説明

電圧測定器

【課題】電極間に所定値以上の過電圧が印加された場合にこれを検出して警報を発し、あるいは過電圧抑制動作を行ってプローブの破壊を防止する。
【解決手段】測定対象である2点間の電圧が印加される一対の電極12,12を含むプローブ10Aと、前記電極12,12間に印加された電圧の情報を信号として伝送するケーブル20と、このケーブル20を介して伝送された信号を変換して得た電圧測定値を出力または保存する測定器本体と、を備えた電圧測定器において、前記プローブ10Aは、電極12,12間に印加された電圧が所定値以上となった場合に警報信号を発する警報手段14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに設けられた一対の電極間に印加される過電圧からプローブを保護する手段を備えた電圧測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の電圧測定器の一般的構成を示す図である。
図7において、10は通常の電圧プローブであり、このプローブ10はプローブ本体11及び一対の電極12,12を備えている。これらの電極12,12は、電圧を測定すべき2点間にそれぞれ接続されるものである。
【0003】
電極12,12に印加された測定対象の電圧は信号としてケーブル20により伝送され、測定器本体としての変換器30に入力される。変換器30は、ケーブル20から入力された信号を信号変換手段31により変換し、画面32に電圧測定値の時間波形や周波数スペクトル等を表示したり、記憶手段33に保存したり、あるいは電気信号として外部に出力するように機能する。
【0004】
次に、図8は電圧測定器のプローブの他の構成を示しており、いわゆる光電界プローブと呼ばれているものである。
図7に示した一般的な電圧測定器では、ケーブル20に電磁波が照射されたり、あるいは測定対象からの電磁ノイズがケーブル20に重畳されたりすると、測定対象の電圧情報である信号を変換器30に正確に伝送できないという問題がある。
この問題を解決する手段として、図8や特許文献1に示されるような光電界プローブ(電界センサ)を用いて電圧を測定する方法がある。
【0005】
図8の光電界プローブ40において、その内部には、後述する一対の電極45,45から電圧が印加されると、光の屈折率が変化する性質を持つ光電界素子41が設けられている。光電界素子41には、外部から光ケーブル43を介してレーザー光等の光が入射されると共に、この入射光は、光電界素子41内に配置された光変調手段としての導波路42を通るようになっている。この導波路42は2つに分岐しており、一方の導波路42aは光の屈折率が可変である部位(電極45,45間の電圧が印加される部位)を通過し、他方の導波路42bは屈折率が一定の部位(同、印加されない部位)を通過するようになっている。これらの部位の後段において、導波路42の終端には図8のように反射端44が設けられるか、または合流するようになっている。
【0006】
ここで、一方の導波路42aにおいて、電極45,45間への電圧印加によって光の屈折率が変化していた場合には、そこでの光の速度が屈折率に応じて変化するため、導波路42a,42bが合流した部位では導波路42a,42bからの位相の異なる2つの光が合成されることとなり、光の振幅が変調される。このようにして変調された光信号が、光ケーブル43を通って変換器(図示せず)に伝送される。変換器では、光の変調信号を復調することにより、電極45,45間に印加された電圧を復元する。
【0007】
以上のような構成により、プローブ40と変換器との間は電気的に絶縁されると共に、光ケーブル43に電磁波が照射されても光信号は影響を受けないため、電極45,45間に印加された電圧を高精度かつ低ノイズで測定することができる。
【0008】
【特許文献1】特開平10−54857号公報([0008]、図26等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のプローブにおいては、一対の電極間に耐電圧以上の過電圧が印加されると、プローブが破壊されたり、場合によっては測定器本体が破壊されるおそれがある。この問題は、特に高価な光電界プローブを用いる場合には深刻である。
そこで、本願の解決課題は、一対の電極間に所定値以上の過電圧が印加された場合にこれを検出して警報を発し、あるいは過電圧抑制動作を行ってプローブを保護するようにした電圧測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、測定対象である2点間の電圧が印加される一対の電極を含むプローブと、これら一対の電極間に印加された電圧の情報を信号として伝送するケーブルと、前記ケーブルを介して伝送された信号から得た電圧測定値を出力または保存する測定器本体と、を備えた電圧測定器において、
前記プローブは、前記一対の電極間に印加された電圧が所定値以上となった場合に警報信号を発する警報手段を有するものである。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した電圧測定器において、
前記警報手段は、ツェナーダイオードと抵抗と発光ダイオードとを直列接続した回路を備え、この直列接続回路の両端を前記一対の電極に接続したものである。
【0012】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極のうち一方の電極は他方の電極に対向する突起を備え、この突起と他方の電極との間に前記警報手段を電気的に接続したものである。
【0013】
請求項4に記載した発明は、請求項1または2に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極は互いに対向する突起をそれぞれ備え、これらの突起の間に前記警報手段を電気的に接続したものである。
【0014】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載した電圧測定器において、
前記プローブは、前記一対の電極間に印加された電圧によって光の屈折率が変化する光電界素子と、前記屈折率の変化によって光が変調される光変調手段と、を備え、
前記ケーブルは、前記光変調手段へ光を送出し、かつ、前記光変調手段により変調された光を伝送する光ケーブルであることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した電圧測定器において、
前記警報手段は、前記一対の電極間に印加された電圧が所定値以上となった場合に光を発し、
前記警報手段から発せられた光が前記光ケーブルに入射されるように構成されており、
前記測定器本体は、前記光ケーブルを介して伝送された前記警報手段からの光を検出する機能を有するものである。
【0016】
請求項7に記載した発明は、測定対象である2点間の電圧が印加される一対の電極を含むプローブと、これら一対の電極間に印加された電圧の情報を信号として伝送するケーブルと、前記ケーブルを介して伝送された信号から得た電圧測定値を出力または保存する測定器本体と、を備えた電圧測定器において、
前記プローブは、前記一対の電極間に印加された電圧が所定値以上となった場合にその電圧を制限する過電圧制限手段を有するものである。
【0017】
請求項8に記載した発明は、請求項7に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極のうち一方の電極は他方の電極に対向する突起を備え、この突起と他方の電極との間に前記過電圧制限手段を電気的に接続したものである。
【0018】
請求項9に記載した発明は、請求項7に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極は互いに対向する突起をそれぞれ備え、これらの突起の間に前記過電圧制限手段を電気的に接続したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プローブの一対の電極間に警報手段や過電圧抑制手段を設けることにより、前記電極間に印加された電圧が所定値以上の過電圧である場合に警報を発し、または過電圧を抑制するように作用する。このため、プローブや測定器本体が過電圧によって破壊されるのを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示す構成図であり、請求項1に係る発明に相当する。図1において、10Aはプローブ、11はプローブ本体、12,12は電圧を測定するべき2点間にそれぞれ接続される一対の電極、13は電極12,12に接続され、かつプローブ本体11の内部に設けられてレベル変換等を行う信号変換手段、20は信号変換手段13から出力される信号を測定器本体としての変換器(図示せず)に伝送するためのケーブルである。
ここで、本実施形態では、電極12,12の相互間に警報手段14が接続されている。
【0021】
警報手段14は、電極12,12間に印加された電圧が所定値を超えると、人間の間隔で感知できる警報信号として例えば光や音を直接発したり、または、前記変換器や別途設けられる警報検知手段によって検知可能な警報信号を発生するものである。このように警報信号を発生させることにより、操作者、変換器または警報検知手段は、電極12,12間に過電圧が印加されていることを認識し、印加された過電圧を解消するような各種の操作、処理を実行することが可能となる。
【0022】
警報手段14において警報信号を発生させるしきい値としての電圧の所定値は、プローブ10Aが実際に破損する電圧よりも低く、かつ測定器本来の電圧測定に支障を与えない値であれば良い。
なお、警報手段14は、常時は測定対象に影響を与えぬように、例えば極力高インピーダンスにするなどの配慮をすることが望ましい。
【0023】
次に、図2(a),(b)は、上記警報手段の具体的構成を示す図であり、請求項2に係る発明に相当する。
まず、図2(a)は、電極12,12間に印加される電圧の極性が予め決まっている場合の警報手段14Aの構成例である。
この警報手段14Aは、ツェナーダイオードZD、抵抗R及び発光ダイオードLEDが図示の方向で順次直列に接続されている。ここで、警報信号を発生させるしきい値としての所定値は、ツェナーダイオードZDの降伏電圧となる。
【0024】
上記構成において、図の上側が高電位側、下側が低電位側となるような電圧が電極12,12を介して印加された場合、この電圧がツェナーダイオードZDの降伏電圧を上回ると回路に電流が流れ、発光ダイオードLEDが点灯する。従って、この点灯を人が視認したり、あるいは光検出器を用いて検出するようにすれば、プローブ10Aの電極12,12間に過電圧が印加されていることを認識することができる。
【0025】
一方、図2(b)は、電極12,12間に印加される電圧の極性が正負両極性となり得る場合の警報手段14Bの構成例である。
この警報手段14Bでは、2つのツェナーダイオードZD,ZDを互いに逆極性にて直列接続した回路と、抵抗Rと、2つの発光ダイオードLED,LEDを互いに逆極性にて並列接続した回路とが、順次直列に接続されている。
このような構成とすれば、電極12,12を介して警報手段14Bの両端に印加される電圧の極性によらず、ツェナーダイオードZDまたはZDの降伏電圧を超える電圧が印加された場合には発光ダイオードLEDまたはLEDを点灯させることができ、前記同様に過電圧の印加を認識することができる。
【0026】
図3は、前記警報手段14(14A,14Bも含むものとする)の実装状態を説明するための図であり、請求項3,4に係る発明に相当する。
図3(a)に示するように、一方の電極12に突起12aを設けてその頂部を他方の突起12に対向、近接させ、前記頂部と他方の突起12との間に警報手段14を保持して電気的に接続するか、図3(b)に示するように、各電極12に突起12b,12cをそれぞれ設けてこれらの頂部を互いに対向、近接させ、両頂部間に警報手段14を保持して電気的に接続する。
ここで、警報手段14は、例えば半導体チップとして一体的に製作したり、微小な部品をモジュールとして一体化することもできる。
【0027】
このような実装方法によれば、警報手段14を含むプローブの製作性を高めて安価に提供することができる。また、突起12a,12b,12cを細くしてその頂部の面積を小さくすると、警報手段14との接触部における浮遊容量を小さくできるため、測定対象に与える電気的影響を小さくすることができる。
【0028】
次に、図4は本発明の第2実施形態を示す構成図であり、請求項5に係る発明に相当する。
この実施形態は、警報手段46を、図8に示した光電界プローブに適用して図4に示すプローブ40Aを構成したものである。ここで、警報手段46の構成としては、例えば図2の回路を適用可能であるが、それ以外の回路構成であっても良い。なお、警報手段46の実装方法としては、図3と同様の方法をとっても良い。
【0029】
光電界プローブは一般に高価であるため、本実施形態の如く警報手段46を設けることにより、電極45,45間への過電圧印加による破損を未然に防止可能となり、経済性を高めることができる。
【0030】
図5は、本発明の第3実施形態を示す構成図であり、請求項6に係る発明に相当する。図4と異なる点は、プローブ40B内の警報手段47が、電極45,45間に印加される電圧が所定値を超えた場合に光を発し、この光が導波路42aに伝達されるように構成されている点である。
警報手段47は、例えば図2の回路によって構成されており、この警報手段47を図3に示した方法で実装することも可能である。
【0031】
警報手段47から発した光は、導波路42a及び光ファイバー43を介して変換器(図示せず)に伝送される。変換器は、伝送されてきた光を検出して信号を生成し、この信号を用いて過電圧印加を示す情報を画面に表示したり、信号を保存する等の所定の動作を実行する。
また、上記変換器により生成した信号を、例えば測定対象である電圧発生源の動作停止信号または電圧低減信号として利用すれば、プローブ40Bが過電圧によって破損する前に電極45,45への印加電圧を解消または低減することができ、過電圧印加の検出からプローブ40Bの保護動作までを連続的に実現可能となる。
【0032】
なお、光ファイバー43には、本来の電圧測定用のレーザー光などの光が伝送されているため、この光と警報手段47からの光とを区別するために、警報手段47が発する光の波長を、電圧測定用の光の波長と異なる値に設定することが有効である。これにより、電圧測定と過電圧警報とを干渉なしでそれぞれ有効に実現することができる。
【0033】
次に、図6は本発明の第4実施形態を示す構成図であり、請求項7に係る発明に相当する。
前述した第1〜第3実施形態は、プローブの電極間に過電圧が印加された場合に警報手段を用いて警報信号を発生させるものである。しかし、警報信号を発生しなくても、所定値を超える過電圧が電極から印加された場合にその過電圧を抑制してプローブを保護する過電圧抑制手段を用いることも、プローブの破壊防止に有効である。
【0034】
本実施形態に係るプローブ10Bは上記の点に着目したものであり、図6に示すように、プローブ本体11において電極12,12間に過電圧抑制手段15が接続されている。
上記過電圧抑制手段15としては、バリスタ等からなるZラップやアレスタを用いることもできる。
なお、請求項8,9に記載したように、過電圧抑制手段15の実装方法としては、図3に示した構成を用いることができる。更に、過電圧抑制手段15は、通常の電圧プローブは勿論のこと、光電界プローブにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】第1実施形態における警報手段の回路図である。
【図3】第1実施形態における警報手段の実装状態の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す構成図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示す構成図である。
【図7】従来の電圧測定器の一般的構成を示す図である。
【図8】従来の光電界プローブの構成図である。
【符号の説明】
【0036】
10A,10B,40A,40B:プローブ
11:プローブ本体
12,45:電極
12a,12b,12c:突起
13:信号変換手段
14,14A,14B,46,47:警報手段
15:過電圧制限手段
20:ケーブル
41:光電界素子
42,42a,42b:導波路
43:光ケーブル
44:反射端
ZD,ZD:ツェナーダイオード
:抵抗
LED,LED:発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象である2点間の電圧が印加される一対の電極を含むプローブと、これら一対の電極間に印加された電圧の情報を信号として伝送するケーブルと、前記ケーブルを介して伝送された信号から得た電圧測定値を出力または保存する測定器本体と、を備えた電圧測定器において、
前記プローブは、前記一対の電極間に印加された電圧が所定値以上となった場合に警報信号を発する警報手段を有することを特徴とする電圧測定器。
【請求項2】
請求項1に記載した電圧測定器において、
前記警報手段は、ツェナーダイオードと抵抗と発光ダイオードとを直列接続した回路を備え、この直列接続回路の両端を前記一対の電極に接続したことを特徴とする電圧測定器。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極のうち一方の電極は他方の電極に対向する突起を備え、この突起と他方の電極との間に前記警報手段を電気的に接続したことを特徴とする電圧測定器。
【請求項4】
請求項1または2に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極は互いに対向する突起をそれぞれ備え、これらの突起の間に前記警報手段を電気的に接続したことを特徴とする電圧測定器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載した電圧測定器において、
前記プローブは、前記一対の電極間に印加された電圧によって光の屈折率が変化する光電界素子と、前記屈折率の変化によって光が変調される光変調手段と、を備え、
前記ケーブルは、前記光変調手段へ光を送出し、かつ、前記光変調手段により変調された光を伝送する光ケーブルであることを特徴とする電圧測定器。
【請求項6】
請求項5に記載した電圧測定器において、
前記警報手段は、前記一対の電極間に印加された電圧が所定値以上となった場合に光を発し、
前記警報手段から発せられた光が前記光ケーブルに入射されるように構成されており、
前記測定器本体は、前記光ケーブルを介して伝送された前記警報手段からの光を検出する機能を有することを特徴とする電圧測定器。
【請求項7】
測定対象である2点間の電圧が印加される一対の電極を含むプローブと、これら一対の電極間に印加された電圧の情報を信号として伝送するケーブルと、前記ケーブルを介して伝送された信号から得た電圧測定値を出力または保存する測定器本体と、を備えた電圧測定器において、
前記プローブは、前記一対の電極間に印加された電圧が所定値以上となった場合にその電圧を制限する過電圧制限手段を有することを特徴とする電圧測定器。
【請求項8】
請求項7に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極のうち一方の電極は他方の電極に対向する突起を備え、この突起と他方の電極との間に前記過電圧制限手段を電気的に接続したことを特徴とする電圧測定器。
【請求項9】
請求項7に記載した電圧測定器において、
前記一対の電極は互いに対向する突起をそれぞれ備え、これらの突起の間に前記過電圧制限手段を電気的に接続したことを特徴とする電圧測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−32662(P2008−32662A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209342(P2006−209342)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】