説明

電子キー充電システム

【課題】仮に電子キーが電池切れになっても、ユーザを煩わせることなく車両操作を継続することができる電子キー充電システムを提供する
【解決手段】車両1の窓ガラス等に、車外に電力電波Svを送信可能な送電アンテナ21を設ける。また、電子キー2に、補助用2次電池19と、電力電波Svを受信可能な受電アンテナ28を設ける。そして、電子キー2のメイン電源15が電池切れに陥ったときには、電子キー2を窓ガラス越しに送電アンテナ21に密着させ、送電アンテナ21から送信される電力電波Svにて補助用2次電池19を充電する。これにより、電子キー2は補助用2次電池19を電源として動作可能となり、通常の無線によるID照合が継続して実行可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーの蓄電手段を充電する電子キー充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマート通信用の電子キーは、車両から送信されてくる信号をトリガにしてIDコードを返信する。電子キーは、通常、1次電池を使用している。また、電子キーには、その他、ワイヤレス機能等を有している。近年、電子キーの電源に2次電池を搭載する傾向にある。電子キーの電源とすれば、定期的な充電が必要となるもの、電池交換を行わずに済むため、便利である。電子キーの電源を2次電池としたときの充電技術が例えば特許文献1等に開示されている。同文献の技術は、車内にて電子キーを無線により充電するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−179948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、場合によっては、ユーザが車両に乗車しようとするとき、つまりドアロックを解錠するときに、電子キーが電池切れになっていることに気付くこともある。こうなると、車両に乗車すること自体できなくなるので、例えば電子キーに付属のメカニカルキーにてドアロックを解錠しなくてはならず、この行為が非常に煩わしく感じる問題があった。特に、電子キーによる無線のID照合に慣れてしまっていると、電子キーが電池切れのとき、メカニカルキーを使用すればよいという思い付きに至り難く、ユーザを困惑させる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、仮に電子キーが電池切れになっても、ユーザを煩わせることなく車両操作を継続することができる電子キー充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、電子キーに電源として搭載された蓄電手段を、車両の電源にて充電可能な電子キー充電システムにおいて、前記車両に設けられ、車外に位置する前記電子キーに、前記蓄電手段を充電するのに必要な電力を供給する電力供給手段と、前記車両に設けられ、前記電力供給手段の動作を管理する電力供給制御手段と、前記電子キーに設けられ、前記電力供給手段から供給される電力を取得する電力取得手段と、前記電子キーに設けられ、前記電力取得手段にて取得した電力を基に当該電子キーの前記蓄電手段を充電する充電実行手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、車外から電子キーにて車両を操作しようとしたとき、電子キーが電池切れに陥った場合は、車両に設けられた電力供給手段を使用して、電子キーの蓄電手段を充電する。よって、電子キーは、蓄電手段を電源として再動作することが可能となる。このため、電子キーが車外にあるときに電池切れに陥っても、電子キーの蓄電手段を充電することにより通常通りの態様で使用可能となるので、ユーザを煩わせることなく、車両操作を実行することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記電力供給手段は、車外に電力電波の送信エリアを形成可能な送電アンテナであり、前記電力供給制御手段は、前記蓄電手段を充電するための前記電力電波を前記送電アンテナから送信させる送信制御手段であり、前記電力取得手段は、前記電力電波を受信可能な受電アンテナであり、前記充電実行手段は、前記受電アンテナにて受信した前記電力電波を基に、前記蓄電手段を充電することを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、車両の送電アンテナから送信される電力電波によって電子キーを無線により充電することが可能となる。よって、電子キーを車外から車両の送電アンテナに近づけるという簡素な操作によって、電子キーの蓄電手段を充電することが可能となる。
【0010】
本発明では、充電開始に必要な操作を検出する操作検出手段を備え、前記電力供給制御手段は、充電開始に必要な操作がなされたことを前記操作検出手段にて検出すると、前記電力供給手段による電力供給の動作を開始することを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、充電開始に必要な操作が車両においてなされると、電力供給手段による電力供給の動作が開始されるので、電子キーに充電を行うときのみ電力供給が実行される。よって、電力供給の動作が無駄に実行されなくなるので、車両の電源を省電力化することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記電力供給制御手段は、前記電子キーを一時的に使用できる分だけの電力を供給することを要旨とする。
この構成によれば、電子キーの動作に最低限必要な電力のみを蓄電手段に充電するので、短い充電時間で、電力をより効率よく蓄電手段に充電することが可能となる。
【0013】
本発明では、前記電子キーと前記車両とを認証する認証手段を備え、前記電力供給制御手段は、前記認証手段にて認証が成立したことを条件に、前記電力の供給を開始することを要旨とする。
この構成によれば、車両登録された電子キーのみが充電可能となるので、不正な充電行為を防止することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記電子キーと前記送電アンテナとの通信方式は、前記電子キーを前記車両の窓ガラス越しに前記送電アンテナへ密着させて通信する近距離無線通信であることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、電子キーを送電アンテナに密着させて初めて充電が開始されるので、電子キーを充電するには、電子キーを送電アンテナに密着させるというユーザ意志が必要となる。よって、真に必要なときにのみ充電が実行されるので、無駄な充電を実行させずに済む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、仮に電子キーが電池切れになっても、ユーザを煩わせることなく車両操作を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態における電子キー充電システムの構成を示すブロック図。
【図2】送電アンテナの取付態様を示す窓ガラスの模式図。
【図3】送電アンテナの取付態様を示す窓ガラスの斜視図。
【図4】(a)〜(d)は電子キーの補助用2次電池を充電する手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した電子キー充電システムの一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2と無線によりID照合を実行する電子キーシステム3が搭載されている。電子キー2は、無線により車両1にIDコードを送信するキーである。電子キーシステム3には、車両1側からの通信をトリガとしてID照合を実行するキー操作フリーシステムと、電子キー2側からの通信をトリガとしてID照合を実行するワイヤレスキーシステムとがある。
【0019】
この場合、車両1には、ID照合装置4、ドアロック装置5及びエンジン始動装置6が設けられ、これらが車内のバス7を介して接続されている。ID照合装置4には、ID照合装置4のコントロールユニットとして照合ECU8が設けられている。照合ECU8のメモリ(図示略)には、電子キー2のIDコードが登録されている。照合ECU8には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外発信機9と、車内にLF帯の電波を送信可能な車内発信機10と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両チューナ11とが接続されている。
【0020】
電子キー2には、電子キー2の動作を管理するキー制御部12が設けられている。キー制御部12のメモリ(図示略)には、電子キー2のIDコードが登録されている。キー制御部12には、LF電波を受信可能なLF受信機13と、UHF電波を送信可能なUHF送信機14とが接続されている。電子キー2には、通常使用する電源としてメイン電源15が設けられている。メイン電源15は、1次電池又は2次電池のどちらでもよい。
【0021】
電子キー2が車外に位置するとき、車外発信機9は、ID返信要求としてリクエスト信号Srqを断続的に車外に送信する。電子キー2がリクエスト信号Srqの通信エリアに進入すると、電子キー2が待機状態から起動し、ID信号Sidを車両1に送信する。そして、車外の電子キー2と車両1との間でID照合、いわゆる車外照合が成立すると、ドアロック装置5による車両ドア16(図2等参照)のドアロック施解錠が許可又は実行される。
【0022】
ユーザの乗車が例えば車両1のカーテシスイッチ(図示略)等により検出されると、車外発信機9に代えて、今度は車内発信機10から車内にリクエスト信号Srqが送信される。そして、車内の電子キー2と車両1との間でID照合、いわゆる車内照合が成立すると、プッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ17によるエンジンの始動操作が許可される。
【0023】
また、電子キー2には、ワイヤレスキーシステム用の操作ボタン18が設けられている。操作ボタン18には、例えば車両1のドアロックを施解錠するときに操作する施解錠ボタンなどがある。電子キー2で操作ボタン18が操作されると、電子キー2からワイヤレス信号Swlが送信される。このワイヤレス信号Swlには、IDコードと、操作ボタン18の機能コードとが含まれる。照合ECU8は、車両チューナ11でワイヤレス信号Swlを受信すると、ID照合としてワイヤレス照合を実行し、この照合が成立すると、ドアロック装置5にドアロック施解錠を実行させる。
【0024】
操作ボタン18には、ドアロック施解錠用の他に、例えばパワースライドドア開閉用、テールゲート開閉用、ラッゲージドア開閉用、窓ガラス開閉用などがある。もちろん、これら以外の種類を採用してもよい。
【0025】
車両1及び電子キー2には、電子キー2に補助用の電源(補助用2次電池19)を設け、車両1から充電用の電波(電力電波Sv)を送信して補助用2次電池19を充電可能とする電子キー充電システムが設けられている。これは、電子キー2のメイン電源15が仮に電池切れになっても、車両1から送信される電力電波Svにて補助用2次電池19を充電し、補助用2次電池19を電源に電子キー2を動作させることで電池切れに対応するためである。よって、電子キー2のメイン電源15が電池切れに陥っても、電子キー2は車両1との無線によるID照合が可能となる。なお、補助用2次電池19が蓄電手段に相当する。
【0026】
補助用2次電池19は、電池容量の少ない小型電池が使用されている。補助用2次電池19は、メイン電源15が電池切れに陥ったとき、キー制御部12、LF受信機13、UHF送信機14など、電子キー2の各種電子部品に電力を供給する。
【0027】
図1〜図3に示すように、車両ドア16の窓ガラス20(図2や図3等参照)の内面には、電力電波Svを送信可能な送電アンテナ21が取り付けられている。送電アンテナ21は、LF帯の送信アンテナであって、電力電波SvをLF電波により送信する。送電アンテナ21は、例えば電磁結合型の場合、コイルアンテナが使用され、磁界結合型の場合、鉄板のアンテナが使用される。送電アンテナ21は、通信距離が数cmという非常に距離が短い近距離無線通信により電子キー2と通信を行う。なお、送電アンテナ21が電力供給手段に相当する。
【0028】
図1に示すように、送電アンテナ21は、送電用制御回路22を介して照合ECU8に接続されている。送電用制御回路22は、照合ECU8からの指令を基に、電力電波Svの電力値を制御する回路である。
【0029】
照合ECU8には、電力電波Svの送信を制御する電力電波送信制御部23と、電力電波Svの送信開始に際してユーザに課す特殊操作の有無を検出する特殊操作検出部24とが設けられている。本例の場合、特殊操作には、例えば車外ドアハンドルノブ25のロックボタン25aを所定回数押す操作等がある。ロックボタン25aは、車外からドアロックを施錠するときに操作するボタンである。特殊操作検出部24は、特殊操作を検出すると、特殊操作有り通知を電力電波送信制御部23に出力する。なお、電力電波送信制御部23が電力供給制御手段及び送信制御手段を構成し、特殊操作検出部24が操作検出手段に相当する。
【0030】
電力電波送信制御部23は、特殊操作検出部24から特殊操作有り通知を取得すると、車両1のバッテリ等を電源として、送電アンテナ21から電力電波Svの送信を開始する。電力電波送信制御部23は、短時間の間だけ電力電波Svを送信して、電子キー2を一時的に使用できる分だけの電力を電子キー2に供給する。電力電波Svは、例えば約100KHz程度のLF電波により送信される。
【0031】
送電アンテナ21には、送電アンテナ21の位置をユーザに通知するアンテナ位置通知部26が設けられている。アンテナ位置通知部26は、例えばLEDが使用され、例えば窓ガラス20の内面に取り付けられている。アンテナ位置通知部26は、送電アンテナ21の近傍に配置されている。
【0032】
照合ECU8には、アンテナ位置通知部26の動作を管理する通知制御部27が設けられている。通知制御部27は、例えば照度センサ(図示略)を備え、例えば照度センサや車両1のタイマ等により夜間になったことを検出すると、アンテナ位置通知部26を点灯(点滅)させて、夜間において送電アンテナ21の位置をユーザに通知する。
【0033】
電子キー2には、電力電波Svを受信する受電アンテナ28が設けられている。受電アンテナ28は、いわゆるLF帯の受信アンテナであって、例えば電子キー2内の基板(図示略)に実装されている。受電アンテナ28は、受電用制御回路29を介してキー制御部12に接続されている。受電アンテナ28は、受信した電力電波Svを、受電用制御回路29を通じてキー制御部12に出力する。なお、受電アンテナ28が電力取得手段に相当する。
【0034】
受電用制御回路29は、受電アンテナ28にて受信した電力電波Svを例えば整流、降圧して、キー制御部12に出力する。受電用制御回路29は、電力電波Svによる補助用2次電池19の充電動作を制御するものである。
【0035】
キー制御部12には、受電アンテナ28で受信した電力電波Svを基に補助用2次電池19を充電する充電実行部30が設けられている。充電実行部30は、受電用制御回路29から取得した整流、降圧後の電力に基づき、補助用2次電池19を充電する。なお、充電実行部30が充電実行手段に相当する。
【0036】
電子キー2には、例えばLEDからなる報知部31と、例えば液晶画面からなるディスプレイ32とが設けられている。報知部31やディスプレイ32は、補助用2次電池19が充電中であることをユーザに通知する。
【0037】
キー制御部12には、報知部31やディスプレイ32の動作を管理する報知制御部33が設けられている。報知制御部33は、電力電波Svが補助用2次電池19に流入して補助用2次電池19が充電されている間、報知部31を点灯させたり、ディスプレイ32に充電中である旨をメッセージ表示したりする。
【0038】
次に、本例の電子キー充電システムの動作を、図4に従って説明する。
電子キー2のメイン電源15が電池切れに陥ったとき、この電子キー2で車両1のドアロックを解錠するには、図4(a)に示すように、まずは車外ドアハンドルノブ25のロックボタン25aを所定回数押圧操作する。特殊操作検出部24は、車外ドアハンドルノブ25における特殊操作を検出すると、特殊操作有り通知を電力電波送信制御部23に出力する。
【0039】
電力電波送信制御部23は、特殊操作検出部24から特殊操作有り通知を取得すると、図4(b)に示すように、送電アンテナ21から電力電波Svの送信を開始する。このとき、電力電波Svは、電子キー2を一時的に使用できる分だけ送信される。本例の場合、ドアロックを解錠してエンジンを始動させるまでには、少なくとも車外照合と車内照合との2回の照合を実行しなければならないため、例えば数回のID照合が可能な電力電波Svが送信される。なお、電力電波Svの送信開始は、特殊操作完了時を基準としてもよいし、電子キー2が電力電波Svを受信して充電を開始してからを基準としてもよい。
【0040】
続いて、図4(c)に示すように、ユーザは電子キー2を窓ガラス20越しに送電アンテナ21に密着させる。つまり、電子キー2を送電アンテナ21に平行にかざす。送電アンテナ21の通信エリアEsに電子キー2が進入すると、電子キー2は受電アンテナ28にて電力電波Svを受信する。
【0041】
充電実行部30は、受電アンテナ28で受信した電力電波Svを基に、補助用2次電池19を充電する。補助用2次電池19は、受電用制御回路29によって過度な電圧がかからないように、好適な電圧値にて充電される。また、補助用2次電池19の充電時、報知制御部33は報知部31を点灯(点滅)させることにより、補助用2次電池19が充電中であることをユーザに報知する。さらに、補助用2次電池19の充電時、報知制御部33は、ディスプレイ32に例えば「充電中です」等のメッセージや充電残り時間等を表示する。充電残り時間は、補助用2次電池19の容量が予め分かっているので、空の補助用2次電池19を充電するのに要する時間を最大とし、そこから充電実施時間を減算することで算出する。補助用2次電池19は、キー制御部12、LF受信機13、UHF送信機14、操作ボタン18、報知部31及びディスプレイ32等の電源となる。
【0042】
電力電波Svの送信が終了すると、電子キー2の補助用2次電池19には、数回分のID照合が可能な分だけ電力が蓄電される。よって、充電完了後、図4(d)に示すように、電子キー2が車外発信機9の通信エリアExに入っていれば、通常通り車外照合が成立し、ドアロックが解錠可能となる。また、乗車後は、この電子キー2にて車内照合も成立可能となるので、エンジンも問題なく始動可能となる。
【0043】
また、車両登録されている電子キー2以外では充電を使用できないようにするために、充電開始の条件に車両1と電子キー2との間の認証成立を課してもよい。この場合、照合ECU8には、車両1側において認証動作を実行する車両側認証部34が設けられている。車両側認証部34は、送電アンテナ21が電力電波Svを送信するとき、電力電波Svの送信に並行して、車外発信機9からリクエスト信号Srqを送信させる。なお、車両側認証部34が認証手段を構成する。
【0044】
一方、キー制御部12には、電子キー2側において認証動作を実行するキー側認証部35が設けられている。キー側認証部35は、送電アンテナ21で電力電波Svを受信しているときに、LF受信機13で電力電波Svを受信すると、充電における認証動作として、ID信号SidをUHF送信機14から送信する。なお、このときの電子キー2は、充電中の補助用2次電池19を電源として動作する。また、キー側認証部35が認証手段を構成する。
【0045】
照合ECU8は、充電実行中に車両チューナ11にてID信号Sidを受信すると、ID照合(充電時認証)を行い、ID照合が成立すれば、電力電波Svの送信を継続する。一方、ID照合が成立しないときには、その時点で電力電波Svの送信を強制終了する。よって、車両登録されていない電子キーを送電アンテナ21に近づけても、その電子キーは充電することができない。
【0046】
以上により、本例においては、車両1の窓ガラス20に設置された送電アンテナ21に、受電アンテナ28を搭載した電子キー2を窓ガラス20越しに密着させ、送電アンテナ21から送信される電力電波Svにて、電子キー2の補助用2次電池19を充電可能とする。よって、電子キー2のメイン電源15が電池切れに陥っても、この充電操作を行って補助用2次電池19を充電すれば、電子キー2を補助用2次電池19にて動作させることが可能となる。このため、電子キー2で車外照合や車内照合が成立可能となるので、ドアロック解錠からエンジン始動までの操作を問題なく行うことが可能となる。
【0047】
ところで、これまでの電子キー2では、電池切れ対応として、エマージェンシー用のメカニカルキーが備え付けられていた。しかし、メカニカルキーは、電子キー2の使用態様とはそもそも異なるため、電池切れに陥ったとき、直ぐにメカニカルキーを使用すれば対応可能と認識できるものではなく、ユーザを困惑させる可能性が高い。しかし、本例の場合は、電子キー2を無線で充電して再度使用可能とするものであるので、照合操作自体は今までと変わらず、この点で利便性が高いと言える。なお、これはトランスポンダ機能の場合でも同様に言える。
【0048】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電子キー2にて車外照合を行うとき、電子キー2のメイン電源15が電池切れに陥った場合は、車両1の窓ガラス20に設置された送電アンテナ21に電子キー2を密着させ、送電アンテナ21から送信される電力電波Svによって電子キー2の補助用2次電池19を充電する。そして、電子キー2を補助用2次電池19により動作させ、通常の車外照合を実行可能とする。よって、電子キー2が車外にあるときに電池切れに陥っても、電子キー2を充電して再使用することが可能となるので、通常通りの態様で車外照合が実行できる。このため、ユーザを煩わせることなく、車両操作を実行することができる。
【0049】
(2)電子キー2の補助用2次電池19を電力電波Svによって無線により充電可能としたので、電子キー2を車外から窓ガラス20越しに送電アンテナ21に近づけるという簡素な操作によって、電子キー2の補助用2次電池19を充電することができる。
【0050】
(3)電子キー2は電力電波Svにより受電される非接触式であるので、例えば電子キー2の本体ケース等にコネクタ等の部品を設けずに済み、電子キー2本体ケースを部品間隙間や孔等のないものとすることができる。よって、電子キー2の防水性を確保することができる。
【0051】
(4)車外ドアハンドルノブ25のロックボタン25aを所定回数操作すると、送電アンテナ21から電力電波Svの送信が開始されて、充電動作が開始される。よって、電子キー2を充電するには、このような特殊操作が必要となるので、電力電波Svを無駄に送信させずに済む。従って、電子キー2を充電するときのみ電力電波Svを送信することになるので、車両1の電源を省電力化することができる。
【0052】
(5)電子キー2の補助用2次電池19を充電するとき、電子キー2を一時的使用する分だけの電力電波Svを送信する。このため、電子キー2に必要最低限の電力のみを充電するだけで済むので、短い充電時間で、より効率よく補助用2次電池19を充電することができる。
【0053】
(6)補助用2次電池19を充電するとき、電子キー2が車両登録されたキーか否かを認証し、認証が成立する電子キー2のみ充電を許可する。よって、車両登録されていない電子キー2では充電を実行することができないので、不正な充電行為(例えば盗電等)を防止することができる。
【0054】
(7)電子キー充電システムの通信に近距離無線通信を使用している。このため、電子キー2を車両1の送電アンテナ21に密着させて初めて充電が開始されるので、電子キー2を充電するには、電子キー2を送電アンテナ21に密着させるというユーザ意志が必要となる。よって、真にユーザが要求したときにのみ充電が実行されるので、無駄な充電を実行させずに済む。
【0055】
(8)通常は容量の大きいメイン電源15にて電子キー2を動作させ、メイン電源15が電池切れになったときに、補助用2次電池19を充電して、これを電源として使用する。よって、補助用2次電池19は小型のもので済むので、補助用2次電池19を搭載するに際して、電子キー2の体格が大型化したり、コストが大幅に増加したりするなどの問題は生じない。
【0056】
(9)電子キー2に報知部31やディスプレイ32を設けて、充電中であることを報知部31やディスプレイ32にてユーザに通知する。よって、電子キー2の補助用2次電池19が充電されていることを、ユーザに的確に通知することができる。
【0057】
(10)送電アンテナ21に自位置を通知するアンテナ位置通知部26を設けたので、例えば夜間であっても、送電アンテナ21の位置をユーザに通知することができる。
(11)窓ガラス20の内面に送電アンテナ21を取り付けたので、送電アンテナ21が車外に露出しない。よって、送電アンテナ21を車外から不正に取り外すことができなくなるので、送電アンテナ21の盗難を防止することができる。
【0058】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・送電アンテナ21は、窓ガラス20の内面に貼着されることに限らず、窓ガラス20の内部に埋め込まれていてもよい。
【0059】
・送電アンテナ21の配置場所は、窓ガラス20に限定されず、例えばボディのピラー、ミラー、フェンダー、バンパー等の樹脂製の部品に取り付けることも可能である。
・ガソリン給油部のような鍵付きの蓋の内部に送電アンテナ21を設置しておき、鍵付きの蓋を例えばメカニカルキー等により開状態にして、電子キー2を送電アンテナ21に近づけて充電を行うものでもよい。
【0060】
・送電アンテナ21を後付けとして、車両購入後、量販店等で送電アンテナ21を購入して窓ガラス20に貼り付けてもよい。
・メイン電源15が2次電池の場合は、メイン電源15と補助用2次電池19をまとめて1つとしてもよい。
【0061】
・メイン電源15が2次電池の場合、満充電は車内や住宅などに設けた同様のシステムにより、時間をかけて行うこととしてもよい。この場合、別の機器や装置の充電システムが同一規格のものであれば、このシステムを使用して電子キー2を充電することも可能である。
【0062】
・電子キー2の充電は、電力電波Svの送信強度(送信磁界強度)を上げるなどして、急速充電としてもよい。
・電子キー充電システムの充電形式は、電子キー2を送電アンテナ21に密着させる近距離無線通信に限定されず、他の種々の形式が採用可能である。また、通信距離も適宜変更可能である。
【0063】
・蓄電手段は、2次電池に限定されず、例えば電気2重層コンデンサ等の他の部品が使用可能である。
・補助用2次電池19は、充電されるとき、充電残量が「0」に限らず、所定量の電力が残っている状態でもよい。
【0064】
・報知や通知に使用する部材やその表現形式は、実施形態に述べた例に限らず、適宜変更可能である。
・車両1や電子キー2に設置した各アンテナは、他の種類のものに適宜変更可能である。
【0065】
・車両1や電子キー2の各アンテナは、機能ごとに別々に設けられることに限らず、1つのアンテナを複数の機能で共用してもよい。この場合、アンテナの総数を削減することができる。
【0066】
・電子キーシステム3や電子キー充電システムで使用する周波数は、LFやUHFに限定されず、例えばHF(High Frequency)等に変更可能である。
・キー操作フリーシステムは、車両1→電子キー2の通信(往路)と、電子キー2→車両1の通信(復路)とで周波数が異なることに限らず、往路及び復路ともに周波数を同じ(例えばUHF)としてもよい。
【0067】
・充電時認証は、電子キーシステム3を使用した認証に限定されず、例えばイモビライザーシステムを使用してもよい。また、送電アンテナ21及び受電アンテナ28をともに送受信アンテナとして、これらアンテナ間で行う双方向通信にてIDコードを確認するものでもよい。
【0068】
・電子キー2は、形としてキーと分かるものに限らず、例えばICカードのような形状をなすものでもよい。また、電子キー2は、携帯電話等の通信端末でもよい。
・電子キー充電システムは、無線方式に限定されず、例えば有線方式を採用してもよい。この場合、車体に鍵付きの扉を用意し、この扉の内部に送電コネクタを設けておく。そして、鍵付きの扉を開けて、電子キー2に設けた受電コネクタを送電コネクタに接続することにより、電力を有線で電子キー2に供給するものでもよい。
【0069】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記電力供給制御手段は、前記電力を短時間の間において供給する。この構成によれば、充電時間を短く済ませることが可能となる。
【0070】
(ロ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記電力供給制御手段は、前記電子キーを急速充電するのに必要な電力を供給する。この構成によれば、電子キーの蓄電手段を短時間で充電することが可能となり、蓄電手段の充電時間を短く済ませることが可能となる。
【0071】
(ハ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)、(ロ)のいずれかにおいて、前記電子キーに設けられ、該電子キーが充電中であることを通知する充電中報知手段を備えた。この構成によれ、電子キーが充電中であることを、充電中報知手段によってユーザに通知することが可能となる。
【0072】
(二)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)〜(ハ)のいずれかにおいて、前記車両に設けられ、前記電力供給手段の配置場所を示す充電場所通知手段を備えた。この構成によれば、例えば夜間のとき、充電場所通知手段によって電力供給手段の場所が分かるので、利便性をよくすることが可能となる。
【0073】
(ホ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)〜(二)のいずれかにおいて、前記送電アンテナは、車内に設置されている。この構成によれば、送電アンテナを車外から不正に取り外すことができないので、送電アンテナの盗難を防止することが可能となる。
【0074】
(へ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)〜(ホ)のいずれかにおいて、前記蓄電手段は、補助用であり、前記電子キーは、前記蓄電手段の他に、メイン電源を備えている。この構成によれば、蓄電手段は非常用として設ければよいので、小型で汎用的なものを蓄電手段として使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1…車両、2…電子キー、19…蓄電手段としての補助用2次電池、20…窓ガラス、21…電力供給手段としての送電アンテナ、23…電力供給制御手段及び送信制御手段を構成する電力電波送信制御部、24…操作検出手段としての特殊操作検出部、28…電力取得手段としての受電アンテナ、30…充電実行手段としての充電実行部、34…認証手段を構成する車両側認証部、35…認証手段を構成するキー側認証部、Sv…電力電波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーに電源として搭載された蓄電手段を、車両の電源にて充電可能な電子キー充電システムにおいて、
前記車両に設けられ、車外に位置する前記電子キーに、前記蓄電手段を充電するのに必要な電力を供給する電力供給手段と、
前記車両に設けられ、前記電力供給手段の動作を管理する電力供給制御手段と、
前記電子キーに設けられ、前記電力供給手段から供給される電力を取得する電力取得手段と、
前記電子キーに設けられ、前記電力取得手段にて取得した電力を基に当該電子キーの前記蓄電手段を充電する充電実行手段と
を備えたことを特徴とする電子キー充電システム。
【請求項2】
前記電力供給手段は、車外に電力電波の送信エリアを形成可能な送電アンテナであり、
前記電力供給制御手段は、前記蓄電手段を充電するための前記電力電波を前記送電アンテナから送信させる送信制御手段であり、
前記電力取得手段は、前記電力電波を受信可能な受電アンテナであり、
前記充電実行手段は、前記受電アンテナにて受信した前記電力電波を基に、前記蓄電手段を充電する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キー充電システム。
【請求項3】
充電開始に必要な操作を検出する操作検出手段を備え、
前記電力供給制御手段は、充電開始に必要な操作がなされたことを前記操作検出手段にて検出すると、前記電力供給手段による電力供給の動作を開始する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キー充電システム。
【請求項4】
前記電力供給制御手段は、前記電子キーを一時的に使用できる分だけの電力を供給する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キー充電システム。
【請求項5】
前記電子キーと前記車両とを認証する認証手段を備え、
前記電力供給制御手段は、前記認証手段にて認証が成立したことを条件に、前記電力の供給を開始する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電子キー充電システム。
【請求項6】
前記電子キーと前記送電アンテナとの通信方式は、前記電子キーを前記車両の窓ガラス越しに前記送電アンテナへ密着させて通信する近距離無線通信である
ことを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか一項に記載の電子キー充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67530(P2012−67530A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213960(P2010−213960)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】