説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、中継機を利用した電子キー及び車両間の不正な通信を抑制することで、よりセキュリティ性を向上させることにある。
【解決手段】通信毎に異なる送信タイミングで要求信号及び応答信号が送受信される。従って、要求信号及び応答信号の送信タイミングが解析されても、次の通信においては、解析された送信タイミングと異なるタイミングで要求信号及び応答信号が送受信される。上記中継機101は、解析された送信タイミングに則して各アンテナ102…をオン、オフ切り替えるため、実際の要求信号及び応答信号の送信タイミングに合致しないタイミングで各アンテナ102…をオン、オフ切り替えることになる。よって、要求信号及び応答信号は、中継機101によって完全な信号としてリレーされず、上記中継機101を介した車両2及び電子キー10間の不正な通信を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信にて車両ドアの解錠、エンジン始動を可能とする電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムでは、電子キー及び車両間でのIDコードを含む各種信号の送受信を通じてIDコードの照合が成立したときには車両ドア錠の施解錠、エンジン始動等が可能となる。例えば特許文献1に示される電子キーシステムにおいては、車両は、車内に通信エリアを形成する車内アンテナと、車両周辺に通信エリアを形成する車外アンテナと、を備える。車外通信エリアに存在する電子キーと車両との通信を通じてIDコードの照合(車外照合)が成立したときには、ドアロックの施錠状態を切り替える制御がされる。一方、車内通信エリアに存在する電子キーと車両との通信を通じてIDコードの照合(車内照合)が成立したときには、エンジンの始動が許可される。
【0003】
ところで、近年の通信技術の発達により、車両から遠く離れた位置に存在するユーザが携帯する電子キーと車両との間で不正に通信がされるおそれがある。すなわち、例えば、電子キー及び車両間に電波をリレーする中継機を設けて、電子キーが車両から遠方に存在する場合であっても、電子キー及び車両間の通信を成立させる手口が想定されている。
【0004】
このような中継機を利用した不正な通信に対しては、例えば、特許文献2に示されるように、従来から種々の対策が講じられている。
また、上記のような問題に対して、車両及び電子キー間において、同一周波数帯の信号を送受信することで、中継機による不正な電波リレーを抑制できることが知られている。具体的には、図4に示すように、中継機101は、車両121からの要求信号を受信するべく車両121側に設けられる受信アンテナ102と、その受信した要求信号を電子キー122付近に送信するべく電子キー122側に設けられる送信アンテナ103とを備える。受信アンテナ102及び送信アンテナ103は接続ライン105を介して接続されている。
【0005】
また、中継機101は、電子キー122からの応答信号を受信するべく電子キー122側に設けられる受信アンテナ108と、その受信した応答信号を車両121側に送信するべく車両121側に設けられる送信アンテナ107とを備える。受信アンテナ108及び送信アンテナ107は接続ライン106を介して接続されている。
【0006】
両接続ライン105,106には増幅回路104,109が設けられている。増幅回路104,109は、受信アンテナ102,108により受信される信号を増幅して送信アンテナ103,107側に送信する。
【0007】
上記構成によれば、中継機101は、受信アンテナ102を介して受信した要求信号を送信アンテナ103から電子キー122に送信する。また、中継機101は、当該要求信号に応じた電子キー122からの応答信号を、受信アンテナ108を介して受信し、送信アンテナ107から車両121に送信する。従って、電子キー122が車両121から離れた位置において、中継機101により車両121及び電子キー122間の通信が可能となる。
【0008】
なお、各接続ライン105,106上に一対の送受信アンテナを設けて、無線にて要求信号及び応答信号を送受信することも可能である。これにより、車両121側に設けられる受信アンテナ102及び送信アンテナ107と、電子キー122側に設けられる送信アンテナ103及び受信アンテナ108と、を離れた位置に設置して、無線にて電波リレーが可能となる。
【0009】
上記構成の中継機101において、車両121及び電子キー122間で同一周波数帯(UHF帯)の要求信号及び応答信号を送受信する場合には、以下のような現象が発生する。すなわち、車両121からの要求信号は、受信アンテナ102及び増幅回路104を介して送信アンテナ103から電子キー122に送信される。電子キー122は、送信アンテナ103からの要求信号に応じて応答信号を返信する。この応答信号を受信アンテナ108は受信する。このとき、受信アンテナ108は応答信号のみならず、送信アンテナ103からの要求信号も受信する。この受信アンテナ108が受信した要求信号は、接続ライン106を介して送信アンテナ107から妨害電波として送信される。車両121からの要求信号は妨害電波と混信し、送信アンテナ103から混信した要求信号が電子キー122に送信される。電子キー122は混信した要求信号は正規の要求信号でないとして、応答信号を返信しない。また、たとえ、電子キー122から応答信号が返信されたとしても、応答信号にとって送信アンテナ103から発される混信した要求信号が妨害電波となる。このように、受信アンテナ102,108が想定しない要求信号又は応答信号を受信して循環することで、妨害電波が発生して、車両121及び電子キー122間の不正な通信の成立が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−170162号公報
【特許文献2】特開2006−118886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記同一周波数帯の信号を利用した電子キーシステムにおいて、要求信号及び応答信号の送信タイミングが解析された場合には、中継機101による車両121及び電子キー122間の不正な通信が可能となる。詳しくは、図3に示される中継機101においては、各接続ライン105,106にスイッチング素子111,112が設けられている。スイッチング素子111,112には制御回路115が接続され、制御回路115からの指令信号により、スイッチング素子111,112は接続ライン105,106を非通電状態から通電状態に切り替える。すなわち、制御回路115は、解析された要求信号及び要求信号の送信タイミングに合わせて、スイッチング素子111,112を介して接続ライン105,106の通電状態を切り替える。
【0012】
具体的には、制御回路115は、車両121からの要求信号が送信されるタイミングにおいて、スイッチング素子111に指令信号を出力して、接続ライン105を通電状態とする。これにより、要求信号が受信アンテナ102を介して受信されて、送信アンテナ103から送信される。このとき接続ライン106は非通電状態であるため、送信アンテナ103からの要求信号が受信アンテナ108を介して受信されることはなく、ひいては、送信アンテナ107から妨害電波が送信されることが防止される。要求信号の送信が停止されるタイミングで、制御回路115はスイッチング素子111への指令信号の出力を停止する。
【0013】
次に、制御回路115は、電子キー122からの応答信号が送信されるタイミングにおいて、スイッチング素子112に指令信号を出力して、接続ライン106を通電状態とする。これにより、応答信号が受信アンテナ108を介して受信されて、送信アンテナ107から車両121側へ送信される。このとき、車両121から要求信号は送信されていないため、接続ライン105は非通電状態である。よって、送信アンテナ107からの応答信号が受信アンテナ102を介して受信されることはなく、ひいては、送信アンテナ103から妨害電波が送信されることが防止される。
【0014】
このように、解析された送信タイミングに応じてスイッチング素子111,112を非通電状態と通電状態との間で切り替えることで、前述した信号の循環が抑制され、上記妨害電波も発生しない。従って、車両121及び電子キー122間において、同一周波数帯の信号を使用した通信が行われる場合であれ、不正に通信がされるおそれがある。
【0015】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中継機を利用した電子キー及び車両間の不正な通信を抑制することで、よりセキュリティ性を向上させた電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯されて車両側からの要求信号に応じて自身の識別コードを含む同要求信号と同一周波数帯の応答信号を送信する電子キーと、前記車両に搭載されて要求信号を車両の室内外に送信するとともに、前記電子キー側から返信される応答信号の識別コードの照合の成否を通じて車両ドアの解錠及び車両エンジンの始動を可能とする車載機と、を備えた電子キーシステムにおいて、前記車載機及び前記電子キー間において、前記要求信号及び前記応答信号の少なくとも何れか一方を通信毎に異なる送信タイミングで送受信することをその要旨としている。
【0017】
車両及び電子キー間において送受信される要求信号及び応答信号の電波をリレーする中継機を利用して、車両から遠く離れて位置する電子キーと通信を行う不正な通信手段が考えられている。一般的に、中継機は、車両からの要求信号を受信する要求信号受信用アンテナと、同要求信号を電子キー側に送信する要求信号送信用アンテナと、電子キーからの応答信号を受信する応答信号受信用アンテナと、同応答信号を車両側に送信する応答信号送信用アンテナと、を備える。
【0018】
ここで、車両及び電子キー間において同一周波数帯の要求信号及び応答信号が送受信される場合には、中継機の要求信号受信用アンテナが応答信号送信用アンテナからの応答信号を不用意に受信する場合がある。同様に、応答信号受信用アンテナが要求信号送信用アンテナからの要求信号を不用意に受信する場合もある。上記のような受信用アンテナによって不用意に受信される信号は両送信用アンテナから発信されて、正規の要求信号及び応答信号にとって妨害電波として作用する。これにより、中継機を介した車両及び電子キー間の通信が防止される。
【0019】
しかし、車両及び電子キー間における要求信号及び応答信号の送信タイミングの解析を通じて、中継機において妨害電波の発生を防止できる手口が想定される。この手口により、中継機を介した車両及び電子キー間の通信が可能となる。具体的には、中継機は要求信号の受信中には、要求信号送信用アンテナ及び要求信号受信用アンテナをオン状態(リレー可能状態)とし、応答信号受信用アンテナ及び応答信号送信用アンテナをオフ状態(リレー不能状態)とする。また、中継機は応答信号の受信中には、要求信号送信用アンテナ及び要求信号受信用アンテナをオフ状態とし、応答信号受信用アンテナ及び応答信号送信用アンテナをオン状態とする。これにより、両受信用アンテナは不用意に要求信号又は応答信号を受信することがないため、妨害電波を発生させることなく中継機を介して車両及び電子キー間の通信が可能となる。
【0020】
上記構成によれば、通信毎に異なる送信タイミングで要求信号及び応答信号の少なくとも何れか一方が送受信される。従って、要求信号及び応答信号の送信タイミングが解析されても、次の通信においては、解析された送信タイミングと異なるタイミングで要求信号及び応答信号の少なくとも何れか一方が送受信される。上記中継機は、解析された送信タイミングに則して各アンテナをオン、オフ切り替えるため、実際の要求信号及び応答信号の送信タイミングに合致しないタイミングで各アンテナをオン、オフ切り替えることになる。よって、要求信号及び応答信号の少なくとも何れか一方は、中継機によって完全な信号としてリレーされず、上記中継機を介した車両及び電子キー間の不正な通信を抑制できる。これにより、電子キーシステムのセキュリティ性をいっそう向上させることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載機から前記電子キーに前記応答信号の送信タイミング情報を含む送信タイミング信号、又は前記電子キーから前記車載機に前記要求信号の送信タイミング情報を含む送信タイミング信号が送信されて、前記送信タイミング信号を受信した前記電子キー又は前記車載機は、同送信タイミング信号に含まれる前記応答信号又は前記要求信号の送信タイミング情報に基づき、前記応答信号又は前記要求信号を送信することをその要旨としている。
【0022】
同構成によれば、車載機及び電子キー間における単方向に送信タイミング信号が送信される。送信タイミング信号には要求信号又は応答信号の送信タイミング情報が含まれている。前述のように、通信毎に要求信号及び応答信号の送信タイミングは異なるため、車載機及び電子キー間で送信タイミング信号をやりとりすることで、要求信号及び応答信号の送信タイミングを車載機及び電子キーで共通して認識できる。従って、予め車載機及び電子キー間で通信毎の要求信号及び応答信号の送信タイミングを取り決める必要がなく、ランダムに送信タイミングを決定することができる。よって、通信毎の送信タイミングを予測することがより困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性が向上する。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記要求信号は前記電子キーを起動させる旨のウェイク信号を含み、前記応答信号は前記ウェイク信号に応じて返信されるアック信号を含み、前記車載機は、前記アック信号の受信確認後に、前記電子キーとの間で正規の前記電子キーであるか否かの認証通信を前記要求信号及び前記応答信号の送受信を通じて行い、前記送信タイミング信号は前記アック信号の送信後に送信されることをその要旨としている。
【0024】
同構成によれば、正規の電子キーであるか否かの認証通信前に送信タイミング信号が送信される。従って、秘匿性の高い認証通信において送受信される要求信号及び応答信号について、通信毎に送信タイミングを変えることができる。よって、電子キーシステムのセキュリティ性を確保しつつ、ウェイク信号及びそれに応じたアック信号については送信タイミングの変更が不要となるため、それに係る処理が省ける。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電子キーシステムにおいて、前記送信タイミング信号は暗号化された信号であることをその要旨としている。
同構成によれば、送信タイミング信号は暗号化されているため、その秘匿性を向上させることができる。よって、送信タイミング信号の不正な解析等が困難となり、電子キーシステムのセキュリティ性をいっそう向上させることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、車両及び同車両と対をなす電子キー毎に異なるパターンで前記要求信号及び前記応答信号の少なくとも何れか一方の送信タイミングが変更されることをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、たとえ、所定の車両及び同車両と対となる電子キー間における要求信号及び応答信号の送信タイミングの変更態様が解析されることで、中継機による不正な通信が可能とされた場合でも、他の車両及び同車両と対となる電子キー間における要求信号及び応答信号の送信タイミングは上記所定の車両及び電子キー間における送信タイミングと異なる。よって、他の車両及び電子キーについては、中継機による不正な通信を防止できる。このように、車両及び電子キー毎に要求信号及び応答信号の送信タイミングを異ならせることで、中継機の汎用性を著しく低下させることができる。これにより、さらに電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、中継機を利用した電子キー及び車両間の不正な通信を抑制することで、よりセキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】本実施形態における各種信号のタイミングチャート。
【図3】車両及び電子キー間において電波をリレーする中継機の構成図。
【図4】車両及び電子キー間において電波をリレーする中継機の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示されるように、電子キーシステム1は、車両2の運転者によって所持される電子キー10と、車両2に配設される車載機20とを備えている。電子キー10と車載機20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件としてドア錠の施解錠及びエンジンの始動が制御される。
【0031】
<電子キー>
電子キー10は、無線通信機能を有し、車載機20との相互通信を通じて、各種車載機器の制御を行う。電子キー10は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成された電子キー制御部11と、その電子キー制御部11に電気的に接続されてUHF帯の無線信号を受信するUHF受信部12と、UHF帯の無線信号を送信するUHF送信部13とからなる。
【0032】
UHF受信部12は、車載機20から送信されるUHF帯の無線信号である要求信号を受信すると、同要求信号をパルス信号に復調し、復調された復調信号を電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11には、例えば、EEPROM等からなる不揮発性のメモリ11aが設けられ、そのメモリ11aには電子キー10に固有のIDコード及び暗号鍵が記憶されている。当該暗号鍵は、後述する暗号化された送信タイミング信号Stiの復号化、及びチャレンジコードの暗号化に利用される。なお、送信タイミング信号Stiの復号に利用する暗号鍵と、チャレンジコードの暗号化に利用される暗号鍵は、同一のものでも、別のものであってもよい。電子キー制御部11は、UHF受信部12から復調信号が入力されると、受信データを読み取るとともに、メモリ11aに登録されたIDコードを含む応答信号をUHF送信部13へ出力する。そして、電子キー10は、UHF送信部13を介して応答信号をUHF帯の無線信号として車両2側へ送信する。
【0033】
<車載機>
車載機20は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットを備えて構成されている。車載機20は、図1に示すように、各種車載機器を制御する車載制御部21と、その車載制御部21に電気的に接続された車外送信部22と、車内送信部23と、車載受信部24とを備えている。
【0034】
また、図1に示すように、車載制御部21には、エンジン始動時に操作されるエンジンスイッチ33と、自動で車両ドアの施解錠を行うドアロック装置34と、車両2のエンジンを始動させるエンジン制御装置35と、ドアハンドル(図示略)に設けられてユーザの接触の有無を検出するドアハンドルセンサ32とが電気的に接続されている。
【0035】
車外送信部22は、例えば、車両2の車両ドアのドアハンドル(図示略)の内部に設けられる。車外送信部22は、車載制御部21から要求信号が入力されると、その要求信号をUHF帯の無線信号に変調して、予め設定された間欠周期で車外送信アンテナ22aを介して車両2の周辺(車外通信エリア)に送信する。
【0036】
車内送信部23は、車内に設けられるとともに、車載制御部21から要求信号が入力されると、その要求信号をUHF帯の無線信号に変調して、予め設定された間欠周期で車内送信アンテナ23aを介して車内(車内通信エリア)に送信する。
【0037】
車載受信部24は、受信アンテナ24aを介して電子キー10から送信される応答信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調し、この復調信号を車載制御部21へ出力する。
【0038】
車載制御部21は、例えば、EEPROM等からなる不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには対応する電子キー10に設定されたIDコードと同一のIDコード、後述する送信タイミングに関する情報である送信タイミングパターン及び暗号鍵が記憶されている。当該暗号鍵は、送信タイミング信号Stiの暗号化、及びレスポンスコードの演算に利用される。なお、送信タイミング信号Stiの暗号化に利用する暗号鍵と、レスポンスコードの演算に利用される暗号鍵は、同一のものでも、別のものであってもよい。また、本実施形態においては、車両毎に同じ送信タイミングパターンが記憶されている。
【0039】
車載制御部21は、車外送信部22及び車内送信部23に対して要求信号を間欠的にそれぞれ異なるタイミングで出力する。そして、車載制御部21は、車外送信部22及び車内送信部23を通じて送信した要求信号に応答して電子キー10から送信された応答信号が車載受信部24によって受信されると、その応答信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとの照合を行う。この際、車載制御部21は、電子キー10から送信された応答信号が車外送信部22及び車内送信部23のどちらから送信された要求信号に応答したものであるかに基づいて、電子キー10が車外及び車内のいずれに存在するかを判断する。なお、車外送信部22を介して電子キー10とのIDコードの照合を行うことを車外照合といい、車内送信部23を介して電子キー10とのIDコードの照合を行うことを車内照合という。
【0040】
車載制御部21は、車両ドアの施錠状態において車外照合が成立した場合には、車両ドアは解錠可能状態とされる。この解錠可能状態において、車載制御部21はユーザがアウトサイドドアハンドル(図示略)に触れたとドアハンドルセンサ32を通じて検知したとき、ドアロック装置34を介して車両ドアを解錠する。
【0041】
また、車内照合が成立した場合にはエンジン始動許可状態とされる。このエンジン始動許可状態において、運転席近傍に設置されるエンジンスイッチ33が操作されると、その操作信号が車載制御部21に出力される。車載制御部21はエンジン始動許可状態において前記操作信号を検知すると、エンジン制御装置35に指令信号を出力する。エンジン制御装置35は、当該指令信号に基づき、図示しないセルモータを駆動させてエンジンを始動させる。
【0042】
次に、要求信号及び応答信号の送信タイミングについて説明する。簡単に説明すると、要求信号及び応答信号の送信タイミングは、車両2から電子キー10に送信される送信タイミング信号Stiに基づき通信毎に変更される。通信とは、車内照合又は車外照合が成立するまでの要求信号及び応答信号の一連の送受信をいう。
【0043】
車両2及び電子キー10間において、要求信号及び応答信号の送信タイミングは、以下のように決定される。ここで、上記要求信号及び応答信号は、それぞれ単一の信号ではなく、複数の信号からなる。すなわち、図2に示すように、要求信号はウェイク信号Swkと、ビークルID信号Sviと、チャレンジ信号Sccとからなり、応答信号はアック信号Sacと、レスポンス信号Sreとからなる。なお、前述した要求信号は主にチャレンジ信号Sccに相当し、応答信号は主にレスポンス信号Sreに相当する。
【0044】
以下、車外照合の場合について説明する。車載制御部21は、図2の上段に示すように、車外通信エリアに電子キー10が存在するか否かを確認すべく、車外送信アンテナ22aからUHF帯のウェイク信号Swkを断続的に発信させる。このウェイク信号Swkは、待機状態にある電子キー10を起動状態とする指令信号であって、一定間隔をおいて車外送信アンテナ22aから繰り返し発信される。
【0045】
電子キー10が車外通信エリアに入り込んで、ウェイク信号Swkを受信すると、電子キー10はこのウェイク信号Swkの受信を契機として、待機状態から起動状態に動作状態が切り換わる。電子キー10は、この時に正常に起動状態をとると、その旨を通知すべく車両2に向けてアック信号Sacを返信する(タイミングt1)。車載制御部21は、図2の下段に示すように、ウェイク信号Swkを発信した後、続けて行うポーリングでアック信号Sacを受け付ける動作をとる。
【0046】
この時に電子キー10が発信するアック信号Sacは、車載受信部24が受信待機状態をとっている際に車載受信部24に至る発信タイミングに設定されている。そして、車載制御部21は、アック信号Sacを受信すると、電子キー10が車外通信エリアに存在すると判断する。
【0047】
なお、車載制御部21は、ウェイク信号Swkに応答したアック信号Sacを正常に受信すると、その周期でポーリングを終了し、これ以降は電子キー10が正規のものであるのかを実際に確認する認証通信動作に移行する。この認証通信動作時においては、電子キー10と実際に無線通信を行うタイミングにおいて、具体的にはアック信号Sac及びレスポンス信号Sreを受信するタイミング(タイミングt2,t3)において、受信待機状態となる。
【0048】
認証通信動作を行うにあたって、車載制御部21は、車外送信アンテナ22aからUHF帯の送信タイミング信号Stiを送信する。送信タイミング信号Stiには、認証通信動作における要求信号及び応答信号、すなわち、チャレンジ信号Scc、レスポンス信号Sre等の送信タイミングに関する情報が含まれている。
【0049】
送信タイミング信号Stiに含まれる送信タイミングに関する情報は、送信タイミング信号Stiの送信毎に異なるパターンが選択される。具体的には、以下のように送信タイミングは選択される。すなわち、メモリ21aには複数種類の送信タイミングパターンが記憶されている。車載制御部21は、これら送信タイミングパターンの中からランダムに所定の送信タイミングパターンを選択して、その送信タイミングに関する情報を送信タイミング信号Stiに含ませる。
【0050】
また、不正な情報の読み取りを防止するために、車載制御部21は、メモリ21aに記憶される暗号鍵を用いて送信タイミング信号Stiを暗号化したうえで、その送信タイミング信号Stiを送信する。
【0051】
電子キー10がUHF受信部12を介して送信タイミング信号Stiを受信すると、電子キー制御部11はメモリ11aに記憶される暗号鍵を用いて暗号化された送信タイミング信号Stiを復号する。電子キー制御部11は、送信タイミング信号Stiを復号することで、車両2側にて選択された送信タイミングパターンを認識する。ここで、送信タイミング信号Stiの暗号化及び復号化に用いられる暗号鍵(電子キー10及び車載機20が持つ鍵)は同じものである。すなわち、電子キー10及び車載機20間の暗号方式として、共通鍵方式が採用されている。
【0052】
車載制御部21は複数種類の送信タイミングパターンからランダムに選択された一の送信タイミングパターンに基づき、車外送信アンテナ22aからビークルID信号Svi及びチャレンジ信号Sccを送信する。詳しくは、図2の上段に示すように、送信タイミング信号Stiの送信完了から時間T1経過後にビークルID信号Sviが送信される。また、ビークルID信号Sviの送信完了から時間T2経過後にチャレンジ信号Sccが送信される。
【0053】
また、電子キー制御部11は認識した送信タイミングパターンに基づき、UHF送信部13からアック信号Sac及びレスポンス信号Sreを送信する。詳しくは、図2の中段に示すように、ビークルID信号Sviの受信完了から時間T3経過後にアック信号Sacが返信される。また、チャレンジ信号Sccの受信完了から時間T4経過後にレスポンス信号Sreが送信される。以上のように、送信タイミング信号Sti(送信タイミングパターン)には、送信タイミングに関する情報として各種信号Svi,Sac,Scc,Sreが送信される各時間T1〜T4の情報が含まれている。なお、ここでは、車載機20からの信号の送信完了タイミングと、電子キー10の同信号の受信完了タイミングとは同一タイミングであるとする。
【0054】
電子キー10は、ビークルID信号Sviを受け付けると、このビークルID信号Sviが自身に対応する車両2からのものであるか否かを確認するビークルID照合を通じて、車両2が正規の車両であるか否かの判定を行う。このように、ビークルID照合を行うことで、電子キー10の周囲に複数の車両が存在して、同複数の車両から要求信号を受信する状況になっても、正規車両のみとの間でビークルID信号Sviの送信以降の通信を行うことができる。
【0055】
電子キー10は、このビークルID照合が成立した事を認識すると、その旨を通知すべく車両2に向けてアック信号Sacを返信する。当該アック信号Sacは、前述のように、ビークルID信号Sviの送信完了から時間T3経過後に送信される。車載制御部21は、ビークルID信号Sviを発信した後、アック信号Sacを受信可能な受信待機状態となる。なお、受信待機状態の継続時間は、各種信号Svi,Sac,Scc,Sreの送信タイミングに基づき設定されている。
【0056】
車載制御部21は、ビークルID信号Sviを発信した後に正常にアック信号Sacを受信すると、電子キー10との間でビークルID照合が成立したと認識し、車外通信エリア内に存在する電子キー10が自身とペアをなすものであると認識する。なお、車載制御部21は、ビークルID信号Sviの発信に対するアック信号Sacを受信すると、一旦、受信待機状態ではなくなる。
【0057】
車載制御部21は、電子キー10との間でビークルID照合が成立した事を認識すると、次にチャレンジ信号Sccを車外送信アンテナ22aから発信させる。チャレンジ信号Sccは、乱数として用いるチャレンジコードと、車両2側に登録された電子キー10のキー番号とからなる。
【0058】
電子キー10は、車両2からチャレンジ信号Sccを受信すると、この時に受け付けたキー番号と自身に登録されたキー番号とを照らし合わせて番号照合を行い、自身が通信対象であるか否かを判断する。なお、この番号照合は、車載機20が自身の通信相手である電子キー10について、マスター又はサブのキー種を判定する照合である。車載制御部21は、チャレンジ信号Sccを送信した後に、再び受信待機状態となる。
【0059】
この番号照合が成立した電子キー10は、自身のメモリ11aに記憶されたIDコード及びレスポンスコードを含むレスポンス信号Sreを車両2側に返信する。レスポンスコードはチャレンジコードを、暗号鍵を用いて演算して暗号化したコードである。なお、前述のように、レスポンス信号Sreは、同チャレンジ信号Sccの受信完了から時間T4経過後に送信される。このレスポンス信号Sreは、車載受信部24が受信待機状態のときに車載受信部24に至るタイミングで発信される。
【0060】
車載制御部21は、レスポンス信号Sreを受信すると、レスポンス信号Sreに含まれるIDコードと、車両2のメモリ21aに記憶されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。
【0061】
具体的には、車載制御部21は、チャレンジ信号Sccを発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを暗号化することにより、自らもレスポンスコードを生成する。そして、車載制御部21は、電子キー10からレスポンス信号Sreを車載受信部24で受信すると、電子キー10のレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。車載制御部21は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、レスポンス信号Sreに含まれるIDコードの正否を照合する。そして、車載制御部21は、レスポンス照合及びIDコード照合が成立することを確認すると、これを以て照合成立として処理する。このようにして、車外照合が成立した場合には、車両ドアが解錠可能状態とされる。なお、車内照合の場合も、基本的には車外照合と同様にして行われる。車内照合が成立した場合にはエンジン始動許可状態とされる。
【0062】
次に、電子キーシステム1において、車両2及び電子キー10間で送受信される要求信号及び応答信号の中継機による電波リレーの態様について説明する。
ここでは、上記背景技術において図3を参照して説明した中継機101を使用して、車両2及び電子キー10間の電波をリレー(中継)した場合について説明する。中継機101の構成に関しては、上記背景技術において記載したため、その説明を省略する。
【0063】
上記背景技術においても説明したように、制御回路115は、解析された要求信号及び応答信号の送信タイミングに基づき両スイッチング素子111,112のオン、オフ動作を制御することにより、接続ライン105,106を非通電状態と通電状態との間で切り替える。
【0064】
具体的には、図2に示すように、ウェイク信号Swkの送信開始からレスポンス信号Sreの送信完了までの時間T10を1サイクルとする。時間T10において、図2の上段に示す車載機20から各種信号Swk,Sti,Svi,Sccが送信されている期間においては、制御回路115はスイッチング素子111に指令信号を出力して、接続ライン105を非通電状態から通電状態とする。すなわち、例えば、ビークルID信号Sviの送信時間が時間T01であった場合には、制御回路115は、解析されたビークルID信号Sviの送信開始タイミングからスイッチング素子111に時間T01だけ指令信号を出力する。なお、このとき、接続ライン106は非通電状態に維持される。
【0065】
また、図2の中段に示すように、時間T10において、電子キー10から各種信号Sac,Sreが送信されている期間においては、制御回路115はスイッチング素子112に指令信号を出力して、接続ライン106を非通電状態から通電状態とする。すなわち、例えば、アック信号Sacの送信時間が時間T02であった場合には、制御回路115は解析されたアック信号Sacの送信開始タイミングからスイッチング素子112に時間T02だけ指令信号を出力する。なお、このとき、接続ライン105は非通電状態に維持される。
【0066】
図3に示す中継機101において、受信アンテナ102により受信される車載機20からのウェイク信号Swkは、接続ライン105を介して、送信アンテナ103から発信される。しかし、このとき、制御回路115からスイッチング素子112に指令信号は出力されておらず、接続ライン106は非通電状態であるため、受信アンテナ108がウェイク信号Swkを受信することはない。よって、ウェイク信号Swkが送信アンテナ107から発信されて、これが車載機20からの各種信号Svi,Sccの妨害電波として作用することはない。
【0067】
ウェイク信号Swkに応じた電子キー10からのアック信号Sacを中継機101が受信する時には、制御回路115はスイッチング素子111への指令信号の出力を停止して、今度はスイッチング素子112へ指令信号を出力する。これにより、接続ライン105は非通電状態とされるため、送信アンテナ107から発信されるアック信号Sacを受信アンテナ102が受信することはない。従って、中継機101には電波の循環による妨害電波の効果を期待できない。
【0068】
また、送信タイミング信号Stiの送信までの各種信号Swk,Sac,Stiの送信タイミングは、毎回同じである。よって、送信タイミングが解析された場合には、送信タイミング信号Stiの送信までの各種信号Swk,Sac,Stiについては、中継機101による車両2及び電子キー10間の電波リレーが可能である。
【0069】
しかし、前述のように、送信タイミング信号Sti以降の各種信号Svi,Sac…の送信タイミングについては、毎回異なる。具体的には、例えば、図2に示すように、送信タイミング解析時のビークルID信号Sviの送信タイミングが送信タイミング信号Stiの送信完了時から時間T1経過後であったとする。そして、中継機101による電波リレー実行時のビークルID信号Sviの送信タイミングが送信タイミング信号Stiの送信完了時から前記時間T1より長い時間T11経過後であったとする。この場合であっても、中継機101の制御回路115は、送信タイミング信号Stiの送信完了時を基準として、時間T1経過時から時間T01だけスイッチング素子111を介して接続ライン105を通電状態とする。しかし、実際に車載機20からビークルID信号Sviが送信されるのは送信タイミング信号Stiの送信完了から時間T11経過後であるため、ビークルID信号Sviの送信中に、送信タイミング信号Stiの送信完了から起算して「時間T1+時間T01」は経過して、接続ライン105は非通電状態とされる。よって、ビークルID信号Sviの後半部分(図2の斜線で示す範囲A)については受信アンテナ102が受信することなく、当然、送信アンテナ103から発信されることもない。ビークルID信号Sviの一部分が欠けた信号を受信した電子キー10は、正規のビークルID信号Sviではないと認識し、アック信号Sacを返信しない。これにより、中継機101による車両2及び電子キー10間の電波リレーは防止される。
【0070】
また、万が一、ビークルID信号Sviが適切に電子キー10に受信された場合であっても、解析時のアック信号Sacの送信タイミングと異なるタイミングでアック信号Sacが送信されることで、中継機101による電波リレーを防止できる。すなわち、解析時においては、ビークルID信号Sviの受信完了時から時間T3経過後にアック信号Sacの送信が開始されたとする。そして、中継機101による電波リレー実行時のアック信号Sacの送信タイミングがビークルID信号Sviの受信完了時から前記時間T3より短い時間T13経過時であったとする。この場合であっても、中継機101の制御回路115は、解析結果に基づき、ビークルID信号Sviの受信完了を基準として時間T3経過時から時間T02だけスイッチング素子112を介して接続ライン106を通電状態とする。しかし、実際に車載機20からアック信号Sacが送信されるのは、接続ライン106が通電状態とされる前のビークルID信号Sviの受信完了から時間T13経過後であるため、アック信号Sacの前半部分(図2の斜線で示す範囲B)については、受信アンテナ108が受信することなく、当然、送信アンテナ107から発信されることもない。
【0071】
アック信号Sacの一部分が欠けた信号を受信した車載機20は、正規のアック信号Sacではないと認識し、チャレンジ信号Sccを返信しない。これにより、中継機101による車両2及び電子キー10間の電波リレーは防止される。チャレンジ信号Scc及びレスポンス信号Sreについても、同様に解析時の送信タイミングと異なるタイミングで送信されることで、中継機101を介した電波リレーは防止される。
【0072】
次に、上記背景技術において、図4を参照して説明した中継機101を利用した場合について説明する。この場合には、スイッチング素子111,112が設けられていないため、いわば、接続ライン105,106は常に通電状態にあるといえる。よって、中継機101により、各種信号Swk,Sac,Svi,Sccは電子キー10側又は車両2側にリレーされる。しかし、送信アンテナ103から発信される各種信号Swk,Svi…は、電子キー10だけでなく、受信アンテナ108も受信可能となる。これは、電子キー10及び車両2間において、双方向に同一周波数の電波が使用されることに起因する。受信アンテナ108から各種信号Swk,Svi…が受信された場合には、これら信号は接続ライン106を通じて送信アンテナ107から妨害電波として発信される。妨害電波が車両2から受信アンテナ102に発信される各種信号Swk,Sti…と混信することで、車両2及び電子キー10間における正規の通信が不能となる。
【0073】
また、送信アンテナ107から発信される妨害電波を受信アンテナ102が受信することで、送信アンテナ103からも妨害電波が発信される。この妨害電波が電子キー10から受信アンテナ108に発信される各種信号Sac,Sreと混信することで、車両2及び電子キー10間における正規の通信が不能となる。
【0074】
以上のように、上記両タイプの中継機101の何れを使用した場合であれ、車両2及び電子キー10間の不正な通信を防止でき、電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0075】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)通信毎に異なる送信タイミングで要求信号(正確には、ビークルID信号Svi及びチャレンジ信号Scc)及び応答信号(正確には、アック信号Sac及びレスポンス信号Sre)が送受信される。従って、要求信号及び応答信号の送信タイミングが解析されても、次の通信においては、解析された送信タイミングと異なるタイミングで要求信号及び応答信号が送受信される。上記中継機101は、解析された送信タイミングに則して各アンテナ102,103,107,108をオン、オフ切り替えるため、実際の要求信号及び応答信号の送信タイミングに合致しないタイミングで各アンテナ102,103,107,108をオン、オフ切り替えることになる。よって、要求信号及び応答信号は、中継機101によって完全な信号としてリレーされず、上記中継機101を介した車両2及び電子キー10間の不正な通信を抑制できる。これにより、電子キーシステム1のセキュリティ性をいっそう向上させることができる。
【0076】
(2)車載機20及び電子キー10間における単方向に送信タイミング信号Stiが送信される。送信タイミング信号Stiには要求信号及び応答信号の送信タイミングに関する情報が含まれている。ここで、通信毎に要求信号及び応答信号の送信タイミングは異なるため、車載機20及び電子キー10間で送信タイミング信号Stiをやりとりすることで、要求信号及び応答信号の送信タイミングを車載機20及び電子キー10で共通して認識できる。従って、予め車載機20及び電子キー10間で通信毎の要求信号及び応答信号の送信タイミングを取り決める必要がなく、ランダムに送信タイミングを決定することができる。よって、通信毎の送信タイミングを予測することがより困難となり、電子キーシステム1のセキュリティ性が向上する。
【0077】
(3)正規の電子キー10であるか否かの認証通信前、すなわち、チャレンジ信号Scc及びレスポンス信号Sreの送信前に送信タイミング信号Stiが送信される。従って、秘匿性の高いチャレンジ信号Scc及びレスポンス信号Sreについて、通信毎に送信タイミングを変えることができる。よって、電子キーシステム1のセキュリティ性を確保しつつ、ウェイク信号Swk及びそれに応じたアック信号Sacについては送信タイミングの変更が不要となるため、それに係る処理が省ける。
【0078】
(4)所定の車両及び同車両と対となる電子キー間における送信タイミングの変更態様が解析されることで、たとえ中継機101による不正な通信が可能とされた場合でも、他の車両及び同車両と対となる電子キー間における送信タイミングは上記所定の車両及び電子キー間における送信タイミングと異なる。よって、他の車両及び電子キーについては、中継機101による不正な通信を防止できる。このように、車両及び電子キー毎に送信タイミングを異ならせることで、中継機101の汎用性を著しく低下させることができる。これにより、さらに電子キーシステム1のセキュリティ性を向上させることができる。
【0079】
(5)車両2及び電子キー10間において、UHF帯の要求信号及び応答信号を利用して、通信が行われている。このように、高周波数帯であるUHF帯の電波を使用することで、より高速に大容量の情報を送受信することができ、ひいては、より迅速な車内照合及び車外照合が可能となる。また、高周波数帯の信号を使用することで、通信エリアの拡大も期待できる。
【0080】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、送信タイミング信号Stiの暗号化及び復号化に用いられる暗号鍵は共通の鍵である、いわゆる共通鍵方式を採用していた。しかし、送信タイミング信号Stiの暗号化及び復号化が可能であれば、共通鍵方式に限らず、公開鍵方式等であってもよい。
【0081】
・上記実施形態においては、メモリ21aに記憶される送信タイミングパターンに基づき、各種信号Svi,Scc,Sac,Sreの送信タイミングとして各時間T1〜T4が決定されていた。換言すると、各時間T1〜T4が決まることで、各種信号Svi,Scc,Sac,Sreの送信開始タイミングが決まっていた。しかし、送信タイミングは、送信開始タイミングに限らず、各種信号Svi,Scc,Sac,Sreの送信時間であってもよい。例えば、通信毎にビークルID信号Sviの送信される時間T01を変更することで、上記実施形態と同様に、中継機101による不正な通信を防止することができる。
【0082】
・上記実施形態においては、車両毎に同じ送信タイミングパターンが記憶されていたが、車両毎に異なる送信タイミングパターンが記憶されていてもよい。この場合には、たとえ、対をなす車両及び電子キー間での要求信号及び応答信号の送信タイミングのパターンが読み取られた場合であっても、他の車両及び電子キー間での要求信号及び応答信号の送信タイミングのパターンは異なるため、他の車両及び電子キーについては中継機101を介したリレーが防止できる。よって、中継機101の汎用性を著しく下げることができる。
【0083】
・上記実施形態においては、車両2及び電子キー10間に送受信される要求信号及び応答信号はUHF帯であった。しかし、要求信号及び応答信号が中継機101に電波の循環による妨害電波を生じさせる同一周波数帯であれば、UHF帯に限定されない。
【0084】
・上記実施形態において、送信タイミング信号Stiには各種信号の送信タイミングとして各時間T1〜T4の情報が含まれていた。しかし、送信タイミング信号Stiは電子キー10に送信される信号であるため、電子キー10がアック信号Sac及びレスポンス信号Sreを返信するタイミングを表す時間T3及び時間T4の情報だけを送信タイミング信号Stiに付加して送信してもよい。この場合には、送信タイミング信号Stiに時間T1及び時間T2の情報を付加する必要がないため、その処理を省ける。
【0085】
・上記実施形態においては、送信タイミング信号Stiはウェイク信号Swkの送信後であってビークルID信号Sviの送信前に送信されるが、送信タイミング信号Stiの送信タイミングはこれに限定されない。例えば、ビークルID信号Sviの送信後であって、チャレンジ信号Sccの送信前に送信してチャレンジ信号Scc及びレスポンス信号Sreの送信タイミングを通信毎に変えてもよい。また、送信タイミング信号Stiをウェイク信号Swkと同時に、換言すると、送信タイミング信号Stiに含まれる送信タイミング情報をウェイク信号Swkに付加して送信してもよい。この場合には、ウェイク信号Swkに含まれる送信タイミング情報はウェイク信号Swkが送信される毎に異なる情報となる。
【0086】
・上記実施形態においては、車載機20は送信タイミング信号Stiを電子キー10に送信していたが、逆に、電子キー10が送信タイミング信号Stiを車載機20に送信してもよい。この場合には、電子キー制御部11のメモリ11aに、送信タイミングパターンが記憶される。そして、例えば、電子キー10は、ウェイク信号Swkに応じたアック信号Sacの返信後に暗号化した送信タイミング信号Stiを送信する。この場合にも、送信タイミング信号Stiにより電子キー10及び車両は、いずれの送信タイミングパターンで通信を行うかを共通認識することができるため、電子キー10側にてランダムに送信タイミングパターンを選択できる。
【0087】
・上記実施形態においては、送信タイミングの情報を含む送信タイミング信号Stiが車載機20から電子キー10に送信されていたが、送信タイミング信号Stiの送信を省略してもよい。この場合には、予め車載機20及び電子キー10間で通信毎の送信タイミングを取り決めておく。これにより、送信タイミング信号Stiの送信を省略しつつ、通信毎に各種信号Svi,Sac,Scc,Sreの送信タイミングを異ならせることができる。
【0088】
・上記実施形態においては、通信毎にビークルID信号Svi,チャレンジ信号Scc,アック信号Sac,レスポンス信号Sreの送信タイミングを変えて、中継機101による電波リレーを防止していた。しかし、何れか一種類、例えば、ビークルID信号Sviの送信タイミングを異ならせるだけでも、電波リレーを防止できる。この場合には、送信タイミング信号Sti送信完了からビークルID信号Svi送信までの時間T1のみを変更すればよく、その他、チャレンジ信号Scc,アック信号Sac,レスポンス信号Sreの送信タイミングを変える必要がないため、それに係る処理を省くことができる。
【0089】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項2〜4の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記送信タイミング信号は暗号化されて送信される電子キーシステム。
【0090】
同構成によれば、送信タイミング信号は暗号化されて送信されるため、送信タイミングに関する情報の不正な読み取りが防止され、ひいては、中継機による電波リレーをより困難にできる。
【符号の説明】
【0091】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、11a…メモリ、12…UHF受信部、13…UHF送信部、20…車載機、21…車載制御部、21a…メモリ、22…車外送信部、22a…車外送信アンテナ、23…車内送信部、23a…車内送信アンテナ、24…車載受信部、101…中継機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯されて車両側からの要求信号に応じて自身の識別コードを含む同要求信号と同一周波数帯の応答信号を送信する電子キーと、前記車両に搭載されて要求信号を車両の室内外に送信するとともに、前記電子キー側から返信される応答信号の識別コードの照合の成否を通じて車両ドアの解錠及び車両エンジンの始動を可能とする車載機と、を備えた電子キーシステムにおいて、
前記車載機及び前記電子キー間において、前記要求信号及び前記応答信号の少なくとも何れか一方を通信毎に異なる送信タイミングで送受信する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載機から前記電子キーに前記応答信号の送信タイミング情報を含む送信タイミング信号、又は前記電子キーから前記車載機に前記要求信号の送信タイミング情報を含む送信タイミング信号が送信されて、
前記送信タイミング信号を受信した前記電子キー又は前記車載機は、同送信タイミング信号に含まれる前記応答信号又は前記要求信号の送信タイミング情報に基づき、前記応答信号又は前記要求信号を送信する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記要求信号は前記電子キーを起動させる旨のウェイク信号を含み、
前記応答信号は前記ウェイク信号に応じて返信されるアック信号を含み、
前記車載機は、前記アック信号の受信確認後に、前記電子キーとの間で正規の前記電子キーであるか否かの認証通信を前記要求信号及び前記応答信号の送受信を通じて行い、
前記送信タイミング信号は前記アック信号の送信後に送信される電子キーシステム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電子キーシステムにおいて、
前記送信タイミング信号は暗号化された信号である電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
車両及び同車両と対をなす電子キー毎に異なるパターンで前記要求信号及び前記応答信号の少なくとも何れか一方の送信タイミングが変更される電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−63939(P2011−63939A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213027(P2009−213027)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】