説明

電子ユニットの防水構造

【課題】防水栓付きコネクタを用いる必要がなく構造が簡単な電子ユニットの防水構造Aを提供する。
【解決手段】第1端子31を収容した収容部30を区画し開放部50aを有する副ケース25に、コネクタ26が連結される。コネクタ26の絶縁体33がケーブル38を接続した第2端子34を保持する。絶縁体33の壁部35が開放部50aを覆うことにより収容部30の一部を区画する。絶縁体33はケーブル38を副ケース25内に引き込むケーブル引込孔39を形成する。収容部30に注入されるポッティング樹脂が、ケーブル引込孔39の内周39aとケーブル38の外周38aとの間の隙間に充填されて硬化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ユニットの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力回路を構成する回路体を収容したケース本体の空間内において、防水対象となる部分に、液状の防水用樹脂を充填し、これを硬化させて防水層を形成する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
また、ケース内の液溜め部に注入した液状のポッティング材を硬化させて、ケース内のプリント基板を防水保護する技術が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80370号公報
【特許文献2】特開2005−160206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルをケース内の回路に接続する場合、ケーブルの端部のコネクタをケース側のコネクタに接続する方式が一般的である。ケース内への水の侵入を防ぐために、各コネクタには、通例、ゴム製の防水栓を有する防水コネクタが用いられる。
しかしながら、防水栓を有する防水コネクタは構造が複雑で、製造コストが高いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、防水栓付きコネクタを用いる必要がなく構造が簡単な電子ユニットの防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、第1端子(31)を収容した収容部(30)を区画し、前記収容部を開放可能な開放部を有するケース(25)と、前記ケースに取り付けられた絶縁体(33)、および前記絶縁体によって支持され、ケーブルの導体端部(42)を前記第1端子に接続した第2端子(34)を含むコネクタ(26)と、ポッティング樹脂(27)と、を備え、前記絶縁体は、前記開放部を覆うことにより前記収容部の一部を区画した壁部(35)と、前記ケーブル(38)をケース内に引き込むケーブル引込孔(39)を区画し、前記壁部に連結されたケーブル引込部(36)と、を含み、前記ポッティング樹脂は、前記ケーブル引込孔の内周(39a)と前記ケーブルの外周(38a)との間の隙間(S1)および前記収容部に充填されて硬化している電子ユニットの防水構造(A)を提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2のように、前記壁部は、一対の側縁(44,45)を有し、前記ケースは、前記コネクタの壁部の各側縁をそれぞれスライド方向(X1)に挿入可能な一対の挿入溝(46,47)を有していてもよい。
【0008】
請求項3のように、前記壁部の各側縁が、前記ケースの対応する挿入溝に圧入されており、前記壁部の各側縁の嵌合面(52,53,56,57)および対応する挿入溝の嵌合面(54,55,58,59)は、前記スライド方向に対して互いに逆向きで且つ等しい角度で傾斜したテーパ面からなっていてもよい。
請求項4のように、前記第1端子および前記第2端子の互いの接触面(31S,34S)が、前記壁部の板厚方向(T1)と直交し且つ前記スライド方向に平行であってもよい 請求項5のように、前記引込孔の内周に、前記ケーブルの外周に密接する環状突起(43)が設けられていてもよい。
【0009】
請求項6のように、前記ポッティング樹脂は、樹脂ポッティング時に水平とされたポッティング時水平面(271)を有し、前記ケーブル引込孔は、前記ポッティング時水平面を水平としたときに、前記壁部から斜め下方に延びていてもよい。
請求項7のように、前記絶縁体に、樹脂ポッティング時の空気を逃がす空気逃がし孔(80)が設けられていてもよい。
【0010】
請求項8のように、前記絶縁体は、第1分割体(63)と第2分割体(64)を組み合わせて構成され、前記第1分割体と前記第2分割体の合わせ面(63a,64a)の一方に設けられた凸条(69)が他方に設けられた凹溝(70)に嵌合されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ケースにコネクタを取り付けて、コネクタの第2端子をケースの第1端子に接続するとともに、コネクタの絶縁体の壁部によってケースの開放部を閉塞することにより、コネクタの絶縁体の壁部によってケースの収容部の一部を区画する。次いで、ケーブル引込孔の内周とケーブルの外周との間の隙間内およびケースの収容部内に、液状のポッティング樹脂を充填した後、硬化したポッティング樹脂により防水機能を得ることができる。従来用いていた防水栓付きコネクタを用いる必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、コネクタの絶縁体の壁部の各側縁が、ケースの対応する挿入溝に嵌合してラビリンス構造を呈するので、液状のポッティング樹脂の漏れを抑制することができる。また、コネクタの絶縁体の壁部の各側縁をケースの対応する挿入溝にスライド挿入するので、組み立てが容易である。
請求項3の発明によれば、コネクタの絶縁体の壁部の各側縁が、ケースの対応する挿入溝にテーパ面同士の嵌合により圧入されているので、液状のポッティング樹脂の漏れを一層抑制することができ、しかも、ケースに対するコネクタの位置精度を高くすることができる。したがって、第1端子および第2端子間の位置精度を高くでき、両端子間の良好な接触を確保することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、コネクタの絶縁体の壁部の各側縁を、ケースの対応する挿入溝にスライド挿入する動作で、第2端子の接触面に対して第1端子の接触面をスライドさせて両端子の接続を確保する。特に、コネクタの絶縁体の壁部の各側縁が、ケースの対応する挿入溝に圧入されて、両端子間の位置精度が高くされているので、両端子間に、より良好な接触を確保することができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、ケーブル引込孔の内周に設けられた環状突起がケーブルの外周に密接するので、ケーブル引込孔内に侵入した硬化前の液状のポッティグ樹脂が漏れ出すことを抑制することができる。
請求項6の発明によれば、液状のポッティング樹脂を注入するときに、気泡が生じ難いので、ケーブル引込孔内にポッティング樹脂を密に充填することができる。
【0015】
請求項7の発明によれば、液状のポッティング樹脂を注入するときに、絶縁体内の空気を空気逃がし孔を通して逃がすことができるので、絶縁体内にポッティング樹脂を密に充填することができる。
請求項8の発明によれば、コネクタを構成する第1分割体および第2分割体の合わせ面を凸条と凹溝を用いてラビリンス結合させているので、硬化前の液状のポッティング樹脂が漏れ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態の電子ユニットの防水構造が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】電子ユニットの防水構造の要部の断面図であり、(a)は製造後の状態を示し、(b)はポッティングの工程を示している。
【図3】防水構造の要素であるコネクタの絶縁体のケーブル引込部の要部の縦断面図である。
【図4】電子ユニットの副ケースおよびコネクタの概略分解斜視図である。
【図5】コネクタの側面図である。
【図6】コネクタおよび副ケースの要部の部分断面分解正面図である。
【図7】コネクタの第1分割体および第2分割体の分解斜視図である。
【図8】コネクタの絶縁体の一部を構成する第1分割体を引っくり返して見た斜視図である。
【図9】絶縁体のケーブル引込部の要部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子ユニットの防水構造が適用された車両用操舵装置としての電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、ステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0018】
本実施の形態では、操舵補助機構5がステアリングシャフト6にアシスト力(操舵補助力)を与える例に則して説明する。しかしながら、本発明を、操舵補助機構5が後述するピニオン軸にアシスト力を与える構造や、操舵補助機構5が後述するラック軸にアシスト力を与える構造に適用することも可能である。
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。
【0019】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に入力された操舵トルクを検出する。トルクセンサ11のトルク検出結果は、電子ユニットとしてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)12に入力される。また、車速センサ90からの車速検出結果がECU12に入力される。中間軸7は、ステアリングシャフト6と転舵機構4とを連結している。
【0020】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪3が連結されている。
ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が設けられている。
【0021】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の途中部には、前記ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることで、転舵輪3を転舵することができる。
【0022】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。減速機構19は、電動モータ18の駆動力が入力される駆動ギヤ(入力軸)としてのウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール21とを含む。
【0023】
ウォーム軸20は、図示しない継手を介して電動モータ18の出力軸(図示せず)に連結されている。ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは一体回転可能に連結されている。
電動モータ18がウォーム軸20を回転駆動すると、ウォーム軸20によってウォームホイール21が回転駆動され、ウォームホイール21およびステアリングシャフト6が一体回転する。これにより、操舵補助力がステアリングシャフト6に伝達される。
【0024】
電動モータ18は、ECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11からのトルク検出結果、および車速センサ22からの車速検出結果等に基づいて電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、トルクと目標アシスト量との関係を車速毎に記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力を目標アシスト量に近づけるように制御する。
【0025】
図2(a)は、電子ユニットの防水構造Aの要部の断面図である。図3は電子ユニットの防水構造Aの要部の分解斜視図である。電子ユニットとしてのECU12は、基板23その他の電子部品(図示せず)を収容した例えばアルミニウム合金製の主ケース24と、第1端子31その他の端子群を収容した例えば合成樹脂製の副ケース25とを備えている。副ケース25には、例えばトルクセンサ11からの信号をECU12に取り込むための配線を連結するコネクタ要素(例えば後述する第1端子31)や、車両側の統合ECUとCAN(Controller Area Network:コントローラエリアネットワーク)を介して信号伝達するための配線を連結するコネクタ要素(例えば端子)が収容されている。
【0026】
電子ユニットの防水構造Aは、副ケース25と、副ケース25に取り付けられたコネクタ26と、副ケース25内およびコネクタ26内の要部に液状で充填された後、硬化したポッティング樹脂27とにより構成されている。
図2(a)に示すように、主ケース24の外壁28に、例えば矩形の取付孔29が設けられ、その取付孔20に副ケース25が取り付けられている。副ケース25は、取付孔29を覆う状態で且つ一部が取付孔29から突出している。副ケース25は、収容部30を区画している。副ケース25の収容部30には、主ケース24内に配置された基板23から延びる第1端子31が、副ケース25の底板32を挿通して収容されている。
【0027】
底板32の上面32aが、図2(b)に示すように、液状のポティング樹脂27Lが収容部30内に注入される樹脂ポッティング時に水平とされる基準面BPを構成している。底板32の下面に設けられた凹部32bに、基板23が保持されている。第1端子31の一端は、主ケース24内で基板23の導電部に接続されている。
コネクタ26は、副ケース25に取り付けられた絶縁体33と、絶縁体33によって支持され第1端子31に接続された第2端子34とを備えている。第2端子34は、導体端部42を接続した第1部分341と、第1端子31に接続された第2部分342とを有している。第1部分341と第2部分342とは直交しており、第1部分341は基準面BPと平行である。
【0028】
絶縁体33は、副ケース25に取り付けられた壁部35と、壁部35に連結された管状のケーブル引込部36と、壁部35からケーブル引込部36とは反対側に延設され、第2端子34を支持した端子保持部37とを備えている。第2端子34の第2部分342と壁部35とは、壁部35の板厚方向T1に対向している。
壁部35は、副ケース25に取り付けられた状態で副ケース25の壁の一部を構成して、収容部30の一部を区画している。ケーブル引込部36は、ケーブル38を副ケース25内に引き込むためのケーブル引込孔39を区画している。
【0029】
ケーブル38は、複数の被覆電線40と、これらの被覆電線40を挿通させた例えば合成樹脂製の絶縁性のチューブ41とを備えている。被覆電線40の端部は皮剥され、導体端部42が、第2端子34に抵抗溶接により接続されている。ケーブル引込部36のケーブル引込孔39の内周39aには、ケーブル38の外周38a(チューブ41の外周およびチューブ41から露出した各被覆電線40の外周)に密接する環状突起43(図3も参照)が設けられている。
【0030】
図2(a)に示すように、ポッティング樹脂27は、収容部30内の大部分に充填されて固化されている。副ケース25の上面が開放されているため、ポッティング樹脂27が外部に開放されている。
また、ポッティング樹脂27の一部は、コネクタ26のケーブル引込孔39の内周39aとケーブル38の外周38aとの間の隙間S1に充填されて固化されている。環状突起43がケーブル38の外周38aに密接しているので、硬化前の液状のポッティング樹脂27Lが、図2(b)に示すように収容部30内に注入されて、図2(a)に示すように、液状のポッティング樹脂27Lがケーブル引込孔39内の隙間S1に充填されたときに、液状のポッティング樹脂27Lがケーブル引込孔39から外部(図において斜め下方)へ漏れ出すことが、環状突起43の働きで抑制されている。
【0031】
ポッティング樹脂27は、樹脂ポッティング時に水平とされたポッティング時水平面271を有している。ポッティング時水平面271は基準面BPと平行である。ケーブル引込部36のケーブル引込孔39は、ポッティング時水平面271を水平としたときに、壁部35から斜め下方に延びている。基準面BPやポッティング時水平面271は、ECU12(本電子ユニット)が車両へ取り付けられた状態では、水平面に対して傾斜していてもよい。
【0032】
また、絶縁体33の例えばケーブル引込部36に、樹脂ポッティング時の空気を逃がす空気逃がし孔80が設けられている。具体的には、空気逃がし孔80は、ケーブル引込部36に一体に設けられた筒状突起81を挿通して設けられている。筒状突起81および空気逃がし孔80は、ポッティング時水平面271が水平にされたときに上方に向く方向に延びている。
【0033】
図4および図5に示すように、コネクタ26の絶縁体33の壁部35は、第1側縁44および第2側縁45を有している。副ケース25は、壁部35の第1側縁44および第2側縁45を、それぞれ、スライド方向X1に挿入可能な第1挿入溝46および第2挿入溝47を有している。すなわち、両挿入溝46,47はスライド方向X1に平行に延びている。また、第2端子34の第2部分342および第1端子31は、スライド方向X1と平行である。
【0034】
副ケース25は、主ケース24の取付孔29を内側から覆う底板32と、底板32から取付孔29を通して主ケース24の外方〔図2(a)では上方〕へ延びる第1壁48および第2壁49(図4参照)と、底板32から延び開放部50aを有する第3壁50と、底板32から延び開放部51aを有する第4壁51とを有している。
図4に示すように、第1壁48の内面に設けられた凹部と第3壁50の内面によって、第1挿入溝46が区画されている。第2壁49の内面に設けられた凹部と第4壁51の内面によって、第2挿入溝47が区画されている。
【0035】
コネクタ26の壁部35の第1側縁44および第2側縁45が、対応する挿入溝46,47に挿入されて、壁部35によって第3壁50の開放部50aが覆われた状態で、且つ図示しない要素(壁部35に相当するもの)によって、第4壁51の開放部51aが覆われた状態で、底板32、各壁48〜51、壁部35および前記図示しない要素(壁部35に相当するもの)によって、収容室30が区画されることになる。
【0036】
コネクタ26の壁部35のスライド方向X1側の端縁60は、副ケース25の挿入溝61に圧入されるようになっている。開放部50aの一部を区画する、前壁50の部分50bに近接して対向するリブ62が、底板32から突出形成されている。挿入溝61は、前壁50の部分50bとリブ62との間に区画されている。
図5に示すように、壁部35の各側縁44,45の嵌合面52,53および対応する挿入溝46,47の嵌合面54,55は、スライド方向X1に関して互いに逆向きで且つ等しい角度で傾斜したテーパ面からなる。また、第1端子31および第2端子34の互いの接触面31S,34Sが、スライド方向X1に平行である。図4に示されている各側縁44,45の嵌合面52,53は、壁部35の板厚方向T1に対向する面である。
【0037】
一方、図6に示すように、壁部35の幅方向W1(スライド方向X1および板厚方向T1の双方に直交する方向に相当)に関する、両側縁44,45の対向面である嵌合面56,57および対応する挿入溝46,47の嵌合面58,59は、スライド方向X1に関して互いに逆向きで且つ等しい角度で傾斜したテーパ面からなる。
図7を参照して、コネクタ26の絶縁体33は、第1分割体63および第2分割体64を組み合わせて構成されている。第1分割体63は、壁部35の半体351とケーブル引込部36の半体361を有しており、第2分割体64は、壁部35の半体352とケーブル引込部36の半体362とを有している。
【0038】
壁部35の両半体351,352を組み合わせて壁部35が構成され、ケーブル引込部36の両半体361,362を組み合わせてケーブル引込部36が構成される。端子保持部37は、第2分割体64に設けられている。 ケーブル引込部36の両半体361,362の何れか一方の半体(図示の例では半体351)に設けられた弾性変形可能な環状フック65,66が、他方の半体(図示の例では半体352)に設けられた係合突起67,68に引っ掛け係合することにより、両分割体63,64の結合状態が強固に保持されるようになっている。
【0039】
また、図7および第1分割体63を裏返した斜視図である図8を参照して、各分割体63,64の合わせ面63a,64aは、壁部35の対応する半体351,352からケーブル引込部36の対応する半体361,362まで延びている。
図9に示すように、両分割体63,64の各一対の合わせ面63a,64aの何れか一方(図示の例では一対の合わせ面64a)に設けられ、その一方の合わせ面(一対の合わせ面64a)の延びる方向に沿って延びる凸条69が、他方の合わせ面(図示の例では一対の合わせ面63a)に設けられ、その他方の合わせ面(一対の合わせ面63a)の延びる方向に沿って延びる凹溝70に嵌合することより、ラビリンス構造を構成して、両分割体63,63が液密的に組み合わされている。
【0040】
本実施の形態によれば、副ケース25にコネクタ26を取り付けて、コネクタ26の第2端子34を副ケース25の第1端子31に接続するとともに、コネクタ26の壁部35によって副ケース25の開放部50aを閉塞することにより、コネクタ26の壁部35によって副ケース25の収容部30の一部を区画する。次いで、ケーブル引込孔39の内周39aとケーブル38の外周38aとの間の隙間S1内および副ケース25の収容部30内に、液状のポッティング樹脂27Lを充填した後、硬化したポッティング樹脂27により防水機能を得る。従来用いていた防水栓付きコネクタを用いる必要がなく、構造を簡素化することができる。
【0041】
また、コネクタ26の絶縁体33の壁部35の各側縁44,45が、副ケース25の対応する挿入溝46,47に嵌合してラビリンス構造を呈するので、液状のポッティング樹脂27Lの漏れを抑制することができる。また、コネクタ26の絶縁体33の壁部35の各側縁44,45を副ケースの対応する挿入溝46,47にスライド挿入するので、組み立てが容易である。
【0042】
また、コネクタ26の絶縁体33の壁部35の各側縁4,45が、副ケース25の対応する挿入溝46,47に、テーパ面同士の嵌合(嵌合面52,53と嵌合面54,55との嵌合)により圧入されているので、液状のポッティング樹脂27Lの漏れを一層抑制することができ、しかも、副ケース25に対するコネクタ26の位置精度を高くすることができる。したがって、第1端子31および第2端子34間の位置精度を高くでき、両端子31,34間の良好な接触を確保することができる。
【0043】
また、コネクタ26の絶縁体33の壁部35の各側縁44,45を副ケース25の対応する挿入溝46,47にスライド挿入する動作で、第1端子31の接触面31Sに対して第2端子34の接触面34Sをスライドさせて両端子31,34の接続を確保する。特に、壁部35の各側縁44,45が対応する挿入溝46,47に圧入されて、両端子31,34間の位置精度が高くされているので、両端子31,34間に、より良好な接触を確保することができる。
【0044】
また、ケーブル引込孔39の内周39aに設けられた環状突起43がケーブル38の外周38a(具体的にはチューブ41の外周)に密接するので、ケーブル引込孔39内に侵入した硬化前の液状のポッティグ樹脂27Lが漏れ出すことを抑制することができる。
また、ポッティング樹脂27は、樹脂ポッティング時に水平とされたポッティング時水平面271を有し、ケーブル引込孔39が、ポッティング時水平面271を水平としたときに、壁部35から斜め下方に延びている。したがって、液状のポッティング樹脂27Lを注入するときに、気泡が生じ難いので、ケーブル引込孔39内にポッティング樹脂27を密に充填することができる。
【0045】
また、絶縁体33に、樹脂ポッティング時の空気を逃がす空気逃がし孔80が設けられているので、液状のポッティング樹脂27Lを注入するときに、絶縁体33内(特にケーブル引込孔39内)の空気を、空気逃がし孔80を通してスムーズに逃がすことができるので、絶縁体33内(特にケーブル引込孔39内)に、ポッティング樹脂27を密に充填することができる。
【0046】
また、コネクタ26を構成する第1分割体63および第2分割体64の合わせ面63a,64aを、互いに嵌合する凸条69と凹溝70を用いてラビリンス結合させているので、硬化前の液状のポッティング樹脂27Lが漏れ出すことを抑制することができる。
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0047】
1…電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)、5…操舵補助機構、12…ECU(電子ユニット)、18…電動モータ、A…電子ユニットの防水構造、23…基板、24…主ケース、25…副ケース、26…コネクタ、27…ポッティング樹脂、27L…液状のポッティング樹脂、271…ポッティング時水平面、30…収容部、31…第1端子、31S…接触面、32…底板、33…絶縁体、34…第2端子、342…第2部分、34S…接触面、35…壁部、351,352…半体、36…ケーブル引込部、361,362…半体、37…端子保持部、38…ケーブル、38a…外周、39…ケーブル引込孔、39a…内周、40…被覆電線、41…チューブ、42…導体端部、43…環状突起、44…第1側縁、45…第2側縁、46…第1挿入溝、47…第2挿入溝、48…第1壁、49…第2壁、50…第3壁、50a…開放部、51…第4壁、51a…開放部、52〜59…嵌合面、63…第1分割体、63a…合わせ面、64…第2分割体、64a…合わせ面、65,66…環状フック、67,68…係合突起、69…凸条、70…凹溝、80…空気逃がし孔、81…筒状突起、X1…スライド方向、S1…隙間、T1…板厚方向、W1…幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子を収容した収容部を区画し、前記収容部を開放可能な開放部を有するケースと、
前記ケースに取り付けられた絶縁体、および前記絶縁体によって支持され、ケーブルの導体端部を前記第1端子に接続した第2端子を含むコネクタと、
ポッティング樹脂と、を備え、
前記絶縁体は、前記開放部を覆うことにより前記収容部の一部を区画した壁部と、前記ケーブルを前記ケース内に引き込むケーブル引込孔を区画し、前記壁部に連結されたケーブル引込部と、を含み、
前記ポッティング樹脂は、前記ケーブル引込孔の内周と前記ケーブルの外周との間の隙間および前記収容部に充填されて硬化している電子ユニットの防水構造。
【請求項2】
請求項1において、前記壁部は、一対の側縁を有し、
前記ケースは、前記コネクタの壁部の各側縁をそれぞれスライド方向に挿入可能な一対の挿入溝を有している電子ユニットの防水構造。
【請求項3】
請求項2において、前記壁部の各側縁が、前記ケースの対応する挿入溝に圧入されており、
前記壁部の各側縁の嵌合面および対応する挿入溝の嵌合面は、前記スライド方向に対して互いに逆向きで且つ等しい角度で傾斜したテーパ面からなる電子ユニットの防水構造。
【請求項4】
請求項3において、前記第1端子および前記第2端子の互いの接触面が、前記壁部の板厚方向と直交し且つ前記スライド方向に平行である電子ユニットの防水構造。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項において、前記引込孔の内周に、前記ケーブルの外周に密接する環状突起が設けられている電子ユニットの防水構造。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項において、前記ポッティング樹脂は、樹脂ポッティング時に水平とされたポッティング時水平面を有し、
前記ケーブル引込孔は、前記ポッティング時水平面を水平としたときに、前記壁部から斜め下方に延びている電子ユニットの防水構造。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項において、前記絶縁体に、樹脂ポッティング時の空気を逃がす空気逃がし孔が設けられている電子ユニットの防水構造。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項において、前記絶縁体は、第1分割体と第2分割体を組み合わせて構成され、
前記第1分割体と前記第2分割体の合わせ面の一方に設けられた凸条が他方に設けられた凹溝に嵌合されている電子ユニットの防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−27281(P2013−27281A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163087(P2011−163087)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】