説明

電子写真用トナー、電子写真用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法

【課題】離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる電子写真用トナーの提供。
【解決手段】フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を被転写体のトナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する際の前記トナー像の形成に用いられ、非晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂と、融解温度が80℃以上100℃以下の炭化水素ワックスと、を含み、前記非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が前記炭化水素ワックスの融解温度よりも高い電子写真用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナー、電子写真用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては帯電、露光工程により感光体上に静電荷像を形成し、トナーを含む現像剤で静電荷像を現像し、転写、定着工程を経てトナー像が可視化される。
【0003】
ここで用いられる現像剤としては、トナー及びキャリアを含む2成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とが知られている。
【0004】
電子写真法においては、記録シート(被転写体)上に形成された未定着トナー像を定着して永久画像にする必要があり、その定着法として溶剤定着法、圧力定着法、および加熱定着法が知られている。未定着トナー像の定着には、一般に加熱によってトナーを溶融させ、記録シート上に融着させる加熱定着法が広く採用されている。
【0005】
ところで、定着ローラーにオイル塗布することなしに定着し離型性にも優れ、高品質の画像の得られる静電荷像現像用トナーを提供するため、少なくとも、着色剤、重合性単量体、極性成分を有する重合体及び/あるいは重合性単量体、及びポリアルキレンを含有し、懸濁重合法によって直接的に得られるトナーにおいて、該ポリアルキレンの含有量がトナー重合性単量体100重量部に対し10〜40重量部含有し、かつトナー表面成分比のXPS測定における該ポリアルキレンの存在比が5wt%未満であり、該トナー粒子全体の95〜45%の粒子の形状係数SF1が110以上(5〜55%の粒子の形状係数SF1が110未満)、であることを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、低い定着温度でも良好な定着性を得られ、消費電力の低下および装置の高速化が可能となり、高温オフセットの発生を防止でき、クリーナーレスの定着を実現でき、ドラムフィルミングの発生も防止でき、全体性能のバランスも良好なトナーを提供するため、ポリエステル系樹脂を主バインダー成分とし、フィッシャートロプシュワックスが1〜5重量%配合されていることを特徴とする静電潜像現像用トナーが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、オイル塗布装置を必要とせず、透明性に優れ、且つ広い定着温度域をもち耐オフセット性に優れたトナーを得るため、長鎖アルキルアルコールまたはアミンもしくはフルオロアルキルアルコールまたはアミンのうち1種または2種以上(a)、不飽和多価カルボン酸またはその無水物(b)および融解温度50〜150℃の合成炭化水素ワックス(c)を反応させることによって得られるワックス状生成物を含有することを特徴とする電子写真に適したトナー組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
また、画像品位を向上させることができるようにするため、(a)少なくとも着色剤、離型剤及び結着樹脂を含有する現像剤像を形成する現像装置と、(b)前記現像剤像を記録媒体に転写する転写部材と、(c)前記記録媒体に転写された現像剤像を加熱する第1の回転部材、及び転写された現像剤像を記録媒体に加圧する第2の回転部材を備えた定着器とを有するとともに、(d)前記第1の回転部材の表面に、あらかじめ離型剤が塗布されることを特徴とする画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
また、トナーの定着性がよく、高光沢の画質を得ることができ、極めて高品質の白黒画像およびカラー画像を得ることができる定着用部材を提供するため、表層がパーフロロエーテル基を主鎖に有するフッ素ゴムにより形成されていることを特徴とする定着用部材が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
また、ワックスを含有するオイルレストナーを使用して加熱後冷却剥離型定着方式で定着を行なった場合にも、ベルト状定着部材のワックスによる汚染を防止して、画像グロスの低下を抑制して画質の劣化を抑制し、長期間にわたって、高画質で、定着性に優れた画像が得られる画像形成方法を提供するため、トナー像が転写された記録媒体とベルト状定着部材を重ねた状態で加熱及び加圧し、冷却した後に前記記録媒体をベルト状定着部材から剥離することにより、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、前記トナーは、結着樹脂、着色剤、及びワックスを少なくとも含有しており、前記ベルト状定着部材は、前記トナーの含有するワックス単体を140℃で溶融、室温固化後の前進接触角が50度以上を示す表面層を有することを特徴とする画像形成方法が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−308759号公報
【特許文献2】特開平07−114204号公報
【特許文献3】特開2000−010338号公報
【特許文献4】特開2007−086754号公報
【特許文献5】特開平07−302009号公報
【特許文献6】特開2004−109687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる電子写真用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、請求項1に係る発明は、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を被転写体のトナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する際の前記トナー像の形成に用いられ、
非晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂と、融解温度が80℃以上100℃以下の炭化水素ワックスと、を含み、
前記非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が前記炭化水素ワックスの融解温度よりも高い電子写真用トナーである。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記炭化水素ワックスの融解温度におけるトナーの複素弾性率(G*)が、10000Pa以上100000Pa以下である請求項1に記載の電子写真用トナーである。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の電子写真用トナーを含む電子写真用現像剤である。
【0016】
請求項4に係る発明は、トナーが少なくとも収容され、前記トナーが請求項1又は請求項2に記載の電子写真用トナーであるトナーカートリッジである。
【0017】
請求項5に係る発明は、現像剤保持体を少なくとも備え、請求項3に記載の電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジである。
【0018】
請求項6に係る発明は、感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を請求項3に記載の電子写真用現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールを備え前記表面層を前記被転写体の前記トナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置である。
【0019】
請求項7に係る発明は、感光体を帯電する帯電工程と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を請求項3に記載の電子写真用現像剤によりトナー像として現像する現像工程と、前記トナー像を被転写体上に転写する転写工程と、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を前記被転写体の前記トナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる電子写真用トナーが提供される。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、炭化水素ワックスの融解温度におけるトナーの複素弾性率(G*)が本願の範囲外である場合に比較して、離型維持性がさらに向上する。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる電子写真用現像剤が提供される。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、画像ムラの発生が抑制された画像を得られ、離型維持性に優れる電子写真用トナーの供給を容易にするトナーカートリッジが提供される。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる電子写真用現像剤の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性を高められる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる画像形成装置が提供される。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、離型維持性に優れ、画像ムラの発生が抑制された画像を得られる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の電子写真用トナー、電子写真用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法の実施形態について説明する。
【0029】
<電子写真用トナー>
本実施形態に係る電子写真用トナー(以下、本実施形態のトナーと称することがある)は、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を被転写体のトナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する際の前記トナー像の形成に用いられ、非晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂と、融解温度が80℃以上100℃以下の炭化水素ワックスと、を含み、前記非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が前記炭化水素ワックスの融解温度よりも高い電子写真用トナーである。
【0030】
被転写体である用紙の凹凸に追従するようにトナー像を定着させるには、定着器に備えられる定着ロールの最表面(表面層)はゴム弾性を有することが望ましい。表面層がゴム弾性を有することで、定着されたトナー像に画像ムラの発生が抑制され高画質な定着画像が得られるようになる。しかし、オイルレス定着では従来のゴム材料・トナー材料を用いると離型性を維持することが不十分であるため、現在、オイルレス定着における定着ロールとしてゴム弾性層上にテフロン(登録商標)チューブを被覆した定着ロールが汎用的に用いられている。しかし、テフロン(登録商標)チューブは樹脂でありゴム材料に比べて弾性に劣るため、用紙の凹凸に追従するようにトナー像を定着させることが困難であり、定着の熱溶融と圧力により用紙凸部上のトナーが凹部に押し出されるようにしてトナー像に画像ムラが発生することがある。
【0031】
画像ムラの発生を防ぐためには、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールを用いるのが望ましい。フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールは、その表面層がフッ素成分由来の優れた離型性を示すのに加え、弾性を有する表面層が用紙の凹凸に追従するため画像ムラの発生が防止される。
【0032】
但し、フルオロカーボンシロキサンゴム等のフッ素系エラストマーは表面エネルギーが低く、トナー中に含まれるワックスをはじきすぎることがある。そのため、トナー像を熱溶融定着する際に、定着ロールの表面層と溶融したトナーとの界面にワックスが存在しにくく、離型性と離型維持性が不十分となることがある。
本実施形態においては、トナーに脂肪族結晶性ポリエステル樹脂を含有させ、ワックスとして炭化水素ワックスを用いることにより、結着樹脂とワックスとの濡れ性が向上し、定着ロールの表面層(フルオロカーボンシロキサンゴム)とトナー画像との界面にワックスがはじかれることなく存在することにより、離型性及び離型維持性が向上する。
また、本実施形態においては非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が炭化水素ワックスの融解温度よりも高く設定される。これにより、結着樹脂が軟化するよりも先に炭化水素ワックスが溶融するためトナー画像の表面に炭化水素ワックスがにじみ出しやすくなり、離型性及び離型維持性が向上する。
さらに、本実施形態によれば、表面層がゴム弾性を有するためラフ紙、エンボス加工紙等を被転写体として用いた場合であっても画像ムラの発生しにくい高画質な定着画像が得られる。
【0033】
以下、本実施形態に係る電子写真用トナーの構成について詳細に説明する。
本実施形態に係る電子写真用トナーは、非晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂と、融解温度が80℃以上100℃以下の炭化水素ワックスと、必要に応じて用いられる着色剤等のその他の添加剤とを含んで構成される。
【0034】
−脂肪族結晶性ポリエステル樹脂−
本実施形態においては、結着樹脂として脂肪族結晶性ポリエステル樹脂が用いられる。脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は保管性と低温定着性から、50℃以上100℃以下の範囲にあることが望ましく、55℃以上90℃以下の範囲にあることがより望ましく、60℃以上85℃以下の範囲にあることがさらに望ましい。融解温度が50℃を下回ると、保管トナーにブロックキングが生じるなどのトナー保管性や、定着後の定着画像の保管性が困難となることがある。また、融解温度が100℃を超える場合では十分な低温定着性が得られないことがある。
なお、上記結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、後述する示差走査熱量測定(DSC)により得られた吸熱ピークのピーク温度として求めた。
【0035】
本実施形態において「低温定着性」とは、トナー像を160℃以下で定着することをいう。
【0036】
本実施形態において「脂肪族結晶性ポリエステル樹脂」は、その構成成分が100%ポリエステル構造であるポリマー以外にも、ポリエステルを構成する成分と他の成分とを共に重合してなるポリマー(共重合体)も意味する。但し、後者の場合には、ポリマー(共重合体)を構成するポリエステル以外の他の構成成分が50質量%以下である。
【0037】
本実施形態のトナーに用いられる脂肪族結晶性ポリエステル樹脂は、例えば多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、本実施形態においては、前記結晶性ポリエステル樹脂として市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0038】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。
多価カルボン酸成分は、主鎖部分の炭素数6以上30以下の脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。脂肪族ジカルボン酸の主鎖部分の炭素数としては、6以上30以下であることが望ましく、6以上20以下であることがさらに望ましく、特に望ましくは8以上12以下である。
【0039】
さらに、前記脂肪族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つ脂肪族ジカルボン酸成分を含有してもよい。
【0040】
多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールが望ましく、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオールがより望ましい。脂肪族ジオールが分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下してしまう場合がある。主鎖部分の炭素数としては14以下であることがより望ましい。
【0041】
本実施形態のトナーに用いられる脂肪族結晶性ポリエステルの合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが望ましい。
【0042】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
多価アルコール成分のうち、前記脂肪族ジオールの含有量が80モル%以上であることが望ましく、より望ましくは90%以上である。脂肪族ジオールの含有量が80モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融解温度が降下する為、耐トナーブロッキング性、画像保存性及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
【0044】
なお、必要に応じて酸価や水酸基価の調製等の目的で、多価カルボン酸や多価アルコールを合成の最終段階で添加してもよい。多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類等が挙げられる。
【0045】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類等が挙げられる。
【0046】
多価カルボン酸成分の主鎖部分の炭素数(ポリエステル樹脂中に2種以上の多価カルボン酸成分が併用されている場合には炭素数の平均値)と多価アルコール成分の主鎖部分の炭素数(ポリエステル樹脂中に2種以上の多価アルコール成分が併用されている場合には炭素数の平均値)との合計は、14以上25以下が望ましく、16以上22以下がさらに望ましい。
主鎖部分の炭素数の合計が14以上25以下であれば、ポリエステル樹脂中に含まれるエステル基の数が減少するため、ポリエステル樹脂の極性が低くなる。そのため、ポリエステル樹脂とポリオレフィンワックスとの親和性が向上し、定着ロールの表面層と溶融したトナーとの界面にワックスが存在しやすくなる。
【0047】
前記脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度を180℃以上230℃以下として行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
重合性単量体が、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い重合性単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い重合性単量体とその重合性単量体と重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0048】
前記脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用される触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0049】
具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0050】
本実施形態に用いる脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するのに必要なKOHのmg数)は、3.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下の範囲であることが望ましく、6.0mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下の範囲にあることがより望ましく、8.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下の範囲にあることがさらに望ましい。
【0051】
酸価が3.0mgKOH/gよりも低いと水中への分散性が低下するため、湿式製法での乳化粒子の作製が困難となる場合がある。また凝集の際における乳化粒子としての安定性が著しく低下するため、効率的なトナーの作製が困難になる場合がある。一方、酸価が30.0mgKOH/gを超えると、トナーとしての吸湿性が増してしまい、トナーとしての環境影響を受けやすくなることがある。
【0052】
また、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下であることが望ましい。分子量(Mw)が、6,000未満であると、定着の際にトナーが紙等の記録媒体の表面へしみ込んで定着ムラを生じたり、定着画像の折り曲げ耐性に対する強度が低下する場合がある。また、重量平均分子量(Mw)が35,000を超えると、溶融時の粘度が高くなりすぎて定着に適当な粘度まで至るための温度が高くなることがあり、結果として低温定着性が損なわれる場合がある。
【0053】
上記重量平均分子量の測定は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行った。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
【0054】
本実施形態においては、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂以外のその他の結晶性ポリエステル樹脂を含んでもよい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂として、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂を主成分(50質量%以上)とすることが望ましい。
【0055】
トナー中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、3質量%以上40質量%以下の範囲であることが望ましく、より望ましく4質量%以上35質量%以下の範囲であり、さらに望ましくは5質量%以上30質量%以下の範囲である。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が3質量%未満であると、十分な低温定着性が得られない場合があり、40質量%より多いと、十分なトナー強度や定着画像強度が得られず、また帯電性への悪影響も生じてしまう場合がある。
【0056】
−非晶性ポリエステル樹脂−
本実施形態においては、結着樹脂として非晶性ポリエステル樹脂が用いられる。非晶性ポリエステル樹脂を用いることで、前記脂肪族結晶性ポリエステル樹脂との相溶性が向上するため、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の融解温度における低粘度化に伴い、非晶性ポリエステル樹脂も低粘度化し、トナーとしてのシャープメルト性(鋭敏な溶融特性)が得られるために、低温定着性に有利である。また脂肪族結晶性ポリエステル樹脂との濡れ性が良好なことから、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂のトナー内部への分散性が向上し、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂のトナー表面への露出を抑制するため、帯電性への悪影響が抑制される。またこの理由により、トナーの強度や定着画像の強度向上の観点でも望ましい。
【0057】
本実施形態において望ましく用いられる非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類;が挙げられ、これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いてもよい。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を用いることが望ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造を導入することが望ましく、そのためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが望ましい。
【0058】
前記非晶性ポリエステル樹脂における多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールを1種又は2種以上用いてもよい。これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が望ましく、このうち芳香族ジオールがより望ましい。また、より良好なる定着性を確保するために、架橋構造あるいは分岐構造を導入することが望ましく、そのためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0059】
前記非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上80℃以下の範囲であることが望ましい。Tgが50℃より低いと、トナーの保存性や定着画像の保存性の観点で問題が生じてしまう場合がある。また80℃より高いと、従来に比べ低温で定着することができなくなる場合がある。
非晶性ポリエステル樹脂のTgは50℃以上65℃以下であることがより望ましい。
【0060】
また、前記非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は90℃以上125℃以下の範囲であることが望ましい。軟化温度が90℃より低いと、トナーの保存性や定着画像の保存性の観点で問題が生じてしまう場合がある。また軟化温度が125℃より高いと、従来に比べ低温で定着することができなくなる場合がある。
非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は100℃以上120℃以下であることがより望ましい。
本実施形態において軟化温度は、高化式フローテスターCFT−500(島津製作所社製)を用い、ダイスの細孔の径を0.5mm、加圧荷重を0.98MPa(10kgf/cm2)、昇温速度を1℃/分とした条件下で、1cm3の試料を溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度として求められるものである。
【0061】
トナー中に含まれる非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との比率は特に限定されるものではないが、非晶性ポリエステル樹脂100質量部に対して結晶性ポリエステル樹脂が1質量部以上、30質量部以下が望ましく、2質量部以上、25質量部以下がさらに望ましく、3質量部以上、20質量部以下が特に望ましい。
【0062】
なお、上記非晶性ポリエステル樹脂の製造は、前記脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の場合に準じて行ってもよい。
【0063】
本実施形態においては、非晶性ポリエステル樹脂以外のその他の非晶性樹脂を併用してもよい。その他の非晶性樹脂としては、例えば、スチレン/アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、等公知の樹脂材料が挙げられる。
【0064】
−炭化水素ワックス−
本実施形態においては、離型剤として融解温度が80℃以上100℃以下の炭化水素ワックス(以下、特定の炭化水素ワックスと称することがある)が用いられる。
炭化水素ワックスとしては、石油系パラフィンワックス、石油系マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックス、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィンワックスが用いられる。
ポリオレフィンワックスに用いるオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、あるいは不飽和結合の位置を異にするこれらの異性体、さらには3−メチル−1−ブテン、3−メチル−2−ペンテン、3−プロピル−5−メチル−2−ヘキセン等のアルキル基よりなる分岐鎖を有するオレフィンモノマーが用いられる。
また、未変性のポリオレフィンワックスの他、空気中の酸素で酸化した酸化型ポリオレフィンワックスや、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸等のカルボン酸によって変性された酸変性ポリオレフィンワックス、スチレン系化合物等をグラフトさせたスチレン系モノマー変性ポリオレフィンワックスなどの変性ポリオレフィンワックスを用いても良い。
【0065】
本実施形態で用いられる炭化水素ワックスの融解温度は、80℃以上100℃以下とされるが、85℃以上95℃以下がより望ましい。
【0066】
本実施形態において、融解温度の測定には、示差走査熱量計(DSC;島津製作所社製:DSC−60A)を用い、室温(30℃)から200℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の溶融ピーク温度として求められる。
【0067】
本実施形態においては、特定の炭化水素ワックス以外の公知のワックスをさらに含有してもよい。
公知のワックスとしては、エステルワックス、天然ワックス、合成ワックスなどが広く用いられる。例えば、モンタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ステアロン、ラウロン等のジアルキルケトン、長鎖アルキルアルコール、脂肪族アミン等が挙げられる。
【0068】
本実施形態においては、非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が特定の炭化水素ワックスの融解温度よりも高く設定される。非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度と特定の炭化水素ワックスの融解温度との差は、5℃以上30℃以下が望ましく、10℃以上20℃以下がさらに望ましい。非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が特定の炭化水素ワックスの融解温度よりも低いと、ワックスがトナーから定着ロール表面に十分染み出す前に、非晶性ポリエステル樹脂が定着ロール表面に溶融粘着してしまい、離型性が不足し、オフセットや剥離不良による画像欠陥を生ずることがある。
【0069】
特定の炭化水素ワックスの含有量は、結着樹脂(非晶性ポリエステル樹脂及び脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の合計量)100質量部に対して4質量部以上15質量部以下が望ましく、5質量部以上10質量部以下がさらに望ましい。
【0070】
−着色剤−
本実施形態に用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が望ましい。
望ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用される。
【0071】
本実施形態における着色剤の含有量としては、結着樹脂(非晶性ポリエステル樹脂及び脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の合計量)100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下の範囲が望ましい。また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用したりすることも有効である。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等が得られる。
【0072】
−その他の添加剤−
本実施形態のトナーには、上記成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0073】
無機粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みが調整される。無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用してもよいが、発色性やOHP透過性等透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ粒子が望ましく用いられる。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが望ましく用いられる。
【0074】
(トナーの特性)
本実施形態のトナーの体積平均粒径は4μm以上9μm以下の範囲であることが望ましく、より望ましくは4.5μm以上8.5μm以下の範囲であり、さらに望ましくは5μm以上8μm以下の範囲である。体積平均粒径が4μmより小さいと、トナー流動性が低下し、各粒子の帯電性が低下しやすい。また、帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる。また4μmより小さいと、前記低帯電トナーの定着時の飛散を抑制できなくなる場合があり、また格段にクリーニング性が困難となる場合がある。体積平均粒径が9μmより大きいと、解像度が低下することがある。
ここで、体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(コールター社製)を使用して測定される。
【0075】
さらに、本実施形態のトナーは、形状係数SF1が110以上140以下の範囲の球状形状であることが望ましい。形状がこの範囲の球状であることにより、転写効率、画像の緻密性が向上し、高画質な画像が形成される。
上記形状係数SF1は110以上130以下の範囲であることがより望ましい。
【0076】
ここで上記形状係数SF1は、下記式(1)により求められる。
SF1=(ML/A)×(π/4)×100 ・・・ 式(1)
上記式(1)中、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す。
【0077】
前記SF1は、主に顕微鏡画像または走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、例えば、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式(1)によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0078】
本実施形態のトナーの、特定の炭化水素ワックスの融解温度におけるトナーの複素弾性率(G*)は10000Pa以上100000Pa以下であることが望ましく、20000Pa以上100000Pa以下がさらに望ましい。複素弾性率が10000Pa未満であると、画像定着後のプリント排出時に冷却固化が遅く、画像ブロッキングの問題を生ずることがある。また、複素弾性率が100000Paを超えると、低温定着性に問題を生ずることがある。
【0079】
本実施形態において、トナーの複素弾性率は、下記方法により測定された値をいう。
具体的には、レオメーター(レオメトリックサイエンティフィック社製:ARESレオメータ)を使用し、パラレルプレートを用いて周波数1Hzの条件で、昇温測定を行う。さらに具体的には、120℃から140℃の温度で試料をセットし、室温(25℃)まで冷却した後、昇温速度1℃/分で加熱しながら、30℃から180℃の範囲で2℃毎に昇温時の貯蔵弾性率、損失弾性率、複素弾性率、及びtanδを測定する。なお、上記トナーの複素弾性率の測定は、歪の上限を20%として行った。
【0080】
<トナーの製造方法>
本実施形態に係るトナーの製造方法は特に限定されず、公知である混練・粉砕製法等の乾式法や、乳化凝集法や懸濁重合法等の湿式法等によって作製される。これらの方法の中でも、コアシェル構造のトナーを作成容易な乳化凝集法が望ましい。以下、乳化凝集法によるトナーの製造方法について詳しく説明する。
【0081】
本実施形態に係る乳化凝集法はトナーを構成する原料を乳化して樹脂粒子(乳化粒子)を形成する乳化工程と、該樹脂粒子を含む凝集体を形成する凝集工程と、凝集体を融合させる融合工程とを有してもよい。
【0082】
(乳化工程)
例えば樹脂粒子分散液の作製は、水系媒体と結着樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより行ってもよい。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げて粒子を形成してもよい。また分散した樹脂粒子の安定化のため、分散剤を使用してもよい。 さらに、樹脂が油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、該樹脂をそれらの溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液が作製される。
【0083】
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水であることが望ましい。
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0084】
前記乳化液の作製に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒子径(体積平均粒子径)は1.0μm以下が望ましく、60nm以上300nm以下の範囲であることがより望ましく、さらに望ましくは150nm以上250nm以下の範囲である。60nm未満では、樹脂粒子が分散液中で安定な粒子となるため、該樹脂粒子の凝集が困難となる場合がある。また1.0μmを超えると、樹脂粒子の凝集性が向上しトナー粒子を作成することが容易となるが、トナーの粒子径分布が広がってしまう場合がある。
【0085】
離型剤分散液の調製に際しては、離型剤を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散した後、離型剤の融解温度以上の温度に加熱すると共に、強いせん断力が付与されるホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて分散処理する。上記処理を経ることにより、離型剤分散液が得られる。分散処理の際、ポリ塩化アルミニウム等の無機化合物を分散液に添加してもよい。望ましい無機化合物としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、高塩基性ポリ塩化アルミニウム(BAC)、ポリ水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が望ましい。上記離型剤分散液は乳化凝集法に用いられるが、トナーを懸濁重合法により製造する際にも上記離型剤分散液を用いてもよい。
【0086】
分散処理により、体積平均粒子径が1μm以下の離型剤粒子を含む離型剤分散液が得られる。なお、より望ましい離型剤粒子の体積平均粒子径は、100nm以上500nm以下である。
体積平均粒子径が100nm未満では、使用される結着樹脂の特性にも影響されるが、一般的に離型剤成分がトナー中に取り込まれにくくなる。また、500nmを超える場合には、トナー中の離型剤の分散状態が不十分となる場合がある。
【0087】
着色剤分散液の調製は、公知の分散方法が利用でき、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル、アルティマイザーなどの一般的な分散手段を採用することができ、なんら制限されるものではない。着色剤は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質と共に分散される。分散させた着色剤粒子の体積平均粒子径は1μm以下であればよいが、80nm以上500nm以下の範囲であれば、凝集性を損なうことなく且つトナー中の着色剤の分散が良好で望ましい。
【0088】
(凝集工程)
前記凝集工程においては、樹脂粒子の分散液、着色剤分散液、離型剤分散液等を混合して混合液とし、樹脂粒子のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる場合が多い。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、この際、凝集剤を使用することも有効である。
なお、凝集工程において、離型剤分散液は、樹脂粒子分散液等の各種分散液とともに一度に添加・混合してもよいし、複数回に分割して添加しても良い。
【0089】
凝集剤としては、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体が好適に用いられる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0090】
前記無機金属塩としては、特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。より狭い粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
本実施形態においては、アルミニウムを含む4価の無機金属塩の重合体を用いることが、狭い粒度分布を得るためには望ましい。
【0091】
また、前記凝集粒子が所望の粒子径になったところで樹脂粒子分散液を追添加することで(被覆工程)、コア凝集粒子の表面を樹脂で被覆した構成のトナーを作製してもよい。この場合、離型剤や着色剤がトナー表面に露出しにくくなるため、帯電性や現像性の観点で望ましい構成である。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。
【0092】
(融合工程)
融合工程においては、前記凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを3以上9以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、前記樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。また、前記樹脂で被覆した場合には、該樹脂も融合しコア凝集粒子を被覆する。前記加熱の時間としては、融合がされる程度行えばよく、0.5時間以上10時間以下程度行えばよい。
【0093】
融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、樹脂のガラス転移温度近傍(ガラス転移温度±10℃の範囲)で冷却速度を落とす、いわゆる徐冷をすることで結晶化を促進してもよい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー粒子とされる。
【0094】
(外添工程)
得られたトナー粒子には、流動化剤や助剤等の外添剤が添加処理される。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、カーボンブラック等の無機粒子や、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー粒子等、公知の粒子が使用される。
これらは、例えばV型ブレンダーやヘンシェルミキサー、レディゲミキサー等によって行うことができ、段階を分けて付着させることが可能となる。トナー粒子に上記成分を外添することで、本実施形態のトナーが得られる。
【0095】
<電子写真用現像剤>
本実施形態に係る電子写真用現像剤(以下、単に「現像剤」と称することがある。)は、本実施形態のトナーを含むものであれば特に限定されず一成分現像剤あるいは二成分現像剤のいずれであってもよい。二成分現像剤として用いる場合にはトナーと、キャリアとを混合して使用される。
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等が挙げられる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0096】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であってもよい。
キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10μm以上500μm以下であり、30μm以上100μm以下であってもよい。
【0099】
またキャリアの芯材の表面を樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
【0100】
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0101】
前記二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100乃至30:100程度の範囲であってもよく、3:100乃至20:100程度の範囲であってもよい。
【0102】
<画像形成装置及び画像形成方法>
次に、本実施形態のトナーを用いた本実施形態に係る画像形成装置及び画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を本実施形態の現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールを備え前記表面層を前記被転写体の前記トナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する定着手段と、を有するものである。
【0103】
本実施形態に係る定着ロールの表面層はフルオロカーボンシロキサンゴムを含む。フルオロカーボンシロキサンゴムとしては、例えば、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するフルオロカーボンシロキサンを主成分することが望ましい。
【0104】
【化1】

【0105】
ここで、上記一般式(1)において、R10は非置換又は置換の望ましくは炭素数1以上8以下の一価炭化水素基であり、望ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基又は炭素数2以上3以下のアルケニル基であり、特にメチル基であることが望ましい。a,eはそれぞれ0又は1、b,dはそれぞれ1以上4以下の整数、cは0以上8以下の整数である。また、xは1以上の整数、望ましくは10以上30以下である。
【0106】
フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層は、例えば、信越化学工業社製のSIFEL等を使用して形成される。
【0107】
この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る電子写真用現像剤を収容する本実施形態に係るプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0108】
本実施形態に係る画像形成装置によれば、感光体を帯電する帯電工程と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を本実施形態の現像剤によりトナー像として現像する現像工程と、前記トナー像を被転写体上に転写する転写工程と、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を前記被転写体の前記トナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する定着工程と、を有する本実施形態に係る画像形成方法が実施される。
【0109】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0110】
図1は、4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0111】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0112】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0113】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0114】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0115】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0116】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む電子写真用現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。
現像効率、画像粒状性、階調再現性等の観点から、直流成分に交流成分を重畳させたバイアス電位(現像バイアス)を現像剤保持体に付与してもよい。具体的には、現像剤保持体直流印加電圧Vdcを−300乃至−700Vとしたとき、現像剤保持体交流電圧ピーク幅Vp−pを0.5乃至2.0kVの範囲としてもよい。
イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0117】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0118】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0119】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0120】
この後、記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー像が加熱及び加圧され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。
一対の定着ロールのうち、記録紙Pのトナー像の転写された側と接する定着ロールの表面層が、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む構成とされる。
【0121】
トナー像を転写する被転写体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【0122】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0123】
<プロセスカートリッジ、トナーカートリッジ>
図2は、本実施形態に係る電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例の実施形態を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、現像装置111とともに、感光体107、帯電ローラ108、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0124】
図2で示すプロセスカートリッジ200では、感光体107、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態のプロセスカートリッジでは、現像装置111のほかには、感光体107、帯電装置108、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0125】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。本実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容するトナーカートリッジにおいて、前記トナーが既述した本実施形態に係る電子写真用トナーとしたものである。なお、本実施形態に係るトナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0126】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係る電子写真用トナーを収めたトナーカートリッジを利用することにより、本実施形態に係る電子写真用トナーが容易に現像装置に供給される。
【0127】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0128】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0129】
−定着ロール1の作成−
鉄製の厚さ0.5mm、50mmφのロール状基体に、信越化学社製KE−1820を用いてシリコーンゴムからなる厚さ200μmの弾性層を設け、更にその上にフルオロカーボンシロキサンゴム(SIFEL3505A/B:信越化学(株)製)からなる厚さ30μmの表面層を設け、定着ロール1を作成した。
【0130】
−定着ロール2の作成−
鉄製の厚さ0.5mm、50mmφのロール状基体に、信越化学社製KE−1820を用いてシリコーンゴムからなる厚さ200μmの弾性層を設け、更にその上にグンゼ社製テフロン(登録商標)チューブ(厚さ30μm)からなる厚さ30μmの表面層を設け、定着ロール2を作成した。
【0131】
−定着ロール3の作成−
鉄製の厚さ0.5mm、50mmφのロール状基体に、信越化学社製KE−1820を用いてシリコーンゴムからなる厚さ200μmの弾性層を設け、更にその上にダイキン工業社製G902フッ素ゴム(ビニリデンフロライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンの共重合体の三元系フッ素ゴム)からなる厚さ30μmの表面層を設け、定着ロール3を作成した。
【0132】
(電子写真用トナー1の作成)
−結晶性ポリエステル樹脂1の合成−
加熱乾燥した三口フラスコに、1,10−ドデカン二酸230部、1,9−ノナンジオール160部、および触媒としてジブチル錫オキサイド0.2部を入れ、その後減圧操作により、三口フラスコ内の空気を窒素に置換して不活性雰囲気下として、機械攪拌により180℃、5時間攪拌し、且つ還流して反応を進行させた。反応中は、反応系内において生成した水を留去した。その後、減圧下において235℃まで徐々に昇温し、2時間攪拌して粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量28500になったところで、減圧蒸留を停止し結晶性ポリエステル樹脂1を得た。結晶性ポリエステル樹脂1の融解温度は73℃、軟化温度75℃、酸価は12.5mgKOH/gであった。
【0133】
−結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製−
この結晶性ポリエステル樹脂100部、酢酸エチル35部、及びイソプロピルアルコール35部をセパラブルフラスコに入れ、これを75℃で充分混合、溶解した後、10%アンモニア水溶液を5.5部滴下した。加熱温度を60℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度6g/minで滴下し、液が白濁したのち、送液速度25g/minに上げ、総液量が400部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒の除去を行い、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は140nm、結晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は26.21%であった。
【0134】
−非晶性ポリエステル樹脂1の合成−
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 310部
・テレフタル酸 116部
・フマル酸 12部
・ドデセニルコハク酸 54部
・Ti(OC 0.05部
【0135】
加熱乾燥した三口フラスコに、上記原料を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で8時間還流を行った。その後、反応系内に生成した水を減圧蒸留にて留去しながら、230℃まで徐々に昇温を行った。さらに240℃で2時間脱水縮合反応を継続し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量18000になったところで、減圧蒸留を停止し非晶性ポリエステル樹脂1を得た。非晶性ポリエステル樹脂1は非晶性であり、ガラス転移温度60℃、軟化温度105℃、酸価14mgKOH/gであった。
【0136】
−非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の調製−
次いで、この非晶性ポリエステル樹脂1を100部と、酢酸エチルを50部と、イソプロピルアルコールを25部と、10%アンモニア水溶液を5部と、をセパラブルフラスコに入れ、充分混合、溶解した後、40℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下した。液が白濁した後、送液速度25g/minに上げて転相させ、送液量が135部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は135nm、非晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は32.0%であった。
【0137】
−非晶性ポリエステル樹脂2の合成−
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 310部
・テレフタル酸 100部
・アジピン酸 9部
・フマル酸 12部
・ドデセニルコハク酸 54部
・Ti(OC 0.05部
【0138】
加熱乾燥した三口フラスコに、上記原料を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で8時間還流を行った。その後、反応系内に生成した水を減圧蒸留にて留去しながら、230℃まで徐々に昇温を行った。さらに240℃で2時間脱水縮合反応を継続し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量15000になったところで、減圧蒸留を停止し非晶性ポリエステル樹脂2を得た。非晶性ポリエステル樹脂2は非晶性であり、ガラス転移温度55℃、軟化温度95℃、酸価13mgKOH/gであった。
【0139】
−非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2の調製−
次いで、この非晶性ポリエステル樹脂2を100部と、酢酸エチルを50部と、イソプロピルアルコールを25部と、10%アンモニア水溶液を5部と、をセパラブルフラスコに入れ、充分混合、溶解した後、40℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下した。液が白濁した後、送液速度25g/minに上げて転相させ、送液量が135部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は130nm、非晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は31.9%であった。
【0140】
−離型剤粒子分散液1の調製−
日本精蝋社製 フィッシャートロプシュワックス(融解温度92℃)を用いて離型剤粒子分散液1を調製した。
・日本精蝋社製 フィッシャートロプシュワックス(融解温度92℃) 180部
・アニオン性界面活性剤 4.5部
・イオン交換水 410部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理し、体積平均粒径が0.24μmの離型剤粒子を分散させ、イオン交換水で濃度を調整し、離型剤粒子の固形分濃度が31.0%の離型剤粒子分散液1を調製した。
【0141】
−着色剤粒子分散液(Cyan)の調製−
・C.I.ピグメントブルー15:3 13.75部
・アニオン界面活性剤 1.238部
・イオン交換水 41.697部
以上を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散して着色剤粒子分散液を調製した。着色剤粒子分散液における着色剤粒子の体積平均粒径は、0.18μm、着色剤粒子の固形分濃度は26.44%であった
【0142】
−トナー粒子1の作製−
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 490.6部
・離型剤粒子分散液1 87.9部
・着色剤粒子分散液 45.3部
・結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1 53.2部
・イオン交換水 610部
・アニオン性界面活性剤 2.25部
pHメーター、攪拌羽、温度計を具備した重合釜に、上記原料を入れ、Ultraturrax(IKAジャパン社製)により6000rpmでせん断力を加えながら、凝集剤として硫酸アルミニウム1%水溶液100部を滴下し、原料混合物を調整した。
【0143】
次いで、上記原料混合物をマントルヒーターにて30℃に加温しながら550から650rpmで攪拌した。60分攪拌後、コールターマルチサイザー(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて一次粒子が形成するのを確認した後、凝集粒子を成長させるために0.5℃/分で昇温した。凝集粒子径はコールターマルチサイザーを用いて随時確認した。凝集粒子の体積平均粒径が6.3μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1の175部をイオン交換水48部で希釈したものを添加し、凝集粒子を被覆し、凝集粒子(付着粒子)の成長を停止させるために、EDTA水溶液(キレス社製キレスト40をイオン交換水で12%濃度に希釈したもの)20.0部と1Mの水酸化ナトリウム水溶液を順に加え、原料混合物のpHを8.0に制御した。ついで、凝集粒子を融合させるために、昇温速度1℃/minで合一温度90℃まで昇温し、光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、冷却してトナー粒子を含むスラリーを得た。
【0144】
次いで、得られたスラリーをろ過し、トナー固形分の10倍のイオン交換水を加えて分散攪拌を10分間行い、ろ過を行ことを5回繰り返し、トナー粒子の洗浄を行った。真空乾燥を行い、体積平均粒径6.6μmのトナー粒子1を得た。
【0145】
上記作製したトナー粒子1:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー1を得た。
電子写真用トナー1のワックス融解温度(92℃)におけるG*は50000Paであった。
【0146】
次いで、ポリメチルメタアクリレート樹脂(Mw:80000、綜研化学社製)を1%コートした体積平均粒径が35μmのフェライトキャリアに対し、トナー濃度が5%になるように電子写真用トナー1を秤量し、ボールミルで5分間攪拌、混合して現像剤1を作製した
【0147】
(電子写真用トナー2の作成)
−結晶性ポリエステル樹脂2の合成−
1,9-ノナンジオールを1,12−ドデカンジオールに変えたこと以外は結晶性ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。結晶性ポリエステル樹脂2は、重量平均分子量27000、融解温度は77℃、酸価は13.0mgKOH/gであった。
【0148】
−結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2の調製−
この結晶性ポリエステル樹脂100部、酢酸エチル35部、及びイソプロピルアルコール35部をセパラブルフラスコに入れ、これを75℃で充分混合、溶解した後、10%アンモニア水溶液を5.5部滴下した。加熱温度を60℃に下げ、攪拌しながらイオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度6g/minで滴下し、液が白濁したのち、送液速度25g/minに上げ、総液量が400部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒の除去を行い、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は150nm、結晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は26.2%であった。
【0149】
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2に変えること以外はトナー粒子1の作製方法と同様にして、体積平均粒径6.5μmのトナー粒子2を作製した。
上記作製したトナー粒子2:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー2を得た。
電子写真用トナー2のワックス融解温度(92℃)におけるG*は60000Paであった。
次いで、現像剤1に使用したキャリアを用い現像剤2を作製した
【0150】
(電子写真用トナー3の作成)
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液2に変えること以外はトナー粒子1の作製方法と同様にして、体積平均粒径6.5μmのトナー粒子3を作製した。
上記作製したトナー粒子3:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー3を得た。
電子写真用トナー3のワックス融解温度(92℃)におけるG*は9000Paであった。
次いで、現像剤1に使用したキャリアを用い、現像剤3を作製した
【0151】
(電子写真用トナー4の作成)
−非晶性ポリエステル樹脂3の合成−
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 310部
・テレフタル酸 116部
・フマル酸 12部
・ドデセニルコハク酸 54部
・Ti(OC 0.05部
【0152】
加熱乾燥した三口フラスコに、上記原料を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で8時間還流を行った。その後、反応系内に生成した水を減圧蒸留にて留去しながら、230℃まで徐々に昇温を行った。さらに240℃で6時間脱水縮合反応を継続し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量33000になったところで、減圧蒸留を停止し非晶性ポリエステル樹脂3を得た。非晶性ポリエステル樹脂3は非晶性であり、ガラス転移温度63℃、軟化温度125℃、酸価10mgKOH/gであった。
【0153】
−非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3の調製−
次いで、この非晶性ポリエステル樹脂3を100部と、酢酸エチルを50部と、イソプロピルアルコールを25部と、10%アンモニア水溶液を5部と、をセパラブルフラスコに入れ、充分混合、溶解した後、40℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下した。液が白濁した後、送液速度25g/minに上げて転相させ、送液量が135部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は140nm、非晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は32.2%であった。
【0154】
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液3に変えること以外はトナー粒子1の作製方法と同様にして、体積平均粒径6.3μmのトナー粒子4を作製した。
上記作製したトナー粒子4:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー4を得た。
電子写真用トナー4のワックス融解温度(92℃)におけるG*は150000Paであった。
次いで、現像剤1に使用したキャリアを用い現像剤4を作製した。
【0155】
(電子写真用トナー5の作成)
日本精蝋社製 石油系パラフィンワックスHNP9(融解温度75℃)を用いて離型剤粒子分散液2を調製した。
−離型剤粒子分散液2の調製−
・日本精蝋社製 石油系パラフィンワックスHNP9 融解温度75℃ 180部
・アニオン性界面活性剤 4.5部
・イオン交換水 410部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理し、体積平均粒径が0.20μmの離型剤粒子を分散させ、イオン交換水で濃度を調整し、離型剤粒子の固形分濃度が31.1%の離型剤粒子分散液2を調製した。
【0156】
離型剤粒子分散液1を離型剤粒子分散液2に変えること以外はトナー粒子1の作製方法と同様にして、体積平均粒径6.2μmのトナー粒子5を作製した。
上記作製したトナー粒子5:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー5を得た。
電子写真用トナー5のワックス融解温度(75℃)におけるG*は500000Paであった。
次いで、現像剤1に使用したキャリアを用い現像剤5を作製した。
【0157】
(電子写真用トナー6の作成)
ベーカーペトロライト社製 ポリエチレンワックス ポリワックス725(融解温度105℃)を用いて離型剤粒子分散液3を調製した。
−離型剤粒子分散液3の調製−
・ベーカーペトロライト社製 ポリワックス725(融解温度105℃) 180部
・アニオン性界面活性剤 4.5部
・イオン交換水 410部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴ−リン社)で分散処理し、体積平均粒径が0.20μmの離型剤粒子を分散させ、イオン交換水で濃度を調整し、離型剤粒子の固形分濃度が30.9%の離型剤粒子分散液3を調製した。
【0158】
離型剤粒子分散液1を離型剤粒子分散液3に変えること以外はトナー粒子1の作製方法と同様にして、体積平均粒径6.5μmのトナー粒子6を作製した。
上記作製したトナー粒子6:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー6を得た。
電子写真用トナー6のワックス融解温度(105℃)におけるG*は10000Paであった。
次いで、現像剤1に使用したキャリアを用い現像剤6を作製した。
【0159】
(電子写真用トナー7の作成)
−非晶性ポリエステル樹脂4の合成−
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 310部
・テレフタル酸 100部
・アジピン酸 9部
・フマル酸 12部
・ドデセニルコハク酸 54部
・Ti(OC 0.05部
【0160】
加熱乾燥した三口フラスコに、上記原料を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で8時間還流を行った。その後、反応系内に生成した水を減圧蒸留にて留去しながら、230℃まで徐々に昇温を行った。さらに240℃で1時間脱水縮合反応を継続し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量8500になったところで、減圧蒸留を停止し非晶性ポリエステル樹脂4を得た。非晶性ポリエステル樹脂4は非晶性であり、ガラス転移温度53℃、軟化温度88℃、酸価15mgKOH/gであった。
【0161】
−非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液4の調製−
次いで、この非晶性ポリエステル樹脂4を100部と、酢酸エチルを50部と、イソプロピルアルコールを25部と、10%アンモニア水溶液を5部と、をセパラブルフラスコに入れ、充分混合、溶解した後、40℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水を送液ポンプを用いて送液速度8g/minで滴下した。液が白濁した後、送液速度25g/minに上げて転相させ、送液量が135部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液4を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は120nm、非晶性ポリエステル樹脂粒子の固形分濃度は32.1%であった。
【0162】
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液1を非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液4に変えること以外はトナー粒子1の作製方法と同様にして、体積平均粒径6.5μmのトナー粒子7を作製した。
上記作製したトナー粒子7:100部に対し、外添剤としてシリカ粉末(粒子径:50nm)及びチタニア粉末(粒子径:40nm)を、それぞれ0.9部及び0.6部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用トナー7を得た。
電子写真用トナー7のワックス融解温度(92℃)におけるG*は5000Paであった。
次いで、現像剤1に使用したキャリアを用い現像剤7を作製した。
【0163】
[実施例1]
富士ゼロックス社製700 Digital Color Pressの定着器を改造した画像形成装置を用い、現像剤および定着装置の評価を行った。プロセススピードを308mm/secとした。定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー1を用いた。得られた結果を表1に示す。
【0164】
<画像ムラ評価>
用紙として、王子製紙社製 OKエンボス布目(84.9g/m)を用い、トナー画像の載り量が0.4mg/cmのソリッド画像(3cmX3cm)を有する定着画像を作製した。定着にて発生するエンボス紙の凸部分トナーの凹部分へのトナー落ち込みによる画像のムラの発生を目視で2段階評価した。
○ 凸部分のトナ−が凹部分に落ち込まず、凸部分と凹部分の画像の濃さに差がない。
× 凸部分のトナ−が凹部分に落ち込み、凸部分が明らかに白く見える。
【0165】
<離型維持性評価>
用紙として、富士ゼロックス社製C2紙を用い、トナー画像の載り量が0.4mg/cmのソリッド画像(全面画像)の連続プリントを行い、1万枚プリント後に、プリントサンプル上のオフセット画像の発生有無、巻きつきによる剥離ムラを確認した。
【0166】
[実施例2]
定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー2を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0167】
[実施例3]
定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー3を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0168】
[実施例4]
定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー4を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例4は、エンボス定着において定着レベルが劣っていたため、実施例1乃至3の定着設定温度170℃から10℃設定温度を上げて、評価を行った。
【0169】
[比較例1]
定着ロールとして定着ロール2を、トナーとして電子写真用トナー1を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0170】
[比較例2]
定着ロールとして定着ロール3を、トナーとして電子写真用トナー2を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0171】
[比較例3]
定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー5を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0172】
[比較例4]
定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー6を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0173】
[比較例5]
定着ロールとして定着ロール1を、トナーとして電子写真用トナー7を用いた以外は実施例1と同様に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0174】
【表1】

【符号の説明】
【0175】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3、110 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ、
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を被転写体のトナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する際の前記トナー像の形成に用いられ、
非晶性ポリエステル樹脂と、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂と、融解温度が80℃以上100℃以下の炭化水素ワックスと、を含み、
前記非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度が前記炭化水素ワックスの融解温度よりも高い電子写真用トナー。
【請求項2】
前記炭化水素ワックスの融解温度におけるトナーの複素弾性率(G*)が、10000Pa以上100000Pa以下である請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子写真用トナーを含む電子写真用現像剤。
【請求項4】
トナーが少なくとも収容され、前記トナーが請求項1又は請求項2に記載の電子写真用トナーであるトナーカートリッジ。
【請求項5】
現像剤保持体を少なくとも備え、請求項3に記載の電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジ。
【請求項6】
感光体と、前記感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を請求項3に記載の電子写真用現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を被転写体上に転写する転写手段と、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールを備え前記表面層を前記被転写体の前記トナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する定着手段と、を有する画像形成装置。
【請求項7】
感光体を帯電する帯電工程と、帯電した前記感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、前記感光体上に形成された前記静電荷像を請求項3に記載の電子写真用現像剤によりトナー像として現像する現像工程と、前記トナー像を被転写体上に転写する転写工程と、フルオロカーボンシロキサンゴムを含む表面層を有する定着ロールの前記表面層を前記被転写体の前記トナー像の転写された側に接触させて加熱及び加圧することで前記被転写体上に前記トナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−209312(P2011−209312A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73720(P2010−73720)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】