説明

電圧電流変換回路

【課題】差動入力部を有するとともに、出力部を構成するカレントミラー回路のミラー比を調整して入力オフセット電圧をもたせた電圧電流変換回路において、差動入力部および入力オフセット電圧の温度特性を平坦なものにする。
【解決手段】平坦な温度特性を有する第1の定電流Ib1に正の温度特性を有する第2の定電流Ib2を加えた電流をバイアス電流として、MP10及びMP11からなる差動入力部に供給することにより、差動入力部の温度特性とバイアス電流の温度特性とを相殺させて差動入力部の温度特性をゼロ(平坦なもの)にすることができる。また、電流吐き出し型の第1のカレントミラー回路の出力と、電流吸い込み型の第2のカレントミラー回路の出力との接続点を電圧電流変換回路の出力端子Out2とし、この接続点に第1の定電流Ib1に比例した電流を加える構成により、温度特性のない入力オフセット電圧も実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度特性が平坦なトランスコンダクタンス(伝達コンダクタンス)を有する電圧電流変換回路に関し、特に差動増幅型で入力オフセット電圧がある出力端子を有する電圧電流変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
差動増幅型の電流増幅回路は、電力変換装置において誤差増幅器や過電圧を検出するコンパレータに用いられることが多い。図3に、そのような従来の電力変換装置の構成例を示す。
【0003】
図3は入力電圧VDDより出力電圧Voを生成して負荷Zに供給するPWM(パルス幅変調)方式の降圧型DC/DCコンバータである。このDC/DCコンバータは電源制御IC(半導体集積回路)1,インダクタL,コンデンサCoおよび電圧設定用のフィードバック手段となる抵抗R10,R20を有している。また、電源制御IC1は、誤差増幅器ErrAMP,三角波Voscを生成する発振器OSC1,PWMコンパレータPWMC、スイッチング素子であるPチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)MP1(以下、PチャネルMOSFETをPチャネルMOSトランジスタMP1と記す),同期整流方式の転流素子としてのNチャネルMOSFET(以下、NチャネルMOSトランジスタと記す)・MN1,PWMコンパレータPWMCの出力に従いPチャネルMOSトランジスタMP1およびNチャネルMOSトランジスタMN1を駆動するドライブ回路DRV,基準電圧Vrefを生成する基準電圧源Vref,基準電圧VHiを生成する基準電圧源VHi,コンパレータ(比較器)CMPHi,過電圧保護回路2,入力端子FBおよび出力端子OUTを有している。
【0004】
誤差増幅器ErrAMPの非反転入力端子には基準電圧Vrefが入力されている。PWMコンパレータPWMCの非反転入力端子には誤差増幅器ErrAMPの出力信号Verrが入力され、反転入力端子には三角波Voscが入力される。PWMコンパレータPWMCは誤差増幅器ErrAMPの出力信号Verrと三角波Voscを比較し、三角波Voscの信号レベルの方が小さければH(ハイ)レベルの信号を、三角波Voscの信号レベルの方が大きければL(ロー)レベルの信号をPWM信号としてドライブ回路DRVに出力するものである。PチャネルMOSトランジスタMP1およびNチャネルMOSトランジスタMN1のドレインは互いに接続されるとともにインダクタLの一端に接続されている。またPチャネルMOSトランジスタMP1およびNチャネルMOSトランジスタMN1のソースはそれぞれ入力電源VDDおよび接地電位(GND)に接続されている。インダクタLの他端は出力端子OUTに接続されている。出力端子OUTとGNDの間にはコンデンサCoおよび抵抗R10,R20の直列回路が並列に接続されている。抵抗R10とR20の接続点の電位はフィードバック信号Vfbとして、入力端子FBを介して誤差増幅器ErrAMPの反転入力端子へ入力される。またDC/DCコンバータの負荷として出力端子OUTには負荷Zが接続されている。
【0005】
以下、簡単にこのDC/DCコンバータの動作を説明する。誤差増幅器ErrAMPは基準電圧Vrefとフィードバック信号Vfbの差を増幅した信号VerrをPWMコンパレータPWMCに入力する。PWMコンパレータPWMCはVerrと三角波Voscを比較することにより、周期は一定であるが1周期内のHとLの割合が誤差増幅器ErrAMPの出力により変化する方形波パルス(PWM信号)をドライブ回路DRVを介してPチャネルMOSトランジスタMP1のゲートに出力する。すなわち、(Vref−Vfb)が大きい(小さい)ほど1周期内のPチャネルMOSトランジスタMP1がオン(導通)する期間が長く(短く)なるような方形波パルスを生成し、インダクタLに蓄積するエネルギを大きく(小さく)することにより出力電圧Vを一定に保つ。NチャネルMOSトランジスタMN1のゲートにも同様に方形波パルスが出力される。基本的にはPチャネルMOSトランジスタMP1とNチャネルMOSトランジスタMN1のゲートに出力される方形波パルスは同相であるが、PチャネルMOSトランジスタMP1とNチャネルMOSトランジスタMN1が同時にオンして貫通電流が流れることがないように、ドライブ回路DRVで両方オフの期間であるデッドタイムを設ける。DC/DCコンバータの動作安定時では、誤差増幅器ErrAMPの反転入力端子と非反転入力端子が仮想短絡することにより、出力電圧VoはVref×(R10+R20)/R20となる。
【0006】
基準電圧源VHi,コンパレータCMPHi,過電圧保護回路2はDC/DCコンバータの出力ラインに異常が発生して出力電圧Voが異常に高くなったときに、DC/DCコンバータのスイッチング動作を停止させるためのものである。基準電圧VHiの値は基準電圧Vrefより高く、通常動作ではフィードバック信号Vfbがここまで上昇することのない値となっている。フィードバック信号Vfbが基準電圧Vrefより大きくなると、コンパレータCMPHiが出力をL(ロー)からH(ハイ)に反転させる。過電圧保護回路2はコンパレータCMPHiの出力がHとなると直ちに、もしくは出力Hが所定期間継続すると、スイッチング動作を停止させる信号Stopを出力する。ドライブ回路DRVは過電圧保護回路2から信号Stopが入力されると、PチャネルMOSトランジスタMP1とNチャネルMOSトランジスタMN1のゲートにHレベルの信号を与えて、PチャネルMOSトランジスタMP1をオフするとともにNチャネルMOSトランジスタMN1をオンさせて、DC/DCコンバータの主要動作であるスイッチング動作を安全サイドで停止させる。
【0007】
特許文献1には、図3に示すDC/DCコンバータの誤差増幅器ErrAMPやコンパレータCMPHiに適用用することができる電圧電流変換回路の具体的構成例が示されている。また、電圧電流変換回路は電源制御IC(半導体集積回路)1内において、比較的大きな面積を必要とするので、電力変換装置における制御回路(電源制御IC1)のコストを下げるためには電圧電流変換回路の数を減らすことが望ましい。図4に、特許文献1に示される電圧電流変換回路を基に構成した2出力の電圧電流変換回路を示す。
【0008】
図4に示す電圧電流変換回路は、高電位側電源電位VDDと低電位側電源電位GNDとの間に、バイアス電流源Ib0と,PチャネルMOSトランジスタMP01,MP02からなるカレントミラー回路と、PチャネルMOSトランジスタMP10,MP11からなる差動入力部と、NチャネルMOSトランジスタMN10,MN11からなるカレントミラー回路と、PチャネルMOSトランジスタMP12,MP13,MP14からなるカレントミラー回路と、NチャネルMOSトランジスタMN12,MN13,MN14からなるカレントミラー回路を備えた構成を有している。また、カレントミラー回路を構成する各MOSトランジスタに付した符号の下に記した1,a,b,c,dはカレントミラー回路における入力電流もしくは出力電流の比を表わすものである。これにより、例えばNチャネルMOSトランジスタMN10,MN11からなるカレントミラー回路のミラー比(出力電流/入力電流)は1であり、PチャネルMOSトランジスタMP12,MP13からなるカレントミラー回路のミラー比がa(=a/1)であることを示している。また、差動入力部を構成するPチャネルMOSトランジスタMP10とMP11は、サイズ,製造条件を同じにして特性を揃えるようにしている。
【0009】
バイアス電流源Ib0とPチャネルMOSトランジスタMP01,MP02からなるカレントミラー回路は、PチャネルMOSトランジスタMP10,MP11からなる差動入力部に一定のバイアス電流を供給する回路であり、バイアス電流は差動入力部に入力される2つの入力IN+とIN−の差に応じてNチャネルMOSトランジスタMN11,MN12とに分流される。入力IN+とIN−の電位もIN+とIN−とすると、ここではPチャネルMOSトランジスタMP01,MP02のサイズと製造条件を等しいとするので、IN+>IN−であればMN11に流れる電流>MN12に流れる電流となり、IN+<IN−であればMN11に流れる電流<MN12に流れる電流となる。NチャネルMOSトランジスタMN11に流れる電流はNチャネルMOSトランジスタMN10,MN11からなるカレントミラー回路と、PチャネルMOSトランジスタMP12,MP13,MP14からなるカレントミラー回路とでコピー・折り返され、さらにそれぞれa倍,b倍されてPチャネルMOSトランジスタMP13,MP14のドレインから吐き出すよう設定されている。すなわち、PチャネルMOSトランジスタMP12,MP13,MP14からなるカレントミラー回路は電流吐き出し型のカレントミラー回路である。また、NチャネルMOSトランジスタMN12に流れる電流はNチャネルMOSトランジスタMN12,MN13,MN14からなるカレントミラー回路によりコピー・折り返され、さらにそれぞれc倍,d倍された電流をNチャネルMOSトランジスタMN13,MN14のドレインから吸い込むよう設定されている。すなわち、NチャネルMOSトランジスタMN12,MN13,MN14からなるカレントミラー回路は電流吸い込み型のカレントミラー回路である。
【0010】
PチャネルMOSトランジスタMP13のドレインとNチャネルMOSトランジスタMN13のドレインは電圧電流変換回路の第1の出力端子Out1に接続され、PチャネルMOSトランジスタMP14のドレインとNチャネルMOSトランジスタMN14のドレインは電圧電流変換回路の第2の出力端子Out2に接続されている。出力端子Out1からはPチャネルMOSトランジスタMP13のドレイン電流とNチャネルMOSトランジスタMN13のドレイン電流の差の電流が出力され、出力端子Out2からはPチャネルMOSトランジスタMP14のドレイン電流とNチャネルMOSトランジスタMN14のドレイン電流の差の電流が出力される。出力端子Out1,Out2にMOSトランジスタのゲート以外に何も接続しなければ、出力端子Out1,Out2の電圧は、出力電流がゼロとなる点を境に、高電位側電源電位VDDまたは低電位側電源電位GNDのいずれかに振り切れるので、この電圧電流変換回路を比較回路(コンパレータ)もしくは演算増幅器として利用することができる。
【0011】
ここで、a=cとすると、出力端子Out1からの出力に関する入力オフセット電圧はゼロとなる(出力端子Out1からの出力電流がゼロとなるのは、IN+=IN−となるとき)。一方、出力端子Out2に関しては、b≠dとすれば、出力端子Out2の出力に関する入力オフセット電圧はゼロとはならない。すなわち、b>dであれば正の入力オフセット電圧を有し(オフセット電圧の絶対値をofsv(>0と)すると、出力端子Out1からの出力電流がゼロとなるのは、(IN−)=(IN+)+ofsvのとき)、b<dであれば負の入力オフセット電圧を有する(出力端子Out1からの出力電流がゼロとなるのは、(IN−)=(IN+)−ofsvのとき)ようになる。これを利用して、b>dとし、IN+に図3のフィードバック信号Vfbを入力し、IN−に基準電圧Vrefを入力すれば、図3に示す2つの電圧電流変換回路を1つにまとめることができ、制御回路のコストを下げることができる。なお、この場合、図3の基準電圧VHiはVHi=Vref+ofsvで与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−174035号公報(図7、段落〔0002〕〜〔0007〕など)
【特許文献2】特開昭62−251816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図4の電圧電流変換回路の温度特性を考えると、まず、差動入力部のトランスコンダクタンス(=(差動入力部を構成する2つトランジスタのドレイン電流の電流差)/(2つの入力電圧の電圧差))は差動入力部を構成するPチャネルMOSトランジスタMP10,MP11のトランスコンダクタンスにより決まり、MOSトランジスタのトランスコンダクタンスはバイアス電流とMOSトランジスタのサイズに依存するとともに、負の温度特性を有する。なお、温度特性の正負は、温度特性を示す特性値の絶対値が温度共に上昇する場合を正、温度が上がると特性値の絶対値が小さくなる場合を負としている。したがい、差動入力部のトランスコンダクタンスも負の温度特性を有する。また、出力端子Out2のように、カレントミラー回路のミラー比を調整して入力オフセット電圧をもたせている場合、この入力オフセット電圧も温度特性を有している。差動入力部のトランスコンダクタンスや入力オフセット電圧に温度特性がある電圧電流変換回路を図3に示すようなDC/DCコンバータに適用すると、DC/DCコンバータにおける帰還ループの安定性や過電圧保護のしきい値電圧が温度依存性を有することになってしまい、DC/DCコンバータの安定性から好ましくない。
【0014】
出力端子Out2の場合に関し、類似の回路として、吐き出し型のカレントミラー回路と吸い込み型のカレントミラー回路を組み合わせて定電流を出力する定電流回路の温度特性をゼロにする手法は知られているが(例えば、特許文献2を参照。)、出力電流値を可変にして、かつ差動入力部とともに温度特性をゼロにする手法は知られていなかった。
【0015】
この発明は、差動入力部を有するとともに、カレントミラー回路のミラー比を調整して入力オフセット電圧をもたせた電圧電流変換回路であって、差動入力部のトランスコンダクタンスの温度特性がない(温度特性がゼロである、もしくは平坦である)電圧電流変換回路を提供することを目的とする。さらに、温度特性のない入力オフセット電圧も実現することができる電圧電流変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、トランスコンダクタンスが負の温度特性を有する差動入力部に対し、平坦な温度特性を有する第1の定電流に正の温度特性を有する第2の定電流を加えた電流をバイアス電流として供給する電圧電流変換回路であることを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記差動入力部が2つの入力端子と第1の出力端子および第2の出力端子を有し、前記電圧電流変換回路は、前記第1の出力端子から出力される電流を入力とする電流吐き出し型の第1のカレントミラー回路と、前記第2の出力端子から出力される電流を入力とする電流吸い込み型の第2のカレントミラー回路を有し、前記第1及び第2のカレントミラー回路はそれぞれ第1及び第2の出力端子を有し、前記第1のカレントミラー回路の第1の出力端子と前記第2のカレントミラー回路の第1の出力端子との接続点を前記電圧電流変換回路の第1の出力端子とし、前記第1のカレントミラー回路の第2の出力端子と前記第2のカレントミラー回路の第2の出力端子との接続点を前記電圧電流変換回路の第2の出力端子とし、前記第2の接続点に前記第1の定電流に比例した電流を出力する第3のカレントミラー回路の出力を接続することを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記第1のカレントミラー回路における前記第1及び第2の出力端子の入力端子に対するミラー比をそれぞれa,bとし、前記第2のカレントミラー回路における前記第1及び第2の出力端子の入力端子に対するミラー比をそれぞれc,dとするとき、a=cとするとともに、b=dとすることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に係る発明において、前記差動入力部、前記第1のカレントミラー回路、前記第2のカレントミラー回路および前記第3のカレントミラー回路がMOSFETにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明の電圧電流変換回路は、平坦な温度特性を有する第1の定電流に正の温度特性を有する第2の定電流を加えた電流をバイアス電流として差動入力部に供給することにより、差動入力部の温度特性とバイアス電流の温度特性とを相殺させて差動入力部のトランスコンダクタンスの温度特性をゼロ(平坦なもの)にすることができる。また、電流吐き出し型の第1のカレントミラー回路の出力と、電流吸い込み型の第2のカレントミラー回路の出力との接続点を電圧電流変換回路の出力端子とし、この接続点に第1の定電流に比例した電流を加えることにより、温度特性のない入力オフセット電圧も実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電圧電流変換回路の構成例を示す図である。
【図2】図1の電圧電流変換回路に用いられる電流源回路の構成例を示す図である。
【図3】降圧型DC/DCコンバータの構成例を示す図である。
【図4】従来の電圧電流変換回路の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明に係る電圧電流変換回路の構成例を示す。図4と同じ部位には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。図1に示す電圧電流変換回路はIb1とIb2の2つのバイアス電流源を用意する。Ib1は平坦な温度特性を有するバイアス電流源であり、Ib2は正の温度特性を有するバイアス電流源である。ここで、バイアス電流源IbIに関する「平坦な」とは、温度特性が完全にゼロのものだけを意味せず、電圧電流変換回路の変化が使用される温度範囲で無視できる程度のものも含む。また、バイアス電流源回路の構成例については後述する。
【0023】
バイアス電流源IbIからの電流Ib1はPチャネルMOSトランジスタMP03,MP04,MP05からなるカレントミラー回路によりコピーされて、差動入力部と出力端子Out2に供給される。また、バイアス電流源Ib2からの電流Ib2はPチャネルMOSトランジスタMP06,MP07からなるカレントミラー回路によりコピーされて、差動入力部に供給される。負の温度特性をもつ差動入力部に対し、正の温度特性をもつバイアス電流を供給することにより、差動入力部のトランスコンダクタンスの温度特性を平坦なものにすることができる。これは、差動入力部を構成するPチャネルMOSトランジスタMP10,MP11のサイズと、カレントミラー回路MP06,MP07のミラー比、およびカレントミラー回路MP03,MP05のミラー比を適切に調整することで実現できる。
【0024】
具体的には、所望のトランスコンダクタンスに対して、常温付近でのバイアス電流値と、差動入力部を構成するPチャネルMOSトランジスタMP10,MP11のサイズを選定した後、トランスコンダクタンスが負の温度特性を有していれば、MP03に対するMP05の比を減少させ、MP06に対するMP07の比を増加させることで、トランスコンダクタンスの温度係数が0になるように調整することで実現できる。トランスコンダクタンスが正の温度特性を有していれば、逆の調整を行えばよい。ある製造プロセスでの一例を挙げると、MP10とMP11:W/L=48μm/3μm, Ib1:2μA(温度係数0),Ib2:2μA(25℃における値:Ib2の電流値は絶対温度に比例する。),MP03:MP05=2:1, MP06:MP07=2:5である。
【0025】
差動入力段の第1の出力端子であるPチャネルMOSトランジスタMP10のドレインから出力される電流はNチャネルMOSトランジスタMN10,MN11からなるカレントミラー回路でコピーされた後、さらにPチャネルMOSトランジスタMP12,MP13,MP14からなる第1のカレントミラー回路によってコピーされて、第1の出力端子Out1および第2の出力端子Out2に供給される。ここで第1のカレントミラー回路は、差動入力段の第1の出力端子から出力される電流に比例した電流を吐き出す、電流吐き出し型のカレントミラー回路である。
【0026】
差動入力段の第2の出力端子であるPチャネルMOSトランジスタMP11のドレインから出力される電流はNチャネルMOSトランジスタMN12,MN13,MN14からなる第2のカレントミラー回路によってコピーされて、第1の出力端子Out1および第2の出力端子Out2に供給される。ここで第2のカレントミラー回路は、差動入力段の第2の出力端子から出力される電流に比例した電流を吸い込む、電流吸い込み型のカレントミラー回路である。
【0027】
本実施の形態においては、a=c,b=dとする。こうすることにより、出力端子Out1に関する入力オフセット電圧はゼロとなる。出力端子Out2に関しても、このままでは入力オフセット電圧はゼロとなってしまうが、さらにPチャネルMOSトランジスタMP03,MP04からなる第3のカレントミラー回路により電流Ib1に比例した電流を出力端子Out2に加えることにより、正の入力オフセット電圧を実現することができる。上述のように差動入力部のトランスコンダクタンスの温度特性が平坦になるよう構成し、温度特性が(ほぼ)平坦な電流Ib1に比例した電流に基づき入力オフセット電圧を生成させているので、入力オフセット電圧も(ほぼ)平坦とすることができる。
【0028】
また、PチャネルMOSトランジスタMP04からの電流を、さらにNチャネルMOSトランジスタからなるカレントミラー回路でコピーして、電流Ib1に比例した電流を出力端子Out2から吸い込むよう構成すれば、負の入力オフセット電圧を実現することができる。
【0029】
図2に(ほぼ)平坦な温度特性を有する電流Ib1と正の温度特性を有する電流Ib2を生成する電流源回路の構成例を示す。図1に示す電流源回路はバンドギャップ回路を応用したものであって、PチャネルMOSトランジスタMP20〜MP24,NチャネルMOSトランジスタMN20〜MN25、演算増幅器AMP1,AMP2、抵抗R1〜R4、ダイオードD1,D2を有している。説明を簡単にするために、抵抗R1〜R4には温度特性が平坦なものが適用されているとする。ダイオードD2はダイオードD1と同じサイズのダイオードを複数並列に接続された構成となっていて、ダイオードD1,D2に同じ電流を流すときには、ダイオードD2に印加される電圧がダイオードD1に印加される電圧より低くなるようになっている。抵抗R1,R2の一端は結線されていて互いに同電位(Vr)となっている。また、抵抗R1,R2の他端同士も演算増幅器AMP1により仮想短絡されることにより同電位になっている(Vx=Vy)。したがい、抵抗R1,R2には等しい電圧が印加されて、抵抗R1の抵抗値R1と抵抗R2の抵抗値R2を等しくしておけば、2つの抵抗R1,R2には等しい電流が流れる。しかし、上述のようにダイオードD1,D2とでは印加電圧が異なるため、この電圧差が抵抗R3(抵抗値もR3とする)に印加される。この電圧差は概ね絶対温度に比例するので、抵抗R1,R2,R3には絶対温度に比例した電流が流れる。抵抗R1に流れる電流がPチャネルMOSトランジスタMP20,21からなるカレントミラー回路およびNチャネルMOSトランジスタMN21,MN22からなるカレントミラー回路によりコピーされて、正の温度特性を有する電流Ib2としてNチャネルMOSトランジスタMN22から供給される。
【0030】
一方、ダイオードD1,D2に印加される電圧の絶対値は負の温度特性を有していて、抵抗値R3とR2(=R1)の比を適切に設定することにより、電位Vrの温度特性を平坦にすることができる。演算増幅器AMP2により仮想短絡されて電位Vtは電位Vrに等しくなり、この電位Vtが抵抗R4に印加されるので、抵抗R4には平坦な温度特性を有する電流が流れる。この電流は、PチャネルMOSトランジスタMP23,MP24からなるカレントミラー回路およびNチャネルMOSトランジスタMN24,MN25によりコピーされて、平坦な温度特性を有する電流Ib1としてNチャネルMOSトランジスタMN25から供給される。
【符号の説明】
【0031】
1 電源制御IC(半導体集積回路)
2 過電圧保護回路
AMP1,AMP2 演算増幅器
CMPHi コンパレータ
Co コンデンサ
D1,D2 ダイオード
DRV ドライブ回路
ErrAMP 誤差増幅器
Ib0,Ib1,Ib2 バイアス電流源(定電流源)もしくはその電流もしくはその電流値
L インダクタ
MP1,MP01〜MP07,MP10〜MP14,MP20〜MP24 PチャネルMOSトランジスタ
MN1,MN10〜MN14,MN20〜MN25 NチャネルMOSトランジスタ
OSC1 発振器
PWMC PWMコンパレータ
R1〜R4,R10,R20 抵抗もしくはその抵抗値
Vref,VHi 基準電圧源もしくはその基準電圧値
Z 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスコンダクタンスが負の温度特性を有する差動入力部に対し、平坦な温度特性を有する第1の定電流に正の温度特性を有する第2の定電流を加えた電流をバイアス電流として供給することを特徴とする電圧電流変換回路。
【請求項2】
前記差動入力部が2つの入力端子と第1の出力端子および第2の出力端子を有し、
前記電圧電流変換回路は、前記第1の出力端子から出力される電流を入力とする電流吐き出し型の第1のカレントミラー回路と、前記第2の出力端子から出される電流を入力とする電流吸い込み型の第2のカレントミラー回路を有し、
前記第1及び第2のカレントミラー回路はそれぞれ第1及び第2の出力端子を有し、前記第1のカレントミラー回路の第1の出力端子と前記第2のカレントミラー回路の第1の出力端子との接続点を前記電圧電流変換回路の第1の出力端子とし、前記第1のカレントミラー回路の第2の出力端子と前記第2のカレントミラー回路の第2の出力端子との接続点を前記電圧電流変換回路の第2の出力端子とし、
前記第2の接続点に前記第1の定電流に比例した電流を出力する第3のカレントミラー回路の出力を接続することを特徴とする請求項1に記載の電圧電流変換回路。
【請求項3】
前記第1のカレントミラー回路における前記第1及び第2の出力端子の入力端子に対するミラー比をそれぞれa,bとし、前記第2のカレントミラー回路における前記第1及び第2の出力端子の入力端子に対するミラー比をそれぞれc,dとするとき、a=cとするとともに、b=dとすることを特徴とする請求項2に記載の電圧電流変換回路。
【請求項4】
前記差動入力部、前記第1のカレントミラー回路、前記第2のカレントミラー回路および前記第3のカレントミラー回路がMOSFETにより構成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電圧電流変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−239086(P2012−239086A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107745(P2011−107745)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】