して並列となるように前記引き回し電極に接続された第2のバイアス抵抗素子と、を備え、
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていることに代えて、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記可変容量素子側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電圧制御発振器。
【請求項1】
制御電圧に応じて5GHz以上の周波数帯域で出力周波数を調整する電圧制御発振器において、
外部から入力される周波数制御用の制御電圧に応じて静電容量が変化する可変容量素子及びインダクタンス素子を含み、前記静電容量に応じて直列共振周波数が調整される共振部と、
この共振部にベース端子が接続された増幅用のトランジスタと、
前記トランジスタのベース端子とアースとの間に互いに直列に接続されると共に、その間が前記トランジスタのエミッタ端子に接続された2つの帰還容量素子と、
前記共振部の可変帯域内における周波数に対応する波長または、前記可変帯域よりも高い周波数に対応する波長をλとすると、前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に直列に接続され、線路長Dがλ/4で且つ特性インピーダンスが10Ω以下の伝送線路と、を備えたことを特徴とする電圧制御発振器。
【請求項2】
前記可変容量素子と前記トランジスタのベース端子との間に設けられた引き回し電極と、
前記トランジスタを駆動するバイアス電圧を供給するために、当該トランジスタのベース端子に接続されたバイアス電源部と、
前記トランジスタに供給するバイアス電圧を調整するために、前記バイアス電源部と前記トランジスタのベース端子との間に接続された第1のバイアス抵抗素子及び、前記トランジスタ及び前記可変容量素子に対して並列となるように前記引き回し電極に接続された第2のバイアス抵抗素子と、を備え、
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記伝送線路は、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記ベース端子側に設けられていることに代えて、前記引き回し電極に対する前記第2のバイアス抵抗の接続点よりも前記可変容量素子側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電圧制御発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2012−216967(P2012−216967A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80190(P2011−80190)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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